公爵令嬢は、ファイナル・フュージョンしたい。   作:和鷹聖

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お待たせしました。
ようやく復活しました。
増しにも増して文字数が増えてしまいましたのでいつも通り長文です。
今回の話は前話を参考に読んでください。

あと今回は新キャラと久々のキャラ達が出てきます。


Number.17 ~創造は、失敗を糧に~(1)

──『あの日』より2日が経過した夕方、めぼしい貴族の代表格達が王城に召集された。

 

『あの日』───それはアルドレイア王国にとって前代未聞の日。

 

隣国、ギャラルホルン教皇国突然の襲撃──

 

後に『EZX』と呼称、ナンバリングされる存在──未知の怪物(ゾンダー)による王都襲撃、そして蹂躙劇──

 

そして同じく出現した未知の巨人(ガオガイガー)による、蹂躙劇の打破──

 

だが、瞬く間に起きた事象のその全容を知る者は少ない。

そもそも何が起きたか把握すら出来る者も断片的にしかいなかった。

 

「事が起きてもう2日。ようやく我々に説明がなされる、と招集に応じたが……」

「我等が苦労して赴いた意味はいったい……」

 

現在は復興作業へと移る王都の街並みに歯痒い思いと苛立ちを隠せずに城内の回廊を行く貴族の集団が一つ。

国王より領地を授かった領主貴族達であり、特にその中でもよくいる右翼派集団(愚か者)ではあるが……

 

王都襲撃に際し、王を助け武功を挙げようとしたが、この貴族達の打算は軒並み砕け散った。

伝令を受け、当初魔獣の襲撃と考えていた彼等が馳せ参じた頃には全てが終わり、ギャラルホルンの兵士達の捕縛作業すら終了して、復興作業へとシフトしていた。

地獄絵図の如き凄惨な被害をもたらした出来事であり、王も負傷したと聞いた時は内心歓喜した者もいたのだが、来てみれば事態は全て終わっていた。

それだけではなく、徴兵した兵士達も軒並み武功を挙げることなく、復興作業へと充てられ、現・王国の(ぬるいやり方と思っている)手助けをしている事に、古くから魔獣を相手に武勲で名を馳せ、成り上がったこの貴族派閥──『武闘派』と呼ばれる貴族達は、苛立ちを隠せないでいた。

魔獣討伐を生業とする者に、現状の産業や生産に熱を入れている方針には、『武闘派』の貴族達はついていけない者がほとんどだった。

 

(あの王が負傷し失脚でもすれば、我等が代頭出来る隙が出来るが……)

 

その中の『武闘派』の1人であり、若手随一の実力派、No.3のエイゼルク・S・ゾイバッハ子爵は密かに到来したチャンスが潰れた事に、舌打ちしそうなのを我慢する。

 

「参戦に間に合ったのはオズワルト卿だけだったか。」

「そうですかな?オズワルト卿。」

「……ええ。」

「??」

 

質問に対し言葉を濁すように答えるのは『武闘派』の1人、デュクシー・A・オズワルト男爵。

初老に差し掛かる彼のみが『武闘派』の中でこの中で早く現場に駆けつけているが……

 

「……申し訳ないが、私も詳しくは解らない。行った時には既に戦いは終わっていたのだ。」

「何と。それ程早くとは……では誰も知らぬと?」

「私めも場には行きましたが……箝口令でも敷いているような雰囲気でしてな、誰も余計に口を開こうとはせんのだ。」

「だが、箝口令など実際にはない。いったい何だと───!」

───騒ぐな。

「「「───!?」」」

 

先頭を歩く恰幅の良い、金髪をオールバックにする(ダンディズム)が場を制す。

その男の名は、バランド・B・ランドグリーズ公爵。

『武闘派』No.1の強者であり、アルドレイア王国『四公爵』が1人。成金まがいの服装ではなく、即戦相応の武人の衣を纏い、その地位に相応しい威圧感を放っている。

 

「箝口令があろうが、関係が無かろう。我等が成すべき事は変わり無い。そうだろう、オズワルト卿。」

「……ええ。しかし、これだけは言えましょう。我等が知らない、予想を超えた何かが起きたと。」

「ああ。あの日、王都から天に伸びた『光の柱』と同じくな。」

 

ランドグリーズ公爵が窓の外───兵士の訓練場を見て答えた。

そこには自分達の生成出来るゴーレムの倍以上はある大きさの、鋼で出来た巨大な幻獣達が在った。

その中でも一際目立つ、白いカラーリングのライオン……

同じくオズワルト男爵が、その光景を見て思い返す。

 

(あの場にいたのが私だけで良かったと思う。他の『武闘派』の者達がいれば憤慨ものだ。私が見た()()()()……そしてあの鋼の魔獣……とでも言うべき存在。私には───わからん!)

 

御年、49歳。

『武闘派』ながら常識人ではあるが、想像を超えた存在には思考が追い付かないオズワルト。

そしてもう1人……

 

(……やれやれ。とんでもないモノを造ってしまったようだな、カルディナ嬢。)

 

遠くにある黒い鋼の幻獣(マギウス・マシン)を一瞥し、ニヤリと笑うランドグリーズ公爵。

その顔は、何か企んでいる以上に、好奇に満ちた目をしていた。

 

そして、この後彼等は知る事となる。

 

未曾有の危機と、自分達の想像と実力を凌駕する存在達を、絶対的な絶望と同じく。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

それより前日、カルディナが目を覚ました日に遡る。

 

その日の朝日が見え始めた頃、南の遠方の空より()()()()()()()()()()()が2つ、在った。

 

《───そちらは問題ありませんか?》

 

重力の(しがらみ)を超え、背部と腰部、更には両肩に火を吹く大筒(マギウスジェットスラスタ)を携え、音速を超えて蒼穹を自由に駆けるのは、背面武装(バックウエポン)に6本の執月之手(ラーフフィスト)のそれぞれに凶悪な携行装備を携える幻晶騎士(シルエットナイト)

駆体は20m超えで、鬼面が歯を剥き出しにして怒り形相を浮かべた凶悪な面構えの、蒼い鎧武者を象った鋼の巨人──名を『イカルガ』。

フレメヴィーラ王国、銀凰騎士団が団長、エルネスティ・エチェバルリア専用機であり、『地上最強の戦闘能力を持つ、史上最高の欠陥機』(褒め言葉)を欲しいままにする旗機。

腹部に中型炉『女皇之冠(クイーンズコロネット)』・背部に大型炉『皇之心臓(ベヘモスハート)』を動力源としているが、この世界での技術革新により、原作より規格も出力も大型化しているためか、体型は非常にスラリとしている。

だが面構えはガオガイガーに負けじと凶悪の一言。

 

そのイカルガの後続を往くのは──

 

《い、今のところ大丈夫だけどよ……!》

《──ツェンちゃん、空を飛べー♪》

 

アーキッド・オルター(上半身担当)、アルデルート・オルター(下半身担当)の兄妹が搭乗する人馬型幻晶騎士(シルエットナイト)、ツェンドリンブル。

 

ただし、絶賛空を飛んでいる。

 

どうしてかというと、胴体に両側一基ずつ、さらには追加装備に2連魔力転換炉(ツイン・エーテルリアクタ)直結の飛行ユニット『天馬飛行翼(ペガサスライダー)』に左右2基ずつ装備した魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)で無理矢理、空力飛行しているからだ。

その翼を広げ、飛ぶ姿は空飛ぶ人馬そのもの。

 

ツェンドリンブル改め、『ツェンドリンブル・ペガシス』

 

《……コレ、空力で分解しねぇよな??》

《理論上は。まあ、カルナから提供されたプロテクト・シェードのバリア機構が音速飛行時に限って常時展開しているので、音速の壁の影響を受けずに済んでいますから。》

 

今回、イカルガとツェンドリンブルの背面武装(バックウエポン)に特別装備した補助腕(サブアーム)特殊魔法障壁腕(プロテクトシェード)』から出ているエネルギー障壁がそれを物語っている。

魔力(マナ)供給が潤沢になった今の幻晶騎士(シルエットナイト)故に出来る狂気の芸当である。

 

《念のため、姿勢固定に『強化魔法』を強めていますが、あまり飛ばし過ぎると耐久限界を超えて空中分解を起こしますからね。そこは()でお願いします。》

《オッケー!ガタガターっていうまでなら大丈夫だけど、ガタタターっていったら危ないって事ね!》

《……それ、どういう意味だ??》

《おそらく分解寸前の予兆では?》

《今は、ガタター、だけど。》

《寸前!?》

《では問題ありませんね。急ぎましょう、アルドレイア王国へ!!》

 

ゾンダー出現の際、王国側のオペレーターの操作ミスによる()()により、はるか南の地、フレメヴィーラ王国へその一報は、遅れて夜に伝わった。

そして何の運命の悪戯か、イカルガがその前日に完成。

そして何の冗談か、ツェンドリンブルを飛ばそうと特殊装備を拵えたのが一週間前。

それにより、銀凰騎士団は装備を即座に揃える事が出来、出陣した早朝。

原作より強化された2騎が今、アルドレイアの地に向かう!!

 

《……で、どっちに行けばいいんだ??》

《えっと……》

 

しかし多少迷った影響もあり、彼等が到着するには時間が掛かったりする。

何より通信が遅れて届いた影響もあり、参戦には間に合わなかったのは云うまでもないが、運命の悪戯はここから始まった。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

カルディナが倒れてから丸1日半が経過したその日の午前、カルディナが意識を取り戻す吉報がレクシーズの下、そして彼女を安否を心配する者達に届いた。

そしてあの戦い(ゾンダー戦)の主要な関係者一同が城の会議室に集まる事になった。

その場に来たカルディナは、押し車(車椅子のようなもの)に乗せられていた。

 

「──無事で何よりだ、カルディナ。」

「陛下もご無事で何よりで御座います。」

「申し訳御座いません。まだ体が本調子ではなく、このような姿で……」

「構わん。あのような戦いの後だ、本調子でなくて当然だろう。」

「ありがとうございます。」

 

陛下の寛大な心に感謝する公爵令嬢───傍からはそう見える。

だがその光景を見た中、とある3人は無言で顔を背け、遅れて1人、同じく無言で顔を背ける。

 

……4人?? うん、4人だ。

誰かとは、あえて言わない。

 

「ん、公爵様?どうしたんですか??」

「……すまん、何でもない。」

 

近くにいた昭宏の心遣いが、嫌に心に染みた。

それはさておき、カルディナの父親であり、アースガルズ公爵であるクリストファーが咳払いして仕切り直した。

 

「さて……これより昨日の王都襲撃に関する事案と、同時期に起きたアルス村でのゾンダー発生に関する事案を今後に生かすため、もう一度振り返りたい。」

 

これが今回の本題である。

ちなみに、ゾンダーが発生した村の名は、アルス村という。

 

「ようやく復興に一段落付いた故、各自、事前に用意して貰った資料を元に、昨日あった事を整理するため報告して貰いたい。それで、今回の一連の全体像が把握出来るだろう。」

《──アースガルズ公爵様。進言、宜しいでしょうか?》

「む、何だ?V・C。」

「……え??V・C??」

 

自然にクリストファーへ進言する合成された音声によるアナウンスにも似た声、それはテーブル上の置物───紫色のコスモスを飾る花瓶より流れ出た事に、カルディナは驚いた。

 

《本例がゾンダー発生の2例、及び3例目となりますが、1、2例目と違い、3例目は特に個体の性質と状況が異なる可能性がある事を先にお伝えします。その点を考慮していただいた方が良いと進言します。》

「うむ……そうだな。参考になる、V・C。」

《ありがとうございます、公爵様。》

 

クリストファーが花瓶の花束と平然と言葉を交わし、その花は一礼する。

しかも花瓶の花はすごく動く。人の挙動と同じように動く。

それはどうやらV・Cであるようだ。

しかし、他の者達が驚いていない事から、どうやら既に周知済みの事らしい。

 

「……V・C、何時の間に??というかコスモス??」

《お嬢様が倒れている間にです。私の本体はギャレオンに在りますので、端末となるべく存在はあった方が良いと考慮し、端末を花に偽装し、設置させてもらいました。》

「V・Cは非常に有能だな。情報のやり取りが片手間で終えられる程に速い環境を整えてくれた。しかも我々が即座に理解出来る範疇の物を、だ。」

 

具体的にはレーザープリンタ。無線通信機の親機(カルディナの代替)、そして小型カメラ。

なおタブレット端末もあるが、既にカルディナ主導で作った物を流用し、マウスとキーボード込みのタブレットPCを作成している。情報の整理が格段に早くなり、事情を知る一部の文官達がこれを使いこなしていた。

お陰で情報収集と整理がこれまで以上に捗るようで、レクシーズですら既にその操作をマスターしている様子。

 

タイピング??既にマスターしていますが、何か?

 

ついでにV・C経由でスケジュール管理も綿密に、かつ過去にあった王国の膨大な記録をスキャニングし、検索して幾つも候補に列挙してくてるので、レクシーズはV・Cを非常に重宝している。

 

……科学発展の歴史に盛大に喧嘩を売っているのは気のせいだろうか?

……そして国王御付きの文官の一人が小刻みに震えているのは気のせいだろうか?

……ついでに王国の最高機密が丸裸にされている気がするのは、気のせいではないだろうか?

 

しかし仕事は掃いて棄てる程ある。

簡単に辞めさせはしない。文官はホッと安堵。

ただし、最後を否定する者はいない。

 

《現在皆様と協力体制を構築するため、各端末の親機として稼働しています。尚、本体は現在長期アップデート中です。》

 

そう話す(コスモス)は軟鉄を用いた精密な花であった。

本体は三重連太陽系で出来なかった自己アップデートを現在進行中。最低限の能力を端末にインストールし、ギャレオンは戦闘後から今に至るまで、アップデート中。

その為か、訓練場に運ばれたギャレオンより時折、不気味な笑い声……もとい寝言が聞こえるとか。

近づけば寝返りで圧死する可能性があるので、近付く事はおススメしない。

ちなみに花なのは、それが一番怪しまれないため。そしてコスモスがデザインされたのは……

 

《V・C、つまり『ヴァイオレット・コスモス』とも言えます。なので、今の形態は『ビバ・コスモスちゃん』とお呼びください。》

 

そう話すV・Cはすごく動く。もう過剰なくらいに動く。途中で4輪の花が連携してE〇ILEしている。意味は解らない。

リアルなコスモスなので表情は解らないが、何故か「ドヤァ」してる気がした。

 

うん、ウザい。

 

「………」

「……あの、お嬢様??」

「………」

「……サーセン」

 

カルディナの威圧に負けたV・C。

花もシュンとしおれ、鉄華団の一部は失笑。

クリストファーやレクシーズに至ってはため息。

あまりふざけてはいけない。

 

「ちなみにカルディナ。お前の報告は一番最後だ。」

「宜しいのですか?失礼ですが、私の話が一番優先になるかと……」

「……最後にせねば、他の者達の報告が耳に入らない気がしてな。」

「酷い云われ様ですわ。」

 

しかしそれを否定する者はいなかった。

V・Cも「ぶふぉッ!」と爆笑。

そして大半が失笑し、カルディナより顔を背けた。

何故って、その時の眼光がゴーゴンより怖いから。

そんな光景にクリストファーとレクシーズは再びため息。

ともあれ、報告が始まる。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

「……報告は以上となります。」

 

最後にオルガが報告し、他のセクションの者達の補足を合わせる事で現在までの状況『第15項963綴』を読み上げた。

そして、その内容にカルディナは──首を傾げた。

 

「……しかし、何と言いますか……三流小説のような内容ですね。

「現実は小説より奇なり、であろう。実際にそんな事が目の前で起きたのだ、お前の手によって、な。

 

そう言われれば、ぐうの音でない。

レクシーズに釘を刺され、黙るしなかいカルディナであった。

 

「あと、報告書には載っていない事項だが……まず、ギャラルホルンの者達(馬鹿共)だが、全員に保釈金を要求する。特に上層の人間、教会関係者は相場の10倍。あの王子はあの国への『御布施』を今後払わない事で手打ちとすると、決定した。」

「……国営予算の100分の1を寄越せという、あれですか。」

 

『御布施を我が教会へ。出せば良いことあるよ。出さねば国を挙げて嫌がらせするぞ(総訳)』のお触れがある。

なまじ国力がある故の国家間の脅迫であった。

今回はそれに『王子を助けてやったんだから、免除もあっていいよね(総訳)』である。

国力の影響(脅し)による意向返しも含まれる。

アルドレイア王国だけではなく、周辺の国々にも圧力をかけているため、非常に効果的だろう。

 

「……ゾンダーメタルがあれば、あの王子の顔面に真っ先に投げ付けて、あの性格を矯正してやりたいところです。」

「そう短気を起こすな、カルディナ。こちらとしてもあやつは処刑対象だが、それによって戦争でも起こされれば、今の我が国の状況では防ぎきれん。」

「存じております。」

 

現状のアルドレイア王国の在中騎士は6割を損耗しており、兵力換算は実質全滅扱いだ。兵力を回復させるにはしばらく時間が掛かる上に、そんな時に下手に戦争を吹っ掛けられでもすれば、平時でも負けている兵力で相手をしなければならない。

そうなると全王国民を以ての総力戦になりかねない。それは愚策であり、レクシーズもカルディナも含めた全員がその愚かさを判っている。

残念ながら、現状ではギャラルホルンに対して報復戦は出来ない。

ただ……

 

「……もしゾンダーメタルを入手出来る機会があれば、試させてやる。その時は顔面に全力で投げ付けるがいい。全力でな。」

 

その一言にカルディナは笑った。

そしてレクシーズも笑った。

ただし笑顔は黒く、ひたすら真っ黒。

その光景に2人以外の全員が引いた。

ゾンダー化する前に顔面が破砕しそうだ。

 

ちなみに馬鹿王子の尋問で、アシュレーがひたすら話させた後、馬鹿王子に対してカルディナとの惚気話を煽るように自慢し、気絶するまで発狂させた事は、あえて触れられなかった。

残念ながら物理的プッツンは成されなかった。

残念。

 

「また、賠償に抗議があった場合、『ヴァルキサス渓谷跡』の警備を解除するつもりだ。」

「まあ!実に良い英断かと。」

 

──ヴァルキサス渓谷跡

ギャラルホルン教皇国に僅かに接するボキューズ大森林から伸びる渓谷跡である。60年以上も前から水流が途絶しているため、現在はボキューズ大森林に続く路となっており、他の区域より狂暴な魔獣の出現が絶えない場所でもある。元より左右を城壁より遥かに高い岩で隔離され、渓谷の出口のみが侵入口となってる。水源が何処か解らない程であるが、その渓谷出口はギャラルホルン教皇国の領土にあるものの、アルドレイア王国方面に向いているため、大雨が降れば鉄砲水がアルドレイア王国側を襲う、災害地である。

ただし、出現する魔獣達はアルドレイア王国側へ向かおうとせず、何故か渓谷出口からギャラルホルン側へ行こうとするため、今までは国力の影響(脅し)で不本意ながら警備、魔獣討伐をしていたが……

 

「今後は彼等自身の手で魔獣を相手取らせる、と。」

「ああ。こちらは手が足りん。自衛ぐらいはやって貰わねば。それと、ゾンダーの核にされていた人物だが……」

 

EZX-003戦、EZX-004戦を経て浄解された2名は、現在王都内の特殊隔離施設にて監視中だ。

とはいっても、ストレスが完全に沈静化しいているため、軽度の監視にとどまっている。

特に、EZX-004の素体にされていた女騎士は現在、自主的にカルディナに対し反省文を量産中との事。

しかしカルディナは、それを止めさせてもらえないかと思案する。

 

「良いのか?お前を殺しかけた人物なのだが。」

「行動からして私に恨みがあって、ゾンダーの核にされていた人物ですが、それはあくまでもゾンダー化によるもの。むしろ私の驕りを払ってくれた方です。感謝の念……は流石に抱けませんが、叱責という意味で、良い教訓となりました。故に、今はその方に恨みはありませんわ。」

 

EZX-004戦は、カルディナとって転換期である。

また、今や王国最強とされるカルディナに土を付けた人物だ。そのきっかけを作り出した人物には興味が湧いている。

 

「機会があれば「貴女の刃は確かに届いていた」とお伝え下さい。もしその気があるなら、一度剣を交える事は吝かではないです。」

「……わかった、伝えよう。」

 

だがあの馬鹿王子が起こした事案には、そんな要素はないので、こちらは除外。

 

「そういえば陛下は何故、マギウスの名を御存知で?あれの名は、私以外知る筈のない情報なのですが……」

「ああ、それは──これで知った。」

「それは───私の『勇者王ガオガイガー・コンプリートブック(自作)』!?」

「……に挟まっていた精密な設計図(ラクガキ)だ。お前にしては無用心だな。それにしても実に良いものであった。まさかこんなものを5歳から考えていたとは……」

「~~~~~ッ!!!」

 

出し抜いたと勝ち誇るレクシーズに、自身の知られたくない性癖がバレたように悶えるカルディナ。ついでに身体も痛くて身悶え。『勇者王ガオガイガー・コンプリートブック(自作)』はかつて状況説明の為、貸し出した資料である。私物とはいえ、忙しさに忘却し、自身の宝物をつい忘れてしまったのだが、それは自己責任としか言えない。

 

ちなみに、このような事に自覚ある者には顔を背ける権利を与えよう(筆者も含め)。

 

「……とはいえ、此度の事はこれの存在が幸いし、マギウス・ガオガイガーの存在を知る事で混乱を招く事がなかった。礼を言う。」

「………勿体なき、お言葉。」

 

事実、あの迷走と混乱を極めた中で、重要な情報を事前に持ていた事は希望を持つ事と同意である。

カルディナの行いは結果的に混乱を最小限に抑えていた。

でなければ、マギウス・ガオガイガー出現時には国王様や鉄華団が刺し違えてでもお嬢様救出という事態(自爆劇)になっていただろう。

 

「さて、我等が話せるのはここまで。次はカルディナ、お前だ。」

「……はい。」

「どうした??何か話せぬ事でもあるのか??」

「いえ。ただ……此度の事は、私も受け止め切れないところがありまして……」

 

非常に憂い顔のカルディナ。こんな表情(かお)をするのは演技でもワザとでもなく、この場にいる者はまず見た事がなかった。

 

「まあ、色々ショックな事が多かったからな。特にマギウス・ガオガイガーの事は確かに秘めておきたかったと、そう思う気持ちは解らんでもないが……」

「──その気持ちが簡単に消え去る程の衝撃でした。強いて言うなら『FINAL』でのゴルディオンクラッシャーが成功して尚、倒せない存在が現れた、と言うべきです。」

「「「………」」」

 

──表情が真に死んでいる。

そんな能面のような表情(かお)でカルディナは真っ当に答える。

……これは、聞くべきか。

 

「……聞こう。それとその時の状況を映像化してもらえるか?」

「「「───!?!?」」」

 

衝撃の告白に返した言葉に『そんな精神状態で(事やって)大丈夫か!?』と言わんばかりの視線を一身に受けるレクシーズであるが、どんな内容であろうとも(嫌でも)聞かねばならないのが国王(トップ)の仕事。

それなら最初から腹を決めて聞くしかない。

 

 

──だが、全員が後悔したのは云うまでもない。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「……これが、事実……!?」

「これが……妄想だと……頼む!カルディナ、そう言ってほしい!」

「間違えようもない実体験です。」

「カルディナ……」

 

カルディナの報告が終わった(※追加事項参照)後、10分間の沈黙を終えた後の第一声の言葉がコレである。

脂汗を流すレクシーズに、事実を否定したいクリストファー、ただ震えた身体を必死に抑えつつカルディナを見るアシュレー。

辛うじて言葉を発したが、会議室の中は肝が完全に冷え切っていた。

 

装備無しで安全な肝試しを行ったら、実はそこに終焉の存在(アザトゥース)がコンニチワ、と天元突破究極至高完全形態(付与魔法・ブースト全開)で待ち構えていたような構図に、誰もが肝を冷やしている。

 

文字に起こせば、三流小説に妄想小説をブチ込んだような、実に突拍子な事柄ばかり。

報告書なのに『重要書類に変な娯楽小説を混ぜ込んだ奴は誰だ!』と責められ、むしろこれを公表したら『あなた疲れてるのよ』、または『卿は少しお疲れのようだから休ませて差し上げろ』と非難されるのは明白。

機密文書である以上は秘匿されるが。

 

───文書だけ、ならば。

 

これらをカルディナの見た光景(ライブラリ)と共に話を聞いてしまうと、事態は『現実は小説より非情、そして絶望』に変わる。

 

獅子王一家とV・Cとの会合。

語られたGGGの末路。

ジェネシック・ガオガイガーの現状。

三重連太陽系とゾンダーの詳細。

ゾンダーと000(トリプルゼロ)との関連。

誰も知らぬ原初と終焉の領域(オレンジサイト)、そして覇界の因子(トリプルゼロ)の観測にはそんなイメージを与えてしまった。

 

そしてそのイメージを破壊した、カルディナ・ヴァン・アースガルズの生物としての進化。

「エヴォリュダーでは足りない」という台詞の後、義兄()をネオ・エヴォリュダーへと巻き込み進化させてまでの、更なる存在──レヴォリュダーへの進化。

自らの内に000(トリプルゼロ)───もといザ・パワーを内包して。

 

常識も非常識も粉々にして、浄解すら極めた生命の極点の一端みたいな存在へと爆誕した娘の姿を見たお父様(クリストファー)は、娘の境遇に愕然としていた。

同じくアシュレーも、同様だった。

オルガを始め、この場にいた大半はスケールの大きさに思考を停止。

意識を保っている者は思考の闇にガクブルと震える始末。

 

きっとこの報告書が完成した暁には、オレンジサイトに関する映像ファイルも書庫に「スパーキィィィーーングッ!!!」されるに違いない。(意味不明)

 

唯一、カインとアベルだけが驚愕の中、冷静を保とうと自身を律していた。

とは言えショックは大きい。

 

「ナノマシン、AZ-M。無限情報サーキットV・C……紫の星の遺産か。まさかこの星で出会えるとは……しかも間違いない、オレンジサイト。そして──000(トリプルゼロ)か。」

「まさか三重連太陽系に関する重要物達にここで再び相見えるとは……」

「知っておられるのですか、お二方?」

「知ってるも何も……紫の星のものは語る必要はないくらいに。そして()()は間接的ですが、三重連太陽系が滅んだ要因の一つですからね。」

「何と……!」

「だが、今その説明すると凄まじく話が脱線しかねん。申し訳ないが後日、その機会を作る事で勘弁願いたい。」

「……解りました。」

 

それは、三重連太陽系崩壊から『ソール11遊星主』の事に飛び火しかねない。

そうなると一番非難を受けるのは、他ならぬアベルであり、本題を妨げかねない。

ここは説明の日を改めるしなかった。

 

話を戻す。

 

「ではカルディナは、得たその力でギャレオンやガオーマシン、そしてガオガイガーを強化した訳か。」

「破れて再起するなら思いきり、と思いまして麗雄博士に助力を頂きました。それに……私達が設計したガオガイガーでは、これから待ち受ける困難に勝てる性能はない……そう判断得しました。それで博士は、私の能力を最大限に発揮できるようにした方がいい、と。」

「故に、あの形態に変異させて戦ったという訳か。」

「空想とは言え、一番熟知してますから。あと、魔法に不慣れな博士でしたが、魔力(マナ)を量子エネルギーとして見て、一回のみであれば問題なく稼動可能な設計に手直して頂きました。」

 

当人曰く「それが現時点での限界、ただし道のり途中に研究は進める」との事であった。

そこにカインとアベルが口を挟んだ。

 

「その件だが調べた結果、驚く事がわかった。」

「あの、獅子王麗雄と言いましたか?彼が設計したエネルギー回路は、Gストーン、Jジュエル、魔力(マナ)、そしてザ・パワーの全ての親和性が良い仕様でした。」

「親和性がいい??」

 

それぞれのパワーの癖、特性をそれを正確に掴み、絶妙なバランスで調整されていた。

そして少なくともこのセンスはカインもアベルをも超えていたという。

ただ、起動後はカルディナとV・Cとの直接制御(フルコントロール)にて稼動したが……

 

「流石に過剰過ぎるエネルギー負荷までは読みきれなかったようで……いえ、()()()()()()()()()()()、ですね。回路が全て焼き切れるのを予見していたようで。」

『……やはりでしたか。上手く行った直接制御(フルコントロール)下であっても、あの戦闘を持たせるに精一杯でした。回路に回していたAZ-Mが戦闘後、全て機能停止しました。だから『一回限定』だったのでしょう』

「で、しょうね。それ程、カルディナとあのガオガイガーの組み合わせは強烈極まりない。GストーンとJジュエルの複合炉に魔力(マナ)による増幅ですか?後は予想ですがZオーブとやらのザ・パワーも少し使ったのでしょうね。後は余りある『勇気』ですか……カルディナが叩き出したのは『無限出力』、『完全勝利の力』もいいところです。」

「むしろ『絶対勝利の力』と言えばしっくり来るかな?」

 

それは既にGストーンを超え、総合出力は『Gクリスタル』の域である。

少なくともマギウス・ガオガイガーにはそれだけの力が備わってしまっている。

故に下した感想は「ガオガイガーの形をして、キングジェイダーをも超えた『何か』であった。

今後、マギウス・ガオガイガーのTGSライドを中心に構成するエネルギー循環回路を『TGSドライブ』と称する。

 

「ちなみに、あのガオガイガーのフルドライブに耐えられる部品(パーツ)、そんなのは現行で揃えられるモノにはありませんよ。ヘルアンドヘヴン(フルドライブ)一回で、ドライブ系統を総取り替え……非効率です。」

「過剰過ぎて、危なかっしいね。あのガオガイガーのエネルギー出力を受け切れる『器』がないのに……ジェネシックでの戦闘じゃないんだ。よくゾンダーはおろか、自分が消し飛ばずに済んだねぇ。せめてジェネシックに使われていた素材が見つかればいいかな??TGSドライブは試行錯誤しながら作る事にするよ。」

 

魔力貯蔵(マナ・プール)の参考が幻晶騎士(シルエットナイト)なのだ。無限出力など貯められる訳がない。

カルディナ達が開発したガオガイガーが辛うじて受けきれたぐらいだ。

 

「……では、御二人の意見をまとめますと、どのような結論を??」

 

「「 出力は現状の半分で充分。」」

 

「貴女の場合、どうせゾンダーが出たら昼夜問わず飛んで行くでしょう?連続出撃ありきでの構造強化が最優先事項です。それとリミッターは必須ですね。」

「幸いにもこれまでのゾンダーとの詳細な戦闘記録、エネルギー出力の記録は手元にある。調整は出来る筈だ。今後の事を踏まえて、内外共に剛胆で堅牢な造りにしないと、命がいくつあっても足りない。」

 

2人は対策を述べる。その言葉こそ厳しいがその内容はマギウス・ガオガイガーの欠点を補うもの。

それは『これで心置き無く戦えるだろう?』という2人の配慮であった。

それにカルディナは顔をほころばせる。

 

「ありがとう、ございます。」

 

今、黒き勇者に戦う術が舞い戻ったのであった。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「……さて、これからどうしたものか。」

 

カルディナの報告も終わり、心に落ち着きをレクシーズが、場を改めるように洩らす。

これから───対・ゾンダー戦と国防の戦力についてである。

その事にティ・ガーから話が始まる。

 

「ゾンダーに関しては、現状カルディナ頼みしかあるまい。だが、今回のように2体同時……いや、カルディナから出された報告書には『複数個体の発生の可能性』があったが……」

「……そうだった。」

 

過去、カルディナがクストとムルに頼んでゾンダーの調査をして観測出来たのが500以上。

そしてそれらは全て何らかの形でオブジェ化している。

今回の戦闘で、ゾンダーの同時出現の可能性が充分起きた以上、複数出現は普通にあってもおかしくはない。

特に王都に出現した個体はEZX-002、003を大きく凌ぐ。

それについてはカルディナとV・Cより言及があった。

 

《こちらをご覧下さい、EZX-004のゾンダーメタルの拡大映像です───》

「む?中央に位置するあれは……何かの宝石か??」

「あれがあると何かの眼にも見えなくないが……」

「あれは魔石──触媒結晶です。」

「何??」

「このゾンダー、何らかの方法により触媒結晶を()()()()()()し、魔力転換炉(エーテルリアクタ)として活用していたと思われます。」

「「「───!?!?」」」

 

戦闘中に起きていた不自然な空気の流れ───それは魔力転換炉(エーテルリアクタ)特有の吸気圧縮の風の流れであった。

本来のゾンダーメタルはそれ1つで全て完結しており、豊富なエネルギーさえ確保出来ていれば機界昇華までを単独で行える。

つまりゾンダーは空気中の源素(エーテル)を集め、魔力転換を行って魔力(マナ)を自身のエネルギーとして使用していた事になる。

魔力転換炉(エーテルリアクタ)とは、源素(エーテル)魔力(マナ)に転換する永久機関。

これを考え出した存在は正気の沙汰ではない。

 

ゾンダーがこの星で発見されて500年以上経過している。GストーンとJジュエルが互いに高め合う関係と似たように、魔力(マナ)にはこれらの力を高める性質がある。

負の感情(ストレス)によって力を高めるゾンダーメタルとて、Gストーンとは鏡合わせの様な対の性質を持つ以上、魔力(マナ)に反応する事は、ある程度想定出来る。そうなれば……

 

「騎士は魔法が使えます。それと核にされた者の知識、能力はそのまま反映される以上、魔法の使役は当然となりましょう。」

「それに魔力転換炉(エーテルリアクタ)自体、機密の塊のようなものだ、時間が掛かったとはいえそれをゾンダーメタルで再現出来た、という事は……再現した人物もそれに見合った知識を持っている、という事になります。」

「何と……!?」

「そういえば、EZX-002の核だった者は、多少ながら風と雷の魔法を使えるとあったな……」

「EZX-003は特に適正がなかった。」

「EZX-004は云うまでもない、か……」

 

つまり、今後のゾンダーとの戦いではストレスの強い者は大前提に、騎士ないし魔法使いが優先的に狙われる可能性も高い、とも解釈が取れる。

そして同時出現の可能性も。

 

「だが、それならば……何故今までそれをし来なかったのだ?時間は十二分にあったはずだが……」

《そこは不明です。既に現れた者達がオブジェ化した理由も不明です。》

 

だがもしかすると、その時間経過こそ理由なのかもしれないが、今はそれよりも切迫している事案があった。

 

「こうなると、ゾンダーと五分に対峙出来る存在が、カルディナ以外いないのが問題だ。ガオガイガーがもう一機───いや、せめて核を摘出出来る存在がいれば……いやしかし……」

 

そう思うレクシーズは何か思案する。

が、現状そんな存在はいない。ましてやガオガイガーがもう1機など……

 

「──いや、無ければ創ればいい。そしていなければ、探せばいい。」

 

その言葉にしん、と静まり返る会議室。

何を創る??

何を探す??

 

「……あの、陛下??まさか──!」

「ああ。カルディナ、私はそなたにガオガイガーの2号機の創造を命ずる。」

 

その宣言の後、会議室はしん、と静まり返り、そして大混乱の渦が起きる。

宣言したのはまさかの2号機の創造であった。

だが、クリストファーとティ・ガーはレクシーズ同様に冷静であった。

その様子からして───

 

「本気……なのですね、陛下。」

「本気以外の何がある。これは『王』としての命令だ。それに不可能とは言わんだろう?」

「それは……初期型(地球仕様)であれば可能かと。それにマギウスの仕様を参考にすれば機体の問題はクリアされますが……」

「──それで良い。早急に対ゾンダーの戦力を仕立て上げよ。これ以上、我が国は負ける訳には行かん。」

「……陛下。」

 

それは為政者としての、義務であり使命。

これ以上の負け、損害を出したくないという気持ちと、魔獣討伐国家としての誇り(プライド)からの結論なのだろう。

2号機の創造はそんな意図があるように思えた。

 

「そしてもう1つ。」

「??」

 

レクシーズが机からとりだした紙束をカルディナに見せた。

それは設計図のようで───

 

「これは……~~~~!?!?

「ナンバー順ならば『3号機』、と言った所か、そちらも頼みたい。」

「~~~~~!!!……はぁ。」

 

悶えに悶えた後、全てを諦めたようにカルディナは溜め息を吐く。

おそらく『ただの3号機』ではカルディナ驚かない。渡された設計図に描かれていたものとは──

 

「……これは『ガオガイガーをベースにした、国王機』という解釈でお間違えないでしょうか??」

「ああ、相違ない。」

「ご自身の専用機、でゴザイマスカ……」

 

荒削りで未熟なところはあるが、精密な設計図がそこに描かれていた。

デザインの癖からガオガイガーの建造を手伝ってくれたミハイル・S・イェルツィーナ子爵が手掛けたものだろう、間違いなく旗機(フラッグシップ)になれる機体だ。

しかもどんな数奇な巡り合わせか、これは……

 

───プィっ。

 

(……首謀者は陛下として、お父様とティ・ガー様がカイン様への根回しに───ぐぅっ!アベル様までグルとは……!!全員で私のマギウスの設計図、見ましたわね!!)

 

そっぽ向いた4人の大人を見て腹を立てるも、これは出来過ぎた決定事項だとカルディナは腹を括る。

 

「──判りました。この際デザインには口を出しません。ただギャレオンは私共で製造しますが、ガオーマシンに相当するメカ達は、王国の工房で製造する事を進言します。」

「後の事を考えると……わかった、そうしよう。ただ、調整の出来ぬ部品に関しては頼む。」

「委細承知しました。」

 

それはGストーンやGSライドの事である。

こればかりはどうしようもない。

 

「ならこの件は一度これで終わりとする──で、次の議題だが……」

「まだ……あるのですか??」

「……私もしたくはないがな。」

 

頭を抱えるレクシーズには、どうやらゾンダーとは別の気掛かりがあるようで───

 

 

───コンコンコン

 

 

その時、ノック音が響き、全員がドアを注視。

そこから護衛の騎士が顔を出した。

 

「会議中、失礼致します。ランドグリーズ領が公爵、バランド・B・ランドグリーズ様が面会を希望されています。どういたしましょうか?」

「ランドグリーズ卿が?」

(え、誰??)

(確か、この国の4つの公爵家の1つで……そのランドグリーズ家の、当主??)

(後は今の国王派閥と対峙する『武闘派』ってところの筆頭者だったような……)

(……何でこのタイミングで来やがる。)

 

このタイミングでやって来た、厄介な人物。

それにレクシーズはどうするか───

 

「わかった、ここに通せ。」

 

即答だった。

そして豪快に扉を開け、やって来た恰幅の良い、金髪のオールバックの御仁、バランド・B・ランドグリーズ公爵。

 

「───大丈夫か!?レクシーズ!!」

「大事無いぞ、バランド。そう慌てるな。」

「まったく、変わらんな、バランド。」

「他の者の目もある、少し落ち着け。」

「む、すまんな。」

 

対立派閥の筆頭者であるから、見下したような不遜な態度を取ってやってくると思いきや、非常に慌てた様子で心配、しかも呼び捨てでレクシーズを呼ぶ。

それを当の陛下(レクシーズ)は平然として応え、ティ・ガーは温かい目で笑い、クリストファーは悪友に呆れるような態度をとる。

 

更に。

 

「き、緊急!!上空より飛行する蒼い巨人と……翼を生やした巨大な人馬が王都に急接近との報告!!」

「何!?まさかまたゾンダーか!?」

「V・C、映像出せます!?」

《はい、此方に───》

 

そして映し出された映像を見て一同は驚愕する。

凶悪な悪鬼と、翼を生やした異形。それに尽きる姿をしていた。

 

「直ちに残存勢力を集め、迎撃を──!!」

「お待ち下さい、陛下!!」

「……カルディナ??」

「この2機の機影……蒼武者と翼が生えてますが人馬型の幻晶騎士(シルエットナイト)……どうやらこれらは、フレメヴィーラ王国の……私の友人達のようです。」

 

そんな番狂わせな人物が多々やって来た。

 

 

 

《NEXT》




前半終了。
これまでの経過と、対ゾンダーへの対抗策となります。
ゾンダーへは、複数出現の可能性の影響もありマギウスの他に2号機、国王機としての3号機が建造される事となりました。
次回は『国防』についてです。
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