英雄伝説 異能の軌跡Ⅱ   作:ボルトメン

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黒竜関

七耀暦1206年 8月8日 午前7:00

 

リアンヌたちと別れたキリコは黒銀の鋼都の異名を持つルーレ市内に転移していた。

 

キリコは黒竜関襲撃のため、フェンリールを寄越すようロッチナに通信を入れていた。

 

その間、ルーレ市最下層にある小さな食堂でコーヒーを注文していた。

 

(遅いな………む?)

 

カラランと音が鳴り、食堂にテイタニアが入って来た。

 

「待たせたな」

 

「今来た所だ。それよりロッチナはどうした?」

 

「当分オルディス方面に詰めることになった。決起軍に動きがあるらしくてな」

 

「決起軍?」

 

「ヴァイスラント決起軍。カイエン公爵が首魁となって組織された軍だ。設立には四大名門はもちろん、伯爵位以上の貴族も噛んでいるらしい」

 

「ヴァイスラント決起軍……(ミュゼが私たちと言っていたのはそれか)」

 

キリコは運ばれてきたコーヒーを啜りながら、ミュゼに協力を打診された時のことを思い出した。

 

「何かあるのか?」

 

「なんでもない。そろそろ行く」

 

「一応聞くが、本気なのだな?」

 

「ああ」

 

「黒竜関はクロイツェン州とノルティア州を結ぶ関所にして軍事拠点。当然配備される兵力も半端ではない。残りカスを寄せ集めたオーロックス砦とはわけが違う」

 

「わかっている。だがそれでもだ」

 

「………嫌なものだな、異能者とは」

 

「自分で決めたことだ」

 

「……わかった。機甲兵はノルティア街道の外れに隠してある。必要ないだろうが、武運を祈っている」

 

「……ああ」

 

キリコはコーヒー代を払い、食堂を出た。

 

「………………………」

 

テイタニアはその背中を見つめる。

 

(……キリコ………)

 

 

 

【どういうことだ?】

 

キリコはノルティア街道付近に隠されていたフェンリールに乗り込み、黒竜関を目指していた。

 

だが街道には警戒にあたっているはずの衛士隊の姿が見えなかった。

 

【警戒が緩すぎる。向こう側のクロイツェン州で何かあったのか。それとも…………?】

 

前方がキラリと光り、キリコはフェンリールを停止させ、片膝をつかせる。

 

【これは、ワイヤーか。さっそく仕掛けてきたか】

 

キリコはより慎重になった。

 

【そこにいる奴、出てこい】

 

「ククク……なかなかイイ勘してるじゃねぇの」

 

【!?】

 

フェンリールのターレットレンズの先には、腕組みをしたルトガーが立っていた。

 

【猟兵王、か】

 

「よぉ、久しぶりだな。この間のオーロックス砦襲撃は見事だったぜ。あんな馬鹿野郎はバルデル以来だぜ」

 

【………………】

 

「鉄血のとっつぁんから聞いていたが、たいしたタマだよな、異能者ってのは」

 

【どうでもいい。さっさとこのトラップを外してくれないか】

 

「おお、すまねぇ。ゼノ、外してやんな」

 

「へいへいっと」

 

近くの岩陰から罠使い(トラップマスター)の異名を持つ、ゼノが仕掛けたトラップを外していく。

 

「実はよう、お前さんに話があってな。ちょいと降りて来てくんねぇか?」

 

【急いでいるんだが】

 

「まあ待ちなって。今行っても分厚い守りに返り討ちに遭うのが関の山だ。お前さんも元兵士だってんならわかってるよな?」

 

【……………………】

 

「そっちにおあつらえ向きに広場があんだ。来な」

 

【……………………】

 

キリコはルトガーたちについて行った。

 

 

 

【ここか】

 

「おう、降りて来な」

 

「……………………」

 

キリコはルトガーに促され、フェンリールから降りる。

 

「改めて、久しぶりだな」

 

「ジュノー海上要塞以来か」

 

ルトガーと破壊獣(ベヒモス)の異名を持つレオニダスが話かける。

 

「それで、話とは?」

 

「ハハハ。ボン、そう焦るもんでもないで?」

 

キリコの隣でゼノがキリコの肩に手を置く。

 

「触るな」

 

キリコはゼノの手を振り払った。

 

「なんや、つれへんな~」

 

「ふっ……」

 

「まあ、野郎に触られんのは嫌だわな」

 

「やかましいわ!」

 

「……………………」

 

キリコは黙って立ち去ろうとした。

 

「だあっ!待てっちゅうねん!」

 

「つまらない雑談に付き合う気はない」

 

「団長」

 

「わーってるよ」

 

レオニダスに促されルトガーはキリコの前に立つ。キリコも腕組みをし、話を聞くことにした。

 

「話ってのは他でもねぇ。お前さんがやろうとしていることにちょいと協力してやろうと思ってな」

 

「なんだと?」

 

キリコは怪訝な表情を浮かべる。

 

「俺としても世界が終わるなんてのは望んじゃいねぇ。そうなっちまったらおまんまの食い上げだからな」

 

「…………………」

 

「我らだけではない。全ての猟兵が行き場を失うだろう」

 

「フィーと違うて、俺らは遊撃士なんかにはなれへんさかい」

 

「だからよ、お前さんにゃちーっとばかり期待してんだよ。新Ⅶ組のひよっこ共もな」

 

「………あいつらに会ったのか?」

 

「ああ。ハーメルの跡地でな。あの悪童アッシュ・カーバイドを誘おうとしたんだが、断られちまった」

 

「……そうか。全員無事か…………」

 

キリコは心の中で安堵した。

 

「………一応聞くがよ、お前さんはこのまま突っ走るつもりかい?」

 

「ああ」

 

「世界最悪のテロリストのレッテル張られてもか?」

 

「死人に口なしだ」

 

「………そうかい。わかった。ゼノ、レオ。キリコに協力してやんな」

 

「了解。さっそく始めるわ」

 

「できれば歯応えのあるやつを頼む」

 

「何をするつもりだ」

 

「まあ、見てな。面白れぇことになるぜ」

 

ルトガーたちは不敵な笑みを浮かべる。

 

 

 

午前8:50

 

「ひ、非常事態発生!非常事態発生!」

 

「ええい!どうなっている!?」

 

「なぜ魔獣が群れをなしてやって来たんだ!?」

 

黒竜関は大混乱に陥っていた。

 

何の前触れもなく、クロイツェン州方面から魔獣の大群が黒竜関に迫ってきた。

 

黒竜関に詰めていた衛士隊や第六機甲師団分隊はその対応に追われる羽目になった。

 

結果として、ノルティア州方面の守りは手薄になった。

 

その様子を見つめる者たちがいた。

 

 

 

【あの機械で魔獣を呼び寄せているのか】

 

フェンリールはクロイツェン州側に設置されたアンテナのようなものを指差す。

 

「黒の工房が作ったモンらしくてな。ガラクタ同然だったんだが、何かに使えんじゃねぇかと思ってよ。まさかこんなことに使うとは思わなかったぜ」

 

【……あの二人は?】

 

「俺らは今のところ鉄血のとっつぁん側だからな。魔獣の撃退に出向いてるぜ」

 

【そうか。ではそろそろ行く】

 

「待ちな」

 

ルトガーが引き止める。

 

【?】

 

「お前さんにちょいと頼みてぇことがある」

 

【頼み?】

 

「もしフィーに会ったら伝えてくれ。俺はお前のおかげで……」

 

【自分の口で言ってくれ】

 

フェンリールはルトガーを無視して黒竜関へ向かった。

 

「……へっ」

 

ルトガーはニヤリと笑う。

 

(どうやら俺も耄碌してきたな。どっちみち、あいつらと戦うんなら、そこで伝えりゃ良いじゃねぇか)

 

「フィー……そんときがさよならだな……」

 

 

 

午前9:00

 

「て、敵襲!!」

 

「敵襲だと!?」

 

「青い機甲兵です!オーロックス砦を陥落させたという青い機甲兵が現れました!」

 

「青い機甲兵だと?例の与太話のか?」

 

「し、しかし……!」

 

「まあいい。ノルティア州側の部隊をぶつけろ。それで終わりだ」

 

「こっちはそんな与太話に付き合っていられんからな」

 

指揮官たちはクロイツェン州側に行ってしまった。

 

「りょ、了解しました……!」

 

伝令役の兵士も、持ち場に戻った。

 

彼らは気づけなかった。

 

それが大きな過ちであることに。

 

 

 

【守りは薄い。まずは……!】

 

キリコはフェンリールを操作し、戦車部隊を砲撃した。

 

「ぐわっ!?」

 

「戦車隊の半数が全滅だと!?」

 

「ま、まさかあの噂は本当に……」

 

「ふざけたことをぬかすな!たった一機で何ができる!」

 

「しかし……現に……!」

 

【……………………】

 

それから5分もしないうちに、戦車部隊は壊滅した。

 

「くそっ…くそっ…くそっ……!」

 

指揮官は機甲兵部隊を繰り出すことを決めた。

 

【恨みはないが、仕留めさせてもらう】

 

フェンリールは機甲兵部隊に真正面から向かって行った。

 

 

 

「ククク、とんでもねぇな」

 

ルトガーはフェンリールが次々に機甲兵を仕留めていく様を見つめる。

 

「あっちの方もぼちぼち終わる頃か。さあて、どうするかね?」

 

ルトガーが葉巻に火を付け、ルーレ方角を見る。

 

「にしても、なんでルーレは動かねぇんだろうな」

 

「ザクセン鉄鉱山方面で未確認の魔獣が出たと通報があってな。第六機甲師団本隊はそちらの対応に追われている」

 

ルトガーの疑問に歩いて来たテイタニアが答えた。

 

「なるほどな。で、お前さんもあいつを見に来た口かい」

 

「どう受け取ってもらっても構わん」

 

「…………………」

 

ルトガーが葉巻の火を消した。

 

「ますます誘いたくなったぜ」

 

「望み薄だと思うがな」

 

テイタニアは背を向ける。

 

「行くのかい?」

 

「これでも情報将校なのでな。少しでもこちらへの対応を遅らせる」

 

テイタニアはルーレへと戻って行った。

 

「面白くなって来やがった」

 

「楽しそうだな」

 

ルトガーの背後に紫の騎神ゼクトールが顕れた。

 

「まあな。お前ももしかしたらあいつを起動者にしてたか?」

 

「いや、やつは我の求める者ではない」

 

ゼクトールはきっぱり言った。

 

「まあ、いずれな」

 

「うむ」

 

ルトガーとゼクトールはフェンリールを見つめる。

 

 

 

【仕留める】

 

【がっ……!?】

 

シュピーゲルSはフェンリールのアイアンクローに引き裂かれた。

 

【やはり思ったが、左腕のアイアンクローはゼムリアストーンで出来ている。扱い方によっては騎神も倒せるかもしれないな】

 

機甲兵部隊が壊滅したことで、黒竜関内部への突破口が開いた。

 

【突入する】

 

フェンリールは黒竜関へ突入した。

 

 

 

「どうやら向こうは動いたな」

 

「せやな」

 

魔獣をあらかた倒したゼノとレオニダスは前線から後方へと下がろうとした。

 

「待て貴様ら!どこに行く!?」

 

「どこにって、補給に決まっとるやないか。手持ちはパーなんや」

 

「どうも得物の調子が悪いのでな」

 

「ふざけるな!」

 

のらりくらりとかわそうとする二人に第六機甲師団所属のゲインツ少佐は怒りを爆発させる。

 

「最強の猟兵団だか知らんが、そんないい加減な行動が罷り通るとでも思っているのか!」

 

「いい加減って、そんな大袈裟な……」

 

「良いか!ここの指揮官は私だ!貴様らは黙って私の命令を聞いていれば良いんだ!」

 

「……あん?」

 

ゲインツ少佐の物言いが二人の逆鱗に触れる。

 

「……おい。あんまり調子に乗るもんやないで?」

 

「何時から我々の雇い主になった?」

 

「な、何だと……!?」

 

西風の連隊長から放たれる怒気にゲインツ少佐の怒りは霧散する。

 

「俺らがわざわざ手伝ってやっとるのは団長の命令だからや」

 

「貴様ごときの命令を聞く義理はあっても義務はない」

 

「き、貴様ら……!」

 

「なんなら、今からこの黒竜関を潰してもええんやで?」

 

「向こう側も騒がしいしな」

 

「ふ、ふざけ……!」

 

「ふざけとらん。昨日の敵は今日の友って言うやろ」

 

「殺し合った相手や別の勢力と共闘するなど、珍しくもない」

 

「……………………」

 

ゲインツ少佐顔を真っ赤にし、体を震わせる。

 

「まっ、冗談はさておき、向こう側も心配やさかい。序でに対応したるわ」

 

「少佐殿はここでじっくりと腰を据えているといい」

 

ゼノとレオニダスは黒竜関へ戻って行った。

 

「……おのれ………ハイエナどもが………!」

 

ゲインツ少佐はどこかへ通信をかけた。

 

 

 

【と、止めろ!】

 

【これ以上破壊させるな!】

 

【……………………】

 

黒竜関内部に入ったフェンリールはプラットホームに停まっていた列車に積まれた兵器類や機甲兵を片っ端から破壊し始めた。

 

内部で待機していた機甲兵部隊は必死に応戦するが、キリコの技量に及ばず次々に潰されていった。

 

【魔煌機兵が一体もいない。やはりラインフォルトの自社工場では開発されていないか】

 

キリコはプラットホームの制圧を終えると、内部通路にハンディソリッドシューターを向け、操縦捍のトリガーを引く。

 

爆発と爆音と共に、兵士たちと思われる悲鳴が響く。

 

【すまない】

 

キリコは心中で詫び、反対側にもハンディソリッドシューターを向け、砲撃した。

 

僅かな間に黒竜関内部は半壊した。

 

【大分片付いたみてぇだな】

 

ノルティア州側からルトガーの乗るゼクトールがやって来た。

 

【あんたも来たのか】

 

【面白くなって来やがったからな。それより、まだ大物が残っているぜ】

 

【ああ】

 

フェンリールの視線の先からヘクトル弐型のような機動兵器がやって来た。また、両脇をゾルゲが固めていた。

 

【刮目せよ、愚か者共よ!これぞ、新型の魔煌機兵ハンニバルだ!】

 

【ハンニバル……】

 

【おいおい。そんなもの持ち出して腹いせのつもりかい?】

 

【黙れ!貴様らのおかげで私は破滅だ!せめて貴様らの死体を献上して生き長らえてくれるわ!】

 

ハンニバルから黒いオーラが吹き出る。

 

【あの様子じゃあ、機体にのまれやがったな】

 

【さっさと破壊する】

 

「なら我らも交ぜてもらおう」

 

レオニダスとゼノがハンニバルの後方から歩いて来た。

 

【おう、そっちは終わったか?】

 

「バッチリや」

 

【んじゃ、両脇は任せる。俺らはこの新型とやらをブッ潰す。それで良いな?】

 

【わかった】

 

フェンリールとゼクトールは得物を構える。

 

【ぐぬぬ……!!どこまでも私をこけにしおって!!騎神だか何かは知らんがスクラップにしてくれる!!】

 

ハンニバルは戦斧を振り上げる。

 

 

 

【…………………】

 

フェンリールはマシンガンをハンニバルの両腕に撃ち込む。

 

【なめるなっ!!】

 

ハンニバルは構わず戦斧を振り下ろす。

 

フェンリールはそれをスピンでかわす。

 

【そらよっと!】

 

隙をついてゼクトールがバスターグレイブでボディを薙ぐ。

 

【ハハ、修復したてだが問題ねぇ】

 

【………なまくらを持ってきたのか?】

 

【ククク……。新Ⅶ組のひよっこ共にヒビ入れられてなぁ】

 

【……そうか】

 

【貴様らぁぁぁぁっ!】

 

ハンニバルに乗るゲインツ少佐は怒りを爆発させる。

 

【ちったぁ黙ってな!】

 

ゼクトールはバスターグレイブの切っ先をハンニバルに押し当て、衝撃波を放つ。

 

【ぐおぉぉ!?】

 

ハンニバルは後方へと押し込まれる。

 

【…………………】

 

すかさずハンディソリッドシューターの追撃が叩き込まれる。

 

【パワーはまあまあだが、スピードが無ぇな】

 

【ヘクトルの発展系なら納得だがな】

 

【なるほどな】

 

(あの二人、おそろしく息が合っとるな)

 

(キュービィーは元傭兵らしい。おそらく通ずるものがあるのだろう)

 

既にゾルゲを倒したゼノとレオニダスはハンニバル相手に圧倒するキリコとルトガーを静観していた。

 

【ぐぐぐ……おのれ………!】

 

ハンニバルは再び戦斧を振り上げるも、その動作はガタガタだった。

 

【美味しい所は譲ってやる。決めちまえ】

 

【…………………】

 

キリコは一旦距離を取り、試作のミッションディスクを挿入した。

 

 

 

【マーシャルコンバット、起動】

 

 

 

フェンリールのマシンガンがハンニバルを時計回りに銃撃する。続けざまにハンディソリッドシューターをボディに撃ち込み接近。ショルダータックルとアームパンチを打った直後、元の位置に戻る。その際にバックパックから爆雷を投下。爆雷の爆破に合わせてハンディソリッドシューターをハンニバルの両手足に撃ち込む。止めにアイアンクローの一撃がハンニバルの頭部を引き裂いた。

 

【ハ、ハハハ……ハハハハ…………!】

 

連続攻撃をまともに受けたハンニバルは行動不能に陥り、ゲインツ少佐はもはや再起不能となった。

 

【…………………】

 

キリコは一瞥すらせず、ゼクトールの隣に戻った。

 

 

 

【……本当にとんでもねぇな。まさか心まで折っちまうなんてな】

 

【…………………】

 

【まっ、どのみちのまれてっから関係なさそうだけどな】

 

【…………………】

 

【にしてもマーシャルコンバットか。射撃戦重視でなく、格闘戦重視の戦法か。なあ、やっぱり俺らと……】

 

【前にも断ったはずだ】

 

【チェッ!これで三連敗かよ】

 

「団長、とりあえず戻ろうや」

 

「第六本隊も来る頃だろう」

 

【そうだな………?】

 

ルトガーはハンニバルの方を見た。

 

「な、なんや?」

 

「あれは……」

 

ハンニバルから吹き出した黒いオーラが凝縮されていく。

 

【ヒヒヒ………みすみす逃がしてたまるか………。全て吹き飛ぶがいい!!】

 

正気を失ったゲインツ少佐の声とともに、ハンニバルが震えだす。

 

【自爆する気か】

 

【チッ!ずらかるぞ!】

 

「「おう!」」

 

キリコたちは一目散に黒竜関から出ようとした。

 

【もはや遅いわ!イヒヒヒ………!】

 

ゲインツ少佐は自爆スイッチのセーフティを叩き割った。

 

その瞬間、ハンニバルは大爆発を起こし、黒竜関は内部崩壊を起こした。

 

 

 

キリコたちは間一髪、黒竜関から脱出した。

 

【いや~、びっくらこいたぜ】

 

ルトガーは胸を撫で下ろす。

 

「しかし……見事に瓦礫の山やな」

 

ゼノの言うとおり、クロイツェン州とノルティア州の関所として名高い黒竜関は崩壊し、瓦礫の山と化した。

 

「これでまた、混乱が起きるだろうな」

 

【だな。これで満足かい?】

 

【………………………】

 

キリコは無言で見つめる。

 

【……一つ聞かせてくれ】

 

ルトガーはキリコに問いかける。

 

【……なんだ】

 

【お前さんは何のために戦ってんだ?】

 

【………………………】

 

【俺ら猟兵はミラと戦いが全てだ。貴族様みてぇに大儀だとか誇りのために戦ってるんじゃねぇ。まあ、女目当てに戦うやつもいるらしいけどな】

 

【………………………】

 

【だが、お前さんはどうだ?呪いの根源を倒すらしいが、俺にはそれだけとは思えねぇ】

 

【………………………】

 

【あるんだろ?】

 

【……あんたには関係ない】

 

【ククク……】

 

ルトガーは忍び笑いを漏らす。

 

【何がおかしい】

 

【安心したぜ。お前さんが空っぽな奴じゃなくてよ】

 

【?】

 

【それじゃ、俺は行くぜ】

 

【そうか】

 

「またな」

 

「いずれな」

 

【ああ】

 

ルトガーたちは去って行った。

 

【空っぽ……か。ひょっとしたらそうかもしれないな】

 

キリコはルトガーの言葉を反芻した。

 

 

 

「戻ったか」

 

「ああ」

 

キリコはノルティア街道の近くにフェンリールを隠し、ルーレ最下層でテイタニアと落ち合う。

 

「ザクセン鉄鉱山で魔獣が出たらしいが」

 

キリコはテイタニアから缶コーヒーを受け取り、話を促す。

 

「ああ。おそらく幻獣と呼ばれる類だろう。第六機甲師団が討伐に駆り出されたが、撃退するには及ばず、姿を消したらしい」

 

「そうか」

 

「そちらはどうだ。黒竜関が瓦礫の山と化したらしいが」

 

「それは──」

 

キリコはテイタニアに黒竜関での戦いを話した。

 

「わかった。ロッチナには報告しておく。それとキリコ……ご苦労だった」

 

「ああ……」

 

キリコはようやく一息ついた。

 

 

 

「そろそろ行く」

 

キリコはそう言って立ち去ろうとした。

 

「待て」

 

「なんだ?」

 

「一つ引き受けてほしいことがある」

 

「……なんだ」

 

「………ノルド高原にある調査に行ってほしい」

 

「ノルド高原?それに調査だと?」

 

「裏の情報をキャッチしたのだが、ノルド高原で秘密裏に戦艦が造られているらしいのだ」

 

「戦艦?」

 

「さらに、そこには第七機甲師団が関わっているらしい」

 

「第七が……。他に知るやつは?」

 

「一応、これを知っているのは私とロッチナだけだ」

 

「……鉄血宰相側が知らないということは、相当なものなのか」

 

「おそらくは。だが私もロッチナも表立っては動けん。そこでお前に頼みたい。引き受けてくれないか」

 

「………………わかった」

 

キリコは少し考えこみ、引き受けることにした。

 

「すまない、キリコ」

 

「一応聞くが、戦艦とやらが本当にあった場合、処理は俺の判断で構わないな?」

 

「無論だ」

 

「わかった。それで、どうやって行く?」

 

「20分後にノルド高原行きの貨物列車が出る。作業員として紛れ込めばギリギリまで気づかれないはずだ。ついて来てくれ」

 

「わかった」

 

キリコはテイタニアの後について行った。




次回、ノルド高原で待っていたのは……?
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