公爵令嬢は、ファイナル・フュージョンしたい。   作:和鷹聖

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今更、ガオガイガーとか需要が無いとは思いますが、そこは趣味と妄想が暴走した結果と捉えて下さい。


後、更新ペースは一週間に一度くらいでしょうか?
環境上、メインがスマホでの文字打ちなので、まあ遅い遅い……



それではどうぞ!


Number.02 ~ギャレオンがいない~

 ……そう、最大の理由は『ギャレオンがいない』ため、でしょうか?

 

 そもそも、ギャレオンの生まれ(製造場所とも云う)は太陽系より別の星系である『三重連太陽系』と呼ばれる、太陽系とは別次元にかつて存在した惑星系で、その一つである『緑の星』の指導者である『カイン』の下で創られましたわ。

 

 ちなみに『三重連太陽系』は3つの恒星が天に浮かぶ星系で、緑の星組のギャレオンと護(ラティオ)、赤の星組の戒道(アルマ)とソルダートJ、トモロの故郷でもあります。緑の星、赤の星、紫の星を含む11の星々で構成されておりましたが、後に科学文明が高度に発展した、紫の星で暴走した機界生命体『ゾンダー』により『三重連太陽系』は滅びました。

 

 その際に『ゾンダー』に対する抗体である『浄解』の能力を持って生まれた、緑の星指導者である『カイン』の息子、護(ラティオ)の力を分析、その能力を基に、Gクリスタルから作られた物こそ、無限情報サーキットであり、『勇気』の感情を糧に莫大なエネルギー『Gパワー』を生み出す、緑の結晶体『Gストーン』ですの。

 

 そのエネルギーは『ゾンダー』が発する『素粒子ZO』と対消滅する関係で、機界昇華されゾンダー化した者の侵された肉体が触れると肉体が消滅する程です。

 

(ちなみに、Gストーンではなく、元となったGクリスタルの方が出力は高いのですが、Gクリスタルの力でゾンダーを倒すと、ゾンダーの核、そして核となった人間諸共『滅ぼす』事になるため、デチューン+対ゾンダー耐性がなされる事になったのが、Gストーンなのです。)

 

 持つ者の勇気に反応し莫大なエネルギーを放出する反面、勇気無き者には手にした途端に石ころ同然と化しその力を発揮する事はないデメリットこそありますが、それを差し引いたとしても、エネルギー源としては究極、の一言に尽きます。

 

 そして護(ラティオ)を伴い、ゾンダーによって滅ぼされた『三重連太陽系』から脱出したギャレオンによってGストーンが地球人類にもたらされ、サイボーグ・ガイ、ガオガイガー、そして最強勇者ロボ軍団など多くのGGGの装備の動力源となったのです。

 

 

 

 

 

 

 ……そう、なったのです。

 

 ……まあ、ここまで言えば何を言いたいかは解るかと。

 

 ……しかし、敢えてここは申しましょう。

 

 

 

 

 

 はい、せーの……!

 

 

 

 

 

 

 

『ーーーギャレオンがいないと、物語が全く始まらないッッッ!!!』

 

 

 

 そもそもギャレオンがいないと云う事は、Gストーンが無いのです。護君も存在しません。

 Gストーンが無ければ、キングジェイダーに使われる『Jジュエル』も存在せず(緑の星から赤の星にGストーンの技術提供があり、それを元にJジュエルが出来た経緯があります。)ろくな抵抗も出来ずに『三重連太陽系』はゾンダーの襲撃にて、皆全滅。ソール11遊星主も生き残ることなく文字通り全員・終了。

 ついでに、EI-01(パスダー)によって、地球は知らぬまに、抵抗成す術なく機界昇華まっしぐら!

 獅子王凱様もスペースシャトルとEI-01との物理的接触で致命傷を負っても、ギャレオンに救助されることなく、宇宙で散る運命に。仮になんとか生存していても、Gストーン無しでは、鋼のサイボーグは誕生せず……

 

 

 ……ギャレオン()がなければ

勇者王ガオガイガー(主役)』は存在しませんのよ、おほほほ……(絶望)

 

 その事に絶望した、5歳の春、初めてのアニメ(脳内)連続鑑賞一週間貫徹後の夜明け。

 

 ベッドの上で布団を被り、目の下に色濃く隈を作って、独りで笑って泣いて、感動して怯えて、応援して。

 

 地上波放送の分まで(この時点で『Final』はまだ見てません)を見た後に『わたくしもガオガイガーになって、せかいをすくいたいですわ~』と子供の英雄願望を想った瞬間、今、自分が住む世界に、ギャレオン(始まり)がいない事を知った時……

 

 そしてそんな環境なぞ、この世界には未だに一切ない事を頭の中で整理出来た時……

 

 『ゾンダーメタル』なんてなくても、悲しみのストレスだけで『ゾンダー』になれそうなぐらい泣きましたわ。

 

 ちなみにその時の台詞が

 

 

 

 

「おにょれ、ぞんだーーー!!!」

 

 

 ……全く意味不明ですわね。

おまけにゾンダー関係ありません。

 ですがその瞬間、部屋の外で待機していたと思われる、お母様がドアを粉微塵に破壊、突入。

 

 

 

「───カルディナァァーーーーー!!!!」

「ぴあああああァァァーーーー!!!」

「何やってるの、いい加減になさァァァーーーーいッ!!!」

 

 

 文字通りオーガ()の形相で突入してきたお母様は手加減無しの雷を落としましたわ。(雷魔法で)

 

 そして真っ黒焦げになって倒れた私は

 

 

「……たすけてたすけて、ぎゃれおんさん。かるでぃなにさいぼーぐになるちからをあたえてください……」

 

 

 

 と、天に助けを求めるように手を伸ばし、そして没しました。

後に駆けつけてきたお父様に、「悪魔憑きだー!!」と誤解。

寝る暇もなく半日、エクソシストにお祓いを受けました。

 

 

 後に『カルディナ様の悪魔憑き事件』と呼ばれた、周囲から今でも誤解されたお話ですわ。

 

 まあ、当然ながらギャレオンなんて来る訳でもなく、包帯ぐるぐる巻の姿でベッドに拘束。その中で現実を思い知った私は……

 

 

 

 ───せめて、ファイナル・フュージョンが出来たら……

 

 

 

 と、思うように。

 ええ、全く懲りておりませんでした。

しかも包帯ぐるぐる状態でファイナル・フュージョンしても意味がないというのに。

……むしろ、悪化したとも言えます。

 

 何しろ、5歳の女の子、しかもフリルドレスを好んで着る子供が、お姫様でもヒロイン役の女性にも憧れず、むしろギャレオンからもたらされる技術を求め、獅子王凱の存在を無視して、ガオガイガーの搭乗者になるにはどうしたら良いかを夢想する『ガオガイガー馬鹿』になったのです。

 

 しかし女の子は、質の悪い事に現実知らずではありませんでした。

 

 まず、両親に心底怒られた後『何故怒られたか』でなく『自分がどう行動すれば怒られずに済むか』を考えました。

 

 今回の一週間貫徹をする前に、この女の子は『記憶書庫(B・ライブラリー)』の中にあった『な◯う小◯』の悪役令嬢モノや、性格悪の貴族がプギャーされる話、ネットサーフィンをしたら広告によく出てくる◯◯令嬢漫画等を散々読んでいたのです。

 なので、将来自分が我が儘勝手に振る舞えばどうなるか、ある程度理解がありますの。オソロシヤ……

 

 ……まあ、今回は明らかに不摂生と怪しい行動で、両親や周りの従者達を心配させたのが原因なのですが。

 

 ならば、自分はどう動くか?

 ギャレオンが来るなんて期待は出来ません。

 来ないなら存在しないと同じ。

 居ない、無いなら造るしか、創るしかない。

 

 

 そうして『私の私による私の為のガオガイガーづくり』が始まりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……そして10年の歳月が流れ、未だにファイナル・フュージョンどころか、ガオガイガーの鱗片ですら出来ていないのが現状です。

 

 いや、何て無理ゲーですの?

 文明を考えて下さい。機械文明の『機』の字すらない時代に、機械を誕生させろと?

 

 いえ、そう意味ではなく……

 後一つ、後一つのピースが足りなくて躊躇してるんですの。

 はぁ~、いったい何処にあるのでしょうか?

 

 

 

 

 ……き~せき、し~んぴ、しんじ~つ、ゆ~め、たんじょう、む~てき~の……はぁ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「……き~せき、し~んぴ、しんじ~つ、ゆ~め、たんじょう、む~てき~の……はぁ……」

 

 

 ……また、歌っていらっしゃいますね。

 

 お嬢様が辛い時には必ず歌う、とある歌のワンフレーズ。

 そして最後にため息。

 私はこのワンフレーズを、この方に仕えてから、何度聞いた事か。

 そして、あるであろう次のフレーズは一度も聞いた事がない。

 カルディナお嬢様はいつもそれを繰り返している。

 

 こう言ってはどうかと思われますが、カルディナお嬢様は奇才であり、鬼才である。

 

 例えば、わたし達が主食としているパン。

 とある朝食の際に、幼いカルディナお嬢様はこう申されたそうです。

 

 

「……このパンは、固いのですね。」

 

 

 当然です。

 この時代に食べられているパンは特に保存に重きを置いているためか、とにかく硬い。小麦粉を水で練って焼く。しかも保存のため焼き固める。それだけです。

 それは平民もさる事ながら、当時の貴族も多少柔らかいながらも似たようなパンを食べていました。

 それこそスープにパンを浸してから柔らかく食べる事すら一般的だったのです。

 それをこのお嬢様は───

 

 

「でしたら、料理長にワイン用意して、と伝えて下さいな。あ、お父様のワインも。」

 

 

 ……私が拾われる前の話だったので、詳しくは存じませんが、当時はその場にいた方々は相当ショックを受けたそうです。

 

 

『いったい何を言っている!?』と。パンが固いからワイン!?

 しかも公爵様のワインも!?

 

 

 その後、お嬢様は料理長を呼び出し、あれこれと注文を付けたとの事。

ちなみに公爵様の説得は、お嬢様が上目遣いの「お願い」で陥落、承諾させたとか。

 

 

 当然、お嬢様はワインを飲む訳でなく、料理長に『発酵』がどうのこうの、と説き伏せてしまったようで。

 それが一週間経過した頃には、我々ですら驚愕する程に、料理長のパンが風味豊かに、かつ今までにないくらいに柔らかいパンが出来上がりました。

 ちなみに公爵様は、その後秘蔵のワインの保存場所を変えたそうで。

 

 そして、これは凄い、と皆が思っていた矢先……

 

 

「やっと少し柔らかくなりましたね。でもまだまだこれからですわ。」

 

 

 朝食を平らげて、その後、放った一言がそれだったとか。

 そして更に……

 

 

「やはりお父様のワインで作るのが具合が宜しかったようですね。料理長、わたくしが許可します。お父様のワインを使ってパンを作ってください。あ、ワインの場所はですね……」

 

 

 お嬢様の鶴の一言で、後のパンは、お嬢様発案の『ワイン・パン』になり、数年後にはアースガルズ公爵領においてメジャーなパンになった。

 ちなみに公爵様は「私が嫌いなのか……」と泣き崩れたそうで。

 後にお嬢様が

 

 

「これも食事が、ゆたかになるため、ですわ。」

 

 

 と公爵様を諭したそうです。

 そして、公爵様のワインの追加注文の増量を促したとか。

 公爵様は違う意味でもお泣きました。

 

 

 ……御愁傷様です。

 

 

 ただ、この『ワイン・パン』。今までのパンとは違い、焼き固めがされていない為か、保存があまり利かないのが難点。

 しかし、お嬢様もその点は判っていたようで、後に日持ちする『ワイン・パン』の開発に尽力され、見事成功されました。

 

 後に、白ワインを使ったこのパンは『白パン』と言われるように。

 更に今までのパンは色味から『黒パン』と言われるようになり、カルディナお嬢様の働きかけで別の名物になりましたが、それは別の話に……

 

 

 まあ、話がパンに傾いてしまいましたが、何が言いたいかと云うと、カルディナお嬢様は『初めから、一を知った後、いきなり十を行う』方だと事です。

 

 お嬢様に『問題』をお渡しすると、大概予想を越えた解決策が返ってきます。

 

 ……5歳の子供が、大人も知らない事を知って、しかも実現できる。

 

 事情を知り、少し考えたら恐ろしい。

 その知識はいったい何処から知り得たのか?

 以前さりげなく『白パン』の知識について伺うと

 

 

「以前、お父様にわがまま言って酒蔵に付いていった時、ワインの作り方を教えて頂いたのよ。その時、ワインの酒精(アルコール)が出来る過程で小さな気泡を生み出すのを見たから、応用問題出来ないかしら、と。含む気泡が多いと物って柔らかいですのよ。」

 

 

 と書類を精査しながら語られました。

 酒蔵見学は『悪魔憑き事件』が起きる前、『白パン作り』はその後の話だそうで、辻褄は一応合っているものの、やはり解せません。

 

 

 ───何が彼女をそうさせるのか。

 

 

 その後、お嬢様は勉学に励むのですが、そこでも異才と奇才、そして鬼才を放つ事に。

 

 

 もし、カルディナお嬢様の中に、悪魔が憑いているのであれば、何を企んでいるのか?

 もし憑いているなら、街も経済も、人も、そしてこのアースガルズ公爵領も、(ことごと)く豊かにする理由が何処にあるのか?

 もしあるならどんな理由か?

貴族として振る舞い、この地を豊かにせんとするカルディナお嬢様(悪魔)は、今後何を望むのか?

 

 

 ……それを傍らで拝見出来る事が、楽しみで楽しみで仕方ない、そう思う私の口角が自然と上がっていたのは……ええ、少々お恥ずかしいですね。

 

 さて、楽しい思考はここまでとしましょう。

 私はお嬢様のメイドとして、憂鬱とされているお顔を和らげるため、紅茶を新たに淹れる事に。

 この時の紅茶は基本の作法たる温度より僅かにぬるめに、そして普段は入れない砂糖をティースプーン一杯分入れ、お嬢様の前にお出しする。

 それから……

 

 

「お嬢様、もうそろそろお時間です。」

 

「……ああ、もうそんな時間なのですね。判りましたわ。」

 

 

 忙しいお嬢様のタイムスケジュールを管理する事。

 気分直しの紅茶に、憂いたお顔が少しほころぶのを見て安堵しつつ、私はこれからの準備を始めたのだった。

 

 




《次回予告》

君達に、最新情報を伝えよう。



己の夢を叶えられず、憂鬱とするカルディナ。
それでも彼女の日常は続く。

夢に近づくために足りない『あと一歩の何か』

しかしカルディナは出会った。
赴いた街で、彼女が見たものとは!?
遂に物語は始動するッ!



次回『公爵令嬢は、ファイナル・フュージョンしたい。』

第3話『糸と、ドワーフ』


次回もこの物語に、ファイナル・フュージョン承認ッ!!




これが勝利の鍵だ! 『◯◯の糸』







はい、ようやく2話目更新できました。
次からやっと話が動きます。


ちなみに、ワインを使ったパンは実際に作れます。
しかし、パンだけでここまで話を膨らませるつもりはなかったのです……

プロットぶち抜いて話が暴走したせいです……

※7月1日 誤字報告ありましたので、一部変更しています。

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