公爵令嬢は、ファイナル・フュージョンしたい。   作:和鷹聖

35 / 61
皆さん、ご感想ありがとうございます。
評価で☆高評価を付けてくださった方々、非常に励みになります。
今後ともよろしくお願いいたします。
感想欄ではトリプルゼロとアカシックレコードの組み合わせによる多次元崩壊に対し、某皇帝様や終焉の魔神様が来ると予見されている方々多かったです。
ちなみに私の見解は保留。
言ったら角が立ちそうなので……

(それに対し、既に事が起きている事は秘密)


それはさておき、皆様。準備は宜しいか───


───まずは、暁を勇気の光で照そう。

(ということで、ファイナル・フュージョンまで行けずェ……)







Number.15 ~『勇気ある誓い』と共に~(1)

「……V・C、一つ教えてくれ。」

《何でしょうか、凱様。》

「俺は()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

凱は目を瞑ったまま、冷静にV・Cに尋ねる。

 

 

《……否定です。今すぐではありません。侵食具合より算出すると、まだ先になります。ですが───》

「───それが判ればいい。そうか、まだ希望はあるんだな。」

 

 

凱はホッとし、そして目を見開く。

その瞳は生きる希望を失っていない、勇者の瞳であった。

この男は、まだ諦めていない。

そして凱の言う希望───それは……

 

 

「父さん、さっきカルディナと会う前に言っていたね、『勇気の時を待て』って。」

(ああ。勇気の時──すなわちオレンジサイトを脱出した護君と戒道君が、必ず来るだろう───GGGのスタッフ達を連れ、覇界王と化したジェネシックによる影響を調べに来る……そうだ、その時が勝負だ!)

 

 

ソール11遊星主が造り出した三重連太陽系より脱出させた天海護と戒道幾巳がそのまま黙っている筈はない。

彼等の力が、存在が、再び大きな影響をもたらす───そう信じている。

そして覇界王が顕現する影響はいずれ───いや既に地球圏に起きているはず。

今もなお地球に残るGGGが気付かない訳がない。

新生GGG───彼らが来ると予測し、凱と麗雄、絆は信じていた。

 

 

「そうだ。だから絶望するにはまだ早い。俺にはまだ信じられる仲間がいる、助け出さなければならない仲間がいる。そしてV・C、君が言うとおり状況は絶望だらけだろうが、まだ時間はある。むしろOOO(トリプルゼロ)に今、気付けた事は幸運だった。たとえOOO(トリプルゼロ)がこの身に巣くおうとも、この俺のエヴォリュダーの力で、限界まで抗う事は出来る筈だ。そして信じる仲間と、『勇気ある誓い』がある!だから解決方法だってきっとある!」

《……それは、ただの根性論です。》

「そうだろうな。だが馬鹿にしたものじゃないぜ?不屈の決意と気合、その時の直感をすぐに分析して魂を乗せた勇気で俺達は戦ってきた。Gストーンが俺の勇気を力に変え、みんなに勇気を与えられるなら、みんながいる事で俺は戦える。どんな相手だろうが、今までも、これからも!」

《───!!》

 

 

勇者───勇気ある者。

それが、獅子王凱。

それが、エヴォリュダー・凱。

それが、勇者王。

 

この男は知っている、勇気の意味を。

この男は諦めない、絶え間ない勇気が勝利へ導く事を。

この男は確信する、最後に勝利するのは勇気ある者だと。

 

何と眩しき事か。

凱の勇気ある言葉に、V・Cは揺らいだ。

そしてカルディナの怯える心はその言葉で鎮まった。

 

しかし、すくんだ心はまだ……

 

 

(──情けないぞ、カルディナ!!)

「れ、麗雄博士??」

 

 

そこに麗雄の叱責がカルディナに飛ぶ。

 

 

(いつまで怯えているつもりだ、それでも君はガオガイガーのパイロットのつもりか?)

「で、ですが私は、OOO(トリプルゼロ)の……世界に災いをもたらす存在──」

(──そんな事はどうでもいい!君がガオガイガーのパイロットであるなら、()がこれから問う事を言えるはずだ!凱も一緒に復唱だ!)

「え?あ、は、はい!!」

「ああ!」

(──まずGGG憲章第5条12項!)

「「GGG隊員は、いかなる危機的状況においても、常に人類の未来を考えねばならない!」」

 

 

我々が第一に考えねばならないのは、守るべき者達の事。

その命、営み、生活……GGG隊員は、人々の未来を守る事が使命なのであるッ!

 

 

(──GGG憲章第5条14項!)

「「GGG隊員は、困難な状況に陥った時、仲間同士協力し合って対処せよ!」」

 

 

ゾンダーという強敵、または超災害に至るまで、独りでは対処出来ない。

GGG隊員は、一人ひとりが仲間を信じ、共に助け合う事であらゆる困難に打ち勝てる、その力を持つのだッ!

 

 

(──GGG憲章第5条125項!!)

「「隊員は、いかに困難な状況に陥ろうとも、決して諦めてはならない!!」」

 

 

強大な存在は時に絶望をもたらす。

だが、そんな時こそGGG隊員は、心に勇気を抱き、諦めずに困難に立ち向かうのだッ!!

 

 

(──うむ、その通りだ。G()G()G()()()()()()()そうでなくてはならない……そうだろう、()()()()()()()()()?)

「……え??」

 

 

その言葉の意味するところ……GGG憲章を斉唱させ、カルディナを特別隊員と呼んだ、その意味は──

 

 

───君はすでに、GGG隊員の一員である!

───だからどんなに辛い事があろうとも決して諦めてはならない!

 

 

(……大河長官がここにいたら、きっとそう言うだろう。)

「───!!」

 

 

大河長官がいたら……

その言葉に大きな衝撃を受けるカルディナ。

 

 

「そんな……私にそんな言葉をかけて頂ける訳が……」

(かけるだろうさ。経緯はどうあれ、僕らの事を知り、君は仲間達とガオガイガーを創った。そしてそれはゾンダーという強大で困難な敵に立ち向かう事に他ならない意志の表れだ。そんな君を我々GGGの者達は、敬意を示してこう呼ぶ───勇気ある者───勇者、とな。)

(貴女がそう悲観出来るのは、まだもがく意志があるからですよ、カルディナさん。ゾンダーであれ、000(トリプルゼロ)であれ、強大な存在に立ち向かう意志が貴女には残っている。だからこそ、勇者だと言えるのです。ですが、強大な相手には独りでは勝てません。)

「だから俺達は力を合わせ、立ち向かう必要があるんだ。そして俺だから言うが、ガオガイガーで戦う者は恐れを理由に戦うことを絶対に諦めてはいけない……この意味が判るだろう?」

「……はい!」

 

 

ガオガイガーは強大な存在と戦う上で、先陣を切る存在であり、絶対な中核だ。

だからどんなに恐れを感じていようとも、そのパイロットは逃げてはならない。

その使命は悪く言えば、半ば強制であり、義務であり、逃げられない運命のようなもの。

凱はそんな自身の経験を語るようにカルディナに問う。

だがカルディナは()()()()()()()()ように、絆からゆっくり離れ、立ち上がり、左腕を胸の前にかざす。

 

 

「……そうです、これは昔から私が自ら選んだ道。たとえこの身が000(トリプルゼロ)に侵されていようとも、私の意思は変わらない───いえ、変わらせない!!」

 

 

それは、かつて子供の頃の誓い。

ゾンダーに襲われ、救出され戻ってきた翌朝。

幼き心に独りゾンダーを倒すと誓ったあの日……

 

 

───これ以上、何一つゾンダーの好きにはさせません!

 

───ゾンダーと戦うため、私はガオガイガーに乗りたい!ファイナル・フュージョンしたい!絶対に!

 

 

「───あれは、ガオガイガーを創り上げ、どんな困難が待ち受けようとも、いつか出会う仲間と乗り越えたいという意志!どんな相手だろうとも、私は絶対に負けない、と!!それは今でも変わらない!たとえ、000(トリプルゼロ)が我が身にあれども、私の勇気は何度挫けようとも立ち上がる!!それが私の『勇気ある誓い』です!!」

「良く言った、カルディナ!!」

 

 

カルディナの『勇気ある誓い』に応え、凱も左腕を胸の前にかざす。

その手の甲にはGストーンの『G』の刻印が光り輝き、それに応えるようにカルディナの左手の甲に『G』の刻印が復活を告げるように光り輝く。

 

今、2人の勇者が絶望より立ち上がった。

 

 

(それでこそ勇者だな。)

(ふふふ。)

《カルディナ……》

 

 

 

 

 

 

 

────その時、奇跡が起きた。

 

 

「───な、何だ!?」

「───これは……!」

(これはGストーン同士の共鳴か!2人のGストーンがリンクしている!しかしこの情報量とエネルギーは……!?)

《──計測不能。未知の言語化不能の情報が2人のGストーンより高速で送受信されています。同時にリンクによるGパワー上昇が止まりません。全てお嬢様に注がれています。》

(けれどGパワーが全て集束している。これは……何かを変えようとしている?)

 

 

膨大な情報と共に膨れ上がる、カルディナと凱のGパワー。

それはカルディナに全て注がれ、カルディナの身を全て包んでゆく。

そしてGパワーの光が人の形に収束し、カルディナ・ヴァン・アースガルズへと()()()してゆく───

 

 

(カルディナ君の、この反応は……まさか!)

《──照合、終了。極・類似パターンを獅子王凱様より検出。推定、AZ-MとGストーン、さらに獅子王凱様のエヴォリュダーの身体構造を参考に、カルディナ・ヴァン・アースガルズは、左腕のGストーンを媒介に()()()()()『エヴォリュダー』となりました。》

「カルディナが……エヴォリュダーに!?」

(まあ……!)

 

 

カルディナの中には、実は既にエヴォリュダーになるための因子が眠っていた。

人としての肉体の中に、機械(AZ-M)を宿したサイボーグの性質と、ゾンダーの因子を含む000(トリプルゼロ)、そしてGストーン。

そしてGパワーによる浄解が可能なクストの生体情報。

それらを後押ししたのは、Gストーン同士のリンクによってもたらされた、凱のエヴォリュダーの電界情報。

そして『勇気ある誓い』。

これらの条件が揃った今、奇跡が起きたのだった。

皆が驚く中、煌めくGパワーより解き放たれたカルディナはゆっくりと瞳を開く。

その瞳は、凱と同じく超進化人類(生機融合体)エヴォリュダーの輝きを宿す瞳だった。

 

 

「……これが、エヴォリュダー。」

 

 

今ここに、新たなる勇者(エヴォリュダー)が誕生した。

 

その名は、超進化人類(生機融合体)エヴォリュダー・カルディナ

 

自身が憧れていたエヴォリュダーに成れたカルディナは感動に胸を震わせた。

しかし……

 

 

「……せっかく凱様と同じくエヴォリュダーとなれたのは喜ばしいのですが、()()()()()()()()()。」

「足りない……だって??」

「私がエヴォリュダーになったところで、この身より000(トリプルゼロ)を廃するには……足りないのです。」

 

 

カルディナがエヴォリュダーになった事で解析、判明した事だった。

エヴォリュダーになった事で、凱同様にGパワーの浄解能力にも目覚めたカルディナ。

それと同時に凱をも超える解析能力が000(トリプルゼロ)の性質がゾンダーが発する『素粒子Z0』に非常に類似している事も感知出来るようになったが、その力は『素粒子Z0』を大きく上回る。

このままでは000(トリプルゼロ)に侵食されたGGGのメンバー、勇者ロボ達を救う事は出来ても、この000(トリプルゼロ)の浄解は、困難を極める事が予想される。

何故ならば、凱のGストーンを侵食する事で、Gパワーの浄解に対する耐性を、今まさに獲得しようとしていたからだ。

それはカルディナに封じられた000(トリプルゼロ)にも同じ事が言えた。

 

 

000(トリプルゼロ)が『素粒子Z0』と同じような性質、か……浄解で000(トリプルゼロ)から解き放たれると判ったのは僥倖だが、俺に取り付く事でGストーンの浄解能力に耐性が出来ると予想されるとなると、それは機界新種以上に厄介だ。どうしたらいいか……」

(う~む、ここまでくると護君か、戒道少年がいてくれたらなぁ……いっその事2人同時に浄解をやってもらうとか……)

(あなた、さすがにここにいない子をあてには出来ませんよ。)

(まあ、そうじゃのぉ。)

《確かにそれが出来れば、可能性が───》

 

「───それですッ!!」

 

「───な、なに!?」

「そうです!それならチャンスがありますわ!」

《突然どうしたんですか?いったい何を考えて───!?》

 

 

突然のカルディナの閃きに、苦言を言おうとしたV・Cが止まり、そしてその発光する光が明らかに動揺するように点滅する。

そして当のカルディナは先程とはうって変わり、にやりと笑う。

 

 

《……冗談、ですよね??本気で《そんな事》実行する気ですか!?》

「わかる?私を幼少から管理してくれた貴女なら、私の思考を読めるなら、解るでしょう?」

《じょ──冗談じゃない、本気ですか!?今度こそ死にますよ!?そんな命を投げうって───!》

 

───GGG隊員は、どんな時でも諦めない。それに私独りじゃ20%の可能性しかならないけど、みんなの勇気(20%)を集めれば、100%になる。

 

《───!!》

 

「……だからお願い、力を貸して。()()はV・C、貴女の力が一番不可欠なのよ。」

《~~~~!!……はあ、判りました、ご協力しましょう。》

「ありがとう、V・C。」

 

 

項垂れる様子のV・Cに礼を述べるカルディナ。

その突然のやり取りに唖然とする獅子王一家。

 

 

(すまんが、何を話していたのかな?)

(何か打開案を思い付いたような様子ですけど……)

「ああ、すみません。実は私が子供の頃、幼いながら『勇気ある誓い』を立てた時の話なのですが……」

 

 

その時の事をカルディナは簡単に話す。

そしてとある妄想を思い出していたのだが、その話を聞いた獅子王一家は……

 

 

(妄想とはいえ……いや、それを本気でやるのか?)

(───カルディナさん、考え直して。自殺する歳じゃないでしょう?)

「勇気があれば大概は出来るが……それはおそらく長官も躊躇するぞ?」

 

 

けんけんほろほろな言われようだった。

だが、カルディナは───

 

 

「だからこそのV・Cです。」

(「………」)

(確かに、実現可能だが……)

「そして今の私は、エヴォリュダーです。V・Cと共にあれば勇気ある限り不可能ではないはずです。だから───」

(……やれやれ、仕方ないのぉ。)

「父さん、いいのか?」

(現状、カルディナ君の案が一番確率の高い打開策だ。そこに至るまでの道のりは非常に厳しかろうが、さっき言っていた通り、エヴォリュダーの力とV・C、そして僕らの勇気を足せば必ず成功するはず───いや、成功させよう。それこそGGG隊員なのだからな。)

「……わかった、やろう!」

 

 

 

V・Cと獅子王一家の協力を得て、今ここに、かつてない作戦が発動されようとしていた。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

(───エネルギー生成、想定値入力終了。余剰エネルギー転換システムと接続。)

(量子仮想バイパス、ルート確保を確認。)

 

 

麗雄と絆が、V・Cが用意した量子仮想PCのキーボードに必要な数値を入力していく。

 

 

「Gパワー、エネルギーライン確認。及び、アクセス権限移譲を確認。Gバリア形成──保護完了。」

 

 

カルディナと向かい合う凱は、前に伸ばす左手をカルディナの左手に合わせ、自身のエヴォリュダー能力を用いて、Gバリアを形成、指定されたポイントに局所展開する。

 

 

《精製プログラム、コンバート。エネルギー圧上昇───安定を確認。全準備終了……お嬢様。》

 

 

プログラム、及びエネルギーラインの統括を行うV・Cは用意した全てのプログラムをチェック、エネルギーラインのコントロールに万全に臨む準備をする。

そして準備は全て整ったところで、カルディナを呼ぶ。

 

 

「……ええ。それでは精製……開始っ!!!」

 

 

凄まじいエネルギーを()()()()()()()()()()カルディナ。

始まったカルディナの打開策の内容、それは『Jジュエルの精製』である。

 

Gパワーによる浄解が困難な現状を打開するため、新たにJパワーの浄解の力を新たに加えるため、Jジュエルを精製するというカルディナからの発案であった。

媒介はカルディナの真っ二つに割れたGストーンの片割れであり、それをJジュエルとする。

そしてGストーンとJジュエルの共鳴するエネルギーと、GとJ、二つの浄解の力を一同に合わせ、圧倒的な浄解の力を以って根付くOOO(トリプルゼロ)を消し去ろうというのが、カルディナの打開策である。

 

だが、これにはいくつかの危険が伴うのも事実。

 

一つ目がJジュエルの精製。

実はカインとアベルに出会った際に行ったGストーンの精製、その後にJジュエルの精製もアベルの監督の下、行っていた。しかし、Jジュエルの精製はGストーンよりも難しく、その時のカルディナは断念する他なかった。

その後も対ゾンダーを想定し、Gストーン精製のみ行っていたが、一番の原因は設備・環境不足。

Jジュエルの精製はその時のアベルですら環境が整っていなかったため出来ずにいた。特にGストーンを変異させるエネルギー制御が格段に難しく、その制御を可能とするシステムがどうしても用意出来なかった。

だがV・Cという、エネルギー制御に長けた存在が現れた事で、そしてカルディナがエヴォリュダーになった事でそれが可能となった。

 

二つ目が、誤精製。

カルディナの触媒結晶が度重なるGストーン精製により、予期せずGストーンに変化してしまった事から、体内で密接状態にあるGストーンの片割れを狙ってJジュエルにするにはどうしても片割れを保護する必要がある。

しかし、極限状態が予想される精製の最中、そこまで意識とエネルギーコントロールを割く事は難しい。

そこで凱にエヴォリュダー能力を用いて、カルディナが体内に展開したGバリアの維持を補佐してもらう事に。

両者がエヴォリュダーである事で、アクセス権限を一部委譲出来る事で可能となった事であった。

凱が左手を用いているのは、バリアが球状形状とはいえ、プロテクト・シェードを意識しているからだ。

 

三つ目が精製時の負荷。

精製する事でGストーンがJジュエルへと変化する───それは共鳴し合うエネルギーが精製が進む度に増大するという事。

完成品であれば負荷はない(本人談)が、精製中であれ、共鳴反応によるエネルギーの負荷は計り知れない。

麗雄博士がシミュレーションで見た失敗時の数値と熱量は───

 

 

(……100分の1程度だが、軽い超新星爆発に匹敵する数値じゃな。)

 

 

エネルギー制御に失敗すれば、カルディナは間違いなく死ぬ……というより、全員欠片も残さず消滅するだろう。

故にV・Cは何重にも安全対策を施し、麗雄と絆にマニュアルによるモニタリングと緊急用のエネルギー制御端末を割り振っている。

いざとなれば余剰エネルギーは、オレンジサイトに放逐するつもりだ。

 

そして最後は『未知数』。

精製に成功したとしても、人体内での精製は前代未聞。そしてカルディナ自身の持つ様々な要素が何をしでかすか解らない。

科学、魔法、000(トリプルゼロ)、Gストーン、浄解の力とその情報、そしてアースガルズ家故の、数多の遺伝子という最大の未知。

 

だが、カルディナは危険を承知でも、勝利を掴むため歩みを止めない。

V・Cはあまねく危険を振り払おうと、諦めない。

凱は勇気を胸に、揺るがない。

麗雄と絆は勇敢に立ち向かう子供達を支えるため、臆さない。

 

今、諦めてしまえば全てが終わる。

ここにいる誰もが今、迫り来る危機に立ち向かう勇気ある者──『勇者』であるッ!

 

 

 

「──オオオオォォォーーーー!!!」

 

「───ぐッ!!凄まじい負荷だ!V・C、精製の進捗率は!?」

《現在……28、29、30%を経過。残り70%。》

(まだ、序の口という事か……!)

(仮想バイパス、32から48、消耗!V・Cさん、予備ルートに切り替えます!)

《了解しました。予備ルート解放──圧、更に増大!?進捗率、78%!急速に上がります!》

(いかん、Jジュエルが顕現するにつれて、共鳴反応も強くなっている!凱、大丈夫か?!)

「ああ!しかしこの反応はGストーンやJジュエルだけじゃない!カルディナ、大丈夫か!?」

「…………」

 

 

凱の声が響くが、カルディナは応えない。

精製が進むにしたがって、反応は増大していくが、カルディナは逆にそよ風を受けるように誰よりも余裕があった。

 

 

「……Jジュエル、私は貴方の主よ。そして元は私の一部。そしてGストーン、思いもよらずに生み出しちゃったけど……私は望んで貴方が必要なの……だから!」

 

 

凱のGストーンの輝き、そして力は優しく、そして反発する事なく力強い。

けれどカルディナのGストーンはまるで宿主を嫌うように反発していたが、今は同じく優しく、そして力強い力を発する───何故か?

 

Gストーン───Gクリスタルには三重連太陽系の意志が、人々の魂(電界情報)が封じられている。

人々の生きる意志───勇気が後押しするその力は限り無いGパワー(勇気)を生むのだ。

 

だがカルディナの生み出したGストーンにはそれがない、人々の魂(電界情報)が封じてない───いや、(触媒結晶)から生み出されたばかりのGストーンには元からないのだ。

つまり、あると思われた力の方向性がなかった故に、カルディナは荒れ狂うGパワーに傷付いてしまった。

 

 

(勇気とは、そもそも恐怖や苦しみ、悲しみといった負の感情より抗う為の感情。私はそれを真に理解していなかった……さしずめ、蛮勇で生み出された『破壊の地獄』で傷付けられたようなもの。)

 

抗う為だけの荒々しい力が欲しい訳じゃない。

そう願う時、カルディナの『脳内書庫(B・ライブラリ)』に記された、これまでカルディナが出会い、支えられてきた人々の魂(電界情報)がGストーンに、そして精製中のJジュエルに刻まれる。

そしてカルディナの中の『未知数』が、そして魔法の力がその願いに応え、『革命』を起こす───

 

 

「───そう、私は独りじゃない、()()は……」

 

 

 

──1つだッ!!!

 

 

《───98、99、精製100%!!》

「カルディナ!!」

(これは、生み出された全てのエネルギーが……!?)

(1つになる……!)

 

 

精製率が100%となった時、解き放たれたように、()へと飛び上がった──

 

 

 

───眩い光 GとJ

 

───平和の願い 照らすため

 

───今こそ、復活だ!

 

 

 

GとJ、共鳴するエネルギーの総量は銀の輝き(シルバリオン)を超え、カルディナは真に白く輝いた。

更に、()()()()()()()が白と黒の4対の翼を形成し、カルディナの背に顕現する。

翼が纏うエネルギーは000(トリプルゼロ)の『暁』とは違う、燃え上がる『フレア』のように赤熱化、もしくは白光化した。

カルディナの特徴でもある長い白髪も000(トリプルゼロ)の『暁』ではなく、白熱化したような焔の色へと変わり、100,000ルクスを超える圧倒的な光量が翼より発せられ、背中より見える後光(光のリング)は、オレンジサイトの昏い暁の空を眩い光で白く染めて行く!!

 

そして、その姿は何とも神々しく、その姿はまるで───

 

 

《……太陽。》

(太陽を背にする、熾天使ね。)

(もしくは、太陽そのものか。)

「……もしかすると、俺達はとんでもない瞬間に立ち会ったのかもしれない。」

 

 

白く輝く身体中に走る翡翠(Gファイバー)の光は紛れもなくエヴォリュダー。

だがそれと同じぐらいに紅玉(Jファイバー)の光が呼応するように身体中に走る。

それは、カルディナの最奥に000(トリプルゼロ)を封じたソムニウム(ベターマン)の因子が目覚め、カルディナの魔法使い(感応性量子力法則術者)の資質が、『勇気ある誓い』と共に『1つ』となり、肉体と生命の限界を超えた、奇跡の光景──

 

 

(その存在は、まさに『太極』。そして内包したあらゆる因子が循環、還元し、変革と超越を繰り返す──『Re』。あれはもうエヴォリュダー(進化者)とは言えん。)

(『進化(Evolution)』を超えて『変革』、『革命(Revolution)』を表す存在──)

「太極の循環と還元の特性を持ったエヴォリュダー……『リ・エヴォリュダー(Re:Evoluder)』──いや、あれは───」

 

 

───それは、ありとあらゆる対極の特性を併せ持った奇跡の存在。

 

GストーンとJジュエル。

科学と魔法。

有機生命と無機生命。

天使と悪魔。

人間とベターマン。

プラスとマイナス。

陰と陽───

 

──人の進化を超え、変革と超越を併せ持つ、超人類が今ここに誕生した。

 

その名は、超進化革命人類:レヴォリュダー・カルディナ

 

 

「……では参りましょうか。」

 

 

──サンクトゥス

 

 

白く輝く空で、カルディナは両腕を広げ、詠唱を始める。

右手にJパワー、左手にGパワーを。

それは『ヘルアンドヘヴン』のような、相反する対極する2つの力を合わせる儀式──

そしてその詠唱は、カインとアベルに初めて出会った、毒素に侵された集落で唱えた浄化魔法の言葉──

 

 

──レッフェルト

 

──テストル

 

──ルルーウス

 

──ヒーク レリヴィーム

 

 

目の前で合わせたGとJの力を高く掲げる。

それは『浄解』へと進化、変革し、オレンジサイトを優しく揺蕩う波紋のように、かつ広く照らす!!

波紋に触れた000(トリプルゼロ)は、まるで熱した鉄に触れた水飛沫が蒸発するが如く霧散する。

その光景をV・Cは何1つ見逃さず、事細かく観測する。

 

 

《……状況観測、経過終了。この地点の周辺半径約10㎞の000(トリプルゼロ)の反応の消滅を確認しました。》

「な……何だって!?」

(確かに……オレンジの景色がこの周辺だけ薄まっているわ。)

(消滅とな……原初の物質ともいえる000(トリプルゼロ)を……何という事だ。)

「───ふぅ……初めて浄解をしましたが、感覚は浄化魔法に近いですね。」

(お帰りなさい、カルディナ。)

「はい、ただいま戻りました。」

 

 

オレンジサイトの空より舞い戻ったカルディナ。

000(トリプルゼロ)を広域浄解したにも関わらず、その白く輝く『浄解モード』はそのままに、カルディナの力は衰えていない。

 

 

「余剰エネルギーを解放がてら浄解を試みたのですが……博士、小手調べはこれで宜しいでしょうか?」

(小手調べの領域を超えてはいるが……まあ、いいんじゃないかな?)

「判りました。では……本番と参りましょう、凱様。」

「……わかった、頼む。」

 

 

これまではあくまでも小手調べ(テスト)

本命は、凱とカルディナに巣くう000(トリプルゼロ)の浄解である。

凱と向き合ったカルディナは、再び両手を広げ、構える。

 

 

「───行きますわ。」

 

 

──サンクトゥス

 

──レッフェルト

 

──テストル

 

──ルルーウス

 

──ヒーク レリヴィーム

 

 

温かく、揺蕩う波紋が凱を包む。

凱には何のダメージはなく、確実に000(トリプルゼロ)を浄解してゆく───しかし!

 

 

(──Gストーン内部に染み込んだ000(トリプルゼロ)に、浄解の光が届かない!)

 

 

凱の身体の隅々に浄解は行き届いていた。

しかし、既にGストーン内部へと染み込んしまい、変質してしまった。これでは浄解が000(トリプルゼロ)には届かない。

Gストーンを盾に、000(トリプルゼロ)は浄解効力をシャットアウトしていたのだった。

何ともしつこい000(トリプルゼロ)だ。

 

 

(……けれど、それは予測済み。今の私はエヴォリュダーであり、ソムニウム(ベターマン)であり、魔法使いでもある。(こじ)れた000(呪い)のごとき、()()()()───!!)

 

 

カルディナはすぐに思考と浄解の力の解放の()()を変える。

 

 

「──凱様!今から行う事に、()()()()()()()()()()()()()()()()

「───!?わかった。」

「ありがとうございます───では!!」

 

 

───ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ(2つの力を1つに)

 

「──はァァあああッ!!」

「ぐはッ!!」

 

 

カルディナが放ったのは破壊と防御のパワー(相反する力)を拳に集束し、相手に突撃する『ヘルアンドヘヴン』。

しかし、カルディナがここで合わせたのは、GとJの浄解の力と、ソムニウム(ベターマン)の力。

凱を救うため、本能的に繰り出したのだった。

 

合わせた拳は優しく凱の胸に、しかしGとJの力が浸透圧で入り込む水分と塩分の如く、凱の身体中のGストーンに入り込み、潜む000(トリプルゼロ)を強制的に活性化させつつ追い出してしまう(デトックスする)

そこで凱は膨大なエネルギーの奔流のショックで一時的に心臓が止まり、仮死状態になってしまうが、カルディナの施術はまだ終らない。

追い出された変質したGストーンと000(トリプルゼロ)ソムニウム(ベターマン)の力で一片も残さず集められて結晶化、凱の顔に神秘的で異形の一輪の花を咲かせた。

 

 

───『アニムスの花』である。

 

 

……花は枯れ、そして瞬く間にとある実となった。

その実をカルディナは左手で優しく包み、取り上げると、右手で印を結び、手のひらを凱に向ける。

 

 

「──ウィィィーータッ(響け、生命の鼓動)!!!」

「────!!」

 

 

GとJの(勇気)の力は再び凱の身体を駆け巡り、凱は目を醒ます。

それは、勇者に再び『生』をもたらす行為。

『言葉』を『願い』と『力』とし、『生命(ウィータ)』の言葉を己が望む『結果』へと導く魔法使いの力───

 

 

「……カルディナ、どうやら上手くいったんだな。」

「はい。000(トリプルゼロ)、確かに凱様より取り除きましたわ。」

 

 

浄解を終え、光に包まれるカルディナの笑みは天使の抱擁にも思える程、慈愛に溢れていた。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

(……行ってしまったな。)

「そうだな。」

(少し寂しいですね。)

 

 

凱より000(トリプルゼロ)を取り除いたカルディナは、V・Cと共にオレンジサイトを去った。

カルディナがオレンジサイトに引っ張られてきた()をV・Cが辿り、そして還った軌跡の光が消えて行くのを獅子王一家は見送っていた。

 

 

(しかしながら……何とも騒がしかったな。)

「ああ。あの後、まさかカルディナ相手に生身でヘルアンドヘヴンをするとは思わなかったよ。」

(といっても、本人は楽しそうでしたけど。)

「……やる身にもなってくれよ、母さん。」

 

 

非常に物騒な話だ。

というのも、凱という浄解成功例をして「今度は私も!」という欲望がカルディナに芽生えてしまい───

 

 

「凱様!出力調整はしますので、今度は私に浄解とヘルアンドヘヴンをっ!!」

「いや!絶対にそれはマズイだろう!!」

(カルディナさん、今度こそ自殺ですよ!?)

(いや、凱にやらせるんだから他殺……いやもう訳がわからん……というか止めんか!!)

 

 

嬉々として「Let's Camon!」と云わんばかりに大の字で構えるカルディナへ、獅子王一家に総ツッコミを入れられ、V・Cにもディスられた。

 

慈愛はどこいった。

 

ちなみにV・Cの診断で、もはや必要がないと判断された。

何故なら、カルディナの000(トリプルゼロ)は一番最初の000(トリプルゼロ)浄解の時点で、魂に纏わり付くものは全て浄解されてしまったからだ。

故に差し迫った危機はなくなっていたのだった。

 

……だが、それでも「一回だけ!ワンチャンス、ワンチャン~~!!」と泣き付かれたので、やむ無く凱はヘルアンドヘヴン・ウィータをカルディナにプレゼント(お見舞い)したが、「つ、ついにやりましたわ……グフォ!」と気持ち悪く笑っていたのはドン引きである。

 

 

《ただ、浄解しきれなかったものがありました。》

「浄解しきれないもの??」

 

 

気持ち悪く笑うカルディナを放置しつつ、V・Cは凱に告げた。

それはカルディナの体内に残留するミクロサイズのオレンジ色の物質。

そして類似反応で、獅子王夫妻よりそれは検出されていた。

 

 

《照合率:99.8%の確率で、『ザ・パワー』と断定します。

(ザ・パワー、とな!?)

(まあ……!)

《そしてその『ザ・パワー』は凱様からも検出されています。》

「何だって!?」

「……やはりですか。」

 

 

『ザ・パワー』は元は000(トリプルゼロ)だったもの。

しかし、木星に存在した『ザ・パワー』と000(トリプルゼロ)とでは性質が微妙に違い、000(トリプルゼロ)のような他者の倫理を『覇界の意志』へと書き換えるような力は、ない。

それでも秘めたパワーは『滅びの力』と揶揄される程に凶悪だ。

GとJの浄解を果たした今、それが2人の体内に宿っていたのだった。

 

特に浄解しきれない()()は球状の結晶体となり、カルディナのGストーンとJジュエルに囲まれるように一体化した。

おそらく、それが当初憑いていた000(トリプルゼロ)の元、だったのだろう。

000(トリプルゼロ)由来の球状の結晶体というところより、ZEROオーブ……『Zオーブ』と名付けられた。

また、カルディナ程ではないが凱にも小さな『Zオーブ』が心臓の上に、Gストーンと重なるように宿っていた。

 

 

「けどこの感覚は……完全に制御出来る。」

「……はい、特に暴れる事もなく、完全にエヴォリュダー能力の制御下にありますわ。」

 

 

これこそがカルディナがレヴォリュダーになった最大の要因であった。

そして凱もまた、この『ザ・パワー』の影響と、カルディナとのJジュエル精製の余波、カルディナとのGストーンリンクによるアップデートにより、自身のエヴォリュダーの能力が格段に上がり、新たなる進化を遂げた。

 

 

生機融合という人類の進化(エヴォリュダー)を超え、新たなる進化(ネオ・エヴォリューション)を果たした新・超進化人類。

 

新たな勇者の名は、ネオ・エヴォリュダー・凱

 

 

生機融合の身体はAZ-Mで最適化され、Gストーン抜きでもGパワーと浄解能力を発揮出来る身体───天海護とほぼ同質の体組織となった。

それでもZオーブと共に、Gストーンが重なり合うように体内に存在している。

エヴォリュダー能力で自在に操れる『ザ・パワー』で、Gクリスタル並みのGパワーの上限解放が成された事、Gパワーと合わさった事で新たに『ジェネシック・オーラ』が顕現した事。

更にエヴォリュダーの時以上の電位体に対する電脳アクセス、及び制御が可能となり、Gストーン同士のリンクより、カルディナの能力の下位再現も可能となった。

そしてソムニウム(ベターマン)の因子の限定再現───

 

 

《──その影響でしょうか、ご自身限定ですが、身体の環境情報の自己最適化が出来ますね。》

「自己最適化?」

《ご自身の身体──特にDNA等を()()()()()()()()()()()が出来ます。》

「───!?」

 

 

V・Cの言葉に衝撃が走った。

 

獅子王凱にはとある悩みがあった。

それは彼の持つ遺伝子情報は優性形質───例外なく授かる子供がエヴォリュダーになってしまうという事実である。

また、彼の伴侶はセミ・エヴォリュダーである卯都木命。これは否応なしにGストーンとゾンダーメタルの因子が一緒になるという未知数の現象を引き起こしてしまうため、凱は三重連太陽系に出発する前に検査結果を知らされた時、2つの問題により、子を成す事を諦めていた。

だが、遺伝子情報の組み換え(デザイン・チャイルド)ならば話は変わる。

さすがにカルディナ程の能力は発揮出来ないだろう(カルディナにも遺伝子情報の最適化能力があり、そこまで行くと生命創造の領域である)が、平々凡々で元気な子であれば容易い、と演算領域の算出で実感出来た。

 

これがエヴォリュダーの時と同様に『神様からの贈り物』なのか、もしくは更に危険な領域を孕んでいるのかは解らない。

判っているのは、この力がこれから始まろうとする戦いに必要不可欠なるという実感。

そしてハッキリしているのは、凱の憂いの1つが消えた事実。

次元の最果てで、まさか自身の憂いを『破壊』されるとは思いもしなかった。

 

 

「……カルディナには感謝、だな。」

(そうね。あの子からは色々受け取ったから、大切にしないと。)

(……しかしこれからが大変だぞ。)

「ああ。」

 

 

麗雄の言葉に同意する凱は空を見上げる。

視線の先にはオレンジサイトの(くら)い空に浮かぶのは000(トリプルゼロ)に侵食されたジェネシック・ガオガイガーの姿が。

カルディナの浄解の光の中であっても、ジェネシックのその身に憑く000(トリプルゼロ)は消え去る事はなかった。

ジェネシックはあの浄解を耐え抜いた───否

 

 

(浄解の寸前に、空間転移したとは……V・Cのセンサーが示さねば解らんかったよ。)

「あの時、空間は全て静止していた。それでも尚、ジェネシックは動き、ギャレオリア・ロードを無理矢理起動させ、僅かな時間の間、別のES空間に逃げ込んだ。」

(一連の000(トリプルゼロ)に関する出来事は全て()()()()と思っていましたが、わざわざここに戻って来た事を考えると……カルディナちゃんの推論の通り、なのでしょうね。)

(……『意志ある者』の介入、そう考えるのが自然だろうな。カルディナをオレンジサイトに呼び寄せた事を含めて。)

「オレンジサイトを静止させたカルディナと、それを跳ね除けてジェネシックを動かした『意志ある者』……か。」

 

 

何者かの介入───それを確かめたい獅子王一家であるが、その時間はもうない。

何故なら、ジェネシックはもうすぐ両手にかかえる()()の準備が終わろうとしていた。

膨大なエネルギーが道を拓こうとするのと同時に、オレンジサイトの静止させたエネルギーも動き始めた。

 

 

(ぬ!?オレンジサイトと、ジェネシックが動き出したぞ。そしてこの気配は……どうやらジェネシックの開こうとするゲートの先では戦闘が始まっているやもしれん。だが……『希望』はまだあるぞ、凱!)

「ああ、わかった!父さん、母さん。ここでお別れだ。だけど……!」

(わかっています。カルディナちゃんも言っていましたが、私達は再び会う時が来るでしょう。)

(うむ。そして今までにない、予測を超えた『何か』が起きよう。だが、そのためにこの僅かな時間の間に準備をしたのだ。きっと無駄にはならん。今は道は(たが)えども、必ず会う日が来る。そして凱、今がお前の『勇気の時』だ!)

「ありがとう。俺は先に行く……あの先にいる仲間達の為にも。そして頼りになるが人の事を心配し過ぎて無茶をする『可愛い妹』のためにも───!」

 

 

そして空間の歪みより外に飛び出し、ジェネシックの拓く道へ、凱は誰よりも先に飛び出た。

ネオ・エヴォリュダーの力が、自在に宙を駆ける力を凱に与え、一筋の光となって駆けて行く。

 

 

───希望はまだあるぞ、シゲル。

 

───手土産を届けてやってくれ。

 

───勝利の鍵を『息子()』のもとへ

 

 

麗雄博士は次元ゲートの先にいるであろう、感じ取った仲間達の気配と、凱へ『希望』を託すため、リミピッド・チャンネルによるメッセージを送った。

届いたか?いや、届いただろう。

きっと、彼等が何とかしてくれるだろう。

そう信じて……

 

 

(……さて母さん、すまんが一緒に付いて来てくれんか?)

(もちろんです。また再び貴方と旅に……冒険に出られるなんて夢にも思いませんでしたから。)

(ありがとう。危険な旅になりそうだが、頼りにしているよ。)

(はい。逞しく育った息子と、新たに出来た娘の為にも……)

 

 

互いに微笑む2人。その2人の姿は『ザ・パワー』により生前の姿を現していた状態から、装飾を施したGストーンへと姿を変え、これもまた、2筋の光の尾を引きながら並んで駆け、姿を消した。

 

新たな使命を胸に、獅子王一家はそれぞれの路を往くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

次元ゲートを光の速度で駆け抜ける凱。

ネオ・エヴォリュダーの力は凱の予想を超えた力を与えていた。

しかしその事にいつまでも驚く凱ではなかった。

 

 

「少なくとも、ジェネシックより早く出なければ……!」

 

 

000(トリプルゼロ)に侵食されたジェネシックを出す訳にはいかないが、力ずくが通じる相手ではない。

ならばやる事は───

 

 

「……開いてしまった次元ゲートを閉じるしかない!」

 

 

そのためには『力』が必要だ。

ネオ・エヴォリュダーとて単独ではやれる事は限られる。

 

 

「何か、何か手は───あれはッ!?」

 

 

その時、凱の視界に飛び込んで来たものがあった。

それを視た凱の心には、溢れんばかりの喜びと、己を奮い立たせる勇気が漲ってきた。

 

 

「……ああ。信じてたぜ、みんな!この刻を!!」

 

 

それは圧倒的な終焉が溢れ出る中、それに抗う者達が撃ち出した、一筋の希望の光───

 

その願いに、そして想いに応えるように───

 

我々の誰もが懐かしく、我々の誰もが忘れる事のない、我々の誰もが待ち望んだ勇者の声が今、この宇宙に響き渡った!

 

 

 

 

───勇気を!!

 

───この勇気の刻が来る事を

 

───信じていたぜ!!

 

 

 

──フューーージョンッ!!!

 

 

「ガオファーッ!!!」

 

 

XF-111───プロトタイプ・ファントムガオーとフュージョンした勇者は再び、己が宇宙へと降り立つ。

宇宙消滅を防ぐため、そして仲間達を000(トリプルゼロ)より救うため……

 

 

獅子王凱、ここに帰還。

 

 

 

 

 

 

………そしてカルディナも───

 

 

 

 

《NEXT》

 

 

 

 

 


 

 

 

──現在、公開出来る情報──

 

 

◯超進化人類:エヴォリュダー・カルディナ

 

カルディナが全身にばら蒔かれたGストーンと保有していたGストーン、AZ-Mを媒介に『勇気ある誓い』によりエヴォリュダーとなった。

凱とは違うが、謀らずともカルディナにはエヴォリュダー化する因子(Gストーン、AZ-M、000(トリプルゼロ)、浄解能力のデータ)が揃っていた事により、共鳴現象が起こった事で存在が引き上げられ、浄解能力すら発現した。

だが、これでも足りないというのがお嬢様の我が儘。

それが次の項。

 

 

◯超進化革命人類:レヴォリュダー・カルディナ

 

レヴォリュダー(Re:Evoluder)の名が示す通り、エヴォリュダーの変化体。

Reは『今まで蓄積されていた力で再誕(Reverse)した』の意。もしくは力の再利用(Recycle)等を意味する『Re』の頭文字より。

カルディナが今まで内包したあらゆる因子を『ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ』の呪文により循環、還元し、変革と超越を繰り返す事でその力を高めている。

特にエヴォリュダー、ベターマン、魔法使い、ザ・パワーの因子を保有している事が最大の特性と言える。

・エヴォリュダーの体にAZ-Mが組み込まれた事で生機融合が進み、全身が量子コンピュータ化。

・魔法も変わらず行使出来、魔力(マナ)によるブーストが可能。

・Gストーン、Jジュエル、Zオーブ(ザ・パワー)の組み合わせが、浄解能力を格段に引き上げ、更にパワーアップも遂げた。

・上項をソムニウムの力で最適化(ベター)にする。

以上の事より大幅なパワーアップを果たしたが、そのパワー故に搭乗する機体にも容易に干渉出来るが、ほぼ間違いなく機体の方が耐えきれずゼロに還る可能性が高くなった。

また、『元始積層情報体(アカシック・レコード)』やV・Cとのリンクは健在で、それらをフルに使っての能力行使は、もはや『未知数』の領域なので、解説は控えさせて頂く。

 

 

◯新・超進化人類:ネオ・エヴォリュダー・凱

 

獅子王凱がエヴォリュダーの次の段階へと進化した進化体。カルディナがレヴォリュダーに成った際に、存在を引き上げられた。

カルディナの変化に巻き添え喰らったとか言わない

Gストーン抜きでもGパワーと浄解能力を発揮出来る身体──天海護とほぼ同質──の体組織となった。ただ体質が変わっただけで、遺伝子レベルでは当然ながら別人。生機融合の身体はAZ-Mで最適化されており、結果として護がエヴォリュダーになったのと同じの体組織となった。

エヴォリュダー能力で自在に操れる『ザ・パワー』(完全隠蔽も可能)で、Gクリスタル並みのGパワーの上限解放が成された事、Gパワーと合わさった事で新たに『ジェネシック・オーラ』が顕現した等、存在がプチ・ジェネシック化している

ブロウクン・マグナムは撃てません

更にエヴォリュダーの時以上の電位体に対する電脳アクセス、及び制御が可能となり、Gストーン同士のリンクより、カルディナの能力の下位再現も可能となった。

そしてソムニウム(ベターマン)の因子の限定再現等……獲得した能力は多々あり更に超人になったが体質、性質には生物(人間)に近くなったという珍しい例。

また自身限定で遺伝子操作が可能で、自身の能力封印や、精子にデザインチャイルド操作も可能。

 

 

◯アニムスの花───より採れた実

 

覇界王本編でソムニウム達が動く最大の理由。

今回採れた実は、それと同じもの。

お嬢様の今回最大のやらかしであり、この実が今作で使用される事は決して、ない。

そしてフラグブレイクの証。

『──破壊する、破壊する、(フラグを)破壊する!!(ケミカルボルト風味)』

 

 

◯いくつかのお願い(1)

 

獅子王一家が凱の憂いを解消した事に、何かお礼をと言われ、カルディナがしたいくつかの頼み事。

その内の一つが、もじもじしながら凱の事を「……お義兄様と呼んでもいいでしょうか?」とお願いし、目を点にした凱が両親に目で確認すると((いっそ家族に!!))とサムズアップで承認された件。

 

凱に『勇気ある誓い』で結ばれた義妹が出来た。

夫妻にひたすら可愛い義娘が出来た。

カルディナには異世界で家族が出来た。

 

カルディナ・V(ヴァン)S(獅子王)・アースガルズ

 

そんな事があった。

 

 

 

 

 







……お嬢様のファイナル・フュージョンまで筆が進まなかった、というよりも文章が長くなりすぎて気持のいい長さで収めることが出来なかったのが原因。
例の如く、元の文章の片割れでお送りします。
最後はごまかしで凱さん帰還で締めました。
あんまり間を空けないよう気を付けます。
あと、お嬢様と凱さんの設定、相当盛り込んでしまったのは果たして良かったのか悪かったのか……
物語のフラグブレイクを果たしたことで、話の方向性が相当ねじれてしまった。(それでもラストは決めている。)
思い返すと、ベターマン設定を母方にぶち込んだのがそもそもの原因。
だが後悔はない。

という訳で次回こそ、本当にファイナル・フュージョン回です。
ご感想、ご意見お待ちしています。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。