公爵令嬢は、ファイナル・フュージョンしたい。   作:和鷹聖

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最近オルフェンズ成分強くて、何を書いているか、さっぱりです。
流石にオルガ達はキャラが濃い。

ようやくガガガ成分が補充できる回になるかと……

……なるのかな?


Number.10 ~GとJ~(1)

「……さて、と。これで陛下に見せる資料と映像資料が全て揃いましたわ。」

 

 

仕分けと梱包作業が終わり、ホッと一息吐くのはカルディナ。

視聴覚室の床に数個、カルディナを中心に置かれている木箱を見て、本来は使用人やメイドが行うような事だが、カルディナにはあまり関係ない。

むしろ違う意味でカルディナは頭痛がする思いだった。

 

 

「口約束とはいえ、ある程度予想はしていたとはいえ、陛下に『ガオガイガー』を見せる時が来るとは……」

 

 

陛下と会食の時、秘めに秘めた自身の行い事を明かすと約束し、その証左を渡すのが今日なのだ。

ちなみに木箱の中身は魔術式投映機(プロジェクター)と、魔術式情報集積体『在りし記憶の板札(メモリアル・カード)』。

もちろん中身は『勇者王ガオガイガー』だ。

そして極め付けはカルディナのお手製、ガオガイガー・コンプリートファイル。

 

───これを見れば、君もファイナル・フュージョン承認!!

 

と、言える程の情報量、精密なイラスト、他の情報では開示されなかった事象についてカルディナ独自の情報の、重箱の隅っこを突っついた考察が載った辞書並みの分厚い冊子(?)である。

通称、綺麗な中二病ノート。

設計図は別として、この世界において唯一のガオガイガーに関する事が詳しく記された書物でもある。

 

 

「……まさか、この本が役に立つとは。とは言え、これだけの情報量があれば十分でしょう、フミタン。」

「はい。こちらの荷物が全てですか?」

「ええ。間違いなく王都に……陛下の元に運んで下さい。」

「判りました……と言いたいところですが、実は先程、領主(父君)様が別件で王都まで行かれる、との事で「それらの荷物は私が預かるので安心していいよ」と、言伝てを……」

「───ガッデムっ!!」

「しかも御会いになるお方が、ティ・ガー元将軍で……」

「───ジーザズッ!!」orz

 

 

何と言う恥辱か。

別件とはいえ、用件が終われば確実に王城に向かい、そして陛下と一緒に『見る』だろう。

そうなると映像もそうだが、手作り冊子も見られる、という事に……

そしてカルディナの憧れの、元将軍のティ・ガーという人物。

本名、ティオレンス・ガルン・ガーベルト。

2年までアルド・レイア王国の将軍を勤めていた筋骨隆々の壮年の男で、カイゼル髭がよく似合う。戦士としても魔法使いとしても超一流。現・レクシーズ王権の立役者の1人であり、カルディナにとってはヒーローでもある。

ただ、2年前に公務最中に右脚を痛めてしまい、現在は隠居生活を送っている。

 

そんな人物がいるのだ。

間違いなく好奇心100%見に来よう、確実に見られるのだ、非常に恥ずかしい、の一言に尽きる。

 

経緯はどうあれ、年頃の娘のノートの中身を親や憧れの人物に見られるのは、かなり抵抗がある。

が、しかし……

 

 

「───大人しく恥辱に耐え忍びつつ、その『中二病ノート』を陛下と領主(父君)様、元・将軍に見て頂くしか道はない、という事ですね。」

「───何、そのナレーション的発言!?いや、そうですけど!?」

「(ドヤァ)」

 

 

……台詞を盗られた(泣)

 

 

「しかし、宜しかったのですか?」

「……何がですの?」

 

 

他の執事達が木箱を運んで行った後、フミタンは確認するようにカルディナに尋ねた。

 

 

「昨日からガオーマシン、という大型の機械を3機同時進行で開発、という過密スケジュールの中で、お嬢様が抜けられるというのは。」

「……ああ、その事ですか。」

 

 

遂に開始したガオーマシンの開発。

昨日より開始したが、3機同時進行で開発という明らかに自身の首を絞めているような過密スケジュールを打ち立て、しかも国王陛下に啖呵を切ったとはいえ、残り3ヶ月で完成させねばならない現状、同時進行で行くため、猫の手も借りたい。

そんな時期に一時とはいえ、カルディナが抜けるのだ。

その原因が、未だ未確認のゾンダーの存在である。

 

 

「『影』からの報告で、近隣住民のここ最近の出没数が僅かですが多くなっています。なので今回は強硬偵察です。」

「とは言え、お嬢様が直接赴く事はないのでは?それに接敵した場合は……」

「……事情を知り、対処出来る存在が私しかいないのです。それに半分は博打ですが、打算はありますし、そこが今回の肝です。」

「お嬢様にしては不確定要素を含んだ行動ですね。」

「……今回ばかりは、そういう自覚はあります。」

 

 

フミタンがそう言うのも仕方がない。

今回の目的は強硬偵察、及び該当者2名の覚醒促しなのだから。

 

成功すれば強力な最低限度の抵抗力を獲得はするが ゾンダーの存在が確定し、長い戦いの幕が開ける。

接敵無しなら空振りは、現状維持。

最悪の展開は、世界の機界昇華(終焉)が待っている。

 

行動せねば現状打破出来ない、現状維持は悪手、ならリスクを背負ってでも行動を起こさねばならない。

例えるならパンドラの箱だが、開け手のパンドラは相当リスキー。

 

 

「それに自己申告といえど、試験団を製造作業に参加させるなんて、宜しかったのですか?」

「まあ、そちらはあまり気にしてません。監視は付けてますし、むしろ発破を掛ける手間が省けましたから……」

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

───地下空間(ドッグ)

 

 

「……マジか。地下にこんなところがあるとはな。それに、事前に話を聞いていたとはいえ、ここまでの出来とはな。」

「……確かに。ビスケットが本物って感じる気持ちが判る。」

 

 

地下である筈だが、見上げる天井は高く、そしてそこで動くモノ──G・フレームもまた高い。

オルガと三日月は、稼動するG・フレームを見上げ呟いた。

 

 

「やっぱそう思うか?」

「うん。何て言うか……肌に感じる雰囲気とか、滲み出てるものとか、言葉にしにくいけど間違いなく『コイツ』って感じはある。」

「だな、俺もそう思う。どんなカラクリ使ったか解らねぇが、実在してんのは事実だ。それによ、何故かランドマン・ロディもいやがる。どういう事だ?」

「きっとお嬢が造ったんじゃない?」

「……個人で造ったとか馬鹿げてねぇか?いや、何か不思議と納得出来るな。」

 

 

カルディナが関わる以上、モビルスーツの1機もあって可笑しくはないだろうと、苦笑いするオルガ。

現に、G・フレームとランドマン・ロディを中心に3つの巨大な建造物が、現状は基礎骨格だけだが姿を現し始めている。

 

 

「ありゃ、飛行機の羽か?デカいな……」

「こっちは列車?ん、あっちはキャタピラ、ドリルがある。」

「それをモビルスーツで組んでるとか、凄ぇ光景だな。しかもデカさだけも……そのまま輸送手段、交通機関に利用出来るんじゃ……そんで中身は魔法で動くとかあり得んだろうによ……」

「まあ、あのお嬢が関わってる以上は不思議じゃないと思う。」

 

 

そして現場で働いているのが、人間も含めた多種族の人々。

現実味があるようでないような、そんな光景を目の当たりにしてオルガはやれやれと溜め息を一つ、三日月はナツメヤシを一口。

そして気持ちを整理した後、オルガは後ろにいる2人に声をかけた。

 

 

「……てな所なんだがよ、どうよ?明弘、シノ。」

「いや……どう、と言われてもな……」

「悪ィ、何か頭の中が色々思い出してきて……ごっちゃに……」

「だろうな。」

 

 

目を白黒させて混乱に混乱を重ねて唖然とする、黒の短髪の大柄な少年、昭弘・アルトランドと茶髪のたれ目が特徴のノルバ・シノ。

悪魔の名を冠したG(ガンダム)・フレームの乗り手である2人だが、『前』の記憶の復活とその混乱に耐性がある訳がない。

だが、そんな様子にオルガは笑みを見せる。

 

 

「つか、オルガ……だよな?」

「シノ……俺が他の誰に見える。」

「あ、いや……その……」

「なんてな、怒っちゃいねぇよ。()()()()()()()に思わず安心しちまってよ、どうやら大丈夫そうだな。」

「というか、どうなってんだ??俺達はいったい……」

「まあ、経緯は一から説明してやるから安心しろ。『前』とは違って今の俺達は雇われの身だが、そう悪い所でもないからな、ここは。」

「「???」」

 

 

カルディナに無理を言って参加させてもらった、昨日より始まったガオーマシン3機の製造。

国王陛下に啖呵を切ったとはいえ、残り3ヶ月で完成させねばならない現状、同時進行で行くため、猫の手も借りたい。

そのため下心(記憶の復活)を含めたオルガ達、鉄鋼桜華試験団の製造作業の自発的参加をカルディナは許可した。

その成果は早速現れたようだ。

 

 

「───皆さん、準備は出来ましたか?」

「ああ……ヴォルフさん、だっけか。」

「はい。」

 

 

4人の前に現れたのは、グレーの髪をした鋭い切れ目をした、物腰の柔らかい執事服の男。名をヴォルフという。

だがオルガはこの男、普段は殆ど見た事が無い事を覚えている。

 

 

「お嬢様が別件でいらっしゃられないので、今日は私が皆さんの監督をする事になりました、宜しくお願いします。」

「(まあ、誰かが付くとは思っていたが……)ああ、こっちはいつでも。」

「そうですか。一つ断っておきますが、皆さんの事はお嬢様より伺っていますが、本日はこちらの事案を優先して下さい。」

「……そりゃな。今日の労働にも給料に反映されるんだ、その分はしっかり働かせて貰うさ。それにもう……こっちは大丈夫みたいだしな。」

「それは重畳。まあ……それとは関係なく仕事量が多いのです。何しろ畑違いの私まで駆り出されるのですから、頼みますよ。」

「任せてくれ。さてお前ら、仕事するぞ~。」

「ちょっと待てよ、オルガ。この状況で仕事って……」

「いや、な……今の雇い主(あのお嬢)に言われてんだよ。『利用するのは構わないけど、仕事はしっかりね』ってな。ま、今日は主に荷物運びだ。難しい事はやんねぇよ。その中で説明はする。」

「というか、その方が早いと思う。」

「あ、ああ。」

「お、おう。」

 

 

そしてヴォルフの後に付いて行く4人。

特にいまいち状況が理解出来ない昭弘とシノだが、基礎骨格が組み終わる翌日の時点で理解したものの、頭が痛くなっていたのは前例込みの御約束であり、作業に関係ない事だった。

 

 

(しかし、配慮してくれるのは有り難いんだが、お嬢の方は果たして大丈夫なのか?? あの2人、お嬢相手に暴れてなきゃいいが……)

 

 

自分の目的がすんなり解決し始めた事に安堵しつつも、問題の2人に苛まれていないか、心配するオルガだった。

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

───視聴覚室

 

 

「まあ、職人達の皆さんの腕は既に熟練していると確信しています。骨組みの基礎を粗方終えた今、問題はないでしょう。」

「そうですね。で、問題は……」

「……あの2人は?」

「こちらの部屋に待たせてます。相当荒ぶってますが。」

「……そう。」

 

 

そして当の2人がいる部屋に到着したカルディナは、まず扉を少しだけ隙間を空けて部屋の中伺う。

すると、そこには……

 

 

 

 

────ゾォォンダァァァー!

 

────ゾォォンダァァァー!!

 

 

───Σ( ̄□ ̄;)?!

 

……(つд⊂;)ゴシゴシ

 

 

───ケェェェェキィィィィィ……!

 

───オチャァァァァァァ……!

 

 

……(゜д゜)

 

 

 

(……一瞬、ゾンダーが2体座っているかと思いましたが、ただ単に2人が怒りと悲しみで血涙してるだけですわね。)

 

 

ゾンダーの目が赤いのは、ストレスにやられて血涙している事を表しているのだろうかと、カルディナはつい思う。

 

 

「……どうでしょうか?」

「……非常に阿呆な誤解した様子ですわね。仕方ありません、まずはそれを解きましょう。」

 

 

と言って、今度はノックして部屋に入ると、2人の顔が「グリンッ!!」と効果音が付くぐらいに一斉にカルディナへと向けられた。

 

 

───ケェェェェキィィィィィ……!

 

───オチャァァァァァァ……!

 

 

そして食いしばる歯が剥き出しになる位に、怒りと悲しみ目でカルディナを睨む2人。

想像してほしい、成長した護君と戒道君が、SUN値直葬MAXの顔でこちらを見ているのだ。

事情を知っている人物が見れば、止めてくれ!と懇願したくなる。

そんな2人を見て、カルディナは溜め息を吐きたくなるが、我慢した。

ドモン・カッシュの怒りのスーパーモードや、ケミカルボルトに侵された獅子王凱の方が、まだいい表情していると、カルディナは思いつつ、2人に話し掛ける。

 

 

「今日の事は団長(オルガ)から聞いてますわね?試飲、試食の交代して私に同行するようにと。」

 

 

───ケェェェェキィィィィィ……!

 

───オチャァァァァァァ……!

 

 

「……で、確かに試験評価の試飲、試食は確かに替わって貰いましたが、別に2人に出さない、とは言ってませんわよ?ほら……」

 

 

───ケェェェェキィィィィィ……?

 

───オチャァァァァァァ……?

 

 

『収納空間』より出したのは、本日の試飲、試食用のケーキ数点と、試飲用のお茶の入った3缶。

 

 

「今日の強硬偵察の休憩の合間に味を見て頂こうと思いましたが、その様子では不服の様ですわ……」

「───行こう、お嬢!」

「───何時でもご命令を、お嬢様。」

「………」

 

 

そこにいたのは、元気・活発がつく少年と、とても礼儀正しいクールな少年が。

何とも変わり身の早い2人に、呆れてモノも言えないカルディナ。

無言のまま2人の頭に手を置き、アイアンクロウ(対面キッチン)を2人が謝るまで執行するのだった。

 

そんな一癖も二癖もあるのが、鉄鋼桜華試験団の団員の一員、クストとムルという人物である。

 

……ちなみに、カルディナの握力は素の力でモース硬度6までの岩なら、余裕で砕ける事を明記しておく。

 

 

「「 ───ごめんなさーーいッ!! 」」

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

クスト。

 

ルム。

 

 

経歴は不明。

2人の名前──氏族名(ファミリーネーム)を鉄華団の団員ですら知らないのは暗黙の事実。

カルディナと出会う前、鉄華団が鉄鋼桜華試験団となる半年前に彼らに加わった程度しか解らない。

だが、活動が休みの日は何か情報収集をする動きが多い。

 

何故、鉄華団と共にいるのか。

そもそも何処から来たのか。

何故、この世界にない因子であるはずなのに『勇者王ガオガイガー』の天海護、戒道幾巳と似ているのか。

 

最後の問い以外は、本当なら()()()()()()()()もあるが、そこまで必死になって知る必要もないかとカルディナは思っていた……

 

だが、この2人は口が堅く、自分の事はカルディナを含め、他の団員にもなかなか話そうとはしなかった。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

「───全く!貴殿方はケーキお茶の事となれば、す~ぐトラブルを起こす!」

「「……す、すみません。」」

「今回のは特段酷かったですが……まあ、今日1日ちゃんと私に付いて来れば許します。そもそも怨み辛みがあってもそんな顔してましたら、他の貴族なら一発で首チョンですわ!いい!?一時たりとも離れたら……!!」

「「 Sir,Yes sir!! 」」

 

 

そう説教をしながらカルディナ、クスト、ムルの3人は、IDメイルを纏い、追加装備のランドスピナーを使って、急勾配な坂道を高速で登って行く。

途中、急カーブじみた場所があるが、重心を巧みに傾け急旋回したり、途切れた道も急加速で飛び越えたりして難なく進む。

尚、フミタンはお留守番で、ガオーマシン製作のバックアップに回って貰っている。

 

ちなみに、男性用のIDメイルは既に鉄華団の試験評価を終え、団員の正式装備になりつつある。

特に高速移動用に開発したランドスピナーは、『コード・ギアス』の主力兵器、ナイトメアフレームのものを流用しているだけあって、その汎用性が高く、狭い住居群を高速滑走出来る。壁伝い滑走も出来る。

尚、形式はブリタニア、特にランスロットのものを模している。

特に構造が見た目以上に頑丈、思考可動が可能であるので、スピナーを蹴りに応用する『LSアーツ』なるものが編み出されたとか……

カルディナが熟練トップ、次いで三日月、シノと、以後軒並み使いこなしている。

 

 

「───ですが、貴殿方2人はそこまで上手くないのですから、しっかり使いこなすようにね!」

「「は、はい!」」

 

 

カルディナに離されないように必死に付いていく、クストとムル。

しかし本当のところ、カルディナは半分程度本気にしか思っていない。

これは今回の同行に際し、でっち上げた理由の1つであり、先程の負い目もあって子犬の様に律儀に守って、必死になって付いて来る2人見ては、逆に溜め息を吐きたくなる。

 

 

(……普段は従順なのですが、どうして自分の事になると口をつぐむのでしょうか?)

 

 

団員にもそうであるが、カルディナ相手だと尚更口が堅い。

出身地どころかフルネームすら判っていない2人。

しかし、次の休憩の際にケーキとお茶を出す事にした時、ポロっとこぼす場面が……

 

 

「……今日出たケーキとお茶って、とっても懐かしい感じがするよね。」

「……うん。ケーキの味もそうだし、お茶の香りが、昔飲んだ事のあるものに似ていて……」

「……そうなの??」

 

 

その話を聞いて、カルディナは困惑した。

 

ケーキを試作を担当するアトラのいる厨房に、度々出入りするクストは、以前一口だけ味見をさせて貰ったという。

それはよくある事だが、先日の試作品が幼少の頃に食べた物に酷似していると驚いたらしい。

 

お茶にしても、取り寄せ先で運搬の担当していたムルが検品した時、その香りが同じく幼少の頃に飲んだお茶の香りに似ているとか。

 

だが、実はどちらの品もそこまで特別なものではない。

今回の試作品は、北方地方の菓子をベースに改良したもので、そちらでは田舎菓子とも言われる、どっしり系のスポンジにドライフルーツを惜し気もなく使っているものがメイン。

特にクストが気にしたのは、アイシング(砂糖で周りを固める事)でキッチリとコーティングし、中の生地の小麦粉はその北方のものを全粒粉で使って甘くないスポンジ(というにはあまりにも重い生地)というもので相当な間、常温保存が可能という代物だ。

ケーキ1つでお腹が膨れる程の、言わばイギリスのケーキに近いものだが、それよりは全体のバランスが奇跡的に取れている。

 

 

「でも味はこっちが上だよ。前に食べたのはここまで美味しくなかったけど……組み合わせ、なのかな?」

「それはアトラに感謝しなさいな。(イギリスという国のアイシングケーキは相当甘ったるく、クドいらしいようですし。)」

 

 

そしてお茶も産地は一緒で、製法は紅茶に近く、土地の気温が低い影響でダージリンに近いもの。

ただ特筆するなら、ルムが気にしていたのは、何故かセイロン系の紅茶であり、渋みが他より強いという、同じ地域で作ったには不自然な一品。

 

 

「他にも飲み比べましたが、烏龍茶あたりも似ている気が……」

「発酵させているお茶って、より味が強かったりしますからね。」

 

 

正確に言い当てているところもある訳だから、あながち適当ではない。

と言うのも、2人は当初からケーキとお茶に関しては執着が強く、ありがちなケーキのつまみ食いでのトラブルを始め、何かかしら些細なトラブルがあったりするが、どうやら幼少の記憶、思い出に関係があるようだ。

また、ケーキやお茶といった嗜好品は、今の世であれば気軽に食べれるものでないし、その機会があるなら、既製品ではなく手作りの品になり、それなりに裕福な環境だったか、と予想も出来る。

であれば、カルディナには材料を仕入れた地域で思い当たる所が出て……

 

 

(………来ましたが、妙です。ここは()()()場所ですわね。)

 

 

正確には、そこは人が住んでいない場所───森林の深く。

今回用意した他のケーキとお茶を含め、その殆どは北方で広く栽培、嗜まれている。

そして、それらが全て伝えられ、作られている分布が重なる場所が1つあるが、今思い返すと、どうしてかその地域は森林なのだ。

村、ないし街などない。

 

 

(……あれ??ですが、他の村方々は、森のお人が好んで作っていたと、事前の聞き取りではそうありましたのに……隠れ里、でしょうか?)

 

 

だがそれはあり得ない。

その地域は20年程前に広範囲に渡り、疫病被害が出ており、今も尚、王国から厳密な侵入禁止令が出ている。

流石にここからではランドスピナーと言えど、何日もかかる、遠い場所にあるのだが……

20年とも言えば、クストとルムはまだ産まれてない。

 

それと、カルディナはもう1つ思い出した事があった。

 

北方地域でとある伝承──『赤い流れ星』という昔話がある。

約100年前の夜、赤い流れ星が地上に落ちたという。

その後その流れ星の跡に、人が住まう様になる。

その人々は他の民より知恵に優れ、交流のあった地域は、その恩恵にあった……という。

 

ただの昔話だと思ったが、その近辺の地域、特に3年前に国として独立した、複合事業連合()()『テイワズ』という国が技術的に工業水準が高い。

しかもその流れ星が落ちた場所こそ、テイワズ領の近くの樹海であり、侵入禁止令が出されている場所なのだ。

 

 

(そういえば、タービンズの皆さん、お元気でしょうか?)

 

 

ふと思い出す、タービンズの名瀬やアミダに対し行商の売り込みで色々お世話になった記憶。

その時に色々、昔話や逸話等も教わっている。

そしてその地で鉄華団と出会い、クストとルムとも出会い、今に至る……

 

 

(……何か、ありそうですわね。)

 

 

そもそも、今回のケーキとお茶の騒動は、クストに駄々をこねられ、ネタを()()()()()()思い付いたもの。

お茶も北方産に美味しいものが多いので、それに倣って用意したもの。

 

 

(……北方に何か、でしょうか?)

 

 

しかし今はゾンダーが先だ。

例え北方に何か重大なものがあろうとも、今はゾンダーを蔑ろにする訳にはいかない。

それに最近はあちらの情報収集を密にしていないので、改めてする必要もある。

 

 

「お嬢??」

「……何でもない、という訳じゃないけど、一度北方に行った方がいいかしら、思って。」

「北に??」

「色々ヒントがありそうで。ケーキ、お茶やら……あ、ちなみに今回のケーキとお茶はどうでした?」

「はい!アイシングケーキはもう少し糖のコーティングを0.1ミリ薄くしてもいいと思います。あと、可能なら酸味の強いベリー系、プラム系のジャムを層で重ねても良いと思いました。」

「お茶は茶葉をあと0.2グラム増やせばバランスが取れるかと。蒸らす時間は12秒長めに。」

 

 

実にハキハキした、良い返答だった。

 

ちなみに、本日実施された試食・試飲会の時、鍛冶師のダーヴィズも同席しており、同じ様な回答をしている。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

休憩も終わり、改めて強硬偵察を行うカルディナ一行。

遂に『影』から報告のあったエリアへ赴いたが、道中は野生動物や小型魔獣がいる程度で、簡単に迎撃出来たが、本命(ゾンダー)は見当たらなかった。

そして中には……

 

 

「お嬢!そっちに行ったよ!!」

「全く!何で魔法生物(クリーチャー)までいますの!?しかもスライム!?王国危険指定生物でしょうに!!」

「知らないよ!!どこかの馬鹿が飼い切れずに放したんでしょう!?」

「……まさか魔法生物(クリーチャー)退治とかするとは思わなかった。さて、魔法障壁!お嬢様!」

「重力魔法を高出力で集束ッ、受けなさい!!『グラヴィティ・バニッシュ』ッ!!」

 

 

意外と素早い魔法生物(クリーチャー)スライムを、クストが追い込み、ルムが魔法障壁で宙に飛ばすとカルディナが重力魔法で圧縮、圧殺する。

魔法生物(クリーチャー)は人工的に造られた生物である。

特に魔獣の内臓物を使っている事が多く、知識があれば造れるが、今まで害しかもたらさない物が多い。

特にスライムは雑食だ。

造ったはいいが保管、飼い慣らすのは難しく、家畜、作物の他、柵や石壁すら溶かす。

目撃したら悪・即・滅がお約束。

 

 

「……お嬢様。お目当てって、コイツらですか?」

「そんな訳ないでしょう。国民の義務として駆除してるだけです。ついでに心当たりのある研究機関の仕業かもしれないので、後でお父様に通報し(チクり)ますわ。監査が楽しみです。」

「流石、お嬢。」

 

 

とは言え、見た目、感触こそ似てそう(?)だが、コイツジャナイ。

報告にあったエリアは拓けた森林なのだが、非常に見晴らしが良い。

時折人の往来はあるし、こんな所に出るのだろうか?

 

 

「こんな場所で見ただなんて……確かに《確認した時は私も、そう》と判断しましたが……」

「お嬢?」

「いえ、他にも目撃個所はあるのです。次に行きましょう。」

「あ、はい……」

 

 

そして1つ、また1つと場所を変え、虱潰しに巡回していく3人。

 

しかし、何の発見どころか何の反応もない。

時折あったのは行方不明者が襲われたと思わしき痕跡のみ。

また、クストとムルにもゾンダーに対する反応はなく、ただ時間だけが過ぎていくだけだった。

そして野宿を繰り返して粘り、3日が過ぎたが、最後の場所も……

 

 

「……いませんわね。」

「うん。ここって偵察中の騎士達が行方不明になったところだよね?何も変わったところはないかな?ムルは何か発見した?」

「今までも小型の魔獣はいたけど、他のものは……まあ、騎士達が使ってたと思われる馬車の残骸がそこの隅にあったぐらいだけど。既にボロボロで崩れかけてたから、見るべきものはなかったかな。」

「そう……ご苦労様。」

「結局いなかったね、お嬢の言ってたゾンダーって奴。」

「特徴が円い赤い目をしていて、体は紫色の金属で出来た、大木の様な肌の身体……お嬢様、本当にいるのですか?」

「確かに目撃証言はあるのです。とはいえ何処にいるかまでは……」

 

 

流石に見当が付かない。

本当にいないのか?見間違いだったのか?

カルディナがそう思い詰めたその時──

 

 

───ぐぐぅぅぅ~~~

 

 

「……お嬢~、お腹空いた。ケーキないでしょうか?」

「クストぉ~……まあ、いいでしょう。休憩にしましょう。」

「あ、お茶も淹れましょうか?」

「そうね、お願いしますわ。」

 

 

クストの腹の虫で休憩となった。

 

 

「ちなみにケーキもお茶も、ストックはこれで終わりですわ。」

「……ちなみに最後は?」

「ケーキはタルト・タタン、お茶はセカンドフラッシュ、ですわ。」

 

 

──゚+.ヽ(≧▽≦)ノ.+゚キタキター

──キター(゚∀゚ 三 ゚∀゚)キター

 

 

「……疲労してるとは言え、随分な壊れっぷりですわね。」

「そんなことはありませんッ!!」

「直ぐにご用意させて頂きます。」

 

 

そしてタルト・タタン、ワンホールとセカンドフラッシュの入った缶をそれぞれに渡し、意気揚々と準備にかかる2人。

だが、悲劇はその直後に起きた。

 

 

「ふふふん♪これ、限定品の改良品かな?食べるの楽しみ───」

「───!!2人とも接敵!!」

「───グオオオォォォーーー!!!」

「ウソ!?退避……!!」

 

 

───グチャ!

 

 

「───!!!」

 

 

まずクストが切り分けていたケーキの半分が、突如茂みから現れたゴリラ型の魔獣の出現で、後ろに退避したのは良かったが、後に残されたケーキが魔獣に踏み潰された。

そして更に魔獣はもう1体いたようで、ムルに不意打ちで襲い掛かって来た時に、ムルは避けたが、手に持っていた紅茶の缶に攻撃が掠めてをきてしまう。

 

 

「あ、ああ……ケーキが……!」

「缶に傷が……貴様……!」

 

 

───死ネヤ、ゴラァァァァーーー!!!

 

 

※怒りのスーパーモード風味、ケミカルボルト風味、どちらでも可。

 

盛大にブチ切れる2人は、ランドスピナーを急発進。

その加速に姿すら消えたと錯覚する間もなく、2体の魔獣の顔面にランドスピナーが容赦なくめり込む!

更に倒れ込む魔獣の喉に慣性の勢いを込めた得物(ナイフ)を手に、突き刺す!

 

 

「「──まだまだァァァーーー!!!」」

 

 

止めは全力の『雷魔法』で得物(ナイフ)伝いに内部神経を焼き切り、血液を沸騰させ、ついでに全身も焼き切る!

魔力(マナ)は2人ともカルディナに及ばずとも、膨大な量を持っているため、放つ威力が半端ない。魔獣の炭化など数秒で成す。

 

しかし、ケーキとお茶が台無しにされ、怒りが頂点にとは、怒りの沸点が低すぎる。

そもそも原作でも天海護も甘味は大好物であるし、戒道幾巳もお茶を嗜むが、これらは両親の影響である。台無しにされ、ここまで激昂する描写はない。

 

やはり環境でしょうか、と思うカルディナは『強化魔法』で筋力強化して炭化した魔獣をランドスピナーを使って、ジャイアントスイングのように投げ飛ばす2人を呆れた様に眺めていた。

 

そして炭化した魔獣が馬車の残骸に向かって投げ飛ばされ、落ちて炭化した魔獣が木っ端微塵に砕けた───

 

 

──ゾンッ……ダァァァーーー!!!

 

 

そこから現れた()()()の手によって。

 

 

「「「───!!??」」」

「ゾン、ダァァァー!」

 

 

いきなりの本命(ゾンダー)の出現に呆気にとられるカルディナ。だがすぐに我に返り、クストとムルを見ると───

 

 

───キィィィン!!

 

 

「ああッ!?」

「今の感覚は……!?」

 

 

ほんの一瞬だが、クストの身体は緑に輝く。

そして見間違いはしない。

額に光輝く「G」の《あの》紋章が。

 

ルムもほんの一瞬、身体が紅く輝く。

そして額に輝く「J」の《あの》紋章が。

 

 

「……『浄解』。」

 

 

それは機界昇華(ゾンダー)の魔の手から生命を救う、(G)(J)の光に他ならなかった。

 

 

───だが、それを赦さないモノがいる。

 

 

「──ゾン……ダー!!」

 

 

声の限り叫ぶゾンダーは、忌まわしき天敵と認識したようで、2人を睨み付け、周囲のものを無造作に、そして融かすように取り込み、自身を巨大な機界人(ゾンダーロボ)と化す。

 

馬の頭部に馬車の駆体。

両腕は先程の魔獣の剛腕。

その両手には巨大化した馬車の車輪。

両脚は、馬を模した蹄付きの脚。

 

多少の誤差はあるものの、その姿はEI-02に酷似した姿をしている。

 

 

「ゾンダー!!」

「!?いけない、2人とも!!」

「「──!?」」

 

 

クストとムル、2人に狙いを定めたゾンダーロボは、両手の車輪を回転──超高速回転させ、強大な竜巻を発生させ、戸惑う2人に襲い掛かる。

咄嗟にカルディナが呼びかけるが、間に合わない!

 

──しかしッ!!

 

 

「──魔王(サタン)ッ、2人をッ!!」

『──任された、暗黒霊牙(ワーム・スマッシャー)!!』

 

 

唖然とする2人を黒い柱が吹き飛ばし、その直後、竜巻がその場を抉り、2人は助かった。

そしてゾンダーロボがこちらを向きそうになった時──

 

 

「──天使(ラファエル)ッ、支援攻撃!!」

『仰せのままに!神の齎す平定(ゴッド・フリート)、撃ぇエエェェーーー!!』

 

 

2対の閃光がゾンダーロボを撃ち、怯ます!

そしてカルディナは───

 

 

「───ガオーマシンッ!!!」

 

 

条件反射より早く、『収納空間』よりガオーマシンを発進させ、カルディナを中心にフォーメーションを組み、あの台詞を高らかに叫ぶッ!!

 

 

「───ファイナル・フューーージョンッッ!!!」

 

 

各ガオーマシンが、カルディナとファイナル・フュージョンを果たし、顕現する勇者王───

 

 

「ガオッ!!ガイ、ガァァァーーーッ!!!」

 

 

それは全長2メートルの勇者王(カルディナ)ガオガイガーが初めてゾンダーとの接敵した瞬間であり、全長15メートルのゾンダーロボとの戦いの始まりでもあった。

 

 

 

《NEXT》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《おまけ》

 

各ガオーマシンが、カルディナとファイナル・フュージョンを果たす。

そして顕現する勇者王───

 

──ゾンッ……ダァァァーーー!!!

 

 

……マジにやらかした誤編集。

 

単純な編集ミスとは言え、いざ実際に見たら大爆笑ものだったので残しておきます。

他意はないです。




……という訳で、遂に始まりました、ゾンダーロボ戦。
そしてクストとムルの覚醒。(ただし微覚醒)


どんな戦闘となるか、次話に続く!!



ちなみに、サタンとラファエルのセリフは笑わせる為ではないのですが、多分笑う人はいるはず。
CVはご想像のまま。というか、そのまま。
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