地球における労働の魔の手から逃れ、左団扇な生活を目指す話   作:やがみ0821

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ハウリア族への人道的介入 なお、下心がある模様

 律歌達はオルクス大迷宮の拠点から直通の通路にて地上へ戻った。

 この数カ月間で魔法の修行及び生成魔法の習熟が一段落した為だが、手ぶらで戻ったというわけではない。

 持っていけるものは全部持っていってしまえと言わんばかりに、資料からアーティファクトその他色んなものを彼女達は持ち出している。

 幸いにもオスカーが遺した指輪型アーティファクト――宝物庫という便利な収納庫が存在していた。

 

 なお、オルクス大迷宮の最深部へ至るには困難になっている。

 ヒュドラが召喚される部屋に通じる道を岩などで物理的に封鎖してしまった為だ。

 

 これまでオルクス大迷宮を踏破した者はいなかったが、これから先もそうだとは限らない。

 もしも魔人族やら教会やらが本腰を入れてきたら辿り着いてしまう可能性がある。

 彼らがオルクス大迷宮に神代の魔法である生成魔法があることを知っているかは不明だが、辿り着いてさえしまえば、自ずと知ることになる。

 

 特に教会は神と戦うならば敵に回る可能性が非常に高く、彼らが生成魔法を手にしてしまえば、非常に面倒くさいことになるのは想像に難くない。

 

 勿論、これには生成魔法を独占したいという律歌の思惑もあった。

 誰でも使える魔法とは思えないが、こういう貴重なものは仲間内で独占してこそ価値が生まれ、第三者に対しては大きなアドバンテージとなる。

 

 恵里は勿論のこと、ルナもこれには賛同した。

 その理由は利益の独占というよりも、神代魔法を世間に広めるのは危険過ぎる為だ。

 

 

 ともあれ、そんなこんなで地上へ戻った3人だったのだが――モンスターに追いかけられている兎人族の少女に遭遇した。

 だが、ここはライセン大峡谷。

 発動した魔法に込められた魔力が分解され、散らされてしまう。

 それは誰であっても例外ではない。

 そして、オルクス大迷宮で作成したアンデッド軍団も、さすがに地上では目立ち過ぎる為、連れてきてはいない。

 

 しかし、この程度でへこたれるような3人ではない。 

 

 魔法一辺倒では、魔法を封じられては手も足も出なくなるということは想定された事態だ。

 また拠点にあった資料から、直通の出入り口がライセン大峡谷に通じていることも判明していたことから対策は急務であった。

 そんな彼女達が出した結論は実にシンプルである。

 

 体外には出さず、体内で魔力を巡らせる分には阻害されない。

 それならば、魔力で身体能力を飛躍的に強化して殴れば良い――

 

 生成魔法で作ったアーティファクト――爆発する水などの危険物――を使うのではなく、そうなってしまったのは律歌が原因だ。

 

 

 余の手刀こそ世界最強の剣だ――!

 

 

 彼女はそれをどうしてもやりたかったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 兎人族の少女は目を丸くしていた。

 彼女を追いかけていたモンスターだけでなく、他にもやってきたモンスター達に対して殴る蹴るなどの暴行や投石が行われ、あっという間に処理されてしまった。

 彼女の未来視では助けてもらえるという場面は視えたのだが、具体的にどうやって助けられるかは分からなかったが、これは酷い。

 

 そして、シアへ3人の視線が向けられる。

 すると、その中の1人――律歌は少女のウサ耳に視線が完全に固定された。

 

「ウサ耳、触っていい?」

「え、は、はい……」

 

 ずいっと迫られ、少女は思わずそう答えてしまう。

 すると律歌は満面の笑みで、そのウサ耳を両手で触る。

 

「今、私は猛烈に感動している……! そうそうこれこれ、こういうのよ。ありふれた人間よりもありふれていない種族との交流! これこそ醍醐味!」

 

 ここまで感動されるのも何だか気恥ずかしいと少女は思っていると、金髪の少女――ルナが口を開く。

 

「話が進まないから、律歌は気にしないで話を進めていい」

 

 見た目は幼いが、この子が保護者的な存在なのだろうかと考えながら兎人族の少女――シア・ハウリアは自らの家族の窮状を訴えることにした。

 

 

 

 

 

 

 

「許せねぇ……やっぱり帝国主義者はクソって、ハッキリ分かるわ」

「あのー、何か違う方向へいってません?」

「大丈夫、シア。私に任せて。革命を起こして皇族貴族全員皆殺しにしてくるから。そいつらの首は木に吊るされるのがお似合いよ」

「はいはい、律歌はちょっとこっちで頭を冷やそうね」

 

 恵里に引っ張られて、律歌は横へ移動させられる。

 シアとルナはどうなるのかと見ていると、いきり立っている律歌の頭や背中を恵里が撫で、何事かを呟きながら落ち着かせている。

 

「……猛獣ですか?」

「思考が斜め上で、なおかつ性格が残念なだけ。それで、さっきの話だけど……帝国に拐われた人達を取り戻すのは、私達だけじゃ不可能。国に喧嘩を売るっていうのは自殺行為に等しい」 

「そうですか……で、ですが、残った家族達をどうにか安全なところへ……」

 

 ルナはシアの言葉に返事をせず、視線を律歌へ向けた。

 彼女が良くも悪くもリーダー的な立ち位置である為だ。

 その視線に気がついて、律歌は答える。

 

「そのくらいは別に構わないけど、何かしらの報酬が欲しいわね」

 

 律歌の問いに考え込むシア。

 

「まずは彼女の家族を避難させてから色々と決めればいいと思う。たぶん性格的に、受けた恩を仇で返すことはできないだろうから」

「そうしましょうか。ところでシア、この辺にライセン大迷宮の入口って、あったりしない?」

「ちょっと分からないですね……あの、探すのをお手伝いしましょうか? 家族達が心配なので道中は無理かもしれませんが、その後なら……」

「あ、じゃあお願いするわ」

 

 そして、一行は峡谷をハルツィナ樹海方面へ向かうのだが、その移動速度はとても速かった。

 シアを律歌が、ルナを恵里が背負って魔力で身体能力を強化した上で、全速力で駆け抜けた為に。

 これによってシアがあまりの速度に目を回したものの、それ以外に被害はない。

 辿り着いた時、彼女の家族達がハイベリアなるワイバーンみたいなモンスターに襲われていたものの、小腹が空いた律歌達に食糧として冷凍保存されることとなった。

 峡谷内である為、魔力効率が非常に悪く、消費される魔力量は多くなってしまうが、そこに目を瞑れば多少の魔法は行使できる。

 解体した肉を凍らせるくらいなら問題はない。

 

 

 さて、ハウリア族と合流した一行は彼らと共に峡谷からの脱出を目指す。

 襲いかかってくるモンスターを律歌達は歯牙にもかけずに蹴散らしていく。

 

 モンスターの襲撃以外は道中何事もなく、彼らは峡谷から脱出するのだが――待ち構えていたのは情報にあった帝国兵達であった。

 

 

 

 

 

 

「そこらの悪役みたいなことを言っているわね……」

「何だと!?」

 

 律歌はポロッと本音が口から出てしまい、それを聞いて激昂する帝国側の指揮官。

 

「いやだって……男は奴隷、女は犯せみたいなことを言っていたし」

 

 うんうんと頷いて同意する恵里とルナ。

 なお、ハウリア族は不安そうな顔をしていたが、その中でシアだけは平然としていた。

 

 未来視でこの場面を視ていたというのもあるが、帝国に対して妙な敵対心を律歌が抱いていることをこれまでの会話で分かったからだ。

 過去に何かされたのだろうかとシアは思い、詳しいことは聞いていない。

 壮絶な過去があったりしたら、心を傷つけてしまう可能性が高いと考えていたのだが――それは律歌本人から否定された。

 

「別に帝国に恨みとかそういうのは無いわ」

「え、無いんですか!?」

 

 思わず問いかけたシアに律歌達3人は答える。

 

「欠片も無いわね」

「何も無いねぇ」

「全く無い」

 

 シアは自分の勘違いに気がついて、顔が引き攣った。

 

「も、もしかして人間族と敵対はしないとかそういう……?」

 

 未来視で視た未来とは違ったものになったのか、と不安に思いながらシアは問いかけた。

 しかし、その問いは律歌から否定される。

 

「申し訳ないけど、ルナはともかく私と恵里は遥かな昔から人間族同士で争ってきた世界からやってきたので……むしろ、人道的観点から迫害されている亜人族は助けるべきだと思う」

「何をごちゃごちゃ言っている! 命が惜しければ大人しくしろ!」

 

 律歌の言葉に、帝国側の指揮官がそう叫んだ。

 帝国兵達は既に戦闘態勢を整えているが、彼らは侮っていた。

 

 その理由は2つある。

 兎人族は身体能力こそ高いものの、基本的には臆病であること。

 また律歌達の見た目が単なる少女であることだ。

 

 律歌は深く、それはもう深く溜息を吐いた。

 

「じゃ、はじめましょうか」

 

 その言葉と共に律歌は攻撃を開始する。

 彼女の片手の人差し指から連続して放たれる魔力の弾丸。

 盾も鎧も貫通し、瞬く間に彼らは倒れ伏す。

 攻撃を受けたことだけは分かった為、どうにか反撃に出ようと試みるが――それも儚い抵抗であった。

 

 立とうとする兵達の両足を撃ち抜きつつ、律歌は問いかける。

 

「兎人族の行方や帝国について知っていることを色々と教えてくれないかしら? ちなみに私は治癒魔法も使えるんだけども……?」

 

 にっこりと笑ってみせる律歌に、帝国兵達の答えは決まっていた。

  

 

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