公爵令嬢は、ファイナル・フュージョンしたい。   作:和鷹聖

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何か頭の悪い文章を書きたくなったので投稿です。

内容こそ本編の次話にリンクしていますが、読まなくても差し支えなく、一部キャラ崩壊を含んだ、非常に苛烈な内容となっています。
ただし、ストーリー上差異はありません。

それでも良いと思う方は、大河長官の声真似でファイナル・フュージョンを承認してからお読み下さい。



それではどうぞ!




閑話 ~それぞれの後始末的な何か~

 

 

◯鉄華団の『根野菜』収穫風景

 

「───そーらよっ!!」

「せーのっ!!」

「ソイヤッ!!」

 

引っこ抜いては放り投げ、待機するランドマン・ロディに豪快に投げ、キャッチしては『籠』に入れる──

彼らは今、『根野菜』を『収穫』しているのだ。

 

「ったくよ、こんなに乱雑に埋まりやがって……」

「仕方ないよ、お嬢がやったんだから。でも形があるだけ、まだマシさ。」

「だな、言えてる。」

 

『根野菜』は多種多様。いろんなところにいろんな角度で埋まっている。

ちなみに器用に抜く事の出来る農業用機械はない。

ランドマン・ロディ(三日月が担当)では『根野菜』を引っこ抜く時に砕きかねない。

故に、キャッチして入れるだけ。

重労働なので、お嬢様が造った鉄華団用のIDスーツ(外装なし)は非常にありがたい。

『根野菜』が『籠』に貯まったら王都に持ってゆく。幸い行き先は陛下が決めてくれており、残る事はない。

『籠』は重いので、近衛の騎士達がゴーレムを使い、親切に運んでくれる。ありがたい。

中には『収穫』を手伝ってくれる近衛騎士もいたり、実に親切。

『収穫』の収入は鉄華団に入る事に。非常にありがたい。

 

「む?」

「どう……しました?」

「これは……焼けているな。(適当)」

「ああ……こりゃ、肥料焼けじゃないですか?(適当)」

 

共に『収穫』する騎士の1人が見つけた。それに言葉を(適当に)返すのはシノだった。

ちなみに肥料焼けとは、肥料となる堆肥を十分に発酵させずに土に蒔いた後で再び発酵した時に出る発酵熱の事。

作物に良くない影響を与える。

 

「なるほど。だが、日照りの可能性もないか?()()()()()()()()()()()()()。」

「見た限り、どっちもじゃないですか?まあ、あっちに置いておいて下さい。」

「ああ、そうしよう。」

 

焼けてしまった『根野菜』は分ける事になっている。

そして()()()()()()()()()()()()

仕分けは大事だ。

 

「そーらよっ!!」

「せーのっ!!」

「ソイヤッ!!」

 

『収穫』は続く。地道に続く。

辛いので時には声を出したくなる事もある。

オールバックが特徴のダンテが腰をポンポンした時の事だった。

 

「あ~あ、スーツ着てるとはいえ、腰屈める作業は腰が痛ぇ──」

「──無礼者が!!私を誰だと思っている!!」

「……何だ?」

「私は汚い貴様らのような者ではない!!私はギャラルホ──」

 

──ゴッ!!バキっ!!グキンッ!!

 

「………」

「タカキ、どうした~?何か聞こえたけど。」

「ん、気のせいじゃない?だって『根野菜』が喋る訳ないじゃない。

「あ~、それもそうだな。それと手、痛めてないか?」

「ううん、大丈夫。まだ問題ないよ。」

 

時々『収穫』に不満の声が出るけど、そこは『グローブ』を付けていれば問題なし。

 

「お前達、我らが神が黙っているとでも──」

 

──ゴッ!!グキッ!!

 

「うぼぁ……」

「よーいしょ!」

《ほっ。》

 

引っこ抜いては豪快に投げ、キャッチする。

 

「た、助けて……」

「よーいしょ!」

「ひゃあああぁぁぁーーー!!!」

《うるさい》

「あ、〆忘れた。まあいいや。」

 

引っこ抜いては、豪快に投げ、キャッチする。

 

《まだある~?》

「次、こっちな~!」

「っていうか凄くない?三日月、全方位でキャッチしてるし。」」

「俺には真似できねぇな。」

「そういやダンテ、チャドは?」

「ああ。あっちで教官達の手伝い。」

 

ダンテの向く先には、マギウス・マシンが勢ぞろい。

 

《ゆっくり、ゆっくり~とな。》

 

犬かきの様に前脚で土を掻くガルムガオー。パイロットのサタンは慎重である。

 

「教官~、大丈夫ですか~?病み上がりでしょう~?」

《問題ない。こちとら悪魔だ。人間とは体力が違うんでな、まかせとけ。》

「そうですか~、あ!ラファエルさん!掻き過ぎ搔き過ぎ!もっと優しく!」

《え、ダメですか?馬の前脚では上手く掻けないし……そうだわ、フェザーを使って、振動を起こせば!》

「……それって、比重の関係で沈みますよ?」

《は!そうだった……あ、虫が、えい、えい!》

「……加減して下さいね。」

 

アリコーンガオーでは上手く行かないラファエル。元々動物の脚では『収穫』作業には不向きだ。

 

《フハハハ、我が耕すからベルフェゴール、お前はフェニックスガオーでついばむがいい。》

《地下深く~、地下深く~、耕せ耕せ~!》

「ちょ!ストップ、ストップ!それじゃ砕けますって!」

《え~、マモン。それは精密作業じゃないか?ガブリエル~、代わりに頼むわ~。》

《レーダーを代わってもらえるなら。》

《……頑張ってやりま~す。マモン~、ザドキエル~、『籠』持ってくんない?》

《仕方ないな~。》

《ぬう、止むを得ん。》

 

ドラゴンガオーとドレイクガオーが尻尾のドリルを使って耕そうとするのを止めに入るチャド。

辛うじてフェニックスガオーが嘴でついばんで『収穫』作業が出来るので、面倒くさいながら操作するベルフェゴールと、的確に次の『収穫』ポイントを指示するガブリエル。

ドラゴンガオーとドレイクガオーは『籠』持ちとなった。

 

《いや~、2人が来てくれたおかげで、急に楽になったわ~。五月蠅くて暴れて大変──》

《──ベルフェ、『根野菜』は喋りませんし、暴れませんよ?》

《……だな~。》

《ジッと見ているだけのお仕事だなんて、つまらんな。》

《開墾作業でストレス発散しなさい、2人とも。》

《うん、そうする~。》

「ちなみに、ギャレオン……V・Cって言いましたっけ?あれはどうしたんですか?何かジッとしてますが……」

《ああ、躯体がオーバフロウ気味でな。今は無理に動けないらしい。休ませておいてくれ。》

「……そうなんですか?あれから一言も言ってませんが。」

《貴方なら言えば判るでしょうが、量子通信とやらですね。情報や指示は常にマシンに送られてきています。それに、皆さんの通信機の親機として、常時中継しているのですよ?今まではお嬢様がその役割をしていたんですから。》

「……どっちも、何でもありだな。」

《そんな訳で、肉体労働は俺達がやればいい。》

「ですね。」

 

お疲れのギャレオンをそっとしておいて、作業は続く。

そうこうしている内に、他の騎士団がやって来た。

 

「──第8騎士団、只今到着ー!!加勢に来ましたぞ、今ぁぁぁ──あ??」

「遅かったな、オズワルト卿。」

「へ、陛下!?申し訳ありません!第8騎士団、只今参上いたしました!しかし……これは、いったい……??」

「見て解らぬか?? ただの『収穫』だ。

 

到着した騎士団を切り立った岩の傍には、近衛騎士数人に囲まれつつ、負傷した身体を休めるレクシーズの姿が。

そのレクシーズに言われた、騎士団の彼らが見た光景は……

 

 

土に埋まる『ギャラルホルンの騎士達』を無造作に引っこ抜いて、豪快に投げ──

ゴーレムより大きい鉄の巨人がそれをキャッチして、『檻』に入れ──

いっぱいになったところで順次搬送する近衛騎士達──

時々こんがり焼けてしまった焼死体を無造作にぶん投げる──

時々五月蠅かったり、暴れる騎士達を黙るまで殴り続ける──

黙ったら、引っこ抜いて豪快に投げ──

 

止めは、巨大な黒鉄の幻獣達が、勇猛で知られるギャラルホルンの騎士達ににらみを利かせて威圧しているところをついばまれ、『檻』に入れられる──

時々、逃げようと這い這いの騎士を脅しの様に踏み潰す羽根つきの馬が怖かった。

 

それをそれが当たり前のように作業する光景──

 

「あ、あの、これは……」

──ただの『収穫』だ。

「しゅ、収穫……」

「目の前に『有る』のは皆、『根野菜』だ。綺麗に『収穫』すれば金になる、な。」

「………」

 

そう淡々と説明する陛下の目は、口調と違って決して──目が絶対に笑っていない。

いや、『収穫』と称するそれは『捕縛』だ。

そしてこの少し老いたオズワルト卿は知っている、陛下がそんな目をする時は、これ以上ないくらいにブチ切れている証だと。

遅れた自分には解らないが、この状況に至るまで、相当酷い状況であったのは間違いない。

魔獣が暴れたとかそんなレベルではない。

何故ならレクシーズだけではなく、『収穫』を行う()()()()()()()()()()()()()

鋼の巨人や幻獣に至っては、直視したら心臓が止まりそうな気がした。

だが、何が起きたかは自分の口からは聞けない、怖くて聞けない。

 

なので、オズワルト卿は陛下に、こう進言した。

 

「……陛下、進言しても宜しいでしょうか?」

「何だ?」

「我々も『収穫』に参加しても宜しいでしょうか?」

「ああ、構わん。ただし、作業中は不仲が起きぬようにな。」

「ははっ。」

 

そう言われて、ふと思い出すオズワルト。

 

(風の噂に聞いた事がある。アースガルズ公爵の令嬢が、平民を集めて一団を作ったとか。)

 

近衛騎士達と一緒に作業している若者らが、きっとそうなのだろう。

固唾を呑んで自分に言い聞かせるように思索するオズワルト。

 

(土深く埋まっているのに、いとも簡単に引っこ抜くとは。それに場を仕切っているのは彼ら……近衛騎士達もそれに嫌悪なく従っている。どうやらただの平民、ではないようだ。そしてこの空間そのもの。既に異界だ!!何だここは!?かのアースガルズ公爵の令嬢の姿が見えんが、それでなくともここはもう普通とは言えん。私に出来る事は、トラブルを生まないように、協力するよう部下に指示するぐらいか。)

 

騎士のメンツも大事だろうが、やっているのは『収穫』。

そんな体を取る以上、この異界の中でトラブルを起こさないよう気を付けるオズワルト卿であった。

 

そして人間の捕虜扱いではなく、根野菜として扱われるギャラルホルンの騎士達は、初めこそ威勢が良かったものの、途中から全く抗えない暴力とその場から逃げたい雰囲気に呑まれ、そのほとんどの者達の心は、最後は死んだ。

中には猛将と呼ばれる者もいたが、ランドマン・ロディによって引っこ抜かれ、三日月とOHANASHI(独りトーク)した後には商品価値ががなくなってしまう。

なら抵抗するより、素直に引っこ抜かれた方が痛くならず、生きていられる。

彼らは生き残るためプライドを捨て、根野菜に成りきっていた。

 

ちなみに、何故そんな事になったかというと、レクシーズの言葉の後、オルガより……

 

「勅命の件は了解しましたですが、陛下。俺達は心ッ……底、あいつらが嫌いです。なので、これから『人間扱いはしません、野菜として扱います。』具体的には『根野菜』だと。」

 

と、言われ、一考、二考、三考……

 

「ふむ、名案だ。私もそうしよう。」

 

とてもいい笑顔で了承された。

捕虜への過度の暴行は悪行であるが、収穫(救助)時の静止対応は正当防衛である。

そして傷付けば、商品価値(交渉時の身代金)は落ちるので、なるべく傷付けず、かつ速やかに『収穫』するのだ。

ただし愛でるような対応はせず、塩対応。

その時のギャラルホルンの心証は一切無視、ないものとした。

だって埋まっているのは『根野菜』だもの。

 

それだけである。

 

 

 

◯マギウス・マシン、考察

 

「……改めて見ても何ですか、これは。」

「むぅ、何とも形容し難いねぇ……」

 

『収穫』終了後、V・Cの希望もあって指定された王城の訓練場の1つに黒鉄の幻獣(マギウス・マシン)達は集い、その身を休めていた。

そこに足を運んだのがミニ・ガイガー憑依中のカインとウサリンmarkⅡに憑依中のアベル、そしてカルディナお抱えの技術者達である。

ちなみにカイン、アベルはフード付きローブを纏って、仮面で偽装している。

 

「あの異常変化したガオーマシンを笑ってやろうと来ましたが、低文明の科学で出来た乗り物が獣を模倣するとは……どうしてこうなったのです?不死鳥は評価しますが。」

「三重連太陽系にも幻獣の概念はある。それらと完全に同一ではないとはいえ、このデザイン……実に素晴らしい。海獣がいないのは少々残念だが。」

 

「「「………」」」

 

「私は外部機構には興味ありません。きっと急激に変化させた影響で粗悪なのは容易に想像出来ます。内部のエネルギー回路は見所がありそうです。何より外見が───」

「こんなものを見せられてはまず調べない訳にはいくまい。エネルギー回路周りより、外部機構かな。急激な変化で変わったとはいえ、元の基礎は残っている、何よりこの外見は───」

 

「「──ジェネシックに似ているところが、実に」」

 

「──憎たらしい、ジェネシックを真似るとはロマンの欠片もないじゃないですか。」

「──解っているね、ジェネシックの所以たる『666』を真似てくれるとは、ロマンがあるね。」

 

「「「………」」」

 

「ではカイン、私は内部を。」

「私は外側だな。」

 

一連の会話を傍観していた技術者達は思う。

 

(((……この2人、実は仲良いだろ?)))

 

仲が悪いようで、思考は似ており、連携は非常にいい2人であった。

 

「しかしV・Cですか……」

「ん?君も知っているのかい、V・Cの事を」

「知らない筈はないでしょう、紫の星謹製、最大級のマルチナビゲーター・サポートシステム……特に『病院』では人間のスタッフよりも優秀なのですから。」

「……そうだね、ちなみに何を──」

「──秘密です。」

「……そうだね、失礼した。」

(……さすがに生理痛で、とは言えません。)

「私は……うん、胆石の手術で世話になったかな。」

「……そういえばピルナスは虫垂炎でこの世の終わりみたいな事を怨嗟のようにブツクサ言ってた事がありましたね。」

 

三重連太陽系の住人で大病を患った者であれば、必ず世話にはなる、それが紫の星。

それには遊星主も例外ではない。

そんな雑談をしつつ、手はそれ以上に動いている。

 

「まあ、この話はもう良いでしょう。しかし、これは評価するなら……」

「うむ、これは評価するとなると……」

 

「「───失敗」」

 

「……ですね。」

「……だね。」

 

一致した実に厳しい評価。

だが、後にその理由を聞いた職人達は、大いに納得したという。

 

 

 

 

 

◯捕虜の話。

 

調書を取っていると、時に捕虜達の生の声が聞ける。

そしその声は多種多様で……

 

「わ、私は、ギャラルホルンの騎士で一番偉いんだ!こんな、こんな扱いを受けるなどと……!」

 

「ふふん、私は徳を高く積んでいる。私を開放すると善きことがある。早く解放したま──関係ない??ふざけるな!私は──!」

 

「我らが神が黙っているとでも!?貴様らは神罰を受けるがよい!」

 

「此度の遠征は神のお告げ……貴殿らはそれを妨げた。目的??決まっておろう、王子が聖女を迎え入れるための……だが、聖女なんていなかった、いたのは悪魔だったとは……」

 

「……だから言ったんだ、この今回の進行は無理があると。ええ??だってあの王子ですよ──あ、私が言ったという事は伏せてもらえるなら……」

 

「いきなり上が出陣の準備をしろって、せっついて来たんですよ。ケンカ売り(戦争し)に??冗談じゃない、アンタ方の国にはカルディナ・ヴァン・アースガルズっていう最終兵器がいるじゃないですか?知ってんですよ──」

 

「有名な話ですよ、御存知ない?聖女カルディナの武勇は……うん、ですよね。そうそう。」

 

「教会側はけっこう必死だったかな?もう何かせっつかれているみたいで……」

 

「私は根野菜、私は根野菜、私は根野菜、私は根野菜私は根野菜……」

 

「……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……野菜扱いは、野菜扱いは嫌、女扱いされないとか私って魅力ない??乱暴されないとか終わってる……え?あ、違う??すいません、今回の進軍指示した上……枢機卿の名前ですか?それなら喜んで答えます───」

 

「───カルディナーー!!私だーーー!!君からも言ってくれーーー!!この私がこの様な扱いを受けて良い筈がない、私はギャラルホルンの王子だ!!君を迎えに来たんだ!!こんな男に誑かされるような君じゃないはずだ!!喜んでほしい、こんな国とオサラバして、12番目の妃に迎えよう!!私はあの悪魔を倒した英雄なのだ───え?あの悪魔にカルディナが??悪魔ではなく、最高機密??そして私がカルディナを死に追いやった……嘘だァァァーーーー!!!騙されんぞ!!お前達が……お前がカルディナを───!!、」

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「───以上です。」

「……アシュレー、随分煽ったな。」

「何の事でしょう??」

(……誰の性格に似たやら。)

 

それが盛大なブーメランとは自覚しないレクシーズであった。

 

 

 

 

◯お嬢様、目覚める。

 

 

「……ん。」

 

深い水の底から浮き上がるような感覚で、微睡みから覚めたカルディナ。

まず目にしたのは白い天井───

 

(……あ、知ってる天井。)

 

白ながらアカンサス柄の浮き彫り彫刻が刻まれた、カルディナにとっては実は見慣れた天井。

そこからここは王都にある王城だとすぐに推察出来た。

 

(あ~、王城か。確か最後の記憶が浄解した後、急に意識が飛んだまで……という事はその後担ぎ込まれたみたいね、今はどんな状況かしら。まあ、私を無理矢理起こさなかったところから、差し迫った状況にはなっていないってところかしら。)

 

周りが静かなところから、カルディナはそう推察する。

ただし、カルディナ自身はまだぼんやりしているところから、まだ本調子ではない。

 

(しかし天井って不思議ね。感覚を変えると自分が宙に浮いて巨大な壁面と向かい合ってるみたい。そいうえば天井と天丼は点違いで違う意味ね。たまに天井でゲシュタルト崩壊を起こして天丼を見ると訳が解らない感覚になるわ。天井天井天丼天井天井天井天井天丼天井天井天井天丼天井天井……あ~、天丼はいくつかしら?)

 

極度の疲労困憊でよく解らない思考を巡らすお嬢様。

極めつけに「天丼食べたいわ~、甘辛タレで海老天、イカ天……ナスもいいわね~」と、それは本当にこの世界にあるのか??と思ってしまう。

お米はしっかり銀シャリがあるので、あとは海産物の心配だ。

しかし、それはお嬢様の『収納魔法』にあるので問題はない。

ちなみに『天』と『无』は似ている、試しにやってみよう。

 

天丼天井天井天井天井天井天井天井天井无井天井天井天井天井天丼天井天井天井无井天井天井天井天井无丼天井天井天井天井无丼天井天井天井天井天井天井无丼天井……

 

「うん、ゲシュタルト崩壊まったなしね。ちなみに読み方は『うーどん』、『うーじょう』かしら?」

 

『无』の読み方に直ぐにピンと来た人は……貴様、30代後半か、40代だな!?(Di〇様風に)

 

「ついでに『井』と『丼』もゲシュタルト崩壊してくるわ~。それじゃあ次は……」

「……何を仰っているのですか?」

 

声のする方に視線を移すと、そこにはよく知る赤髪の女性が布団から顔を出している。

 

「ゲシュタルト崩壊に関する新しい考察だけど……いつからそこに?」

「お嬢様が目を覚まされる数刻前には。」

「……なぁに?寂しかったの?」

「寂しいより悲しかったです、死にそうな貴女の姿を見て。そして今は嬉しいです、貴女の傍に居られて。」

「……私もよ。どうにか生きてる。辛い時、貴女の顔が浮かんだ……だから何とか踏ん張れた。」

「でもやっぱり寂しいです。ホッとしたら急に。特に身体が。」

「私もホッとしたら急に寂しくなったわ、特に身体が。」

「幸いにも私、裸です。」

「私も治療目的でそのままなのか、私も、ほとんど裸ね。」

「じゃあしましょうか、第1ラウンド。」

「そうね、しましょうか、第1ラウンド。」

「──待てい。」

「「……」」

 

振り向けば、いたのはダークエルフの女史、銀細工師のイザリアだった。

腕組みをして遠慮ない怪訝な顔で2人を見下ろしている。

 

「あ、いたのね、イザリアさん。」

「いたのですね、イザリアさん。」

「……いたのね、じゃないわよ。何やってるの。」

「「第一ラウンド。」」

「……盛り付いた雌じゃないんだから。」

「「絶賛そうですが、何か?」」

 

言い訳すらしない、あまりにも潔い態度で、布団から仲良く顔のみを出している光景に、イザリアさんは頭を抱え、最早何も言えない。

 

「……ったく、様子を見に行って遅いの気にして見に来たら艶場たぁ……こうなると歯止めが利かないんだから。」

「生理現象なので仕方ないですわ。ランナーズハイみたいに高ぶって仕方ありません。ちなみにあれから日時はどれくらい経過しましたか?」

「概ね1日半ね。」

 

それからイザリアより現状の様子が説明される。

カルディナがゾンダーを浄化し、気を失ってから既に丸1日以上が経過している。

その間、ギャラルホルン教王国の騎士、兵士、そして筆頭格を鉄華団達が中心となり、軒並み捕縛する事に成功。

その後、被害に遭った区画の復興作業が現在進行中であり、それに鉄華団と、ランドマン・ロディが充てられている。

また、マギウス・ガオガイガーは自力でフュージョン・アウトし、V・Cの意向もあり、マギウス・マシンも捕縛作業に従事。現在は王城の訓練場の1つを借り受け、カインとアベルを中心としたガオガイガー製造に関わった技術者達がV・Cの協力の下、マギウス・マシンの解析を行っているという。

 

「……なるほど。V・C、意外と協力的ね。」

「お嬢様であれば~、ってアレはそう言っていたけど、問題なかった?」

「いいえ。私も一段落すれば解析をお願いしていました。それにカイン様とアベル様がいるのであれば、問題ないでしょう。何せ、あのガオガイガーは半ば行き当たりばったりで創った急造品。設計は最上級、と自負しますが、欠陥は目に見えています。やらなきゃ不味かったから止む無くしましたけど……」

「あれが、急造品……何か、そのやらなきゃ不味い経緯が、私らの目の前でコックピットを一突きされた以外に、何かあるようでヤな予感しかしないんだけど……それにあのV・Cってのは、結局何??」

「ざっくり説明すると、以前ギャレオンの三連魔力転換炉に搭載した、紫色の触媒結晶です。それが実はGストーンと同じ、無限情報サーキットだったみたいで……」

「うわぁ……噓でしょ??」

「まあ、あの様に話せるまでの経緯が……聞きます?」

「いいわ。後は陛下やクリストファー様に頭を抱えてもらうから。」

 

イザリアの中では既に確定済みのように、完全に秘匿事項になりそうな事案であった。

 

「ああそれと……お嬢、クリストファー様から伝言よ。『体調が戻り次第、陛下に謁見せよ』って。謁見の日時はこちらに合わせるって言ってたわ。今は午前中だけど……その様子だと謁見は午後になりそうね。」

「そうですか、判りました。」

「……で、少しは治まった?」

「全く。むしろ高ぶっています。話の途中でも火照りが治まらず、むしろ既に始められてしまっているので……」

「あ、どうも。」

「なんだい、あんたそこにいたのね……わーった!私も混ざるから30分で終わらせるよ!

「「喜んで。」」

 

そして第一ラウンドが始まる前の、その部屋の前では……

 

「………」

「あ……あの、アシュレー殿下??」

「ああ、いや済まない。申し訳ないけど、彼女らが出てくるまではこの部屋、決して開けないであげてね。」

「え……??あ、はい。」

「じゃあ、僕はこれで失礼するよ───ああ、後。この部屋で起きた事は……口外しちゃ駄目だよ?絶対に、絶対に、ね?

「は、はい。」

 

カルディナの様子を見に来たアシュレーだったが、部屋には入らず、逆に部屋の扉の前で聞き耳を立てるのみ。

そして部屋の前で待機する14歳のなりたての世話係の侍女に言いつけて独り戻るのであった。

初めは何のことだか解らない侍女であったが、部屋の中から聞こえる、とある『声』により、その疑問は払拭されるが……

 

(エエ!?ナンデ!?ってこれって私、ずっとここにいなきゃダメ!?え、いやでも……というかアシュレー陛下、コレは()()なんですか!?)

 

ちなみにこの部屋は防音加工された部屋で、大概の声、音は聞こえない仕様である。

あえて聞くなら、扉に対して聞き耳を立てなければならない。それでも辛うじて大声が僅かに聞こえる程度なのだ。聞こうものなら絶対に目立つ。

唯一目立たなく聞くなら扉に背を付け、直立不動!

そして彼女は直感した。

 

(……あ、コレ30分じゃ終わらないやつだ。)

 

そして彼女の直感通り、第一ラウンドでは終わらずに第二ラウンドまでかかり、終わったのは1時間後であった。

そうして予想こそ当たったものの、終わる1時間まで、侍女は悶々としてしまい、彼女の新たな世界の扉が開け放たれようとしていたとか。

 

ちなみに「御二人の声が、とても艶やかに……」らしい。

 

どうやら勝てなかったようだ。

ダークエロフ、つおい。

 

 

《NEXT》

 






感想欄で他の作品コラボを希望する声がちらほらあります。
それに私も悪ノリで「書くよー」的に応えてますが、今後ストーリーの都合含めて、タグ以外で下記の作品のコラボを予定しています。
※十中八九、ギャグ路線か技術開発補足路線で出ます。100%シリアスはありません。

◯クロス・アンジュ
◯コード・ギアス(劇場版)
◯装甲騎兵ボトムス
◯冥王計画ゼオライマー
◯機神咆哮デモンベイン
◯オーラバトラー ダンバイン
◯ゲッターロボ・サーガ
◯スーパーロボット大戦30

また、過去に感想欄でアイディアを出してくれた方には、メールで名前を出して良いか確認を取ることもあります。
(◯◯さんの希望より、等……)

ご希望がありましたら活動報告、メールで。
また、活動報告始めます(気が向いたら更新で)。

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