う……ううん
目が覚めた。
「あれ、へ?」
身体が自由に動かせない。動くたびチャリチャリと鎖の音がする。
ここは何処だ?
昨日は夕食を食べた後、あと、どうだったっけ?
記憶がない。まさかとは思うけど誘拐されたのか、俺。
寝ぼけ眼を擦るだけで、解決策なんて思いつきもしない。
この部屋はやけに広くてそういう知識には疎いが豪華なソファや調度品が置いてある事は一目で分かった。逆にベットはいつも使っているような組み立て式のベットで、ちぐはぐとしていて妙に気分を落ち着かせた。
俺は思案する。そもそも何で誘拐されたのかが分からない。俺は何処にでもいるサラリーマンだし、特別悪い事もいい事もした事はない。他人から恨みを買うことなんてした事もない。何故俺なんだ?
制限された身体を起こすと壁に時計がかけてある事に気づいた。
「やば、もう8時だ……」
いつもなら8時に起きてしまえば、確実に遅刻ルート確定。けど、今は絶対に出社なんて無理だ。
「誘拐されたは休む理由になるか……な?」
多分無理そうなのではあるが。
ボーッと十分程経ったとき、密室の扉がギギギと重い音を立てて開いた。
「! お前!」
怒りで文句の一つでも言ってやりたいが、鎖の音がやかましい。
「あら、起きてたの? 朝ごはん食べる?」
なんて事ないように朝ごはんを勧める彼女。
「会社があるんだ、早くここから出してくれ」
「ああ、別に大丈夫。休暇扱いになってるから」
「!?」
「そもそもここに貴方がいる理由、分かってるよね?」
彼女はジロリとその綺麗な瞳を厳しくする。
「……分からん、本当に分からない、嫌な事をしたら謝る。だからここから出してくれ」
懇願するも彼女ははぁ、とため息をつくと
「仕方ないわね、説明してあげるわ」
「貴方は私だけ、私だけを見ていればいいの。汚物で目を汚さなくてもいいの。ほら、ずっとずっと私とここにいよ。」
彼女のどろどろと濁った目が俺を見つめる。
「ま、ま、待ってくれ、生活だってあるだろう? お父さんたちだってきっと心配するはずだ!」
「大丈夫よ、私、こう見えてもちゃんと自分でお金稼いでるし、貴方とずっと過ごすために三歳の頃からずっと準備してきたんだよ?」
俺がこの後も色々となんだかんだと説得しようとごねていると彼女は何かを決めた様だ。スッと立ち上がってこう言った。
「貴方には分かってもらう必要があるようね」
さっきまでの少しだけ残っていたほわほわとした感じが一切消え、視線はとても中学生と思えない冷たさ。
「最近、エントランスホールで変わった事はなかった?」
エントランスホール。会社の出入り口である意味顔とも言える場所。
最近美人な受付さんが退職して、「彼氏と駆け落ちした」「秘書になった」「転職」なんて眉唾物の噂がゴロゴロとしていたのだが、まさか?
「まさか……そういうことか?」
背中の冷や汗は止まる事を知らない。彼女の返答がなく、ただ表情は硬いまま。俺はただこの静かな空間でベットに縛り付けられているだけ。
彼女ならやりかねない。
ようやく彼女が口を歪ませて開いた。
「分かってくれた?」
耳元でささやかれて、くすぐったい。こんな状況でなければラッキーと思うのだが、俺は顔がすっかり青くなっている。
「どうすれば、いい?」
鉛のように重い口を開く。
彼女はにっこり笑って
「私とずっといっしょにいてくれるって約束する?」
「するよ、勿論するとも」
彼女は満足したようで、ポケットから何かの鍵を取り出すと俺に近づいて鎖から解き放った。
「動ける?」
彼女の突然の行動に思わず目を丸くする。
「いいのか?」
「いいの、だって約束してくれたでしょ」
心臓は早鐘を打つ。気づかれないようにしたいが彼女はそんな考えも見通しているのかもしれない。
これまで見せていた表情とは違う、月のように静謐で可憐な微笑み。
狂ってしまいそうだ。明らかに異常で狂気的な彼女。おかしいと、狂っていると、突き放すタイミングはそこらへんに転がっていたはずなのだ。
思えば、あの夏の日から俺はずっと彼女に囚われている。女の子を見れば必ず彼女のことが頭から離れないし狂気の渦に飲み込まれていると言っても良かった。学生時代、告白されても理由をつけて断った。「大事な人がいる」と。勿論その時に彼女がいたなんて知らなかったのだが、再び再開する事を知っていたのだろうか。
再び出会った時も裏で密かな再会に興奮していた。
今監禁されていた状況でさえ、どこか彼女への幸福感が心から生じていた。
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結論から言うと俺は解放された。
彼女は俺が他の女性に目を向けることが耐えられなかったらしい。
・チョーカーをつける。
・必ず毎日夜8時には連絡をする。
・他の女にうつつを抜かさない
この三つさえ守れば良いと破格の条件を提示した。勿論俺はそれに飛び付いた。ずっと閉じ込められているよりははるかにマシだからだ。
次の日に出社した時、上司は首元を見て「チョーカーつけてんじゃん!」と一人興奮していた。本人曰く、本当にチョーカーを身につける人を見たのは初めてだったみたいで現実にいたのかあと一人で勝手に感心していた。
俺はとにかく彼女の言いつけを守り、出来るだけ女性との接触を避けた。不審がられることもあったが、なんとかごまかせた。
家に帰ると彼女がいる。
最近はなんだか嬉しく思えてきた。一人で寂しく夕食を食べるだけだったのに今では二人で食べることが出来る。とても幸せだ。
「好きだ……」
彼女を後ろから抱きしめる。ふんわりとした太陽の香りが俺の心を暖める。
「……わたしも」
たとえこの関係性が異常であっても俺はそれで構わない。彼女と言う底なし沼へとズブズブ沈み込んでいく事がたまらなく気持ち良かった。
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彼女との休日
今日は日曜日。彼女と共にショッピングモールへ出かける予定だ。
髪型も服装も整えている。
午前9時
「おーい、ここ、ここ!」
彼女はブンブンと手を振っていた。
「悪い、遅かったか?」
「ううん、今きたとこ」
二人で手を繋いで早速歩き出した。
「服とか買う?」「まあ、一応見てみようかな」
俺たちは服屋に居た。シーズンの服や流行物が飾ってある。
「これなんか似合うんじゃないか?」
俺が出したのは白いワンピースだった。
「うーん、ちょっとね?」
子供っぽいかな。
「私がこれ着てるの見たいの?」
「まあ、そうだけど」
「じゃあ、買うわ」
即決だった。
「良いのか?」
「大丈夫よ」
そうこうしていると、店員さんが来た。
「いらっしゃいませ、妹さんの召し物をお求めでしょうか?」
妹か、周りからはそう見えているのか。
「いいえ、妻です」
キッパリとそう言った。俺は頭を抱えた。
あっ、と言う顔をした店員さんは
「申し訳ありません、奥様への召し物はこちらがお勧めですよ」
確かに似合っていた。「あっちがいいわ」勧められた服の一つ隣を彼女が指さした。それは彼女の美しさを引き出すようだった。
「これを買うか」
「ありがとうございます、会計は5万円です」
けっこう高い。だが、彼女のためだ。
「カードで」
「私が払ったのに、よかったの?」
「いいよ、俺が、君だけに着て欲しかったから」
「そう……ありがと」
夕陽は二人は照らし、互いの恥ずかしさを覆い隠してくれた。
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俺の学校生活
高校に進学した俺。なんとなく大学に行こうみたいな目標は出来上がっていた。でも、何かが足りなくて、常に空っぽだった。
「高瀬、おい、起きてんかー」
友人の原が目の前で手を振っている。
「起きてるよ」
「弁当食おーぜ」
「ああ」
4限が終わり、休憩時間に入った。原に誘われたことだし、食べよう。
「なあさあ、前から思ってたけどお前はよー告白断ってんなー」
俺はそこそこモテた。運動部でそこそこの活躍をしたから人気が出たのだろうか。何人か来ても、適当に断ってしまった。
「お、高嶺さんだ……」
この学校の歴史上、一ニを争う可愛さと言われている高嶺さん。
運動も勉強も出来るのを見ると、なんだか"彼女"を思い出してしまった。「おい、顔青いぞ?」表情にも現れてしまった。
「大丈夫だ。 少し体調が悪くてな」
「そうか、気を付けろよ」
たわいもない事を話していると、高嶺さんがこちらにやってきた。
「おい、こっち来てるぞ……」
俺の前にだった高嶺さんはこう言った。
「私と付き合ってください!」
「ごめん、大事な人がいるんだ」
素っ気なく返した。
「え、ダメなの? なんで」
「本当に悪いな」
無言が互いの間に広がる。
「ご、ごめんね 邪魔しちゃって……」
彼女は雫を少し目からこぼしながら去った。
「おい、お前、なんてことしてんだ!! チャンスだぞあれ!」
原も含め皆からの視線が痛い。
「なんか、彼女は違うんだ」
この発言で火に油を注いでしまったのは言うまでもない。
信じなかった時のバッドエンドいる?
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いる
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いらない