公爵令嬢は、ファイナル・フュージョンしたい。   作:和鷹聖

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お久しぶりです。
だいぶ更新が遅くなってしまいましたが、無事生きてます。
世間はコロナ騒ぎで大変になってますが、私は健康そのものです。
皆様も御自愛下さい。

さて、無茶苦茶な狂人達の会談もこれで終わりです。
どんな結末を迎えるか、どうぞ!


※この話の終わり辺りに『いつか星の海で』の歌詞を入れています。


Number.07 ~狂人、2人の会談~(3)

 ──試験訓練場

 

 

 

「──しかし、このガオーマシンってのは、奇怪に見えて、実はその個々の役割がハッキリして性能は凄ェな。」

「よくもまあこんなの思い付くよねぇ。」

「空は飛ぶし、地面に潜るし、何でもアリね。」

「それでいて、これが人間用の個人装備というのが驚かされるな。装着している姿は幻晶甲冑(シルエットギア)より鎧感があるのに、分離(?)すると訳が解らなくなるが……」

「……ある意味、実にあのお嬢様らしいと言えるね。」

 

 

 ダーヴィット、バトソン、エドガー、ディートリヒ、ヘルヴィーが試験場にて待機中のガオーマシン各機を間近で見ていた。

 やはり彼らとしてもガオーマシンは異常と言わざる得ないが、エルネスティによって鍛えられた(マヒした)感覚が正気を保たせていた。

 

 

「それは俺も同意するぜ。何せ、全く方向性の違うモノ同士を、何と身に纏うんだ。こいつを考え出した奴の正気を疑うぜ。」

「……親方。それ、カルナが聞いたら怒るわよ、きっと。」

「構うかっての。あのお嬢様には3年前に散々銀色坊主(団長様)と好き勝手やられたからな。その所業は今でも忘れちゃいねぇ。今更正気を疑ってもおかしかねぇ。」

「……そう言われると、否定出来ないな。」

「そしてその結果、テレスターレが出来た、と。」

「……あれは本当に傑作機だった。銀色坊主の出した案に対し、不安個所を完全にカバーしたお嬢様の魔法の手腕はヤバかった。そして組み上がったテレスターレの性能は、当時のどの最新機よりも欠点もなく、強かったと断言出来る。奪われたのはショックだったが、その隠滅方法も狂気じみていると来た。その狂人様の片割れが、心血注いで創ったのが、こいつだ。」

「しかもそれは、これから創る予定のミニチュアという……幻晶騎士(シルエットナイト)の技術を流用しているとはいえ、何でこんなものが出来るやら……」

「本当ねぇ……」

「あ~、それはな。きっと『仕方なく』じゃねえか?」

「仕方なく?」

「親方、どうしてそう思えるの?」

「おそらくな、ガオーマシンって奴ら(こいつら)は本来、別の技術で創られたものなんだろうよ。けど『再現』しようにも、この世にある技術ではどうしようもない。だから『仕方なく』幻晶騎士(シルエットナイト)の技術で創った。俺にはそう思えてならねぇ。」

「そう思う根拠は?」

「……お前ら、これ(・・)を空想であっても思い付くか?」

「……いや。」

「無理、ね。」

「うん。むしろどう思い付けと?」

「オイラも無理。この世のモノとは思えない。」

 

 

 如何に性能が良くても、彼等の目に映るのは怪しい空飛ぶ黒い板(?)と、回転する角が付いた四角い箱、羽の付いた長細い物体だ。

 幻晶騎士(シルエットナイト)に慣れ親しんだ者達が思い付くものではない。

 

 

「だろう?俺にも無理だ。そもそも鎧をこんな仕様で扱う意味がねぇ。発想がそもそも『別次元に』違うのよ。何か別の思惑、全く違うモノがあるって言われた方が、まだ説得力があらぁ。」

「確かにな。」

「まず『合体』って時点で私達には思いつかないわよね。」

「何でこんな仕様にしたやら。あのお嬢様の事だ。ロクでもない事を考えているんだろうな。」

 

 

 当然の疑問に三者三様の感想が出てきた中、やれやれと頭を掻くダーヴィット。

 だが、その観察眼は流石の一言。

 

 

(……全くよ、ダーヴィズの野郎もあんな無茶苦茶なお嬢様ん所で、何やってんやら。「英雄の剣を造る」とか言って出ていった癖に、英雄とは真逆の人物に拾われてんじゃねぇか。)

 

 

 直接関わってはいないが、親との喧嘩別れで家を出たと聞いた従弟(ダーヴィズ)、その所在をカルディナより聞かされたダーヴィットはゲンナリしていた。

 半ば消息不明だったので、所在がハッキリしたのは安心したが、想像以上に危ない場所(お嬢様の工房)にいるとは思わなかった。

 

 それはガオーマシンを見れば、すぐ解った事だ。

 

 目の前にあるものは小型だが、実用化された時の実物大の性能は、おそらく自分の知る幻晶騎士(シルエットナイト)など凌駕する事を。

 

 カルディナの留学中のあれやこれやを知る身であるため、彼女の技量は充分に熟知しているが、今や技術的な事は当時より更に先に行っている。

 ましてや滑空や滞空ではなく『飛行』の要素を取り入れている。

 

 

(俺ですらエルネスティ(銀色坊主)の『アレ』で、これから実現化すると思っていた矢先にコレだ!どんだけ先を行ってやがる!?学ぶべき事が多過ぎて頭が混乱するじゃねぇか……! ったくよぉ、ダーヴィズ。お前ェ、トンでもない所にいやがるな。)

 

 

 そんな時に試験場の搬入口より、得物のガーンディーヴァで魔法を発動させ、脱兎の如く疾走するオルター兄妹が乱入する。

 そしてアディが大声を上げて皆に知らせた。

 

 

「───みんな『それ』から離れてーーーッ!!!」

「あの2人がヤバいーーーッ!!!」

 

 

 続け様にキッドも叫ぶ。

 一瞬、何の事か解らなかったが、『2人がヤバい』のワードに、全員事態を察知。

 誰に指示される事なく、観戦席まで退避する。

 その瞬間、待機状態のガオーマシン各機が一斉に起動し、一斉に動き出して周囲を旋回する。

 

 そしてその中央に、突如として『黒い穴』が出現。

 奈落からリフトアップされるように『黒い穴』より、目を瞑り、腕を組んで姿を現したのは、カルディナだった。

 

 そして目を見開いた瞬間、左腕を高く掲げてポーズを取った。

 

 

「───『装着(イークイップ)』ッ!!」

 

 

 地面から突如として8本の身の丈を遥かに超える黒い柱が生え、更に柱と柱の間に黒い壁が出現し、瞬く間に壁や柱が砕け、消える。

 

 突然現れた黒い柱と壁──瞬間装着空間は、カルディナが野外にて『IDメイル』に着替えるための、即席の密閉空間である。

 

 その中から現れたのは、白い戦装束に金色の鎧、黒いスカート、翡翠色のモノクルの装備を携える『IDメイル』を身に付けたカルディナだった。

 エヴォリュダー・ガイの『IDアーマー』とガイガーのボディをイメージした『IDメイル』は、初めの頃より更に洗練されたものになっている。

 

 その後、ウィンチェスターⅠ・Ⅱを用いて低空滑走してきたエルネスティが、搬入口より姿を現したのを皮切りに、カルディナは行動を起こす。

 

 

「──さあ、刮目しなさい!ファイナル・フューーージョンッ!!!」

 

 

 空中に舞い上がり、光魔法による障壁を広範囲展開した後、カルディナの遠隔フルコントロールがガオーマシン各機にFFのフォーメーションを実行させる。

 

 両脚をドリルガオーが包み、金色の回転衝角携えた剛胆な脚部となる。

 両肩にSライナーガオーが留まり、両肩を護る実直な鎧と成す。

 背部にステルスガオーが垂直急降下し、黒き鋼の翼となる。

 金属音を奏でながら、一対の金色の腕に黒い剛腕と鋼の拳が備えられる。

 胸の複雑なパーツ達が全て稼動し、鋼の獅子(ギャレオン)を形造る。そして、鋼の翼より赤い鬣を託され、瞳に光が宿る。

 

 最後に黒い翼から、金色の兜飾りを備えた黒い兜がカルディナに被さり、鬼にも似た面当て(フェイス)がその顔を覆う。

 

 翡翠色の魔石が兜飾り窪みから現れ、その瞳に力強い光が瞬く!

 

 我等が前に誕生したその勇者の名は……!!

 

 

「──ガオ・ガイ・ガーーッ!!!」

 

 

『───!!?』

 

「……素晴らしいッ!」

 

 

 その場にいた誰もが驚き、戦慄する。

 特にその誰もが思い付かない『合体』内容に対し。

 

 そして対峙するエルネスティは、喜びに震えて賛辞の言葉を贈った。

 子供の頃テレビで憧れ、リアル系ロボが好きになった大人になったでさえも、潜在的に心の支えとなった作品の一つでもあるガオガイガーが、ミニチュアサイズとはいえ、目の前にあるのだから……!!

 

 

「……では、僕もいきます。来たれ、『《禍鳥(マガドリ)》』!!

 

 

 手を空高く掲げるエルネスティ。

 するとその背後に『黒い穴』が出現。

 

 その『黒い穴』は『収納魔法』。

 留学中にエルネスティがカルディナにねだって覚えた魔法である。

(なお、習得にはカルディナの協力があり、膨大な魔力と、特殊空間の知識の概念がないと習得不可)

 そこからエルネスティより大きな『人型』の存在が舞い降りる様に現れる。

 そして蒼い胸部装甲が展開し、エルネスティは跳び乗る。再び閉じたその姿、姿形から来る威圧感はまさに『蒼い鬼神』──『イカルガ』である。

 そしてウィンチェスターⅠ・Ⅱをヴェスバーの如く装備し、いつの間にか白い鞘を蒼い鞘へと交換していた。

 

 

「それは……!!」

「特別に創った幻晶甲冑(シルエットギア)です。そして僕がこれから創る幻結晶騎士(シルエットナイト)のミニチュア、といえば宜しいでしょうか。名前は仮称、という事で『《禍鳥(マガドリ)》』としています。」

 

 

 ──《禍鳥(マガドリ)

 

 エルネスティが全力で設計した『斑鳩(イカルガ)』。

 この先創るであろう、応急処置であれど新たな可能性を見出だした『(カササギ)』。

 

 彼は小説版、アニメ版(ルーツ)の中で2機の専用機を創っている。

 どれも凶鳥のイメージを感じさせる鳥だ。

 実際の鳥はそうではないのだが。

 トイボックスも創っているが、あれは試作・試験機。

 《禍鳥(マガドリ)》という名前は、存在定義として『どんな禍(厄)すら、相手にもたらせる』という意味では、目の前の幻結晶甲冑(シルエットギア)にはピッタリではないかと、カルディナは思った。

 

 ……だが字面のせいか?

 

 

「禍転じて、吉兆と成す、されど凶成り……その内、ブラックホールエンジンを搭載しそう(バニシングしそう)な気がするのは、気のせいですの?」

「…………ああ!!」

「何、『その可能性が有りましたね!』みたいな相槌を打つのです?この意味解ってます!?」

「……そうか、ブラックホールエンジンを積める可能性があるのでした。それは後程、お話を!」

「話を聞きなさい!!まさか……実物(イカルガ)には積まないでしょうね!?絶対ですわね!?絶対駄目ですわよ!!」

 

 

 

 『ブラックホールエンジン』が何かは知らないが、2度も3度も言うな、フラグになるから止めろ!!

 と、一同心の中でツッコミを入れる。

 

 

「今はツェンドリンブルの武装の事でしょうに。」

「そうでした!では始めましょう!」

 

 

 

 

 

 ……そして冒頭(1)に戻る。

 

 

 

 闘技場に響く2つの声と、空中を縦横無尽に何度も交わる黒と蒼の閃光。

 そして鋼の鬼面。

 戦争という名のプレゼン合戦は、開始30分を迎えようとしていたが、まだ紛糾していた。

 

 

「接触式にしてしまうと、持ち返す時に止まってしまいます!!ランス形状であれば、そんな苦労はしないで済むのに!!」

 

 

 銃装剣(ソーデットカノン)二振りから、白い閃光とも呼べる法撃を上空にいるガオガイガーへと放つ禍鳥(マガドリ)

 

 

「キッドも仰っていたでしょう!!ドリルは漢のロマン!使用者の希望は最大限汲むべきです!!であれば、直に回転機(モーター)に動力炉を付ければ良いでしょう!!」

 

 

 それをプロテクト・シェードで受け止め、跳ね返すガオガイガー。

 

 

「現状ではON・OFFが難しいです!グリップにスイッチを付けるべきでは!?」

 

 

 当たれば只では済まない、跳ね返された自身の法撃を回避しつつ、禍鳥(マガドリ)はスラスターを全開で接近する。

 

 

「──いいアイディアですわ!!しかし、キッドに……!!負担がかかりましょう!!」

 

 

 その行動を読んでいたガオガイガーは、上空から迷うことなくブロウクン・マグナムを発射。

 回避する禍鳥(マガドリ)だが避けきれず、右の銃装剣(ソーデットカノン)が手から弾かれる。

 同時に左のドリル・ニーを高速回転させて、禍鳥(マガドリ)へ向けて全力で降下。

 

 

「──であれば、キッドに相応の修練を積んでもらわねば!!」

 

 

 それをスラスターを効かせて独楽の様に廻り、すれ違い様にガオガイガーに一太刀浴びせるイカルガ。

 しかし分厚い装甲は傷一つ付かない。

 

 そしていきなり自分に振られて来て驚くキッド。

 周囲からは同情の視線が。

 

 着地と同時に地面に突き刺さったアームを回収、装着し直すと再びスラスターを吹かせ、禍鳥(マガドリ)へと肉薄しようとガオガイガーは飛び上がる。

 だが制空権を得て、再び法撃を放つ禍鳥(マガドリ)の弾幕はガオガイガーを容易に近付けさせない。

 

 

「さてどれ位が宜しいかしら……!!」

「キッドなら『レベル3』スタートでも行けそうです、よ!!」

「あら、そこまで成長しているとは!!『レベル4』到達が楽しみですわ!!」

 

 

 右腕を高速回転させて、法撃をそらしつつプロテクト・シェードを展開、まとめて跳ね返すガオガイガー。

 それをウィンチェスター(ヴェスバー)が光の帯を描き、迎撃する禍鳥(マガドリ)

 そして爆発を目眩ましにガオガイガーはスラスターを全開、禍鳥(マガドリ)へと突っ込む!

 

 ちなみに『レベル~』とはトレーニングの事であり、その内容はキッドが青ざめて震え上がり、アディや他の者達が御愁傷様、と慰めている事から察してほしい。

(カルディナ基準のスパルタトレーニング)

 

 

「──では、最後にツェンドリンブルをどの様に改造するか。勿論…」

「ええ、当然……」

 

 

「──スーパー系でしょう。」

「──リアル系ですよね。」

 

 

 

 

………

 

 

 

……………

 

 

 

 

「───どうして、どうして貴女は解らないんですかッ!?スリム&スマートな機体であり、高機動戦闘をするなら、リアル系を定義すべきでしょう!!」

「貴方こそ、どうして理解出来ないのですッ!?人馬型といえば、鋼鉄ジークのパーンサロイド、スーパー系でしょうに!!それにぶつかる事を前提にすれば、装甲の厚いスーパー系仕様にするのは至極当然!!」

 

 

 いきなり話が脱線した。

 2人はツェンドリンブルを『素早く』か『固く』するか、どちらかにしたいようだが、意見はお互いの信念(趣味)に基づいて真っ二つに割れた。

 

 そしてそれに伴って戦闘は更に苛烈に。

 言葉を重ねてはいるが、もはや持論を押し通すのみの水掛け論にしかなっておらず、説得は役に立たない。

 しかも、2人はとてつもない実力者であり、目の前で苛烈な激戦を繰り返す幻晶甲冑(シルエットギア)は実力で止めようにも、誰にも止められない。

 仮に幻晶騎士(シルエットナイト)を出したところで、今の2人には格好の餌食でしかない。

 おそらく、無意識の連係プレーで撃墜させた後、仕切り直す材料にしかならない。

 

 

「……やべぇな。雲行きが怪しくなってきやがった。」

「ああなった2人は止めようにも止められない。ましてや3年前より実力と厄介さは上がっている……どうしたものか。」

「───おや、皆さん。どうされました?」

 

 

 そんな時、救世主が現れた。

 しかもメイド服を着た、救世主が。

 

 

「あ、フミタン!」

「そういや居なかったわね。今までどこ行ってたの?」

「お2人が急に部屋を飛び出してしまい、私は独り部屋の荷物の整頓を。たくさんあって大変でしたが、今し方終えて来たのです。」

「フミタンさん!!あの2人、どうにかしてよ!!」

「どうにか、とは……ああ、なるほど。」

 

 

 バトソンに泣きつかれ、見上げるフミタンは目を細めた。

 自分の主と、その親友が激戦を繰り広げていたのだ。

 

 

(きっと理由はロクでもない事、なのでしょうね。)

 

 

 そうやれやれとしながらも直感で思うフミタン。

 間違っていない。

 

 

「ちなみに現在の会話の内容は、どのような流れで?」

「会話の流れ?たしかツェンドリンブルの武装の話が一段落したと思ったら、今度はツェンドリンブル自体の強化で話がこじれて……」

「たしか、スーパー系がどうの、リアル系がどうのと……」

「……わかりました。何とかしましょう。」

「え?今の話で?ていうか出来るの?」

「はい。これからする事の為に、もっと言えば『私に正当性のある理由』がある事が重要なのです。そうしないと私はクビになりますので。」

「意味が解らないんだが……何をする気だ??」

「───『2人をぶん殴る』。そう言えば解かるかと。」

 

 

 ───マジか!?

 

 

 ぶん殴るというワードに驚く一同。

 忠義精神あふれるフミタンからそんな言葉を聞くとは思わなかった。

 しかし……

 

 

「この状況で、どうやって??」

「直接、という訳ではないですが、間接的に。」

『??』

「まあ、言葉では解りづらいので、見ていてください。」

 

 

 と言って、激戦地の近くギリギリまで近寄り、大声で話しかけた。

 

 

「──お嬢様~!エルネスティ様~!話の論点がズレてませんか~!一度頭を冷やされては~!?」

「何を言ってますの!!武装の話は終わりましたが、話はこれからですわ!!」

「そうです!!次の話がまだ終わってません!!」

 

 

 やはりフミタンの話には聞く耳を持たず、激戦を繰り返す2機。

 だが、カルディナは言った。

 『武装の話は終わった』と。

 

 エルネスティは言った。

 『次の話がまだ』と。

 

 

「……やはりですか。話が一区切りすれば終われば良いものを……ですが質言は取らせて頂きました。強制執行に入ります。」

 

 

 そして右腕を水平に伸ばした。

 その瞬間、上から『黒い穴』が現れた。

 『収納魔法』である。

 

 

「──武装選択(アーム・セレクト)召喚(インストール)。」

 

 

 そしてそこから現れたのは、とてつもなく長い、黒くて鈍い金属光を放つ長物。

 それをフミタンは鷲掴みし、軽く振り回した後、グリップを掴み、構える。

 

 

魔力(マナ)流入開始。サイトスコープ、起動。同調開始……」

 

 

 対象は非常に速い。

 しかし一定の動きをしている以上、眼で追えない訳ではない。

 狙うは動きが限られる地面スレスレの低空時の競り合い。

 

 

魔術演算機(マギウスエンジン)、起動。電磁加速機(リニアドライブ)、荷電稼働50から75%へ。」

 

 

 ならばさっさとこのバカ騒ぎを治めよう。

 

 

「『T&Vバレット』、装填。」

 

 

 

 これのモデルは、アキュラシー・インターナショナル AS50。

 イギリスで作られたフォルムの美しい狙撃銃で、重さ約14.1キロ、5発箱形弾倉。

 有効射程距離1500メートル。

 遠く離れた標的を非常に正確に狙撃出来る驚異的な殺人マシン(スナイパーライフル)……

 

 

「ターゲット、インサイト。」

 

 

 ……を参考に魔改造されたフミタン専用の魔術式(マギウス)電磁投射砲(レールガン)

 

 その名を、One Shot One Kill Rifle(2度撃ち要らず。)

 通称『お仕置き銃』。

 

 

「……全行程、終了。確実に仕留めます。」

 

 

 ───発射。

 

 

「───つまり、その理論では無理ですッ!!」

「であれば、尚更必要で──ギャウンッ!!

 

『──!?!?』

 

 

 引き金を引いた瞬間、空気が弾けるような衝撃音と離れていたはずの周りの人間達が仰け反る程の衝撃波と、フミタンの激しくなびくメイド服(正統派のクラシカル)と共に、銃弾がガオガイガーの側頭部に炸裂(ヘッドショット)

 スラスターを利かせた前進から、突如側転のように吹き飛び、視界から消えた光景は、対峙するエルネスティから見て、何が起きたか解らない程。

 そして認識する暇もなく、不穏な気配を察知した2発目の凶弾に反応し、回避出来たのは奇跡だっただろうか?

 そして、訳の解らぬままその気配の先を見ると、アキュラシー・インターナショナル(まさかの銃)を構えるフミタンの姿。

 そして先程の正体が『弾丸』だと認識した時、エルネスティは戦慄し、体を強張らせてしまう。

 

 それは『転生者(倉田)』故に、銃の恐ろしさをある程度知っているがための、一瞬の隙。

 

 そして先程外したのは、禍鳥(マガドリ)の動きを誘導、牽制する『誘い』。

 しかし、もっと怖かったのは、エルネスティが見たフミタンの表情だった。

 

 

 ───ニッコリ

 

 

「ちょっと待っ──はぶしッ!!

 

 

 そこに、間髪入れずに容赦ない第2射。

 カルディナより、エルネスティの事を聞かされていたがために出来たフミタンの奇襲は、とても的を射ていた。

 結果、禍鳥(マガドリ)《エルネスティ》の無防備な前頭部に弾が炸裂(ヘッドショット)

 そして強制的に飛ぶ意識のまま、後方1回転した後、その蒼い鋼の躯体は地面に沈む……

 

 

「「「…………」」」

 

 

 まさか本当に『ヤる』とは……

 

 自身の主と、その親友(?)を淡々と狙撃し終えたフミタンは、自身の得物(お仕置き銃)を『収納魔法』に落とし……

 

 

「ミッション・コンプリート。」

 

 

 と、一言。

 

 

「……って、あの2人大丈夫なの!?」

「問題ありません。お二方共、脳震盪を起こして気絶しているだけです。それに『身体強化魔法』をかけていらっしゃるので、致命傷にはなっていません。」

「ってか、今の何だ!?」

「『銃』と申しまして、小さい礫を超高速で放つものです。使用したのは『T(手加減)&V(高振動)バレット』──不殺弾です。当たっても血は出ず、とーーーーーーっても痛くて悶絶するだけの代物です。流石に対人用の弾は、お二方には弾かれるだけで通用しないので、使用しましたのは対魔獣用の弾ですが。」

「……ていうか、主に手を上げて(?)大丈夫なの?」

「問題ありません。以前より議題紛糾し、内容が脱線した際には止めて欲しいと、お2人からは申し付けられていましたので、手っ取り早く実力行使を。

「……メイドとして、それでいいのか?」

「はい。アースガルズ家のメイドたるもの、時に主人を(物理的に)止められなくて、どうします。主人の命令もありましたので、遠慮なく撃たせて頂きました。

 

 

 

 ───何、この従者(メイド)こわい。

 

 

 

 この(カルディナ)にして、この従者(フミタン)あり。

 そう思った一同だった。

 

 

 

 


 

 

 

 

「「──すいませんでした~。」」

 

 

 そして気が付いたカルディナとエルネスティが、最初に取った行動が、土下座だった。

 

 ただし、ガオガイガーと禍鳥(マガドリ)のままという状態故に、その光景は非常に奇妙なものとなっていた。

 特にガオガイガー、どうやって正座をしている。

 

 

「……本当に反省してんのか?」

「もちろんです!ツェンドリンブルの強化方針がまとまったところです。」

「やはり前面装甲を強化し、突撃特化にするという方針になりました。」

「当然、瞬発力と機動性を確保すべく、全身の結晶筋肉(クリスタルティシュー)は魔術的に強化したものを増設。」

「そのレシピはエルにお伝えしたので、どうかお役立て下さい。また、ドリルランスと利き腕の保持には専用の固定器具を増設。起動方法は接触式にしましたので、安全装置をしてもばっちり。またドリルの形状は試作型になりますが、大型の破砕特化仕様(ガオファイガー仕様)としました。」

回転機(モーター)は従来の炉を使用しても問題なく攻撃力は大幅に上がりましたが、同時に武器が暴れ馬になりましたので、キッドには『レベル4』習得を──」

「───よし、お前ら2人が全く反省してないのは、よぉ~~~く判った。」

 

 

 そしてダーヴィットに反省の色なしと見なされ、他の団員達がティータイムを満喫中の中で、現在2人は荒れた試験場の整地作業(魔法の使用禁止)をさせられていた。

 皆がお土産を楽しみにウキウキである中で、ただ1人、キッドの足取りは重く、青冷めていたが……

 

 

「所謂『解せぬ』というヤツですわ。」

「その通りです。反省して強化案を出したのに、お偉いさんには解らなかった様ですね。」

 

 

 整地用の棒を手慣れた手付きで抉れた地面を均すカルディナ。

 そして小走りで荒れた地面をムラなく均すエルネスティ。

 手慣れ過ぎたその手付きは、一度や二度ではない事を物語っている。

 そして互いに手を動かしながらも、口が減らずに話が続いているのは、もはや才能と言っていいのだろうか?

 それ以前に、この2人の『反省』は別の次元にありそうな様子。

 

 そんな事を繰り返しながらも、整地作業は終わった。

 

 

「ふぅ~、やっと終わりましたわ。」

「全く、ようやくです……あ、そうだ。一つ伺っていなかった事が。」

「何ですの?」

魔力転換炉(エーテルリアクタ)の中心術式の実験で、カルナがあの数しか実験していなのかな、と思いまして。もしかしたら、言わなかっただけで、他のもあったのでは?」

「……まあ、その通りですわ。」

 

 

 エルネスティに話を振られたカルディナの表情が曇る。

 実はあの場では言わなかっただけで、他にも実験項目はあった。

 しかも相当ヤバい部類の内容だ。

 それが次の通りとなる。

 

 

 

・ラグナメイル仕様:ヴィルキス(可変機構が再現不可、武装の再現は成功)

・サイバスター仕様(稼働成功、可変機構が再現不可、精霊憑依(ポゼッション)不可)

・グランゾン仕様:(成功、ネオグランゾン不可)

・ライディーン(金)仕様(稼働、武装再現は成功。可変機構が再現不可)

・ゼオライマー仕様(失敗、その後崩壊)

・レイアース仕様(失敗、その後崩壊)

 

 

「……強烈過ぎますね。と言うか、幻晶騎士(シルエットナイト)で受け止められるモノではないでしょう。よく再現する気になりましたね?」

「……まあ、いい反省材料にはなりましたわ。」

 

 

 ヴィルキスは『永久語り』を歌い、各特性形態へとシフト出来、最後に『ディスコード・フェイザー』が再現出来た時点で実験を中止した。半ばギャグで行ったが、可変機構以外が成功した事で『ヤツ』がいる可能性に恐怖したからだ。

 サイバスター、グランゾンは時間制限があったとはいえ、ほぼ原作通りの実力を発揮してる。精霊憑依(ポゼッション)やネオ化は、機体が出力に耐えられなかったために中止した。

 逆に言えば、特注品を使えばどちらも再現可能と言える。

 金色のライディーンはカルディナの趣味で、元祖より好きなので再現したが、起動からしばらくして『彼女』のジト目視線を感じたため、中止。

 ゼオライマーは起動させた瞬間、機体の出力が勝手に上がり、胸部、両腕部に装着した寄せ集めの触媒結晶に『次元連結システム』からの力が流れ出て、「MEI・OHー!」の響きと共にメイオウ攻撃を上空へ放った後、外装が崩壊した。

 余波で周辺の地形が一時、窪地になったという。

 以降、外装を直してもゼオライマー性能は現れなかった。

 強烈過ぎる性能は、機体が崩壊する危険性もあるのだ。

 

 

 そしてレイアースはもっと酷かった。

 

 形にした瞬間、外装が起動前にも関わらず崩壊。

 それはまだいい。

 

 突如、落雷がカルディナを襲う。

 それは『殺さず活かさず』を体現した威力だったとか。

 突然の不意打ちで、防御もままならずモロに受けてしまったカルディナ。

 

 その薄れゆく意識の中で、遥か彼方の空に『それ』は、いた。

 

 

 

 ──モコ○モドキ。

 

 

《──違う。》

「──ぎゃびん!!」

 

 

 更に落雷。

 カルディナに追加ダメージ。

 

 

 ───じゃあ、まんじゅうウサギ。

 

 

《──シメるよ。》

「──ぎゃびびん!!」

 

 

 更に落雷。

 カルディナにクリティカルダメージ。

 

 

《……全く。『あの子ら』の波長を感じて来てみれば、中身こそ似てるけど、不細工なニセモノとは。創るなら、もっと造形は細かく……というか、やるならフルスクラッチ(中身から全部一緒)でしょうに。》

 

 

 何故か酷い駄目出しを受けた。

 しかもレイアースをフルスクラッチとか鬼の所業を宣告。

 

 

《……まあ、ここはどの世界からも、たらい回しにされ投棄された『あれら』を破壊するためのステージだからね。いつ達成出来るか解らないけど。》

 

 

 そう言って『南』を見る『それ』。

 

 

《『あれら』の影響で南半球に精霊とか悪魔、天使なんかが怖がって来たがらない。だからってこの世界、成長幅が大幅に上がりやすいとはいえ、元のステ振りが低すぎるのは、どうかなぁ……やっぱり新人に任せたのが不味かったか。久々に来たけど、酷い有り様だね。でも『いきなりラグナロクとかマジ勘弁!』には同意するよ。代わりにやれって言われたら、ラグナロクの再来で、こっちとの対消滅がオチか。》

 

 

 やれやれといった様子で、ため息混じりにガックリと肩(?)を落とす。

 そして次の発言が……

 

 

《……とか言って、唯一の対抗手段となる『勇気の結晶』の再現は『その手段』じゃ成立しないんだよね。一から再現しないと機能しないなんて……管轄、誰だっけ?あ、あの三つ太陽が並んだ星系!神になれる寸前に宇宙崩壊と内輪揉めと『あれ』のせいで滅んでるんだっけ?機能の保存をする前だったから、ライブラリーにも保存出来なかったって……》

 

 

 うわ~、どうしよう……と、うなだれる『まんじゅうウサギ』。

 

 

《……『勇気』を最大限発揮出来れば勝てるかも知れないけど、最後は因果律と概念殺しでゴリ押しかな?でも、『肥大したエゴの成れの果て』、『完璧なる混沌』、『虚無の支配者』。『奴ら』は何てものを押し付けて来たやら。》

 

 

 最後に《特に、自己満足進化で中二病拗らせてる、自称・神は、いつになったら『虚無の支配者』を倒せるやら……》と言い残して去って行った。

 

 

「本当にいたんですね、神様。しかも最初の会合が『まんじゅうウサギ』さんとは。」

 

 

 カルディナの嘘のような話を聞いたエルネスティは、まずそう感想を述べた。

 エルネスティも、かの御仁を『まんじゅうウサギ』呼ばわりである。

 

 

「ええ。あのまんじゅうウサギの独白通りであれば、フレメヴィーラ王国辺り……いえ、『山脈』を挟んで『南』にはラスボスを通り越して、裏ボス的存在がいると、そういう事です。」

「こちらに霊的要素、神話要素が欠片もないと思ったら、そんな事情があったとは……その3つの存在、一度見てみたいですね。」

「……見えますわよ。『あの平野』で。条件付きですが。」

「そうですか。なら後日行きます。後、それも気になるんですが、僕が一番気になるのはそちらでなく……」

「ああ、ガオガイガーの世界にあった三重連太陽系の事、それが遥か昔にでしょうが、存在した事ですか?そして『ライブラリーに保存されていない』という言葉の意味する事……」

「カルナ、もしかして……」

「ええ、『失敗』してます。」

 

 

・ガオガイガー仕様(起動のみ成功)

 

 

 正確には起動、稼働は出来た。

 しかし、それ以外は『失敗』でしかなかった。

 特に、ヘル・アンド・ヘブンのエネルギーは只の魔力(マナ)が集束したものであったし、何よりカルディナが一番期待していた『Gストーン』特有の反応(発色・発動時のEMトルネード等)は一切なかった。

 強いて言えば、そこにあったのはミニチュア・ガオガイガーの特性を更にデチューン化した、ただの幻晶騎士(シルエットナイト)でしかない。

 この結果は、あのまんじゅうウサギの言葉の通り、『ライブラリーには保存されていない』……中心術式に『歌』を入れても、『Gストーン』の力は発揮されない事を意味する。

 

 そしてこの結果を知ったカルディナは、その日荒れた。

 ひと気の無い所を選んだとはいえ、徹底的に破壊に明け暮れた。

 

 そして静寂を乱され、眠りと思索を台無しにされたキトリーが降臨。

 祖母と孫娘の半日に及ぶ大喧嘩が勃発。

互いに生身で戦っているというのに、大軍勢が

互いに生身で戦っているというのに、大軍勢が鬩ぎ合うような破壊をもたらし、一歩間違うと森都(アルフヘイム)が消滅しかねない事態だったという。

 

 尚、間近で見ていたアルヴァンズの皆様が言うには……

 

 

「……我々は決着が着くまで見ている事しか出来なかった。おそらく誰が介入しようが、あの戦いは鎮められないだろう。」

「最後に見た景色と言えば……突如現れた白い竜の様な存在が、眩い光の吐息(ブレス)をあのお嬢様に浴びせたところ、だろうか。その瞬間、強い衝撃と共に、全員気を失ったのだ。」

「その場にいた幻晶騎士(シルエットナイト)は全機大破、地形は見るも無残に抉れた。よく死者が出なかったと思うよ。だがあれを受けて、あの中心地の中、あのお嬢様はどうして五体満足で生きてたんだ?」

 

 

 ……閑話休題(ここまで)

 

 

「まあ結局、振り出しに戻った、という事だけですわ。」

 

 

 結局はそうである。

 そして今に至るまで、カルディナはガオガイガーの設計と同時進行で、Gドライブの要であるGSライド──心臓部のGストーンを創り出す事に心血を注いでいるが、その成果は芳しくない。

 

 だが、逆に言えばそれだけである。

 

 

「元々『落ちた花びらが頭に飾られた』的な発見ですもの。実験結果が伴ってなくとも、今思えば然程問題ないですわ。」

「そうですね。しかし当てはあります?」

「いいえ、全く。ただし、この件で一つ安心した事がありましたわ。」

「何ですか?」

「Gストーンは人の手で創れる、という事です。」

「まあ……まんじゅうウサギさんの話を極論付けて言えば、そう解釈出来ますね。ですが、ある種の『神の領域』の様な所業みたいですよ。それでもやります??」

「ええ。」

 

 

 エルネスティの問いに、カルディナは自信たっぷりに肯定するのだった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「───では皆様。ご機嫌よう。」

「失礼致します。」

 

 

 フミタンを背に乗せ、宵の空へ去って行くガオガイガー(カルディナ)

 その去る姿を名残惜しそうに見るアディ、そして銀凰騎士団の団員達。

 ダーヴィットあたりは「やっと帰りやがったか……」と悪態をつくが、それでも何か心配している様子だった。

 そして姿が見えなくなると、ポツポツと団員達はその場を後にしていく。

 

 最後に残ったのは、アディとキッド。

 そしてエルネスティの3人だった。

 

 

「エル。本当にこれで良かったのか?」

 

 

 宵の空を眺めながら、そうポツリと呟いたのはキッドだった。

 それにアディも続いた。

 

 

「久々に来たのに、あんまり構ってあげられなかったけど……」

 

 

 それに対し、エルネスティは空を見上げながら──

 

 

「良かったと思いますよ?見た通り、楽しんでいた筈です。」

「でも、たまに思い詰めたような顔してたけど……」

 

 

 反省(?)と暴露話の後、皆との交流で「本当に反省しているか怪しすぎる」程にはっちゃけていたカルディナ。

 ただ一時だけ、切ないような、思い詰めた様な顔をするのをアディは見逃さなかった。

 

 ……いや、言わなかっただけで、もしかすると他の団員も何人かは気付いていたかもしれない。

 

 

「それは仕方ありません。出来る事が具体性を帯びたからこそ、その位には思い詰めている、という事です。ですがカルナ自身が解決しなければならない事……彼女自身もそう思っている筈です。だからこそ、僕とて手助けは出来ないんです。」

「新型機の開発……そのノウハウはカルナもエル並みに持ってる筈なんだけどな。そんな難しいのか?」

「ええ。カルナの求めるモノは『絶対にそうじゃなきゃ駄目』なんです。僕とて求めているモノが違う以上は、手出しはしたいですが、出来ませんね。」

「その新型機、フレメヴィーラでも出来ればいいんだけど……」

「無理ですね、アディ。アルド・レイアの地……『北側』でないと出来ないんですよ。」

 

 

 特にフレメヴィーラ王国を含めた『南側』の事情を聞いたが為に、余計に理解出来た『仕様』の制約。

 そして何より要である『Gストーン』が無い。

 しかもこの案件(ゾンダー絡み)は原作に忠実でなければならない。

 とてもではないが、エルネスティにすら手出しが難しい。

 

 

 

「ふ~ん。エルの禍鳥(マガドリ)重力制御装甲(グラヴィティコントロール・フレーム)って言ったっけ?魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)と別に、蓄魔力式装甲(キャパシティフレーム)に仕込んで、空中を踊るように飛んでただろ。そんな技術があっても駄目なんだ。」

「はい。思い描いていた変則機動が難しかったので、カルナに頼んで術式を提供してもらったものですが、まだ未完成で、幻晶騎士(シルエットナイト)用にも開発出来ず、今回禍鳥(マガドリ)にようやく付けられた程度です。こうなると、僕の専用機も少し改善点が増えましたね。後で手を加えないと……!」

「……まだやるのかよ?」

「もちろんです!幻晶騎士(シルエットナイト)の道は一日にして成らずです。」

 

 

 拳を強く握り、ふんす!と意気込むエルネスティ。

 

 

「エル君らしいねわね~……でも、カルナももしかしたら同じなのかしら?」

 

 

 ──ガオガイガーの道は一日にして成らずですわ!!

 

 

「……絶対に言いそう。」

「ああ、まず言うな。」

 

 

 カルディナが言いそうなセリフを余裕で脳内再生出来た事に驚きを通り越して呆れる2人。

 そして思う。

 かつてエルネスティが前王陛下の前で「趣味にございます」と言い放った経緯を。

 

 カルディナがエルネスティより正義感が強いのは、十二分に承知している。

 しかし、カルディナもまたエルネスティと『趣味人(同類)』である事を2人は理解していた。

 そういう意味では、カルディナも自身の困難をきっと乗り越えるであろう。

 

 『ぼくのかんがえたさいきょうのせんようき』を改めて嬉々として思い浮かべるエルネスティを見て、そう思いつつ呆れるオルター兄妹。

 

 

 

 

「しかし『転生者』ってのは、何か業が深いっていうか……」

「カルナは『知識を受け継いただけ』って言ってたけど、この手の知識を持つ人ってどうしてこう、なのかしら……」

「エルっぽい、と言えばそうだし。カルナらしいと言えばそれまでだよな。」

 

 

 あまり関係ないが、エルネスティが転生者であること、カルディナが知識を継承した存在である事は、この2人のみにはカルディナが留学中に既に周知済みだったりする。

 初めは驚きはしたものの、アディは「大人なエル君……!」と惚れ直し、キッドは「むしろ納得した」と関心した。

 尚、2人の間に恋愛感情があるかと、アディが勇気を振り絞って尋ねた事があったが……

 

 

「「──冗談www!!」」

 

 

 盛大に草が生えたコメントが出たのみだった。

 ただ、その時の2人が視線のみだが、やたらと怖かったのも事実。

 きっと同類にするな、とでも言いたかっただろう。

 なので「絶対に成立しない」と結論付けたことを蛇足としておく。

 

 無論、絶対成立しない。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「───へくちッ!!」

「お嬢様?」

 

 

 

 帰路の空。

 フミタンを背に乗せ、アルド・レイア王国を目指すガオガイガー(カルディナ)

 空は暮れ、宵闇が迫ろうとしている。

 そんな中で出たくしゃみ。

 

 

「きっと、アディかキッドが噂してますわね。」

「えらく具体的ですね。」

 

 

 的を射過ぎていた。故に特にそれ以上の追及(ツッコミ)はしないフミタン。

 鋭角状に展開した『魔力障壁』が前方を覆っている、とはいえ、音速を超えた飛行をしているにしては非常に余裕を見せている、このメイドは本当に何者だろう。

 そうしている内に、オーヴィニエ山脈を通過しようとした時、フミタンが口を開いた。

 

 

「……お嬢様、この度は如何でしたか?」

「……」

 

 

 その質問に、カルディナはすぐに答えれなかった。

 今日一日とはいえ、事情聴取から始まり設計図の受け渡し、そして楽しい喧嘩(じゃれあい)

 そして久々の親友達との触れ合い……

 けれど、時折思い出す自身の進歩状況に歯痒い気持ちが……

 また関係ないが『ロクでもない存在』いる事は、今は目を瞑りたい。

 

 

 そして、幾分か間を空けて出た言葉が……

 

 

「……楽しかったわ。幾分か、考えさせられた事も多かったけれど。大いに振り返る事が出来ました。」

 

 

 今日一日の全ては、その言葉に集約されていた。

 そしてフミタンもその言葉に……

 

 

「……そうですか。」

 

 

 と、満足げに頷くのだった。

 そしてもう一つ。

 

 

「お嬢様。リクエストを一つ宜しいですか?」

「珍しいですわね?何です?」

「『いつか星の海で』。スピーカーがあるので流して、そして歌って頂ければ、と。」

 

 

 ───『いつか星の海で』

 

 

 そのリクエストに一瞬、何の事か解らず、目をパチクリさせるカルディナだったが、その言葉の意味を理解すると、思わずクスクスと笑う。

 

 

「……全く、良い趣味をしていますわね。」

「お嬢様のメイドですので。それに、この暮れる空の中で、この曲は合っているかと。」

「いいでしょう。」

 

 

 

 そしてリクエストに応え、カルディナはスピーカーに『その曲』を流した。

 

 

 

~いつか星の海で~

 

 

僕の星に舞い降りる 君をいつも夢に見る

 

今も一人 空を見上げて 僕を探しているの

 

会いたい気持ちなら きっとそうさ負けてない

 

銀河に飛び立つ 翼、僕らに届けて……

 

大人になるころ いつか星の海で……

 

 

 

 

「……お見事です。」

 

 

 この曲もガオガイガーの歌であり、カルディナが時折歌っていた曲である。

 ガオガイガーという存在を知ってから、フミタンも彼女なりに主人の事を理解しようと、暇を見ては少しずつ見ていた。

 正直、男子趣味嗜好強過ぎて理解に苦しむところが強かった。また、この世界で一般的な騎士道精神は?と思うところもあった。

 何より話の内容が大き過ぎて、本当にこんな事が起きるのか?と思うところも。

 ただ、今まで自分も関わって来た中で、これから対峙するであろう存在の驚異は計り知れない。

 そんな摩訶不思議な事柄が綴られているガオガイガーの中にも、いくらか好きになれるモノはあった。その内の1つが、この曲である。

 それにカルディナの声と相まって、OPよりはこちらの方が好みである。

 そしてこの曲は『次へと進む』にはピッタリな曲なのだ。

 

 

「ここまで来るのに、お嬢様は計り知れないご苦労と、努力をされてきた筈です。けれど、そのお陰でようやく真の一歩を踏み出せる機会が訪れたのですね。」

「ええ、その通りですわ。志してから十数年……ですが、明日から忙しくなりますわよ。」

 

 

 それは、カルディナの待ちに待った念願を果たせる刻が来た事を意味する。

 課題と問題はあるが、それでも次に進める喜びは大きい。

 

 そんな時、カルディナの身体から突如、黒い靄──濃密な『闇』の魔力(マナ)が溢れ出て、とある人型──いや、手の平サイズのぬいぐるみ型に集束しようとする。

 

 

《……って事は、俺達の出番もようやくって事か?ならば……》

「あら、ようやくお目覚めです?あ、ちなみに今、音速で飛んでますから、迂闊に『実体』を出すと……」

《───おおおをををををーーー!!??》

「……置いていかれますわよ?」

 

 

 ……誰かは知らないが、一瞬でドップラー効果が効いた叫び声と共に視界から消えた。

 そして今度は光の粒子がカルディナより現れ、集束すると小さなぬいぐるみ型の存在が現れた。

 肩まである銀の髪に銀の瞳、そして背に一対の『白い翼』と頭に光の輪……

 それがステルスガオーの翼にちょこんと座っている。

 

 

《──クスクス。あのアホな『魔王(サタン)』、格好付けて何をしてるのかしら?音を超えて飛んでいるのであれば、幻体で顕現するのが定石でしょうに。》

「あら、『熾天使(ラファエル)』。貴女もお目覚め?」

《正確には御身に潜んでました。》

「知ってます。」

《────だぁああああぁぁぁーー!!!追い付いたーーー!!!音を超えて飛んでるなら、最初からそう言えっての!!!》

 

 

 黒衣を纏った、金の髪に金の瞳の人形が追い付いてきた。

 背には『黒い翼』が一対と、頭に一対の角……

 

 

《やかましいですよ、『魔王(サタン)』。というか、そのミニマムな黒蜜金粉添えボディはどうにかならないのです?》

《ってか、そう言うならお前は貧弱なぺったん小粒の白玉だろうが!お嬢とメイドは極上の肉まんなのによ!!》

《なっ!?失礼ですね、私はスレンダーなだけです!!》

《ふん、どうだか……》

 

 

「「───『南』の存在にガタガタ震えてた輩が、騒がない。」」

 

 

《お、おう……》

《申し訳ありません、御身。》

「お嬢様の御前です。お静かに。」

「全く……話は、今した通り。明日から始めますわ。お二人にも予定通り、お役に立ってもらいますわよ。」

《いよいよか。》

《お役に立ってみせます。》

「期待、していますわよ。」

 

 

 

 そして一行は、暮れて行くアルド・レイアの地へと帰って行く。

 

 明日から始まる、勝利への道を目指して……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《……あれ?『Gストーン』の気配がする。何でこんなところから?どこだー!?》

 

 

 同時に、予期せぬ者も……

 

 

 

 

 

《NEXT……》

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

《次回予告》

 

君達に最新情報を伝えよう。

 

遂に設計図を手に入れたカルディナ。

そして始まるガオガイガー創造の第一歩。

 

史上初のギャレオン、そしてガイガー開発の目撃者となれ!!

 

 

そして、その最中に訪れたカルディナへの、予想だにしない来客が!

 

敵か、味方か?

この上ない存在により、カルディナに新たな展開が訪れる!

 

果たしてどうなるか。

波乱に満ちた創造劇を刮目せよ!!

 

 

 

次回『公爵令嬢は、ファイナル・フュージョンしたい』

Number.08『~鉄の巨神、創造(ギャレオン編)~』

 

 

君もこの物語に、ファイナル・フュージョンッ!!

 

 

 

 

これが勝利の鍵だ!

『軟鉄』

 

 

 

 

 

 




……長い長いプロローグ(笑)がようやく終わりました。

作中のネタについて。

○カルディナさん、登場シーン
ガイナ立ちなのは間違いなく。
ただ、ドラゴンかザク神かは皆さんのご想像にお任せします。


○『禍鳥』
初めは『凶鳥』で『マガドリ』と呼ぼうと考えてましたが、訂正。
でも『禍』も『凶』も表面的なイメージが似ているので、ブラックホールエンジンをネタとして出しました。イカルガに他の武装と合わせてフルバーストさせるのもありかな?
シルエットナイトでなく、シルエットギアなのはある種、カルディナさんの真似。
というか、ガオガイガーと戦わせたかったから、でもあります。
質量と出力差で近接戦闘はご法度でしょうが。


○ドリルランス
別にここまで論議させるつもりがなかった案件。というか、これが限界。
書き終わってから、ガリアンのケンタウロス型の敵の存在を知り、これはアリかと思い、無限フロのスヴァイサーのドリルランスを思い出して、何で忘れてたんだろうと絶望。
ドリルランスを持つキャラって少ないのですね。


○エル君の性格
スパロボネタが本編で許されるなら、リアル系信者からのシルエットナイトフリークになっているでしょう、という前提の設定。
また、転生前(倉田)の記憶もカルディナさんの問い掛けで記憶の忘却が戻った(ロックが外れた)のもあり、多用しているので、シルエットナイト製作は原作よりも過激に。性格は感情の振れ幅は大きめなってます。
でも肉体言語に走るような子ではないはずですが、そう見えるのは間違いなくカルディナさんの影響。



○フミタン
命令とあらば、主人すら撃つ!!
アースガルズのメイドであれば、この位は当然です。
(いや、そうじゃない)


○実験結果
初めの実験なのでこれくらいで。
でもガオガイガーにはあんまり応用出来ない。
でなければ、初めから騒いでいない案件。
とはいえ、美味しい設定ではあると思うところも。


○まんじゅうウサギ(?)
言わずと知れた、ヤツ。
今回出てきたのは、後輩の様子を見に。
もう出ませんよ、きっと。


○ヤバい3つの存在
『南側』に悪魔や天使、幽霊など非実体の存在がいないのは、こいつらの影響。
エンディングの平野の空を見上げると、運が良ければ見えます。
事前にアニメを見た人物は常時見えます。
なお、オリジナルではなく、版権。
ひたすらヤバいヤツを考え抜いたと思います。
良かったら当てて見てください。





さて、次回からようやくガイガー製作に入れます。
『覇界王』では凱兄ちゃんが奮闘してますね。
そして夢装ガオガイゴー……しびれました。

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