原作の構成上、一話一話はそんなに長くはならないです。
潜入①
七耀暦1206年 8月17日
「ここか?」
「そうだよ。ここが入り口」
キリコはサザーラント州山間にあるという黒の工房の入り口を捜索していた。
その際にシャーリィと出会い、彼女の協力を得て、遂に入り口を発見するに至った。
「それで、どうやったら入れる?」
「こっちだよ」
シャーリィはキリコを魔法陣の所に案内する。
「ここに乗れば入れるよ」
「そうか。悪いな」
「気にしなくていいよ。いよいよ黒の工房に喧嘩売るんでしょ?」
「………………」
「あ~あ、あたしも一緒に行って大暴れしたいけど、あいにくレミフェリア方面での仕事が入ってるんだよね~」
シャーリィは至極残念そうに言った。
「ここからは俺一人でいい」
「わかった。それより良いの?」
「?」
「トールズの新旧Ⅶ組、間違いなく来るでしょ?灰色のお兄さん助けに」
「…………………」
「そんときはさ、戦うの?」
「………その可能性はあり得ない。あれだけ叩けば大人しくしているだろう」
「そっか……。それじゃ、そろそろ行くね」
「ああ」
シャーリィはキリコに別れを告げ、どこかへ転移して行った。
「……………………」
キリコは眼を瞑った。
前日 8月16日
「キリコ」
キリコはロッチナに呼び出されていた。
ロッチナの表情にいつもの感じは無く、真剣そのものだった。
「今度はなんだ」
「……黒の工房へ行け」
「なんだと?」
突然の言葉にキリコは不審がる。
「なぜ黒の工房に行く必要がある」
「工房長のことは知っているな?」
「黒のアルベリヒだったか。そいつがどうかしたのか?」
「奴は調子に乗り、愚かにも越えてはならん一線を越えた」
「越えてはならない一線?」
「お前にとってはな」
「俺に?」
「これ以上は言えん。真実はお前自身が掴むのだ」
「………………わかった」
キリコはロッチナの言うとおり、黒の工房へ行くことになった。
(越えてはならない一線………いったい黒のアルベリヒは何をした?)
キリコは魔法陣の上に乗る。
(とにかく、行ってみるか)
キリコは黒の工房内部に入った。
キリコが黒の工房に入ってから数分後、どこからともなく魔法陣が顕れた。
「着きましたね」
「ここが黒の工房……」
「ここまでは作戦成功ね」
「まだ気は抜けないね」
「…………………」
「アル、大丈夫?」
「………はい」
「無理をするでない」
「前衛は務めるから、下がっててもいいよ」
「すみません。ですが、大丈夫です」
「とにかく行きましょ。これ以上、あの人を……」
(アリサさん……)
エマが不安そうにしていると、ユウナのARCUSⅡに通信が入る。
「はい、こちらユウナです」
『どうやらそちらも無事のようだな』
『とりあえず、作戦の第一段階は成功だね』
「皆さんもご無事でしたか」
『ああ。では予定通り、リィンがいると思われる中枢まで移動。その後合流ということだな』
『かなりの人形兵器が配備されている。せいぜい気をつけるといい』
「ユーシスさん、その……」
『……ミリアムのことは置いておく。お前も無理はするな』
「あ、はい……!」
「あたしたちも出発します。皆さんもお気をつけて」
『ああ!ユウナもな』
『せいぜい遅れんなよ』
アッシュの言葉を最後に通信が切れた。
「向こうも動き出したみたいね」
「エマ、セリーヌとは?」
「……どうやら移動しているみたいです(セリーヌがあの姿になるほどの事態……)」
「時間がありません。参りましょう」
ミュゼの言葉を皮切りに、女子チームは動き始めた。
「……イカナクチャ………」
「ああ、もう!」
黒猫ではなく人の姿に変わったセリーヌは、拘束を自力で外し、歩を進めるリィン・シュバルツァーを追いかけていた。
「……ゼンブ………ホロボス………!」
自身を嵌めたばかりか、かけがえのない仲間の散華を引き起こした元凶の抹殺。
呪いに侵され、理性すら失ったリィンを動かすのはただ一つだった。
「クッ……!早いとこなんとかしないと、取り返しが……!」
セリーヌは賢明に追いかける。
[Aチーム side]
「これは……」
「人形兵器か!」
「それだけじゃない……!」
クルトたちの目の前には、人形兵器や戦術殻が大量生産されていく光景だった。
「アガートラムやクラウ=ソラスみたいなのがいっぱい……」
「どうやら、僕たちがいるのは人形兵器や戦術殻の生産ブロックのようですね」
「全部ブッ壊してぇが、さすがに時間が足りねぇか」
「仕方あるまい。とにかく急ぐぞ」
「ああ。もたもたしていると……」
マキアスが言い終わらないうちに、人形兵器が数体向かって来た。
「フン!一丁前に警備というわけか」
「ハッ!上等!」
「一気に殲滅する!」
「アーツは任せて!」
「わかりました!」
クルトたちは戦闘を開始した。
[Aチーム side out]
[Bチーム side]
「な、何よこれ……!?」
「これは……」
「もしかして……」
「おそらく……造り出すためのものかと……。私やミリアムさんのようなホムンクルスを………」
アルティナは声を絞り出すように言った。
「アル……」
「……大丈夫です。ここでの記憶はほとんど残ってませんから。それに、目的を果たした以上、現在は使われていないようです」
『……………』
ユウナたちは言葉が出なかった。
「それより、あれは何でしょう?」
アルティナの指さす方向には、カプセルのようなものが置かれていた。
「何かしら?」
「動いてはいないみたいだね」
「僅かながら熱源反応を確認。中に何か入っているようです」
「これも黒のアルベリヒが造ったものなのでしょうか……」
「気にはなるが時間が惜しい。次に………」
ラウラは突然黙った。
「ラウラさん?」
「皆さん、あれを!」
ミュゼの視線の先には、大型の水槽のようなものが鎮座していた。
中には、女性と思わしきものが眠っていた。
「これは……!」
「ホムンクルス、よね?」
「見た目は大人みたいだけど……」
「………………………」
アルティナは一心に見つめていた。
「アル?」
「どうかしたの?」
「いえ……(初めて見るはずなのに、私はこれを知っている……?)」
「……詮索は後回しよ。行くわよ」
『はいっ!』
サラの言葉で頭を切り替えたユウナたちは探索を再開した。
[Bチーム side out]
[Cチーム side]
「滅ビヨ……!」
リィンは襲って来る人形兵器を次々に破壊していた。
しかしそれは、八葉一刀流の剣技などではなかった。
「シャアァァッ!」
太刀を叩きつけ、斬るのではなく叩き潰す。力任せの暴力そのものだった。
その光景にセリーヌは言葉を失うばかりだった。
「……このままじゃ、本当に……!」
「やれやれ、見てられねぇな」
「まったくですわ」
「え……?」
セリーヌの頭上から二つの影が降りてくる。
二つの影は携えた二丁拳銃と大剣で瞬く間に人形兵器を殲滅する。
「よっ、久しぶりだな」
「星杯以来ですわね」
「ア、アンタたち……」
二つの影──クロウとデュバリィはセリーヌの方を向く。
「にしても、お前そんなあざとかったか?」
「ずいぶんとお可愛らしい姿になりましたわね」
「う、うるさい!好き好んでこんな姿になってるんじゃないんだから!」
クロウとデュバリィの指摘にセリーヌは憤慨する。
「それより、アンタたちはなんでここに居るのよ!?」
「リィンとヴァリマールがあんなだからな。ちょいと手助けにな。こっちはそうじゃねぇようだが」
「……私たちは……マスターから破門されましたわ………」
「破門……?」
「先日、マスターから力を見せるように言われました。真意を計りかねていると、マスターは今まで見たことのない表情で襲いかかってきました。本気のマスターに敵うはずもなく、私たちは地に伏せました」
「その直後、マスターに告げられました……貴女たちは破門とします。どこへなりと行きなさい、と」
デュバリィは唇を噛む。
「それって……」
「……わかっています。破門は私たちを巻き込まないようにしたものだと。ですが、それだけでは納得がいきません。ですから私たちはマスターの真意を聞くべく、工房に潜入したというわけです」
「そういや、他の二人はどうしたんだ?」
「アイネスとエンネアは他のブロックに行きました。おそらく、トールズのⅦ組と対峙しているかと」
「そこはわからないけどね。とにかく、リィンを追わないと」
「だな」
「急ぎますわよ」
セリーヌたちは一心不乱に進むリィンを追いかけた。
[Cチーム side out]
[キリコ side]
「また会ったな」
「ユミル以来ね」
「…………………」
極力戦闘を回避しながら黒の工房を探索していると、鉄機隊の剛毅と魔弓に出会った。
「そなたも囚われているリィン・シュヴァルツァーの救出に来たのか?」
「違う」
「あら?違うの?てっきりⅦ組の子たちと別行動だと……」
「………やはり来てしまったか」
「……クロスベルでの戦闘のことは道化師殿から聞いている」
「彼らを関わらせないために、敢えて鬼になったそうね」
「…………………」
俺は思わず拳を握りしめた。
「……無理はするな」
「今のキリコ君を見ていても、無理をしているのは明白よ」
二人の言葉が俺の心に突き刺さる。
(最初から正しいとは思っていない。わかっていたはずだが………)
「それならあんたたちはなぜここにいる?」
「……私たちはマスターに破門にされたの」
「破門?」
「ある日、我らはマスターに力を見せるように言われた。本気のマスターに敗れた我らは野に下ざるを得なかったのだ」
おそらく、鋼の聖女は鉄機隊を遠ざけるためにしたのだろう。俺があいつらに銃口を向けたように。
「私たちはマスターの真意を知りたいの。あの銀の騎神のことも含めてね」
「そうか」
この二人も並々ならぬ覚悟を決めたらしい。
「それじゃあね。それと、キリコ君」
「?」
「無理はしないでね。マスターもおっしゃっていたけど、キリコ君には帰れる所があるんだから」
「そちらの目的は分からぬが、武運を祈る」
剛毅と魔弓は行ってしまった。
「………………」
もう一度、あいつらと戦いになる可能性が高まってしまった。
(その時は………いや)
そう思った俺は頭を切り換える。
優先すべきは黒のアルベリヒがしでかしたという何かの調査だ。俺はそう切り換えた。
(行くか………)
俺は探索を再開した。
[キリコ side out]
「フフフ、楽しいショーの幕開けだ。果たして彼らの運命はどうなるかな?」
フィンガースナップと共に、黒の工房に何かが顕れた。
次回、新旧Ⅶ組の前に……