公爵令嬢は、ファイナル・フュージョンしたい。   作:和鷹聖

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6月1日で『公爵令嬢はファイナルフュージョンしたい』は1周年を迎えました。
本当はそれに合わせてガオガイガー登場!まで持って行きたかったのですが、まあそれはそれで。
今後とものんびり更新していきますので、よろしくお願いいたします。


Number.10 ~GとJ~ (3)

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

「僕たち……いや、僕達の()()は、流浪の民だったんだ。」

 

 

2人の事は、ムルからの説明で始まった。

 

ちなみに、ゾンダーの素体となった男は睡眠魔法で眠らせた上で、魔王(サタン)天使(ラファエル)が身元の確認をしている。

カルディナはガオーマシンが破損しているため、IDメイル姿にマントを纏い、テーブルを拡げて椅子に身体を預けてゆったりしているが、視線は真剣そのもの。

2人も用意された椅子に座り、話し出した。

 

 

……それは20年以上も前に起こった事。

故郷が疫病被害(パンデミック)に襲われた事から始まる。

疫病被害(パンデミック)自体は直ぐに発覚したが治める方法はなく、その被害を最小限にすべく、当時の一族の代表は罹患していない住人を一目散に故郷から出し、村を封印したのだ。

しかし未だに疫病は鎮まる気配はなく、封印も解かれる気配はない。

その間も故郷から出た生き残った一族は何も準備出来ずに村を出された挙句、不慣れな出先で頼れる者もいなく、一人、また一人と倒れていった。

その数人の生き残りの間に出来たのが、クストとムルであった。

そして今生き残っているのは、当時村を出た子供の僅かな生き残りが数人。だがその数人も村の場所を記憶する者はいなかった。

だが、その生き残りも村の位置を記憶する人物がいなくなり、帰郷は絶望的になってしまったという。

本来は、当時生き残った一族を引率してた人物もいたが、その人物も道中で亡くなった。

 

その引率者の人が最後に言ってた言葉が『GストーンとJジュエルの元に……目指、せ……』

 

 

当時、その事は誰にも解らなかったという。

それから月日が経ち、13歳になったクストとムルは生き残りの人物から、辛うじて記憶されていた引率者からの情報を手掛かりに旅に出た。

 

しかし旅は上手く行く訳もなく、具体的なアテもなく、すぐ行き倒れ。

そのところを鉄華団に拾われ、その直後起きたカルディナのイザコザで、クストもルムもアースガルズ領に来てしまった。

またアースガルズ領にて、GストーンとJジュエルの噂を耳にしたところから、2人は動き出したというが、その噂の大元がカルディナというから警戒度が上がる。

 

例えGストーンとJジュエルを見つけたとしても、このままでは奪われてしまうのでは!?と思うまでには。

 

……ちなみに当時、カルディナもダメ元で探していたGストーンとJジュエル、その噂は悪い虫が湧いて出るのを承知で、僅かに噂を流したものだった。

しかし当然ながら結果は空振り、Gストーンどころかどの商人もロクな魔石、触媒結晶を持って来なかったのをカルディナは覚えている。

 

そして結果的には、カルディナの計らいで生活困難に陥っていた一族を呼び寄せる事が出来、一応の安住の地を得たため、何とも言い難い心境のまま月日が経ってしまった。

 

──しかし、今日という日を迎えた瞬間、彼らにとってもカルディナにとっても状況が一変したのは言うまでもない。

 

 

「……以上が、僕達の経緯です。」

「……心外ですわ。」

 

 

ルムからの説明を一通り聞いたカルディナは、思った以上の捻れ加減の彼らの事情に、頭を押さえた。

 

 

「当初の貴殿方が私を警戒してた理由であろう、GストーンとJジュエルの奪取は、流石にありませんわ。私のやり口は知っていますでしょう?」

「……あ。」

「はい……」

 

 

言われてみればそうだと、2人は思い出す。

カルディナは相手が何者であれ見くびらず、そして害が無い限りは陥れる事もせず、益になる事には積極的に手を貸す。

現にクストの甘味好き、ムルのお茶の拘りを見抜いて、試験団の仕事も割り当てている。

そう思うと、少し申し訳なく思う。

 

 

「……まあ、仮にGストーンとJジュエルがあったとしても私は真っ先に貴殿方を呼んで渡しますわよ?まあ、()()()頂いて徹底的に解析して、新たなGストーン、Jジュエルを創る方向ではいますが……」

「そ、そうなの……??」

「そもそも現存するなら、それはオリジナル。『浄解』の力を高めるのですから、貴殿方が使う事こそ有益なのです、」

「……そういう物なんだ。」

「ええ。それにあれは()()()、創れない道理はありませんわ。頭を下げてでも貸して頂くには価値が有り過ぎます。そして対・ゾンダー戦において無くてはならないものです。」

 

 

力説するカルディナに圧倒される2人……

というか、2人が知らない事柄ばかりで、一族の宝みたいなものじゃないのか!?と困惑するが、カルディナ話は止まらない。

ちなみにGストーンは、GGGでGストーンの複製は行えており、主に勇者ロボ達の動力源であるGSライドとして活用されている。

 

 

「……今考えれば、巷にGストーンもJジュエルもある訳が無かったでしょうね。おそらくは貴殿方の故郷にこそあるのでしょう。」

「僕達の、故郷に……?」

「でもどうしてそう言えるんです?」

「引率者の存在ですわ。」

 

 

先程ムルが言っていた引率者が生きていれば、()()していただろう、GストーンないしはJジュエルを。

特にGストーンには互いにリンクする性質がある。

しかし話によると、その引率者はGストーンに類似するものは持っていなかったらしいが、感知出来るなら話は別だ。

その引率者は浄解、もしくはGパワーを感知出来るという事になる。

であれば『目指せ』等とは言わない。

 

……いつかはその引率者を中心に、Gストーン(道標)を目指して帰る予定だったのだろう。

 

 

「じゃあ、僕達はもう帰れないのか……」

「──それはないでしょう。」

「「 へ?? 」」

「少なくとも、故郷の場所のヒントは貴殿方の会話の中にありましたわ。」

「ウソ!?どこに!?」

「ケーキとお茶、です。」

「ケーキと……?」

「お茶……って、まさか!」

 

 

ルムは察したようだ。

それはカルディナが以前気まぐれで作った、ケーキとお茶の()()である。

だが、それで解るものか?とも言えるが……

だが、2つとも特徴的な品ですからね、昔から嗜まれている地域は、ある程度絞れるのだ。

そしてそれが重なるところは、実は意外と少ない。

 

 

「なのでもう少し絞り込めば判るかもしれません。あと、引率者もいますわ。」

「引率者……誰です!?」

「きっと貴方になるでしょうね、クスト。」

「……え???僕???」

 

 

突然のご指名に驚くクスト。

しかし、浄解の力に目覚めたクストなら、おそらくGストーンの反応を辿れるだろう、カルディナはそう推測している。

 

 

「……僕が、故郷を。」

「少なくとも、やる価値はありそうかな……でもお嬢様、何で推測も含めてそんな事を知っているのです??僕らどころか一族も知らない事を……」

「……」

 

 

その疑念は最もだ。

恐ろしいまでに2人の長年の疑念を解きほぐすカルディナの言葉は甘く、そして推測であっても的を射ている。

クストもムルもその得体の知れ無さに、困惑する。

そんな2人の様子を見てカルディナは少し間を置いた後、一言尋ねる。

 

 

「……かなり荒唐無稽な話に聞こえるけど、いいかしら?」

「う、うん……」

「は、はい……」

 

 

そして『収納空間』から全ガオーマシンとタブレット端末を取り出した。

 

そして語り出す。

 

自身の持つ知識、纏う(ガオーマシン)が『勇者王ガオガイガー』という作品、そしてその作品にまつわる知識から来ている事を。

初めはそんな物があるのかと、驚く2人だったが話を聞く内に、特に(ラティオ)戒道(アルマ)の事を知ると、その受け取り方が変わった。

そして当初『作品(空想)』であろうものが、実は事象の軌跡を記した記録(脚色はあるが)であり、どこかで現実に起こり得た事ではないか。

そしてそれを裏付けるように現実になったゾンダーの出現と、2人の『浄解』の力の覚醒。

 

ただ、『浄解』自体は誰もが持っている力だという事をカルディナは言い足す。

 

 

「……だから容姿が似ている貴殿方に、()()()()目覚めた、とも言えます。何にせよその力は本物です。」

「そんな訳が……あるんだね。」

「実際クストは使えた訳だし、僕もその可能性は……」

「ええ。そうでなければ私もこんな事は言いませんわ。」

 

 

あまりにも飛躍過ぎる推測と結論に、カルディナ自身も内心ヒヤヒヤ、そして頭が痛い。

まだ詰めたい事実があるが、そう言えるのは概ね確定してしまったからだ。

 

『勇者王ガオガイガー』の事象は現実(まこと)である。

そしてゾンダーの存在も……

 

だがゾンダーの動きから違うのだ。

まだ確認したい事は、山ほどある。

 

だが、1つ確認したい事がカルディナにはあった。

 

 

「貴殿方の、一族の今後の目的は何です??」

「一族の、目的……」

「それは……」

 

 

カルディナから出た問いに戸惑う2人だが、半ば見透かされ、そして恩ある人にこれ以上の隠し事は無意味と悟った2人は、互いに見つめ、頷くと声を揃えて言い放った。

 

 

──それは、一族が故郷に帰る事。

 

 

「確かに今の生活もいいです、お嬢には感謝してます、けど……!!」

「目的は変わらない……一族も、僕達も故郷に帰る事へは変わらないです。」

「……そう。なら、それを私に手伝わせて下さいません?」

「お嬢も……??」

「ええ。貴殿方は故郷に帰りたいけど帰る術がない。私はGストーンとJジュエルを解析したいけどその在処が解らない……であれば、両者が協力し合えば問題は解決しましょう?」

 

とても魅力的な提案である。

しかしムルには1つ懸念があった。

 

 

「けれど、もし故郷が未だに疫病被害を受けていたら、どうしようもないので……」

「ああ、ムル。そちらについても私に打開策があります。」

「本当ですか?!」

「ええ、確証と実績はちゃんとあるので信用して下さい……とは言え、疫病の事は出来ればもっと早く知り得れば良かったですが……」

「「……」」

「……ごめんなさい。2人を責めている訳じゃないのです。ですが……」

 

 

警戒されていた以上はそれを解くまではどうしようもなかった。

そして先に知り得たといって、故郷の場所が解らない以上、クストとムルが力に目覚めていない以上は、どうしようもない話である。

 

だが理解し得た、解った以上、状況がこれ以上悪化しないためにも……

 

 

「──2人共、力を貸して下さい。これ以上手遅れになる前に……」

 

 

カルディナは椅子から立ち上がり、手を差し出して2人を真摯な眼差しで見る。

それは要請ではなく、対等な協力を請うもの……

 

───いや違う。

 

このお嬢様(カルディナ)はいつもそうだ。

貴族でありながら、誰に対しても真正面から関わってくる。

口では悪ぶっている素振りはあるものの、自分達の為に懸命に心を割いている。

だからこそ……

 

 

「……ううん、それは僕達が言う事です。」

「カルディナお嬢様。僕達に故郷を探し、救う

力を貸して下さい。」

「ええ、もちろんですわ。」

 

 

幾重にも恩を貰った。

なら自分達も返すのが道理であり、そしてこれから起きる事に臨む為にも……

クストもムルも、その差し伸べられた手を握り返した。

 

こうして、カルディナは真に2人の信頼を得る事が出来、彼らの故郷を探す約束をしたのだった。

 

 

 

 

………が、その数分後。

 

何故かカルディナは2人の頭にアイアン・クロウを炸裂させていたという。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

あれから1日かけて帰還したカルディナ達の行動は早かった。

 

まず、ゾンダー化した男の照会。

カルディナの予想通り報告にも挙がっていた、数日前に行方不明になっていた騎士団の1人だという。

そして逆行催眠を施すと、()()()()()()()の御者でもあったその男は、原作(アニメ)の通り、元凶者たるゾンダリアンに会ったという。

その映像の中にあった姿は『鳥人間』、『小舟の怪物』、『赤黒い魔女』、『甲冑を纏った貴族』である。

 

……細かな違いはあれども、間違いなく『機界四天王』である。

 

どうやら、既に敵は動いていたのだった。

 

 

次に建造中のガオーマシンの確認。

基礎の骨組みは終わり、外装と内部の配線が建造中で、大方予定通りである。

ただしというか、やはりというか、設計図があれどもカルディナがいないと安心と進みが違うとボヤかれたのはご愛敬だ。

そこは陳謝しつつ、小型ガオーマシンの修理を依頼すると同時に、職人達に戦闘状況を映した(カルディナ目線の)映像を見せた。

 

その映像に一同驚愕し、言葉が出なかったのは言う間でもない。

 

 

「……でも、やるしかないわね。」

 

 

だがイザリアの一言で、職人達は吹っ切れた。

ここまで来ると、カルディナと自分達を信じて突っ切るしかない、そして最悪の事態を打破出来る存在の1つが自分達である、そう覚悟したように見えた。

そして小型ガオーマシンの損傷具合を確認しながら、建造は昼夜問わず続いた。

 

 

また、『影』にも指令を出した。

今までゾンダーが確認された地で、遺された無機物の残骸がないかを。

今回ゾンダーを発見した切っ掛けは、クストとムルが馬車の残骸に偶然だが攻撃した為だ。

ならば、他にもそんな物があるのでは?と考えた。

 

───そして見事的中。

 

再確認しただけでも、似たようなもの(オブジェ)がざっと300を超える。

確認されてから500年の年月の経過は、伊達ではなかったようだ。

その報告に、カルディナが魔力(マナ)切れのような倒れ方をしたと云うが、間違いではないだろう。

しかし、何もしなければゾンダーロボどころか、変化する事も動く事もなかったという。

一例として、オブジェらしきモノを盗ろうとした山賊や冒険者、傭兵等の一団はその場で根こそぎゾンダーに『喰われた』という。

後に残ったのは、元のオブジェだけの風景のみ……

どうやら此方から手出ししなければ、今のところは害はない筈、との報告だ。

 

──何も大丈夫ではなかった(害しかないわ、ボケぇ!!)

 

即刻監視が必要になったのは言う間でもない。

また、その報告をした『影』がシバかれたのは当然だろう。

 

 

だが、希望もあった。

クストとムルである。

帰還後、翌日2人に早速『勇者王ガオガイガー』の鑑賞を命じた。

ちなみに、魔術式投映機(プロジェクター)と、魔術式情報集積体『在りし記憶の板札(メモリアル・カード)』は、王国に送った()()()の他、()()()()()()の3セットが存在し、2人にお菓子とお茶を相当数持たせ、視聴覚室に在中させ(閉じ込め)た。

 

とりあえず30話、機界四天王編まで見せれば現状把握までは出来る筈なので、2日かけて視聴した。

 

初めは世界観、文化の違いから違和感があったが、それに慣れるとゾンダーや自分達の役割について考えながら見ていた。

ただ視聴する前に、カルディナから「あちらはあちら、こちらはこちら。混同はしないように。」と忠告を受けている為か、さほど混乱はなかった。

ただ、クストが「僕もこんな風に活躍を……」と目をキラキラさせていた反面、ムルは「(戒道)がちょっとしか出てない……」と寂しがっていた。

 

しかし慣れるの早くない?

そんな常識的感覚は終始破壊者(カルディナ)に壊されているので、問題はなかった。

でなければ鉄鋼桜華試験団は勤まらない。

途中、鉄華団の一部のメンバーが来て一緒に視聴していたようだが、事前に事態を把握していた事もあり、こちらはこちらでショックを受けていた。

 

そして見終わった後、2人は無言のまま瞑想を始めた。

クストはGストーンの察知。

ムルはゾンダーの察知。

 

クストはゾンダーの反応の影響で未だにGストーンを捉えていないが、ムルは『影』が報告したゾンダー数を更に50を上乗せした数を報告。

 

 

「……微少の反応が殆どだから、もしかしたらまだいるかも。」

 

 

……引き続き、察知をお願いした。

 

 

「……で、結局彼らは何者なのですか?」

「予想通りであれば『三重連太陽系』の生き残り、その末裔……ですわね。」

 

 

───三重連太陽系

 

 

 

ガオガイガーのストーリーにて根幹となる太陽系で、全てはそこから始まったと言っても過言ではない。

 

(ラティオ)の故郷である緑の星、戒道(アルマ)やソルダートJの故郷である赤の星、ゾンダー発祥の地である紫の星を含む11の星々が点在する宇宙星系。

3つの太陽を有する様にも見えるが、実際は太陽の周りを2つの燃える惑星(恒星)が存在する。

この恩恵により優れた科学文明が繁栄し、平和を謳歌していた。

生態系に至っては哺乳類、鳥類他、地球と同じような生物が存在する。

人類は内部組成を含め地球人と大差無いが、光の翼で飛翔する等、超能力を扱える者もいた。赤と緑の星にはそれぞれ指導者が擁立されている。

 

作中では生き残り等語られた内容は(ラティオ)戒道(アルマ)、それとソルダートNo.J-002、トモロ0117がいるが、それ以外となると『いない』と考えていた。

(例外としてnumber43.5「超弩級戦艦ジェイアーク 光と闇の翼」(「FINAL the COMIC」に収録)に登場した、ソルダートNo.J-019がいるが彼は半ばゾンダー化している)

 

ソール11遊星主?あれはノーカウント。

 

だが『三重連太陽系』の住人の存在は確かにこの星にいる。

その推測として、生き残りが『赤い流れ星』に乗ってこの地にやって来た事が挙げられる。

 

 

(……まさか、100年前の『赤い流れ星』はジェイアーク級の超弩級戦艦が堕ちて来た、とか言いませんわよね……??)

 

 

あの()()の中、生き延びた人物がいたのだろう、でなければこんな()にはいない。

赤い流れ星もジェネレイティング・アーマー全開で堕ちて来たとか……

時系列もギャレオリア彗星(次元ゲート)やESウインドウがあるのだ。

勇者ロボの1体、超竜神が原種のESウインドウで一万年以上も前に跳ばされたエピソードもある。

であれば、ESゲート使用時に異常が起きて、こちらに跳ばされた、とも考察出来る。

非常に頼もしい推察であるが、そうなると『原種』の存在も確定になるだろうか?

いや、ムル(アルマ)がいるのだ、ソルダート師団だって存在しただろう。

言い逃れは出来ない。

そうなると、いるであろうゾンダリアンの中には、ソルダート師団の1人が……

 

 

(……いえ、止しましょう。そこはまだ確定事項ではないのですから。)

 

 

カルディナは頭を振った。

そんなカルディナを見て、フミタンはある疑問をぶつける。

 

 

「……そういえば、2人にアイアン・クロウを仕掛けたとか??」

 

 

フミタンに言われてドキリと。

 

 

「……その事、ですか。あれは結果的にそうなっただけで、意図してした訳ではありませんわよ?」

「意図して……?まさか、お嬢様『あれ』をしたのですか??」

「ええ。」

「……悪魔の所業ですね。」

「人聞きの悪い事を……ただ、読み取っただけですわ……生まれてからの。」

「それを悪魔と言わず、何という。」

「だまらっしゃい。」

 

 

フミタンは知っている、カルディナが何をしたか。

それは2人の()()()()()()()()()()視覚情報、音声情報を全て読み取ったのだ。

 

……それはカルディナの特技の中でも一際エグい所業『電界情報(メモリー)全読み取り(フルリーダー)』。

有機物、無機物問わず、電界情報(電気信号)を持つ存在の情報を接触する対象より読み取る特技である。

要は電気信号で構成される情報を全て、脳内情報すら全てカルディナの中に卸す(ダウンロードする)のだ。

 

ちなみに卸した情報は全て『脳内書庫(B・ライブラリー)』に保管、映像・音声に変換出来る。

記録限界容量?そんなものはありません。

 

 

……さて、ここまで言えばお判り頂けるだろう、そのエグい理由が。

情報のマウントポジション。

強制的に聞く事が出来る理由がここにあり、カルディナがこの歳であらゆる分野に秀でている理由がここにある。

 

尚、この事を知っているのは、フミタンと『影』のごく一部、両親、そして祖母(キトリー)だけである。

 

ちなみに何故そのような事に発展したかというと……

 

 

「──そういえばまだ貴殿方の名前(フルネーム)、聞いて無いですわね。」

 

 

協力体制を構築出来た後、ふと思い出して尋ねるカルディナ。

その問いムルは少し気不味そうに答える。

 

 

「ああ……下手に聞かれたらトラブルがありそうで……それで名前(フルネーム)は言わなかったんです。」

「……そうなのですの?」

「うん。でもお嬢ならいいかな?」

 

 

クストは賛成なようで、ムルは申し訳ないといった様子である。

そして語られた2人の名前は以下の通り。

 

 

 

──クストース・マーレ・カエルム

 

──ムルタエノス・ヴィアム・レクティオ

 

 

何とも貴族的な名前……というか、2人とも貴族(ミドルネーム付き)である。

事情持ちだったのがこのような理由とは、少々驚くカルディナだったが、それとは別に何故か2人の名前に違和感をしま……

 

 

────( Д )!?

 

 

──そして気付いてしまった、その違和感に。

 

 

「……あの、お嬢?掴んでる頭が痛いんだけど。というか頭!?」

「何か、すごいミシミシ言ってるんですが……」

「……ごめんなさい、ですがもう少しで()()()()()から、その名前の真偽が。ついでに2人の電気信号(バイオパターン)を解析、『浄解』のプロセスを解読……!」

「ちょ……ちょっと!?本当に何やってるの!?」

「痛!?イタタタタ……!ん?でもイタ気持ち良くなってきた……?」

「何だ、この地味なマッサージ効果は……」

 

 

 

最後には2人の『マッサージで気持ち良くなった的』な悲鳴が……

そして事後、ちゃんと謝りました。

だが、カルディナが驚いて真偽を確かめたかったのも無理ない。

なぜならラテン語で……

 

 

クストース()マーレ()カエルム()

 

ムルタエノス(幾巳)ヴィアム()レクティオ()

 

 

である。

だが、2人が転生者ではない事はこの時確認して判った事で、ちゃんと今の両親の子供であり、直接の関連性がなかった。

とはいえ、出来過ぎ感は否めない。

事情を理解したフミタンは頭を抑える。

 

 

「……可哀そうに。特にクストさんは初恋の相手を知られたショックが大きそうですね。」

「確かに、申し訳ない事をしてしまいましたが……何で貴女がその事を知っているの?話して無い筈ですが。」

 

 

フミタンは顔を背けた。

 

ちなみに初恋の相手はパン屋の女の子。

何の因果か、あの華ちゃん似である。

 

 

閑話休題(それはさておき)

 

 

「……まあ、やる事は山積みですわ。早急に手を打つ事ばかりですが、今は一つ一つ解決していきますわ。」

「そうですね、誠に厄介極まりないですが……」

 

 

───コンコン

 

 

「ヴォルフです。お嬢様、宜しいでしょうか?」

「ヴォルフ??ええ、どうぞ。」

「失礼致します。」

 

 

ノックの後、ドアを開けて現れたのは執事のヴォルフ。

 

 

「どうしました?」

「お嬢様、クリストファー様がお呼びです。」

「……お父様が??え、帰って来てらしたのですか??」

「はい、先程。今は自室に居られます。来れるなら来てほしいそうですが、如何致しますか?」

 

 

驚くカルディナ。

というのも、もう少し王都に滞在していると予想していた。

もしかしたら、負傷した事について小言を言われるのでは?

ただ、非常に心配性な父親である、その気持ちは無下に出来ない。

とりあえず用意出来次第向かう事をヴォルフに言伝てたカルディナは、目の前の急ぎの書類を片付けるのだった。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「───お父様、カルディナです。入って宜しいでしょうか?」

「……ああ、入れ。」

 

 

カルディナとフミタンが扉を開けると、部屋の奥にはソファーに鎮座する父親、クリストファーがいて、その目の前にカルディナお手製の本(ガオガイガー・コンプリートブック)

クリストファーはカルディナに座るよう促したが、その後から目を瞑って腕を組んだまま、動かない。

それは何か思い悩んでいるようで……

 

 

「───いや、止めよう。カルディナが相手では、下手に父親面しても駄目だな。うむ、そうしよう。」

「???」

 

 

終には何か自己解決したような、悟ったような独り言までした。

そして仕切り直ししたように、改めてカルディナと向き合った。

 

 

「まずはあの動く絵……映像(アニメーション)といったな。ガオガイガーという作品を私と陛下(レクス)元将軍(ティ・ガーさん)とで見た。」

「は、はぁ……」

「驚天動地……とでも言えばいいのか?魔法がない世界なのは納得出来たが、それ以外の事象が驚く事ばかりだった。」

 

 

当然と言えば当然だろう。

所謂、異世界ギャップ。

技術格差や風習、文化、生活レベルの違いに驚いたという。

だが、その反応自体はテンプレート的なものでクリストファーのその話は半ば聞き流すカルディナ。

 

 

「……とまあ、レクスは嬉々と目を光らせ、ティ・ガーさんは武器や戦術に興味津々だった。そしてカルディナの、この本のお陰で曲解する事もなく理解出来た。」

「それは何よりです。」

「しかしな……」

「何か、問題でも……?」

 

 

言い含ませたクリストファーは、カルディナお手製の本(ガオガイガー・コンプリートブック)を開いた。

そこは登場人物のページであり、クリストファーはとある人物をカルディナに見せながら尋ねた。

 

 

「───カルディナ、『カイン』という人物を知っているか?」

「カイン……ですか??はい、もちろん存じています。」

 

 

───『カイン』

 

もちろん三重連太陽系の『緑の星の指導者、カイン』の事を指しているのだろう。

だが何故その話を振るのか……

疑問に思うカルディナを他所に、クリストファーはカルディナに向け、手を差し出す。

 

 

「実際に解った方が早かろう……カルディナ『視てみろ』、()()()()()。」

「22年前……??」

 

 

訳も解らずカルディナはクリストファーの手を握る。

そして『電界情報(メモリー)全読み取り(フルリーダー)』を発動。

 

ちなみにカルディナもそうだが、クリストファーに限らずアースガルズ家の直系は能力の強弱はあれこそ、この『電界情報(メモリー)全読み取り(フルリーダー)』は使える。

アースガルズ家の秘匿事項の1つである。

ただ、同じ能力者同士では任意で読み取りを阻害する事が出来るし、大概は僅かに喜怒哀楽を察知出来る程度。

そうなると、『|電界情報・|一部読み取り』になる。

……カルディナが異常なだけである。

 

読み取り中、そういえば父親に()()するのは二度目だな、と思いつつ、指定された年数の記憶を読み取───

 

 

「────!?!?、!??」

 

 

 

───った瞬間、カルディナは驚愕の上、酷く動揺した。

その動揺っぷりは、今まで信じてたものが根本から揺らぐような、そんな感情を持たせる程であった。

その様子を見たクリストファーは、『やはりか……』という表情でいた。

 

 

「私達もあれ(ガオガイガー)を見なければ、ただの良き思い出だと思っていたが……やはり只の御仁ではなかったか。」

「で、ですがお父様、()()()()は……」

「──解らん、だが見た中身は事実だ。それはお前がよく判っているだろう?」

「……はい。」

 

 

──事実。

 

どんなに本人が忘れようとも、脳内の情報は必ず記録される。

そして映し出された事実となる。

その現実がカルディナに突き刺さる。

何故なら、カルディナがクリストファーの記憶の中で見たのは、村人であろう人々に慕われる中、白いケーキを振る舞い、優しく微笑む中年の男がいた。

 

 

(そんな馬鹿な……でも見間違う訳がありません、だってこの方は───)

 

 

 

───緑の星の指導者、カイン

 

 

 

そしてもう1人、気になる人物がいた。

それは衣装こそ白いローブであるが、安楽椅子の上でお茶を嗜む小柄で赤紫の髪、鋭い目付きの少女には見覚えがあった。

 

 

(この容姿は『パルス・アベル』??いえ、違う。であれば……もしかすると───)

 

 

───赤の星の指導者、アベル

 

 

 

……そう思えてならない。

 

 

 

「……いったい、どういう事ですの??」

 

 

動揺するカルディナ。

『ガオガイガー』における重要なファクター有する重要人物、それも2人がどうして存在しているのか?

死んでいなかったのか?

 

カルディナとはいえ、その理解を超えてしまった。

 

そしてこの直後、クストによるGストーン感知が成功したと一報が入り、事態は新たなを迎える事となった。

 

 

 

《NEXT》

 

 

 

 

 


 

 

 

《次回予告》

 

 

 

君達に、最新情報を公開しよう。

 

 

遂に姿を現したゾンダーを退けたカルディナ。

 

そして浄解の力を発現させたクストとムル。

 

更には父、クリストファーより明かされた、カインとアベルの存在。

 

今まで在る筈のなかった『ガオガイガー』のファクターが現れた事に困惑するカルディナだが、彼女の思惑とは関係無く、事態は新たな展開を迎える。

 

目指すはGストーンの指し示す在処。

 

いったい何が待ち構えているのか?

 

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『公爵令嬢は、ファイルフュージョンしたい』

 

Number.11『星の彼方より来たりし者達』

 

 

 

この物語に、ファイナルフュージョン、承認!

 

 

 

これが勝利の鍵だ!

 

『カイン&アベル』

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

《おまけ》

 

 

 

電界情報(メモリー)全読み取り(フルリーダー)』。

万能の能力であるが、弱点もある。

同じような能力を持つ相手にはすぐにバレてしまうのだ。

また、ダイレクトに読み取るので、受け入れられるかは別。

 

 

父親(クリストファー)の場合

 

「……カルディナ、いくら子供とはいえ、親の(なか)までは覗いてはいけないよ?」

 

……幼い頃、笑顔で拒否られた。(顔は笑ってない)

 

 

祖母(キトリー)の場合

 

───キィァァァアアアアァァァァァーーー!!!

───■◇▽&§▲、※&※&§&??!!!

───、────、───、─、─

 

…………。

 

 

……凄惨過ぎて理解したくない内容。

……もしくは寝ているので、何も見えない。

……思索の内容は公開不可。

 

 

魔王(サタン)の場合

 

「───カルディナ、貴様視ているな!?」

 

……○安ボイスで○ioられたので、軽いトラウマ。魔王(サタン)は後でしこたま謝った。




今回の話で、カインとアベルの登場フラグとなりました。
個人的にはこの2人を登場させると決めた時、ある種の爆弾を投下する気分でした。
2人の同時生存って、どんな状況よ!?
アニメでは重要なポジションでありながら、あまり登場シーンのない役回りの2人ですが、ここでは独自展開する予定です。

何かやらかすつもりか、と?

………(ニヤリ+)

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