公爵令嬢は、ファイナル・フュージョンしたい。   作:和鷹聖

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……なん、だとッ!?

誰も見てないと思ったのに!

どうもありがとうございます!




気を取り直して、どうぞ!
(この話から、ナレーションが少し変わります。)



Number.03 ~糸と、ドワーフ~(1)

 

 

 

 

 

 一言で云うと、カルディナ・ヴァン・アースガルズは非常に多忙である。

 

 

「店主、お伺いに来ましたわ。」

「おお、カルディナ様。 本日もよろしくお願い致します。」

「ええ、良しなに。」

 

 

 メイドのフミタンを伴い、やって来たのは公爵領にある、カルディナが父親たる、公爵より任されている商会『アースガルズ商会』。

 カルディナは品が良く、かつ機能的、着やすさを重視したような、街の娘が着る服よりも多少優雅なデザインの服を着ていた。ただ、その服は白で清楚さを主張したものではなく、逆に色はオークルベージュや薄いブラウンを主とした、公爵令嬢としては地味な色合いのものだった。

 ちなみに、テーマは『作業着とドレスを品良く合体させてみた』である。

 これは、カルディナ自身が、汚しても、汚されても問題ない物を望んだ為である。

 それは、カルディナが計算高い人物だから、である。

 

 『アースガルズ商会』とは、本店を基点とし、数ヶ所存在する支店、そして商店に加盟、傘下とする各工房、各農家の集合体の総称である。

なので、正確には『アースガルズ商会グループ』である。

 

 やり方としては加盟、傘下の各工房、各農家から仕入れた商品を販売する───以上。

 

 ……言っている事は簡単であるが、要は『自社ブランド販売』の構想である。

 現代で言えば、コンビニ……セブ◯イレ◯ンや、ロー◯ン、セ◯コー◯ート等で売られている自社マークの入った商品の事。(コンビニ以外でもありますが、ここでは割愛。ただしセ◯コー◯ートはほぼ自社製造。)

 商品の裏のパッケージをご覧下さい、必ず何処の会社が作った物か、記載されているはず。

 大体は別のメーカーが作っているハズ。

 

 ……閑話休題。

 製造と小売店の間に『卸売り』が入らないので、利益はその分上がる為、カルディナは採用している。

 また、遠方への村へは商店では基本していないが、契約、提携した行商人に対し、卸売りの立場を取ることもある。

 基本的には、地産地消である。

 店の経営の特徴には、この時代でまずお目にかかれない『マニュアル』が存在する。

 当然、店主との協議の末、完成させたもので、接客から品物の陳列、値段交渉目安等、事細かにあるが、週一日、視察程度しか来る事が出来ないカルディナであっても、それさえ見て、2~3日の研修を経るだけで、新人であってもある程度店を廻すことが出来る。

 もちろん不都合、改善点があれば要望によって変更出来るようにした。

 それは商品を製造する各工房の親方衆達にも、同様の事を働きかけた。

 自身の仕事を省みせ、弱点をハッキリさせ、すぐに利益を出せるもの、逆にこだわりを持って作って欲しいものを出し、工房の生産性を上げた。

 職人のこだわりと、消費者のニーズにズレがある事もハッキリさせ、利益に繋がるようにした。

 職人の育成も、すぐに任せられる事、時間をかけて覚えさせる事を親方衆、職人達に判って貰えるよう尽力した。特に職人の育成は、その工房によってまちまちであり、互いに不満が募る、危ういすれ違いが多いのも回避出来たのは大きかった。

 特に『文章化、図面化出来る及第点』はギリギリのところまでハッキリさせ、常に判りやすい環境を作るようにした。

 何故『現代的』な処置を実践したか、それは『ハッキリさせるため』と『無駄を極力減らすため』の2点にある。

 『現代』の知識を知っているカルディナにとって、今までの商売形態は、あまりにも無駄、損が多い。

 商人は個人はともかく、商店を持つところの接客、ノウハウは質がまばらだ。場所によっては店が傾きかけている所も多々あった。店主以外の能力も低いのも商品となる品物も同様だった。

 工房によっては質がまばら。個性となるならまだ解るが、品質のレベルで差がありすぎた。

 貴族用と呼ばれるものはまだいい。品質もそこそこ(カルディナ基準)。

 しかし平民用は、貧雑の一言。もう少し改良しても良くありません?(カルディナ基準)

 しかも使えればいい、これでいい、と言うのだから世も末。(現代物資が比較基準の、カルディナの弊害)

 であれば、まずは改良点はそこから、であろうか?

 カルディナはそう考え、自身の関わる商店、工房、農家に自ら足を運んだ。

 そしてそこから始まったのは、皆さんよくご存じの現代チート。

 現状の物資、品質のもので、あらゆる手を、あらゆる技術を『記憶書庫(B・ライブラリー)』より抽出し、放出した。

 

 当然、衝突もあった。

現状のやり方を、品物を否定されるのだから。

 しかしカルディナもそこは判っていた。

 故に、まずは親方衆の現状を否定せず、しかし欠点をチクチク、チクチク指摘。

 そして僅かに出来た隙に捻じ込むように、新しい技術、方法を提供する。

 

 まず一つ。

 出来たらもう一つ。

 出来たら更にもう一つ。

 一つ一つ平たい石を積み重ねるように、成功の実体験を相手に積み上げさせるのだ。

それは不安を和らげ、意欲を刺激し、向上心を高める。

 

 するとどうだろうか?

 それが成功し、利益が少しずつ上がり始め、形になると、親方衆も店主達もカルディナの言っている事を認めざるを得ない。

 自身の今までのやり方を省みる意識を持たせ、今までの考えでは、やり方では駄目だと自ずと気付き始める。

 そして、自然とカルディナを頼り始めるのだ。

 

 そうなると話が早い。

 カルディナを慕う、もしくは頼り始める者には更なる知識と技術の付与を。

 逆に騙そう、陥れようとする者には制裁を。しかもカルディナが手をかけた者達にも害を為そうものなら貴族権力すら使い徹底的に。

 ただ、見込みのある者であるなら救いの手を差し伸べた。

 

 そうする事でカルディナは一人、また一人と商売に関わる者達を味方に付け、信頼を得て、何時しかそれが大勢になった頃、現在の『アースガルズ商店グループ』の構想を打ち出し、手塩に掛け育てた者達を囲い、更にその力を伸ばしていった。

 

 そして各工房や商店同士を協力させ、単独では生み出せない、更なる商品の開発に力を入れ、いつしか『カルディナ・クォリティー』なるブランド、品質に特化した商品も開発されていった。

 ただし、命名は本人ではない。

 その間、2年。

 そんなカルディナである。

 現状のカルディナ個人の資産は、王国での個人資産所持の五指に余裕で入る、超お金持ちである。

 しかし、当の本人を見ると、衣服、容姿こそ整っているものの、お金持ちになんて見えない。アクセサリーもまた必要最低限でシンプル。

 

 何故か?

 

 

 当然、ガオガイガーの為であるッ!!

 

 『創造!ガオガイガー!』を謳う彼女は、時には、自らも汗水垂らして働く覚悟が(そして実行した経緯、これも多数)ある。

 

 

 自ら手を貸して得られる商機を逃しては、資金は貯められない。

 服の汚れを一々気にしては、お金は貯まらない。

 希少金属の買い付けも、職人の給料もお金がないと始まらないッ!

 

 つまり、

勇気だけじゃ(お金もないと)、ガオガイガーは創造出来ないッ!」

 

 

 ギャレオンが咆哮するが如く、カルディナの心もまた燃えていた。

 

 まあ、それだけではない。

 実際カルディナには、3つの狙いとリスク回避のため、現状の経済状況を生み出す必要があった。

 

 一つ目は、資金調達。

 二つ目は、技術の進歩。

 三つ目は、世論の緩和。

 

 

 一つ目の資金調達は、先程の通り。

 

 二つ目の技術の進歩。

 これはいざガオガイガーを鋳造する時に、確かな技術を持つ、熟練の技術者が、しかも多数人必要になる事は間違いないと予想されるからだ。創造相手はオーバーテクノロジーで造られた『架空の』鉄の巨神である。しかも『記憶書庫(B・ライブラリー)』にも現実に創造された記録はないのだ。設定資料集もあるが、それはあくまで『架空設定』である事をカルディナは知っている。

 実際に『現代』にある技術も含まれているが(ドリルとか)、どちらの世界であっても、存在自体がオーバーテクノロジーである故に、生半可な技術では太刀打ちすら出来ない。下準備は絶対だ。

 ボディを造るにあたり鍛治師は絶対として、細かなギミック、変形機構、内部部品を製造するにあたり、金属細工師も必要になる。

 そのため、技術者同士を協力させ、技術を高め合う場を、あえて作り出していた。

 

 三つ目の世論の緩和。

 これは『世論が自分の行いの妨げ、もしくは敵にならない為の予防策』とする為。

 

「間違いなく、自分の趣味(=ガオガイガー)は異端ですわねぇ……」

 

 

 カルディナ自身、たまにそう思う事もある。

 

 ……え?自覚あったの?と思った方、お嬢様がヘルアンドヘブンをして差し上げるそうです。どうぞ前に。

 最後に「ウィーータァーーッ!!」が付く方ですが。

 

 

 

……閑話休題。

 

 それはもう自覚あります。

 もし世間に知られれば、まず非難は確実に来るのは判りきっている。

 特に煩いのは『教会』である。

 清廉潔白をモットーとする、この国で主流派の『カイエル教』は悪魔的要素を極端に嫌う性質がある。

 もし完成させたガオガイガーの容姿を見ようものなら、アナフィラキシーショックを起こす患者の様にヒステリックを起こし、非難するだろう。(実体験あり)

 

 ただ、魔法を主とするこの国での信者はおよそ半数以下。他は無宗教か、マイナーな土着神、もしくは他国の宗教をひっそり。

 

 

 それでもある程度の衝突があるかもしれないが、極力は避けたい。

 それがカルディナの願いだ。

 

 

 ……じゃあ、止めれば?と思うがそれは無理。

 

 

 だって好きなんですものッ!!!

 

 

 そして狙いとは別の、リスクについて。

 これが厄介だ。

 何故なら、これは確定事項だ。

 それは『国』が介入してくる事。

 

 カルディナ住む、アースガルズ公爵領を含んだ、24の貴族領と1つの特別区域を纏め上げる存在が『王国』、正式には『アルド・レイア王国』という。

 

 この『王国』にはとある法律がある。それは……

 

 

『武器、鎧、他発明品の『新』開発、製造を行う際には、国に届けよ。』

 

 

 つまり『何か新しい物を作る時は、必ず国に言ってから作るように。』である。当然、製作場所も明らかにしないと駄目である。

 設計図に機密事項を設けても良いが、後で聴取が来るのである意味無駄と言ってもいい。

 理由として、一つ目は販売による税収対策、二つ目は国家反逆防止対策、三つ目は王国による新技術の発掘がある。

 特に三つ目に関して『王国』、特に『国王』は技術収集に貪欲である。王国自前の技術者集団が日夜、あらゆる分野の技術を模索しているが、当然限界もある。

 そこで各地方、各領地で研鑽し培われた優秀な技術を収集、吸収し、発展させよう、という訳だ。

 オノレ、オウコクキタナイ……

 また『技術採用』という、現代における特許に似た制度があり、特別な技術は一定年月独占、そして独占販売が出来る。

 しかし、特別な技術はそう簡単に生まれる訳でもなく『技術採用』を認められる者は少ない。

 

 ただ、とある商会が、連日『技術採用』可能な品々を納めてくる為、審査機関がマヒしているとか……

 ナニソレ、シーラナイ

 

 そして一番厄介なのは、軍事関係の開発で『技術採用』を取ると、必ずと言っていい程、量産するようお達しが来る。

 当然、ガオガイガーのスペックを見たら『技術採用』から量産の話まで一直線だろう。

 そうなれば……

 

 

 

 ……え?? ガオガイガーを量産?? ナニソレコワイ……

 

 それはいけない。

 ガオガイガーはたった一つ(ワンオフ)こそ望ましいのだ。

 制式量産でズラリと並べ立てられた光景を見たら……

 カルディナが号泣しそうだし、やられメカ的存在に成り下がりそうで嫌だ。

 しかし、ここの『国王』はそれを本気でやらかしそうなのを、カルディナは知っている。(多数実例あり)

 

 

 なので、目下生け贄(スケープゴート)となる存在を別に設計中なのだが……

 『あと一歩』がない現状は、残念ながらガオガイガーの事を含め、絵に描いた餅、でしかない。

 

 それに誤算もある。

 まず、勢い良すぎて父親が関わるところまで手を出し(出さないとヤバいレベルまで酷い現状だった為もある。後は連鎖的に。)結果的に食い尽くした為、カルディナは意図せずアースガルズ公爵領の経済界を牛耳ってしまった事。

 勢い余ってやった事を報告したカルディナに対し、自分が関わって来た頃より格段に上がった税収を見て何も言えなくなった公爵は、その夜、妻に泣き付いたという。

 その翌月から公爵からのお小遣いが全額カットされたカルディナは「何故ですのー!?」と泣いたという。(自業自得)

 

 

 次にカルディナ信者が増えた事。

 初めは公爵の小娘というレッテルを貼られていたカルディナだったが、丁寧で親身に話を聞くその姿勢と、救済にも似た卓逸した手腕、その人柄に、コロリと堕ちる人々が続出していった。

 何しろ容姿は、『聖女』と呼ばれる程に整い、『それ』とした誤解もまた多い。

 また、プライドの高い親方、住民に対しては

 

 

「いくら私が貴族だとしても、所詮はただの小娘に過ぎません。ですので、真面目な話でなくても、愚痴程度でも仰ってください。それで抱える問題が解決するなら、安くありませんか?」

 

 

 と、愚痴すらも聞くカルディナに、心を許す者も次第に多くなっていた。

 ただし、個人的信者を増やすのはカルディナにとっては不本意、教会の『聖女』の様な扱いは嫌いなのだが、当の本人が自覚していないため、自業自得と言えようか。

 

 また、赴いた街で、そこに住む住民が食べる物と同じものを食べていた事も大きい。正確には出店の食べ物であるが、共に食べ、席を共にした者の話を聞き、時には同調して、口論もして、謝り、謝られたり、商売以外でも住人とも気兼ね無く交流していた。

 その時にはカルディナの人となりがよく現れ、この公爵領の令嬢とはどんな人か、ありのままを見せていた。

 また、その時に得た情報を元に問題解決に奔走した事も……

 その結果『公爵より貴族してる。』と謎の評価を受け、カルディナは困惑。現公爵は娘の存在に恐怖した。

 

 最近では、カルディナの恩恵を受けた住民からは、この頃には「おんぶに抱っこじゃ申し訳ない!」という自立心が芽生え始めて来た。

 何しろカルディナは公爵令嬢。いずれは何処かに嫁ぐ身だ。そんな時、何時までもカルディナに甘えては今度こそ駄目になる!と一部の住民達は思い始め、今以上の頑張りを見せていた。

 

 ちなみに、公爵が「これで公共事業にまで手を出してきたら……」と不安に思っていた時に、カルディナが「お父様、ちょっとご相談が……」と不安混じりに頼って来た事に、父心が復活し、意気揚々と相談に乗ったら、よりによって公共事業レベルのライフライン整備の計画立案書を持って来られ、しかも新技術と実現出来るプランを提示された時、公爵が家出したという話もあったという……

 

 最近、父親には何かしら恐れられる始末。

 本人は解せぬ、といった様子だが、自分の行動をどうか振り返って頂きたい。

 

 

 

 閑話休題。

 

 

 

 

 とまあ、散々なが~く説明させて頂いたが、誤算幾つか出ているが、現状の流れ、環境のほとんどが、彼女の、カルディナ・ヴァン・アースガルズ公爵令嬢が計算して作り出したものだ。

 ほとんどが私利私欲のため、と言っても過言ではない。

 

 民の為? 違う。

 皆が幸せを享受する為? 違う。

 経済を発展させる為? それだけではない。

 

 過去に、一人の民に「カルディナ様はどうして、みんなに優しいのですか?」と尋ねられた事があった。

 そしてカルディナは、こう答えた。

 

 

「優しいというのはどうでしょう?私にも夢があります。その為には、お金は必要ですよ?なので、商会の長という立場の私で出来る事は、皆の頑張りによってお金を世間に廻す手助けをする事。そうする事で、皆に富が廻り、私にも富は巡る。またその富で皆を手助けし、また廻す。その繰り返しですわ。」

 

 そう話し、聞いた民は感動したという。

 しっかりオブラートに包んだ、良いお話でした。

 で、本音は?

 

「民に恩恵を与えるのです。ならば私も儲けさせて頂いても、バチは当たりませんわよね?製作費用、きっちり稼がせて頂きますわッ!」

 

 

 と、本人談。ありがとうございます。

 やはり貴族である。

 

 

 

「……さて、これで以上でしょうか?」

 

「はい。新作ドレスの件は、変更したデザインでお任せください。ご提案の通り出来ます故。平民向けの新作の服も順次、期限内に出来次第、各支店に送り届けます。どちらも好評ですから、販売しても、またすぐに売り切れるでしょう。」

 

「それは重畳。ですが売り切れても直ぐには生産はしないように。職人には充分な休みを与えてから、ですわ。今回の納期の為、少し無理をさせてしまいましたし……無理はしないように。」

 

「わかりました、仰せの通りに。」

 

「では、次がありますので、これで失礼致します。」

 

 

 

 そして、フミタンを伴い、店を去るカルディナ。

 馬車に乗り、通りから見えなくなるまで店主はその場を動かず、見送り、そしてようやく安堵のため息を吐く事が出来た。

 

 

「本当に、毎度思うが不思議な方だ。公爵の令嬢と言えば、大概ワガママなんだが、カルディナ様は私達に随分と良くしてくださる。お陰で毎度毎度、取り越し苦労ばかりだ。もう少し、他領のお貴族様もカルディナ様のようであればなぁ……」

 

 

 店の品物が良いため、他領の貴族も買いに来る現状、カルディナに対しても同じように対応してしまうが、彼女にはその気遣いが無駄になる。(経営に不備があれば、雷が落ちるが。)

 そして、店主も店に戻りつつ、今回出るであろう儲けに対し、職人の給与にどれくらい色を付けるか、考えるのであった。

 

 

 そして、カルディナが次に向かったのは、孤児院だった。

 

 

「うふふ、まちなさーいっ!」

 

「うわー!! カルディナ姉ちゃん、来たー!」

 

「逃げろー!」

 

「今日こそ逃げ切って、追加のお菓子、ゲットしてやるー!」

 

 

 孤児院で、カルディナは何故か子供達と『オーガごっこ(鬼ごっこ)』をしていた。

 

 ちなみに、オーガ()役はカルディナだ。

 逃げ切ったら、カルディナが持ってきた、お土産のお菓子が追加されるシステムらしい。

 しかし……

 

 

「くッそー! カルディナ姉ちゃん、いつも容赦ねぇぞー!」

 

「当然、ですわ! 苦労せずにお菓子(報酬)を得られる等、思わない事です!」

 

「この(オーガ)悪魔(デーモン)!!」

 

「幾らでもおっしゃい!」

 

「ケチんぼ! お金儲け主義!」

 

「お褒めの言葉、感謝ですわ!」

 

 

「ケツデカ! メスぶ……!?」

 

 

 

 ――――ガシィッ!!!

 

 

「……誰ですの? そんなお下品な言葉を教えた、輩の存在は。」

 

 

 汚い言葉を言った子供に、風をも超えた踏み込みで、一切容赦ないアイアンクロウを繰り出すお嬢様。

 悪口は良くても、教育上良くない言葉は赦しません!

 痛過ぎて、男の子が変な動きをして悶絶していようが容赦ありません!

 そして、子供達はその言葉を教えたであろう、一人の男の子を一斉に指差す。

 悪事の通報は大切な義務です。(カルディナの教え)

 

 

「げぇ!!みんな、何でバラす……!?」

 

 

 ――――ガシィッ!!!

 

 

「……クリム、また貴方ですの? 」

「ご……ごめんなさ……」

天誅(エロイム・エッサイム)ッ!!!」

「くぁwせdrftgyふじこlpッ!!!」

 

 

 そして完成したアイアンクロウ・対面キッチンッ!(解らない人は検索を)

 そしてカルディナ様、それは意味が違いますッ!

 ちなみに犠牲となったクリム、どうやって発語した、その言葉ッ!

 

 

「……何をやっていらっしゃるのですか。」

 

 

 そんな光景を遠くから見て、孤児院の院長と相対するフミタンは、ただ呆れた。

 

 

「すみません!子供達が迷惑を……」

「いえ、お嬢様も解っていらっしゃいますので、特に問題ないかと。それよりも、お嬢様に代わって、子供達の最近の様子を伺いたいのですが……」

「あ、はい!最近は……」

 

 

 この孤児院への訪問も、週に1回、カルディナは訪れている。

 目的は子供達の様子を確認する事と……

 

 

「……で、最近は算術を覚える子も多くて。ケルン先生も教えるのが楽しいって仰ってました。」

「そうですか、順調で何よりです。ご不便はありませんか?」

「いえ、みんな今は生活に困る事なく過ごしてます。」

「そうですか。」

 

 

 笑顔で近況を伝える院長に、特に感情の起伏もなく聞き入るフミタン。

 いつも通りのやり取りだった。

 ちなみに、何故こんな事をしているかと云うと、将来への投資、のためである。

 カルディナ曰く、

 

 

「我が商会の人材を将来的に確保するためですわ! 特に算術の出来る人材は超・貴重! 今の内に教育を図っても損はありません。でしたら、孤児院の子供達を使っても問題ありません。むしろ、自由に育てる事も可能ですわ!」

 

 

 との事。そうして始まった孤児院の子供達育成計画。始動したのは一年前程である。

 ちなみに、先生である、ケルン・ウォルマート・アストニアは、元・カルディナの家庭教師だった人物。

 そんな人物を孤児院の子供達に当てがったのだ、気合の入り方が違った。

 

 そして散々遊び、子供達にお菓子を与え(追加報酬は数人有)、現状把握をしたカルディナは、満足して再び馬車に乗って、次の目的地に向かった。

 

 その姿を見えなくなるまで見送っていた孤児院の院長、若いシスターはぽつりとつぶやき始める。

 

 

「……カルディナ様が孤児院に寄付され始めて、もう一年。教会の本部すら、その2~3か月前に補助を打ち切ったのに、いち早く、しかも毎月寄付を下さって……週に1度だけど、子供達の相手も欠かさず来て下さる。相談にも乗っていただけて、しかも子供達が将来困らない様に、ご自身の家庭教師を遣わさって下さる……赴任して来た時の絶望的な状況が、こうも変わるなんて……本当にありがとうございます。」

 

 

 子供達がやつれ、死にかけていた赴任当日の絶望的なあの日。

 懸命に頑張ったけれど、報われず、どうしようもないと諦めたあの日、差し伸べられた一筋の光と言葉。

 

 

 

 ―――本当に頑張りましたわね、後はお任せなさい。

 

 そしてあの頃が嘘と思える程の、幸せな今を一緒に作ってくれたあの人には、感謝しかない。

 自身の曖昧になりつつある信仰を捨て、あの方に祈りを捧げたい、そう思う院長だった。

 

 

 

「──フミタ~ン、次はどこですの?」

「喫茶店『アンジェラ』で、次回のお茶会で提供予定の新作スイーツの試食です。お疲れの様ですので、1時間程休憩なさいましょう。」

「……そうしましょう。」

 

 

 馬車の中でぐったりとするカルディナ。

 カルディナが現在の状況を作り出して、2年が経過した。

 しかし、まだ作り出した環境が完全とは言えず、カルディナは日々各店、各セクションに週一で通い、フォローと相談を受ける日々を続けていた。

 

 全ては、自身の夢の為に。

 しかし、自身の思惑とは別に、彼女は関わる人々の運命も無意識の内に変えていっていたのだった。

 

 

 

 


 

 

 

「カルディナ様、フミタンさん、いらっしゃいませ~! あ、新作のスイーツ、完成していますよ。」

「じゃあ、席に運んで下さるかしら。私とフミタンの2人分。」

「わかりました~。席にご案内致します~!」

 

 

 威勢良くカルディナに話しかける、喫茶店『アンジェラ』の店員、アシュリーは軽快に2人を特別席に案内する。

 その道中、カルディナは気丈に歩きながらも、やはり疲労の色を見せていた。

 

 

「お嬢様、私もよろしかったので?」

「……今は冷静に判断出来る人物が一人でも多くいると助かりますわ。」

「今日はこれで最後ですが、流石に49件の訪問は無理がありましたね。わかりました、仰せの通りに。」

 

 

 そしてようやく休憩出来る、と思った時だった。

 

 

「馬鹿野郎――――――!!」

 

「ふざけんな!コノヤロ―――――!!!」

 

 

 

 

 近くの店から、いきなり怒声が響く。

 問題発生である。

 

 

「な……なんですの??」

「……さあ?」

 

 

 

 流石に見逃す訳にも行かず、2人は店の外に出た。

 そこで見た光景とは……

 

 

 

「手っ前ェ―――!! もう容赦しねえぞ!!」

「そっちこそ!! 言い掛かりは止めてもらおうじゃねえか!! ふざけんな!!」

 

 

 襟を掴み合い、一触即発になっていた、2人のドワーフだった。

 

 

 




……あるぅえ~~~~??


書いていたら、何か先触れ程度がわんさか、10000字に迫る勢いで書いてしまった。
自分でも何が起きたかわからない。

しかまだ話が途中。


すいませんが、話を2つに分けます。


……これも王国が悪いんや。


オノレ、オウコクキタナイ……








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