地球における労働の魔の手から逃れ、左団扇な生活を目指す話   作:やがみ0821

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目の前で飯テロされて我慢できなかった少女を添えて


辿り着いた真実

 特に問題もなくヒュドラを倒して美味しく頂いた律歌達。

 この際ルナは当初こそ拒否したものの、肉汁が滴るヒュドラの肉を美味しそうに頬張る2人を見て、どうしても我慢できずに食べてしまい、全身を痛みが襲って悶絶してしまう。

 予期した事態であった為、すぐさまエリクサーをルナに飲ませて――口移しではない――更に律歌が治癒魔法を掛けた。

 

 律歌は天職:魔導師ということもあって、全属性に対する適性や耐性があるだけでなく、様々な種類の魔法――治癒や補助、結界など――についても適性や効果を上昇させる技能があり、攻撃以外の様々な魔法についても習得している。

 だが迷宮探索時、敵は律歌の一撃で倒してしまうか、恵里のアンデッド軍団に押し潰されるのどちらかであり、比較的強い敵であったヒュドラも3人の大火力で押し切ってしまっている。

 実戦での治癒魔法の初お披露目であったが、これにはエリクサーの残量も少ない為、これまでのように景気良くドバドバ使うわけにもいかないという懐事情があった。

 幸いにもルナ自身の再生力もあってか、その見た目が変化することはなく、一方で彼女自身にもハッキリと違いが分かるくらいには力が漲っていた。

 

 そのような顛末があったものの、ヒュドラを倒したことで開いた扉の中へ彼女達は進んだ。

 そして、彼女達はオスカー・オルクスが遺した記録映像により世界の真実について明かされたのだが――

 

 

 

「神々のやることにしては随分と大人しいわね」

「うん、僕もそう思う」

 

 2人の言葉にルナは尋ねる。

 

「地球の神々ってそんなに酷いの?」

「実在するかどうかは別として神話とかだと大抵の場合、とんでもないのばっかりね。人間から見て善いのもいるんだけど、悪いのが際立っている」

「特にギリシャ神話のゼウスだね」

 

 なるほど、と頷きつつもルナは地球って本当に摩訶不思議だと思う。

 彼女がそんなことを思っていると恵里は律歌へ尋ねる。

 

「で、律歌はどうする? 彼らの思いを継ぐの?」

「うーん……私って正義の味方みたいなタイプじゃないのよね。むしろ、邪神みたいなタイプ」

「だよねぇ。君って世間一般からすると非常識な性格だもん。だから僕以外には好かれないよ」

「さらりと思考誘導をしようとする恵里ってば可愛い」

 

 律歌は恵里の頭を撫でる。

 それを見て呆れながらもルナが問いかける。

 

「律歌、質問に答えてない。どうする?」

「現状維持かな。もしも彼らを排除してしまった時、世界そのものに対して悪影響が出たらマズイと思う」

「戦うことになった場合、連中を倒せると思う?」

「私と恵里、そしてあなた。問題ないわね」

 

 そう言われるとルナとしても悪い気はしない。

 律歌は更に言葉を続ける。

 

「けれど、いざ戦争をするってなったら戦力は多いほうがいいのも確かよ。神々がどこまでできるか知らないけど、人智を超越した力は持っているって考えた方がいい。何なら概念レベルで事象を書き換えてくるかもしれない」

「……それ、勝てるの?」

 

 ルナの問いに律歌は腕を組んで難しい顔となる。

 

「分かんない。反逆者とやらの魔法次第かも……場合によっては、古巣の協力を得ないといけない」

 

 古巣という単語にルナは首を傾げ、意味が分かった恵里は問いかける。

 

「いいの?」

「勝利の為には形振り構わってられないわ。特に何でもしてくるような奴が相手ならね。ハーグ陸戦条約を神が律儀に守ってくれるならいいけど、そんなことはないだろうし……わざわざ人々を煽動してまでオスカー達を反逆者に仕立て上げるくらいなんだから、単なる脳筋じゃない。絶対にえげつないことをやってくるわよ」

 

 そう言いながら、律歌は予想する。

 それこそ彼女がやりたかったことを相手はできる可能性を。

 

 負けるよりは良いとしてそれこそ全世界に核攻撃か、それに類する攻撃を加えてくるかもしれない。

 エヒトなら惑星一つを滅ぼす攻撃なんぞ軽くできるだろう。

 

「先生にこの件について手紙でも書いてみましょうか。良くも悪くも風向きが変わったのは間違いない……もしかしたら、オスカー達以外にも過去に神の敵とされた連中がいるかもしれないわね」

 

 その律歌の言葉にルナはある種族を思い出す。

 

「竜人族がそうかもしれない。500年くらい前に滅んだとされる一族……伝承では神の敵となったらしい」

「オスカー達のことといい、やることがワンパターンね。まあ、それが一番手っ取り早くて手堅い方法なんでしょうけども。生き残りはいると思う?」

 

 律歌の問いにルナは首を左右に振り、分からないと答えた。

 その答えを聞いて恵里が口を開いた。

 

「現状維持って方針のわりには、やることが多くない? 僕、すごく嫌なんだけど。律歌と一緒にまったり過ごす時間が無くなりそうで……」

「こっちが仕掛けなくても、向こうが仕掛けてこないという保障はどこにもないから、戦いがあるという前提で備えておくことは必要よ。まあ、こっちの動きを神が警戒した結果、攻撃を招くっていう可能性もあるけど、何の備えもないままやられるよりはよっぽどいい」

 

 律歌の言葉に恵里は渋々といった感じで頷いた。

 そんな彼女を律歌は抱きしめ、自らの豊満な胸に彼女の顔を埋めさせて頭を撫でる。

 やがて、撫でられていた恵里がゆっくりと言葉を紡ぐ。

 

「仕方がないなぁ……律歌がやる気になっているのを止めるのも嫌だし、僕も頑張るよ」

 

 

 そんな2人を見ながら、ルナは肩を竦める。

 定期的に2人の世界に入ってしまうので、微妙に彼女は肩身が狭い。

 とはいえ魔法の師匠的ポジションを確立しつつあるので、その権威を行使する。

 

「2人共、修行する。何をするにも強さは必要」

「分かった。恵里、やるよ」

「うん、頑張る」

 

 

 

 そして、3人はオスカーが終の棲家としたこの場所を拠点として、更に拠点内の探索にて発見した様々な資料を読み漁り、遺されたアーティファクトを試したりしながら、魔法の修行を開始する。

 基本的にはルナが師匠役で、2人に対してあれこれ教えるのだが、その一方で2人からルナは地球のことを学ぶ。

 単純にルナが異世界である地球について興味があった為だ。

 

 そのような具合で修行を進めていくのだが、律歌は手に入れた生成魔法について物凄い悪さができるのではないかと考えていた。

 また自分だけではなく、クラスメイトの錬成師:南雲ハジメをここに連れてくればもっと悪さができそうだ。

 

 さて、律歌が考える物凄い悪さとは鉱物に魔法やスキルを付与できるのならば、もしかしたら他の無機物にも付与できるんじゃないかというものだ。

 もしもできれば、あんなことやこんなことができるとワクワク気分で律歌は水や食塩、瓶や椅子、その他色んな無機物に試してみたところ――問題なく魔法やスキルを付与できてしまった。

 

 爆発する水とかいう暗殺やテロに最適なものから、座ったら回復する椅子なんてものまで作成できてしまう。

 

 この結果から律歌は予想する。

 生成魔法は無機物に魔法やスキルを付与できる――干渉するものであるならば、有機物に干渉する魔法も存在する可能性が高いのではないか、と。

 有機物という大きな括りが対象であるならば、そこには人体も含まれる。

 

 人体への干渉――どのようなことができるかは不明であるが、もしかしたら念願のふたなりになれる可能性があるし、何なら不老不死にだってなれるかもしれない。

 もっともルナから得た再生力で既に不老にはなっているかもしれないが、本当にそうであるかはこれから長い年月を掛けて観察する必要があるだろう。

 何よりも万が一に備えて、手段は多いほうが良い。

 

 ともあれ、夢が広がりまくった律歌はルナと恵里に対して、自身の予想と夢を語った。

 ルナは呆れて、恵里は目を輝かせるという正反対の反応だ。

 

 

「律歌が何を考えているか分からないけど、碌でもないことを考えていることだけは分かる」

「そうかなぁ。僕は律歌の夢が叶うなら、こんなに素晴らしいことはないと思うけど……」

「あなた達が両性具有になることは良いとしても、不老不死とかそういう類は絶対に火種になる」

 

 律歌はルナの言葉を真摯に受け止めつつ、ルナに尋ねる。

 

「たぶんだけど、若返りとかもできる。どうするのが良いと思う?」

「幸いにも私と恵里とあなたしかその可能性については知らない筈……私達以外の誰かがここにやってきた形跡はなく、生成魔法を知らなければ辿り着けない予想だと思う」

 

 なるほど、と律歌は頷きながら、恵里を真っ直ぐに見つめて彼女の両肩に両手を置いた。

 

「恵里、誰にも言わないで。約束できる?」

「うん、いいよ。約束する」

「……大丈夫なの?」

 

 ルナの問いに恵里は大きく頷く。

 

「当然だよ。律歌との約束は僕にとっては何よりも重いからね……そういうルナさんはどうなの?」

「私の誇りにかけて、誰にも言わないことを約束する」

 

 胸を張ってそう告げるルナであった。

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