ネットを見てるとガオガイガーに対する熱が高まる傾向が強く、非常にうれしいです。
ついでにこの熱で、台風と大雨と、コロナとか吹き飛ばしてくれるともっとありがたいですが……
~前回までのあらすじ~
・カインとアベルがこの星にいた!?
・急いで行ったら、ジェイダーが急襲!!
・仕方がないのでガイガーで応戦
・そうしたら反中間子砲!!←イマココ
《───近接攻撃しか武装がないのは知っています。喰らいなさいっ!『反中間子砲』っ!!!》
《───なッ!?》
不意打ちの反中間子砲により、
その瞬間、辺りは爆煙に包まれたのだった……
────が。
爆煙より吹き飛ばされ、負傷したのはジェイダーの方だった。
《……ば、馬鹿な。どうして私が、私の方が
両肩の翡翠色のフレームがそれぞれ負傷している事実に、地に膝を付くジェイダーは、起こった所業の理解に苦しむ。
更に、ジェイダーの腹部──キングジェイダーのマスクになるフレームには3筋の浅い傷が刻まれていた。
《───如何です?ご自身の御業を受けたご感想は。》
《自分の……攻撃!?》
ジェイダーの前に悠然と立つ、胸に獅子を携える白き巨人───ガイガーに、ジェイダーのパイロットはまさかの事実に驚愕の声を上げた。
カルディナの取った戦法はこうだ。
ジェイダーへ突撃するのと同時に、発射された2問の反中間子砲。それに対しカルディナは
そしてその先にはジェイダーが───
最後にバランスを崩したジェイダーの腹部に一当てし、投げ飛ばした。
これが一連の経緯である。
《そんな……初見で
《申し訳御座いません。ですがジェイダーに関して初見ですが、既に対策済みでしたので取らせて頂きました……対・ジェイダー戦法を。》
《た……対・ジェイダー戦法!?》
ジェイダーのパイロットが驚くのも無理はないが、カルディナは幼い頃から見ている『勇者王ガオガイガー』の勇者ロボ、他勢力のロボ、他全てに対して『ガイガーやガオガイガーに乗れたら、どう戦いましょう??』と
それは年月を重ねる毎に、自身の能力を加味しながらだ。
その中にはジェイダーも含まれている。
これはその1つの成果。
筋金入りのオタクの妄想を嘗めるなかれ……
ちなみに、本来ジェイダーは単独では反中間子砲を使えない設定のようだが、カルディナは反中間子砲も使う状況も想定している。
現に使った人物が目の前にいるので、ノーコメント。
なお、未だに
集団戦ならいざ知らず、一対一は厳しい。
《そんな……反中間子砲を使うのは
《見るからに「撃つぞー!」みたいな位置ですのに、警戒しない訳がありませんわ。むしろプラズマソードで斬られた方がまだ危なかったです。まあ……
───ピク
《……どうしてその事を??》
《ジェイダーにしろ、キングジェイダーにしろ、動力源は『Jジュエル』を使用した、ジュエルジェネレイター。その力を引き出すパイロットも『Jジュエル』を持つ強靭な
《────!?》
ジェイダーのパイロット───アルマは驚いた。
まさか、自分の正体を言い当てられるとは思いもしなかった。
そして今のコンディションの事も……
《ただ、貴女に当てられたナンバーは解りませんが、お父様の記憶の通りなら……失礼ですが貴女はオリジナル・アルマ以前の存在『プロトタイプ・アルマ』、ですか?そう言う呼び名はどうも好きではないのですが……》
《……そこまで解っているなんて。》
そこまでの予想が出来たのは、
アベルとアルマでは本来髪の毛色が違う。
だが記憶にいた女性は『アルマ』と呼ばれており、髪の色・質感がアベルと同じなのだ。そして他のアルマにもそれは当てはまる。
ただしオリジナルのアルマは戒道幾巳であるため、考えられる可能性として『プロトタイプ(オリジナルに至るまでの存在)』が出てくる。
ただ、パイロットがソルダートJの誰かである事も考えたが……申し訳ないが動きが稚拙過ぎるのでその可能性は除外した。
ガイガーが負けていたのは機体の出力・武装だけである。(ふんす)
……であれば、目の前のジェイダーを操縦する人物は『プロトタイプ・アルマ』となる。
《……と、稚拙な推測ですが。》
《そう言う割には随分ズバズバ言い当てますが、貴女こそ何者ですか?それに『お父様の記憶』と言いましたね?誰の事です?》
ようやく話に食い付いた。
そう確信したカルディナ───ガイガーは安堵し、笑う事が出来た。
そしてジェイダーの前で片膝を付き、あえて跪く。
《申し遅れました。
《アースガルズ……??盟やく……あ。》
──いつか、お困りの時は参上致します!!
──そうですね、いつか私達が困った時は……
不意に思い出されたのは、20年以上も前に交わされた、他愛もない子供との約束。
《あの、時の……?》
《はい。あと
言われるがまま、アルマは
そこには成長し、そして老いも見られるが、かつてカインによって集落に連れて来られた2人の少年と1人の若者が、あの時と変わらない眼差しで立っていたのを理解した。
《それじゃ彼等は、貴方方は私達を……!》
《救援に伺いました。永らくお待たせして申し訳御座いません。》
その言葉に、アルマの瞳から一筋の雫が……
──どれ程待ち望んでいただろう。
──どれだけ待っただろう。
──この永遠にも続きそうな暗い日々の終わりを。
塗り潰された絶望が、希望に変わりつつある瞬間を────
《……とりあえず、私達が敵でない事はご理解頂けましたか?》
《はい……》
──だが。
喜ばしいが、何も解決していない現状では喜ぶ事は出来ない。
アルマは喜びたい感情を自制してこらえた。
《……非常に有り難い事ですが、私でもこの20年あまり、この瘴気の除去に挑みましたが、原因の物体の除去が遅々として進まず、どうしても困難な次第です。》
《……成る程。ならば来た甲斐がありますわ。多少は力になれるかと……『
《───はい、ここに。》
カルディナの呼び掛けに応じて、ガイガーの目の前に顕現した
その光景にアルマは驚いてしまう。
《解析結果は?》
《酷い状況でしたが、汚染物質に関して私達の力で除去する事に問題ありません。ですが原因となった存在が厄介です、そちらは直接行使が必要、という結論に至りました。》
《原因となった存在……?》
《
《──ただの一般種!?》
『
また、飲み込んだ物質には
結果、毒が毒を生むという最悪の悪循環が生まれた。
ただ、この物質Xに触れた
また、発生源がその倉庫の他、拡散した箇所数点があるが、それ以外は毒素が空気より重いため、広まっていないのが現状のようだ。
ただの一般種の
だが一番酷いのが……
《沈殿して地表に広がっている毒素に、うっすらとですが可燃性物質が含まれていました。》
《───はい!?そんなモノまで!?》
《それは……間違いないです。下手に手を下すとそれが爆発するので、今まで手を出せず……》
アルマも同意する。
しかも過去に一度、風で吹き飛ばそうとしたが、以上に重い気体であり、無理して飛ばそうとすると、かなり威力のある爆発を起こした。
以来、手をつけるのは断念したそうだ。
ちなみに、生成された可燃性物質はメーザーミサイルの中身だそうだ。
それも現状の量でも、集落は軽く
その事実に耳を疑うカルディナ。
《……アルマさん、ちなみにその取り込まれた物質とは??》
《……貴女には不思議と言えば解るようですので言いますが……光子エネルギー変換翼の予備素材です。》
《 《───!?》 》
何ともヤバい物質が取り込まれている。
きっと永い年月の間、僅かに差した光で可燃性物質が生成され、それが積層したのだろうか?
ついでにそれすら取り込み、分解しきれない余剰分で毒素も生成されたのだろうか?
ちなみに光子エネルギー変換翼とは、ジェイアーク全ての装甲、内部、武装(ミサイル含む)を太陽の光さえあれば修復、再生、補充が出来る、ジェイアークにおける最上のチート&超エコな装備である。
これを量産した赤の星って……
《……徹底的に駆除する必要がありますわね。『広域浄化』で毒素は浄化した出来ますが、
《流石にジェネレイティングアーマーを展開していませんので、してほしくない手段です。それに内部に被害が……》
引火による爆発は、倉庫のハッチが開きっぱなしの現状、爆風が内部にまで影響し、ジェイアーク内部でミサイルを爆発させる事と同義になってしまう。
また、ゴーレム持ちの山賊が最近近くに住み着いたようで、最近謎の粘着行為があったり、火を吹いたり帯電する魔物も出たり……
それらに対する警備、追い払いも20年あまり独りで行っていたため、ジェイダーを使っているとはいえど心労がピークに。
(魔獣は荒い粉末になっている予備素材自体に魔獣引き寄せる効果があると知らず……)
……よく引火させなかったと褒めてあげたい。
また、内部システムの管理も生体コンピュータ『トモロ』がいないとフル活用が出来ないため、現在は生命維持のみに限定している。
以上の事から、あらぬ誤解をしたのも精神的に追い詰められた影響もあったのだ。
あと、生存者だがジェイアークの倉庫ブロックの少し離れた区画にまとまっていたのだった。
《本当に!?》
《はい、ただ生命反応が弱いのが気になりますが……》
《それは生き残りは皆、コールドスリープで眠っているからです。》
《何と!では皆様、無事なのですね?》
《………皆、という訳ではありませんが。》
《??》
何故か口ごもるアベル。
何か事情はあるようだが、ひとまず置いておいて……
《では、アベルさん。今後の行動指針ですが、ちょっとお耳を……》
《え??あ、はい────え、出来ますけど。》
《であれば、………を……しますので……》
《ええーー!?ですがもし……》
《……を閉じれば宜しいかと。気密性はどうです?》
《……あ、大丈夫でした。衝撃による心配もないようです。》
《では問題ないですわね。憂いなく行けるかと。》
何か企んだらしく、アルマにも同意を得られたようだ。
だがジェイダー───アルマは黙ってしまう。
《……アルマさん?》
《……私では考えられなかった方法です。》
《そうですわね……ですが、長い間切羽詰まった状況ですし、独りであれば余裕がなくなるのは無理はないのでしょう。ですが
《2人……》
《独りではないのです。刃を交えてしまった間ですが、今はお手伝いをさせて下さい。》
《……ありがとう、ございます。》
そんな時だった。
《───お嬢、何だかいい雰囲気のところ申し訳ないが、いいか?》
《オルガ団長?どうしました?》
《悪い報せだ、魔獣の集団がやって来やがった。》
《おおぅ……》
何と間の悪い報せだ。
だが、カルディナは一考した後、オルガに《そのまま素通りさせなさい》と指示。
《……いいのか??》
《構いません。長年、
《ああ、傍にいるから代わるぞ────どうした、カルディナ。》
《陛下、これより瘴気───毒素の除去と、魔獣の殲滅を行います。》
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「───ええ!?あの『白亜の城』に異変!?」
「はい、如何なさいますか?」
「直ぐに出ましょう、準備を!!」
「「「───おおぉっ!!!」」」
薄汚れた武骨な服装に、武骨なゴーレムに乗り、ゴーレムに乗った手下を数体引き連れ、全力で進軍する(本人達はそんな気はなしの)、一団がいた。
彼等は過去に国王レクシーズの改革で不正を暴かれ、落ちぶれた元・貴族その親族、その家臣達だった。
ボキューズ大森林に面しない貴族の実力は、面している貴族と雲泥であり、対・魔獣との戦力になれず、人の少ない北に逃げ落ちるしかない者達が殆どだった。
その一団の先頭に立つゴーレムライダーの1人、クルシエル・ロア・アズラグラッドは貴族の典型的な貧乏令嬢だ。
男勝りな彼女は男装を常とし、周りの女性の評判も高かった。そして能力も高く、顔立ちの良い少女ならぬ、あどけない
だが子爵の父親が、身内も知らない間に不正を働いていたため知らない間に没落し、家もそうだが去年までいた学院をも離れる事に。
そして最後まで残った忠誠心の高い家臣を引き連れ、家を出ていかねばならなかった。
幸い、
そして新天地を求め、昨年の終わりにはこの近辺に辿り着いたのだった。
その地は不毛であると言われ、瘴気が立ち込める故に人は住めない。
住居跡───集落はあるが、猛毒の瘴気がその地に足を入れる事を赦さない。
だが、そこで見た。白亜の如く美しい城を。
(※宇宙船です。超弩級戦艦です。)
そこを守護する鋼の巨人を。
そして思った。
(──あの白亜の城の城主とお近付きになりたい!!)
だが、現実は非情である。
それでも懲りず、諦めず……
……性格は
早い話が誤解されているのだ。
そんな彼女が普段とは違う状況───鋼の巨人同士が戦う、異様な戦場を見逃す訳がなかった。
片や城の巨人。
片や獅子の巨人。
異変にすぐ気付いた後は、移動しながら今までの迫力高い戦闘を目に焼き付けていた。
そして今、巨人達は間合いを狭め、何かを話すような仕草をしている。
……瘴気のせいで近くに寄れず何も聞こえず、遠く離れて見るしかないのが口惜しい。
だが、その後は圧巻の一言。
城の巨人は形を変えて空に舞い上がり、ゆっくりと白い城の城壁に降り、
それからもう片方の獅子の巨人は、上空にさも当然のように上がり、そのまま停滞する。
そして眩い光を発した。
その中で垣間見たのは、
次にその巨人は強靭な両腕を広げる。
すると、その周囲に巨大な
そして巨人の胸にある獅子が咆哮すると、更に光は強まり、今度は女性の声で《詠唱》を始めた。
それは、透き通るような女性の声であり、どこか聞いた事があるような声だった。
──
──
──
──
──
……それはどんな神聖な意味を持つ言葉でも比喩にはならない、そうクルシエルは涙を流しながら感じた。
迸る光の粒子は集落のありとあらゆるものを呑み込み、光に包んだ。
そして光が晴れた時には……
「……あの毒々しいまでの瘴気が、消えてるっ!!」
獅子の巨人は毒素の完全浄化を完了したのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
《毒素の分解浄化、完了です。》
「ご苦労様。しかし……毒素の正体の大部分が一酸化炭素とは意外でしたわ。残りはVX並の毒物ですが。」
《あの毒々しい霧も消しましたが、
「何とも傍迷惑な……」
ガイガーのコックピット内で浄化結果を精査するカルディナと
結果は問題なし。毒性物質は全てが消滅した。
まあ、残りはこれからであるが……
《カルディナ様、先程の詠唱は何か『浄解』のような詠唱でしたが……》
「……時にはロマンも必要なのです。」
《そう、ですか。(まあ、浄化効果は通常の170%越えでしたので、善しとしましょうか。)》
結果は上々であったので、その事には目を瞑る
ちなみに詠唱の正体は昔、カルディナが考えた『浄解』の詠唱のアレンジである。ただし当時はこんな絶大な効果を発揮していない。
カルディナは気づいていないが、効果範囲が集落を超えて、この山岳一帯を浄化したのだった。
───
《──お嬢、魔獣共だ。》
「おっと。」
次は魔獣だが、その規模は推定100以上と大きい。
生成された毒物の中には、魔獣を誘き寄せる成分でも入っていたようで、除去されてもすぐには止められない。この状況でチマチマ相手をするには、些か数が多い……であれば次に取った行動が───
「───『コレ』を使う日が来るとは……」
《ああ。正直、正気を疑うがな。にしても問題ないのか?》
カルディナはガイガーを起動させたまま、コックピット外のギャレオンの口から出てくる。
カルディナは『収納空間』より身の丈もある「IH-99-3」と描かれた白いミサイルのようなものを取り出し、発射台に乗せた。
コレは何だ……??と思う者が大半だが、一部の者には、おや?と感付く者も……
「問題ありません……と言いたいところですが、問題だらけです。ですが急性な現状に対応するにはこれしか方法がないのです。かなり過激になりますが、こうなれば私なりの方法で事態の鎮静化してやろうではありませんか。」
《……とても御丁寧な事で。まあ、指示通り初手は下すから、後は見せて貰おうか。》
「勿論。では魔獣達が集落に入ったら始めます、アルマさんもご準備は宜しくて?」
《こちらは何時でも。》
これにて次の準備が全て整った。
《魔獣群体、接近距離試算……カウント12より開始。》
「アルマさん!!側面ハッチ閉塞後、ジェネレイティングアーマーを!」
《了解、側面ハッチ閉塞。ジェネレイティングアーマー、起動……展開!》
まず、アルマがジェイアークの側面に開かれたハッチを閉める。毒素が消失したその区画には、僅かな可燃性物質を内包した
そして白い方舟の全体に赤い高出力のバリア──ジェネレイティングアーマーが展開される。
「
《了解。》
「では私も……
カルディナは白いミサイルのようなものに魔力《マナ》を充填開始すると、それは振動を始めた。
それは充填が進めば進む程、振動が強まり段々と保持に困難が生じ始めるが……
(──まだこの程度!序の口ですわ!)
全身が超高周波振動に苛まれようとも、気合と『強化魔法』でどうにかした。
その間にも魔獣の一団は集落への侵入をし始める個体が次々に現れ、遂にほぼ全ての魔獣が集落への侵入を果たそうとするが……
《──カウント4、魔獣の集団侵入を確認。》
「そ、それでは各員、対衝撃・閃光防御!『
《了解、派手に吹っ飛べ!!》
この瞬間、地上の魔獣達は燃え上がる超高度の
そして巻き起こる大爆発が────
「───イレイザー・ヘッド、
───発射ァっ!!!」
(山田◯一さんの声真似で)
───集束し、空の彼方に消え去った。
カルディナが使用したものは、超竜神専用・ペンシル消しゴム型ハイパーツール、『イレイザー・ヘッド』である。
これは魔術的に再現、小型化した試作品(3号)であり、数年前カルディナが魔術学院に在籍した時の作品で効果は既に実証済み。
「学院のグラウンドを2度、火の海と焦土にして実証した傑作」だという。
ただし、間違っても人が使用すると無事では済まないロボット専用品と結論付けたもので、生身の人物が使うと超高周波振動で身体の組織がズタズタにされてしまう。
実験に参加したカルディナ以外の生徒は起動実験直後に振動で悲惨な目に遭ったという……
白いミサイルような物体───イレイザーヘッドの弾頭をカルディナは多大な衝撃と共に高速射出、爆発源に到達した瞬間、一気に超高周波振動が発動。あらゆる爆炎、衝撃が強制的に集束、強烈な光を放つ一筋の光の柱と化した。
それは空の彼方へ吹き飛ばしてしまい、跡地には丸焦げになって、更に超高周波振動による集団シェイクにより瀕死な魔獣の山が残された。
結果、一瞬だけ
そしてカルディナ自身も……
「……プルプルプルプル……」
《カルディナ様、我が身を削って人助けなんて、何て痛ましい……》
《いや、イレイザーヘッドの発射の衝撃で大ダメージ、じゃないか?解っていただけに自業自得だろうよ。》
四つん這いのガイガーの下で、悶え苦しんで悶絶していたという……
超高周波振動のダメージは並大抵ではない。
それでも……
「た……待機中の小隊、に通達。魔獣と……
《……了解。だがそっちは大丈夫か??》
「フフフ……30分程、休憩すれば問題ないですわ。それまで……屍になってます。」
《……判った、しばらく休んでくれ。》
「あ、あいるび~、ば───グフォ」
《………》
意識が途切れる前に指示だけは忘れない。
通信を受けたオルガと、周辺の団員や国王達は、行われた偉業以上に、そのコントじみた通信内容に苦笑いするのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「───ありがとう、ございます。」
ジェイダーより降りてきたアルマは、深々と頭を下げた。
カルディナ撃沈後、鉄華団と近衛騎士、そして
人だけでは困難な後処理も、ゴーレムや
ジェイアーク内の最後の
途中、クルシエルの一派も合流、ジェイダーに乗ったアルマに頭を下げながら懇願して和解、後処理を手伝ったのも大きい。
そうして後処理を終えた一同は、ようやく顔合わせをする事が出来たが、アルマは予想どおり注目の的だった。
レクシーズ達以外は初めて会うアルマに、鉄華団の団員、そして近衛騎士達も思わず見惚れてしまう。
顔こそ大人になったアベルだが、腰まで長く伸びた髪を一本のリボンで結んだという単純な髪型が、あのツンだけのイメージからおっとりした柔和なイメージへと変えている。
そして長年の苦労故の儚さか、庇護欲が漂い、魅力としても感じてしまう。
だが、白の布一枚にベルトで形作ったワンピースに、上半身を包むマントという単純な服装なのだが、
(なんつーか、ムルの親戚のお姉さまって感じだがよ……)
(ああ、すげぇ別嬪。お近付きになりてぇ。)
(その辺り、どう思いでしょうか、ムルさん?)
(……いや、僕に言われても。親戚云々の前に、年齢からして遠いご先祖様ではと思うが……)
(……そういやそうだったな。)
(……ああ、俺達のささやかな希望を反中間子砲で見事に砕いて来る、さすが三重連太陽系の住人。)
(いや、アレは普通にアリだぞ。エルフとかどうすんだ?)
(((( ───!! ))))
「……失礼だぞ、お前ら。」
「……申し訳ございません、アルマ殿。」
多少の耐性は付いているが、それが逆に綺麗な女性に対して見惚れる『普通の』反応をする団員達に、オルガは半ば呆れつつも一言。
近衛騎士の中にも、女騎士がとある男騎士の鳩尾に鎧越しに
「は、はぁ……」
流石にそれにはどうリアクションすればいいか解らないアルマだったが、話を戻す事に。
「しかしレクス、クリフ、ティ・ガー……あの時の少年達が、この集落を救ってくれるなんて、感謝の念が絶えません。ですが、ここにいったいどのようなご用件で?それに、あれは……」
アルマが警戒するのも無理はない。
遠目に、現在は
三重連太陽系において、ギャレオン──ガイガーは広く知られているはず。
それがこんなところにあるとは、まず疑うのが自然だ。
「あれは……私の娘が創ったもので……」
「───すいません、クリフ。今、『娘』って言いました?クリフの子供……ですか?」
「はい。私の子供が創りました。」
「…………」
クリストファーからの申告を受けたアルマは、目をパチクリさせた後、眉間をマッサージし始める。
マッサージをしながら何か小さい声で「……あるぅえぇ??ガイガーって、ギャレオンって子供が創れる代物だったっけ??出来たっけ??え??」と自問自答している。
……それはそうだろう。
そしてそんな申し訳ない空気の中、レクシーズがアルマの質問に答える。
「……それで、本来であれば集落の解放だけが目的でしたが……真の目的は我々はカイン殿とアベル殿のお力をお借りしたく───」
「…………」
カインとアベル───その言葉が出た瞬間、アルマの動作が凍り付いたように止まり、そして顔を背けてしまう。
「申し訳、ないのですが、御二人は今……ここにはいらっしゃらなくて……いつ、帰ってくるかも……」
気丈に振る舞うようにしているが、先程のやんわりとした雰囲気は霧散し、アルマの身体は小刻みに震えている。
その態度が今、2人がどんな状況に在るか、何となく語ってしまっている。
その様子にそれからどう声を掛ければ良いか、一同言葉を詰まらせてしまう。
そんな時に、彼女はやって来た。
「───そこまで重篤、もしくは危険な状態、なのですね?」
「カルディナ!?体調はいいのか?」
「はい。流石に
フミタンを共に、
「……貴女は、クリフの娘さんですか?」
「はい、カルディナと申します、アルマ様。」
「……私はアルマ-
「……そうでしたか。」
カルディナとアルマは、自己紹介をした後、しばらくお互いを、ただ無言で見つめた。
本当に言葉はなくただ無言で、その場は沈黙した。
……そして、その沈黙を破ったのはアルマからだった。
「……貴女とは、今日初めて会った、そうでしょう?」
「はい、間違いなく。」
「なのにどうしてか、先程やり合った時は手の内を見透かされている、瘴気の除去も私とジェイアークに絶大な信頼があった───そんな気がしてなりません。どうしてですか?」
「それはきっと、私が
それは質問に対する最大公約数の答えであり、アルマには完全に理解・納得のいかない答えである。
「それは、どうしてです?」
「是非とも話したいですが、今語るには長くなり過ぎて駄目です。それに今はカイン様とアベル様の事で、本当に時間が惜しいのでは?」
「……本当に、判って言っているのですか?では私が御二人の下に案内する、とでも?」
「そうしなければならない筈。それに私は知る知識より推論・推測の元、お話していますが、お2人が霊魂の状態であろうとも、お救い出来る事を確約します。」
「───!!」
「「「────!?!?」」」
それは飛躍し過ぎ、そして大口を叩き過ぎでは!?と誰しもが思った。
そして気に触ったのであろう、アルマがカルディナに詰め寄る。
「それは本気で仰っているのですか?」
「私にとっても御二人は是が非でも助けたい方々です。二言も嘘もありません。」
「……判りました、ご案内します。」
そう言って、マントを翻すアルマは早足で歩み始めその後にカルディナとフミタンが続く。
何がアルマの気持ちを動かしたかは、端から見ていても解らないが、きっとカインとアベルを助けたい気持ちが勝ったのだろう。
そして緊張の場面を目撃した一同は、一拍遅れて彼女らの後ろに続くのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
案内されたのはジェイアークのとある区画。
そこは薄暗く、部屋の中央に2つの長方形の箱のようなものがあるだけの場所。
箱の上面はガラスで、中身が見えるようだが……そこに
何故ならその箱は棺であり、カインとアベルが安置されていたからだが、その上にはぼんやりと光に包まれたカインとアベルがいた。
服装こそアニメとは違うが、容姿は瓜二つであった。
訳が解らない。
他の騎士や団員も状況が呑み込めていない様子。
ただ2人、理解しているのが……
「精密なホログラムですね。角度を変えて見ても粗がないところを見ると……質量再生型か、全方位投影型かは気になるところですが……」
「気にするところが、まずそこですか?いえ、概ね合ってますが……」
通常運転のカルディナに、半ば諦めたように突っ込みを入れるアルマ。
そんなアルマの様子に、微笑ましく笑うカインに、眉間に皺を寄せるアベルが口を開いた。
《……外の様子は逐一、見させて貰ったよ。あの瘴気と原因の
「はい、カイン様。」
《随分騒がしいと思えば……知った顔がいるよですが、アルマ。》
「はい、アベル様。皆さん、集落の瘴気除去と復興に尽力してくれています。」
《……そうですか。》
頭の中に直接響く会話───リミピッド・チャンネルである。その場にいる者達にはハッキリと聞こえており、初めて応対するものには少々刺激が強いようで戸惑う者も。
それににこやかに応対するアルマ。先程の鬱蒼とした表情は何処へやら……
「……カイン殿。遅くなって申し訳ありません。」
《なに、構わないさ。こうして来てくれたのだからね、嬉しい限りさ。》
《まあ、よくやったと褒めてあげましょう。》
「相変わらず辛口評価ですね、アベルさんは……」
それに目の前にいる2人はホログラム投影された軽質量体なのだろう。触れる事も出来るようで、アルマを撫でる事が出来れば、レクシーズ達の握手にも応じる事が出来ていた。
……だが。
《この度はこの集落を救ってくれて、お礼の言い様がない。出来る限りのお礼をしたいところだが……》
《───では、御二人方の命を預からせて頂けませんか?》
《……誰です?》
同じくリミピッド・チャンネルで介入してきたのはカルディナ。自ら進んで前に出て、一礼する。
《クリストファーの娘で、カルディナと申します。》
《君は……君がギャレオンに、ガイガーにフュージョンしていた子、だね。》
《はい。カイン様にしてみては、あのギャレオンはイミテーションに見えるでしょう、お笑いください。》
《あの様な芸当をしてイミテーションとは……笑うどころか、感心しか出来ない。して、命を預かるとは??》
《言葉通りです。》
2人から感じられるエネルギーは、存在出来るギリギリ。これでは今日が峠、風前の灯火と言われても不思議ではない。
遠巻きより
カルディナを始め、感受性に富んだ者であれば、状況を知れば知る程、2人の振る舞いが痛々しく見えてならない。
《そうか……見えるのだね、我々の残りの時間が。この星は文明こそ未熟だが、エネルギーの扱いには一目おける。その中でも君はその才が突き出ている……ふむ。魔法、魔術か。》
《……カイン?まさかその子供の戯れ言をまともに取り合うつもりですか?》
《その価値はあるかな、と思うけど。》
《……初対面の輩に、委ねるのは非常に危険では?それに私達の魂は、もう元の肉体には戻れないと結論付けたはずですよ。それとも……貴女はそれが出来るとでも?》
《はい。》
肯定的なカインに対し、横目でカルディナを睨む否定的なアベルに、カルディナは迷いなく答え、肯定した。
その自信満々な態度にアベルは大きく溜め息を吐いて目を閉じる。
《……どうやら本気のようですね。》
《少なくとも、魂の保存は今以上に出来るかと。ただし、肉体憑依へは遺体の状況次第では時間がかかりますが……》
《……判りました。その本気度に免じて、貴女の提案を受けましょう。ただし、魂の現状維持が最優先ですからね。それを怠るようでしたら───タダではおきませんよ。》
《もちろんです。》
そして2人からの了承を得たカルディナは、早速
その様子をアベルは何とも言えない表情で、カインは微笑ましく眺めている。
大の大人にすら指示を出し、的確に動かす手並みは指導者のようだ。
しかしどうして
しかも来て早々に、ここまで手筈が良いのか。
《……貴女にそこまでさせる理由は何です?》
《そうだね。ここまでする理由を伺いたいところだが……》
《……理由は3つありますが、まず御二人を敬愛するがため。もし御生存されていましたら是が非でもお役に立ちたいと願った次第です。》
何とも嬉しい理由である。
だが次の理由を聞いた2人は、耳を疑った。
《次に、ゾンダーがこの星に現れたためです。》
《───!?》
《───なん、ですって!?》
《残念ながら事実です。実際に撃破、浄解もしています。》
《……浄解もかい?》
《はい……ですが、これ以上は言えません。》
《何故です?》
《……時間が掛かり過ぎるから、かな?》
《はい。御二人の安定化が優先です。でなければ、最後の理由も話せません。》
《……いいでしょう、その言葉に乗ってあげます。》
《ありがとうございます。》
……そして始まった、カインとアベル、2人の魂の安定化。
……しかし。
ピッコ、ピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコ───
「……アベル、止めてもらえるかな?」
「そう思うなら、私の姿を今すぐ変えなさい、ええ今すぐに。」
「かわいいだろう、似合っていると思うが。」
「同意しますわ。」
「そう思うなら、いっそ殺してください。もう遠慮なく。」
「「断る。」」
「orz」
ギャレオン(ミニ)の頭に、ピコピコハンマーを無心で連打し、地面に四つん這いになるウサリンmarkⅡ、という訳が解らない構図が出来上がった。
「カイン様にギャレオン。アベル様にウサリンmarkⅡ……ええ、実にいい組み合わせかと。」
「「「───どこがだ!!!」」」
そして犯人はカルディナ。
どうしてこうなった。
《NEXT》
〇VSジェイダー戦
とりあえず「こうすりゃ勝てるだろう」という妄想を入れました。
どんな戦いになるか予想していた方、当たりましたか?
……いや、何かすいません。
ちなみに黒穴が手札にない場合にはすれ違いざまに打ち落とす予定でした。
というか、ジェイダーの脚、どう見ても撃ちそうと思ったのは私だけでないはず。
◯アルマ-
本作品オリジナルのキャラです。
オリジナル・アルマの試作版、という立ち位置で、浄解こそ出来ますが、ゾンダーの感知は出来ないという設定です。
見た目は「大人になった大人しいアベル」。
2人並べたら親子、とか言わない。
◯イレイザーヘッド
生身で使用するとこうなる、という実例。
だから超竜神じゃないと使えなかったのでしょう。
ちなみに、イレイザーヘッドの有効範囲内では生身ではこうなる、という予想を魔獣が代わりにしてくれたのですが、あらゆる爆発、衝撃を強制的に集束する以上、まずただでは済まないでしょうね。
◯カイン&アベル
回想以外で初登場ですが、既に死んでいる。
いや、幽霊になって生きてますよ?
え?そうじゃない?
◯ギャレオン(ミニ)inカイン
Number.04 ~『勇者王』を創る決意~(2)より出た、カルディナさんのガオーマシンと試験的にFFしていたガイガーです。前話にも登場してます。
今回、カインとフュージョンっ!!
もちろんガイガーにも変形します。
うむ、これがあるべき姿の1つだ。
……え?じゃあ次は何だって?
◯ウサリンmarkⅡ inアベル
どうしてそうした!?(代弁)
前話にて出ましたウサリンです。
ブレイブサーガ知っている人は判るでしょう。
もっふもふの、ピンクのうさたんです!
あかいドレスにハートマークのエプロン、かごにだいすきなニンジンさん(悪意)をいれて、おでかけです!
わるいこはピコピコはんまーで、ひかりにしちゃうぞ!!
※現状そんなスペックはありません。
※最大級の勇気を振り絞って、アベルさんの声で脳内再生してみましょう。きっとゴルディオンハンマーを振りかざして来るでしょう。
ちなみに、カルディナさんはアベルさんを敬っていますが、とある理由でウサリンをチョイスしています。それは次話にて。
けっこう長くなってしまいましたが、ようやくお嬢様達がカインとアベルに会合しました。
既にお亡くなりになっていますが、魂は無事、というオチでまとめてみましたが、どうでしょうか?
いよいよ次回は色々伏せていた三重連太陽系の経緯を含め、話を綴っていきます。