……聞いてくれ。
最初は差し当たりない文章で終わらせるつもりだった。
けど、どう云う訳か、話が膨らんで……
……結局いつも通りの文章量に。
───そして『間話』となった。
フレメヴィーラのあれやこれや。
まあ、楽しんで頂けたら幸いです。
「ふぅ、これで終わりじゃわい。」
そう言って、鋼色の
そして、自らが造り上げた新型制式量産機である
華美なデザインではないが、従来機以上に実用に充分耐えうる機体性能は、フレメヴィーラ王国製ならでは。
特に技術革新の礎となった新技術の革命機、テレスターレの新装備も備わっている。
全身の
それら癖の強い新装備をバランス良く組み込んだ結果、
それは奇跡的なバランスの出来であった。
工房のスタッフは涙した。
しかし流石に生半可なものは出せない故の重圧の結果が『あれ』とは、ガイスカ工房長自身も会心の出来、と言えた。
そのため、銀凰騎士団との模擬戦は『本当に、激戦試合』だったと言える。
その後、カルダトア・ダーシュを改良し、ようやく完成させた、次期制式量産機カルディトーレ。
そのズラリと並び立つ勇姿は正に、ラボの誇り、そして自身の仕事の集大成と堂々と言える。
しかし……
「本当に大きいものになったなぁ、カルディトーレは。ワシも老いたか……カルディトーレが今までの
しかし、ガイスカ工房長の目の前にある
起動し、立ち上がれば、その全長は『16メートル』に達する。
背丈だけでなく、全身隈無く大きくなっている。
そして彼の後ろにあるのが、『我々』のよく知るカルディトーレ。
中央スペースを挟んで、見比べて見ると、そのサイズ差は、大人と子供である。
そしてガイスカ工房長の目の前にあるのは……
「……
自身の極限の発想の結果とはいえ、明らかに自分が想像していた
まさか、この御仁がこんな事を仕出かすとは……
「しかし我ながら、巨人型など、よく思い付いたと思うわい。と言うてもやはり転機は『新型
──フレメヴィーラ王国 シュレベール城
「……ひぃ、ふぅ、みぃ、や。うむ、幾ら計算しても、此度の増強は驚かされる。」
「……誠に。私も驚きのあまり、言葉が御座いません。」
魔の森『ボキューズ大森林』より現れる魔獣。
その魔獣討伐の第一戦線を張るフレメヴィーラ王国。その王都カンカネンにそびえる、堅牢な造りであるシュレベール城の一角にある執務室。
そこの中央のテーブルに堂々と構える2人の老人がいた。
一人はアンブロシウス・タハヴォ・フレメヴィーラ。
フレメヴィーラ王国第10代国王であり、現在は息子のリオタムスに王位を譲って、隠居の身である。
しかし『獅子王』の異名を取る名君だけあって、退位後もその存在は衰え知らずで、現在は政治には口を出さないものの、自らの鍛練の傍ら、考察事を手に掛ける事もある。
若いころから騎操士の腕は相当なもので、数々の武勇伝を持つ国内随一の槍の名手でもあり、老いてなおその腕前は健在。
ただ、即位前の悪戯好き、暴走癖が退位後の今になって、少し復活している兆しもある。
そしてテーブルを挟んで真向かいにもう1人。
名をクヌート・ディクスゴード。
フレメヴィーラ王国の公爵にしてアンブロシウスの側近。若い頃は暴走癖のあったアンブロシウスを諌める役割を担っていたため、王宮では陰で「猛獣使い」と呼ばれ、現在も現王・リオタムスを支えつつも、退位後のアンブロシウスとは変わらない関係でいる。
そしてフレメヴィーラ王国にて
若かりし頃にラボと共同でカルダトアの改良に着手したが、改良は小幅なものに留まり、十分な結果を残せぬままに終わったことがあり、
さて、そんな大御所2名がテーブルを挟んで、難しい顔をしているのには訳がある。
それはテーブルの上にある、数枚の紙……報告書にあった。
その内容を反復するように、クヌートは改めて口に出す。
「……触媒結晶は従来のまま、技術のみで
──アルヴの民。
『ナイツ&マジック』において
ウェブ版では種族名のアルヴの代わりにエルフが用いられているが、書籍版、アニメ版ではアルヴの民、と呼ばれている。
耳が長く体内に触媒結晶を有し、素で大規模高精度な魔法を扱う事が出来る。
寿命は500年内外。100歳を超えると、眠りと思索の間に生きるようになるという種族である。
この世界では歴としたエルフ種族であり、アルヴの民とは民族名と捉えられているが、その風貌は一般のエルフとは『何故か』少し違うのはご存じかと。
ちなみに、アルヴの民に限らず、他のエルフ達も体内に触媒結晶──魔石を持っている。
他の種族より魔法に秀でているのは、その為でもある。
ただし、眠りと思索の間に入るのは、アルヴの民特有の『性質』と捉えられており、全てのエルフに当てはまるものでない事を断っておく。
それはさておき、問題なのは
技術のみで、既存の触媒結晶を用いて、出力増加。
……いったい何を言っているか解らないだろう。
それはこの2人もそうだ。
それは、遡る事2年前。
それにより、今まで問題となっていた
持久力、出力、強化魔法の耐久度向上等……
ガイスカ工房長が、卒倒してしまうくらいには。
そして文章の最後には『今後、この
しかし、
何故なら新型炉は、従来機ではその出力をもて余してしまう弊害をもたらしていたからだ。
最悪、爆散してもおかしくはない程に。
つまり、暗に『新型炉で、新型を造れ』と
これには関係者一同は困惑した。
オーバースペックの新型炉をどうしたら良いものかと。
そして、続け様に来たのが、機操士学園の学生達が造り出した新型
その異様とも言える
動力源と、技術の
ただ幸いに、その頃は
アンブロシウスは、その二者に対し、製作期間を延長する代わりに、テレスターレの技術を活かしつつ、新型
その結果、
その性能は従来機の、約2.5倍。
……1.3倍ではなく、2.5倍である。
……そんな出力を持った機体など、
そして操縦すら困難だ。
テレスターレの1.5倍がまだ可愛く思える。
全身の骨格を全面に見直し、テレスターレ由来の新技術
ここまでは普通だ。
原作でも試行錯誤の末、頑張っていた。
しかし、ただ最大の問題は、新型機を造っただけでは、この新型
そのため新装備の他、図った新たな手段───『大型化』である。
出力増加の問題を『大型化』によって機体の運動量を増やす、という本来であれば本末転倒なものだ。
しかし、それが余裕で許容出来るのが新型
その大きさは冒頭の通り。
この決断は、
……というより、相当追い込まれた結果がこれだ。
その経緯を経て、カルダトア・ダーシュは、カルディトーレへと再設計。
この度、制式採用に至り、その大きさ故に『巨人型』と銘打つ事になった。
ちなみに、巨人型による実戦は以下の通り。
◯決闘級魔獣は、どの
◯旅団級魔獣は1個小隊の
◯師団級は出現していないので検証出来ず。
◯稼働時間は平均して従来機の倍に相当。
◯
これにより、フレメヴィーラ王国に於ける、新しい戦力が誕生したのだった。
だが問題もある。
全ての機体が大型化した訳ではない。
しかも新型
何故なら、巨人型は
また、大型化に伴い、部品の消耗も激しくなり、その破格な性能故に、簡単には運用出来ない弱点を内包する。
何より、製造コストが一機当たり、その大きさ故に倍以上する。
消耗を減らそうと、強化魔法を現状より強化しようにも、当時の
そこで、新型炉を使用し、従来機と同じサイズのカルディトーレを開発する事に。
出力よりも、活動時間を重点的に置いた
そこで、
───御前試合以上の技術革命を起こしたという。
……何が起きたかは、今は伏せておく。
そして出来上がったのが、
更に、運用性、耐久性を格段に上げた、大型サイズのカルディトーレ。
この2種が完成したのだった。
それに伴い両者の名称変更がされた。
従来サイズを人型『カルディトーレ』とし。
もう片方の巨人型を『カルディリーゼ』とした。
ちなみに何故『◯型』と付く
そして従来機も機種変換に伴い、順次回収され、新型機が配備されたのが、フレメヴィーラ王国の現状である。
───何だ、コレは。化け物か?
───過剰戦力もいいところだ。
この報告を受け取った現王リオタムスは頭を抱えて、まず最初にそう思ったとか。
……ちなみに、銀凰騎士団が御前試合にて何を仕出かしたか気になる方は、また後程。
そしてこの大騒動の元を辿れば、
しかし、彼等に技術革新の気兼ねがあるか、と言われれば、答えは『NO』だ。
アンブロシウスは、今までの事態の経過を振り返り、頭を抑えながら、静かに溜め息を吐く。
「……あの『銀の長』が関わったとはいえ、今までになかった技術革命の大安売りが起きたのは事実。だが、此度の騒動の元を辿れば
「でしょうな。しかしいったい何故……」
「解らん。どんな心変わりがあったのか……いや、もしや……なら合点が行くな。」
「何か、心当たりでも?」
「……リオタムスが国王就任後、
《──時に。あの馬鹿者はどうした?》
「馬鹿者?」
《……わしの孫娘じゃ。そちらに居ろう。あの馬鹿者が
「待て。何の事だ?そもそも、お主に孫がいるとは初耳なのだが……」
《……そうか。その様子なら、もう発ったか。誠に、足の早い馬鹿者よ。もうよい。この話は終いじゃ。》
「??」
「……等と話した事があってな。その時は何の事かさっぱりだったが。」
「……明らかにその『孫娘』が仕出かした事でしょう。しかし、そんな人物が、このフレメヴィーラに居りましたでしょうか?」
「いる訳がなかろう。この国には、な。」
「では何処に……」
「……隣国『アルド・レイア王国』におる。」
「は?あのアルド・レイア王国ですか?確かにあの国であれば……」
フレメヴィーラ王国と、アルド・レイア王国。
この国の交流は約200年前程から始まったといわれる。
オーヴィニエ山脈より分かれた西と東の国々。
その東の国でもボキューズ大森林に面しているのが、フレメヴィーラ王国とアルド・レイア王国である。
しかしこの2国の間には、不可思議にもう一つ、山脈がある。
この世界に於いては、オーヴィニエ山脈は2国の麓より東西南北、十字に存在していた。
そしてボキューズ大森林はオーヴィニエ山脈の東側を半ば飲み込むような形で存在しており、2国は山脈より分断された形で、今も尚魔獣と戦っている。
『北の魔獣番アルド・レイア王国』
『南の魔獣番フレメヴィーラ王国』
これが諸外国が2国を呼ぶ際の渾名である。
そして強力な魔獣に対抗すべく、肩や純然たる魔法技術に優れたためゴーレムを使役し、片や理路整然とした魔法科学を発展させ
互いの国は、同じ魔物の被害に遭って、似ているようで、異なる道を歩んで来た。
だが、
──いつか手を取り合う為に。
……が、2年前からその状況は一変。急速に交流が始まり、現実のものとなった。
「……アルド・レイアのような『北側』であれば魔法の発展は確かに著しい。しかし、かの国との交流が本格化したのは2年前の事。しかも
「確かにな。だが、あの地にはキトリーの娘が1人、向こうの貴族に嫁いでおる。そこに娘……つまりキトリーの孫がいるのだ。」
「な、何と!いったい何者ですか?」
「お主も知っておろう?あちらの窓口である、クリストファー・エルス・アースガルズ公爵。その長女が2年前単身、短期の留学に来たのを……」
「アースガルズ……もしや、あの『山脈穿ち』で御座いますか?」
「ああ。『山脈穿ち』、市井では『北の聖女』と呼ばれておる、カルディナ・ヴァン・アースガルズ嬢だ。」
既にフレメヴィーラ王国にも、伝説を刻んでいたカルディナ。
……いったい、何をした?
「国交を結んで以来、我が国と彼の国の長年の悲願だった『南北交流のための山脈横断』の術を僅か1ヶ月も掛からず成し得た、あの女傑よ。思い返せば不思議ではない。」
オーヴィニエ十字山脈の下に、現在は山脈を横切るように長いトンネルが存在する。
それまでは、山脈を越えるため、険しい山麓越えと魔獣の襲来に戦々恐々としながら、互いに往来があった。
しかし、カルディナの留学を機に、それが解消されたという。
事前に両国に通達、笑い話とされつつ了承され、結果完遂した、『山脈穿ち』。
現在は『
尚、その運用は両国で兼任、路線、車両の整備、そして権利の1/3にアースガルズ商会が食い込んでいるとか……
ちなみに、山脈の南北を穿った理由として「魔法の鍛練のためです。」と、カルディナはアンブロシウスの前で、堂々と言い切っていた。
しかし本人の意向もあり、この件は世間には公表されていない。
「ではカルディナ嬢の目的は、
「───それは無用だ。」
クヌートの言葉を、アンブロシウスは心配するなと言わんばかりに、キッパリと遮った。
何故なら……
「あの女傑なら、近々
「何ですと!?」
「しかも行き先は、エルネスティのところだ。
「な、何と……ですが、それだけが理由とは……」
「──勿論、
アンブロシウスは、テーブルの上に、数枚の紙を出し、クヌートに見せた。
それは簡易的であるが設計図の様で、内容は人型のロボットにも見えた。
しかし、クヌートはそれを見る内に、表情を強張らせた……いや、戦慄した。
その設計内容に。
「これ……は、
「……ワシも驚いた。発案はカルディナ嬢。監修はエルネスティ、といったところだ。そしてこれをカルディナ嬢に渡す許可を貰いに、昨日エルネスティは来おった。」
「──何ですと!?」
「カルディナ嬢より、我が国に反徒の意図無し、の意を込めて、この写しをワシらに渡すとの事。何とも用意の良い事よ。そしてこの設計図の中身は、我々では技術的に再現不能と来た。」
アンブロシウスは爽快に笑っているのに対し、クヌートは苦虫を嚙み潰したような苦悶の表情を浮かべている。
それはそうだ。
クヌート卿の言った通り、一つ一つの技術は
しかし、一つ一つを全て組み合わせると『全くの別物』になるという、理解不能の代物。
「クヌートよ。ワシも同じ気持ちだ。
「……ええ。ですが余計に解かりません。これは我々が本来
「ふむ、そこが『コレ』の存在理由と見るべきか。」
「ちなみに、現王陛下は何と……」
「ワシに任せると、投げてきおった。」
リオタムス陛下、カルディリーゼ・ショックを受けているとはいえ、仕事して下さい。
「まあ、結局許可はした。条件付きでな。」
「どの様な……いえ、言わずとも解かります。」
「うむ、出来たら見せろ、とな。あと、新型炉についても、手心加えず聞き出せと言っておる。藍鷹騎士団の者にも同席するよう手筈している。問題はない。」
未知とはいえ、十全に気になる2人。
しかし、それ以上に不可解なのは……
「後は、これをどう運用するか、だな。エルネスティといい、カルディナ嬢といい、何を考えているのか……」
アンブロシウスの胸に、一抹の不安が過る。
「新型炉といい、この設計図の
設計図を改めて見て、これから訪れる『何か』を予感するアンブロシウス。
これまでにない、異様な変化が襲ってくると、アンブロシウスの『獅子王』の名が鋭い勘として告げていた。
そして設計図に描かれた
エルネスティ、そしてカルディナの真意とは何なのか?
(……しかし、これの本来の乗り手が『獅子王』の名が付く者と、エルネスティは言っておったな。同じ『獅子王』名が付く者として、これは負けてはおれん!)
……別のところで対抗しそうな気配もある。
ライヒアラ騎操士学園 鍛冶学科
「ふぅ~、ようやく終わりました。」
ライヒアラ騎操士学園にある鍛冶学科。
現在は『銀凰騎士団』の拠点ともなっている場所でもある。
もうじきオルヴェシウス砦が完成間近であり、団員達はその引っ越し作業に明け暮れていた。
そんな中、とある一室で、作業台の上に溢れる設計図の製図地獄を終わらせた人物が一人。
銀凰騎士団の名前の由来にもなった、紫がかったショートカットの銀髪に、小柄な体。
そして女子と見間違うような、母親譲りの顔の持ち主は、相棒の得物、二振りのガンライクロッド『ウィンチェスター』をそっちのけに、黙々と製図作業していたのだった。
この人物こそ、銀凰騎士団『団長』、エルネスティ・エチェバルリアである。
彼が製図しているのは、彼の理想をこれでもかと詰め込んだ、相棒たる
蒼い装甲に、金のワンポイントも忘れない。
動力源には
最大の目玉は肩部、腰部、脚部に搭載した、
そして、頭部の鬼面……
──エルネスティ本来の生まれの由来である『日本』に存在した『鎧武者』が元となる、異形の
……しかし、この斑鳩は『原作』のイカルガとは、一つも二つも違った。
まず、全長が当初予定していた11.2メートルから、倍の22.4メートルに。
カルディリーゼを裕に超えている。
それに伴って、全身の全身の
肩部フレームに
そして動力炉には、新型
……以上が、エルネスティの造り上げるイカルガである。
ご理解頂けたでしょうか?
ちなみに本来の『
新型今回開発された人型・カルディトーレ、巨人型・カルディリーゼは3~4機分相当。
本来のカルディトーレは1.3倍。
テレスターレが1.5倍。
では新型
「ん~、未知数ですねぇ。それに、従来型の
エルネスティは設計図の中から一枚、
「新型炉を形成する……この
リオタムス、そしてアンブロシウスより、新型炉の経緯を聞かされていたエルネスティは、すぐにカルディナの仕業と解った。
そして、
優れた
だが、それ以上に……
「流石はカルディナさん。まだ僕の知らない事を平然とやってのける、それが素晴らしい!」
新技術探求に熱心な彼には非常に『Welcome !』な事だった。
「……まあ、僕も少々やり過ぎたと反省してますよ?
いったい誰に言い訳をしているか、独りでペラペラ喋りだすエルネスティ。
終いには「やはり脚部は、ランドスピナーより、ローラーダッシュの方が良かったのでは?」「ワイヤーアンカーがあるなら、スラッシュハーケンもアリですね。」「巨人を意味する、リーゼの名を出したら採用されたのは、僕のせいではないはず……まあ、ステークか、バンカーは破城槌で再現出来ますね。」「ヴェスバーは後々採用するとして、質量ある分身はどうしたら再現可能でしょう?」等々。
そして一通り喋り終わると、落ち着いたようで、スッキリした顔になった。
「……どうやら、僕の『記憶』も絶好調のようで。」
憑き物が取れたような、そんな表情を……
「まあ、新型炉については、いらっしゃった時にお伺いすれば良い事。そして……」
傍らにある、イカルガの設計図を保管する箱、とは別のもう一つ、厳重に鍵をかけた箱がある。
エルネスティは、それをようやく会える友に出会ったような優しい表情で見つめ、優しく撫でる。
「……ようやくお渡しすることが出来ますね、『ガオガイガー』の設計図を。」
エルネスティは、ただ待つ。
《勝利の鍵》を持って……
「───以上が現状の経緯になります。」
《……そうか、ご苦労。》
オルヴァー・ブロムダールは目の前で寝そべる一人の女性に報告を終えた。
衛使として橋渡しの役目を負って
1日の大半以上を広げた大きなクッションの上に身を預け、眠りと思索の間に生きる、アルヴの民の一人。
紫がかった白い艶やかな長い髪と、頭部に生えた、アルヴの民特有の長い『それ』が見るものを神秘的に感じさせ、完璧に整った造形の顔立ちは、この世の者とは思わせない程、美麗である。
そして尚、長寿とは思えない妖艶な肉体がキトリー自身を特別な存在だと知らしめている。
単に、美しい、としか言えない。
……当然、本人にはそんな自覚はないようだが。
キトリーは瞳を伏せたまま、報告を耳にし、労いの一言を述べる。
キトリー自身の会話は口頭ではなく、テレパスのように、直接頭に響く。
本人曰く《この方が楽》だそうな。
普段であれば、ここで話は終わる。
しかし、オルヴァーは普段とは違う状況に、不安を感じていた。
「……
《……何用か?》
「いくらお孫様が、
《……解らぬ。》
「は……?解らぬ、と?」
《……我には解らぬ存在が、古代より蠢いている。それは身に巣食う病魔の如く、徐々にされど確実に『星』の侵食を果たしている。『あれ』はそのために用意した物。されど、それでは抗うには不充分……故に『理』の戒めを解いた。『先』を往く為に……》
「ではこの先、何が必要だと?」
《一つは『命の理』……今は『永久の理』であったな。集め、束ね、形と成し、壊れて、集める……永久の循環。そしてもう一つは『勇者の証』。》
「勇者の……証、で御座いますか?」
《ただそれは『何が』とは我にも解らぬ。今の位では『あの馬鹿者』が一番近いのだ。宿す魂か、それともあれに憑く者か……何時れにせよ、オルヴァー。》
「は、はい!!」
キトリーの語彙を強めた物言いに、思わずたじろぐオルヴァー。
何故なら、キトリーは瞳を見開き、何と!ゆっくりと立ち上がっていたからだ。
その表情に明確な感情は現れておらず、普段のキトリーのまま。ただし、湧き出る感情は明確な『怒り』。
そしてテレパスではなく、御自らの『生声』で……
「とっとと、あの馬鹿者を連れてくるのだ、オルヴァーよ。そして一発殴らせろ。」
「ひぃ!!」
拳を固め、流し目でオルヴァーを睨むキトリー。
そして湧き出る
八つ当たりにも等しい、暴力的な
作業中の者は手元が狂い、寛いでいる者はクッションからずり落ち、眠りと思索の間にいたものは、飛び起きて周囲を見渡す程。
異常事態に、警鐘が鳴り響くッ!!
そしてそんな中、キトリーはゆっくり、ゆっくり……とした歩みで、オルヴァーの元に歩み寄り、顔を近付け……
「……貴様の徒人の地位を利用すれば、アンブロシウス辺りにでも進言出来よう?のう、オルヴァー?」
「ぜ、善処……します。」
《なら、良し。》
煩い警鐘の中でも、氷のように冷たいその言葉は、オルヴァーにはハッキリ聞こえていた。
そしてその瞳は、深淵よりも尚深い黒色に見えたという。
それから《疲れたから、寝る》と、クッションの元に戻り、眠りに就くキトリー。
オルヴァーは、キトリーの『苛烈な威圧』を受けた影響で、しばらく動けなかった。
そして、このやり取り、実は数週間前からポツリ、ポツリと続いていた。
その度に、報告する者が胃を痛めているとか……
(……全く、アンブロシウス前王陛下の若かりし頃に似ているのはエムリス殿下と聞くが、キトリー様の若かりし頃に似ているのは、間違いなくカルディナ様。この苛烈な気迫……向こうの教育で丸くなっていると聞いて安心しましたが、将来はやはり不安!この祖母に孫ありとは言ったものの、止められる術を持つ実力者はカルディナ様のみ……早く、カルディナ様、こちらにおいで下さいッ!!)
オルヴァーにしては、珍しい懇願の念。
そして彼はカルディナがフレメヴィーラにやって来る前にカルディナ宛に手紙を出した。
だが、翌日カルディナとすれ違いでアースガルズ領に届いた事を知るのは、少し後の事で、その日カルディナがフレメヴィーラの地にやって来たことを後から知り、再びキトリーに散々責められたという……
《……NEXT》
───以上、フレメヴィーラ王国に関する間話です。
オッサン達から始まり、エル君、〆にキトリーさんです。
それぞれツッコミとフラグ満載でお送りしました。
『公爵令嬢は~』のシルエットナイトは今後、このような設定で行きますが、細かい設定も後々いろいろ補足して出して行きます。
ちなみに、エル君のウィンチェスターの鞘がどうしても、ガンダムF91のヴェスバーに見えるのは気のせいでしょうか?
というか、キトリーさんに最後を持ってかれたのは気のせいでないハズ……
評価、ご感想、お待ちしています。