また長くなったので、分けます。
ちなみに『千値練』AMAKUNI機神シリーズより、ジェネシックガオガイガーの他に、何とキングジェイダーが発売されます。(予約は2022年11月30日まで、価格:63,800円(税込))
同時に、コミックファイアクロスにて『勇者王ガオガイガー〈外伝〉キングジェイダー 灼熱の不死鳥』の前編が無料公開中です。
Zマスター戦で、ザ・パワーを解放し、ボイド効果で宇宙の果てに跳ばされたジェイアーク、そしてアルマとJ。
そこで彼等は宇宙収縮現象を観測し、その中心に向かうが、ESウインドウの中で接敵したのは銀色のジェイアーク。
「──そちらは量産型。こっちは主力艦だ!」
「お前は……J019!?」
「ジェイバトラー!!」
かつてゾンダーの先兵となり果てた黒い同型艦、ジェイバトラー。
甦った灼熱の不死鳥の目的とは───!?
そしてこの作品の影響で、多少ながら拙話のストーリーの練り直しが決定(泣)
タイミングが良かったのか悪かったのか……
◯貴族達の動揺
「ふざけるな!あれは我々が『勝てない』と言っているようなものだろう!」
国王との会議を終えた貴族達、その内容は彼らにとって凄惨なものだった。
「国王の仰る『ゾンダー』という怪物……それが我等には勝てぬというもの。そして唯一、対抗出来るのは『ガオガイガー』とかいう鋼の巨人らしいが……」
「王都にそんなものなかったぞ。強いていうなら、獣の姿をした巨大な何かは訓練所にあったが……」
「王は若くても耄碌されたか。巨大と言えどもゴーレムより少し大きいだけではないか。あんな剣も振れないものに国が守れるなど思えん!」
『武闘派』の者達からは燦々たる罵倒の言葉が吐き出されていた。
それは無理もない。彼らは王都に起きた悲劇を体験していない。
そして彼らは日常的に魔獣と戦っているため、比較対象がそこから動かす事が難しくなっている。せめて決闘級がいいところであって、師団級が滅多にと言っていい程戦った事がない。そんな経験をしたのは単独殲滅したカルディナ、そして若かりし頃のレクシーズがクリストファー、バランド、ティ・ガーら中隊を伴って三日三晩かけて殲滅したぐらいである。
焼き払われたような凄惨な王都の姿を見ても「魔獣ぐらいならこれぐらいはする」と、拡大解釈で危機を持てず、それ以上の実感も想像も出来ない。これから来るゾンダーの悲劇を想像するには相当な荒療治が必要と、実感するバランド。
「静かにせんか。既に決定事項だ、これ以上騒いだところで意味がなかろう。」
「そう申されましても……では公爵はどのようにお考えで?」
「そうです、我等が弱いと断ざれてしまったのですよ!?これでは我らの面目が……!」
「まずはやらせてみればよかろう。だがそんなモノが実際にあったとなれば、いずれはボロが出よう。その時こそ、我ら『武闘派』の出番だ。それに、王国側より戦う力、情報を提供してくれるのだ、こちらの懐は大して痛まぬ。そしてあるモノは使う、それでよかろう??それとも……それが出来ぬ器量の狭い者が、『武闘派』にいるとでも?」
「い、いえ、そのような者がいるとは到底……!」
「なら良い。国王が愚かになったか、見定めてくれる、フフフ……」
大胆不敵な態度のバランドを見て、心強いと感心する『武闘派』の貴族達。
その中の1人、エイゼルク・S・ゾイバッハ子爵も……
(……フフフ!流石、バランド卿!この方さえいれば『武闘派』は、いずれ王国を掌握出来る!そして我がゾイバッハ家はその中核にッ!!)
(……早く出来ないかな、私の機体。楽しみである!)
最高潮の『武闘派』の貴族達の考えと、バランドの表情と思考は全くの別々であった。
〇職人達の憂鬱と、奮起
───ガオガイガーが帰って来た。
だが、全貌が全く違う事に驚きを隠せる訳がなく、動揺が走る。
機体調整のため、
「同じものなんだよな?何であんな姿なんだ??」
「黙示録の……獣か??絵面がヤバいな。邪神って言われても否定出来ねぇ。」
「王都のゾンダーとの闘いで、ああなったんだよ、ちなみに犯人はお嬢様な……あ、これ詳しい資料な。」
「あんがとよ……ってお嬢が!?どうやって!!?」
「だから資料見ろって。」
そして資料(という報告書)を見た職人達は驚き、驚き、驚き、そしてうなだれた。
「……なんつーモンになりやがった。」
「つーかよ。このガオガイガー、前にお嬢様の持ってる映像で見た、ジェネシックって奴に近くない??性能もそれに近いとか??アハハ───!」
「よく解ったな。現にギャラルホルンの一個師団もまとめて潰せる性能を持ってるぜ。現に潰したし」
「───orz」
ここにいる職人達は腕が良く、そしてある意味理解が早い。
それが何を意味するのか。
自分達の手掛けた
魔法によるブーストがあろうとも、それ以上の性能は発揮出来ない事も。(もうそろそろヤバめ)
ついでにカルディナの力量も加えても、ここまでは出来そう……と、想像出来た。(これが限界)
だが、それ以上は
───少なくとも自分達が創った作品が、そんなぶっ飛んだ事をしでかせる性能を秘めている訳がない。
それくらいは解っていた……はず。
「「「「……どうしてそうなった。」」」」
だが現実は非常に非情である。
「軟鉄の正式名称が、AZ-M??あれってただの鉄じゃないのか!?」
「動力炉にどうやってもう1つGストーンが……え、Jジュエル?!」
「お嬢様が瀕死になって復活して、どエライ儀式行って……レヴォリュダー!?ナニソレ!?」
「
多々混乱があり……
「「「つーかほぼ、三重連太陽系由来のものかよ!!」」」
(一部誤弊あり。)
明かされる秘密に絶叫する一同。
そして一通り騒いで気持ちが落ち着いた後、彼等にはとある不安が浮かんだ。
「……なあ、これって俺達いるのか??」
いくらガオガイガーが元を辿れば三重連太陽系の物と言っても、ここにあるのはカルディナを中心として造り上げたものだ。
それが姿形を変えて、性能が極限までに上がった原因が三重連太陽系の産物であると言うことは、以降の彼等の存在意義が失われる事を意味する。
しかし、それに待ったをかけた者がいた。
ミニガイガー姿のカインと、ウサリン姿のアベルである。
「それは早計だよ。これを見て欲しい。」
職人達に見せたのはギャレオンやマギウスマシン内部。そこには……
「……内部の
「ああ。構造こそ変わっているが、基礎のコレは俺達の仕事の跡だ。ん!?もしかして他のところも??」
「ええ。外見こそ変わっていますが、必死になって行った
眉間に皺を寄せるように答えるアベルと、苦笑いするカインは、彼等に次のように話す。
「形こそ違うのは、結局のところカルディナの意志であり、そうせざる得ない状況だった故だ。けれどもそこに込められた君らの熱意と技術は確かに形として残っている。ガオガイガーの土台としてね。それがあれだけの変化をしながらも圧倒的な力を発揮出来た証と言える。」
「AZ-Mの作用を受けながらも、結果的に貴方達の錬成技術による
カルディナとV・Cが制御したAZ-Mとザ・パワーの影響下であっても、職人達が施した
むしろ、エネルギー回路がダメになったのは、カルディナとTGSライドの発する力が強力過ぎたためで、結果キングジェイダーのJファイバーや、ジェネシッククラスのGファイバーを要求するレベルに至るので、職人の責任にするには無理があり過ぎた。
「これからの改良こそ日進月歩であり、この先は前人未到だ。けれども
「私とカインは科学一偏倒……科学しか触れた事がありませんが、その最高峰の技術には魔法じみたもの……いえ、理論も技術も判っていながら魔法と思える技術もありますが、その踏み込んだ域は私もカインも浅いです。ですが貴方達もその領域に踏み込んだのです。カルディナのあれは、本人の資質とイレギュラーを伴ってですが、一人ひとりが取り組み、組み上げたその土台を作ったのは貴方達、という事です。わかりましたか?貴方達が造り上げたものの意味を。」
「これは、三重連太陽系の関係者としては、奇跡を造り上げたと思えるぐらいだ。」
その言葉に職人達は衝撃を受け、そして黙り込む。
職人達はそれぞれが常日頃、最高のモノを造り上げる事に心血を注いでいる。
例え、カルディナからの入れ知恵であったとしても、その品質を高めたのはここにいる職人達である。
まして、本家ともいえる人物から『奇跡を造り上げた』と言われようものなら……
「ありがとうよ、カインさん、アベルさん。そして俺達はどうにかしてた。」
「ああ。アンタらにそんな事を言われて、腐っているのは間違いだ。」
「俺達……いや、みんなの力を合わせれば、ちゃんとその『新たな領域』ってのに行けるんだろう?なら俺達にはその腕があるって事だ。」
「けど、それで満足しねぇ、いや出来ねぇな。俺達はもっと高みを目指す!そう、職人としての高みを!!」
「ああ、そして俺達の力で、このガオガイガーを、ウチのお嬢様を最強にしてやろう!!」
奮起する職人達。
そして彼らは己が仕事を全うし始める。
例え一人ひとりの力は小さかろうが、合わされば『奇跡』を起こせる。
それが彼らを技術をこれからも高めていくのであった。
〇カインとアベルのこれから
マギウス・ガオガイガーの解析と修理が一通り終わった深夜、カインとアベルは地下格納庫にいた。
そして2人でマギウス・ガオガイガーを見ていた。
「……改めて、コレをどう思います?ガオガイガーの開発者である、カイン殿は。」
「何だか棘のある言い方だが……そうだな。実に面白い、とでも言っておこう。」
「その心は?」
「ガオガイガーとは、私が開発したジェネシック・ガオガイガーのジェネシックマシン、
「ほう……」
緑の星の指導者・カインが開発したスーパーメカノイド・ガオガイガーは、ファイナル・フュージョンする支援機によってその姿、能力を変える多面性を有していた。
それは惑星探査や極地行動をガイガーに行えるようにするため、あえてファイナル・フュージョンする支援機にはマルチ・フィッティング・マシンとしての能力を持たせている。
つまり、元々それだけのガイガー用の支援機があった事になる。
その中のジェネシック・ガオガイガーは、ガイガーの支援機の集大成であり、強大な力を持つ以上に、対・ソール11遊星主用に開発されているもので、カイン本来のメカノイドは、ギャレオン=ガイガーである。
カルディナが聞いたら心躍らせる話である。
「……しかし、何故最初から全てに対応出来るように造らなかったのですか?」
「それは無理だな。それでは一々、メカノイドを造る事になる。ガイガーを造った当初はそんな余裕がなかったのも理由になる。」
「だからマルチ・フィッティング・マシンの形にした訳ですか。」
「それと……合体にはロマンがある。カッコいいだろう?」
「……」
そこはどうにも理解出来ない。
アベルとて変形するメカノイドは造った。しかし、それは機動性や汎用性を重視したためで、デザインセンス以上にロマンを求めた事はなく、造ったモノもジェイダーやキングジェイダー等、またソール11遊星主ではピア・デケムを見て頂ければわかるだろう。
構造的に単純明快なのだ。
構造が複雑になれば、それだけ強度が落ちるのが最たる理由だ。
それをこれでもかと頑強にしたカインは、ロマンと実用性を追い求めたある種の変態技術者とも言える、とアベルは思った。
そこだけはどうしても感性が合わないのは昔から、らしい。
話を戻す。
「それ故にかな?私の知らないガイガーが作られ、私の知らないガオガイガーが出来た。そして未知の領域に踏み込んだ技術で創られた存在が目の前にある……実に面白い。」
「そうですか。」
「そう言うなら君も、仕方ない状況とはいえ、ガオガイガーばかりに携わる関係上、面白くないとは思っていないかい?」
「思いますよ。アカシックレコードから引っ張ってきたメディアが元とはいえ、何故ジェイダーを、そしてキングジェイダーを造らなかったのですか、と。」
「……100メートル超えもするメカノイドを、この世界の技術で、どう再現しろというのかね?」
「う。」
「それに当時のカルディナがジェイダーに着手しても、プラズマウイング、そして反中間子の技術で躓くだろう。何よりJジュエルがない。彼女はそういうところが凝り性だからね。断念するとすると思うが。それに既にジェイアーク級『000』の存在を知っている。あれがある以上、造る確率は低いんじゃないか?」
「……まあ、それはこれからと言いましょう。」
Jジュエルがようやく精製出来たと言うのに無茶振りするアベル。
だが、カルディナが断念した理由はそれだけでないのを二人は自覚出来ていない。
しかしメガ・フュージョンしたい確率ならゼロではない、はず。
──
「……造る気があるのではないですか?ジェネシックを。」
「………」
アベルの問いに、カインは黙る。
何故ならその問いには、イエスともノーとも言えるからだ。
環境的には職人達の技術は確かなもので、魔法の応用によるエネルギー循環は足りない力学技術で埋める事が出来るのは既に確認済みだ。
何よりGストーンを精製する過程で、カルディナは既に『Gクリスタル』の精製に成功しているのだ。
今すぐには出来ないが近い将来、ジェネシック・ガオガイガーは創造可能な領域に出来るのだ。
そしてカインは───
「今は……いや、もう再び造る気はない。」
「意外ですね。理由を聞いても?」
「私のジェネシックは既に『新たなる勇者』に引き継がれている。ギャレオンが選んだ以上は口を挟むつもりはない。そして、今は
「意外ですね。
「あれの有用性を間近で見せられたのだ、私とて君と対立した頃とは違うさ。」
「……そうですか。それならば言う事はありません。」
「ちなみに君はどうするのかな?私にジェネシックを造ると尋ね、自分は造らないとでも?」
「いえ。私も作る予定ですが……まだ定まっていません。何しましょうか……」
「
「 そ れ は 絶 対 に 有 り 得 な い 。」
「……済まない、失言だった。」
「解ればいいのです。」
搭載していない筈なのに、シルバリオン現象を起こす
取りあえず、
……
「さて今後の工期の事だが……」
「……ああ。レクシーズの前でガオガイガーの2号機、3号機造るとか言ってましたが、流石に現在の設備では拷問ですよ。」
「確かに。カルディナ達はそれで良いと思うだろうが、流石に工期が半年だったが、そこまで待てるとは思えん。せめて1ヶ月だろう。」
「ゾンダーの同時出現は厄介ですからね。具体的には??」
「当面は、ギャレオンを2機だね。支援機は別に造るから問題はない。」
「では工期を短縮するために、量子万能工作機でも創りますか。」
「それが妥当かな?Gストーン、Jジュエルがあるならエネルギーはどうにかなる。」
「完成品は……そうですね、『物質瞬間創成艦フツヌシ』とやらをモデルにしましょう。」
──『物質瞬間創成艦フツヌシ』
『ガッツィ・ギャラクシー・ガードR&D』に所属する筈であった研究開発モジュール兼移動型マテリアルメカニックプラント、その5番目のディビジョンフリート『ディビジョンⅤ』としてGGGオービットベースに配備される手筈であった。
特徴として『三式空中研究所』と『水陸両用整備装甲車』両方の長所を備え、必要な素材を『創世炉』と呼ぶ工房でGGGに必要なメカニックや、勇者ロボを『自立型コンピューターシステム』での集中制御により『GSライド』が発する膨大なエネルギーを用い短時間で製造する機能を持つ。
超AIをシステム調整するディベロップルーム、『GGG諜報部』によるセキュリティ等も備えるが、何故か国連防衛会議に採用を見送られ、竜姉妹を建造した後、『ウルテクエンジン』の機能を止められ、フランスの『フェリックス・ボレール競技場』地下に封じられた。
その理由は『物質を瞬く間に創世する』の名称を体現させる能力が、機界文明に近いと判断された為である。
実際にフランス空軍の戦闘機が、船体に無数の砲門を自己増殖させ撃墜し、フランス陸軍の戦車が素材として利用された際は『触手によって喰われる』状況と捉えられ、兵士達を戦々恐々とさせた程だったらしい。
この情報をリークした国際犯罪組織『バイオネット』は『ビークルロボ』の『GSライド』を利用して『フェイクGSライド』を大量に生産させる計画を練り、そして後にビークルロボ『光竜』が拉致され、そのGSライドを用いられ、大量のフェイクGSライドが生産され、バイオネットに利用される事に。
また『創世炉』ごと取り込んだ『Gギガテスク』が最終的に創られ、再創成による機体再生によりパリにて猛威を振るうが、応戦したガオガイガーが、大破したフツヌシ内にあったハイパーツール『モルキュルプラーネ』で、Gギガテスクを『芥子粒』に還した事で決着した。
ちなみに、この事件は原種大戦中の出来事で、頭脳原種との闘いの後に起き、その際ゴルディマーグはオーバーホール中であったため、ゴルディオンハンマーの使用が出来なかった中での闘いであった。
「……曰く付きのものじゃないか。大丈夫なのかい??」
「使用者を限定する方向でセキュリティを構築します。それに今の環境で創っても、素材から分子レベルで錬成構成する、基礎資材程度しか出来ませんよ。暗黒物質の使用なんて出来ません。それに研究所や整備環境が備えられたデカブツなんてもっての他。せいぜい……
「まあ、それぐらいが妥当……いや、うん、まあ素材はAZ-Mで、制御システムもV・Cに担当して貰えば何とかなろう。しかしそのデザインは───」
「では、そのように。システムを構築しましょう。」
(……聞いちゃいない)
そして後日創り上がった『物質瞬間創成艦フツヌシ(仮)』、もとい『物質瞬間創造高速移送艦サクヤ』。
そのデザインは
また、その仕様と性能に頭を悩ますカルディナであったが、基礎資材が高品質かつ大量生産出来る環境の誘惑には勝てず、苦渋の末、了承する事に。
だが、一言言いたい。
「……これ、なんて艦◯??」
艦〇であっても、方向性はアル〇ジオだ。艦の創造も出来たが高速飛行移送艦だった。
しかし、これを機にギャレオン2機の完成が早まったのも事実。
そして当然ながら、このフツヌシを廻って当然トラブルが起こり、制御担当のV・Cが、明後日の方向に暴走する、という珍事態が発生するが、それはまた別の話。
◯ギャラルホルンの動向
「──そ、それは困る!!」
「困る??それはどういう事かな??」
会議より4日後、『ギャラルホルン教皇国』の外交官達が訪れて来た。
普段は強気に、多少上から目線で高圧的な態度を取っても問題なかったが、今回は自国の軍勢が返り討ちにあったという寝耳に水の事態を受け、赴いたが事態は彼らの予想を遥かに超えていた。
それはアルドレイア王国の外交官──クリストファー・エルス・アースガルズ公爵の冷静でキレた態度を見て明らかであった。
「こちらに対する国境の無断越境、及び警告なしの攻撃、それによる国王への攻撃……それだけでも貴国への賠償は、まずこれだけだ。」
それは国家予算の三分の一に匹敵する金額であり、到底払えるものではない。
いや、むしろこれだけの金額を脅しの名目で払わせていたのは、自分達であったが、今では脅される側に立たされていた。
「……まったく、貴国の王太子(王位第一継承権を持つ人物)は無能……いやそれ以下かな。本人に伺ったところ
……反論したかった。
国の威信より、親としての心情と
しかし、理路整然とされた文脈は一切の反論を砕き、脅しの文句は柳のように受け流されてしまう。
挙句の果てには自国の王子をボロカスに言われてしまうが、全て事実からの正論で返す言葉がない。
あのバカ王子は要らぬ事をポンポン言っているので、反論の一つ一つにケチが付く始末。
身内に足を引っ張られる交渉とは、非常にやりにくい。
外交官の胃にかかるストレスは相当なものだ。
「そ、そんな事を申されると、貴国に災いが起こりましょ」
「──126人。」
「!?」
「今日までに来た間者の数だ。ちなみに全員が口を割り、所属もはっきりしている。これがリストだ。」
そう言って目の前に出された書類の山。そこには工作員として送り出したギャラルホルンの間者達。
汚れ役を一手に引き受ける部署があるのは外交官も知っているが、真偽を含めてもあまりにも証拠が揃い過ぎている現状、言い逃れできる範疇ではない。
ちなみに間者を一人残らず淘汰しているのはカルディナの『影』達である。
主がギャラルホルンのせいで倒れた原因を作ったという事で全員がブチ切れており、それぞれがV・Cの端末を装備し、間者の淘汰、尋問にあたっている。
例え口を閉ざそうともV・Cの端末がある以上、カルディナと同じく思考の読み取りが可能なため、全員が全員、身分を明かされるという公開処刑を行われてしまった間者は一人残らず再起不能と化している。
そんな裏話を知る訳もないギャラルホルン側にはもう逆転の手はない。
「で??」
クリストファーは改めて問う。アルドレイア王国側の要求を全面的に呑むか、拒否するか。
呑めばギャラルホルン教皇国の威厳は墜ちるし、拒否すると他国からの信用が失墜する。
そもそも、今回の会談はギャラルホルン側が(バカ王子の影響で)不利な状況にある。
何より『カイエル教』の信用にも関わる。
どうしたら良いか……
その時、外交官の1人がやれやれといった様子でため息をもらした。
「……わかりました、貴国の要求を全面的に呑みましょう。」
(す、枢機卿!?しかしそれでは……!?)
(此度は我々の落ち度です。カイエル教の教えを以てでも、王子には届かなかった、そう結論付けるしかありません。それに彼らは不自然なくらいに我々の策を破っている、こうなると愚策は墓穴を掘るしかない。ここは一から出直した方がよいのでは??)
(……わかりました。)
「………」
そして交渉に決着が付き、捕虜が返還された。
それは歴史に刻まれる程のギャラルホルンの惨敗の一頁となった。
……その後日のギャラルホルン教皇国の一室にて。
「……全く、とんだ出費でしたねぇ。」
「全くだ、ギムレス卿。」
そこには仮面を被った司祭と、とあるギャラルホルン教皇国の軍務卿の地位を預かる者が密かに対談していた。
軍務卿の名は、イズナリオ・L・ファリド。
……察しが良い方は解るだろうが、
当の本人は自覚がないが、転生者である。
そんなファリド公は先の交渉で被った被害を振り返っていた。
「まさかあの王太子が、ここまで愚かだったとは……」
「教育係の長に任命されたエリオン公の面目が丸潰れなのは良いのですが、それを推挙した私や貴方の面子も、ね。あそこまでの軍勢を以て大敗とは……何も言えません。いっそ切り捨ててはいかがでしょう?」
「利用価値がある以上は、まだその時期ではない……と言いたいが、もうその時期かもしれん。あれなら弟の方が能力が低い分、まだ愚直だ。あの兄はどんなに教育しようとも、あの天性の激しい妄想癖と思い込みはどうしようもない。」
けんけんほろほろに罵倒される、たわけ様の兄。
敵はおろか、味方すら巻き添えに出来る才能は真似出来ない。
「そうでしょう。あと庇えて一回、ですかねぇ……しかし、今回の件はそれだけではないです。あの国がどうしてあそこまで強気に出られたか……謎ですねぇ。」
仮面の司祭は話題を変える。
今まで結んだ条約の一部も、今回の件で改正させられ、委託していた防衛体制も教皇国に丸投げされた。これらは強気になれる事が起きたのだろう予測出来るが、彼等にはその根拠となる情報が入ってこない。
「間者は皆、淘汰されました。神掛かる程に恐ろしく速く。唯一、あの国にいる司祭から得られた情報ですが、何やら『巨大な鋼の悪魔』が暴れていたとか。」
「……巨大な、鋼の悪魔??」
「はい。全身に鋼で出来た獣が植え付けられたような悪魔とか。とにかく恐ろしく、放つ光は滅亡をもたらすように……等、語ってくれました」
「……何と醜悪な。もしやその悪魔を王国は飼い慣らしているとでも?」
「王国側は、一笑していましたがね……いきなり強気になった理由として、怪しいのは間違いないかと。」
「ならば、その調査に我が愚息を向かわせる。あやつの手腕ならば、何か解明するやもしれん。」
「ほう……ご子息を、ですか。それは頼もしい。宜しくお願い致します、ファリド公。全てはカイエルの名の元に。」
「ああ。全てはカイエルの名の元に。」
話に決着が付き、仮面の司祭は退室する。
しばらく歩き、ふと城下を見下ろせる窓の景色を一瞥しながら思慮する。
(件の司祭の報告には、『胸に
ギムレスと呼ばれたその司祭は、不気味な嗤いと共に何処かへと行くのだった。
《NEXT》
《現在公開出来る情報》
◯物質瞬間創造高速移送艦サクヤ
ピサ・ソールの『物質復元装置』のデータを応用し創られた『創世炉』を参考にした『創造炉』をコアに、GストーンとJジュエルを合わせた『DSライド』を主動力とした『人型簡易物質創造装置』。科学と魔法のハイブリット技術で出来ており、量子論に基づきエネルギーがある限りどんなものでも『創造』出来、体組織はGファイバーとJファイバーを組み合わせた『G&Jファイバー』を使用し、対・ゾンダーにも考慮されている。
ただし、開発環境が整っていない事と、職人達の
物質創造の際には、内蔵している『ディバイディング・ジェネレイター』を用いてディバイディングフィールドを構築、即席の物質創造空間を展開し、あらゆる弊害影響を遮断する。開発機材はAZ-Mを用いるためありとあらゆる工具を再現出来るので、万能工作機器としての側面も持つ。
例外として、遠距離移動の際には強襲艦クラス(20メートルクラスを6機まで収納可)の高速飛行艦を構築出来、そのメインパイロットを務めるが、本機を作戦に多用するかは未定。
なお、人型形態の際には制御担当の意向もあり、日替わりでフルフェイスの仮面、もしくは着ぐるみを装備、またはGGGで運用されていた『ピギーちゃん』の1.5mサイズの容姿をしている。
ちなみにシステムチェンジはしない。
とりあえず、ここまで。
※キングジェイダーの豆知識
キングジェイダーの腕の大きさと、ジェイダー形態での下半身の大きさが一致しない
また、ジェイアーク形態の頭部と、キングジェイダーの頭部の大きさが一致しない
……フッ、AMAKUNI機神キングジェイダーでもパーツ差し替えでしか完全再現は不可能でしたよ。
そこんとこどうですか、アベルさん??(白目)