公爵令嬢は、ファイナル・フュージョンしたい。   作:和鷹聖

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どうもお久し振りです。
Web版小説の『覇界王~ガオガイガーVSベターマン』が3月17日で完結を迎えました。
勇者の軌跡に涙しつつ敬礼!
("`д´)ゞ

ですが『公爵令嬢~』終わりませんので、まだまだお付き合いお願い致します。


Number.09 ~『鉄鋼桜華試験団』~(2)

「色々聞きたい事はあるが、まず最初にコレだけは確認してェ、『何を、どこまで知ってる?』」

 

 

 この言葉から始まったカルディナ、オルガの話し合い。

 事が事で、自らの上司であるカルディナを睨むように見るオルガだが、当のカルディナは特に気にしていない様子で、手にした書類を眺めては書き足し、フミタンの淹れたお茶に手を付けた。

 そして一口した後、顎に手を当て口に出して考えるのだった。

 

 

「何処から話せばいいかしら……と、言っても私も人並みしか知りませんが。」

「人並み……??」

「これを見てくださる?」

 

 

 と言ってオルガに見せたのは、タブレット端末。

 そこに映っていたのは『いのちの糧は、戦場にある』と銘打つ絵が。

 それには鉄華団のジャケットを羽織ったオルガと三日月をメインショットとした、他の鉄華団のメンバーと、モビルスーツ『ガンダムバルバトス』が一緒に映る……と思わしき精巧な絵である。

 

 

「何だこりゃ?何故俺達が……」

「これは『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』の公式ホームページサイトです。」

「機動戦士ガンダム……??鉄血のオルフェンズ公式、のホームページ……??」

「テレビの企画で作られた作品、その公式アピールのサイトの事です。」

「て、テレビ企画って……」

 

 

 淡々と話すカルディナの話をオルガは戸惑いながらも自己解釈していく。

 すると、とある『最悪の結論』が浮かび上がった。

 

 

「……おい、まさか俺が、いや俺達が『作り物』とでも云うんじゃないだろうな!?架空の創作物の産物とか──」

 

「───その逆です。」

 

「……逆??」

「私も『コレ』から入った故に当初はそう思いましたわ。ですが他の関係者に会う度、逆に『鉄華団(貴殿方)』という強い存在が、他の次元の存在(監督)影響(インスパイア)させ、貴殿方の生きざまを投影させたのが、この『鉄血のオルフェンズ』だと思うようになりました。」

「……つまり、俺達がいるから『コレ』があるってことか?」

「ええ。」

「信じられねえな。俺達にそんな強い影響があるとか……」

「ちなみに、そのテの存在はこの世界には山程いますのよ?例えば……この方。」

「ん?こいつは……鉱山に行った時に見た、軟鉄拾いのガキ……だよな?確か。」

「ええ。他にも……」

 

 

 そして他にもタブレットに映し出される、直に見た見覚えのある人物。

 そして比較対象として映し出される人物画を見る度、オルガは頭を抱えたくなる衝動に駆られるが、見逃す訳にもいかず、凝視するしかなかった。

 そして一通り見終わった後、参ったと言わんばかりに肩の力をゆっくり抜いた。

 

 存在(ちから)ある故に、()()()の創作物は生まれる。

 

 

「……何となく言いたい事は解った。そして嘘も言ってねぇって事もな。マジかよ……」

「理解が早くて助かりますわ。血肉の通う貴殿方を創作物の産物等と揶揄したくないので。」

「つーか、お嬢はいつから知ってたんだ?この事。」

「物心付いた頃から……私には脳内書庫(そういう知識)がゴマンとある情報存在を内包してますの。ですから、この世界が創作物の存在(そういう方々)を元に構成されている事は、あくまで私が分析した結論、と御理解頂ければと思います。ただ、それに至った経緯は信憑性が高いと断言しますが。」

「……」

 

 

 自分の頭を指差し、淡々と話すカルディナ。そんなカルディナにオルガは何だか圧倒される思いを抱いてしまう。

 今のオルガは16歳だ。だが1つ年下の女、しかも半ば狂いそうな世界の真理をまともに受け止めて平然とする15歳様の所業は、今のオルガには真似出来ない。

 ついでに中世ヨーロッパ風のこの時代に、タブレット端末を平気で出せるこのお嬢様は何者だろうか?

 

 

「ただ、どうしてこの世界に来たのか?という疑問には答えられませんわ。神ならぬ身故に、神様(絶対の不可抗力)の考えは理解来ませんので、自分だけが被害者だ、なんて思わない事です。悲観してもどうにもなりませんし、何より創作物か実在かの話(どっちが先かを決める)をすると……『卵が先か、鶏が先か』という、どうにもならない不毛な水掛け論になりますので、しない事をお勧めします」

「……随分達観した物言いだな?」

「私も、もしかするとそうであろう一員なんですから、()()騒ぎ立てるような事はしませんわよ。」

 

 

 カルディナ自身もこの世界の人物達の成り立ちを知る立場である自覚があるが故に、過去に相当荒んでいた時期もあった。

 とはいえ、自覚して心を痛めるだけ無駄とも言えるので今は気にしておらず、むしろ有益な情報は利用出来る材料(カモ)なので、SAN値が激減する行為はオルガにも控えてもらいたいところだ。

 

 

「それに、鉄華団の方々を始めとした貴殿方は、他の方々とは少し事情が異なりますので、どちらかというと『転生者』ではないかと思いますわ。」

「……『転生者』」

 

 

 むしろオルガは間違いなく死んでいる。そして前世の記憶を持つが故に『転生者』と言っても差し支えはない筈である。

 そして他の鉄華団のメンバーのいずれかも、もしかすると記憶を取り戻す者も出てくるであろう。

 いや、それよりも何故カルディナは『転生者』と断定したのか、それは……

 

 

 閑話休題(それはさておき)

 

 

「……まあ、自分の置かれた立場ってヤツは、何となく解った。ただ納得はしてないがな。」

「それで十分です。無理に納得すると心を壊しますわ。ただ、今日に至るまでの記憶は御座いますわよね?」

「……まあな、明日も地獄のような訓練と、緻密な試験評価の仕事が山のようにある事はな。」

「それは重畳。」

 

 

 記憶を取り戻した反動で今までの記憶まで消えると、流石に手塩にかけた鉄鋼桜華試験団が空中分解を起こしてしまう。

 そうなると、カルディナは大損だ。

 そしてそうでなければ、話は進まない。

 その点にホッとするカルディナは話を切り替える事にした。

 

 

「では本題に入りますか。聞きたいのはこの事ではございませんでしょう?」

「ああ、藪を突っついたら、蛇じゃなくドラゴンが出てきた気分だが、俺達のこれからに関わる事だからな、遠慮なく聞かせてくれ、何でガンダム・フレームがあるかを───」

 

 

 

 そして語られる、ガンダム・フレーム(?)の製造の事実が……

 

 

「───ちょっと待った。」

「……何ですの?」

 

 

 話を聞く内に、SAN値がすり減ったオルガは頭を押さえつつ、待ったをかける。

 

 

「……すまん、話を整理するとだな。」

「はい。」

「その……ガオガイガーってヤツを創るためにガンダム・フレームが必要って事で、俺達を乗せるため、じゃない、って事か??」

「ええ、初めから乗せて戦いに駆り出すつもりは毛頭もありませんわ。むしろ、私が行った方が早いですし。」

 

 

 むしろ邪魔だから引っ込んどれ、と言わんばかりの、あまりにも予想を超えた返答にオルガは困惑する。

 その様子を見たカルディナはやれやれといった心境であった。

 

 

「……やはり自分達が乗せられると勘違いしてましたわね。仕方無いことですが、そもそも、あれの用途は本来、戦闘とは別です。」

「別……?」

「解析用なのです。必要したのはフレーム側の『阿頼耶識』のシステム、回路の仕様の方ですわ。」

 

 

 順を追って説明しよう。

 

 カルディナはガイガー、そしてガオガイガーの操縦方法について難色を示した時期があった。

 ガオガイガーの操縦方法は操縦桿を用いたものではない。

 おそらく非接触型の神経伝達操縦であると予想するが、そんな技術の再現など出来なかった。

 類似する方法──念動魔法はあるが、操作に明確なラグが生じてしまい、どうしても採用する気にはなれなかったカルディナの代替案がガオファー、そしてガオファイガーの操縦方法であるIDアーマーを用いた神経伝達システムの方式である。

 これであれば直接伝達が可能であり、操縦のラグもなく、隙の無い戦闘が行える。

 しかもゴーレムには魔導神経(マギウスナーヴ)と呼ばれる伝達回線を用いる技法があり、幻晶騎士(シルエットナイト)には銀線神経(シルバーナーヴ)の技術がある。再現するには丁度よい技術である。

 

 だが前者は自己創造が可能なのだが、伝達に難があり、後者は魔導演算器(マギウスエンジン)の性能に左右される。

 それだけでは、理想とする伝達システムには程遠い───そう考えたカルディナが次の段階へ進むため求めたのが『阿頼耶識』である。

 

 搭乗者の思考、反応のまま動く阿頼耶識であれば、反応の赴くままに動くことが可能で、カルディナが理想とするものになる。

 

 そのため、カルディナは第一段階として魔力転換炉(エーテルリアクタ)の中心回路と外装擬装の処置を行い、内部回路の反応を徹底的に調べ上げ、第二段階としてガンダム・フレームの製造を行った。

 

 

「──ちょっと待った。」

「どうしました?」

「阿頼耶識はパイロットとモビルスーツを同調させるためのコネクタ──『ピアス』が必要だろう?それはどうした?それに情報処理用にナノマシンも必要だろう?」

「ああ、ピアスは必要ないのです。その代わりが『IDメイル』。これがピアス代わりになります。」

 

 

 IDメイルは魔力操作(マナ・コントロール)を円滑にし、身体の動きをより機敏に出来、軟鉄繊維を動かす事も出来る。それは脊髄から神経伝いに発信しなくても良い。

 逆に言うなら魔力操作(マナ・コントロール)を完璧にする事が出来れば、信号の発信が何処であれ、そのフィードバックで機体は動かす事が出来る。

 また明確な情報処理は全身からの電気信号や魔力反応をIDメイルが読み取る事、対応した回線を構築する事で対処している。

 

 

「あとナノマシンも代わりの存在がありましたので必要ではなかったですし。」

「ナノマシンの代わり……?」

「この世界の原生思考生物であれば、誰しもが持っている仮想領域──魔導演算領域(マギウス・サーキット)ですわ。むしろ、必要ない事を教えたのは、結果として鉄華団の皆さんですわよ?」

「何!?」

 

 

 魔導演算領域(マギウス・サーキット)は魔法の術式を自動演算し発現を行う仮想領域だ。それ故ナノマシンは必要としない。

 カルディナも、もちろん例外なく備えている。

 

 だが鉄華団に当てはめると、話は全く異なってくる。

 何故かというと、鉄華団の阿頼耶識施術者は、この世界では例外なく身体能力がずば抜けて高い。

 特に明弘、そして三日月が人外レベルでヤバい。

 特に三日月は身体の小ささを無視した強靭さ、馬力を持つレベルである。

 

 これは阿頼耶識が原因である。

 

 今のオルガ達、鉄鋼桜華試験団のメンバーには当然ながらピアスの跡等ないが、彼等の神経伝達組織は他の人物達と違って特異だった。

 まるで生体電気信号(バイオパターン)を丸ごと抜かれたものをそのまま入れたような……生前もこんなのだったのだろうか、と思う程のものだ。

 特に神経の情報伝達・発信量が並々ならぬ量であり、阿頼耶識の手術を3回も行った三日月、2回行った明弘は特に尋常ではない。

 また、背部はピアスもないのに電気信号を発する事が出来るという、体質を持つ。

 この阿頼耶識特有の伝達組織は、特異過ぎており、これらの生体電気信号《バイオパターン》は自然派生では誕生しないからだ。

 

 故にカルディナは彼等が転生者ではないか、と予想した。

 

 ……他にも前例があるのも予想理由の1つだが。

 

 そして、阿頼耶識と魔導演算領域(マギウス・サーキット)の組み合わせは別の効果をもたらしていた。

 それは魔法を無意識ながら効率的に、常時発動状態という効果。

 ……といっても魔力操作(マナ・コントロール)、強化魔法に限られるが。

 おそらく過去に強化魔法を使った人物に暴行でもされたのだろう。その時に魔導演算領域(マギウス・サーキット)が勝手に学習(ラーニング)してしまい、その後無意識に発動する事が稀にある。

 これは強化魔法によくある現象だが、魔法使いとしては素人以下な彼等であるので、放っておけば魔力(マナ)の枯渇で自滅する危険性が出てくる。

 

 現在はそうならないように、魔王と熾天使にみっちりしごかれ~の、鍛えられ~の、天国と地獄(ヘル&ヘヴン)のような訓練を施されている。

 

 尚、こうなった原因として阿頼耶識と魔導演算領域(マギウス・サーキット)の組み合わせが、ガンダム稼働時の状態と誤認し、この現象を引き起こしているのでは?とカルディナは予想している。魔法効果は魔導演算領域(マギウス・サーキット)の副産物、と思われる。

 そのためカルディナは、彼等の生体電気信号(バイオパターン)が阿頼耶識の稼働時のそれと一緒と仮定し、研究した結果、見事立証。

 

 まさに俺がガンダムだ!状態。(チガウ)

 

 以上の事から阿頼耶識と魔導演算領域(マギウス・サーキット)の関連性を参考に、カルディナは、パワードスーツ兼パイロットスーツのIDメイルを完成させたのだった。

 

 また、開発直前に特異性を発見された軟鉄により機体性能は予定よりも大幅に向上、念動魔法による外部コントロールも大雑把であるが、向上した。

 

 

「ん?待て、生体電気信号(バイオパターン)って、いつ調べた?しかもどうやって?」

「貴殿方がここに来た数日後に行った身体検査の時にです。私も検査に参加していたではないですか?」

「……まさかアンタが発見したとか?」

「ええ。そんなの触れば判るでしょう?それでなくとも、骨折とか内臓系の病気を発見したケースもありましたから。むしろ、生体電気信号(バイオパターン)の異常に気付いたのは偶々、でしたわ。」

「……アンタ、本当に何者だよ?」

「アースガルズ家の公爵令嬢ですが、何か?」

「……」

 

 

 そういう事を聞きたいんじゃねぇよ、とオルガは言いたかったが、諦めた。

 そして肝心のガンダム・フレームはというと……

 

 

「ギャレオンを創る前に、IDメイルが正確に動くかを確認する事が必要だったので、参考までに創りました、それだけです。ただ、見た目で判ると思いますが、構造上すごい『頼り無さそう』と思ったので、フレームは私の案で改造させて頂きました。」

 

 

 特に腰回りは脆弱極まり無い一言だが、作中では一度も自壊した事はないのは、どうしてだろう?

 しかしカルディナのガイガーに対する運用を見れば、どんな結果になるかは……予想は付くだろう。

 そのままだとレアアロイを使っていようが、腰が自壊する未来しかない。

 故に、腰回りはガイガーと同様のものを採用した。

 ただ、外装がないので現状、頼りないように見えるのは仕方無い。

 

 そして今回の戦いでは防衛を優先したため、本来表舞台に出す予定のなかったフレーム2機を出した事は、後々禍根や痛手を伴う可能性があるものの、カルディナは後悔はしていないし、貴重な戦闘データが録れた事が収穫ではある。

 

 

「その際にガイガーの基礎フレームを参考に強化しましたので、あれをガイガー・フレーム、もしくは今後運用する上で当たり障りないようにゴーレム・フレームと名付けました。まあ、G・フレームでもいいのでは?と思いますが。」

「……なるほどな、筋は通ってる……んだよな??よな??ん、じゃあロディ・フレームはどうなんだよ?あれを造る理由なんてない筈だが。それに、ガンダム・フレームとロディ・フレームの足のパーツ……可動式で隠れているが、何で車輪……いやキャタピラだな。それが付いてんだ?」

「ロディ・フレームは、ダーヴィズさんの要望に応えてです。大型の剣を打ちたい、と。それにあれは『厄災戦』時に造られた、阿頼耶識に親和性のあるフレームですから、応用が効くと思い、採用させて貰いました。そして足のキャタピラ───ランドスピナー・Type-Cはスラスターの代わりです。今は宇宙に予定が無いので、地上の悪路を速く走るには一番良い機構なので。」

「……部下の要望に対して、すげぇフットワーク軽いのな、そしていや知ってるけどよ……あ!あれの動力炉はどうなんだよ!?まさかエイハブ・リアクターの、ツインリアクター仕様とか……ねえよな?」

「あら、ご名答。」

「嘘だろ!?」

 

 

 といっても普通であればエイハブ・リアクターたる『相転位エンジン』の技術、再現は出来る訳ないが、フレメヴィーラ王国で『同等・同再現出来る技術』を会得しているカルディナだ。

 実質、謙遜なくツイン・リアクターが積まれている。もちろんロディ・フレームにもツインリアクターが積まれている。

 そのためチート仕様の某リアクター製のエイハブ・リアクターは性質、出力は原作と何ら変わり無い。

 しかし、LCS以外の通信機能を麻痺させる性質も一緒のため、念のため動力炉の周辺には擬装用フレームを装った エイハブウェーブ中和材で吸気口以外は固めている。

 

 どうやって?

 そこは周波数を割り出し、魔法の力で。

 

 ちなみに、中心回路の選曲は『Raise your flag』である。

 なお、使用する曲は1つだけではなく、他も組み合わせて入れる事が出来る。曲の組み合わせにより出力も上がる事に気付いたカルディナは理想の曲の組み合わせを模索中である。

 

 

「……随っ分な魔改造だな、おい。本当にアンタ、公爵令嬢か?」

「公爵令嬢ですわよ。」

 

 (こんな公爵令嬢、見た事無ぇよ!!

 けど今の上司なんだよな!!)

 そんなオルガの心のツッコミは虚空へと消えた。

 

 そして、血筋は保証しかねるオマケ付きである。

 

 

「……私からは以上ですわ。何か質問は御座います?」

「……最後に1つ、いいか?」

「どうぞ。」

「……何で、俺達はここにいるんだろうな。」

「……さあ。」

 

 

 それは最初にカルディナが断った質問である。その質問だけは、どうにも解らないがオルガが尋ねたい心情も理解出来る。

 こんな世界なのだ、いくらでもその理由は並べられるが、所詮は憶測でしかない。

 今はそれ以外にも言いたいが……

 ただ1つ、引っ掛かる理由があると言えば……

 

 

「……気休めの憶測あれば、1つ可能性が御座いますが、聞きます?」

「……頼む。」

生体電気信号(バイオパターン)ごと、この世界に連れて来たという事は、貴殿方を連れて来た存在は貴方達の能力、技能を丸ごと必要している、とも考えられますわね。」

「俺達の能力、か……」

「それこそ人ならざる存在でしょうが、もしかしたらいたのでしょうね。貴殿方がいた世界にも、そんな存在が。」

 

 

 そして今も……

 

 

「……って言われても、わかんねぇよ。」

「それはそうですわ。私も可能性の話をしてるのですから。まあ、ここに来たのも何かの縁。しばらくは『今まで通り』お願いしたいところですが、どうです?」

 

 

 ──『今まで通り』。

 つまりは『鉄鋼桜華試験団』として、今後も働いてほしい、それがカルディナの意向だ。

 それに対しオルガは突っぱねる事はしなかった。

 今のオルガには『前』の記憶があれども『今』の記憶もある。

 カルディナは命の恩人でもあり、詫びる相手でもあり、雇い主でもある。

 それをこちらから裏切る行為は仁義に反する故に、出来ない。

 何より……

 

 

「……今、俺達が出てっても、この世界ってヤツで俺達に生きる術なんてねぇしな。今、生きてられるのが誰のお陰かも理解してる。だが状況がイマイチ解らねぇ中で不用意に行動するのは悪手だ。何より今いる場所はそんなに嫌いじゃねぇ。つー訳で、選択肢が無い訳だ。そんな状態の俺らを引き留めたいってならいいが。どうする?お嬢。」

「ええ、これからも頼みますわ。」

 

 

 オルガが戸惑いながら差し出した手を、カルディナは迷いもなく握り返す。

 その悪意無き実直さと女性特有の手の温もりにドキリとしてしまう心情に、戸惑うオルガだった。

 

 

(良かった~、この交渉に失敗すれば大切な人材が大量に流れる始末。そして進行中の仕事にも大穴が……やはり訳ありの鉄華団ですが、従業員は大切にしないと、ですわ。)

 

 

 ……カルディナさんが、どう思っているかはさておき。

 

 

「しかしよ、俺がこう……記憶を取り戻したってんなら、他の団員もこうなる可能性があるんじゃ……」

「無きにしも有らず、と言ったところですわ。まあ、貴方のように懇切丁寧に説明するだけでしょうが。納得するかは別として団長、フォローはお願いしますわ。」

「判ったよ。」

「まあ、納得して頂けたのなら重畳。あ、そうですわ、こちらにも用件が御座いまして……」

「……今までの話から、そんな話になるのは怖いな。」

「警戒せずとも……明日の試験で試食・試飲担当者に当たっている、とある2人を外して、私の仕事に付けて欲しいのです。」

「ああ、そういう事か。ちなみに誰だ?」

「それは……」

 

 

 ───コン、コン、コン

 

 

 そんな時、ノック音が響いた。

 誰かしら?と思う中、フミタンが応対しに行くと扉の向こうには、青冷めて俯くビスケットと、無表情ながらも顔を背け、困惑した雰囲気の三日月がいた。

 このタイミングで、まさかと思いつつもカルディナは部屋に入るよう促した。

 

 

「お、ビスケットとミカ。どうした?」

「──え??オルガ??どうして……」

 

 

 と声を上げたのは三日月。

 目を丸くして、オルガの全身を確認する様子は、何故生きてるの?と言わんばかりの反応である。

 

 

「どうしました、三日月。死人が生きてた、みたいな反応をして。」

「あ、いや……」

「……?? ──!?」

「ふぅん……あと、ビスケットはどのような用件で?」

「あの……俺、ここにオルガがいるって聞いて……オルガに聞いて欲しいことが、あとお嬢様にも尋ねたい事があって……」

「……おい。それって自分が一度死んで、気が付いたらここにいた、という話か?それとも、今日記した報告書の見聞内容に、ガンダム・フレームがあって、何であるんだって話か?」

「………え??どうしてそれを───」

 

 

 ビスケットの反応を見て、どうやら()()()()()()話に、カルディナとオルガは顔を見合わせて、そして苦笑いする。

 

 

「……何、どうしたの2人とも?」

「いえ。つい先程まで、その話をオルガとしてましてね。」

「で、誰かが来たら懇切丁寧に話してやろうと言ってたところだ。」

「そ、それってつまり……」

「まあ、このタイミング、この場でこう言うのもアレだが……」

 

 

 ──よぉ、ビスケット。

 

 

 それは、かつてすれ違いを起こし、その直後に判断ミスもあって死なせてしまった友。

 何度も会いたいと思うも、あの絶望下の中では葛藤する時間もなく、歩みを止める事が出来ず、振り返る事が出来なかったあの時の気持ちは、今でも忘れない。

 

 

「オ、オルガ!!」

「……んで、ミカ。」

「オル、ガ……なの?本当に……」

「ああ。少なくとも俺はそう信じてる。お前らの事もな。」

 

 

 子供の頃から一緒で、共に誓い合った仲であったが、自分が先に死んでしまったために最悪の戦いに駆り出させてしまった相棒。

 そして自分の遺志を守り抜こうと戦い、仲間と共に散った相棒。

 

 そんな相棒に、右腕を向ける。

 

 

「……1度しくじっちまったが、また付いて来てくれるか?」

「うん、オルガがそう言うなら。」

 

 

 相棒(オルガ)の生存の驚きに目を見開き、三日月は戸惑うが、オルガが差し出した腕を見て、迷わず左腕を合わせる。

 

 

 

 ──この日、鉄華団は異界の地で再び復活の産声を上げたのだった。

 

 

 

 

 ……しかし、その感動はカルディナのSAN値直葬話懇切丁寧な話で霧散する事になる。

 

 

「───ご理解、頂けました?」

「……え~、したくない。」

「というか、しなくちゃダメなんですか?」

「納得はしなくていいですが、理解はしなさい、いい?」

「「 ──はい。」」

 

 

 まるでヤーサンの姉御に睨まれたような心境の2人。

 また、この世界の事を説明されると同時に『前世』の所業を映像を使ってダイジェスト風味で振り返され、ぐうの音も出ない3人だった。

 

 

「……まあ、もう遅いのでこの辺りで、ひとまず終わりますが、最後に1つ。貴殿方に対し、話せない秘密の1つや2つあるけど悪いようにはしませんから。だからあまり派手に動かないようにお願いします。」

「あ、ああ……」

「よろしい。では解散。」

 

 

 その一言で、話は終わった。

 

 

 

 

《NEXT》

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

《おまけの小ネタ》

 

 

「そういや、この軟鉄拾いの子供……」

 

 

───僕は海賊にはならないよ。僕、お金大好きだから。僕がなるのはお金持ち、そうお金持ちに、僕はなる!!

 

 

「……とか言ってたなぁ。」

「ええ。天の声(声優ネタ混在)の影響で言動が安定しないって本人が言ってました。あと……このお二人方。」

「……あの門番の2人か?片方の男は小型化した破城槌を右腕に装備して、新しい真っ赤な鎧を新調したとか……」

 

 

───踏み込みなら負けん、炸裂式破城槌(バンカー)ッ!!止められると思うなッ!!

 

───わおわぉーん!呪式魔導杖銃(ハウリン・グランチャー)、Xモード発射!!

 

 

「ブロンドの犬獣人の姉さんは、最近秘密裏に悪魔と契約して自在に空を飛ぶ事が出来たって言ってたな。」

「まあ新装備、さっそく役立ってますわね。」

「……装備の提供元はアンタか。」

 

 

 

 

《つづかない》

 

 

 

 




○操縦システム
ガオガイガー製作話で書きたかった内容の1つ。
シルエットナイトも阿頼耶識システムも延長発展させれば、ガオガイガーと同じ操作系統になる!という持論から生まれた話です。
念じろ、そうすれば動く!という訳ではないですが、どれもそれに近いかと。
というか、本当にあの白い謎空間は何でしょう?

そして


○阿頼耶識とマギウスサーキット
マギウスサーキットさんには、ナノマシンの代わりになって貰いました。
別話で書こうと思いますが、阿頼耶識システムを使用していた彼等のチート仕様です。原作通り、生身であろうと乱戦で無類の力を発揮します。
(ただしお嬢様はそれを上回るようです。)


○オマケの小話
軟鉄拾いの子供~全部声優ネタをぶっ込んだ。判る人には判るはず。

門番の2人~言わずと知れた大暴れ夫婦。知ってか知らずか、お嬢様謹製の装備に大満足。
契約した悪魔?知らないなぁ(すっとぼけ)
本編には出てきませんよ。(間話ならワンチャンあり?)


また感想欄で、紡がれた物語が別の世界を生み出し、最終的には無限ループの数珠繋ぎが巨大なメビウスの輪みたいな構造になっている的なコメントを頂きましたが、まさにそうかと。
そうなった場合、アニメとそれが現実になった世界関連はどう足掻いてもどっちが先かは結論はでないでしょうね。
ただ、監督が無意識に他世界のイメージにインスパイアされた的な話はとてもロマンがあると思います。


今回の話はある種の方針決めの話です。
『鉄オル』のメンバー達もそうですが、今後出るキャラクターはこの設定で話を進めたいと思います。
……というか、そう思ってくだせぇ。
ある意味出演キャラクターが困って泣きそうな設定ですが、キャラ自身にメタ話をさせるにはもってこいの設定。

まあ一番はとあるキャラのための設定なのですが……


そして、もう1話続きます。

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