公爵令嬢は、ファイナル・フュージョンしたい。   作:和鷹聖

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本当にお久しぶりです。
時間がかかって申し訳ないです。

何故かこの話は難産でした。
加えて色々あって執筆時間も取れずズルズルと……

何でだろうな……

カルディナさんとエル君を組み合わせると、内容が非常に暴走する。

なので、話がやたら長くなったので、ひとまず断念し、もう一つ分けました。
故に話の内容も相当ぶっ飛んでいると思い、読んでください。

あ、次回も続きますので。



……ウン、ドウシテコウナッタンダロウ?


Number.07 ~狂人、2人の会談~(2)

 ───『Hello! My World!!』

 

 

 アニメ『ナイツ&マジック』の主題歌として使われた曲である。

 軽快なリズムと、ハイトーンボイスの歌声は聞き馴染むと良く聞こえる。

 

 

 ただ、この世界はマクロスやシンフォギアではないのだ。歌自体にそんな力があるかと言えば、答えは『NO』となる。

 なのに、何故か事象を限定的にだが、変える程の力を持っていたりする。

 何故か……

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 ──『詩』とは、魔術的に言えば『詠唱』にあたる。

 言葉の羅列は力を持ち、魔力(マナ)を用いて現象へと誘えば、魔法(願いを叶える力)として発現する。

 

 魔法の原点の考え方である。

 

 魔力(マナ)───その役割は『願いを叶える力』。

 物質的存在は元より、半物質的存在(精霊や幽霊、魔法的存在を指す)、幽玄なるもの等々が『そう在りたいとする力』である。

 

 それは古来よりある『根源的な力(オリジン・ロー)』。

 類似する力としてゲ○ター線や、光○力、イ○等々、不思議パワーの一種だ。

 

 魔法とは魔力(マナ)を現象へ転換する技術である。

 そのために必要なのが魔法術式(スクリプト)で、それぞれ現象ごとに決まった図形で表される。基本的な現象を発現するための基礎式と、それをつなげて使うための制御式に分かれる。

そしてこの世界の意思ある生物なら必ず有する機能である脳内仮想器官、魔術演算領域(マギウス・サーキット)は、魔術術式(スクリプト)を構築し処理する。

 最後に触媒結晶──魔石を触媒とし、処理された魔術術式(スクリプト)を発現させる。

 

 

 では、生命讃歌のような『詩』を中心に一個体の生命を模した術式を組み上げればどうなるか?

 

 命を育む(しるべ)となって、生きようとするため循環……源素(エーテル)を取り込み、触媒結晶を介して生命が使える魔力(マナ)となる動きを発現させる。

 

 だが、巷で用いられる魔法は、魔力(マナ)を触媒結晶を用いて発現させるもの。

 触媒結晶の使い方が違うのでは?と思われがちだが、この世界では生きる上で微細ながら生命体は、科学的な栄養素の他、魔力(マナ)を消費している。

 

 この世界で『存在するもの』が生きる上で、魔力(マナ)は必須なものだ。

 

 ちなみに触媒結晶を持たない生物も、微細ながら体全体の組織──特に骨が触媒結晶の役割を果たしているという。

 生きる以上、意識せずとも魔力(マナ)は消費している。

 

 つまり魔力転換炉(エーテルリアクタ)は、この世界で生きる上で必要な根底的行為を『人為的に』再現していると言える。

 

 

「……つまり人間の体も魔力転換炉(エーテルリアクタ)と同じ事をしてるって事よね?」

「その通りですわ、アディ。休むと消費した魔力(マナ)が戻るのは、大気中の源素(エーテル)を呼吸で取り込んで変換しているからですわ。ただ、人間の変換率は非常に低いですし、定量になる頃には体内に魔力(マナ)が蓄積された分と、消費量が安定するよう、体が勝手に調整しますのよ。」

「つまり、人体と幻晶騎士(シルエットナイト)の魔術的構造はほぼ一緒、という事ですね!?」

「……暴論ですが、その通りですわ、エル。」

 

 

 その結論に嬉々として喜ぶエルネスティに、カルディナは頭を抑えて肯定する。

 カルディナにとっては「解き明かしたら、また出てきましたわ……」と頭痛の原因になる事案でしかない。

 なお、この手の秘密事項の発見は、カルディナにとっては日常茶飯事である。

 そして、サラッと世界の核心的な事項を自然にねじ込んでいるにも関わらず、「ちょっと話が逸れましたわね」と言うあたり、カルディナらしいと言える。

 

 ここで話を挟むが、フレメヴィーラ王国を含む、南半球地域の魔法技術は非常に合理的で論理(システム)的である。

 しかし、ある理由から半物質的存在が存在しない影響もあり、その手の存在は半ばお伽噺の存在とされており、大概耐性がない。

 それはエルネスティ然り。

 前世の、SEとしての感覚が魔法構築に一役買う程に非常に合っていたし、オカルト事など彼には縁がなかった。

 しかし耐性は転生者故に、他の人よりもある。

 

 だからといって魔力転換炉(エーテルリアクタ)の中心術式に『(Hello! My World!!)』が使われている等とは思ってもみなかっただろう。

 

 エルネスティが先程、彼らしくもなく憔悴してしまったのは、転生先で出会った人類の叡智の結晶(シルエットナイト)が、詩で出力が上がる程度の『訳の解らないもの』だったのか?と不安に駆られてしまったからだ。

 当然、自身のルーツ(と思わしき)作品で使用されている歌であったことも、驚いた要因であるが……

 

 しかし疑問を解消すべく、エルネスティは気持ちを切り返し熱心に聞いているが、残りの3人──アディ、キッド、ノーラはそれぞれ驚愕するのだった。

 

 特にノーラ・フリュクバリはこの事に頭を抱えた。

 学術的な話とはいえ、このような話を聞くとは思わなかった。

 

 

(……この話は聴きたかった魔力転換炉(エーテルリアクタ)の話と直接関わりない……いえ、あるのですが、まさか生命の根底に関わる事が出て来るなんて。今回の聴取の件とは別に報告した方が良いのでしょうね、きっと。)

 

 

 気持ちを切り返したところで、ふと視線を感じた。

 それは「どうぞ、どうぞ」とこちらの心を見透かしているような、若干笑っているフミタンだった。

 

 ──諜報の人間がこの程度で音を上げるのですね?と。

 

 煽られているようで、若干イラッとした。

 

 

 話を戻すが、生命の心臓を魔術的に再現した魔力転換炉(エーテルリアクタ)は、理論上、永久機関である。

 その機能を単に言えば、源素(エーテル)を触媒結晶を介して魔力(マナ)に変換する。

 そして触媒結晶の大きさで、変換率は変わるのはご存知の通り。

 

 そして刻まれた『生命の詩(ライフソング)』の大規模術式(スクリプト)は、自律神経の様な役割だと推測出来る。

 

 では『生命の詩(ライフソング)』の中心術式にある『詩』は何なのか?

 

 

「きっと方向性なのでしょう。ある種の性質、循環する際の『在り方』を決めていますので。故に『詩』自身がそれに見合った『器』を求めていまして、似たような『器』であれば能力を発現したがっている、と言えます。」

「……それって極端な話、中心術式の『詩』の内容次第で、外見がザックリ似ているという条件をクリアさえすれば、この世界ではどの様な『機体の能力』も発現出来るって事ですか?」

「ええ。」

 

 

 例えば、幻晶騎士(シルエットナイト)の左上腕部に魔導兵装の雷の杖(アークゥイバス)を固定し、右腕に剣を持たせる。背部にカブトムシの甲殻のようなパーツを付け、オマケに角をワンポイントに付ける。

 そして魔力転換炉(エーテルリアクタ)の『生命の詩(ライフソング)』の『詩』を『ダンバイン、とぶ』にすると、AB(オーラバトラー)ダンバインになる。

 正確にはその機体性能のみ変わる。

 

 

 ……実に馬鹿げている話だが、カルディナが森都(アルフヘイム)にて炉を造り上げ、その地(アルチュセール)を護るアルヴァンズの機体を借用し、実験して実際に空を1分程飛んだのだから仕方ない。

 更に模擬戦で法撃を「オーラバリア!」で防ぎ、チャムの声真似をしながら「ハイパー・オーラ斬りだぁーーー!!」と叫びながら、振り下ろした剣から出たオーラが、小さい丘を両断。

 そして魔力(マナ)を込めると、魔力転換炉(エーテルリアクタ)よりオーラ力が湧き出て、極限まで高めた後「なめるなァァァァーーー!!!」と叫ぶと、レプラカーンじゃないのにハイパー化した時点で頭を痛めた。

 じゃあ、やるなと言いたい。

 

 だが4つの例は、どれも起動から2分以内には魔力(マナ)切れを起こしていたため、実用化までは程遠く、そしてザックリ造った影響で、耐久性は実用化には程遠いものだった。

 元々の機体性能と出力が釣り合っていない事から来る結果だと、その時ハイパー化の効力が切れた後、カルディナは考察した。

 同じ性質のエネルギーではないので、齟齬や不具合あって当然と言える。

 

 だが、魔力転換炉(エーテルリアクタ)よりオーラ力が出たのはどうしてなのか?

 

 もしくは魔力転換炉(エーテルリアクタ)が文字通り魔力(マナ)をオーラ力に『転換』ならぬ『変換』しているのか……と思ったり。

 

 故に出来た、発現したのではないだろうか?

 幻晶騎士(シルエットナイト)では出ない特性を持った、特殊な機体として。

 

 それからカルディナは幾つかの魔力転換炉(エーテルリアクタ)を自作、アルヴァンズの協力もあり、試験運用を行った。

 尚、外見はカルダトアに『土魔法』でそれっぽく整えており、推進器は『風魔法』で代用した。

 

 試作運用した機体は以下の通り。

 

・AS仕様:サベージ(成功)

・AS仕様:コダールi(成功)

・KMF仕様:月下(藤堂機)(成功)

・KMF仕様:ガウェイン(成功)

・戦術機仕様:ラプター(成功)

・戦術機仕様:UB型チェルミナートル(起動せず失敗)

・戦術機仕様:M2型チェルミナートル(成功)

・MS(核融合炉)仕様:ジ・O(成功)

・MS(太陽炉)仕様:Oガンダム(成功、GN粒子発生確認)

・マジンガーZ(初期)仕様(稼働成功、一部武装失敗)

・ゲッター1仕様(起動せず、失敗)

・ブラックゲッター仕様(成功)

・GEAR戦士電童仕様(起動せず、失敗)

・グルンガスト仕様(成功、可変機構が再現不可)

 

 

「リアル系、スーパー系と様々ですね。」

「形は違えど、根底は魔力(マナ)で機体出力を支えています。まずは小さい出力設定の機体から試しましたわ。結果は上々。稼働時間こそ極端に短いですが、多種多様な能力を発現して下さいましたわ。」

「いや、サベージ以外は高い筈ですよ。しかし戦術機は武御雷や不知火があるのに、チェルミナートルとラプターですか?しかもKMFは紅蓮を無視して月下とは……」

「ラプターは高機動を想定して。チェルミナートルはモーターブレードを再現したかったのです。月下も廻転刃刀が目当てです。激しいモーター音と切り裂く時の振動は最高でしたわ。」

「でしたら、次はサブアームを使った4連突撃砲はどうでしょう!?あれは漢のロマ──!」

 

 

 ──閑話休題(長くなるので省略)

 

 

「しかしUB型チェルミナートル然り、スーパー系は何故か失敗例が多いですね。どうしてですか?」

「複座型だからでしょう。単座型では認識しないようで。可変機は、元より変型機構がない幻晶騎士(シルエットナイト)に適応されません。ある意味ルール化してます。」

「妥当ですね。」

 

 

 しかし、上記の機体達は能力の再現は出来ても、パワーまでは再現出来なかった。そしすぐ魔力(マナ)切れを起こす。

 だが、ある事に気付き、修正して再度試作し出した結果、魔力(マナ)切れは若干解消され、出力すらも上がった。

 そして改良した炉で新たにチャレンジ。

 すると、稼働時間がわずかに増加した他、特殊能力は軒並み再現されたのだった。

 

 尚、全ての機体はカルディナの他、アルヴァンズの騎士達も率先して試験に参加し、模擬試合という名のシゴキを受け、試験結果を出した。

 

 

「……だからアルヴァンズの人達、御前試合の時に動揺してなかったのね。」

「……あの時は本当にヤバいと感じたぜ。巨人型なのに動きがキレッキレ過ぎて。エルの奇襲すら避けたし。」

「その後の、僕の全力の高機動攻撃が『我等の特訓の成果、なめるなァ!!』と言って二重、三重に回避された時は鳥肌ものでしたよ。まあ、数機は撃墜判定を出しましたが。戦う前にカルナの事を彼らから聞かなきゃ、こちらが厳しい戦いを強いられてました。」

「ああ。試験中、ラプターで空から散々追い込み、ジ・Oで威圧し続け、月下(廻転刃刀)チェルミナートル(モーターブレード)死の恐怖を演出した(コックピットを攻撃しまくった)影響ですわね。そのお陰で小回り重視で回避出来るようにさせました。しかしその台詞が出るとなると……一番怖かったのはブラックゲッターの、あの所業でしたのね。」

「「「──何をした!?」」」

 

 

 ───閑話休題。

 

 

「……で、後半から行った工夫は、何なのですか?」

「音符を付けて『曲』とし、『詩』と合わせて『歌』にしました。それで機体性能がグンと上がりましたわ。」

「そ、それは……最終決戦(SRWお馴染み)のフルコーラスBGM仕様!?最初からクライマックスですね!!」

「機体毎に固定されてますが。」

「それでも素晴らしいッ!!」

「でも、生物の周波数では聞こえませんので。」

「orz」

 

 

 普通に『主題歌』と捉えてもらいたい。

 魔力転換炉(エーテルリアクタ)の中心術式に、歌に含まれる全ての音楽情報を入れた上で、『生命の詩(ライフソング)』を刻むと、源素(エーテル)の吸入量が自動的に増えて出力が上がり、同時に主題歌と、それに見合った『機体の外見』を元に能力を発現するのだ。

 何とも都合が良過ぎる話だ。

 

 

「そもそも、何でそんな事が起きるの?歌にそんな力があるとは思えないけど……」

「さあ……そこまでは私にも何とも。」

 

 

 ──否。カルディナには何となく目星は付いていた。

 犯人はこのふざけた世界を創造した、未だ見ぬ『神』か、それに近しい存在だろう。

 それも『SRWの様な存在(クロスオーバー)』を好む輩だ。

 歌に力があるのではなく、歌を目印として機体能力がダウンロードされるような仕組みを創ってもおかしくはない。

 この世界の魔力転換炉(エーテルリアクタ)は『歌』を詠唱とした、一種の『神降ろしの器』かもしれない。

 

 ただ、それをこの場で話して納得が得られるかは難しい。これは推論の域を出ない事項だ。

 それに誰も、どうしてこのような歌があるのか?という疑問を投げ掛けようとはしなかった。

 

 何故ならエルネスティは幼少の頃に前世を思い出した為に。

 キッドとアディは、カルディナが留学してきた際に、アニメ作品を一部見せられていたから。なので、2人には「あの曲(ドラ○もん)が、ねぇ……」とイメージがあったため半信半疑にしか思えない。

 

 ──ならばそのイメージ、払拭せざるを得ない!

(ただし、後程。)

 

 

 そして、ノーラはプチ混乱中。

 狂人共の会話に頭が付いて行かず、後半は頭を真っ白に記録を取るだけとなり、その内容まで疑問に思えなくなってしまったのだ。

 

 その姿に気付いた人物──フミタンは笑いを堪えて見ていた。

 

 

 そして実験の最後に、カルディナは魔力転換炉(エーテルリアクタ)に元々あった『Hello! My World!!』を完全な歌にした。

 すると出力が他の実験より段違いに上がったのだ。

 

 だがそれはパワーアップというより、押さえ込まれていた『本来の力』が戻った、という感じだとカルディナは思った。

 

 しかし、その謎を追求しようとした頃には留学期間が間近に迫ってしまい、炉に見合った機体の調整までは出来ず、結局炉の最終調整と、肝である中心術式の『超々高密度圧縮術式』をアルヴの民に託し、カルディナは『ロクに誰にも挨拶も交わせず、アルド・レイア王国へと帰路に着いた』。

 

 ……そしてカルディナが去って2ヶ月程で『新型炉』が誕生したという。

 

 

「……以上が、私が留学中に行った事ですわ。」

「成る程。ありがとうございます。」

「何て言うか……凄く濃い2か月だったんだな。」

「まさか魔力転換炉(エーテルリアクタ)をパワーアップさせてたなんて。」

「結果的には誘惑に負けて、習得しただけです。結果は上々となりましたが。ですが、私も本当はテレスターレの件に関わりたかった……エルと私がいれば、最悪奪われる前に一号機を行動不能ぐらいには出来た筈、と今でも思いますわ。」

「それはもう仕方ない事です。僕だって当事者であったにも関わらず、防ぐ事が出来なかった。」

 

 

 加えて、事前に襲撃があった事を判っていたにも関わらず。(2人以外には秘密であるが。)

 しかし、テレスターレの件は過ぎてしまった事。

 過去はどうする事も出来ない。

 だからこそ……

 

 

「「──専用機(自分のロボット)を創り、手に入れる。」」

 

 

 2人は別れる間際、そう誓ったのだ。

 そして今日に至るまで、互いに研鑽し合っていった。

 そして、2人はそれを改めて確認し合い、微笑(わら)うのだった。

 

 

 なお、今まで解説してきた新型魔力転換炉(エーテルリアクタ)であるが、その製法、原理を他者に知られたところで、模倣は不可能である。

 そも、魔力転換炉(エーテルリアクタ)はその製法の難しさ故に、アルヴの民以外はエルネスティとカルディナしか創れず、新型炉の新規開発に至ってはカルディナしか『生命の詩(ライフソング)』に応用出来る『歌の情報』を持っていないため、現行以上の炉を造り出すことは不可能である。

 

 

 

 

「……という訳で、アディ。カルナに『あれ』を渡してください。」

「うん、わかったわ。」

 

 

 アディよりカルディナへ渡されたのは、とある木箱。

 中身は十数枚の紙束である。

 カルディナはすぐにそれらを精査。

 一枚一枚、じっくりと……

 そして全てを見終わったカルディナは、静かに呟いた。

 エルネスティもそれを見て満足げに笑う。

 

 

「……完璧、ですわ。」

「如何です?最終改定版は?」

「よく前回問題になった変形時の強度不足を補えましたわね?」

「そこは『あのサンプル』を提供して下さったお陰です。」

「流石、設計において右に出る者無し、ですわ。」

「……褒め過ぎです。」

 

 

 カルディナが受け取ったもの、それは『ガオガイガーの設計図』である。

 カルディナが留学して以降、流通の便が良くなった故に出来た事で、カルディナ発案のこの設計は、エルネスティと2年間文通するが如く、修正して送り返すという事が続いていた。

 

 そして根本的に何故エルネスティと、この様な事をしていたかというと、単純にカルディナの事情を理解し、設計に協力出来、その腕が卓逸なのが、この世界ではエルネスティだけ、という事だ。

 そしてカルディナ自身も設計に長けている訳でない。むしろ得意ではない。

 実戦に耐えれる程の設計を単独で出来る程、ガオガイガーの構造は甘くないのだ。

 

 この話を持ち掛けた幼少時は、互いにズブの素人。

 しかし時を重ねるにつれ、腕を磨く事が出来、この度設計図が完成に至った。

 

 尚、イカルガも共同設計にしようか?とカルディナより話を持ち出そうとしたが、その頃には設計思想が互いに違っていたのを感じたため、口には出さなかった。

 

 しかし、交換日記の如し交換設計の中で、カルディナの魔法技術を十全に習得したエルネスティが、それを活用しない訳がない事は、ご理解出来るだろう。

 

 ……そして、もう一つ。

 

 

「──この魔術演算機(マギウスエンジン)魔法術式(スクリプト)、宜しいのですか?」

「ええ、そちらは僕からのプレゼントです。」

「でも、これはアディとキッドの努力の結晶でしょうに……」

「──それは大丈夫!」

「俺もアディも納得してる。カルアに役立て欲しいからな。」

「……アディ、キッド。」

 

 

 それは人馬型幻晶騎士(ツェンドリンブル、ツェンドルグ)の四足歩行のものだった。

 カルディナが使うには多少手を加える必要はあるが、それだけで済む完成度。

 以前カルディナが「四足歩行の魔術演算機(マギウスエンジン)を造るのは難しい」と手紙でボヤいていた事を覚えていたようで……

 

 

「新型炉の事は結果的にフレメヴィーラ王国にはプラスになっています。ただ前王陛下からは、公には出来ない事なので、僕達の裁量で自由に決めて良いと。なので少しでも助長出来るようにそれしました。」

「……確かに受け取りましたわ。これで国本で開発に着手出来ます。ですが……その。」

「何か?」

「……エルとキッドが、蓑虫の如く縛られたままで、キリッとそんな事を言われても大して心に響かないというか……」

 

「「「……」」」

 

 

 折角の恩情も、前話より縛られたままの2人(エルとキッド)見て、感動が半減したという……

 

 

「……締まりませんねぇ。」

「──貴方(元凶)が言わない。」

 

 

 本日2回目のハリセンが舞った。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

「ではカルナ。僕にも約束の報酬を……」

 

 

 縄を解かれた後に、エルネスティが放った言葉である。

 その言葉に一同、冷ややかな視線に……

 

 

「……このタイミングで言います?」

「はい。おそらく今を逃すとカルナは親方辺りに挨拶した後、帰るかと。」

「そんなまさか……」

「──お嬢様ならあり得る展開ですね。」

 

 

 フミタンの突き刺さるような発言に、カルディナの顔は明後日の方向に。

 

 

「……そのまま忘れていれば良かったものを。」

「それは許しませんよ、カルナ。働きに見合った正当な報酬は受け取らねばなりません。」

「冗談ですわ。先程の行いで乗り気でなかっただけで、流石にここまで振り回したのです。無下にはしませんわ。」

 

 

 と言いつつ、右手を無造作に『収納魔法』の黒い穴の中に手を入れる。

 そこから取り出してきたのは、お嬢様の工房お手製の魔術式投映機(プロジェクター)拡声器(スピーカー)の上映セット。

 更に、10センチ大の正方形の板状水晶盤がズラリと入った箱を幾つも取り出した。

 

 それは魔術的な情報集積体『在りし記憶の板札(メモリアル・カード)

 元は、直径20センチ程の透明な球体であった『在りし記憶(メモリアル)』の進化版である。

 

 

 

「まずは『ガンダム』から『逆シャア』までと、そして熱望してました『F91』のHD仕様のフルセット。『Ζ』は劇場版もありますわ。」

「──ktkr!!」

 

 

 エル君、歓喜のあまりガッツポーズ。

 

 

「次は『G』と『W』、『X』、見れなかったと気にしてました『UC』のフルセットです。」

「キタ━━━ε=ε=ε=(*ノ´Д`)ノ゚.+:。」

「Σ(゚Д゚)クルナ━━━━!!」

 

 

 

 喜びのあまりに、カルディナに抱き付こうとした瞬間、3度目のハリセンを執行。

 

 

「痛いです。」

「……そんなにはしゃぐのであれば『ガン×ソード』と『ダンクーガ・ノヴァ』、『ゲッターロボ(世界最後の日)』をぶち込みますわよ?」

「『マジンカイザーSKL(地獄の公務員)』はありますか!?」

「あります。『ギアス』地上波全編と『SRW ジ・インスペクター』はオマケしておきますわ。」

「何と言う僥倖!!」

 

 

 ワザとか!?と思うほどのやり取りである。

 そしてコールされる度に次々と積まれ行く『在りし記憶の板札(メモリアル・カード)』。

 ……これ、報酬の一部なんですよ。

 

 

「いいなぁ、エル君。私も何か見たいなぁ……」

「ならアディも続き見ます?『ドラえもん』。後は『ベルサイユの薔薇』かしら?」

「さっすがカルナ!愛してるぅ!」

 

 

 どうやら留学中にエルネスティ以外にも、アニメ見せていた様子。

 そうなるとキッドも食い付いてくるようで……

 

 

「なあ、俺には!?」

「──『無限のリヴァイアス』。」

「……嘘、だよな?」

「じゃあ『ぼくらの』。」

「……カルナは俺の事、嫌いなのか?」

 

 

 『orz』と、うなだれるキッド。

 無理はない。

 かつて、この2作連続視聴でキッドはトラウマを作っていたりする。

 これで『蒼穹のファフナー』まで見せた日には……

 

 

「冗談ですわ。はい、『グレンラガン』。」

「──ヤッホーーーイ!!」

「……そういえば、これの影響でキッドはツェンちゃんに大型のドリルランスを装備しようとしてたわね。」

「フフン、ドリルは漢の魂だッ。」

「その通り!ですわ!」

「あ~、それなんですがねぇ……」

 

 

 キッドに続いてカルディナも同意するが、エルネスティが待ったをかけた。

 彼曰く、以前ドリルランスは設計したものの重量とバランスの関係でボツになった経緯があるという。

 加えてフレメヴィーラ王国に回転機(モーター)がない上に、あったとしても動力源はどうする?という問題点もある。

 なお、ドリルじゃなければバランスを保ちやすい、という。

 

 

「──という訳でオススメ出来ません。」

「……うう、カッコいいと思うんだけどなぁ。」

「早々、上手くは行きませんわねぇ。」

「確かに『グレンラガン』……ドリルは漢の魂でしょう。しかし、キッドにはもっと相応しいコンセプト(ロボット)がありますよ。」

「……まあ、確かに。私にも心当たりがありますすわ。」

「……参考までに、いったい何で御座いますか?お二人共。」

 

 

「──それは『グロースター』です。」

「──それは『真ゲッター2』です。」

 

 

 

 

 

 ………

 

 

 ……………

 

 

 ………2人の後ろで、落雷のエフェクトが起きたのは気のせいだろうか?

 そして眼球のみ互いを見合せ、また視線をキッドに戻す。

 

 

 ……その時、キッドは見てしまった。

 一瞬、見合せた2人の表情が、笑っていなかった事を。

 

 

 ──そして始まる無慈悲なプレゼン合戦が、キッドを襲うッ!!

 

 

「──グロースターの設計思想の流用であれば重量バランスを気にせず大型ランスを装備すれば良いだけです、追加で脚部にランドスピナー装着すれば地上走破も容易、突撃槍だって安定した姿勢で行えま───」

「──真ゲッター2のように大型ドリルを腕に一体化させれば槍とは違ってバランスが安定するでしょう、さもなくばドリルランスに対してカウンターウェイトを設置して重量バランスを保てば、それには大型の盾を流用すればよいでしょう、あ、回転機(モーター)は私の工房からお売りしますわ、出力増加には幻晶騎士(シルエットナイト)用新型炉を2機使えば───」

「──スピナーを使って高速反転すれば安定姿勢のまま再度突撃が可能になります、そしてスピナーの切り替えでどんな地形にすら対応出来るので活動地形を選びません、なので───」

「──従来機以上の出力が得られますので、強行軍を行っても馬車の搬送をしても問題なく運用可能かと。なので───」

 

「──『グロースター』仕様にしません?」

「──『真ゲッター2』仕様にしません?」

 

 

 そして同時に終わる2人のプレゼン。

 満面の笑みでキッドを見つめる、2人の発する「こっちを選べ」の無言の圧力が酷い。

 なお、キッドには半分も理解出来なかったようで、辛うじて絞り出した言葉が……

 

 

「……2人の意見を合わせて採用、って事じゃダメ?」

「──ダメですね。ドリルは無理です。」

「──ダメですわ。ドリルは付けるべきです。」

(……うわぁ~、地獄ー!)

 

 

 なお、このプレゼンに折半(引き分け)等有り得ない。

 だが、どちらも譲るつもりはない。

 

 

「……宜しい、ならばプレゼン(クリーク)(第2ラウンド)です。」

「……ええ。所詮、私達は(リアル系信者)(スーパー系信者)の間柄。完全に和解など不可能。ですが、結論(採用案)は出さねばならない。」

 

 

 

 何という威圧感か。

 互いに技術者、研究者故に、己の案が採用されない、通らないは許されない。

 

 カルディナは右手で激しく指差す○太郎。

 エルネスティは右手で顔を隠して目だけチラリズムの、ジ○ナサンのポーズ。

 

 立ち姿がキレッキレのジ○ジョ立ちであれば、顔も激しくジ○ジョ顔であるッ!!

(ニホン人なら誰でも出来る近代芸能では!?というカルディナ偏見より。)

 

 

 

「……さあ、始めましょう!僕達のプレゼンを!」

「このプレゼン、如何にツェンドリンブルに相応しい案を出せるか……」

 

「「──どちらが優れたより善きプレゼン(クリーク)(物理)が出来るかを!!」」

 

 

 

 突如、カルディナエルネスティの宿命の対決(??)の、そのゴングが鳴るッ!!

 

 

 ……というか、主旨がずれている気が。

 

 

 

 

 

《NEXT》




話の内容として、ガオ×ナイツマではなく、どこかのオタ同士の会話と錯覚しそう。
そして、アディとキッドは交通事故レベルでカルナさんの趣味に巻き込まれている。
ノーラさんは逆に不憫。こらフミタン、笑うな。

エル君の報酬は少々サービスし過ぎかなぁ?
皆さんはエル君の報酬は他に何が良いと思います?

新型エーテルリアクタは、歌+姿形が正確であれば再現できるような設定にしていますが、逆に言うなら、新型炉1基だけでは原作再現のみの応用がしづらい仕様になっています。
では、2基であれば?

ただし、カルディナさん以外は創れない仕様(白目)
エル君は模倣なら可能なレベル(orz)

あと、今まで誤字報告してくださった方々、ありがとうございます。
なんらアクションがないと思っていらっしゃる方もいるでしょうが、ちゃんと見てます。

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