英雄伝説 異能の軌跡Ⅱ   作:ボルトメン

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月の霊場②

「まさか、これほどとはな……」

 

月の霊場の攻略を開始した新旧Ⅶ組は、霊脈の活性化を受けて強化された魔物に手こずっていた。

 

「霊窟の魔物とは格が違う……!」

 

「ここは霊脈の中枢とも言うべき場所です。それ故に影響力が違うのでしょう」

 

「それって、奥に進めば進むほど敵が強くなるってことですか?」

 

「考えられないことではないかと……」

 

「チッ!萎えやがらせるぜ」

 

「……ここの造りは然程複雑ではないようだ。無視して突き進むのも一つの手だと思いますが」

 

キリコはリィンに問いかけた。

 

「確かにキリコの言うことも一理ある」

 

リィンはキリコの目を見た。

 

「だがこれはローゼリアさんの試練でもある。俺たちⅦ組がこれから遭遇するであろう相手と互角に渡り合えるのかどうかのな」

 

「では全て対処すると?」

 

「そうだ。ローゼリアさんも死ぬ気で乗り越えて来いとも言ってたしな」

 

「そういうことならば俺から言うことはありません」

 

「ありがとうキリコ。君が先のことや皆のことを考えて意見してくれたのにな」

 

「気になさらず」

 

(キリコさん……)

 

「僕たちのことなら気にしないで」

 

「ええ。この程度でバテるほどやわじゃないわ」

 

エリオットとアリサは笑みを浮かべる。

 

「もちろん、あたしたちも!」

 

「僕たちももっと強くなっているはずだからな」

 

「テメェこそ休んでろよ」

 

「では、キリコさんはクルトさんと交代してください。後詰めはクロウさんとマキアスさん、お願いします」

 

「おう、任せろ!」

 

「心得た!」

 

アルティナ主導で新旧Ⅶ組は陣形を変えた。

 

「では、行くとしよう」

 

「まずはあのアマね……!」

 

「わかるのか?」

 

「あのアマ……これ見よがしに魔力を見せつけちゃって……!」

 

セリーヌは遥か先を睨み付ける。

 

「もう……セリーヌ」

 

新旧Ⅶ組はエマとセリーヌを先頭に探索を再開した。

 

 

 

「な~~んて、思ってたら面白いんだけれどね」

 

「フフ……」

 

月の霊場の中間では、ヴィータとオーレリアが談笑していた。

 

「魔女殿は少々、妹分を弄び過ぎではないかな?」

 

「良いんですよ。あれは昔から堅すぎるというか生真面目ぶっているので。リィン君の前ではデレデレしてるくせに」

 

「フフ、シュバルツァーの人徳だからこそなし得ることだろうが」

 

オーレリアは笑みを浮かべた。

 

「それより、久方ぶりに魔女殿の本気が見られそうだな」

 

「フフフ、お眼鏡に叶えばよろしいのですが」

 

ヴィータは扇子を取り出した。

 

「もし、リィン君たちが敗れるようなら……」

 

「所詮、その程度でしかなかったということだ。その時は斬って捨てるだけよ」

 

オーレリアは奥へと進んだ。

 

(斬って捨てる……おそらく二重の意味ね)

 

ヴィータは額の汗を拭った。

 

 

 

「リードスナイプ」

 

月の霊場を進む新旧Ⅶ組は襲い来る魔物を次々に倒していった。

 

キリコの後方からのクラフト技が決まり、戦闘が終了した。

 

「キリコさん、お疲れ様です」

 

「ああ」

 

「良い腕してるね」

 

「本職のスナイパーには及ばない。それに教官とウォーゼルが引き付けていたから決めることができた」

 

「お役に立てたのなら何よりだ」

 

ガイウスは微笑んだ。

 

「とはいえ相当の距離だぞ、今キリコが撃った地点は」

 

「少しくらい得意気になってもいいのに」

 

「それがキリコの美点なのであろ」

 

「そうですね。キリコさんは決してそのようなことはなさいませんから」

 

ミュゼはキリコを見つめる。

 

「ミュゼ……」

 

「大丈夫です。それよりそろそろでしょうか?」

 

「ええ。姉さんの魔力が強く感じられます」

 

「そういえば……」

 

ユウナが挙手をした。

 

「クロチルダさんって、どんな魔法を使うんですか?」

 

「ヴィータがよく使うのは、唄を用いた秘術だな。1年半前に煌魔城を呼び出したのも魔王の凱歌(ルシフェン・リート)とか言う唄だったな」

 

「そ、そうだったんですか!?」

 

ユウナは風聞で聞いた話の真実に驚きを隠せなかった。

 

「改めて聞くと厄介ですね」

 

「ああ。帝国オペラの主演女優なら納得だが」

 

「一応、あいつの名誉のために言っとくが、ステージでは秘術を用いたことは一度もねぇそうだ」

 

「そっちは実力で掴んだんだな」

 

「ハン、どうだか」

 

クロウとリィンの言葉にセリーヌは鼻を鳴らす。

 

 

 

「それで、もう一つの方は?」

 

クルトはリィンに問いかけた。

 

「そうだな………アーベントタイムという番組は知ってるか?」

 

「ええ、存じていますが」

 

「ラジオパーソナリティーの名前は?」

 

「ミスティさんでしょう?」

 

「そのミスティさんとクロチルダさんが同一人物だと言ったら?」

 

「……え………」

 

クルトは目を白黒させた。

 

「特定の人物を除いて、自身を同一人物だと認識させないようにする。そうすることで、エマとセリーヌにさえ勘づかれることなく、ラジオのパーソナリティーを務めていたそうなんだ」

 

「ちなみに、今年の四月から放送されていたアーベントタイムはクロチルダさんが認識を操作してあたかも目の前で喋っているかのようにしていたんだそうだ」

 

「なんだそりゃ……」

 

「すごいよね……」

 

「で、でもどうしてラジオのパーソナリティーを……?」

 

「本人曰く息抜きらしい」

 

「息抜き、ですか……」

 

「まったく!秘術の無駄遣いじゃない!」

 

「まあまあ」

 

憤慨するセリーヌをミュゼが宥めた。

 

「アーベントタイム、また聴きたいですね」

 

「ああ。学生時代、ラジオを聴きながらエマ君に負けまいと机に向かっていたことを思い出すよ」

 

「ったく、ガリ勉パイセンが……」

 

「マキアス、確か限定のステッカーが当たったんだよね」

 

「それは……少々興味がありますね」

 

「クルト君もクロチルダさんのファンなんだ……」

 

「まあ、帝都市民だったらヴィータ・クロチルダの名を知らない人はいないだろうし」

 

「あはは、僕もレコードを何枚か持ってるしね」

 

「まったく、男子ときたら……」

 

「まあまあ」

 

「良いんじゃない?」

 

「うむ。我らでは理解出来ぬ何かがあるのだろう」

 

「ハハ……じゃあ、そろそろ出発しよう」

 

『!』

 

リィンの一言に、二代目Ⅶ組は頭を切り換えた。

 

「分かってるとは思うが、ヴィータは結社の最高幹部に名を連ねる凄腕だ。油断すんじゃねぇぞ」

 

クロウは念を押すように言った。

 

「はい!」

 

「覚悟は出来ています……!」

 

「引き下がるわけにはいきません……!」

 

「相手にとって不足はねぇな!」

 

二代目Ⅶ組は闘志を燃やした。

 

(使わせてもらう時が参りました……)

 

ミュゼは装飾が彫られた小型拳銃を取り出した。

 

「その銃は……」

 

小型拳銃を見たエマはミュゼに問いかけた。

 

「お守りにとクロチルダさんが持たせてくれた物です。特別なまじないがかけてあるとか」

 

「そうですか……」

 

(そんなもので自害するつもりだったのか……)

 

キリコはアーマーマグナムに弾丸を装填しながらミュゼとエマの会話を聞いていた。

 

「では行こう」

 

新旧Ⅶ組はヴィータが待つ場所へと歩き出した。

 

 

 

「そろそろヴィータと会いまみえる頃かのう」

 

最奥で待つローゼリアは月の霊場の入り口の方向を見つめた。

 

「ここは我ら魔女の眷属が穢れを払う場であり、修行を積んだ魔女への試練の場。見事これを打ち破れるならば、エマを次の長に指名出来るというもの……」

 

ローゼリアは微笑みながら、孫娘を想った。

 

「しかし退屈じゃのう。椅子とテーブルとティーセット一式を持ってくるんじゃったわい」

 

ローゼリアはため息をついた。

 

 

 

「ふふ。来たわね」

 

ヴィータは微笑みながら新旧Ⅶ組を迎えた。

 

「早速始めるとしましょうか?」

 

「やれやれ……さっそく臨戦体勢かよ」

 

「どうやらお忙しい最中に来て下さったみたいですね?」

 

「ええ、千の陽炎の準備に他の使徒たちへの対処もしているわ。でも──ここの水鏡の真実が明らかになるなら安いものでしょう。かつて巡回魔女だったイソラさんの遺志でもあるしね」

 

「お母さんの……」

 

「そういやアンタ、結構懐いていたみたいね?」

 

「そのイソラさんというのがエマさんのお母さん……」

 

「先々代の巡回魔女というわけですか」

 

「ええ──魔女としての使命や相克についても調べていた人。あの人の影響で私も独自に調べ始め、盟主との邂逅にも至った。ならばこれはあの人やグリアノスへの最後の手向けでしょう」

 

「え……」

 

「……兄上が斬った………」

 

エマとユーシスの頭に蒼い鳥が浮かんだ。

 

「?」

 

キリコは首を傾げた。

 

「キリコ君は知らなくて当然ね。私もセリーヌと同じ使い魔を持っていたのよ。ちなみに婆様がちんちくりんなのは、グリアノスとセリーヌを生み出したからなのよ」

 

キリコの疑問を察したヴィータが説明をした。

 

「なるほどな……」

 

「それはそうと、エマの母親はともかく、グリアノスまでどうして……!?」

 

「ふふ、ここの水鏡は800年前に役割を果たした。そのあたりはセリーヌ──婆様から聞くといいでしょう。私と、この後待ち受けるもう一人の試練を乗り越えてね」

 

ヴィータから蒼い霊力が吹き上がった。

 

「くっ……」

 

「……来ます……!」

 

「使徒第二柱──《蒼の深淵》の全力……!」

 

「いや、前よりも強い波動を感じる!」

 

リィンは根源たる虚無の剣を盾にしながら叫んだ。

 

「チッ……強化されてやがんのか!」

 

「さあ──見せてもらうわ。エマ、リィン君、クロウ、キリコ君たちも。隠された真実に至り──相克を乗り越えられるか否かを!」

 

 

 

「魔剣舞踏!」

 

ヴィータが召喚した魔剣が斬りかかった。

 

「くっ!」

 

「おのれ!」

 

リィンとユーシスがそれぞれの得物で叩き落とした。

 

「突っ込む、真・絶光石火!」

 

「続くぜ、ランブルスマッシュⅡ!」

 

サラとアッシュが反撃に撃って出た。

 

「ふふ……」

 

ヴィータは落ち着きをはらって、扇を振り上げた。

 

「「!?」」

 

その瞬間、魔法陣が顕れ、二人は凍結した。

 

「無間氷獄……如何かしら?」

 

「アッシュ!サラさん!」

 

「ならば、レキュリア!」

 

ガイウスが治療のアーツを詠唱し、二人を助け出した。

 

「真・双剋刃!」

 

「真・蒼列斬!」

 

同時に、クルトとラウラが飛ぶ斬撃をくり出した。

 

「行きますよ、ドレッドブレイカー!」

 

「リードスナイプ」

 

立て続けにマキアスとキリコがクラフト技を放った。

 

「なかなかやるわね。でもこれならどう?」

 

ヴィータは魔導の障壁を張り、攻撃を防いだ。

 

「それは──」

 

「読んでいました……!」

 

「ゼルエル・カノン!」

 

「ダイヤモンド・ノヴァ!」

 

エマとミュゼは火属性と水属性の上位アーツを詠唱した。

 

「っ!」

 

ヴィータは扇を振り、上位アーツの威力を抑える。

 

だが無効化には至らず、ダメージを負った。

 

「逃がさないわ、ロゼッタアロー!」

 

「ブレイブスマッシュⅡ!」

 

「ブリューナクⅡ、照射!」

 

アリサとユウナとアルティナが追い撃ちを仕掛けた。

 

「くうううっ!!」

 

ヴィータは膝をついた。

 

「や、やった──」

 

「違います!」

 

エマが叫んだと同時に、ヴィータの姿が消えた。

 

「これは!?」

 

「認識を操作して……!」

 

「正確よ♥️」

 

無傷のヴィータは新旧Ⅶ組の背後に回っていた。

 

 

 

「いつの間に……!」

 

「これはどうかしら?」

 

ヴィータは扇を振り上げ、姿を消した。

 

「どこに……」

 

「気をつけてください。何か仕掛けがあるはずです!」

 

「そこよっ!」

 

ユウナはガンブレイカーを構え、突っ込んだ。

 

「な!?」

 

不意を突かれたキリコはギリギリで回避した。

 

「そこぉ!」

 

ユウナはガンブレイカーをガンナーモードに切り換え、銃撃を放とうとした。

 

「させん!」

 

ラウラは羽交い締めをかけてユウナの動きを封じた。

 

「ちょ、なんでですか!?」

 

「ジッとしてなさい!」

 

セリーヌはユウナに魔術をかけた。

 

「あ、あれ?キリコ君……?」

 

「目が覚めたみてぇだな」

 

「危うくキリコを蜂の巣にするところだったんだ」

 

「う、嘘……」

 

ユウナの顔色が悪くなった。

 

「おそらく、アンタの目には他人があの女に映るように認識を歪ませられたんだわ」

 

「チッ!やってくれるぜ!」

 

クロウはダブルセイバーから二丁拳銃に切り換えながら舌打ちをした。

 

「キリコ君、その……」

 

「気にするな。それより来るぞ」

 

キリコの頬を汗が伝う。

 

「っ!この感じは……!」

 

セリーヌは身震いを感じた。

 

「これはかわせるかしら?」

 

ヴィータは全身に膨大な霊力を滾らせていた。

 

 

 

「これは……!?」

 

「姉さん……まさかそれは!?」

 

「ロストアーツの一つよ」

 

ヴィータは微笑みとともに告げた。

 

「ロストアーツだと?」

 

「その名の通り、今は存在しないアーツのことです。まさかクロチルダさん……」

 

ミュゼは身構えた。

 

「出所は勘弁してね。それより、凌げるかしら?」

 

ヴィータは天から巨大な氷塊を降らせた。

 

「なら……パレス・オブ・エレギオン!」

 

エマはⅦ組メンバー全員に魔術の障壁を張った。

 

氷塊は障壁に阻まれて粉々に砕けた。

 

「やった!」

 

「反撃開始だ──」

 

「そうはいかないわね」

 

再びヴィータから霊力が迸った。

 

「何!?」

 

「本来、ロストアーツは一度発動したら霊力のチャージ時間を要するはず。連続して発動出来るなんてあり得ない!」

 

「……ロストアーツそのものでなかったとしたら?」

 

キリコは口を開いた。

 

「さすがの慧眼ね。これは十三工房が作り上げたニセモノよ」

 

ヴィータは三つの色が混ざったようなクォーツを取り出した。

 

「さすがに本物には及ばなくてね。一回使ったらもうただの結晶に過ぎないの」

 

ヴィータが言い終わるや否や、擬似クォーツは砕けた。

 

「そんなものが……」

 

「結社の十三工房……なんてものを……」

 

「それに婆様から教わっていないのかしら?」

 

ヴィータはエマとセリーヌを見つめる。

 

「ロストアーツは如何なる手段を用いても決して防げないことを」

 

「え!?」

 

「そ、そうなのか!?」

 

「………………」

 

エマは黙ってしまった。

 

「エマの絶対防御の魔術は見事よ。でもそれはあくまで物理攻撃や現存するアーツに対してだけ。喪われたアーツであるロストアーツの前では無力よ」

 

「っ!」

 

「エマ……」

 

「さて、次は本物を見せてあげる」

 

ヴィータは右手を高く掲げた。

 

Ⅶ組の頭上に、先ほどよりも巨大な氷塊が現れた。

 

「アイシクル・メテオ!」

 

氷塊はゆっくりと落下を始めた。

 

「おいやべぇぞ!」

 

「だ、だが防げないのでは……!」

 

「大ピンチ、だね」

 

Ⅶ組は氷塊を見上げることしか出来なかった。

 

 

 

「………………………」

 

周囲が騒ぐ中、キリコはARCUSⅡに空属性のクオーツをセットした。

 

「キリコさん……?」

 

「……防げないなら、こうするまでだ」

 

「フォルトゥナ」

 

キリコは右手を高く掲げ、空属性のアーツを発動した。

 

「キリコ!?」

 

「どうするつもりだ!?」

 

「防ぐことは出来なくてもアーツである以上、威力を弱めることは出来るはずだ」

 

「それでフォルトゥナを……」

 

「全員一丸でフォルトゥナを使えば半減させることくらいはできるかもしれない」

 

「で、でも……」

 

「やらないでくたばるよりマシだと思うが?」

 

キリコは不安そうなユウナの言葉をバッサリと斬った。

 

「こんな状況になっても……」

 

「相変わらず鉄面皮だな!」

 

「やるなら早い方がいい。時間がないぞ」

 

「確かに当たって砕けろだな。俺は乗ったぜ!」

 

クロウもフォルトゥナをセットして発動した。

 

「まあ、無駄死になど御免被るがな」

 

ユーシスも続いた。

 

「教官」

 

「僕たちも!」

 

「ああ!行くぞ、皆!」

 

Ⅶ組は全員一丸となってフォルトゥナを発動した。

 

「この力も加えさせてもらおう!」

 

さらにガイウスは聖痕を発動させた。

 

「セリーヌ……」

 

「ちょ、何よこんな時に──」

 

「私、諦めない」

 

エマの目に決意が宿った。

 

「エマ……」

 

「やれるのだな?」

 

「はいっ!」

 

エマは魔女の杖を掲げ、障壁を張った。

 

「着弾するぞ!衝撃に備えろ!!」

 

氷塊がⅦ組に直撃した。

 

 

 

「コホッコホッ!さて、どうなったかしら?」

 

土埃を払い、ヴィータはⅦ組を注視した。

 

「っ!?」

 

そして息をのんだ。

 

「な……なんとか……」

 

「抑えられたみたい……」

 

決して低くはないダメージを受けていたが、Ⅶ組は誰一人膝をついていなかった。

 

「まさかロストアーツを凌ぎきるなんてね。でもまだよ!」

 

ヴィータは扇を払い、認識操作の魔術を使った。

 

「またか!」

 

「気をつけろ!無闇に攻撃するな!」

 

「ですが、このまま動かなければ……」

 

「待っているのは殲滅よ。魔剣舞踏!」

 

ヴィータはお構い無しに攻撃を仕掛ける。

 

「くっ!堅牢陣・玄武!」

 

リィンは強化されたブレイブオーダーを起動した。

 

「いつまで耐えられるかしら?」

 

ヴィータはさらに攻撃を激化させた。

 

「ぐっ!」

 

「これじゃ近づけねぇ!」

 

クルトとアッシュは防御しながら奥歯を噛んだ。

 

「せ、せめて一発くらい……!」

 

「だ、ダメです、ユウナさん……!」

 

ガンブレイカーを構えるユウナをアルティナが押し留めた。

 

「悔しいでしょうね。このまま何も出来ずに終わるんだもの。せめて美しく散りなさ──」

 

 

 

「いや、終わるのはお前だ」

 

 

 

ヴィータの背後からキリコが冷徹に告げた。

 

「!?」

 

ヴィータは思わず目を見開いた。

 

「……………………」

 

キリコはアーマーマグナムの銃口をヴィータの首筋に向けた。

 

「どうやって!?」

 

「その前に魔術を解け」

 

「……………………」

 

ヴィータは認識操作の魔術を解いた。

 

「それでいい」

 

「なら教えて?どうやって私の術を……!?」

 

振り返ったヴィータは再び目を見開いた。

 

キリコは左手で大型ナイフの刃を握りしめていた。

 

「まさか痛みで術を解いたの……!?」

 

「これくらいどうということはない。それよりいいのか?」

 

「?」

 

「既に包囲しているぞ」

 

「っ!?」

 

「その通り」

 

「済まないな、キリコ」

 

「これでようやく……」

 

「追い詰めたぜ」

 

ヴィータの後ろにはラウラ、ガイウス、クルト、アッシュが構えていた。

 

「悪ぃな」

 

「これで……!」

 

「チェック、ですね」

 

その周りでクロウ、ユウナ、マキアスがそれぞれの得物の銃口を向ける。

 

「後は合図一つで攻撃する。アーツも控えていることだしな」

 

キリコの視線の先にはアリサ、エリオット、エマ、ユーシス、アルティナ、ミュゼがARCUSⅡを起動させていた。

 

「一応、回収しとくね」

 

フィーがヴィータの扇をひったくった。

 

「どうされますか、クロチルダさん?」

 

「早めに決めた方がいいわよ」

 

リィンとサラが最後通告をした。

 

「……………………」

 

ヴィータは一瞬黙りこみ、フッと息をついた。

 

「悔しいけど、私の負けね」

 

ヴィータは敗北を認めた。

 

 

 

「か、勝ったの……?」

 

「負けを認めたということはそうなのだろう」

 

「…………………」

 

Ⅶ組が得物をしまう中、キリコはアーマーマグナムを下ろさなかった。

 

「ふう……信用されてないのはわかってたんだけどね」

 

ヴィータは肩を竦めた。

 

「キリコさん、大丈夫です」

 

「霊力は感じないわ。百パーセント信用しろとは言わないけど、戦う意思はなさそうよ」

 

「…………………」

 

ミュゼとセリーヌに説得されたキリコはアーマーマグナムを下ろした。

 

「ありがとう。それより左手、早く治療した方が良いんじゃない?」

 

「ああ」

 

キリコは大型ナイフを捨て、ティアラの薬を傷口にかけた。

 

「もう、乱暴なんですから」

 

ミュゼは回復アーツを詠唱した。

 

「とりあえず、第一関門突破ね」

 

「ずいぶんと厚い門だったがな」

 

「煌魔城の時よりも強くなってません?」

 

「ここは試練の場も兼ねているからだと思うわ。もちろん、まだまだ伸び代があったっていうのもあるけど」

 

「伸び代って………」

 

「さりげなく恐ろしいこと言うんじゃねぇよ」

 

クロウはため息をついた。

 

「とにかく、見せてもらったわ。君たちが真実に至り、相克を乗り越えられる力があることを」

 

ヴィータは微笑んだ。

 

「クロチルダさん……」

 

「でも安心するのは早計よ」

 

直後、ヴィータの顔は真剣なものへと変わった。

 

「これから待ち受けている人の試しは私以上に苛烈なものになるはず。気を抜いていると即座に宝剣の前に散ることになるでしょうね」

 

「っ!」

 

「いよいよか……」

 

「光の剣匠閣下と叔父上に習い、帝国二大流派を修めた達人……」

 

「黄金の羅刹……オーレリア・ルグィン」

 

Ⅶ組は霊場の奥を見つめる。

 

 

 

「…………………」

 

治療を終えたキリコは大型ナイフの血糊を拭き取った。

 

「そういや、お前と黄金の羅刹は因縁があんだろ?」

 

「確かにキリコさんと分校長は内戦では敵同士でしたが」

 

「いやそれはてめぇもだろ」

 

アッシュがつっこんだ。

 

「でも、キリコ君は分校長の推薦で第二分校に来たんでしょ?だったら因縁とか関係ないんじゃないの?」

 

「……決着をつけるために呼んだ、ということかもしれないがな」

 

「それは………ありえるかもな」

 

「分校長だもんね……」

 

「分校長の性格を考察すれば……」

 

「俺ら以上にフリーダムだよな……」

 

(反論したいのですが、出てきませんね……)

 

キリコの言葉に二代目Ⅶ組は揃ってため息をついた。

 

「なんだか日常的に苦労してるみたいだね……」

 

「自由闊発、と言えば聞こえは良いのだろうが」

 

「聞いている以上にゴーイングマイウェイな方だな……」

 

「あははは………」

 

リィンから乾いた笑いが出た。

 

 

 

「それじゃ、私は先に行ってるわね」

 

ヴィータの足元に魔法陣が顕れた。

 

「行ってるって、どこに?」

 

「何事も一つってことはないのよ」

 

「はぁ?何を訳のわからないことを……」

 

(一つだけではない……そういうことか?)

 

キリコはヴィータの真意を推察した。

 

「とにかく、気をつけなさい。将軍も婆様も本気で君たちを潰しにかかるでしょうから」

 

「ゴクッ……」

 

「はっ、上等だ」

 

「元より越えなくてはならぬ壁。死力を尽くすのみ……!」

 

「勝率は一割未満と思われます。ですが……!」

 

「僕たち全員の力を合わせれば……!」

 

「貫けぬものなどない……!」

 

Ⅶ組は戦意を高揚させた。

 

「ふふ、頼もしいわね。それとエマ」

 

ヴィータはエマと向き合った。

 

「せいぜい頑張りなさい。イソラさんにも出来なかった呪いの真意に迫りたければ」

 

「わかってる」

 

「なら行きなさい。信じてる子たちと一緒に」

 

「うん、行ってくる」

 

「それともう一つ……」

 

「?」

 

「リィン君と結ばれた時はいつでも駆けつけるから♥️」

 

「は!?」

 

「うふふ、ごきげんよう♪」

 

ヴィータは楽しそうに転移して行った。

 

「………………………」

 

エマはプルプル震えていた。

 

「エ、エマ……」

 

「その……大丈夫ですか?」

 

「………の」

 

「エマさん?」

 

 

 

「姉さんの……ばかああああっ!!」

 

 

 

エマのヴィータの消えた方向に向かって叫んだ。

 

「え、えっと……」

 

「空気読みやがれ」

 

「今はそっとしておきましょう」

 

声をかけようとしたリィンをアッシュとクルトが止めた。

 

「……………………」

 

喧騒をよそに、キリコはオーレリアがいる方向を見つめた。

 

 

 

「…………………」

 

オーレリアは目を瞑り、宝剣を構えた。

 

「っ!!」

 

目を開き、宝剣を振り抜く。

 

そこからアルゼイド流とヴァンダール流の剣法を繰り返し続けた。

 

「はあっ!!」

 

最後に袈裟斬りをし、宝剣を納めた。

 

「漸く身体が温まってきたか。まあⅦ組を相手にするならば当然か」

 

手の甲で汗を拭いながらオーレリアはⅦ組のいる方向を見つめた。

 

「シュバルツァー率いる初代Ⅶ組は言うに及ばず。特に妹弟子と若き守護騎士の力は楽しみだ」

 

「二代目Ⅶ組はもはや雛鳥を過ぎた。クロフォード、ヴァンダール、オライオン、カーバイド。それぞれがどのように成長したか、とくと見せてもらうとしよう。そしてミルディーヌ様も」

 

「そしてキュービィー……深く重く避けられぬ宿命に抗わんとする姿は見事と言う他ない。だが……」

 

オーレリアは宝剣を握りしめる。

 

「他者の想いも踏みにじることも厭わぬ覇道を征くならば、この手で斬る。ミルディーヌ様のために……!」

 

 

 

「っ!?」

 

セリーヌはビクリと震えた。

 

「どうしたんだ、セリーヌ」

 

「トイレなんざねぇぞ」

 

「違うわよこのプリン頭!霊力とは違う何かを感じたのよ」

 

「霊力とは違う何か……」

 

「おそらく分校長──オーレリア・ルグィン将軍の気当たりだろう」

 

「はあ!?」

 

「ま、まだ先ですよね!?」

 

「それだけ本気なのだろう」

 

「今から心折れそうなんだけど……」

 

「それでも行くしかない」

 

キリコは前だけを見ていた。

 

「ま、それしか選択肢ないしね」

 

「ここまで来て今さらケツまくるわけにもいかねぇか」

 

「無様に背を向けるわけにもゆくまい」

 

フィー、クロウ、ラウラはキリコに続いた。

 

「ほらほら、シャキッとしなさい。それともギブアップ?」

 

サラが発破をかけた。

 

「だ、大丈夫です!ちょっとふらっときただけっていうか、皆もそうでしょ!?」

 

「ええ。武者震いというやつです」

 

「いつかは越えなくてはならない目標ですから」

 

「ぶちのめすチャンスが来やがったんだ。有効に使わねぇとなあ」

 

「………………………」

 

アルティナは目を瞑っていた。

 

「アル?」

 

「大丈夫です」

 

アルティナは目を開き、顔を上げた。

 

「越えましょう、全員で……!」

 

「アルティナ……」

 

アルティナの言葉はⅦ組の迷いを断ち切らせた。

 

「では行こう。みんな!」

 

『おおっ!!』

 

Ⅶ組はオーレリアの待つ場所へと歩き出した。

 

 

 

『……………………………………………』

 

Ⅶ組が歩き出した後、ローブを纏った者が現れた。

 

『……コ……ウ……ケイシ……ャ………』

 

ローブを纏った者は呻くように言いながら、Ⅶ組の後を追った。

 




次回、黄金の羅刹との決着です。
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