英雄伝説 異能の軌跡Ⅱ   作:ボルトメン

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遅くなりましたが2021年初投稿です。

今年もよろしくお願いします。


第一相克①

Ⅶ組一行は陽霊窟に到着した。

 

「着いたね」

 

「この先にクロウが待っているのか」

 

「でもどうして、わざわざ精霊窟に呼び出したんでしょうね?」

 

「その答えを、クロウが持っているんだろう。エマ、何か感じるか?」

 

「そうですね……」

 

エマは意識を集中させる。

 

「………………」

 

「どうですか?」

 

「……霊窟内に幾つか大きな気配を感じます。その内の一つが……」

 

「蒼の騎神、というわけか」

 

「アルティナ、機甲兵は?」

 

「大丈夫です」

 

アルティナは機甲兵を出現させる。

 

「一応、全て持ってきていますが、絞る必要がありますね」

 

「ヴァリマールは当然として、後二機はいるな」

 

「教官、蒼の騎神とはどういう?」

 

「そうだな……」

 

リィンは顎に手をやる。

 

「蒼の騎神……オルディーネはダブルセイバーと呼ばれる中世暗黒時代の得物を巧みに操る。さらに飛翔能力にも優れているのが特徴だな。後……」

 

「後?」

 

「オルディーネには第二形態というものが備わっている」

 

「第二形態?」

 

「今のヴァリマールのようにですか?」

 

「そこに至った経緯まではわからないけどな」

 

リィンは腕を組み、かつての出来事を思い出す。

 

 

 

「宰相の狙撃と同時に帝都が占領され、それと前後してトリスタが貴族連合軍に襲撃された時があったんだ」

 

「帝国時報で読んだぜ。今のトールズ本校は貴族に従わねぇってんで、貴族連合軍が占領。住民も教官もまとめて軟禁されてたってな」

 

「だいぶ穿った見方だが、まあそういうことだな」

 

アッシュの発言にマキアスは呆れながらも同意した。

 

「あの日、俺たちは初めて機甲兵を目の当たりにした」

 

「僕もパルムで見ましたが、圧倒されました」

 

「貴族連合軍の侵攻を食い止めるべく、俺たちは生身で機甲兵ドラッケンに立ち向かったんだったな」

 

「生身で!?」

 

「無謀過ぎます……」

 

「何とかドラッケンは食い止めたんだよね」

 

「食い止めたのかよ!?」

 

アッシュは仰天した。

 

「だがシュピーゲルには敵わなかったのだ。機体に搭載されていたリアクティブアーマーのせいでな」

 

「ホント、厄介なもの作ってくれたわね……」

 

アリサはため息をついた。

 

「えっと……機甲兵はアリサさんの実家で作られたんですよね?」

 

「そうか。ユウナは知らなかったんだな」

 

「ラインフォルトと一口に言ってもそれぞれ部門別に別れているのよ。たとえばARCUS関連は会長直轄の第四開発室と言った具合にね」

 

「そういえばアリサさんは第四開発室長でしたよね!」

 

「あはは……そんなに偉い立場じゃないんだけど。問題は開発に携わった第一開発室が貴族派寄りで、しかも第五開発室が完全に取り込まれていたってことなの。彼らは鉄鉱石の横流しを行ってフレームや装甲に必要な鋼鉄を揃えたのよ」

 

「横流し……叔父の主導によってですね。実行していたのはログナー侯と領邦軍によるものでした」

 

「確か、アハツェン2千台分だっけ?」

 

「なっ!?」

 

「に、2千台分!?」

 

「当時、ラインフォルトが開発した新型戦車ですね……」

 

「ううん、実際はそれ以上の数よ」

 

「あり得ねぇ……」

 

「…………………」

 

二代目Ⅶ組が圧倒される中、ミュゼは申し訳なさそうに俯く。

 

「ミュゼさん……」

 

「貴女が気にすることではない」

 

「はい……ありがとうございます……」

 

「そうよ。だいたい母様だって気づいていて放っておいたんだから」

 

「ほ、放っておいた……?」

 

「どんな形であれ、ラインフォルトの利益につながることには変わりないからよ……」

 

アリサはため息混じりに言った。

 

「な………」

 

「聞きしに勝るビジネスライクですね」

 

(そうでもなければ巨大資本のラインフォルトを動かすことも出来ないんだろうな)

 

 

 

「……話が脱線したな。こちらの攻撃が一切通らず、俺たちは諦めかけていた。その時、頭の中に声が響いた。『汝、力を求めるか』とな。そして俺はあいつを呼び出した」

 

「それが、灰の騎神ヴァリマール……」

 

「ああ」

 

「ただの騎士人形かと思ったら、リィンが乗り込んで本当に動きだしたんだからな」

 

「あの時の衝撃は未だに忘れられん。帝国に伝わる巨大な騎士の伝承そのものだったからな」

 

「そんな伝承があるんですか?」

 

「帝国の伝承の中でもお伽噺と類されるもの。今思えば、それは騎神のことだったんですね」

 

「詳しくはおばあちゃんが知っているはずです」

 

「伝承のことは分かったが、教官はどうなった?」

 

「ああ。リィンが呼び出した直後に、シュピーゲルを撃退したんだったな」

 

「現代における、初の人型機動兵器同士による戦闘……」

 

「確かあの時、ヴァリマールは武器すら持っていなかったんじゃなかった?」

 

「素手で機甲兵を倒したということですか!?」

 

「先ほどの徒手空拳か」

 

「ああ。その通りだ」

 

リィンは頭を掻きながら言った。そこからすぐに真顔になった。

 

「その後、オルディーネに乗ったクロウが現れた」

 

『っ!』

 

二代目Ⅶ組の表情が引き締まる。

 

「そしてその時初めて知ったんだ。当時、帝国政府が血眼で探していた、帝国解放戦線リーダー《C》の正体がクロウ・アームブラスト本人だということに」

 

「帝国解放戦線……通商会議の時にオルキスタワーを襲った……」

 

「それは帝国解放戦線幹部《G》こと、ミヒャエル・ギデオンですね」

 

「やっぱり知っていたんだな?」

 

「はい、視えていました。そして、2年前の夏至祭でその方が姫様やエリゼ先輩を拐い、あろうことか人質に取ることも……」

 

「そうか……」

 

「君が気に病むことじゃない」

 

「すみません……」

 

ミュゼは再び俯く。

 

「それはそうとよ、あんたあの蒼の騎士と戦ったのかよ?」

 

「ああ、戦った」

 

「武器はどうしたんだよ?」

 

「わざわざ機甲兵用のブレードを投げ渡してくれてな。何とか膝をつかせる所まではいったんだ」

 

「勝ったんですか!」

 

「いや……」

 

リィンは首を横に振る。

 

「……第二形態とやらか」

 

キリコは頭の中で整理した結論を口にした。

 

「さすがに分かるか。勝ったと思った矢先、オルディーネは第二形態に変化した。そしてたった一撃で敗北したんだ」

 

「たった一撃で……」

 

「まあ、俺が乗ったばかりなのに対して、向こうは3年以上乗り回しているそうだからな。地力の差があったんだ」

 

(確かに3年以上の差はデカいな)

 

「でも、最終的にはヴァリマールが勝ったんですよね?」

 

「ああ。煌魔城の最上階でな」

 

リィンは物言わぬヴァリマールを見つめる。

 

「さあ、そろそろ切り換えよう。クロウだけじゃなく、鉄機隊も待っているはずだ」

 

「ここからは死地ですね」

 

「覚悟はできています」

 

「あの男からも色々と聞くこともある」

 

「トワ会長の元にも連れてかなくちゃ」

 

Ⅶ組も気持ちを引き締める。

 

「キリコも大丈夫か?」

 

「無論だ」

 

キリコもアーマーマグナムに弾丸を装填する。

 

「ちっとは動揺したらどうなんだよ」

 

「そんな暇はない」

 

「スイッチの切り換えが速すぎないか?」

 

「かもな」

 

「やっぱりクールでドライね……」

 

「おそらく、そういう風に自身を律してきたのかもしれません」

 

(でも、それでは……)

 

「よし、では──」

 

「リィン、忘れているぞ」

 

ラウラが待ったをかける。

 

「そうだね」

 

「いつものアレがないと」

 

「さっさと済ませるがいい」

 

「……ああ、わかった」

 

リィンは前に出て、Ⅶ組の方を向く。

 

「トールズⅦ組、これより陽霊窟へ突入する。この先に待っているのは蒼の騎神と鉄機隊、命のかかった戦いだ。みんなでこの死地を乗りこえるぞ!」

 

『おおっ!!』

 

Ⅶ組は陽霊窟に入った。

 

 

 

「よお、待ってたぜ」

 

クロウは腕を組み、立っていた。

 

「すまない。少し遅くなった」

 

「ったりまえだ。つーか、入り口の真ん前で何こっ恥ずかしいこと暴露してくれてんだよ」

 

「実際本当のことだろう?留年ギリギリで泣きついたことも、後輩から50ミラくすねたことも」

 

「泣きついた?」

 

「あいつ、サボり過ぎて単位不足で落第寸前の所をあたしに泣きついてきて、Ⅶ組に一時編入することになったのよ」

 

「うわ~~……」

 

「では、50ミラをくすねたというのは?」

 

「トールズ本校に入学したての頃、俺が持っていた50ミラでコイントスをやってな。両手に掴んだかと思えば、持っていた袋に落としていたんだ。勿論、返してもらっていない」

 

「へぇ?上手いこと企んだもんだな?」

 

「セ、セコい……」

 

「言われてるわよ~、クロウ先輩?」

 

「笑いながら言うんじゃねぇよ!」

 

クロウは憤慨しながらも、キリコに視線をうつす。

 

「お前さんも久しぶりだな」

 

「……蒼のジークフリードか」

 

「だからよ、それはマジの黒歴史だから止めろっての」

 

「そう言う割には満更でもなさそうだったが?」

 

「目ぇ腐ってんのかこの野郎!」

 

「死体に言われる筋合いはないな」

 

「死体とか言うんじゃねぇ!!」

 

「……今ならあの世に帰るのを手伝ってやってもいい」

 

「上等だてめぇ!!アストラギウスとやらに送り返してやるよ!!!」

 

真顔のキリコの挑発にクロウは怒りを爆発させる。

 

「キリコ君……」

 

「わざとやっているようにしか見えません」

 

「ま、喧嘩ってのは如何にてめぇのペースに乗せるかどうかで勝ち負けが決まるもんだからな」

 

「確かに、ここまでの主導権は確実にキリコさんが握っていますね♪」

 

「それで良いのか……?」

 

クルトは呆れるしかなかった。

 

「ゴホン、そろそろ宜しいでしょうか?」

 

クロウの後ろから鉄機隊の面々が歩いて来た。

 

「まったく、どいつもこいつも低俗な争いを」

 

「口喧嘩は完全にキリコ君のペースね」

 

「蒼の騎士殿、とにかく一旦落ち着かれよ。それでは話すら出来ぬぞ」

 

アイネスは憤慨するクロウを諌める。

 

「……チッ、それもそうだな。どうせどちらかはいなくなるんだからな」

 

『!?』

 

クロウの一言にⅦ組は衝撃を受ける。

 

「どちらかはいなくなる、だと?」

 

「ど、どういうことだ!?」

 

「……やはりそうなんだな?」

 

周りが動揺に包まれる中、リィンは直感的に気づいた。

 

「リィンさん……」

 

「贄であるが故に、ですね」

 

「ああ。そういうことみたいだ」

 

「……なんとなくは気づいていたみてぇだな?」

 

クロウはⅦ組と距離を詰める。

 

「元々、騎神が巨イナル一から分かれてできた存在なのは知っているな?」

 

「ああ。ローゼリアさんから聞いている」

 

「それが一つに戻ろうとしてるって言ったら信じるか?」

 

「え!?」

 

「一つに戻る……?」

 

「……巨イナル一は二つの眷属の闘争の果てに精製された一つの鋼。それが再び現世に顕れるということでしょうか」

 

「ヴィータから聞いたとおりの慧眼だな。ならこの闘いの結末も見えてんじゃねぇか?」

 

「さあ?どうでしょう?」

 

ミュゼは微笑んだ。

 

 

 

「本題はこっからだ。七体の騎神が集まってもいきなり巨イナル一になるわけじゃねぇ。そこに至るまでにはいくつかの手順を踏んでいく必要がある」

 

「手順……」

 

「……闘うんだな?最後の一体になるまで」

 

「ああ……」

 

リィンの直感とも言える答えにクロウは頷く。

 

「そもそも巨イナル一は今で言う魔女と地精が争った末に出来ちまった。そしてその時の闘争の記憶は本能という形で確実に受け継がれている」

 

(そして、その根本的な原因は……!)

 

キリコはクロウの話を聞き、目付きが鋭くなる。

 

「だから必要なのさ。騎神同士の殺し合いがな」

 

「で、でもっ!どうにかならないんですか!?」

 

「無理だ。全ての騎神とその起動者が揃った今、《相克》と呼ばれる闘いの火蓋は切って落とされた。これが騎神に関わっちまった者の定めだ」

 

「そんな……!」

 

「……………………」

 

周りがうなだれる中、リィンは顔を上げた。

 

「なら、煌魔城での闘いはどうなんだ?」

 

「ん?」

 

「煌魔城の最上階で俺とクロウは闘い、その後に魔王となった緋の騎神と闘っただろう。あれは相克とやらなんじゃないのか?」

 

「あん時はまだ金の騎神が目覚めてなかったからな。相克としてはノーカウントらしい。その証拠もあるしな」

 

「証拠?」

 

「……そろそろ時間切れだ」

 

クロウは唐突に話を打ち切った。

 

「クロウ!」

 

「お話はここまでだ。それ以上が欲しけりゃ……!」

 

クロウはダブルセイバーを取り出す。

 

「……実力で来い、か」

 

リィンは根源たる虚無の剣を抜刀する。

 

「きょ、教官……」

 

「リィン……クロウも……」

 

「いいんだな?」

 

「ああ。だが、このままフェードアウトなんてさせない。いい加減戻って来てもらうぞ」

 

「言ってろ。てめぇらも覚悟決めろ!」

 

クロウはⅦ組に殺気を飛ばす。

 

「問答無用か……!」

 

「言われなくとも!」

 

Ⅶ組はそれぞれの得物を取り出す。

 

「私たちも参りましょう」

 

「心得た!」

 

「手加減は無用ね」

 

鉄機隊も得物を構える。

 

「二代目Ⅶ組は俺と!初代Ⅶ組は鉄機隊を頼んだ!」

 

『はいっ!』

 

『おおっ!』

 

相克の幕が開く。

 

 

 

「くらえや!ランブルスマッシュⅡ!」

 

アッシュが飛びかかり、ヴァリアブルアクスを振り下ろす。

 

「甘いっつの」

 

クロウはそれをかわし、ダブルセイバーで薙ぎ払う。

 

「ぐおっ!?」

 

アッシュはたたらを踏む。

 

「アーマーブレイクⅡ」

 

その隙を突いて、キリコのアーマーマグナムが火を吹く。

 

「おっと!危ねぇ危ねぇ、まともに当たったら穴が開くどころじゃねぇな」

 

クロウは弾丸をかろうじて回避し、頬の血を拭う。

 

「お返しさせてもらうぜ!ネメシスバレット!」

 

クロウは武装をダブルセイバーから二丁拳銃に変え、発砲する。

 

「これは……」

 

銃弾を掠めたキリコは、戦術リンクのラインが途切れていることに気づく。

 

「チッ!味な真似しやがる!」

 

「なら、シルバーソーン!」

 

「エアリアル!」

 

アルティナとクルトのアーツが叩き込まれる。

 

「うおっ!?」

 

「そこだ!業刃乱舞!」

 

クルトは踊るような剣技をくりだす。

 

「ブレイブスマッシュ!」

 

ユウナがキリコと入れ替わり突っ込む。

 

「気合いだけじゃな!」

 

クロウはユウナのクラフト技を回避した。

 

「教官!」

 

「二ノ型、疾風!」

 

リィンがクロウめがけて斬り込んだ。

 

「悪ぃな。見えてるぜ!」

 

クロウは再びダブルセイバーに持ち替え、リィンの太刀を受け止める。

 

「くっ!?」

 

「……チッ………!」

 

リィンと打ち合ったクロウは思わず舌打ちした。

 

(もう少し追い込む必要があるか……)

 

 

 

一方、初代Ⅶ組は鉄機隊と刃を交えていた。

 

「兜割り!」

 

「洸閃牙!」

 

アイネスのハルバードとラウラの大剣が激しくぶつかり合う。

 

「メデューサアロー!」

 

「しまっ……!」

 

エンネアの矢を受けたエリオットは石化した。

 

「キュリア!」

 

すかさずマキアスが治療アーツをかける。

 

「アークスライサー!」

 

同時にユーシスが斬り込む。

 

「甘々ですわ!」

 

デュバリィが盾で受け止める。

 

「豪炎剣!」

 

炎を纏った剣で反撃に出る。

 

「させるかっ!」

 

ガイウスが横から槍を打ち込む。

 

「チイッ!」

 

デュバリィは一旦下がる。

 

「もらった」

 

下がった位置にフィーが吶貫する。

 

「甘いな」

 

いつの間にか移動していたアイネスがハルバードをフィーめがけて振り下ろす。

 

「エクスクルセイド!」

 

「フレアバタフライ!」

 

アリサとエマが空と火属性アーツを放つ。

 

「っ!やるな……!」

 

アイネスはアーツをギリギリで防ぐ。

 

「アイネス!なら……!」

 

「させないわ!真・鳴神!」

 

サラはクラフト技をエンネアの足元に撃ち込む。これが効を奏し、エンネアの狙いが大きく外れた。

 

「さすがに一筋縄ではいきませんか……!」

 

「よく言う。数の差をものともしないとは」

 

「執行者と同等と言われるだけあるわね……!」

 

「だが、俺たちも一歩も引くわけにはいかん」

 

「それはこちらとて同じこと!」

 

「いくわよ……!」

 

鉄機隊はさらに士気を高める。

 

「向こうも本気のようですね……!」

 

「ならこちらもギアを上げるだけ……!」

 

「いくわよ!あんたたち!」

 

『おおっ!』

 

初代Ⅶ組も気合いを入れる。

 

 

 

「……どうしたよリィン?その程度か?」

 

「はぁ…はぁ…はぁ……」

 

リィンはクロウに追い詰められ、膝をついていた。

 

「きょ、教官……!」

 

「教官、か。大層な肩書きだな……でもよ!」

 

クロウはダブルセイバーを手に、息を切らせているユウナに斬りかかる。

 

「させない!」

 

クルトは双剣を交差させて受け止める。

 

「ほら、足元がお留守だ」

 

クロウは足払いをかけて、クルトを転ばせる。

 

「まず一人……」

 

「させません!オワゾーブルー!」

 

ミュゼがクラフト技を放つ。

 

「っと」

 

クロウはクラフト技をかわし、そのままカウンターを仕掛ける。

 

「ハンタースロー」

 

キリコはクロウの動きに合わせてクラフト技を放つ。

 

「おおっと!抜け目ねぇな」

 

クロウはダブルセイバーを回転させて防ぐ。

 

「よそ見してんじゃねぇっ!」

 

アッシュは大鎌で斬りかかる。

 

「してねぇよ」

 

クロウは屈んでかわす。さらにアッパーカットでアッシュの顎を打ち抜く。

 

「ぐはっ!?」

 

「ちまちまやっても面倒だな」

 

「っ!来ます!」

 

いやな気配を感じ取ったアルティナはクラウ=ソラスでガードを張ろうとした。

 

「遅ぇよ。クロス・リベリオン!!」

 

『!?』

 

クロウのSクラフトが二代目Ⅶ組に直撃する。

 

「そ、そんな……」

 

「これが……蒼の騎士………」

 

「以前よりも強くなっています……」

 

「く、くそが……!」

 

「このままでは……!」

 

「…………………」

 

二代目Ⅶ組は全員膝をつかされた。

 

「ま、力を出し惜しみする教官様の教え子なんざこんなもんか」

 

「出し惜しみ……?」

 

「ああ」

 

クロウはリィンに目をやる。

 

「教え子共に渇を入れられたにもかかわらず、この期に及んで力を引っ込めてる有り様じゃあなあ」

 

「なんだと……!」

 

「俺を騙せると思うなよ。さっき打ち合った時、迷いを感じたからな。わかってんだろ?」

 

「迷い……?」

 

(鬼の力のことか)

 

キリコはクロウの言う迷いにあたりをつける。

 

「………………………」

 

心の内を見透かされたのか、リィンは剣を握りしめる。

 

「てめぇの力はてめぇ自身の問題だろうが。拒絶して、逃げて、先延ばしにしたところでなんになるんだ?」

 

(俺自身の……)

 

「いつまでもビビってんなら、仕方ねぇ。こいつらを八つ裂きにするまでだ」

 

クロウは殺気と共にダブルセイバーを構え、二代目Ⅶ組を見据える。

 

「まずは………」

 

「まずいっ!」

 

「ぼ、防御を……」

 

二代目Ⅶ組は防御体勢を取ろうとする。

 

(そうだ、この力は……)

 

「くらえやっ!」

 

クロウは斬りかかった。

 

「!」

 

キリコは大型ナイフを手に、立ちはだかる。

 

「キリコさん!」

 

「いけない!」

 

「くそおぉぉぉっ!」

 

ダブルセイバーの刃がキリコに迫る。

 

(これ以上、逃げてどうする!)

 

「!」

 

刃が迫る刹那、キリコは動きを止める。

 

(遅いぞ)

 

キリコの目の前には、鬼の力を解放したリィンがダブルセイバーの刃を根源たる虚無の剣で受け止めていた。

 

 

 

「教官……!」

 

「間に合いましたか……!」

 

ユウナとミュゼは安堵した。

 

「リィン……」

 

「一時はどうなるかと思ったが」

 

「まったく、人騒がせな」

 

初代Ⅶ組も差異はあれど、リィンの様子にほっとした。

 

「ちょっと!いつまでよそ見してやがるんですの!?」

 

「待ってたくせによく言うよね」

 

「神速殿もリィンのことが心配だったのであろ」

 

「ば、馬鹿も休み休み言いやがれですわ!なんであのような男の心配などを……!」

 

「顔に出ているぞ」

 

「デュバリィってば、リィン君に惚れちゃった?」

 

「ブッた斬りますわよ!!」

 

デュバリィは顔を赤くしながら吼える。

 

「まあそれはともかく、さすがはトールズⅦ組ね」

 

「我らの攻勢を凌いだばかりか、打って出るとはな」

 

エンネアとアイネスは初代Ⅶ組を称賛した。

 

「……そちらもなかなかの腕前だ」

 

「数の差では私たちが有利でしたが、質はそちらが上でしたね」

 

「実際、危なかったもんね……」

 

「それに、星洸陣……だったかしら。連携力もあんたたちに分があったわね」

 

「たとえ不利な状況に陥ろうとも、力を合わせれば貫けないものはない。それは俺たちが一番わかっていることだからな」

 

「ええ……。あなた方の強みはその絆の強さでしょう」

 

「そしてそれは彼らも同じ……」

 

初代Ⅶ組と鉄機隊は二代目Ⅶ組を見つめる。

 

 

 

「はああああっ!」

 

「はっ!やりゃあ出来んじゃねぇか!」

 

リィンとクロウは互いに打ち合う。

 

「ああ、大分痛い所を突かれたからな!」

 

「なら遠慮はいらねえ!行くぜ!リィン!!」

 

「来い!クロウ・アームブラスト!!」

 

剣戟はなお激しさを増す。

 

「すごい……!」

 

「なんて剣戟だ……」

 

「ですが、このままでは……」

 

「また暴走すんのがオチだぜ」

 

「いや……」

 

「キリコさん?」

 

ミュゼたちはキリコを見る。

 

「顔つきが変わった。もう少し様子を見る」

 

「そんな悠長な……」

 

ユウナは呆れる。

 

「ですが、キリコさんのおっしゃるとおりかと」

 

「確かに、今の教官からは迷いを一切感じさせない……」

 

「だが、武装は解除するな。アルティナ、いつでも撃てるようにしておけ」

 

「了解しました」

 

アルティナはクラウ=ソラスの照準をクロウに合わせる。

 

「仕切ってんじゃねぇよ」

 

アッシュはぶつくさ言いつつも、キリコに従った。

 

 

 

「へっ、なかなかやるじゃねぇか」

 

「はぁ…はぁ……!」

 

「だがそろそろ時間だろ?」

 

「そうだな。だから……」

 

リィンは根源たる虚無の剣を構える。

 

「この一刀で終わらせる」

 

「面白れぇ。来やがれ、リィン!」

 

「おおおおっ!」

 

リィンはクロウめがけて突っ込む。対するクロウも迎撃体勢を取る。

 

 

 

「灰の太刀・黒葉!!」

 

 

 

リィンの全身全霊の一刀がクロウに直撃する。

 

「へへ……これで……」

 

クロウは笑みを浮かべ膝をつく。

 




次回、相克の決着、そして新たな発掘です。

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