公爵令嬢は、ファイナル・フュージョンしたい。   作:和鷹聖

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熱い感想、心震える評価、ありがとうございます!
そして感想の嵐に一週間ほど悶えていました。

でも恐れるな、迷うな!
今はただこの時のために!

さあ、マギウス・ガオガイガー、いくぞー!!


Number.16 ~これが私のガオガイガー~

「じっくりご照覧あれ……これが、私のガオガイガーだァァーー!!!」

 

 

カルディナの熱き叫びが戦場に木霊する──

 

それが戦いの合図であった。

高度から叩き落とされたゾンダーであったが、その声に反応するように、相貌を妖しく光らせ、満身創痍の駆体を無理矢理立ち上がせる。そして瞬く間に全身の修復を始めた。

周辺の空気がゾンダーに吸い込まれるように動き、ひび割れた装甲と、カルディナを穿った細剣は、まるで何も損傷が無かったかのように整えられてゆく。

その一部始終をマギウス・ガオガイガーはあえて傍観しながら地上へと着地した。

 

 

《敵ゾンダー、3.62秒で再生終了。敵ながら再生能力は優秀ですね。》

「そうね。けど───!」

「ゾン、ダァァーーー!!!」

 

 

そして着地寸前を狙って、ゾンダーは激しい憎しみをぶつけるようにマギウスへ猪突猛進する。

そしてマギウス───カルディナはゾンダー対して真っ向からぶつかるのであった。

 

 

「ゾンダァァーーー!!」

「ハァァアアアァァーーー!!!」

 

 

接敵する刹那、両者は拳を振るう。

左で襲い掛かるゾンダーに対し、右で応戦するマギウス。

両者の拳が合わさった瞬間、その衝撃波は周囲を激しく揺らした。

 

そして勝ったのは───マギウス。

 

ゾンダーの拳の表面には無数のヒビが。

だが、それはゾンダーにとっては囮。

本命は右の細剣で、真っ向から放たれた細剣の高速の突きを放つ。狙いは再び胸のギャレオン。

しかしマギウスはそれを見切り、左掌の第二、三指で挟み込み、そのまま刃を()()()()()()()

その行為は流石に予測外だったのか、一瞬躊躇する様子を見せたゾンダーに、マギウスは瞬間的に姿勢を屈めた。

そのあまりに速い動きに、ゾンダーには一時だが消え失せたように見え、その姿勢からマギウスは低姿勢からの下段蹴りでゾンダーの脚を狩り、体勢を崩した。

 

 

「──ゾ……!?」

「ドリル・ニーッ!!」

 

 

姿勢を崩したゾンダーを迎え入れる形で、右膝の破砕仕様のドリル・ニーを頭部に叩き込む。

触れたモノを有無を云わさずに砕くドリル・ニーはゾンダーの頭部を完膚なきまでに砕き、受けたカウンターで反り返る頭なしの駆体を回転蹴りで蹴り飛ばすマギウス。

飛ばされ、地に伏すゾンダーだが、即座に再生を開始───した瞬間───

 

 

「───ブロウクン・マグナムッ!!」

 

 

マギウスが飛び掛かると同時にブロウクン・マグナムで追い討ち。

土手っ腹に風穴が空き、その衝撃で地面が爆砕。

それでも再生を忘れないのはゾンダー故か、ブロウクンアームがマギウスに戻る頃には、損傷が回復し、そのギラギラした相貌をマギウスに向ける。

周囲の気流が更にゾンダー中心に渦巻くような流れを作り、ゾンダーメタルが妖しく光る中、ゾンダーはギラギラした相貌を光らせ、再びマギウスに向け細剣を振るう。

今度は巧みに振るい、フェイントを掴ませまいとする剣さばきに動きがシフト。鞭のように、そして乱舞する細剣がマギウスを襲うが、対するマギウスはプロテクトアーム……ではなく、左手の指先でそれらを捌き切ってゆく。

Gバリアの集束展開でZパワーを纏う細剣の力を片手の指先で相殺、封殺する一連の動作は何もかもを余裕で見切っているようにも見え、それがゾンダーに更なる苛立ちを呼び起こし、細剣を大きく振りかぶったが、防御に徹していたマギウスが一転して大地を踏み抜くような踏み込みで放った右拳で下腹部を砕き、マギウスはゾンダーを再び地に沈めるのだった。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「……圧倒的じゃねぇか。」

 

 

終始ゾンダーに対して圧倒的なマギウス・ガオガイガーに、オルガはポツリと呟く。

彼がそう例えるのも無理はない。

 

目の前で行われている巨大な創造物の戦闘を彼は見た事は───いや、この場にいる誰もが見た事はない。

 

 

《たかが10m程度違えど、ありゃ……》

《……でかい、速い、そして、強い。》

 

 

ランドマン・ロディに搭乗する三日月、昭弘が云う台詞こそ、この場にいる鉄華団の気持ちを雄弁に語っている。

モビルスーツを超え、更に巨大でありながら阿頼耶識搭載型と同等以上の機体反応と速度、自分達を超える圧倒的な戦闘技術。

そして「勝利」と「絶対生存」に対する執念。

 

 

「あれが、お嬢の力……」

「カルディナ・ヴァン・アースガルズの名は、伊達じゃないという事か。」

 

 

オルガ達、鉄華団も戦闘訓練こそ欠かさなかったものの、いざ明確な格上たるカルディナの本気の戦闘を目の当たりにすると、次元が違う事を思い知らされた。

 

───誰も死なせない。

───何も失わせない。

───絶対に、勝つ。

 

カルディナ・ヴァン・アースガルズとは、そういうところは非常に()()()である。

 

揺るがない、絶対勝利への渇望。

圧倒的な暴力と困難に立ち向かう完全勝利への執念。

無茶、無謀と(はばか)れる事柄に、真正面から打ち砕くように立ち向かう意志。

 

我が儘故に、絶対に押し通す。

 

その果てなき欲望(希望)と、大切なものを奪わせない意地()、恐れを乗り越える強靭な意志(勇気)が形となったのが、マギウス・ガオガイガーである。

 

 

「凄い……でもカルディナも最初からアレを造れば、苦戦せずに済んだんじゃ───」

「───いや、それは無理だ。」

「……父上??」

 

 

感心するアシュレーだが、その言葉を父上であるレクシーズは冷静に否定する。

 

 

「あれはあの娘の……カルディナの決意の形だ。しかも決死の、な。しかもアレは今ある技術を集結したところで、まず造れるものではない。おそらく()()()()()()()()()だろう。」

「偶発的に、ですか……??」

「ああ。カルディナにとっては、今あってはならない代物……本人の意志とは関係なく、そうしなければならなかった理由が起きてしまった、その結果であろう。」

「そんな、カルディナ……」

 

 

勇猛果敢に攻め入るマギウス。

しかし父上の言葉に、その内に秘めた内情は計り知れないものがありそうな予感がしたアシュレー。

ゾンダーが展開した魔法陣に向け、細剣にチャージしたエネルギーをレーザーのように放つ前に左腕を構えるその後ろ姿に、心を痛めるのであった。

 

 

《──エネルギー反応。レーザー攻撃の可能性、大。》

「──マギウス・ツール、『アリコーン・フェザー』!!」

《フェザー起動。エナジーライン、格子状展開。》

 

 

左肩のアリコーン・ガオーの翼より、十数本の羽が桜吹雪のように舞い上がり、360度に拡がる扇のように左腕のプロテクトアームの周囲を舞い廻り、マギウスを中心に後方の鉄華団達を護る壁を展開する。

 

 

「プロテクト・フィールドッ!!」

 

 

左腕・プロテクトアームよりバリアが展開し、アリコーン・フェザーを中継して広域展開されるプロテクト・フィールド。

放たれたレーザーは拡散し、雨霰のように降り注ぐが、アリコーン・フェザーのエナジーラインが紡ぐ空間拘束力場(アレスティングフィールド)と、その中で猛威を振るう空間反発力場(レプリションフィールド)が湾曲空間領域を形成し、無差別に放たれるレーザーの雨を一つ残らず跳ね返し、ゾンダーに返す。

狙いが外れたレーザーも追従するフェザーで取り零すなく返され、ゾンダーバリアを展開する暇もなかったゾンダーは自身の攻撃で焼かれる結果となった。

 

本来、無限情報サーキット・Gストーン経由でもたらされた三重連太陽系の湾曲空間技術は、ガオガイガーのディバイディングドライバーやガトリングドライバーに使用されているが、カルディナは獅子王凱のエヴォリュダー能力よりもたらされた情報より解析、魔法技術とエヴォリュダー能力にて空間湾曲の比率を操作する事に成功した。

その技術をアリコーン・フェザーのエナジーラインで区切られた二次元局所平面空間を局所的湾曲空間──歪曲フィールドとして形成、再現し、広域自在展開可能な絶対守護領域(プロテクト・フィールド)を創造したのだった。

 

だが、ゾンダーはそれらの攻撃すらも再生する。

解ってはいたが、その光景にカルディナは溜め息を、V・Cも半ばうんざりした口調で現状報告をする。

 

 

「……遂に魔法まで行使するなんて。跳ね返したとはいえ、始末が悪いわ。」

《前回報告を訂正、再生能力が異常です。》

「そうなの?私にはV・Cの知るゾンダーの『正常』が解らないけど……同意するわ。」

《ゾンダーメタルが異常活性している現象が観測されています。これはマイナス思念以外の異常なエネルギーの発生よるものかと推測、進言します。》

「マイナス思念以外の、異常なエネルギー??ナニソレ??」

《不明。私のライブラリに該当するエネルギー反応がなく、新種の反応です。また、エネルギー発生直前、ゾンダーに吸い込まれる不自然な空気の流れが発生しているまでは突き止めています。そのエネルギーがゾンダーのエネルギーを高めています。そしてそのエネルギーはどんどん高まっています。》

「……そういえばそうね。」

 

 

その不自然さはこの2人も察知していた。

 

 

「……アベル、気付いているかい?ゾンダーの異常なエネルギーの高まりを。」

「ええ。機界昇華を行わずにここまで強いエネルギーをため込めるなんて、あり得ません。下手をすれば、ここら一帯を葬るには問題ない程です。いったい何をどうやって……」

「だが、もしあのエネルギーが行き場を失えば……」

「まさか、それが狙いとでも!?」

「……あり得るかな。だが、いったい何が原因で……」

 

 

そしてカルディナとV・Cもその事には気付いており……

 

 

「不自然な空気の流れ、吸い込まれる空気、この場の何を吸い込んで───まさか!」

《該当案件、1件。これは……》

「……なるほど。ゾンダーの活動が今まで緩慢な理由が、判った気がする。」

《え、この仮説……本当ですか??》

「可能性は。でも、ここで論じる事じゃないわ。原因究明は終わってからにしましょう。それに、あのようなゾンダーへの対策は、このマギウスには備わっています。では、マギウス・ツーールッ!!

 

 

カルディナの声に応え、マギウス・ガオガイガーの翼の先端、左右・計10器の黒い羽が宙を舞い、両手に装着される。

それはジェネシック・ガオガイガーのガジェット・ツールに酷似したパーツ群、その名はマギウス・ツール『ソリッド・グローブ』。

そして同時に左肩のアリコーン・ガオーより、両翼パーツが分離し、フェニックスフェザーのボールジョイントへ接続、カルディナと同じく天使と悪魔の翼(ツイン・ウイング)となる。

そこに通信が割り込んできた。

 

 

《カルディナ、待ちなさい!あのゾンダーのエネルギーは貴女を──!!》

「あら、アベル様。ご心配ですか?ですが問題ありません。例え広域破壊の罠が仕掛けられていようとも、このガオガイガーにはそれらに対しての備えが御座います。」

《……戯れ言、ではないようですね。》

「はい。」

《……良いでしょう、やってみせなさい。》

「お任せあれ!V・C、TGSライド全開!」

《了解。TGSライド、全開。》

「……これで、終局ですッ! ヘル アンド ヘヴンッ!!!」

 

──ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ(対極する力を一つに)……

 

「──はぁあああぁぁぁーーー!!!」

 

右掌に魔王()の力を込めた破壊の力(Jパワー)を。

左掌に天使()の力を込めた守護の力(Gパワー)を。

対極であれども類似する二つを合わせ、地獄も天国も合一する力へと昇華させる。

合わさった力はマギウスを白金の光と化し、長髪ようなエネルギーアキュメーターは赤熱化、圧倒的な光の力の奔流(GとJのパワー)はゾンダーを呑み込み、完全に拘束する。

 

 

「──オオオォォォーーー!!」

 

 

そして、白と黒の翼に魔方陣が展開、圧縮表記された術式が網み目のように束ねられ、形成される光の翼(プラズマ・ウイング)が羽ばたいた瞬間、マギウスが放たれた白金の弾丸の如き『光』となった。

白金に輝く駆体が太陽の黒点を連想させる合わせた黒い掌(ソリッド・グローブ)を突き出し、突貫するマギウス。

そして光の力の奔流(GとJのパワー)に拘束されたゾンダーの胸部にヘルアンドヘヴンが炸裂、ゾンダーの全身にGとJのパワーが一挙に流れ込み、身体の構成がボロボロになる。

それでも再生を試みようとするゾンダーが、己の最後に視たものは────自らの胸を粉砕し、喰らう、黒く巨大な(あぎと)が開く刹那の光景。

 

 

「──その核、貰い……受けますッ!」

 

 

それはマギウス・ガオガイガーの更なる一押し。

巨大な両掌が胸部へとめり込み、黒く鋭い巨大なソリッド・グローブの両掌がゾンダー核をがっちりと掴む。

 

 

《グローブ内、湾曲空間構築──終了》

「はァァァーーーーッ!!」

 

 

掌内の核を湾曲空間で拘束し、ゾンダーの外郭より丸ごと核を切り離す。

だが、核を失ったゾンダーの身体を廻るエネルギーが行き場を失い、大爆発を───

 

 

《──TGSライド、フルドライブ。》

「ウィータァァァーーー!!!」

 

 

──起こすその瞬間、マギウスはゾンダーの胸を貫く両掌をゾンダーごと空に掲げ、『生命(ウィータ)』の呪文を叫ぶカルディナ。

両掌の外側に膨大な破壊エネルギーが、ゾンダーの爆発を文字通り掻き消し、天を穿つ白い一閃の奔流となった。

 

 

───ヘルアンドヘヴン・ゼロ

 

 

それは、カルディナが考案したヘルアンドヘヴンの新形式。

ヘルアンドヘヴンで引き抜けないゾンダー核に対して、膨大な破壊エネルギーと防御エネルギーを束ね、ヘルアンドヘヴンを円滑に行うマギウス・ツール『ソリッド・グローブ』を用いた、核摘出及び完全殲滅用アーツである。

掌内側に湾曲空間を構築する事でゾンダー核を強制的に隔離、保護する。

そして余剰した破壊エネルギーを掌外部より放出する事により、外敵を完全殲滅するのである。

 

空へ昇る一閃の光の奔流は、鬱蒼とした空を晴らし、ゾンダーを跡形もなく滅ぼすのであった。

 

……そして光が途切れた。

後に残ったのは、空へと両拳を掲げる黒き勇者王マギウス・ガオガイガー。

全身の放熱機構より過加熱の熱風が放出され、白金の駆体はシルバリオン現象も終え、元のカラーリングに戻っている。

そして掲げた腕を胸元に、その両掌の中には───摘出したゾンダー核が。

 

誰もが静まり返り、沈黙する中、マギウスの胸部───ギャレオンの口から赤い茜に染まる長い髪をなびかせた人物───カルディナが出てきた。

白と黒の翼を広げ、ゾンダー核へ両手をかざし、右手の甲に『J』、左手の甲に『G』が光り、現れる。

そして唱える。『偽り』が『真実』へと昇華された、カルディナの呪文を。

 

 

──サンクトゥス

 

──レッフェルト

 

──テストル

 

──ルルーウス

 

──ヒーク レリヴィーム

 

 

「あ、あれは……!?」

「まさか、浄解!?」

 

 

クストとムルが驚く。2人にしか使えなかった浄解、それをカルディナが使えた事に。

浄解の光に包まれたゾンダー核が、その呪縛を解き、素体とされた人物を顕現させる。

その人物は鎧を着た女騎士であった。負の感情はなく、涙を流し、カルディナに多大な感謝の念を言葉にしていた。

 

 

「あ、ああ……ありがとう、ございます……」

 

 

そしてその一部始終を見ていたカインとアベルは戦慄にも似た驚愕を体感していた。

 

 

「……本当に、何が起きてるのですか。まあ、あの娘を見ていると飽きませんね。」

「何故、カルディナが浄解を……というのは、この際本人に聞くしかあるまい。しかし、これでゾンダーによる襲撃は終わったよう───」

 

 

カインが安堵したのも束の間、最後のオチが待っていた。

 

──カルディナがバランスを崩し、ガオガイガーの掌から落下した。

 

その光景に全員、「まさか!?」と「最後の体力ぐらい残しとけ!」という総ツッコミを入れたいところであるが、絶賛気絶&落下中の人間にそんな事を言ったところで聞こえている訳もなく、即座に反応した数人──クスト、ムル、三日月が全力で向かったが、4~5km離れた場所で観戦していた彼らが即座に追い付ける訳もない。

だが、それでも落下は止まらない。

もう間もなく地面に叩きつけられる──

 

 

「───カルディナァァァーーー!!!」

 

 

──その前に、カルディナの元へ音よりも速く駆け、飛び上がり、その身を受け止める者がいた。

 

 

「な───アシュレー??」

「うそ……!」

「いつの間に……!」

 

 

強化魔法を用いて勢い良く飛び上がった代償に着地に失敗し、アシュレー自身がむき出しの岩に半身を擦って出血するのはご愛敬。

それでもアシュレーは、カルディナには傷は付けず、抱きしめていた。

そんな光景にレクシーズはアシュレーの通信機に繋ぐ。

 

 

「アシュレー!まったく、何たる無茶を……」

《……む、無茶と笑って下さって結構です、父上。ですが、この役目だけは…。誰にも渡したくなかったのです。カルディナを助ける『ナイト役』は。》

「……まったく、その馬鹿は誰に似たやら。よくやった。」

《はい。》

 

 

例え三男で自身の影が薄かろうとも、両親が決めた政略結婚の相手だろうとも、幼き頃より胸に抱く想いに偽りはない。

愛しき婚約者を護るためなら自身の身の安全など厭わない───そう想うアシュレー。

 

しかし、葛藤もある。

 

婚約者(カルディナ)が用意したこんなもの(ガオガイガー)を行使したにも関わらず、大事になった今回の件。

既に事態はカルディナ以外には手が出せない前代未聞の出来事。

 

自分はどうすべきか……

 

だが、そんな事は露知らず、アシュレーの腕の中で抱きしめられたカルディナは、可愛い寝息を立てて眠りに入っていた。

苦笑いしつつ、婚約者の頬に触れる。

 

 

「……まったく、人の気苦労も知らないで。」

《──目の前で見せつけてくれるとは、若いとは良いですねぇ。》

「───誰だ!?」

 

 

終わった安堵を噛み締めるアシュレーへ、突然声が響いた。

 

 

《あ、これは失礼。警戒させてしまったみたいですね。上です、上。》

「上……って、ガオガイガーの目が、点滅してる……って、しゃべってる!?他に誰かいるのか!?」

《はい。正確には私、無限情報サーキット付AI、名をV・Cと申します。ちなみに姿を現せと言われましたら、現在ギャレオンが本体なのでこれ以上さらけ出す事は不可能なのでご了承を。》

「無限情報サーキット付、エーアイ……まさか三重連太陽系というところの関係者か?」

《はい。早速ですがご提案致します。カルディナ様と私──このガオガイガーが一緒に最寄りで休める安全な広場を一時的に提供頂きたい。その見返りに、後ろにいる不届き者達の捕縛を手伝います。》

「不届き者……」

 

 

アシュレーは周囲を見渡す。

ヘルアンドヘヴン発現という、生身には地獄の如き環境であったはずだが、巻き込まれた()()()()()()()()()()()()は半数以上が死屍累々としていたが、一応息があった。

残りの半数は土に還ったか、埋もれているかは不明だが、完全に無力化しているのは間違いない。

当然ながらこのまま放置するのは宜しくない訳で……

 

 

「……そうだね、鉄華団のみんなにも助力させてもらえるなら。」

《それは僥倖。是非お願いします。》

「でもその姿のままで……??」

《否定。このように致します───フュージョン・アウト。》

 

 

V・Cの一声で、マギウス・ガオガイガーはその合体を解き、マギウス・マシンへと姿を変える。

地に降り立つガルムガオー、アリコーンガオー、ドラゴンガオー、ドレイクガオー、フェニックスガオー、そしてマギウス・ギャレオン。

文字通り黒鉄のマギウス・マシン達の雄姿に圧倒される。

 

 

「……これは、うん。圧倒的だね。」

《お褒めの言葉、ありがとうございます。》

 

 

そしてV・Cの提案をアシュレーより受けたレクシーズは、それを受諾。そして鉄華団に不届き者達の捕縛を依頼した。

国王からの勅命とあっては断れない鉄華団のメンバー達であったが、あまり気乗りはしなかった。

だが、最後にレクシーズが放った一言で、全員の目の色が変わった。

それは……

 

 

()()にあたり、もしかすると彼等は痛みで抵抗するやも知れんが、なるべく息があるようにしてほしい。───ただし息があれば、救助中に怪我が増えていようが、更に重傷になろうが、我らにも、そして君達(鉄華団)にも何の責任がない事を宣言しておく。」

 

 

……その時の彼等(鉄華団達)はマギウス・ガオガイガー登場時の眼光並みに目を光らせていたとか。

 

そして始まる一方的な捕縛任務(盛大な八つ当たり)

 

途中、近衛騎士団も参加し、理不尽さが増した頃、他の騎士団が現地に到着した頃には、あまりの恐怖に震え、鉄華団達と近衛、マギウス・マシン達に素直にドナドナされるギャラルホルンの捕虜達の姿が……

 

……少しはアルドレイアの彼等の気が晴れたと思いたい。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

そして誰も察知されない上空より、全ての顛末を傍観する2つの影があった。

 

 

「……満足か?」

「ええ、とっても。」

 

 

1人は鳥人間、もう1人は紅い魔女。

ゾンダリアンのピッツォ・ケリーと、プレザーブである。

ピッツォ・ケリーの尋ねた質問に、魅惑的な満面の笑みで答えるプレザーブ。

 

 

「お前の切り札のゾンダーメタルは破られたが、あれも計算の内か?」

「いいえ、むしろ全くの計算外。でも、あんなのがいると判れば、今後の対策がしやすくなると思わない?それにあれは試作品。触媒結晶を用いたとはいえ、この星に適応しやすくするための処置がまだ十分とは言えないわ。」

「ふん、手間が増えただけだろう。しかし機界昇華に必要なエネルギー確保には充分。そして大したことのない人間共だが、その中でアレは戦いがいのある相手……それは認めよう。」

「ええ……でも私も確かにあの時、仕留めたと思ったわ。でもあの覚醒……実に不可思議、私はああゆうのゾクゾクするわ。」

「……出たぞ、悪癖が。」

「でも、対策はそう簡単には出来ないはず。あの黒いロボットのパイロットは疲労困憊みたいだし。」

「では準備出来次第、次は私だな。好きなようにやらせて貰うぞ。準備は怠るなよ。」

「ええ、勿論。」

 

 

そしてピッツォ・ケリーは鳥に変わり飛び去り、プレザーブは光学迷彩を纏うように姿が薄くなり、それぞれその場から姿を消す。

 

こうしてゾンダーとガオガイガーの戦いは終わった。

 

しかし、これが終わりではなく始まりである事を、この戦いを見た者は誰もがそう思った。

(なが)いか短いかは解らない。

だが、1つだけ判る事がある。

 

それは、今日を以てカルディナ、ガオガイガーを中心に世界が動き出した事───

 

あらゆる勢力、軍勢、群体……

 

そして戦いの終わりに発し、誰もが目にした眩い光の奔流の柱(ヘルアンドヘヴン・ゼロ)が、この不可思議な世界の全てを巻き込む狼煙となった事を、今は誰も知らない……

 

 

《NEXT》

 

 

 


 

 

 

《次回予告》

 

君達に、最新情報を公開しよう。

 

ゾンダーとの戦いに勝利したガオガイガー、そしてカルディナ。

 

しかし皆、振り返るべき点は多く、カルディナよりもたらされた情報に驚愕する一同。

 

されど彼等は負けない、逆境の今に。

 

されど彼等は歩む、勝利への軌跡を。

 

されど彼等は結ぶ、その想いを胸に。

 

 

 

『公爵令嬢は、ファイナルフュージョンしたい』

 

NEXT Number.17 ~創造は、敗北を糧に~

 

 

これが勝利の鍵だ!!

『第2次・第3次GGG創造計画書』

『Gフレーム(1~4号機)製造計画書』

 

 


 

 

現在公開出来る情報

 

 

 

◯マギウス・ガオガイガー

 

 

制式名称 ALK-GGG-01-XM1 マギウス・ガオガイガー

 

 

全高 32.1m

重量 640.2t

動力源 TGドライブ×1、Gドライブ×6 接続、搭載

最大出力 10,000,000~98,000,000,000 kW以上(推定)

推力 7,400t×4

最高走行速度 216km/h以上

瞬間最高走行速度 不明

ファイナル・フュージョン完了時間は60.647秒(以降毎回更新予定)

 

武装、特殊装備

◯マギウス・フェザー

◯アリコーン・フェザー

◯プロテクト・フィールド

◯ソリッド・グローブ

◯ドリル・ニー×2

◯ブロウクンマグナム×1

(他、多数有)

 

必殺技

◯ヘルアンドヘヴン

◯ヘルアンドヘヴン・ゼロ

(他、ツール使用による兵装のため明記出来ず)

 

マギウス・ガイガーとマギウスマシンがファイナル・フュージョンして誕生した、スーパーメカノイド。

中心をマギウス・ガイガーとして、右肩をガルムガオー、左肩をアリコーンガオー、右脚をドラゴンガオー、左脚をドレイクガオー、背部・両腕・頭部ヘルメットをフェニックスガオーがそれぞれ担当する。

合体形式が地球版ガオガイガーVer.ではなく、ジェネシックVer.なのは、ライナーガオーがゾンダーにより真っ二つにされたため───ではなく、幼いカルディナが『勇気ある誓い』を立てた時、自身の考えうる『真に理想のガオガイガー』を記した設計図──もとい落書きが原点なため。

歳を追う毎に描き直されており、対・ゾンダー用に想定されていた地球版ガオガイガーとは別に秘密裏に設計されたその内容は、ジェネシック・ガオガイガーを元にしている。

想定された技術的問題から実現は根本的に不可能とされ、対・ゾンダー用ガオガイガーが完成したとしても創るつもりはなく、空想と理想、空絵事の範疇でしか無い事を理解していたため、余程の事がない限り公開する予定もなかった。

しかしゾンダー戦での敗北、000(トリプルゼロ)との遭遇、そしてオレンジサイトで出会ったV・Cと獅子王麗雄博士の存在、自身の特性により、実現の目処が立っている。

そして、カルディナのレヴォリュダーの能力とAZ-M、GストーンとJジュエル、V・クォーツを取り入れた事により完成した本機だが、ゾンダーに敗北した事によりロールアウトされたため、カルディナにとっては、非常に複雑な経緯を持つ。

なお、作成テーマに『カインとアベルが手を取り合ったら実現出来たであろう、対・ゾンダー用ガオガイガー』と明記されている。

 

基本設計はカルディナ・ヴァン・アースガルズ。

設計補佐はエルネスティ・エチェバルリア。

(フレメヴィーラへ留学中に暴露され、アリコーン・フェザーのビット機能、マギウス・フェザーへの合体機能を発案、追加。)

最終監督は獅子王麗雄。

(プロテクト・フィールドの湾曲空間形成の理論と、アリコーン・フェザーとの連携機能を発案、追加。)

 

 

◯ヘルアンドヘヴン・ゼロ

カルディナが考案したヘルアンドヘヴンの新形式。

ヘルアンドヘヴンで引き抜けない(と想定された)ゾンダー核に対して、膨大な破壊エネルギーと防御エネルギーを束ね、ヘルアンドヘヴンで核を保持した際に、引き抜く事はせず、マギウス・ツール『ソリッド・グローブ』で掌内側に湾曲空間を構築する事でゾンダー核を強制的に隔離、保護し、その後破壊エネルギーを掌外部よりゼロ距離放出する事により、対象を完全に破壊する、核摘出及び完全殲滅用アーツ。

獅子王凱のヘルアンドヘヴン(核摘出)と、カインのヘルアンドヘヴン(拳からビーム)を1つにした、カルディナのヘルアンドヘヴンである。

元より『ソリッド・グローブ』が衝撃緩和に一役買っているが、カルディナのヘルアンドヘヴンは『真のヘルアンドヘヴン』となっているため、使用者へのダメージはほぼ皆無となっている。

ただし、使用するエネルギーはヘルアンドヘヴンの倍。




以上が、本作マギウス・ガオガイガーとなります。

いかがでしょうか?

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