公爵令嬢は、ファイナル・フュージョンしたい。   作:和鷹聖

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どうも、おまたせしました。
ようやくNumber.18も終了です。次回から物語の駒を進ませる事が出来ます。
この話でもフラグが多々あるので色々見て下さい。

また、私と同じくガオガイガーの作品を更新しています、睦月透火さんとのコラボ作品『GGG、真夏の怪談話』が『狂わなかった「Z」の力~勇者王ガオガイガーif』で掲載しています。
良ければ見て下さい。




Number.18 ~想い、揺蕩う~(2)

 

 

 

〇エルネスティの思慮

 

「おお!これはこれは……!」

「あ、エル君み~っけ。」

「また随分と自然に混じってんな……」

「あ、アディにキッド。」

 

マギウス・ガオガイガーが調整に入った『お嬢様の工房(アトリエ)』の地下格納庫。

その張り巡らされたキャットウォークの一路で、むふふ顔でマギウス・ガオガイガーの調査を他の職人達に自然と混じって行うエルネスティに、オルター兄妹がようやく合流出来た。

ただ、ここはアースガルズ領主敷地内であるが、それ以上に現在、アルドレイア王国の軍事機密に指定されているが、3人は特別許可を貰っている。

 

「その理由が、調査に協力しろってカルナからのお達しだからな。」

「はい。戦闘に参加出来なかった後悔を少しは発散出来ました。」

 

簡易的な解析こそ終わっているが、システムの根幹的な調査は終わっていないのが現状である。

そこで解析が優先されるが、その役を任された一人が、なんとエルネスティであった。

ゾンダー戦に間に合わなかったエルネスティが不完全燃焼気味だったため、カルディナがわざわざ仕事を回したのだ。

エルネスティが担当しているのはマギウスの左肩――アリコーン・ガオーである。

術理に長けたこのマギウス・マシンは、全マギウス・マシンの2番目に厄介な代物で、カルディナの魔法制御、及びマギウス・ガオガイガー自体の術式制御の中枢を担うものと判明した。

ちなみに1番厄介なのは右腕のガルム・ガオー。攻撃魔法(ワームスマッシャー擬き)はともかく、ESミサイルを用いないESウインドウ単体展開は、技術的に非常におかしい(アベル談)。

ちなみに、その任された理由が……

 

「アリコーン・ガオーは、僕がアイディアを出したんです。」

「え!?そうなの!?いつの間に??」

「カルナが留学中の頃です。当時はカルナ自身も完全に趣味の範疇のようで、設計と言うより、単なるイラストでした。」

 

学生時代、エルネスティは所用でカルディナの所に訪れていたが、その際は『お花摘み』で席を外して留守であったが、部屋の鍵は不用心にも開いていた。

そんな事を知らないエルネスティは容赦なく入り、机の上にあった『それ』を見つけた。

それは半ば『落書きとはいったい』的な精密なイラスト――マギウス・ガオガイガーであった。

頭部、胴体、両脚、そして右腕は描かれていたものの、左腕は描きかけのイラストを発見したエルネスティの手は()()()()()()()

 

「うん、描いたのね。」

「描いたんだな。」

「はい、描きました。」

 

その後に学園を巻き込んだ大騒動が起きた。夜中にカルナがキレてエルと大激闘したのだ。

それは夜中に突然起きたという。

学生寮の一部──部屋の窓が破壊され、続いて絶え間ない爆発が郊外の空き地で続いた。

しかし土煙でそれが誰か、何かは判別出来ず、反響し過ぎて聞き取れない、絶え間ない怨みの籠った怒声が響き渡る。

そして30分が経過した後に、急に沈静化。

晴れた土煙の中には何もなく、誰もおらず。

その後、土煙の光景を凝視していた生徒や教師がふと振り返ると、学生寮の損壊は最初から無かったように綺麗になっていた。

 

それは後に『暴虐の幻(イリュージョン・ブラスト)』と呼ばれる、騎操士学園における怪談となった───

 

───その真犯人がカルディナとエルネスティで、その真相は、以前にもフレメヴィーラの地で行われた、カルディナとエルネスティの討論決闘。

この時はエルネスティ勝手に描いた非は認め謝罪しており、その上でカルディナに自身のアイディアをプレゼンして納得した、という。

その事を後日カルディナから聞かされた2人は、口から魂が抜けかけた思いをしたのを思い出した。

 

そしてそのアイディアを元に設計されたのが、アリコーン・ガオーである。

 

「ユニコーン型にしようとしたカルナに、羽根をビットにしませんかと提案しまして。初めは猛反対されたのですが、利点をプレゼンしましたら、納得して頂けました。故に出来たのがアリコーン型です。」

「……そんな理由で。」

「……何でお前らは意見食い違ったり、対立するとすぐにバトルになるんだよ。」

 

その点は非常に謎である。気付けば条件反射の如く刃を交える2人。

きっとカルディナとの戦闘の腕は拮抗している影響に加えて、転生前のネタを知っているが故に、会話の花が満開になるからだろうが、もはや、当の2人も何故??と疑問を持つしかない事案である。

こういう事もあるが、2人は基本的には仲が良い。

だが事情を知っていても、その気がなくてもこの件は完全に『夜這い』である。

 

「ていうか、何しに行ったの??」

「日中視聴していました『アルノドア・ゼロ』を良い所かつ中途半端な所で切られましたので、その続きをと思いまして……」

「……あ~、そんな事だろうと思ったよ。」

 

『火星側のスーパーロボットをどうやって地球側のリアルロボットが倒していくかを全体のコンセプトとする』という、リアルロボット好きのエルネスティにはたまらない作品であったが、途中お預けを喰らった影響で、どうしてもという気持ちが抑えられなくなり、起きた事件だった。

というか、日本人のオタクにアニメお預けとか、どんな拷問だ。

 

「事情はよく分かったけど……ところで、コイツはどこまで解ったんだ?」

「う~んそうですね。書き込んだ技術が当時の、そして今ですら再現不可能な妄モノ(オーバーテク)だったもので、その点が申し訳ないかなと思ったのですが……見事に構成されてますね。」

「そんなに!?」

「はい。」

 

『機動戦士ガンダム』シリーズにおける『ビット』という武器はここで言及はしないが、御存じの方は多いはず。

しかし、この武器にはニュータイプの素質云々以前に『重力圏内では宙に浮かない』という欠点がある。

作中では、宙に浮かび宇宙(そら)をビュンビュン舞う描写で描かれているが、無重力圏で起きる事象なので、如何にビット自体のスラスターが優れていようが、重力圏内では射出した瞬間に推力不足で落ちる。

同様の理由でインコムや、SEED世界のドラグーン兵器も大気圏内で展開出来ないのもここに帰結する。

スパロボ30でνガンダムのフィン・ファンネルが空Bなのもここが理由……ゲーム故の事案だろう。

 

である筈なのに、同様にビット機能を持たせたアリコーン・フェザーが悠々と宙を往く様は、見事としか言いようがない。

ついでにガジェットツールの浮揚も説明してほしい。

 

「何やら魔力(マナ)ではなく源素(エーテル)を用いた装置、ないしは見たこともない術式が羽根の一枚一枚にあるのは判ったのですが……」

 

それが、後の戦争で出てくる源素(エーテル)の浮揚性質を流用した源素浮揚器(エーテリックレビテータ)の発展型と気付くのがその1時間後で、感応波による無線操作の困難さにV・Cから忠告を受けて『orz』するのが、その5分後であった。

 

(しかし見れ見るほど不思議で、かつ納得出来る機体ですね、マギウス・ガオガイガーというのは。ここまで魔法と科学を混在させて両立出来る機体は、見た事がありません!ですが『魔法と科学の混在と両立』ですか……以前、学園で議論した事をカルナは覚えているのでしょうか??()()()()()()()()()()()()()()を。今までの話を統合するなら『AZ-M(ナノマシン)』、『無限情報サーキット』、『魔力』、『量子理論』、そして僕たちの中にある『魔術演算領域』……これらのラインナップは『作為的』にすら思えます。)

 

エルネスティは独り思考する。

それはあまりにも高速回転が過ぎるその思考は一瞬で終わった……が、『とある仮説に達した』エルネスティを満足させるには十分であった。

 

(……まあ、どういう意図かはわかりませんが、この世界は僕のロボット作りには非常に良い環境になっています。そしてカルナが可能性を見せてくれたのです、僕もお礼として、いずれパワーアップしたイカルガでカルナをお迎えしなければ。)

 

一部の人間には不穏な考えを廻らせるエルネスティだが、とりあえずは自身の仕事を進めるのであった。

 

 

 

◯父の思い、母の思い

 

王城の一室。

アースガルズ公爵、クリストファー・(エルス)・アースガルズは極度の疲労(ストレス)でベッドに突っ伏した。

先程まで王都復興のための執務を国王(レクシーズ)ランドグリーズ公爵(バランド)と手分けして行っていたが、彼が疲労(ストレス)で倒れた事により、強制的に()()()()()

だが普段激務をこなす彼が、適度に休憩を挟んだ事務処理的な仕事で倒れたのには訳があり、その事を堕ち逝く意識の中ですらも反芻していた。

 

(……カルディナ、お前は……)

 

娘のカルディナの事である。

此度の件で、カルディナが長年抱えていた事を知る事が出来た反面、その担っていたもののスケールの大きさを知ってしまった、そしてそれに自分が如何に無力であったかを思い知らされていたのだ。

 

確かに娘の破天荒ぶりと有能さは幼い時から直に見ていた。

だが蓋を開けれれば娘は生まれがらに世界の根源(トリプルゼロ)と『元始情報集積概念(アカシック・レコード)』に侵食され、知らぬ間に命の危機に瀕した挙げ句、己が欲望と正義感をひっ下げ、技術特異点とも言えるガオガイガーを開発してゾンダーという未知の脅威に立ち向かい、世界の果て(オレンジサイト)でレヴォリュダーに爆誕(ジョブチェンジ)とかいう、非常識外れの存在になっていた娘に、父は心身共に疲労困憊であった。

文面に起こせば非常識極まりなく、一父親からすれば娘の極限変化に鬱になる。

公爵としてもそうだが、父親としても娘にどう接すればいいかわからなくなったのだ。

 

……そんな嫌な思考が頭を廻る中、頭に透き通るような声が響く。

 

《───もぉ、心配し過ぎですよ、アナタ。》

(……ん??ケルセリーヌ、なのか??)

《はい、貴方の妻のケルセリーヌこと、ケセリーちゃんです。》

(……うん、その物言いはケルセリーヌ、だな。(おおやけ)では凛々しく美しいが、プライベートではとことん残念なケルセリーヌだ、安心した。)

《え~?それは酷いです、プ~。》

 

どうやら大凡(おおよそ)の本性を知っているためか、ロリ妻に通常運転でボケる夫。

初めて体験する事象に、多少戸惑いながらも大らかに対応出来ている。

 

(ちなみに、頭に響く()()は……)

私達(アルヴの民)の秘術の1つ、『リミピッド・チャンネル』。遠く離れていても、声を通わせる秘術よ。》

(『通信魔法』のようなものか。)

《その呼び方は好きじゃないな~。まあ、今はその事はいいとして……大丈夫、じゃないね。》

(………ああ。君の声を聴いて、多少落ち着いたが……一つ尋ねたい。)

《……カルナちゃんが産まれた時の事?》

(ああ。どうして教えてくれなかったのか……いや、ケルセリーヌの事だから、考えがあって秘密にしたのだろうが、何故だ??)

《初めての出産で気が動転したってのもあるけど、私のお母さん、キトリーが『明かすには過ぎた力だ』って、解決策が出来るまで秘密にしよう、って事にしたの。》

(……やはりか。カルディナの持つ力はどれも我々……いや誰にでも過ぎた力だ、その判断は正しい。だが、どうして言ってくれなかった、という寂しさもある。)

《だって………私とアナタの初めての子供なのに、悲しい気持ちで迎えてほしくなくって………》

(そう、言われると……弱いな。)

 

妻の言葉に思い出される、娘が産まれたあの日。

恐る恐る腕の中で抱いて、笑って、泣いた幼子。

それがやんちゃに、清楚に育って、多才な才能を開花させたと思ったら、周りの人々を幸せにする。

振り回される気苦労も多々あったが、その先の景色は自分が今まで見てきた景色とは違う光景。

次は何をするのか、何をしたいのか、どんな景色を見せるのか。

口では諫める事もあったが、知らず知らずに期待もしていた。

 

(……何度、自分にはもったいない娘と思ったかな。)

《うん、私も。それにあの子の眼はいろんなものを見ている。違うものを見て知っていても、私達の見ている景色も、しっかり見ている。》

(私達の景色も、か……)

 

思い返せば、カルディナは自分達の恩師達(カインとアベル)を知っていた。

知った背景は違えども、親子共に同じ人を見て、憧れていたのだ。

何という偶然で、運命で、奇跡なのだろう。

そして今、同じ境遇を見ている。

かつて娘に感じてしまった疎外感ではなく、間近で、その傍らで見て、共に悩み苦しみ、けれども歩める実感が胸に宿るのをクリストファーは感じた。

 

(……獅子王凱の父親、獅子王麗雄殿も、こんな気持ちを抱いたのだろうか。)

《じゃないかな。》

(しかし役割こそ違えども、歩む道は一緒なのだ。それなのに、何を怖がっていたのだろう、私は。)

 

そして役割が違うからこそ、娘を支えられる位置にいる。むしろそれこそがやるべき事なのだと。

そう思うと、今まで感じていた不安が晴れていった。

 

《元気、でたかな?》

(ああ、もう大丈夫だ。ありがとう。君にはいつも助けられてばかりだな……)

《良かった。でも出来れば……早く帰って来て欲しいかな?最近直に触れ合えなくて……少し寂しい、かな。》

(……済まない。だが、早く帰れるよう努力する。)

《うん、待ってる───》

 

そうして夫の気配が安らかになって『リミピッド・チャンネル』の領域から消えた事を感じたケルセリーヌは、一安心した。

 

《本当、心配性なんだから。》

《───婿殿の憂いは晴れたか?》

《あ、お母さん。》

 

次いで領域に現れた……というよりも気配を現したのは、キトリー。

 

《うん。やっぱり凄い心配してたよ。無理ないよ、娘が超存在に爆誕(ジョブチェン)ッ!だなんて。》

《まあ、只人(ただびと)には少々刺激が強かったようじゃの。》

《只人じゃなくても刺激強過ぎだよ~。》

 

当事者の1人でもあるキトリーも、この件について心残りがあったようで、何かあった時にはフォロー出来るように潜んでいた。

ついでに、娘と婿のラブラブ加減も見たかった(冷やかしたかった)

まあ、そこは邪見であるので、あえて黙っていたが。

 

《……けど産んだ私も今でも思い出すと身震いするよ。》

《じゃな。まさか産まれる前の幼子が、超常の存在と法則を一方的に捕食する等と、誰も思わなんだ。そして産まれた子は利口そのもの……それが全てあの孫の『本能と力』により成されたとなれば、な。》

《……うん。》

 

結局のところ、カルディナの件は2人にとっても驚く事であった。

完全に消滅させようとしたが、僅かに残った因子をカルディナに喰われたのだ。

そしてそれは、ソムニウムの因子と合わさったアースガルズの血統による力が原因であった。

アースガルズの血統は、雑多であるが『如何なる強者をも取り込む本能』が極限に高い。それがソムニウムの血統と交わった事で、ある種の形と成って超常の力を持ってしまった。

結果、それがカルディナには超常の力を取り込ませ、現せる存在とさせた。例えゼロに還る意志を持たせる世界の根源(トリプルゼロ)の影響があっても、その力を十全に発揮出来る存在として、だ。

それでも命が危ぶまれた時があったが、今では制約が取り払われて超常の存在(レヴォリュダー)となった。

そして世界の根源(トリプルゼロ)が形を変え、ザ・パワー、そして『Zオーブ』となり、更に創り変えた存在、それが、今のカルディナ・ヴァン・アースガルズである。

 

《アースガルズ……お前が婿に認める訳だの。》

《でも本能と血統だけじゃないよ、彼って実は情熱的で、可愛くって───》

《惚気は後にせい………まだ目を離すでないぞ。どんな危険があるやもしれん。》

《うん。でも……それすらも乗り越えちゃいそうなのが、カルナちゃんな気がする。》

《全くな……》

《……それよりも。》

《うん??》

《カルナちゃん、クリスに似て真面目な性格だからね……変な気、起こさなきゃいいけど。》

《………》

 

夫だけではなく、娘の心配もするケルセリーヌ。

この場合の『変な気』とは……

母親の心配はその娘を余所に『リミピッド・チャンネル』の海に消えた。

 

 

 

 

〇葛藤と告白

 

体調が戻ったカルディナは意を決してその日の夜、アシュレーを呼ぼうとした。

しかしその前に、そのアシュレーから呼び出された事で、面食らう事態となった。

 

場所は王城の中庭、薔薇園。

原色の赤薔薇からピンク、白、交配して作った黄、オレンジ、紫。そしてカルディナが昔、気まぐれで魔力(マナ)を注いで出来た薔薇の種から育った青薔薇が咲き誇る、美しい薔薇園。

王妃より依頼されてレイアウトから全てカルディナが手掛けた薔薇園であり、周りから見えにくいレイアウト故に、密かな逢引きを手助けする場所でもある。

 

……何でそんなコンセプトにしたかは、王妃に聞いてほしい。

 

王城も先の戦いで被害を受けた所が多々あるが、この薔薇園はその被害から難を逃れていた。

その中にカルディナがやって来た時には、アシュレーがテーブルにあるティーセットで、自らお茶を淹れていた。

付き人はいない、アシュレー独りだった。ここに来る間に護衛もいたが、あくまで薔薇園の周りを固めるだけであった。

その事を解ってか、当のアシュレーは普段のにっこりとした笑顔に対し、少し戸惑った様子のカルディナ。

 

「お、お招きいただき、ありがとうございます……アシュレー殿下。」

「うん、病み上がりのところ応じてくれてありがとう。どうぞ、座って。」

 

応じて席に着くカルディナに合わせ、アシュレーはお茶を淹れ、彼女の前に出す。

その手つきは少しぎこちなく感じたが、手習いとしては一応合格を付けられるぐらいだ。

 

「どうぞ。お口に合えばいいと思うんだけど……」

「は、はい……いただきます。」

「………どうかな??」

「………蒸らしが足りませんね。見極めが早かったのか、少々味が薄いです。」

「そっか……さすがに難しいな。フミタンに教えてもらったんだけど、やっぱり君から合格を貰うにはまだまだかな。でもそう言えるなら体調は戻った、という事になるね。」

「はい、お陰様で。」

「………君が倒れてから三日か、()()()。」

 

──()()。その『三日』には()()()()()()が含まれているのか。

調子が戻ったとはいえ、今のカルディナにはその事を聞く勇気はなく、むしろ『逆』の事を伝えたい気持ちであった。

 

「──じゃあ、僕から用件を話したいけど、いいかな?」

「え、あ……はい。」

 

思考がよぎる間に、アシュレーから話の主導権を握られ、つい肯定してしまう。

普段ならあり得ない凡ミスだが、そこまで動揺している事を改めて自覚する。

 

そしてアシュレーの話はカルディナが休んでいる間に進んだ出来事が主だった。

王都の順調な復興。

鉄華団の様子。

復興を進めるにあたっての苦労。

そして父親達(レクシーズ達)との話等々……

 

だが、どれもフミタンを通してある程度掴んでいる情報が殆どで、特に注意して聞くものはなく、無意識に聞き流して───

 

「──で、父上に強く進言したよ。『カルディナとは現状のまま進めて欲しい』って。」

「………進め……えぇ??」

「……ん?あの、聞いてた??」

「す、すみません。最後の方は、あんまり……」

「……あ、うん。カルディナとの()()を現状、このまま進めて欲しいって、そいういう事。」

「え……え??ええぇぇーーー!?!?」

「……その反応を見てると、やっぱり気にしてたんだ。そんな気がしたよ。」

 

 

深い溜め息を吐きながら、心ここに在らずといった様子の婚約者(カルディナ)を見つめるアシュレー。

そして苦笑いこそする自身の予想が的中していた事に、そして彼女がそう思っていた事が哀しい。

 

「……超進化人類革命者(レヴォリュダー)、エルフが体内に有する触媒結晶を自己精製によって出来たGストーン、Jジュエル、更に根源の結晶(Zオーブ)を中核に、魔法の真髄、科学の最先端が結集して再誕生した、アースガルズ家の血統が生み出した傑物である』……だっけ。」

「……誰の言葉ですか、それ。」

「V・Cだよ。今のカルディナを正しく評価するなら、そうだって。僕には半分ぐらいしか理解出来ないけど、もう半分は解る。『故に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()っていう事は。」

「────!!」

 

その言葉にカルディナは過敏に反応する。

カルディナの身体はもはや、()()ではない。

半分が有機生命体でありつつ、半分はAZ-Mの無機生命体なのだ。それもカルディナが知る以前から。

V・Cにより衝撃の過去を知った世界の果て(オレンジサイト)ではレヴォリュダーとして、戦士として、ガオガイガー(勇者王)のパイロットとして戦えた。

しかし、いざ冷静になると公爵令嬢としては?と嫌でも考えてしまう。

獅子王凱も自身がエヴォリュダーになった際にはゾンダーと同じ性質を持つ体になってしまった事に、強く悩んでいた時期があった。

それは判っているが、いざ自分の事となるとどうにも……

 

そうなれば、残る道は……

 

「──けれども『それ以前に、あれは破天荒でオタクな小娘です。そんな小娘が大層で筋違いな、ちっちゃいお悩みをお持ちで、プ~クスクス( *´艸`)』だって。」

「──は?」

「ちょ!?カルディナ怖い怖い!その眼光で人が殺せるぐらいに怖いから!!」

「当たり前ですっ!!ていうか何ですか、そのカンペ!見せなさい!私がどれだけ悩んでいるか、解る訳───!!」

 

アシュレーが妙に饒舌に話すと思ったが、それはV・Cの入れ知恵のようで、それらがカンペに書かれていた。

それをアシュレーから奪い取るカルディナはその続きを見た。

 

 

 

──でも、それこそが思い上がりです

 

「!?」

 

──この世界にゾンダーがいる以上、そして貴女がガオガイガーを創るという選択肢を選んだ以上、平穏はあれども『普通の道』は貴女の前から、そしてこの星から消滅しました。それらを放って『普通』を望みますか?

 

カンペにあるV・Cの言葉に、カルディナは深い衝撃を受ける。

そう、今のカルディナに普通を望むのは思い上がりなのだ、強大な天災(ゾンダー)に抗うため、この世界に規格外(ガオガイガー)を生み出す覚悟を決めた時から。

けれども今さら『普通の道』など選べない。

もう存在しないのだから。

『普通』では成し得ない、『普通』では勝てない故に。

そしてそれを望んだのは、自分自身だという事を思い出した。

だが、まだカンペの文章は続いている。

 

──それ以前に貴女はレヴォリュダーです。他の人類皆々様より遥かに優れています。大概の些末な事は解決出来る力を有しています。アイドルが普通の女の子に戻りたいとか眠い事を抜かすより些末です、些細です。そんな力があれば、私も有給(アップデート)し放題なのに……こんちくしょー!

 

「………」

「え??な、なんでそんな目で見るの?!何処を読んだの!?」

 

カンペを見ながらV・Cの言葉とアシュレーにジト目する。

奪い取らなかったら、これを読む気だったのか。

アイドル活動を辞める事より特別か、という事はさておき、さり気に自分の欲求を書くんじゃぁない。

 

──そんな貴女が目指すのは、普通じゃない『特別な幸せ』。今の状況をひっくるめて、みんなまとめて幸せになる事。『特別になる事』。それに周りを良く見なさい、貴女の周りには『普通の人』はいますか??みんな貴女に巻き込まれ、付いて来た人ばかりです。そしてそんな特別な女の隣に命尽きるまで、一緒に居たい男が1人、そこに居るのですから、まずはそちらの話を聞いた方がいいのでは?

PS:現状貴女に判明している事は一通りお伝えしています。覚悟ぐらいは受け止めて上げて下さい。

 

「………」

 

これで書いてある事は全てだ。

そしてカルディナは頭が冷えた事で、はらはらしているアシュレーと向かい合う。

 

「……『特別な女の隣に、命尽きるまで一緒に居たい男が1人、そこにいる』ですか。アシュレー・S・アルドレイア殿下はいつから女の趣味が悪くなったのですか?」

「酷い言い方だね、強いて言うなら君のせいだよ。」

「まあ酷い。」

 

そんなやり取りに少し間が開き、可笑しくて微笑む2人。

ようやく自然に笑えた後、アシュレーからカルディナの元に歩み寄り、そして何も言わずに静かに抱きしめる。

カルディナはされるがまま身を任せ、しばらく沈黙がその場を支配する中で、アシュレーが沈黙を破るように話し始める。

 

「……父上と、アースガルズ公爵(君の父上)には、はっきり宣言してきた。僕は何があっても君から離れないって。」

「……後ろ指、絶対に刺されますよ?」

「今更だね。君と鉄華団といるだけで、陰でけっこう言われているんだけど、そんな事どうでもいい。それよりも君を独りにさせない事の方が大事だよ。それに君を護る力も。」

「私より弱いのに、ですか?訓練では結局一度も負かせませんでしたが?」

「君との純粋な力比べで勝とうとは思っていないよ。むしろ、権力とか君が厄介に思う方の盾になる。それこそ王家の力を行使してでも。そっちの方が君の力になれると思う。」

「それこそ修羅の道ですわ。王位継承権も2人の兄上様に劣るのに、王位も継ぐつもりもないのにですか?権力を高めたら、誤解されかねませんよ?」

「そうならない様に立ち回るさ。縁の下の力持ちのやり方は君から教わっているからね。君を護るならいくらでも泥でも猫でも被るよ。」

「私の身体、もう普通じゃないですよ……それでも?」

「君に今まで普通を求めた事はないよ。むしろ『特別』だからカルディナ・ヴァン・アースガルズなんだ、、思ってる。僕は最初から出会った時から『特別』にしか見てないし、今までも『特別』だと思ってる。今更『特別』な事が増えたところで、驚きはするけど誇らしく思うよ。それが人智を超えていようが。」

「……そこのところ、本当に判っています?」

「……少し、としか言いようがないかな。でも、判るように歩み寄らせるぐらいは許してくれるよね?」

「知って……後悔しません?」

「後悔なんてしないよ、むしろ全て教えて欲しい。」

「これから先、幸せに……なれないかもしれませんよ?どんな状況になるか……予想も付かないのに??」

「それは僕だって同じだよ。これから来るものを考えれば、絶対に幸せに出来るとは言えない。でも、君はそれでもそうならない道を往くんだろう?だからカルディナ、君は君の思うがままに往けばいい。」

「……殿下。」

「僕は後ろから支えるから。でも……一緒の時は隣に居て、同じ時を2人で歩みたい。」

「───!」

 

自身の想いを真摯に言い切るアシュレー。

その言葉にカルディナはアシュレーの背中を強く抱き返す。

 

「……絶対、傍にいて下さいね。私も命、尽きるまでお供します。」

「……ありがとう。」

 

 

 

 

「……上手く、纏まったようですね。」

「そうでしょう、そうでしょう。こういう時の為に、この庭園を造って貰ってんですから。」

 

そんな2人の死角より、盗撮カメラを用いてとある一室で一部始終を見ていたのはメイドのフミタンと、少しふわふわした印象を持つ人物。

レクシーズの妻であり、アルドレイア王国の王妃、エリスティナ・S・アルドレイア。

 

「長男にも、次男にも、告白するときはここでしなさい!ってアドバイスしたから。ああ!!やっぱり絵になるわ。あ、これって後で繰り返し見れるのでしょう?」

「……はい。」

「最高ね!長男、次男の時は覗き見しか出来なかったから……暫くは、ウフフ!」

「………」

 

まさか、城の薔薇園が子供達の逢引き目的に造られたとは、流石のフミタンもドン引きだった。

 

 

 

◯国王として、父として

 

 

「──良いのか、放っておいて。」

 

同じ時刻。

そう言うのはランドグリーズ公爵。彼もレクシーズと共にこの場に届けられる重要書類の手続きを2人でこなしている。(他の書類は別室の者が担当)

現状のアルドレイア王国は復興作業真っ只中で、人手が圧倒的に足りないので、来る者、いる者はひたすらにこき使われる。

それは公爵本人でも例外ではない。

故に交わす言葉も昔のように砕けている。

 

「かまわん。アシュレーが上手くやる………そう思う事にした。やらねば『漢』ではない。」

「確かにな。しかしお前も大胆だな、あの娘の処遇を子供に任すとは……」

「……完全に、という訳ではない。しかし今の王国には、あの娘の力がそれだけ必要という事だ。」

 

むしろアシュレーの告白から始まる、カルディナの取り込みは始まったばかりだ。

軍事戦力(ガオガイガー)だけではなく、個の力にも優れている人材は放ってはおけない。

ましてや国の経済の一部を掌握していると言っても過言ではない経済力、国一つを任せてもお釣りが来る生産力、どこまで伸びているか解らない膨大な人脈、特別な知見を持っているアイディアの豊富さ。

 

「個人が掌握する力としては過剰過ぎるが、取り上げてしまえば我々の方が終わりだ。クリストも言っていた『カルディナが中心に廻るアースガルズ領は今やあの子無しでは成り立たん』と。国としても一緒だ、カルディナ・ヴァン・アースガルズがいなければこの国は消滅していた事実は一度や二度ではない。表沙汰にこそなっていないが、現在に至るまでそんな出来事が多々あったのは知っているだろう?私にも身に覚えがある。」

 

それはバランドも重々知っていた。

生活物資のあれこれにカルディナの息が掛かっている。その影響力は他領、そして国全体、挙句には他国に及ぶ。今まで繊細と思われていた品々の常識を悉く塗り替え、アースガルズ領以外の食料品以外の品はほとんど売れないという事態が一時期起きている。。

その昨年までの『アースガルズ・ショック』は記憶に新しい。

また、魔獣討伐において、師団級魔獣の単独討伐などカルディナ以外には出来ない。

本人が特に誇る事がないため、一部の人間しか知らないが、聞いた当時は仕事が碌に手につかない程だった

 

文武商美──とにかく優れる傑物。それがバランドの認識だったが、それがまた今回の事で塗り替えられた。

 

「知っているか?あの娘に任せたら一週間もすれば荒れ地に『街』を築けるのだぞ?そんな娘を訳の解らぬ下らん貴族においそれとやれんだろう。将来を見据えて王家に迎え入れるのは重要な意味がある。我が子(アシュレー)1人を生贄に差し出したとしても、惜しくはない。」

「………」

「……まあ、べらべら喋ったが、今あの娘の処遇をこちらで完全に決めるのは危うい。多少の筋道と逃げ道を用意してやれば、あやつは勝手に最適解を自分で辿る。我々はあの娘の障害となる事案を取り除けばいい。それが今回の処遇の理由だ。」

「何という娘よな。我が娘もそれくらい利口であればいいものを……」

「無理はさせるなよ。カルディナは『令嬢』という枠組みから完全に逸脱している。生まれる前から持っているモノが元から違う。張り合っても相手にもされず、勝手に潰れるぞ。」

「だな。張り合わぬよう、肝に命じさせておこう。」

「仮に、あの娘がアシュレーとの婚約をフイにしても特に責めはしないつもりだ……事情が事情だ。」

 

V・Cからの助言で、レヴォリュダー化による身体の変化、不安感を聞いていたレクシーズ。

とてもではないが、無理矢理どうこう出来るものではないので最悪、アシュレーとの婚約はカルディナから破棄しても不問にする道も用意していた。

それでもアシュレーがカルディナとの婚約に拘る以上、そこは運任せだった。

 

「成人しても、どこにも嫁がないよう独立させ、新たな領地でも治めさせるつもりだがな。しかし……アシュレーからの恋慕とはいえ、そんな娘が今までアシュレーを好いてくれたのだ。国王としても、父としても嬉しく思う。どんな結果になろうとも……悔いはない。」

 

そんな哀愁漂うレクシーズを何とも言えない心持ちで見るバランド。

 

「さて、仕事に戻ろうか……ああ、確かこれもそうだったな。『マギウス・ガオガイガーのデザインについての固有表現の苦情』。」

「そんなものまであるのか!?」

「ああ、主に教会からの苦情だ。各教会のシンボルが事前通知されずに使われた事に対してな、これだ。」

「どれどれ……『竜神教』はドラゴンのデザインの無断使用について。『賛美歌の教え』からは不死鳥(鳥)について。『暗狼教』、『光馬教』も狼と馬についてのデザイン無断使用……『天華教』に至っては『他の教会のシンボルが使われているのに、何でワシのところはないんじゃ!?』……って言い掛かりだろう、コレは。」

「どこもシンボルの扱いは煩い。今回はイメージダウン払拭に尽力しているのだろう。『天華教』は知らん。」

「……いち『天華教』の信者として、お詫びの言葉しかないな。」

「とりあえず、この件はカルディナに対応させるしかあるまい。」

 

どうやらカイエル教以外にも宗教問題があるようで、嫌で巻き込まれるカルディナに安息の時は訪れるのかと、溜め息を吐くレクシーズとバランド。

 

その数分後に妻からアシュレーが告白に成功した報告を受けると、その日の仕事は即座に切り上げられ、バランドやティ・ガー、後に復活したクリストファーと共に祝い酒に走ったという。

 

 

 

〇オルガ、そして鉄華団の歩み

 

幼いころから孤児で、記憶がある頃から既に周りにも同じように孤児ばかりだった。

物付いた頃から生きるために食べ物を盗んでは殴られ、殴り返し、僅かに残った食べ物で争う事なんてザラた。

それから人攫いに奴隷として売られ、偶然なのか運命なのかマルバという男が経営する傭兵団で雑用として、成長してからは矢除けとして14歳までいた。

その頃には今の鉄華団の基礎メンバーがいて、そして俺達は頃合いを見計らい()()した。

 

流石に銃なんてない世界だ、魔法だって学のない、才能のない子供だったから使えやしない。

魔獣に追いたてられ混乱した大人の傭兵達を囮に逃げるぐらいしか出来ねぇ。

結果、マルバ達の傭兵団は壊滅、生き残った俺達は偶然通り掛かった行商兵団『タービンズ』のお陰もあり、ドワーフ王国『テイワズ』で働ける事になった。

 

だがここで転機が起きた。

 

メイドを1人引き連れた、とあるお嬢様がテイワズにやって来た。商品の売り込みらしい。

事前に話が通っていたようで、そのお嬢様を指示通り名瀬の兄貴のところに案内して2時間後、ぐったりしてアミダの姉御に介抱されて名瀬の兄貴がそのお嬢様と出てきた。

名瀬の兄貴がこれまでにないくらい、商品の交渉にボロ負けしたという。

 

「……取り引きはするけどよ、このお嬢様の交渉のテーブルにゃ二度と着きたくねぇ。」

 

……何があった??

値段は他とあまり変わらなかったが、その『あまり』で白熱したとか。

 

そしてお嬢様が帰った後、何とヤマギが拐われた。

主犯はまさかの、あのジャスレイ。

 

「仲間を返して欲しければ、あのお嬢様を拐って来いよ、ガキ共。」

 

ジャスレイと大の大人十数人では敵う訳がなく、泣く泣く脅しに従った俺達だったが、ここで大誤算が起きた。

 

鉄華団全員で拐おうとして、全員伸されたのだ。

齢12歳のスカート履いたお嬢様が、独楽のように回って人を弾き飛ばした──そんな光景だ。

唯一いい勝負が出来たのは、昭弘とミカだけだ。

それでも10秒保ったぐらい。今思えば、手加減されたんだな。

 

その後がもっと酷い。

 

俺以外の団員が伸された後、監視していたジャスレイの手下が数人やって来たが、そちらは容赦なく両鎖骨を砕いた後、頭を地面に突き刺した(パイルドライバーだ)

そして突き刺した人の林の中で吐かれた台詞がコレだ。

 

「……で、何か御用で?」

 

そして最後に残した1人に、徹底的な尋問───という名の強制自白タイム。

……ニコニコ笑って指を一本一本丁寧に折っては『回復魔法』を雑に掛けてまた折る、を繰り返す光景は、今でも思い出したくない。

 

そして口を割らせて得た情報から、あえて鉄華団(俺達)に捕まった()()をしてジャスレイのところに向かった。仕込みが細かい。

んで、お嬢様を見るなり奴は饒舌に話した。どうやらギャラルホルン教皇国に売り渡す算段らしい。

他に名瀬の兄貴の悪口やマクマードの親父が朦朧しただの散々なじった後、ヤマギを解放したが───

 

「直に、俺がこの国を支配してやらぁ!!」

 

と頭が沸いているのか?と思う台詞を吐いた。そして口封じにお嬢様以外は殺すと宣言。

 

──その瞬間、ジャスレイは豪快に空に舞い上がった。

一瞬で間合いを詰めたお嬢様が、ジャスレイの顎に、垂直蹴りを喰らわせやがったんだ。

そして落下して動けないジャスレイの頭を鷲掴みにして───

 

「──おい、ジャスレイ・()()()()()()()、“Now,Count your sins.(さっさとお前の罪を数えろ)”その数だけ殴ってやる。」

「お、俺の名前はジャスレイ・ドノミコル──おぶぅ!?」

「──お前が読むのは自分の罪の数と……世辞の俳句(HAIKU)だぁぁぁーーー!!」

 

……最後の意味は今でもよく解らねぇ。

でも俺らより少し小さい身体で、大の大人をこれでもかってくらいボコボコにした実力は本物だ。

 

それから事態が大っぴらに露見、お嬢様が自衛で過剰にジャスレイをボコった件も差っ引いても、この件は明らかにテイワズ側に非がある以上、仲裁に来た名瀬の兄貴は青ざめ、事の経緯を聞いたマクマードの親父さんは大激怒。

 

……その後、ジャスレイとその一派の姿を見た奴はいない。

 

後で聞いた話だが、お嬢様との取り引きでアルドレイア王国側にテイワズが是が非でも欲しい資源があったらしく、ようやく輸入出来る算段が付いた矢先の出来事だったのが、パーになってしまう。

そりゃ親父もキレるわ。

危うくご破算になるところだったが、何とかその件についてはキープ。

ただ、ケジメは付けなきゃならねぇ。

 

そして「人材が欲しい」と希望があり、鉄華団(俺達)がお嬢様に売られた───

 

 

 

 

───そしてお嬢様改め『お嬢』のご丁寧な教育の賜物で、俺達は『鉄華団』改め『鉄鋼桜華試験団』として存在している。

兄貴達と別れる時は、兄貴達に惜しまれ、寂しさもあったが、翌年を皮切りにテイワズに何度か足を運ぶ仕事を任せられた事で半ば『里帰り』も出来ている。

 

そんな中で『前世』を思い出し、新たなトラブルの火種───世界を揺るがす事案(ゾンダー)に巻き込まれた。

 

……どうやら俺達、鉄華団は常にトラブルに巻き込まれる運命を背負っている、とは思いたくないが、しかも次は世界存亡の危機───

 

「……ガラじゃねぇな。」

 

2体のランドマン・ロディが引く装甲牽引車(ギャリッジ)に揺られる甲板の上で誰もいない中、そう呟いちまった。

今は後ろに随伴する3体目のランドマン・ロディとその設計図をテイワズまで売り込みに行くため移動中だ。

俺達は報酬次第で依頼を受ける傭兵……というより、何でも屋みたいなもんだ。お嬢はともかく、『正義の味方』丸出しのゾンダー退治にはスケールがデカ過ぎて、未だに実感が持てない。

何より『世界を守る』という精神は俺を含め、鉄華団は抱いたことがないので、他の団員は知らないが、憧れこそあろうとも『正義の味方』というのは、ガラじゃない。

お嬢とクスト、ムル、後はカインさんとアルマさんあたりがいれば勝てそうだ。

 

「そもそも何で縁もゆかりもない化け物相手に戦わなきゃなんねぇんだ。確かに生きるか死ぬかの瀬戸際だけどよ。それにこの世界に『転生』……だっけな、した理由も解らねぇ。どうして鉄華団含めた『前世の奴ら』が、わんさかいるんだか。『前世の記憶』にだってそんなもんねぇ……ん、そういや──」

 

『前世の記憶』といえば、ミカや昭弘のように思い出した奴もいれば、未だに思い出せない奴ら未だに多くいる。

急務……ではないが、どうにもスッキリしない話だ。

他の団員からもそんな愚痴がチラホラ聞こえる。

俺もたまにその辺りで微妙に話が噛み合わなくなる、そんな気持ち悪さを覚える。

 

「……何なら、V・Cにでも頼んでみるか。」

 

今や頼りになるお姉さん(自称)のV・Cでも頼めば、解決してくれるだろ……

 

 

 

───だが、この軽い決断が後に俺達、鉄華団に『ここにいる理由』を真っ向から叩き付けられる事を、その時の俺は気付ける訳もなかった。

 

 

 

《NEXT》

 

 

 


 

 

 

 

《次回予告》

 

 

マギウス・ガオガイガーの調査、調整が行われる中、テイワズより帰って来たオルガ達を迎えたのは、予定外の喧騒。

 

天使のイレギュラーに、白い悪魔は新たなる可能性を秘める。

 

同時に、『前世の記憶』が戻らない団員の事をV・Cに相談するオルガだが、秘められた記憶には誰もが予想出来ない過去を映す。

 

時を超えやって来る、終わりを告げる機械の天使と同化する異形。

 

それは世界終焉の合図。滅ぶのは誰か?

 

そして、悲しみに暮れる者に無慈悲な救済が植え付けられる時、声にならない怒りと共に新たなる天使と悪魔の鼓動が響くッ!

 

 

『侯爵令嬢は、ファイナル・フュージョンしたい』

NEXT、Number.19 ~滅びた世界~

 

次回もこの物語に、ファイナル・フュージョン承認ッ!!

 

───これが勝利の鍵だ!

『ガンダムバルバトスルプス・Ver.H』

 





恋愛話はやっぱり苦手ですがやって消化しておかないと、いろいろ拗れる件。

そんで話を短くしようと奮起した結果がこれです。

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