公爵令嬢は、ファイナル・フュージョンしたい。   作:和鷹聖

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さ~て閑話です。

ナニギリスで笑いを取る前に、消化したい話を掲載します。
さっくりいけるかな……??

掲載話

〇ある兄弟の復縁
〇男同士の語り
〇未来に向かって
〇あの武器の裏話
〇英雄の剣・序
◯二振りの行方
◯公爵家の最終兵器




閑話 それぞれの次への歩み

 

○ある兄弟の復縁

 

───記憶戻り

それは今の鉄鋼桜華試験団にとって、避けて通れない事案である。

記憶が戻るのはいい。しかしフラッシュバックが常に良い方向に向くとは限らない。

例えば……

 

「──うわぁぁぁーーー!?!?」

「うぉ!?今度は誰がだ!?」

「わぁぁぁーーー!?!?」

「あ~、またか。最近多いな。昨日はハッシュだったが。」

「わぁぁぁーーー!?!?」

「って、落ち着け!逃げんな───」

「わぁぁぁーーー───いだだッ!?」

 

「……何の騒ぎ??」

 

「あ、お嬢。そいつが──昌弘の記憶が戻って錯乱したみたいで……」

 

昌弘の頭を文字通り鷲掴みにしたのは、カルディナ。

ただしボケーっとしており、目元の下には隈が出来ていたが、それでも鷲掴みにした指は昌弘を微動だにさせない。

その後ろにはフミタンとV・C(Ver.サクヤ)がいた。

 

「……ダンテ、腰のそれ……」

「あ、ああ───ほい。」

「ぶふっ───へにゃら……」

 

昌弘に向かって霧吹きのようなものを吹き掛けるダンテ。

そうすると、錯乱して暴れていた昌弘が急に大人しくなった。

 

「う~ん。よく効くな、このパレッス粒子ってヤツ。『V・C印の暴徒鎮圧とか余裕の逸品♪』の触れ込みは伊達じゃねぇ。」

《当然です。(ドヤァ)》

「一応、劇薬扱いだけどね……それじゃ後頼むわ」

「ああ……ちなみにお嬢、どうしたんだ?」

「徹夜明け。」

「……ゆっくり休んでくれ。」

 

講習を受けた団員には少量ながら霧吹き仕様で携帯が認められ、錯乱して手が付けられない団員に対して独自判断での使用が認められている。

そのため、怪我等の余計なトラブルが少なくなった。

 

そして徹夜明けのカルディナは、その後に続くフミタンとV・C(Ver.サクヤ)と共に、自分の私室にのそのそ戻るのだった。

何をしていたかは……いろいろあって、まだ秘密だ。

 

「……レヴォリュダーってヤツでも、徹夜はキツいのか。あ、昭弘と友人のガキ共に連絡しねぇと。さて、落ち着くまで医務室預かりでいいとしてだ……原因はなんだ?」

()()、じゃねぇか?」

 

そう声を掛けるのはナディ・雪之丞・カッサパ──通称、おやっさん。

彼は特殊な塗装用工具を持っていた。

ちなみにおやっさんも記憶は戻っているが、さほど混乱はなかったらしい。

 

「ロディのナノラミネートアーマーの再塗装作業中なんだがよ、森林内で目立たねぇようにって注文で“迷彩柄”にするんだが、その下地がなぁ……」

「……ああ、ブルワーズで使われてた“マン・ロディ”そっくりだ。」

 

ダークグリーンが、まんまマン・ロディだった。

 

「──昌弘ッ!!」

「……あ、兄貴??」

 

昌弘が担がれた医務室に急いで走ってきた昭弘。

そこには元ブルワーズ組の子供ら、アストン、デルマの対応もあり、既に落ち着いた昌弘がいた。

 

「ああ、昭弘さん。」

「アストン、デルマ、昌弘をありがとよ……って、頭に包帯って、どうしたんだ!?」

「錯乱中に暴れちゃったみたいで、通り掛かりで三日徹夜のお嬢様のアイアンクローを受けたみたいで……念のために。」

「……ああ、そりゃ災難だったな。」

「あ、ああ……」

「それじゃ昌弘も落ち着いたみたいだし、俺達戻りますけど……いいんですよね?」

「……ああ、すまなかったな。」

「いいえ。昌弘を、お願いします。」

 

そうして残った昭弘と昌弘。

ただ、いざ二人きりとなると気まずいようで、言葉が出ない。

 

記憶が戻るのには個人差がある。

特に何が原因で戻るかは状況、もしくは過去に死に絶えた直前までの状況にまで起因する。

ゾンダーによる機界昇華が原因で命を喪った者は、ほとんど浄解によりその記憶を取り戻した。(同時に錯乱し、パレッス粒子噴霧、という状況もあったが。)

だが物語途中で死んだ者は、特別なきっかけがあるが、それが何かは解らない。

そして戻るまでの間、既に戻った者との関係がある程度じれったく、またギクシャクしたのは仕方ないと言え、もどかしさもあった。

しかしその不満は鉄華団では自然に霧散していった。

 

昭弘の存在だ。

 

今世では生き別れにならず、一緒にいるものの、昌弘の記憶は戻らないままだった。

そして傍にいる昌弘の記憶が戻らないのに、昭弘は特にアプローチもしない。

……正確には戻る事が判明した後、様々な事を試したものの成果につながらず途方に暮れていた翌日、すぐに切り替えていたからだ。

自分()を知らない弟──そのもどかしさと葛藤を黙って耐えていた昭弘の姿を良く知る者達から、『自然の成り行きに任そう』という空気が自然に形成されていた。

 

そして今、その機会がようやく訪れたのだが……

前世の2人の関係と死の直前のやり取りを省みると、易々と踏み込めない空気も仕方ないと言える、が。

 

「……落ち着いたか?」

 

先に言葉を発したのは昭弘だった。

 

「う、うん。まだ混乱はしているけど、大分呑み込めて来た。俺……生きるんだなって。」

「ああ、ちゃんと生きてる。」

「あの時……身体が何も感じなくて、すぅーってなっていったのも、今でも身体が……覚えてる。」

「俺も……あの時の事は今でも忘れねぇ。すまなかった、昌弘。」

「あ、兄貴?」

「あん時、お前を迎えに来たって安易に言って、お前の気持ちも考えずに傷付けてしまってよ。結局、俺はお前を迎えにどころか、助けられなかった……すまねぇ。」

「それは……いや、俺だってあの時、兄貴に酷い事ばっか言って……」

「俺だってヒューマンデブリだった。けど解放されてそこに『差』が出来ちまったんだ、聞かされれば恨みの言葉ぐらい出るのも仕方ねぇ。あの時のお前にとっちゃ()()()()()()()()()()()聞こえねぇ……『家族が出来た』って話も、前を向かせるつもりが気持ちを逆撫でしちまう……あの時の俺には言葉じゃお前を説得できるモンはなかったんだ。それに、今もそう状況は変わんねぇ。」

「今も?」

「今の人生だって、俺達はヒューマンデブリじゃなくても、奴隷だった……あんまり変わらねぇ。」

「………」

「けどよ、今は俺もお前も一緒にいられて、奴隷から解放されて、今はちゃんとした人間だ。それは前とは違う、決定的にだ。」

「あ……」

「環境も、取り巻く人も、もう違う。だからこれだけは言っておく───自分を無下にすんな。俺も、お前も人間なんだ。デブリでも奴隷でもねぇ。一人の人間なんだ。」

「……兄貴──兄ちゃん!」

 

昭弘の言葉に泣き崩れる昌弘。

それは胸の中に食い込んだ楔が抜けたように、ようやく解放されたという安心感であった。

しばらく泣き続け、ようやく落ち着いた昌弘は、急に恥ずかしくり、近くにあった枕に顔を埋める。

 

「落ち着いたか?」

「う、うん……でもこんな時に兄貴面すんなよ、恥ずかしい……」

「させよろ。今まで出来なかったんだ、これからは昌弘が胸張って自慢出来るぐらいになってやる。」

「……出来んの??この世界じゃ、俺達は平民でしょ?」

「フン、舐めんなよ。これでも手に職は入念に付けてる。」

「でもなぁ……兄弟なのに俺を見ても記憶が戻んなかった事には、それなりにショックだったんだからな。」

「え、あ……それは……ごめん。」

「なんてな。俺もモビルスーツ見て記憶を取り戻したクチだ。お前の事を何も言えねぇよ。」

「うう……」

「そんだけ及ぼしたトラウマが強かったって事だ……だがな、お前が言ってた事は本当だったんだなって思う。」

「何が??」

「生まれ変わりの事だ。『死んで、魂が生まれ変わる』って。確かにそうだ……みんな死んで、生まれ変わった。そうしてここにいるんだ、俺達は。」

「あ………」

 

それは前世、昌弘が死ぬ間際に昭弘に話した、他愛のない話。

その事を自覚した時、改めて思う。

『本当に生まれ変わりは、あった。』と。

 

「だから昌弘、今度はちゃんと言わせてくれ………“迎えに来た、もうお前を独りにはしねぇ”」

「………うん!」

 

あの日望んでも抱いても得られなかった希望。

確かに自分は折れ、再開した兄に、その恨みと悲しみ、憤怒をぶつけてしまった。

けれども、その兄は忘れず、背けず覚えていてくれた。

そして改めて手を差し伸べた。

 

そうしてようやく昌弘は、差し出された手を素直に握る事が出来たのだった。

 

 

 

「……兄貴。俺、あのお嬢様ぶん殴りたいんだけど。」

「ああ、別にいいんじゃねぇか。挑戦、訓練は付き合うって言ってたし。ただな………徹夜明けは止めとけ。加減が効かねぇってよ。」

「……うそん。」

 

新たなトラウマも刷り込まれて。

 

 

 

 

 

〇男同士の語り

 

「──じゃあ、他のみんなも無事なんだ。」

「ああ。残ったグレイズは完全に沈黙させて、パイロット2人も投降させたし、指揮官も森の中で彷徨っているところを拘束したから、こっちの完全勝利って奴だ。ゾンダー化した他の2人は、改心して面白いように口を割ってるしな。ただ、問題といやぁな……」

「……何?」

「お前と、エルネスティの団長サマが、疲労困憊で動けない事ぐらいか。」

「解せない」

 

不服とばかりにベッドに寝かせらている三日月に、オルガはその後の近況を知らせていた。

 

アトラを無事助け出した後、バルバトスの腕が欠落したのをきっかけに緊張が解けた後、三日月は倒れ、更にエルネスティも倒れた。

原因はヘルアンドへヴンの反動で、相当なダメージを受けており、限界を超えた過労状態になった。

故に起き上がる事すら出来ない。

ただし、以前のようにリミッターを解除したような深刻な後遺症はない───というより、ヘルアンドへヴンを使用した時点でリミッター解除と同義のようなもので、深刻な後遺症は最早ないに等しい。

また、そのダメージは同乗する天使(ハシュマル)悪魔(バルバトス)も分散して負うため、三日月への負担が減ったとも言えるが、この様に戦闘不能になるリスクを考えると、割に合わない。

そもそも、Gフレームはヘルアンドへヴン等の膨大なエネルギーを用いる事が想定されていない構造のため、一歩間違えなくとも機体崩壊は前提事案なのだ。

今回はたまたま行える要素があり、三日月がたまたま事前に破壊と守護の混合エネルギーに触れていた幸運があったため両腕が欠落、自壊した程度で済んだのだが、それでもバルバトス自体もダメージを負っている。

深刻なものが無くなったとはいえ、代わりのリスクが大きい。

 

故に別々ではあるが、三日月とエルネスティは再びベッドの住人となったのだった。

ちなみにエルネスティはアデルトルートの熱心な看病を受けている。

 

「……ってな訳で、フレームは基礎構造から見直し。ハシュマルを見てか、モビルアーマーによる強化プランも立ち上がって更にてんやわんやだ。」

「でも重いから俺はやだな。」

「……伝えとく。」

 

パイロットからの辛辣な意見に、苦笑いするオルガ。

今頃、ビクンビクンとのたうち回る天使(ハシュマル)が仲間たちからツンツンされながら「うぼぁ」と吐血しているだろう。慈悲はあるのか……

そんな素直に感想を言う三日月を見ていると、ふと表情が変わった。

 

「……オルガ。」

「何だ?」

「これから、どうすればいい?」

「………」

 

その問いにオルガは黙する。

それは、いつもの命令を要求する問いにではなく、明確な迷いから来る、どうすれいいか解らないという不安が感じ取れる問いだった。

 

「……解らねぇな、俺も。」

「オルガも?」

「こうして生まれ変わって記憶も戻って、ギャラルホルンみてぇな奴らとまた戦って……前みたいな感じはしたけどよ、未だに何をしたらいいか解らねぇ。そもそも()()生きる事に困窮してる訳でもねぇからな。」

「うん」

「だから、前に足りなかったモノが余計に解る今、それを埋めるぐらいに学ばなきゃなんねぇとは思ってる……お前もそうだろ?」

「そうだね。俺も暇があったら畑の事とか作物の品種、育成、あと管理と出荷手続きなんか勉強してる。お嬢に「その内、お酒でも造る作物作りそうね」とか言われたっけ。」

「俺も軍団の統率方法とか、各セクションに対するアプローチ法、後は雑務をどれだけ早くこなせるか実践中だ。知れば知る程足りないものが多いって気付かされて、その度に学ぶ事が多い。他の奴らもそうさ、貪欲に学んで、求めれば求めるほど学べる今を楽しんでいるんだろうよ。今は鉄鋼桜華試験団として、それでいいと思う。」

「現状維持?」

「良くも悪くもな。そしてそれは皆、必要だからやってんだなと思う。それを今止める必要はねぇさ……でもな。」

「……でも?」

「その都度思っちまうんだ、『あん時これを知ってれば』って思うのと、『これからに生かす必要だ』って思った時、つい妄想しちまう事があるんだ。いつかまた『鉄華団』として……ってな。」

「………オルガも、そう思ってたんだ。でも、お嬢はなんて言うかな?」

「『まだ、早い』ってよ。」

「え、言ったの?」

「ああ。ちょっとな。そしたら『磐石な組織体制を構築出来るようになったら、独立考えてあげる。その時は……宇宙かも』って。」

「……それ、本気で言ってたの?」

「『その前に私が先だけど』って言ってからなぁ。いつかは解らんが……マジだ、きっと。しかもそう遠くねぇ話だな。それまでには……ただ成り上がるとか、そんなんじゃねぇ……お嬢みたいな人達から自信もって誇ってくれる、名実共に『デカいヤツ』になりてぇ。」

「オルガ……」

「だからよ……相棒、これからも頼むぜ。『火星の王』とか大層なもん目指す訳じゃねぇが、それでも俺達がかつて目指した、理想の場所に辿り着けるように……そして納得出来る場所を自分達で創れるように、今度こそ……!」

「うん。」

 

三日月は辛うじて動く右腕を挙げ、オルガは彼に添うように、お互いの拳を合わせた。

かつても今も変わりなく、2人の関係が変りないように……

 

 

「──さて、俺は戻るわ。お邪魔虫は退散せにゃなぁ。」

「え、何?」

 

突然話題を変えたオルガは、そそくさ席を立った。

 

「いや。俺との友情も大切だけどよ、今のお前には違う事も大切じゃねぇかと思ってよ。」

「……あ。」

「俺が言うのも何だが……これからの俺達には大事な事だからよ……大切にしろよ?」

「………」

 

言うだけ言って部屋から立ち去る相棒。

しかし入れ替わるように入って来たのは、アトラとクーデリアであった。

何か図られたような気がした三日月だが、ある意味手遅れである。

 

 

 

 

 

〇未来に向かって

 

 

「三日月、身体大丈夫?」

「あ、うん。アトラ……腕が辛うじて上がるぐらいかな。後遺症も何ともないって。アトラこそ大丈夫?」

「うん、私は検査受けてV・Cさんにお墨付きもらったから大丈夫だよ。」

「そう。クーデリアは?」

「私は精神が非常に不安定だからと、安定剤(パレッス粒子)を処方して貰いましたので、今は大丈夫です。」

「そっか。」

「でも……『あの子』を喪った悲しい気持ちが無くなった訳じゃありません。」

「……」

 

クーデリアの顔が陰る。

鉄華団で記憶を取り戻した団員が経験した事だが、思い出し直後は例外なく非常に混乱し動揺している。

アトラもクーデリアも例外なく混乱したが、死亡直前の状況が悪すぎて今回の事態が引き起こされた。

ただし、ゾンダー化は皆の間では完全に事故扱いになっているが、クーデリアはパレッス粒子を処方されても落ち着いただけで、元の原因の記憶たる暁の記憶まで消えた訳ではない。

そして、浄解されゾンダー化より脱したアトラも……

 

「私も……でも、今は落ち着いたから大丈夫。暁はもう……死んじゃった、その事はちゃんと受け止めないといけないから。あの時はどうしようもない状況だからどう頑張っても生き残れなかった。その事は、ちゃんとうけとめるから……」

 

明るく振舞っているが、どこか陰りがあった。ゾンダー化より脱した人物は皆ストレスから解放され、心穏やかになるはず。だが、目の前にいる2人──特にアトラは無理をしている雰囲気がある。

2人の様子を見て、三日月は考える。

オルガは自分にとって、生きる指針であり相棒である。

であれば、2人は生きる支えとなってくれていた。

そんな2人に何かしてあげたい……が、三日月には、2人の悲しみがいまいち実感出来ないでいた。

 

何故、解らない?

 

「……『いない』から。あ、そうか。」

「え、何がですか?」

「いや、こんな言い方したら2人とも怒るかもしれないけど……うん、ちょっと悲しむかな。でも……聞いてくれる?」

「う、うん。」

「……俺にはさ、2人の悲しい気持ち──暁が死んだって実感が、いまいち解んない。会った事ないから、俺。」

「……そう、だよね。」

「そう……ですね。」

「お嬢に頼めば、2人の記憶から生まれた後、どんな風に育ったか判るだろうけど……俺はそこにはいない。だから、実感出来るかも微妙かも。だから、アトラ。俺にも会わせてよ、暁に。」

「……え。」

「……え!?ちょっ、三日月!?何を言って──!?」

「あ、ちょっと違うか。暁に会えるかも……かな?まあ、どっちでもいいか……俺も会いたい。」

「いや、三日月……な、ななななにを言っているか、わ、解って──!?」

「……昔を振り返って、かつあれだけ気持ちをぶつけられて、みんなからアレコレせっつかれたら、流石に判る。今の俺はそこまで鈍くないよ。それに、俺達がまたこうして会えたんだ。暁にも会えると思う。」

「「………」」

 

無言で俯くアトラとクーデリアの足元にポタポタっと、雫が落ちた。

2人ともふるふると震え、泣きじゃくる顔を覆いながら、膝が崩れた。

 

「アトラ?クーデリアも……ご、ごめん。やっぱり泣くほど嫌?」

「……ううん、違うよ。悲しいから泣いてるんじゃないの……嬉しいから、泣いてるの。」

「私も、会いたい……暁に。会いたいです、暁に。三日月、今度は……私達、3人で暁を迎えましょう。」

「うん。」

 

こうして将来を誓った三日月とアトラ。

いつか……というより近い将来、暁と出会える事を信じて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あの、三日月?」

「何、クーデリア。」

「もし、良ければ……ですが、暁に兄弟姉妹もいかがでしょうか?」

「うん、いいね。」

「異母兄弟でもいいですか?!」

「うん、いい……ってどういう意味??」

「あの、それは……」

「三日月、クーデリアさんは『私もお嫁さんにして』って言ってるんだよ?」

「ア、アトラさん!?」

 

どうやら、ミカ・アトに触発されたクーデリアさんが、発情したようで……

実際、そうである。

 

「え、いいの?俺はいいけど。」

「ほ、本当ですか……嬉しい。」

「……アトラ、いいの?」

「??私は全然いいよ。三日月とクーデリアさんの子供……どんな可愛い子か──」

 

 

「──待てェいッ!!!」

 

「「「──!?」」」

 

「お前たちに名乗る名前はないッ!!」を名言とする某兄さんの如く、そこに現れたのは徹夜明けテンションのカルディナ、そしてフミタンとV・C(人型)であった。

ちなみに部屋に戻ろうとした時に2人の事を聞いて、駆けつけて来たのだった。

 

「はぁ……足早に来て良かったわ。何やら子作り話が聞こえて来たけど……やっぱりか。」

《クーデリア様の告白は、予測より19.8%早かったですね。》

「これは大変な事になりましたね(棒読み)。」

「カ、カルディナ義姉様……!」

 

そして今のクーデリアにとっては、カルディナは義姉である。

「あっちゃぁ~」と頭を抱えるカルディナに、クーデリアは三日月との結婚を反対される、と思った。

 

「あ~、違うわよ。別に三日月がアトラとクーデリアと結ばれる事には、むしろ賛成よ。ただねぇ……問題はお父様よ。」

 

カルディナは説明した、これから起きるであろう出来事を。

 

義娘であれ、アースガルズ家で可愛がられているクーデリア。特に、父親であるクリストファーの溺愛っぷりは、カルディナが多々家を空けるので、余計に注がれている。

特に年頃になるクーデリアには求婚者は当然いる───が、アースガルズ家が提示する婚約前提条件に、『アースガルズ公爵を武力で倒す』というものがある。

 

「……つまり、娘の婚約者は自分より強い人物でなければ認めないのよ。ちなみにお父様の実力は、見たでしょ?」

「……ゴーレムに乗ってたとはいえ、メイスを牽制に、ランスでモビルスーツを破壊してましたね。」

「今は公爵の業務に付きっ切りだからそんなに武勇は聞かないけど、昔は『殲滅公』なんて呼ばれてたのよ。相対する敵は全て殺すって……今もその腕は落ちてないわ。多分、モビルスーツみたいな兵器に乗れば、お父様に勝てる人は……どれだけいるか。」

 

ちなみに技量だけではカルディナと対等に渡り合える実力である。

魔法の技術や他の要因でカルディナが勝っているぐらいだ。

アルドレイア王国の公爵の名は伊達ではない。

 

しかし、そんな話を聞いてか、クーデリアは……

 

「だ、大丈夫です!きっと三日月なら勝ってくれます……私の為に!!」

「───!?!?」

「うん、そうですよ!三日月なら公爵様にも勝てます!」

 

アトラと一緒に盛り上がった。

三日月は置き去りにして。

 

(……ヤバい。今まで感じた事のないものを感じる……オルガは───あ、いなかった。お嬢、お嬢!何とかならない?)

 

密かにカルディナに助けを求める三日月。

そしてカルディナの答えは───

 

「──さてお父様に、三日月がクーデリアに婚約を申し込んだって伝えないと。そして私は寝るわ。じゃあね。」

「では、失礼します。」

《三日月さん、お元気で。》

 

三日月の運命や如何に。

 

 

ちなみに、エルネスティは現在、アトラとクーデリアの熱に影響されたアデルトルートの熱心な看病を受けている。(意味深)

そしてそれを羽交い絞めしてまで必死に止めるアーキッド。

それはカルディナが途中で部屋に寄るまで続いていたとか。

 

 

 

〇あの武器の裏話

 

偽バルバトスゾンダーの使用していた超高周波ブレード。

どうしてそんなものが再現・使用できていたのか??

戦闘後にチラッとオルガに聞いてみた三日月。

 

「あのゾンダーの武器はお嬢が豆知識としてアトラに話してた、生活の知恵を元に再現されたものらしい。」

「絶対におかしい。」

 

何をどうしたら高周波ブレードを編み出す生活の知恵があるのだろうか?

だが実際に、お嬢様の要望で調理の際に家畜の骨や食用可能な魔獣の骨を出汁にしたい時に、どうしても切る必要があり、それを悩んでいた時、カルディナは高周波ブレードの事をアトラに話していた。

 

硬いモノなら細かく削るようにして切ろう、と。

 

結果、アトラは習得した。そして彼女に切れない食材はなくなり、料理の時短が出来たのだった。

実に謎理論である。

 

「アトラって、すごいんだね。」

「……いや、違うと思うぞ。」

 

犯人はお嬢様。

何を作りたかったかは謎。

 

 

 

〇英雄の剣・序

 

───ダーヴィズ・ヘプケン

 

理想の剣を造るために故郷を出て幾数年、ドワーフである以上、幻晶騎士(シルエットナイト)に携わる騎操鍛冶師(ナイトスミス)を目指す者、またゴーレム用の武具を造る者が多い中で、ダーヴィズは『英雄の剣』を造りたい“変わり者”であった。

剣は消費されるもの、という認識が多いが、彼はかつて見た絵本の英雄譚を見て、それに憧れた。

だが現実は非情で、技量こそあれど、彼の夢を応援する者はいなく、身銭を稼ぐべく理想とは違う仕事もこなす日々が続いた。

しかし、カルディナと出会った事でその夢は加速すると同時に、自分の浅はかさを彼は知った。

カルディナの求める仕事は、自分の知るものより遥かに大きく、そして“理想を叶えるその姿勢”が、出会った誰よりも巨大──“巨大な欲望の塊”である、と魅せられた。

同時にカルディナの背負う覚悟と、取り巻く環境、そして突き付けられた現実(ゾンダーの存在)により、今まで培って来たものだけでは全く足りない、と改めてさせられ、更に勤勉になった。

 

そして今日、自らの夢を叶えるため、彼の夢がここに実現しようとする機会が訪れたのであった。

 

 

「……さてと。」

 

地下の工房の一室、そこにドワーフのダーヴィズは数多の資料を机に置き、整理していた。

そこにノック音が響き、ダークエルフのイザリアと、エルフのフェルネス、そしてイザリアの胸のポケットに差してあるコスモスの花──V・Cが部屋に入ってきた。

 

「お待たせしました。」

「すまねぇな3人共、忙しい時によ。」

「構いません。以前よりお約束していた事ですので。」

「むしろ、関われるのが光栄なくらいさ。」

《お招きいただき、ありがとうございます。》

「早速だが、これを見てくれ。」

 

彼が広げたのは、とある剣──彼が目指す『英雄の剣』の設計図である。

それはダーヴィズがカルディナの元で働く際に条件に出した、彼の夢である。

理想の剣を創りたいという熱意を込みにダーヴィズ・ヘンプケンは今の今まで鍛冶をこなしながら、その腕を磨いていた。

そして今回、今まで練りに練ったアイディアを元に、剣を造ろうという訳だ。

設計図には金属の配合から熱する温度、魔術回路、果てはタイミング取りすら綿密に描かれている。

本来であれば、独りで鍛冶をするドワーフである彼が、3人に仕事を振った理由、それは……

 

《……回路の羅列が、非常に綺麗な刀身ですね。》

「今まで見た剣とは一線を臥すものね。能力を想像するだけで背筋が凍るわ。そして内部構造は、どう考えても独りで出来る仕事じゃないね。」

「むしろ、錬成のタイミングがシビア過ぎて私やイザリアさんですら手を焼きそうですね。」

《ちなみにこれには何か見本でも?》

「ああ、基本的には“ウィルナイフ”を手本にしている。」

 

──ウィルナイフ

 

宇宙メカライオン『ギャレオン』のブラックボックスから解析された概念図を基に造られたエメラルド状の刀身を持つ熱還元刀。元々は『ジェネシックガオガイガー』に装備された『ガジェットツール』のひとつを地球の現行科学で再現させた代物である。

『サイボーグ・凱』が装着する『ガオーブレス』内部に納刀され、彼の意識ひとつで鉄骨の切断から大根の桂剥きまで自在に行える。後に超進化人類『エヴォリュダー』と成ってからも専用『IDアーマー』に携帯武器として引き続き備えられた。

『EI-01』との決戦では、機界四天王ピッツァとの白兵戦で折られた刀身から『ゾンダー核』の位置を特定し、『ゴルディオンハンマー』の一撃を振るう。

(※ピクシブ百科事典より引用)

 

「……やっぱその方針で行くのね。でもウィルナイフの作り方なんてわかるの?」

「ああ、それはカインさんが協力してくれたんだが……ジェネシック・ガオガイガーのモノは三重連太陽系の設備を使わないと出来ないから、その通りの製造はここでは無理だそうだ。だから、基本的な製造方法を聞いてきた。」

 

その作り方はざっくり言うと、特殊な加工を何重にも施した金属の粉末にGクリスタルを砕いて粉末にしたものを混ぜて鋳造、そして鍛造したもの、らしい。

ちなみにその特殊な金属はこの星では産出されおらず、金属の加工も地表で行うと環境に非常にヤバい悪影響を及ぼすらしいので、製造は全て宇宙でされていたようだ。

さすが決戦兵器の持つ武器。

 

「ハハハ、無理ね。」

「地表に悪影響を及ぼすとは……熱量が太陽並みとでも??」

《記録にはそのぐらいの熱量が局所的に発生していたとあります。》

「だから、独自解釈でやるつもりさ。その上で、こういう特性を持った得物にしてぇ。」

 

ダーヴィズの主張は以下の通りになる。

 

➀切れ味の幅。

意識1つで切れ味が自在になるという事は、込めるエネルギー次第で切れ味が上下する事。この世界では魔力(マナ)次第で変わる事を意味する。切れ味を増す付与魔法はあるが、それだけではゾンダーには意味がない。目指すはゾンダーを焼き、その切り口が再生不可能にする域まで。

 

②柔軟性と剛胆性と非侵食性の両立

剣は基本的に消耗品であるが、確実に荒っぽい使い方になる上、一点ものになる以上、切れ味の他に柔軟性と剛胆性の両立が必須となる。また、ゾンダーが相手となるので、武器が侵食される事はあってはならない。最低でもゾンダー耐性は必須。

 

③使用者への能力拡張

使い手をカルディナ・ヴァン・アースガルズを想定しているため、斬撃、刺突以外にも戦術級魔術(オーバードスペル)()()の使用の想定、もしくは想定以外の想定も考慮する

 

「……あんた、何を言ってるのか解ってる??」

「……解ってるよ。」

「➀、②は解ります。しかし③は……いや、確かにお嬢様相手では、想定しておかなければ駄目ですね。」

「少なくとも、想定以外の事をやって尚、耐え切れる品質にしたいのよ。」

《というか、全ての項目で無理を言っていますね。》

 

否定出来る材料が一切ないのが悩みである。

ただ良く切れる短刀というだけでは、ゾンダーという無限に再生する相手を剣で相手取るには足りない。

流石ゾンダー。

 

「確かにお嬢様であれば、より良く使って下さると思いますし、いろいろな使い方を見せて下さると思います。何より、ここまで想定しておけば、他の方が使う際には壊す心配をしなくていい。」

「ああ、俺も能力の付与は一通りするつもりだが、半分は()()を持たせるだけにしようかと思う。フレメヴィーラ王国のイカルガのあの剣を見て思ったんだが、切るだけの一辺倒じゃお嬢の使い方には応えられないだろうしな。」

「斬る、突く、剣で防ぐ、は当たり前として、お嬢は魔術触媒に使いそうだしね。それで、肝心の材料にはアテがあるのかい?」

「ああ。Gストーンを触媒結晶として、Gストーンを砕いて粉末にしたものとGリキッドにAZ-M、精霊銀(ミスリル)を加えて刀身にする事で、勇気の力で切れ味を増す算段だ。」

「「ちょ、ま……!?」」

 

遂にエルフ2人が絶句し、V・Cは花びらを風車のように回す。

遂にダーヴィズ(お前)も壊れた思考を持ったか、と。

ついでにコストもぶっ壊れた値段に跳ね上がる。よくカルディナが許可したものだと。

その反応に、ダーヴィズは何とも言えない表情で答える。

 

「……わかってんだ、わかってんだ。だがぁよ、考えてくれ。」

「まあ、わかるわ。常識の効かないヤツに、常識程度のもの当てても解決しないって事にはね。」

「まあ、遂にダーヴィズさんもお嬢様の域に達したと感心しましたが。」

《心中、お察しします。》

「褒め言葉として受け取っとくよ……ってな訳で、もう俺独りの力じゃ対処出来ない域になっちまったんで、3人に助力を願いたい訳だ。」

「ええ、構いません。」

「そういうことならいいよ。」

《微力を尽くします。》

 

だが、その前に……

 

《お嬢様には今回の事はお知らせされたのですか?》

「ああ。けどよ……まずは俺達だけって事にしてもらったよ。」

「お嬢様に頼るのもいいのですが、お嬢様は有能過ぎます。いきなりお嬢様に頼るのは、職人としてどうかと思いまして。」

《確かに……》

 

まずは自分達でどこまで出来るか。

今後の事を考えてもアドバイザーは必要でも、直に技術を振るうのは自分達。

未知のものに挑戦する以上、危険を伴うがカルディナ抜きでやらなければ、いずれ甘えが出てくる。

そうなってはいけないので、今は出来るところまでやりたいと思う4人であった。

ただ、そうで無くてもカルディナであれば、嬉々として手伝うと名乗り上げるだろうが……

 

「何よりお嬢は働き過ぎなのよ。」

「心優しい方です。戦いが激化しても、今までのように細部にまで見て下さるでしょうが、きっと状況が許してはくれないでしょう。ならば、そうしなくても大丈夫と言える位にはならねば、カルディナ・ヴァン・アースガルズ公爵令嬢の元にいる資格はないです。例え、我々にとって未知の技術相手でも。」

「だな。」

《……お心遣い、ありがとうございます。》

 

そして始まったウィルナイフ製作だが……

 

「──ちょ!?魔力(マナ)の転換が、追い付かない!!」

「これはかなり、キツイ……!」

「頑張ってくれぇ……って、まともに打てねぇ!!」

《AZ-M、制御キャパシティ・オーババババ……システムダウンんnn……》

「ちょ!V・C!?V・Cィィィ!!」

 

体内に触媒結晶を持つエルフ2人は精霊銀(ミスリル)の錬成に魔力(マナ)の転換が追い付かない程の魔力(マナ)消費を強いられ、AZ-MとGストーン、Gリキッド、精霊銀(ミスリル)を結合させようと奮闘したV・Cは端末がシステムダウンする程の負荷が掛かった。

そしてそれらを同時進行しないと鍛造が出来ないので、そのエネルギーの余波をもろに喰らうダーヴィズもまた悪戦苦闘しながらハンマーを叩いていた……が、無理だった。

結果、中断となり、全員が疲労困憊で地面に横たわっていた。

 

《……カイン様が宇宙で製造していた理由が解りました。少なくとも、製造中の余波エネルギーを遮断しない事には作業になりません。あと私、次から“サクヤ”で来ます。》

「ああ。まともにハンマーを打つことすら難しい。出来上がったモノもナイフとは言い難い、ガラスの欠片みたいなモンだしなぁ……つか、よく死ななかったな、俺。」

「……でもこれだけでも──フッ!」

 

欠片を指の間に挟んで、イザリアはそこらにあった鉄板を勢いよくなぞる。

厚さ2センチ程の鉄板はずり落ち、その破片が落ちる。

その切断面は、鏡のような光沢を放っていた。

 

「切れ味は最高ね。あちち……」

「強化魔法といえど、発生中のエネルギーは遮断しきれませんか。」

「素手じゃなきゃいけるわね。これがナイフ、そして剣になった時の性能……想像を絶するわ。」

「方向性は間違ってないか。これは自信が付いたが、さてどうするか───」

 

「……皆さん、何やってますの?」

 

そんな時、恨めしい感情を全面に出したカルディナが、ゆらりとやって来た。

更にその後ろにはガイガー(カイン)とフミタンが。

 

「やあ、やってるね。」

「いや、申請通りにウィルナイフの製造をしてたんだけどよ、このザマでな……」

「ずるいですわ!判っていましたけど……そういう事は私も呼んでください!絶対に参加しますから!」

「いやいや、待ちなさいカルディナ。君だって彼らの熱意と気持ちを知らない訳がないだろう。職人としての意地もあるんだ、少しは汲んで見守ってやってくれ。」

「……はい。」

 

羨ましいが全開になっているカルディナだが、カインはそれを止めた。

カインも今回の事は重々知っているので、互いの気持ちは良く判る故の言葉だった。

 

「さて……出来上がった物の品質は、独自のレシピとはいえ、いい線をいっている。後は……その問題も私も良く判る、随分悩まされたからね。」

《余波エネルギーの遮断は、私がカバーすれば問題ないですね。後はAZ-Mの処理ですが……》

《お待たせしました。“V・C・サクヤ03”到着しました。“04”のボディも持ってきています。搭乗して下さい。》

《了解。これでAZ-Mの処理とエネルギー遮断を同時進行出来ます。》

 

イザリアからコスモスを受け取り、仮面に“04”と表示されたV・C(Ver.サクヤ)の頭に挿した個体が立ち上がったところで、職人達も立ち上がった。

 

「っしゃ、やるか。」

「今度は成功させます。」

「お嬢、ちゃ~んと見てなよ。」

「お、応援しますわ!」

「ははは。」

 

再び始まるウィルナイフ製作。

ウィルナイフから激しく放たれるエネルギーを避けつつ振るわれるハンマーに、絶え間なく注がれる錬成の魔力(マナ)

トライ&エラーを繰り返す事、数回。

砕けたり、鍛練不足だったり、含有率が僅かに不足してたり、逆に出力過多だったり……

だが、遂に───

 

「……出来たぜ!」

「「「おおっ!!」」」

「刀身の精霊銀(ミスリル)とAZ-M、Gストーンの合金を遂に征した……そしてGストーンを触媒結晶として備える事で、その性能は俺にも計り知れねぇ、未知の一振だ……!」

 

ダーヴィズが掲げる剣は、Gストーンと同じく翡翠に輝く、少し反りがある刀身を持ち、それにAZ-Mの糸で編んだ柄を備えた剣。

それは理論上は勇気の力で、切れ味は天井知らずの一刀である。

 

出来上がった剣を感動しながら眺めるダーヴィズだが、言葉を改め、跪いてカルディナに剣を差し出す。

イザリアとフェルネス、V・Cも彼に倣い、跪く。

 

「カルディナお嬢様。この剣をお納め下さい。」

 

この剣は元よりカルディナのための剣。

それは彼らの忠義と職人魂、そしてカルディナへの感謝の証。

大いに頷くカインを見て、カルディナはその剣を受け取る。

 

「──ありがとうございます。皆さんの忠義と職人の魂の結晶、確かに受け取りました。」

 

そして試し切り。

相対するものはガイガーの胴体に使われている回転軸の失敗作。当時施工したエルフ達により、精霊銀(ミスリル)を10%程混ぜ合わせた直径50センチにも及ぶ合金の軸で、初期の試運転時にカルディナが折ったものと同一のものが、机の上に置かれていた。

 

その軸を前に、左手で持った剣の刀身に、右手で術式を編みながら魔力(マナ)とGパワーの混合エネルギーを流し込むカルディナ。

指でなぞった刀身にGパワーが発揮され、翡翠色の光が眩く発する。

離れながらも周りにいるギャラリー達にすら、その影響はビリビリと感じさせる程だ。

構えは“天の構え”と呼ばれる上段の構え。

 

「……術式起動、Gパワー流入開始。魔力(マナ)、及び魔術回路同調に異常無し。まずはコレくらいで───いざッ!!」

 

カルディナは剣を振り下ろした。

しかし、その剣筋はその場にいた誰にも解らない程に───(はや)い。

合金軸も机も切られていないように見えたが、カルディナが踵を返すと同時に机が割れ、そして合金軸が床に落ち、その衝撃で縦一線に分かれた合金軸は鏡のような断面を現した。

その一連の流れに、一同は達人芸のような現象に息を呑む。

そして当のカルディナも気持ちは一緒であった

 

「……今まで体験した事のない切れ味ですわ。何も考えないで振り下ろすだけで、真っ二つだなんて。込める力次第で加減が出来る威力は魔力(マナ)以上!正に我が太刀に断てぬもの無し!

「ふぅむ、断面からして“目”を狙った訳じゃない……ただ振り下ろしただけとはね。使い手次第では敵無しだ。ウィルナイフを参考にしたとはいえど、ここまでの武器を造るとは……見事だ。」

「いよっ……しゃあああぁぁぁーーーッ!!」

 

カルディナとカインの言葉に、ダーヴィズは歓喜の叫びを上げる。

 

ようやく辿り着いた、ようやくここまで、と。

 

しかしダーヴィズにはこれが終わりではなく、始まりである事を理解していた。

この剣が、そしこの剣より始まり、派生するものがどんな影響を及ぼすかは未知数。

 

だが、この剣が自分を認め、ここまで高めてくれた居場所を与えてくれた雇い主に報いれるなら本望。

主を“生かし”、そして剣を“活かす”路を照らすなら、またここから始まる──

 

ダーヴィズは自身の壁が一枚破れた事に、喜びを噛み締めながらそう実感していた。

 

 

 

 

「───それで、この剣なんですが……」

「「「??」」」

「うむ、最終的にはガイガーやガオガイガーに装備出来るモノになるのだろうが……まずはモビルスーツあたりで試験運用という事になるのかな?」

《そうなりますね。構造はそのまま拡張として、まずは拡大製作から始めるのが良いかと。》

《“04”も同意します。》

「という訳でお願い致しますわ。」

 

早速入る注文。

受け取り方次第では、無理難題と言える注文内容だが……

 

「──もちろん!やってやんぜ!」

「「(──ヒェ!)」」

 

ドワーフは喜び、エルフは戦慄して肝冷えた。

 

ただ、モビルスーツが扱う大きさの物はそのままでは造れないという事で、ランドマン・ロディを使う事にしたのだが……

 

《……これは、何という快適さでしょう。》

《そうね……さっきの魔力(マナ)転換の苦労といい、耐熱遮断といい、何も苦労しないわ。》

 

魔力(マナ)制御装備のロディ2機を用いる事で制御が易々なるものになった鍛造作業の落差に、頭を抱える2人のエルフ。

7メートルもある製の刀身から荒れ狂う余波エネルギーすら余裕で遮り、嬉々としてハンマーを振り下ろす中央のロディ(ダーヴィズ機)を見て思う。

ただし、ナノラミネートの塗装は熱で剥げているが。

 

《まあ、良いではないですか?作業の簡略化が出来て。》

《まあね……》

 

そして気分が乗ったダーヴィズの暴走もあり、夜明けと共に出来上がった、勇気の力でその力を高めるウィルナイフ改め『ブレイブキャリバー』(命名:カルディナ)は、当初の予定を超えて、二振り打たれたのだった。

 

 

 

◯二振りの行方と、公爵家の最終兵器

 

「……で、あの二振りはどうするの?」

 

夜が明けた後、関わった者達が鍛造が終わってぐったりする中、二振りのブレイブキャリバーをどうするかが気になり、イザリアはカルディナに尋ねる。

 

「……まず、ガイガーに装備したいのですが、まだ出来たばかりで評価もろくしにしてません。それにガイガーで起動させた時の弊害(主に暴発方面)が計り知れません。なので出力の低いGフレームで試そうかと。」

「……いろいろツッコミたいけど、試験団の子供らに扱えるかしら?双剣……二刀流は厳しいと思うわよ?」

「いえ。私がします。」

「妥当ね。でも使える機体がないけど……」

「──“ASW-G-01”を使います。」

 

そのコードナンバーを聞いた瞬間、イザリアは固まる。そして多少動揺しつつも手元の酒瓶を空け、一口煽るように呑む。仕事の後の一杯で、寝酒である。

そして深い溜め息にも似た吐息を吐いた。

 

「……なるほど。確かロールアウトが今日、だったわね。」

「はい。なので試運転がてら、振り回すのは丁度良いかと……宜しいでしょうか?」

「いいわよ。私は試運転には携わらないし、気兼ねなくやっちゃって~。」

「では明日の明朝から……今日はもう、限界ですわ……失礼します、むにゃむにゃ……

 

眠気の強いカルディナのよたよた歩く後ろ姿を見送りつつ、再び酒を一口。

そしてイザリアはカルディナの言った事を反芻し、一言ポツリとつぶやいた。

 

「……ASW-G-01( バエル )、か。忌々しい名前ね。」

 

その表情は晴れず、憂いすら感じられた。

 

 

 

 

◯アースガルズ家の最終兵器

 

 

その後、ナノラミネート塗装が剥げたランドマン・ロディは再塗装に回され、カルディナ達が部屋に戻る間に、様々なところに訪問、介入しなかればならなかったりする等、仕事が増えた頃、あーだ、こーだしていた間に夜になり、とある手紙を読んだカルディナであったが……。

 

 

「……とりあえず、イザリアさんにお知らせして。そ~っと渡してね。」

「承知しました。」

 

フミタンに言伝を頼んだ後、独り部屋でベッドにダイブし、リラックスして寛ぐが……

 

「───寝れませんわ。」

 

そう、寝れないのだ。

日中濃過ぎる一日を過ごしたせいか、何か非常に昂っているのだ。地味にレヴォリュダーの能力をしても駄目なテンションになっているのだ。

夜の鍛冶にてブレイブキャリバーで夜明けをフィーバーしていたため、もう目が冴えている。

その他にも本当に色々、いろいろ、イロイロあり過ぎた。

ちなみに止めはフレメヴィーラ王国組の暴走で、頭がお花畑なアディがエルを襲おうとしたところをアイアンクロウで阻止、そして小一時間説教したが、妙な熱に当てられたアディに言葉は通用せず、パレッス粒子を噴霧して事なきを得た。

ついでに他の2人にもパレッス粒子を噴霧。

とりあえず明日までの安眠は間違いないだろう。

 

ただし、レヴォリュダーであるカルディナには通用しない。

パレッス粒子??耐性MAXだ。

 

「……どうしたものかしら。」

「──お困りのようですね、カルディナさん?」

「え、その声は……キャシーお義母様!?」

 

いつの間にか扉の前に立っていたのは、金髪カールヘアでぽわぽわ系の“天然ゆるふわ公爵夫人”であった。

名は、キャサリン・S・アースガルズ。

アースガルズ家の第二公爵夫人である。

 

カルディナにとっては義母であり、第一夫人のケルセリーヌとは同時期に嫁いでいるが、見た目も性格も、ぽわぽわ系なので裏表が無く、武家のアースガルズ家には珍しく、一切戦闘能力がない人物。

その代わり争い以外の能力は軒並み高く、包容力、母性は桁外れにある。アースガルズ家で母親と言われたら、大概キャサリンを指す程に。

第一夫人のケルセリーヌは滅多に顔を出さないため、第二夫人のキャサリンがアースガルズ家の“内”を纏めているが、「第一夫人はケセリーちゃんです。」と頑なに述べる程に2人の仲は非常に良い、乙女っ気が抜けない二児の母。

 

そんな人物が、夜な夜な尋ねてきた理由、それは……

 

「ケセリーちゃんから~、聞きましたよ~、働き~過ぎって~。ついでに~夜遊びは、いけませんよ~。」

「あ、いや、その夜遊びでは、ないのですが……」

「それだけじゃ~、ない~ですよね~?」

「はい、すみません、つい楽しかったので。」

「正直で~、よろしい~。」

 

間延びした口調で諭すように問いただす、ゆるふわ公爵夫人。

安直に、睡眠不足のカルディナを心配してやって来たのだった。

そんな夫人が『ω』な口をして『どやぁ』する理由は……

 

「と、いう訳で~マッサージしてあげます~。」

「え、あ、は、は……はい。」

「素直で~、よろしい~。アースガルズ家の皆さんは~、いつも働き過ぎです~。」

「それは──はにゅ!?」

「でも知ってます~、それがみんなのため~、貴族としての~義務として~。でも~……」

「はぁあん!そ、そこはダメ──ぇん!」

「こ~ゆ~時ぐらいは~、休みましょ~、えい。」

「……──!?、……!………すやぁ……むにゃむにゃ……

「……あら~?おねむですね~……おやすみなさい。」

 

キャサリン・S・アースガルズ第二公爵夫人。

『アースガルズ家の最終兵器』の異名を持つ彼女の真価、それは母性と包容力とその技術で、どんな相手にでもマッサージで安らぎを与え、安らかな安眠に導く事。

例え、レヴォリュダーであっても。

常に働き過ぎなこの一家に、彼女の存在は、非常に欠かせない存在である。

 

「───キャアアアァァーーー!!!」

「あら~?遠くから悲鳴が……これはイザリアさんの悲鳴ね~。非常にショックな出来事かしら~……ああ~旦那様が来るのね~、それは大変~、慰めに行かないと~……」

 

不安になる者には誰であれ手を差し伸べる──

 

彼女の戦いは続くのだった。

 

 

 

《 NEXT 》

 

 

 


 

 

《現在公開出来る情報》

 

◯ブレイブキャリバー

 

Gストーンを触媒結晶に、Gストーンの粉末とGリキッド、精霊銀(ミスリル)、AZ-Mを繋ぎに魔力(マナ)を流し、鍛造した剣。

斬る事に特化し、西洋剣の直刀ではなく、日本刀のように若干反りがある仕様。

ウィルナイフと同様に意思の力で切れ味が変わるが、その力はウィルナイフ以上で、失敗作の欠片ですら鉄板を切れる程の力を持つ。

Gストーンと同じ色をしている。勇気を込めると使用者の力次第でその切れ味は天井知らずとなる。

また、強力故にその反作用で周囲に被害をもたらすため、現状では使用者は限定される。

 

 

 

 






……詰め込み過ぎ? イエスッ!(錯乱)

とりあえず、消化したい話はこれで一応終わり。

ご感想お待ちしています。

───次はようやくバエルだっ!!


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