前回の続きです。
話の内容としては『その後~』みたいなものでしょうか?
どうぞ!
◇ ◇ ◇ ◇
「……しかしよ、改めて思うと夢みたいな話だよな。魔法が使える世界だなんてよ。」
「とは言っても、これが現実なんだよね。」
「そうだね、現に俺達生きてるし。」
「そうだな、生きてんだよな、俺達。」
「そして俺達を題材した作品が出来てたとか……」
「……そっちは言うな。未だに信じられねぇ。」
カルディナより、オルガが受けた説明と予想、そしてこれからの予定云々、そして『前世』の振り返りを聞かされた3人は、横に並んで夜の路をゆっくりと歩きながら、カルディナから聞いた話を思い返していた。
正直、信じられる訳がない。
だが、事実ここにいる自分達がいる。
そして体感した『昔』があり、現在に至る。
そんな自分達の『昔』を、そして『今』を振り返っていた。
特にビスケットはオルガ、三日月より2年近く生存時間にラグがあり、その穴を埋めるべく交わす会話は馴染みある仲間だからこそ、新鮮であり、大切である。
そんな時間の穴を埋めるように、オルガは饒舌に話す。
そしてビスケットは、知らない時間を語るオルガや三日月を羨ましくも思う。
だからこそオルガは……
「……ビスケット、お前が居なくなった後の鉄華団は確かにでかくなった。けど、今思えば誰もブレーキを掛けられる奴がいなくなったから、俺達は
「オルガ……」
今の状況はIFのようなもの。
しかし自分達が死んだ結果は、どう足掻いても変わらない。
同じ轍を踏むなら何をしようが結果は同じだろう。
「だからビスケット。ここがどこであれ、どんな要因があろうが、俺達はみんなここにいる。けど同じ轍は踏まねぇ……とはいえ、お前にも迷惑掛けるだろうが、また頼む。」
「……わかった、俺も頑張るよ。」
欠けたからといって不必要ではない。
むしろ、未熟な自分には必要な仲間──家族である事をオルガは言ってくれた。
その事にビスケットはとても勇気付けられ、そんな光景に三日月も自然と頬が緩むのだった。
「……じゃあ、そんなお前に1つ聞きたい。
そう尋ねるオルガの表情は、険しい……というより悩んでいた。
カルディナとの話の場では、状況が解らないため現状維持を望んだ。しかし、また別の視点から判断出来るビスケットが現れたため、その意見もほしいところである。
「そうだね……現状維持が第一なのがいいと思うのは俺も一緒。まず、ここのインフラって俺達が住んでた火星に近いんだよね。でも食事面とか労働面とかは格段にこっちが上だし。他の領地でもここまで整備された土地ってないよ。」
「お嬢は中世ヨーロッパ風とか言ってたが、インフラだけ見りゃ火星の住環境に近いな。いや、超えてる面もある。」
「うん。ご飯は美味しいし、
ちなみに、三日月の着ているジャケットのポケットには
今も暇さえあればモリモリ食べている。
「……ミカ、食い過ぎんなよ。」
「気を付ける。」
「はは……で、一番大きいのは、この世界の貴族の上位……いわゆる『四公爵』のその1つアースガルズ公爵の令嬢の後ろ楯があり、そしてその令嬢は俺達の事を十二分に理解している、このアドバンテージは大きいね。」
「……冷静に考えれば恐怖だがな。ゴーレムとかいうデカイ土人形がメインの土地で、モビルスーツ並みの兵器を造ってやがる。財力、人材があるとは言え、世界背景を顧みれば個人単位で成し遂げるレベルじゃねぇぞ。」
「うん。この世界で一番狂気なのは、間違いなくお嬢。」
公爵その人ではなく、後ろ楯になれるほどの令嬢は、アースガルズ家以外はない。
ただ公爵本人でないのは、少し注意とビスケットは付け足す。
「まあ、そんなお嬢様の元で働かせてもらって、福利厚生は万全。安全面は申し分ないよ。それに俺達も色々成長してると思わない?」
「だな。無茶苦茶な訓練、精密・繊細な試験評価……最初は何で?と思う事ばかりだったが、そのお陰で今までにない
「読み書き、計算……今なら簡単な簿記も出来る。」
「……すげぇよな。ミカにまでマスターさせるんだからよ。」
『前』では会得出来なかった肉体労働、戦闘行為以外の仕事の技能。戦い以外に見出だせなかった生きる意味。
それらがここにはあった。
いくら『試験団』としての業務をやらせるとはいえ、問題児ばかりの面々にその技能習得を得意分野に全振りさせ、労働意欲を向上させる教育方法は驚きの一言だ。
他の団員達も従順とまでとは言わないが、カルディナを慕うまでには各々
それも『前』に通じる技能も多く、求めたものの1つにこんなものがあれば、とオルガはつい思ってしまう。
「だから現状維持が第一なのは間違いじゃない。ただ、さっきのお嬢様の話の中でいくつか気になったところもある。」
「例えば?」
「ガンダム・フレーム。2人は直接見てないから解りづらいけど、俺が日中見たあれは、胴廻り、両足の改修以外は全部、俺達が鉄華団で運用してたフレームと
……ビスケットのまさかの発言に、オルガと三日月は止まった。
特にオルガは眉間に皺を寄せ、揉みほぐそうと必死だ。
「……そんな訳ないだろ。お嬢の工房で製造してんだから、形こそ同じだろうが、全く同じなんてないだろ?」
「うん、俺もそう思う……でも発する雰囲気、っていうのが
「……それって、バルバトス?」
「……装甲を着けたら、そうなるかもね。」
「んな馬鹿な、雰囲気って……」
「オカルトが通じる世界だよ、幽霊だって普通にいるし。先週見たじゃない。」
「……だな。けど気のせいじゃないか?」
「俺もそう思いたい。でも、お嬢様が必要としたのは機体側の阿頼耶識のシステムであって、フレームそのものじゃない。本来の機体開発を遠回しにして造るものかなとは思う。あと、ここで造ってるモーターとかと規格が違うし、ガイガーっていうロボット?にもあのG・フレームに使われてる部品は使われてないんだ。」
「ビスケット、細かく見てんなぁ。」
「まあね……それにあそこまで正確に造れる
「設計図?」
「うん。思い出してみて。あのギャラルホルンですら製造するフレームはグレイズ主体でしょ?やろうと思うならコストが高くてもそのコピー品ぐらいは出来ると思うんだけど……」
「ギャラルホルン……確かにな。」
『前』の人生で鉄華団に立ち塞がった、地球一大勢力『ギャラルホルン』。
その力は『厄災戦』と呼ばれる戦争を端に300年をかけて勢力を伸ばした。
モビルスーツ製造も群を抜いて世界最大であるが、『厄災戦』で猛威を振るったガンダム・フレームの製造はしていない。
『厄災戦』の禍根や技術低下に伴い、量産は出来なかっただろうが、試作機ぐらいあってもいいはず。しかし主力量産していたグレイズ・フレームですらガンダム・フレームの劣化版である。
劇中でグレイズは改良を重ねて機体性能こそ上がっているが、基礎スペックはやはり雲泥の差がある。
「けどよ、それは創るのが面倒で、物量戦が出来るから必要がなかった、と言えばそれまでになると思うんだが、それがどうした?」
「まあこの際、製造がどのくらいの難しさっていうのは置いておいて、そんな製造が難しいフレームを、見るだけで終始してた俺が直感的に本物って感じ取れる品質のモノをお嬢様が造れるっていうのが、どうにも信じられなくて……」
「「あ……」」
この際、機体の真偽は関係ない。
要はビスケットが本物と錯覚出来る品質のモノをどうやって開発したか。
ちなみに、外見だけでなく阿頼耶識特有の生々しい動きも含まれている。
そんな存在を創るには、やはり正確な設計図が必要なのは間違いない。
「それにあのG・フレームとロディ・フレーム、職人の誰もが組み上げる現場にはいたけど、その部品そのものは、一切造ってないんだって。」
「「 ──!? 」」
職人が話すには、それは習作でも失敗作でもない。
自分達が面食らう程の出来で、まず規格そのものが違うらしい。
それでも誰が造ったかは、誰も解らない。
「オカルトを超えてホラーだよね。」
「……恐ろしいわ。誰だよ、フレームのパーツを造った奴は。」
「さあ?でも謎はもういくつかあるよ。」
「まだあるんだ、何なの?」
「フミタンさん。」
「フミタン?フミタンがどうした?」
「フミタンさん、どう思う?」
「どうと言われても……まあ、今思えば俺らに対して何のリアクションもないのが気になるが。」
「うん。じゃあ、フミタンさんの容姿を思い出してほしいんだけど。」
「容姿?確か、目付きは鋭い、眼鏡はしてない、赤い髪に……ん?」
「──それ、本当にフミタンさん?」
その瞬間、オルガは青ざめた。
「……おい。あのフミタンは
「あのフミタンさん、俺達にとっては誰??だよね。雰囲気と目付きが鋭い以外は容姿に共通点がないんだ。」
髪を解いた程度、顔は多少似ている程度で、トレードマークのメガネすらない、完全な別人である事に気付く。
そして何より、今までカルディナの傍らにいた筈なのに、カルディナ次に情報を得られる立場である筈なのに、一切我関せず、といった態度を貫いていた。
変装……という可能性もあるが、『今』であっても過去に幾度か一対一で話す事もあったが、わずかにでも鉄華団の存在を懐かしむ反応も、訴える素振りも微塵もない事をオルガは思い出した。
だが、漂う雰囲気が今の今までに違和感を持たせなかった。
「体つきは似てない?」
「ん?それはあるな……ってミカ、お前言うようになったな。」
「??」
「まあ、それはある程度似てるだろうけど……『俺達』を知ってるあのお嬢様が、あのフミタンさんをどうして傍らに置いているかが気になってさ……」
「間違って雇ってる……訳がないな。絶対訳ありだ。けど何でだ?俺達を見ても反応はない……」
「それが解ればねぇ……でも、間違ってじゃないのは確かかな?お嬢様も言ってたじゃない?幾つか秘密はあるって。」
「言ってたね。」
「ああ言われると、癪にくるんだがな……」
「それはそうだよ。俺達に記憶が戻ろうと戻るまいと、元々俺達には言えない秘密なんていくらでもあるだろうし。それにお嬢様と俺達は雇用主と従業員、そもそも言う必要はないけど……だからこそ俺達に配慮してくれてるんだろうから。」
「配慮だぁ?」
「うん。もしくは忠告。だってわざわざ釘を刺すように言う程の秘密があるんだから、半端な覚悟で聞いてくるな、って裏返しなんだろうね。俺達の置かれてる状況も含めて……」
「……何でそう言える?」
「だってこっちの世界にもいるじゃない、『ギャラルホルン』。」
───『ギャラルホルン』がこちらにいる。
その言葉を聞いたオルガは唖然とし、三日月は摘まんだナツメヤシを思わず地面に落としてしまう。
「……嘘、だろ?」
「いや。ここでの正式国名は『ギャラルホルン教皇国』、
「そんな、まさか……」
「ちなみにその皇子の容姿が、名瀬さんを手に掛けた『クジャン公』って奴に酷似してるんだけど、どう思う?」
「……うわ、絶対やだ。」
「だからさ、オルガ。絶対に無茶だけはしないでよね??」
「………」
説明、解釈役に回っていたビスケットだが、当の本人も言っていながら、太った身体を子犬のようにぷるぷる震わせる程には怖がっていた。
それもそうだろう。
まさか、自分達を破滅させた存在が、こちらにも来ているとは思っても見なかった。
他人の空似?いやここまで来てそれはあり得ない。
カルディナも3人には先程釘を刺したばかり。
───派手に動くな、と。
それはつまり下手をすれば『昔』の二の舞になる事を暗示していた。
ちなみに、そのテの風刺画が街にも幾つかあったりする。
その風刺画をチラッと見た事をオルガは思い出した。
そしてカルディナはギャラルホルン教皇国の事は非常に詳しい。
尚、ビスケットが知っているのは、先程懇切丁寧に話を受けた説明とアニメ鑑賞中にその事を確認したからであった。
そしてもうそろそろ、オルガの頭痛は限界になりつつあった。
「……あ~、マジで何でこんな世界に来たんだろうな、俺ら。」
「……だよね。」
「………」
無事平穏に暮らせていた、と思いきや、実は危険な薄氷の上にいる事を自覚せざるを得ない事柄だ。
もう一度、答え無き質問を独白する。
しかし、誰もそれに応える事は出来ない。
そしてしばらく沈黙がその場を支配する。
どうする、どうしたら……
そしてその沈黙をオルガが破った。
「───よし!ひとまず現状維持。これは決定だ。」
「わかった。」
「……だよねぇ。」
「癪だがよ、あのお嬢の言う事を素直に聞かないと、この先どうなるか解ったもんじゃねぇ。どのみち、今の俺達には全部を見極める時間が必要なんだろうな。けどよ、俺達でもやれる事もある。」
「……ええ~?聞くの怖いなぁ。」
「心配すんな、そんな面倒な事じゃねぇ。ただお嬢の手伝いを鉄華団
「……その心は?」
「お嬢も言ってただろう、明後日辺りからガオーマシンって奴を創るって。しかも3ヶ月という短期間でだ。」
「……ああ、言ってたね。」
つい安請け合いをしてしまったが、ガオーマシン3機を3ヶ月で製作するという無茶振りを国王より受けてしまったカルディナ。
増員こそあるものの、正直キツイところがある。
尚、ガオガイガーの第1話が始まるまでの時系列を踏まえると、ギャレオンが獅子王凱を助けてから2年後にはほぼ全てのスタッフ選定、役人への根回し、GGGの基地環境、ガオーマシンの開発整備が整っている。
時間だけで言えば妥当、と言えるが、普通は無茶振りの範疇である。
「えっと戦闘機に、列車に、ドリル戦車だっけ?魔法のイメージに一切合わないものばかりなんだけど。」
「……ミカ、そこは目を瞑れ、無視しろ。お嬢の所業だ、今までマトモに考えただけで疲れる以外に良いことあったか?。」
「……そうだね、スルーしよう。」
「まあ、こんな世界でそんな
「で、手伝うと。」
「ああ。今の俺達は鉄鋼桜華試験団、要はお嬢の雑用集団だ。手伝う理由はそんなものでいいだろ?で、その手伝う間にガンダム・フレームか、ロディ・フレームが視界に入っても不思議じゃねぇ。」
「え……つまり、手伝いを理由にガンダム・フレームとロディ・フレームを見させて、記憶を取り戻させるって事!?」
「ああ。それぐらいやってもバチは当たらんだろう。幸いにも説明材料はお嬢が持ってる。説明に関しちゃ無理な話じゃねぇ。それによ……」
「それに?」
「多少混乱するだろうが『今』なら、死んじまった奴らが生きているんだ、少しくらい『再会』っていう甘い現実を味わいてぇし、味わわせてやりてぇじゃねぇか。」
「……そっか、そうだよね。」
繰り返すが、死んだ結果は変わらない。
しかし今は生きている。
今はその事を実感してもいい、とオルガとビスケットは思った。
……だが。
「……オルガ、話変わるんだけど1ついい?」
「??どうした、ミカ。」
「いや、お嬢が言ってた明日の試験交代の人選だけどさ……」
「ん?ああ確か、クストとムル、だったな。それどうした??」
「……いいの?交代させて。」
三日月が目を細め、それでいいのかと言わんばかりの表情でオルガを見た。
しかし、オルガには何故そんな風に言われるかが解らない。
「……いや、いいだろ。確かにあの2人はそこまで深い付き合いじゃねぇけど、今じゃ信頼関係もバッチリだと思うがな。それに明日はそんな難しい
「そうだよ、三日月。だって試食と試飲だよ。」
「だから明日の担当が、クストとムルなんだよね?新作ケーキとお茶の。このままじゃ、血の雨が降らない?」
「「 ───!!! 」」
オルガとビスケットは、その言葉を聞いた瞬間自身の選択を猛烈に後悔した。
そして踵を返して、全力で来た道を戻るのだった。
自分達が外からの攻撃ではなく、
その頃、カルディナは自室にて先程見ていた報告書に再び目を通し、眉間に皺を寄せていた。
それらは商いや試験報告の類ではなく、本来であれば領主、もしくは国に報告するべき内容のものばかりだった。
その項目は内外問わず、多岐にわたる。
【哨戒任務中の騎士団一個小隊、消息不明について ②】
【ドルト共和国、内紛の推移】
【地盤沈下後の飛散した粒子観測と、周辺住民の異常行動、その被害について ⑤】
【村人6名消息不明について】
【アーブラウ立教国、議会不義の状況 ⑦】
【鉄器紛失、消失の件 ⑪】
【鉄色の木の目撃談について ⑤】
尚、これらの情報は、カルディナ独自に作った『影』が情報収集したものである。
(……また騎士団の一個小隊が消えましたわ。2件は流石に看過出来ませんわ。こちらはお父様に繋ぐとして……周辺では地盤沈下や村人の異常行動が見られますわね。異様な鉄器の紛失、変な木の目撃情報……って、ここに来てドルトが内紛紛いの抗争ですって!?アーブラウの動きも前から変とは思ってましたが、ここに来て異常さが増すなんて、ギャラルホルンの……カイエル教の、クソ坊主共がッ!!『聖女』欲しさに、どれだけやりたい放題してくれるッ!!)
衝動的に報告書を握り潰してしまうカルディナ。頭が痛い出来事ばかりが、立て続けに起きている。
特にカイエル教関係者は苛烈極まりなく、教会の権力を傘にやりたい放題なのだ。
過去、場合によってはカルディナは秘密裏に火消しに回る事もあり、必要であればそれも善しとしていた。
また、カルディナ自身は
必要なら、手を下そう……
だが、今回はそれは出来ない。
持っていた書類の束を置き、別にしていた、一枚の紙を拾って、睨み付けるように見た。
【未確認個体:code Z の目撃証言、その範囲(最新)】
(……こちらも目撃情報が更に増えた。単独行動がメインだった昔に比べ、今は複数単位での行動が目立っています。そして目撃箇所が定まり始めたのも、気になりますが……
目撃情報が増えているのに、目に見えるアクションはしてこない。
一匹いて、一週間もすれば機界昇華など簡単に出来るのは、ガオガイガーのアニメを見れば判る事。
なのに、 何故か何もしてこないのが現状。
(私の思い間違い?それとも何か他に理由が??いえ、どちらにせよ、貴殿方は必ず何かしてくる筈でしょう、機界昇華が何よりも第一な筈でしょう、
掌に込める力が強くなり、食い込んだ爪が僅かに血を滲ませる。
秘密裏にかつ、目に見えない形でじわじわ増えていく
カルディナにはそれが不気味で何よりも怖かった。
自分の知らない間に起きる最悪なケースが、つい頭をよぎってしまう。
そして何より、一番の対抗手段となる存在が未だ何の反応もない事が、更に不安を掻き立てる。
そんな不安を払い除けるように頭を振り、早まる鼓動を鎮めようと深呼吸を繰り返すカルディナ。
(……早計、とは思いましたが、やはりクスト、ルムをゾンダーに接触させる……これしか手がありませんわ。企てが当たれば御の字。ですがもし外れれば……外れた時は……)
「───お嬢様、お茶が入りました。」
「ッ!!」
最悪の想定をしていた最中、不意に声が。
その声でハッとしたカルディナは、目の前に出されたお茶に視線が行き、そして淹れてくれた人物に視線を移す。
「あ……ありがとう、いただくわ。」
そして一口、お茶を口にする……
(……あたたかい)
それはどちらか。
そう思う事を考えるのも、どうでもいいと思える程に、その一口はあたたかい。
(……そうよ、不安要素が多々ありますが、今更不安になっても仕方ないのです。常に最悪を想定しつつ行動するしか道は無いのだから。例えその道が茨であろうとも、『勇気』を持って。)
恐らく安全、という退路はもうないのだ。
だからこそ取り返しのつかない事態を防ぐために、敢えて危険な道を歩くのだ。
そう、再びカルディナは心に思う事が出来た。
そして淹れた人物は。主のその様子を見て、少し微笑む。
そしてお茶を飲み干したカルディナは、ソーサーにティーカップを置き、再び思考を巡らす。
(……さて、どうしたものでしょうか?とりあえず明日交代で来て貰う、クストとムル……)
(……改めて思うと2人は何故存在し、鉄華団と一緒に??いえ、どんな結末になろうとも最悪、2人を守れるくらいには警戒せねば。)
天海護に酷似した、クストという少年。
戒道幾巳に酷似した、ムルという少年。
幾多の可能性を併せ呑むこの世界に、ガオガイガーに出てくる存在が微塵もない中、何故この2人がいて、何故鉄華団の元におり、これからどの様な影響を及ぼすのか、カルディナには予想は付かないが、自身のやるべき事は果たす。
そう心に決めるカルディナであった……
「───あ、そういえば。ねえ、一つ伺うけど……」
「何でしょう?」
「
「……どう、とは?」
「いえ、気紛れに。ほとんど種明かしをした昨今、
「困りますね。そう申されると私からは……」
その人物は、カルディナの質問に答えを出すのに困っている様子で……
「───特に何も、と申し上げます。」
「……でしょうね。」
その答えに予想通りにやはり、とするカルディナ。
「あ、ただ……」
「ただ??」
「先程『影』から
「…………あ、そう。あの子もそこまで真面目に取り合わなくてもいいのに。」
「私も『フミタン』として行かねばなりませんか?正直、面倒です。」
「……考えておくわ。」
厄介事が起きるだろうと思うその前に、面倒事が起きようとする。
その事に、再びオルガ達が部屋に訪れるまで、非常に頭を痛めるカルディナであった。
《……NEXT》
《次回予告》
君達に、最新情報を公開しよう。
姿なく、陰で暗躍する機界生命体・ゾンダー。
その存在を暴くべく、クストとムル、2人の少年を伴いその地へと赴く!
果たして浄解の力は発現するのか?
そして世界を救う鍵となり得るのか?
カルディナの疑問に2人が応える時、新たな可能性が見出だされる!
NEXT『公爵令嬢は、ファイナル・フュージョンしたい』
Number.10 ~GとJ~
次回もこの物語に、ファイナル・フュージョンッ!!
これが勝利の鍵だ!
『新作ケーキ&厳選緑茶』
《次回予告(嘘)》
※CV:銀河万丈さんでお送りします。
……その感情は『激怒』
……その感情は『怨嗟』
鉄の華が散らされ、後に残る怒りと怨みの聲が、嘆きと苦しみの焔で真っ赤に染まる夜空に木霊する。
(僕の
(……僕の
奪ったのは、貴様かッ!貴様かッ!貴様かッ!貴様かッ!!!
荒れ狂う怨嗟、轟く咆哮、果てぬ怨みの中、2匹の獣は最悪の覚醒を果たす。
それに対峙するは我らが
(……どうして、こうなりましたの?)
天地が破滅し、命が生き絶える中、最早相容れぬ者同士、覇界と昇華を以て始まる死闘ッ!!
……そしてその陰でほくそ笑む
(……フフフ、つまみ食いしたのは私です。)
だが、事態を解決せんと決戦の地に走り向かうのは
(───今、参ります!!)
(駄目です!ケーキは作りたてより、少し時間をおいた方が美味しいんです!まだ出せません!)
果たして間に合うのか!?
……さあ、凶宴を飾る最後の
次回『公爵令嬢は、ファイナル・フュージョンしたい ~Dead End~』
Number.11『
これが勝利の鍵だ!
『
……嘘です。
○G・フレーム & ロディ・フレーム
お嬢様は正確な設計図は持っていませんし、直接製造に関わっていません。
そして職人達も嘘は言ってませんし、組み立てのみ携わっています。
では、各パーツは誰が製造したのか?
この辺りがオルフェンズ組がこの世界にいる理由になります。
その辺りはチラリとヒントみたいな間話を出す予定です。
○フミタン(?)
Q:一体いつから、このフミタンが本物と錯覚した?(愛染風に)
A:最初から。
実際のところ、Number.01の時点で『オルフェンズのフミタン』ではないです。
途中から読んでいる方には判りづらいですが、初期にはオルフェンズのタグは入れていませんでした。
入れたのは、鉄華団をチラ見せした頃からです。
実際、読んでて違和感が最高潮ではなかったでしょうか?
じゃあ、コイツは誰?となりますが、答えは『ドルト』の焼き直し話で。
○ギャラルホルン教皇国
中世の尺度で考えれば、宗教で牛耳っていてもおかしくないはず、との思いでこうなった。
初期に言っていたカイエル教……何の事かは判りますよね?
設定としてはTV版ガオガイガーではロクに出なかった政治的な話を出すため、敵役としています。
ぶっちゃけ、ディバイディング・ドライバーの失敗作を炸裂させて国が消えようが、罪悪感を抱かない程度には悪い国に仕立て上げる予定。
○ゾンダー
ゾンダー!(はよ出せ~!)
もうちょい待って。
○クーデリア
未登場ですが、義妹。
○次回予告(嘘)
遅れてしまいましたが、エイプリルフールもの。銀河万丈さんの次回予告が秀逸だったので、その影響か、悲惨風味に。
実際の話はここまで酷くないのでご安心を。
次回は本編に入る前に、間話や昔話を入れる予定です。
なかなか進みませんが、補足しておかないと、意味が判りづらいシーンがあったりするので、ご容赦を。