公爵令嬢は、ファイナル・フュージョンしたい。   作:和鷹聖

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さあ、待ちに待ったバエルだ!!
皆の者、バエルを、アグニカを称賛するのだ!!

そしてやり過ぎてガオガイガーなのかオルフェンズなのか、そして主人公がお嬢様なのかバエリストなのか解んなくなっちゃったYO、こんちくしょう!!

※本編を読む前に、バエルとアグニカ称賛を10セット行ってから読んで下さい。
ただし、ギャラルホルンを称賛する言葉を入れると、その度にアグニカポイント-100点と致しますので、ご了解ください。

※筆者が執筆の関係上、頭バエルになってしまったので大目に見てください。

それではどうぞ!


Number.21 ~バエルと禍祓いの焔(1)~

 

 

その少年は、かつて虐げられていた。

その少年は、かつて憧れていた。

その少年は、かつて欲していた。

 

理不尽な存在に抗う力を。

白く、自由な翼を持ち、黄金の剣を以て、『堕天』した天使を狩る存在に。

何よりも何をも超えるその力を。

 

少年は、憧れ、そしてなろうとした。

 

厄祭の

 

『堕天』を狩る『白き悪魔(バエル)』に。

白き悪魔(バエル)』を駆る『禍祓いの焔(アグニカ・カイエル)』に。

 

けれども少年は『禍祓いの焔(アグニカ・カイエル)』ではない。

強い心に反し、なろうとすればする程に遠ざかる現実。

 

その所業に、過程に、志に。

 

友を裏切り、欺き、対峙し……

 

最後は自分を信じた婚約者が付けた傷により、志半ばに倒れた。

 

 

……そして少年は、夢を見た。

 

白い翼を持つ力強い存在に手を引かれ、光差す彼方に導かれたのを……

 

自分だけではない、他にも光に導かれている者はいた。

先導する数多の光……

一本の光の筋になった中で、少年は改めて思った。

 

───本当に救われた。

 

初めて救われたと心の底から感じた。

そして少年は自分を救ってくれた白き存在に、改めて憧れたのだった。

 

青年となった少年の前に、再び現れる日を待ち望んで……

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

「……それが、私がこの世に生を受ける前の出来事だ。」

「「「───おおっ!!」」」

 

とある教会の礼拝堂にて。

神父服を纏った金髪の若い男が説法を説いていた。

相対する信者達は教会から溢れんばかり鎮座しており、神父を中心にその説法を熱心に、そして酔狂して傾聴していた。

そして神父の説法は更に熱を帯びてゆく。

 

「──しかし『白き存在(バエル)』によってこの魂を救われた。つまり、人は変われる。私が『白き存在(バエル)』によって救われ、変わったように、人は根源的に変われるのだ!ただそのきっかけはあまりに曖昧で、人それぞれだ。故に───皆の者よ、『強き支え』持て!私が『白き存在(バエル)』に救われたように、『白き存在(バエル)』は確かな存在となろう!誰の元にも平等に現れ、そして手を差し伸べるだろう!そして『アグニカ』はいつも我らを見ている……そして、我らを強くしてくれるのだ。」

 

「「「──ワァァァアアアアァァーーー!!!」」」

「バエル、バエル!!」

「盟主アグニカ・カイエル、万歳!!」

「救世の『白き存在』に、栄光あれ!!」

「カイエル教に光差す希望よ!」

 

「さあ讃えよう、皆で!我等を見守る救済の存在を!!」

 

「「バエル、バエル、バエル!!」」

「「バエル、バエル、バエル!!」」

「「バエル、バエル、バエル!!」」

「「バエル、バエル、バエル!!」」

「「バエル、バエル、バエル───!!」」

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「───お疲れ様でした、マクギリス()()。」

「ああ、ありがとう石動。急な説法だったが、良いセッティングだった。」

 

説法が終わり、教会より馬で移動する10人ほどの一団があった。

その一団の中心人物──先程の神父、マクギリスは部下である神父服の青年──石動・カミーチェに労いの言葉を掛ける。

 

「しかし困ったものです、司祭の姿を覚えている者がこの村にいて、姿を見るや急に説法を説いてくれとは……」

「構わないさ、()()我等は旅の僧侶の一団……そのくらいは、いくらでもしよう。」

「さすがマクギリス司祭!」

「バエルを信ずるその御心……!」

「まさに我等が司祭様です!」

「……そうですね、失礼致しました。」

「それにだ、石動。私は───嘘は言っていない。私自身の真実を述べているに過ぎない。」

「はぁ……」

 

自信満々のマクギリスに、何とも言えないといった表情の石動。

周りの護衛達からはマクギリスを称賛する声があるが、こればかりは未だに納得しきれない。

 

マクギリスが所属するのは“カイエル教”の中の派閥の一つ、“バエル教義派”。

その内容はざっくり言うと『世界の住人の大半はバエルが別の世界より導いた人々。その恩を返すべく“徳”を積みましょう、良いことをしましょう。そうすれば救われます。ただし自由意思の元に。それをバエルも望んでいる』というもの。

提唱者はマクギリス本人。

 

主流派の『アグニカ・カイエルはこの世を救った救世主であり、神様。ならばその教えに従うの当然。神の住まう教会の言うことは必ず従いましょう』という“アグニカ教義派”の教えとは密かに対立している。

 

また、ギャラルホルン教皇国の内部勢力は“教皇派”が席巻しているが、その中で兵力の大多数を担う“軍事派”がある。

宗教と軍事───2つの対立は古今より続いている。

大半が“教皇派”に癒着しているが、“軍事派”の大将であるラスタル・エリオンがその勢力を保っている。

前世と似たような顔ぶれ、体制の“軍事派”であるが、その実力は謙遜ないもの。

 

ただそれ以上に“教皇派”はキナ臭い噂しかない。

カイエル教の名の元に聖女をあらゆる場所から招き、本殿に入れている。

秘密主義な上に、数々の“奇跡”を成したとも聞くが、身内にすらその所業が説明されていない体制には胡散臭さすら感じる。

マクギリスの一派は、そんな“教皇派”に所属しながらも“軍事派”との太いパイプを形成している。

とはいえ、新参者故にいろいろなところを飛び回る役を暗に押し付けられているのは、言い過ぎではない。

 

そんなマクギリスを不安げに見る石動は『何故、自分達は神父の真似事をしているのか?』と思うのも無理はない。

そんな石動にマクギリスは声を掛けた。

 

「そう無理に信ずる事はない、石動。だが、かつての我等の所業の果ての結果が、今なのだ。それは少なくとも受け入れても良いのではないか?」

「……まあ、それは何十、何百と問答した事ですからね。」

 

現実主義に傾倒する石動には、今の現実は非常に受け止め難い。

 

というもの、彼等の言動からある程度察する事も出来るが、このマクギリス一同は転生者である。

しかもオルガ達と同様に天使、悪魔達に引かれ、この世に生を受けており、この場にいる者達全員が記憶を取り戻しているというオマケ付きだ。

記憶を取り戻した時には、ギャラルホルンが宗教国家という現実にある程度驚きつつも、彼等は生きる決意をした。

特にマクギリスの記憶復活は誰よりも早く、その過程を朧気ながら覚えていた。

それが説法にもあった内容である。

 

彼の始まりは、やはり義父であるイズナリオ・ファリドに養子として引き取られた時だ。

そして虐待を受ける日々を送っていたとある夜、その辛さから屋敷を抜け出した後、ウィーンゴールヴ神殿にこっそり逃げ込んだ先で見た、巨大な『御神体』───バエル。

それを目にした時、涙を流した。

そしてマクギリスは前世の記憶を取り戻した。

 

記憶にあるモビルスーツ( バエル )とは大きさも細部のデザインも多少異なるが、間違えなくこれは、あのバエルだとマクギリスは肌で、そして魂で感じた。

そしてマクギリスの魂は感じ取った。

 

───バエルの魂はこの世界にいる、と。

 

ぼんやりとだが、確実に感じ取った。

 

ちなみにそのバエルは、本来の幻晶騎士(シルエットナイト)とほぼ同じ大きさであり、起動方法も初期型となんら変わりなく、かつてのバエルのように阿頼耶識システムはない筈だが、起動は出来ない。

起動出来たのは300年前に起きた『厄祭戦』の時だけだという。

また、目の前のバエルには残思こそあれど、バエルの魂はいないと確信──不思議とそう感じ取れた。

 

ならば、再びバエルに逢いに往こう。

自分がこの世界に導かれた理由を問おう。

そして叶うなら、再びバエルに乗り───バエルの、アグニカ・カイエルの名を悪用する『ギャラルホルン教皇国』を断罪する。

それも物理的にも、社会的にも徹底的にだ。

そして身分差による悲劇がない世界にする。

 

───バエルの名の元に

 

少年の頃の恨みを決して忘れず、理由もさほど変わりなく、再び同じような路を往こうとしているのが、今のマクギリスであった。

 

 

「しかし、今回の目的はやはり解せません。枢機卿の依頼とはいえ、何故隣国──しかもアルドレイアの一領地を偵察など……」

「解っているさ。だが、ギャラルホルンにとっても、我々にとってもこれは是が非でも行わねばならない事なのだ。覚えているか?アルドレイア王国へ攻め行った一個師団が壊滅したのを。」

「ええ……あの皇子が勝手に攻め行って大々的に返り討ちにされた、アレですね。」

 

進行したギャラルホルンの一個師団が文字通り全滅した出来事。

前例のない“教皇派”率いる軍勢の敗北……それはギャラルホルン教皇国に籍を置く者にとっては衝撃的な事であった。

例えマクギリスが関わっていないとしても、あの馬鹿皇子が愛する者を迎えに行く口実を裏で侵攻として利用されていたとしても、モビルスーツとは一枚も二枚も劣るゴーレムの軍勢であっても、その勢力は侮れない……

 

更には先日、クーデリア・A・アースガルズ公爵令嬢を“迎えに”行った一団もその消息を断った。

しかもその一団には秘密裏に、グレイズ(モビルスーツ)が与えられたという……

 

「眉唾物ですね。今の教皇国には……いえ、この世界にそんな技術はないはずなのですが……しかもグレイズ、ですか。」

我等の同志(記憶が戻った)数人が、偶然だが見たという間違いない情報だ。しかも枢機卿が管轄する部署の建物から夜間に、だ。それには“勇者”が関わったとか、そんな噂があるらしい。」

「それこそデマでは……?」

「真実は解らんよ。しかし枢機卿自らが指示するという噂がある以上、何かしらの事実である可能性は高い。枢機卿が管轄する部署は、カイエル教のごく一部にしか全貌を明らかにされていない。“勇者”の存在も同じだ。組織内にいる我々ですら開示されていない以上、警戒は怠らないようにせねば。」

「その通りで。」

「しかしだ、その有利な盤上をひっくり返した存在がいる。今回はその存在の調査だ。」

「……非常に危険極まりないですね。調査対象が簡単に手の内を明かすとは思えません。“教皇派”や我々の放った間者も、未だにろくな情報を得られないのが現状です。ましてや嫌われているとなると……」

 

アルドレイア王国──それもとある公爵領に間者を向かわせると、確実に間者が()()()。それが疑問を深める要因となっていた。

きっと、優秀な存在が的確に間者を消しているに違いない。

 

「だがこれは我々にとって渡りに船。上手く行けば、かの殲滅公の協力を得られるかもしれない。」

「……だからですか。今回あえて危険と判って、アルドレイア王国……アースガルズ公爵領に向かっているのは。」

「ああ。あの公爵のカイエル教嫌いは有名だ。娘が皇子を極端に嫌っているのは評判の通り。それに今あの地が最も文化的に革新的な動きをしている。また産業的にも商業的にも“モビルスーツに比類する何かを創れる可能性”が示されていた。」

「詳しいですね。」

(つて)があるからな。」

 

マクギリスが秘密裏に経営する『モンターク商会』──その情報網と商業に携わる信者達からの情報を集め、出した結論であった。

政治的に情報封鎖されていようとも、商人や流通を紐解けばある程度判る事であった。

 

ちなみに秘密裏に経営しているといえ、ギャラルホルンが圧政を強いているせいで、アースガルズ商会と同じように、前世の知識をフル活用しての慈善事業や、技術開発を広範囲に展開する、マクギリスのバエル教義を具現化したような商会である。

そういう意味で、カルディナとマクギリスはある種、似たような立場にある。

 

しかしマクギリスが集めた情報の結果は異常だった。

明らかにモビルスーツより大型の、しかもこの世界から技術的にも逸脱した存在───開発コード『GGG』という名を手に入れた後、その情報提供者から()()()()()()()

幸いにも幾つかの中継点を経ての情報だったので直接的被害はないが、明らかに自分の想像を超えた“何か”があり、大きな力が働いているマクギリスは戦慄した。

 

だがそれ故に核心した、『何かある』と。

 

「……実にアグニカ的で、バエルな存在だ。……うむ、アグニカポイント80点といったことろか。

 

マクギリスはアースガルズ領にいるであろう“何か”をそう称賛した。

 

「……はあ。」

 

だが、石動は()()には付いて行けない。

石動には、転生したマクギリスの『バエル病』が厨二レベルで酷くなった──そう感じていた。

何故なら……

 

「これから行く先の()()はあるのですか?いくら何でも無策で行くのは……」

「無論、アテはある。“バエルがいる場所に向かう”のだ。」

「………(´・ω・`; )」

「この近辺に来て、確信した。間違えなくバエルがいると。」

「……(´・ω・`; )ソウデスカ」

 

実に良い笑顔で語るマクギリス。

今回の行く先の指針はアースガルズ領と、マクギリスの謎の直感で、これには石動は参った。

何故モビルスーツ(に比類するもの)を探すのに、オカルト染みた直感なのだと。

というか、転生したマクギリスに会ってからというもの───

 

「私にはバエルが感じられるのだ。更にはほんの僅かだが……アグニカの気配もだ。実に……実に素晴らしいではないか!?」

 

これに関しては、高笑いするマクギリスに石動は頭が痛かった。

 

前々から痛い発言は密かにチラホラあったが、転生してから遂に出たかー、と。

そのせいでマクギリスとは何十、何百といったバエル問答をした。

 

結果、諦めた。

もうこの“バエル病”は放置で。

特に実害はないので、放置で。

信者受けも良いので、放置で。

石動は、諦めた。

 

 

「──何だ、非常に楽しそうだな。二人で何を話していたんだ?」

「む、ガエリオ様。先頭にいた筈では……」

 

そこに馬を寄せて来たのは、ガエリオ・K・ボードウィン。

前世と変わらない───()()()()()ガエリオであった。彼もこの遠征に参加していた。

 

「そう言ってくれるな、石動。先頭巡回も今しがた交代したところだ。特に何もなから暇で仕方なくてな。で、何を話していたんだ?」

「……マクギリス司祭の“バエル談義”についてです。」

「はははっ!またか。こいつは昔からバエルが好きだからな、今更だ。なあ、マクギリス?」

「ああ、バエルは私にとっては理想の存在だ。」

 

屈託なく話し掛けてくるガエリオに、笑顔で答えるマクギリス。

実に()()()()()()といった光景である。

 

ギャラルホルンの軍部における若きエース、ガエリオ・K・ボードウィン。

真摯で有能な教会司祭、マクギリス・B・ファリド。

この2人取り合わせは非常に受けがいい。

その光景に石動は強い違和感を覚えつつも表には出さなかった。

 

前世、かつて親友であった2人。

しかしマクギリスの思惑と、その行動によりガエリオは裏切られ、瀕死の身体を復活させ、再び出会った結果、最終決戦にて2人は刃を交え、そしてマクギリスが破れた。

そして今世でも親友である2人だが、その関係も()()()()()()()()()()

幼い頃からの関係は何ら変わりなく、現在のギャラルホルン軍部の第一席代理である、カルタ・I・イシューはマクギリスに密かな恋心を抱く程。

そしてそのカルタにガエリオも……

 

その事を石動はマクギリスより密かに伝えられていた。

そして今世こそは上手くやる、もしくは利用する──そう、マクギリスは言っていた。

 

未だに記憶を取り戻してはいないが、いざそうなったら一触即発、計画が根底から瓦解する。

それどころか、周りから追われる可能性もある。

石動はいつ記憶を取り戻すか解らないガエリオの存在に、2人が会う度に内心肝を冷やしている。

 

世界が変わろうとも、あの3人の関係が変わらないというのは、皮肉である事を石動はこの時思った。

そして巡り来る運命もまた───

 

───その時である。

 

「マクギリス司祭!魔獣が来ました!数不明……相当数です!」

「む……運が悪いな。秘密裏に動いたためにアースガルズ領でも出入りの少ないこのルートを選んだのだが、魔獣が来るとは……ガエリオ!」

「ああ!ここからは護衛の仕事だ。マクギリス、石動と一緒に下がっていろ!!」

「ご武運を。」

 

抜剣し、魔獣へと向かうガエリオとその護衛達。

地面に手を付き、呪文を唱え、周辺の土、岩を用いて4~5メートル程のゴーレムを造り上げる。

 

「さあ、かかってこい!!我がゴーレム『キマリス』が相手だ!!」

 

ガンダムフレーム、ガンダムキマリスをラフスケッチ・デフォルメしたようなデザインのゴーレム『キマリス』(ブースター無し)は、身の丈程ある大型ランスを構え、突撃して来る1~2メートル程のヤドカリ型の魔獣の軍団を迎え打った。

 

……ちなみにこの造形は「何となく、インスピレーションだ。」との事。

 

 

他の護衛達もゴーレムを創造、突撃していく。

果敢に、素早い動きで次々と討ち取っていくキマリスと、護衛達のゴーレム達。

しかし、数が圧倒的に多い。

 

「ええい!!雑魚ばかりとはいえ、素早い上に数が多い!!」

 

ゴーレムを操作しながら戦うと隙が出来る背部に回り込まれ、更に跳びあがった個体を自ら切り伏せるガエリオ。

このままではじり貧である。

更に林の奥からこのヤドカリの大型種までが数体、ぞろぞろと現れる。

それに向けてランスを放つキマリスだが、硬い殻に阻まれてしまい、軌道の反れたランスを思わず引き戻す。

 

「この硬さ……厄介だ!」

「流石、魔獣討伐国家の領地……我々の地とは比べ物にならい魔獣の多さですね。」

「ああ。ガエリオ達の腕は確かだ。しかし、こうも小物ばかり、ましてアレは倒すのに骨が折れそうだ。堅固さにはナノラミネートアーマーを想像させる。このままでは……ん!?」

「マズイ、大型が一匹抜けた、逃げろマクギリス!!」

「司祭、早くこの場から退避を……ってどうしたのですか、司祭!?」

「……この感覚、は───」

 

迫り来る魔獣。そのピンチの最中、マクギリスが“何か”を感じ、足を止めた。

そして見上げる先───中天を超えた太陽より、僅かに見えた一点。それが徐々に大きく、そして懐かしさを覚える“耳を劈く音”を響かせ、マクギリスの魂を揺さぶる“シルエット”が───!!

 

「この音は……スラスター音!?」

「この感じ……まさか───!」

 

感じ取れたマクギリスだったが、視認する間もなく、“それ”は飛来する───

 

 

───バキリッ!!!

 

 

風を切り裂き、魔獣の堅固な殻を貫き、同時に地面を揺らす程の威力で突き刺さり、墓標のように叩き込まれる『二振りの黄金の剣』。

断末魔を響かせる事無く、その個体は絶命し、

そして同時に起きた“落下の衝撃”と共に浮き上がる砂塵の中で小型の魔獣達が、黄金の軌跡と共に次々と切り刻まれてゆく。

同じく宙に放り出されたガエリオや護衛達には一切の刃は届かず、確実に殲滅されてゆく魔獣達。

それでも隙間を縫って襲い掛かる小型種は、巨大な翼より放たれる“光の弾丸”により、次々に駆逐される。

しかし、再び大型種に刃を当てると、鈍器で殴ったように殻を砕き、吹き飛びこそすれ、切り裂く事は出来なかった。

“その存在”は動くのを何故か止め、剣を一瞥するように動き、『二振りの黄金の剣』を素早く腰に納め、今度は宙に突如現れた“黒い2つの穴”より出てきた剣を手に取る。

 

それは『翡翠の剣』、それも『二振り』。

 

剣は力を纏うように光を帯び、光の剣(ライトセイバー)の如き軌跡を一つ、描く。

 

───そして振り下ろし、両断。

 

今度は一切の抵抗も赦さない程の切れ味を見せ、満足したように一つ頷くと瞬く間に大型種、残った小型種を嵐と見間違わん程の速度で切り刻んでゆく。

最後に残った、特に大きい大型種には、振り上げる大きな鋏を切り伏せ、出来た隙で頭を足蹴にした瞬間、頭部が爆発、大型種の巨体が反り返った。

その瞬間、極限までの低姿勢から加速し、回転切り、そして一気に逆袈裟に切り上げ、空へと飛翔した。

同時に、魔獣は真っ二つに切り裂かれた。

 

「………!!」

「……何という。」

 

そしてマクギリスと石動は空を見上げた───

 

自らが崇める『白き存在』が白いスラスターウイングを拡げ、空に君臨する、その光景を。

 

 

それはかつて、それは夢にまで見た光景。

それはかつて、少年が夢見た英雄の姿。

あらゆる災厄を退け、堕天の軍勢を討った白き英雄、その名は───

 

── ガンダムバエル ──

 

 

感動に嵐に、心打たれ、涙するマクギリスであったが……すぐに正気に戻った。

そして分析を始めた。

 

「……オリジナルより大型化した背部のスラスターウイングより出るのは『翠』の光の粒子を放つ、あれはエイハブスラスターだな。電磁砲もビーム兵器とは違うエネルギー弾にでもしたのか、あれなら弾切れの心配はないな。各所のワンポイントの青のカラーとは違う、鳴動する『翠のクリスタル』は何か意味があるな、他にないエネルギーを感じる。武装には黄金の剣(バエルソード)と、それすらも上回る切れ味の刃……新造だな。結論からするとバエル2号機、もしくはバエルの強化型と言ったところ、うむ、悪くない。

「……あの、司祭??」

《───!?》

 

その時、ガンダムバエルのツインアイがマクギリスと石動に向いた。

そして、すぐに視線を外した。

 

「み、見ろ、石動!バエルがこちらを見たぞ!」

「ソ、ソウデスネ……」

 

そしてバエルは空中で反転───スラスター出力を全開で飛び去って行った。

途中でバレルロールをしたり、慣性機動を無視した動き(ゲッター機動)をしたり、最後は文字通り視界から消える程の速さでいなくなった……

 

「………な、何だったんだ。」

「───大丈夫か!?マクギリス、石動!」

「ガエリオ様……司祭も私も無事です、ですが……」

「ああ、あれはいったい……まるでウィーンゴールヴ神殿に安置されている『御神体(バエル像)』に似ていたが……」

「───あれはバエルだ、間違いない。」

「「「───え。」」」

「しかも()()()()()……何という巡り合わせ、実に僥倖、何という運命か!」

「お、おいマクギリス……??」

「司祭、落ち着いて下さ───」

「──私は正常だ。皆の者、これから改めてバエルの元へ向かう。」

「「「………」」」

 

マクギリスのまさかの発言に、一同固まる。

しかし実際予定通りなのだから、発言には何もおかしい事はない。ただし、不気味なくらいステキな笑顔で言われても説得力はないが。

 

そしてマクギリスはバエルが向かった()()()に向かい始めた。

ガエリオを始め、護衛達は戸惑うが、結局渋々従う事に。

 

どうやらバエルは恥ずかしがり屋のようだ。(ようやく見つけた、バエル)我等に救いの手を差し伸べた後は(もはや我らの間を阻むものなし)颯爽と住処に帰ったようだ(お招きいただきありがとう)。」

「……どうしてお判りに?」

「手段は不明だが、バエルの鼓動は今はあちらにいる(今度はかくれんぼかな、バエル)。だが、バエルを信ずる者として(バエルバエルバエルバエル……!)受けた恩を返さねば(バエルバエルバエルバエル……!)!!」

「「「おおっ流石、マクギリス司祭!!」」」

「……石動、どうしたらいい??」

「もう……自由にさせたら如何でしょう。」

 

熱烈な信者も含め、マクギリスは暴走しているようにしか見えない。

だが、本来の任務の目的とは変わりないのだから、あえて放置。

それに、石動にはそれはロマンティックなモノではなく、あのバエルが最後に見せた挙動には、思いもよらない驚愕が含まれているように見えてならない。

 

(……あれは明らかに動揺していた動きだ。司祭に何か見つかると拙いのか……それとも、今のマクギリス・ファリドに嫌悪したか。)

 

どこまで本気で、どこまでを解っているのだろうか?

石動は改めてマクギリスの異常さに驚くのであった。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「……あ、あああああァァァーーーッ!!!

《キモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイ……!!》

《ちょ!?、お嬢様、お気を確かに───》

──どう正気を保てっていうのよ!!!メーデー、メーデー!」

《キモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイ……!!》

 

そして当のガンダムバエルのテストパイロットをしているカルディナは、生まれてこの上なく動揺……いや、戦慄していた。

そしてガンダムバエルの中核である第一位の悪魔(バエル)でさえも寒イボを発症していた。

 

この日、カルディナは鉄鋼桜華試験団以外の騎士達───アースガルズ家に仕える腕利きにランドマン・ロディの試験運用を兼ねた魔獣討伐を行っていた。

内容は増えた魔獣の群生地を襲撃する、通称“追い出し”。

結果は上々で、苦もなく討伐が行われた辺り、その熟練の技量がモビルスーツにも通用する事がわかった。

バエルにて参加したカルディナもそれを認め、帰投しようとした直後、襲われている一団を発見、つい救出行動に出て、魔獣を全滅させた……までは良かった。

だが、止めを刺して空中に移動した後、まさかの『ロックオン反応』のアラートがコックピット内に響いたのだ。

三重連太陽系システムを一部流用していたため、使わないと判っていても入れていた警戒システムからの警告に驚きつつも、そのロックオンをしてきた対象を検索すると───まさかのマクギリスであった。

更には周辺にギャラルホルンの騎士達も。

 

これは不味いと直感したカルディナは、口封じのため迎撃しようとするが───バエルがこれを拒否。

 

《嫌、キモイ。マクギリス、キモイ。》

「バエルさん!?」

《V・C、帰還許可。》

《えぇ!?バエル、どうしたのですか!?》

《ちょっと待ちなさい!あいつら放っておいてたら……!》

《───ならロックオンの表示、サーチ。》

《ロックオンの表示?いったい何が───ゴブフォッ!!

「な、ななななnananana……!?」

 

モニターに映る《-LOCK-ON-》の表示を確認したV・C、そしてカルディナは恐怖した。

 

 

 

《-LOCK-ON(見つけた、バエル)-》

 

《-LOCK-ON(我が最愛のバエル)-》

 

《-LOCK-ON(さあ、今一度私と歩もう)-》

 

《-LOCK-ON(今度こそ、今度こそ……離サナイ)-》

 

 

 

 

 

「ロックオンが“ラブコール(激重)”って何!?」

《しかもロックオンにルビって……システムに介入されているー!?あれ本当に人間!?》

《……キモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイッ!!!》

 

パニック状態のコックピット内で制止出来る者はいなく、結果ガンダムバエルは生身の人間相手に敵前逃亡をする羽目に。

当人達の予想を超えて、痛烈なダメージが入っていたのだった。

 

その後、カルディナは父親にエマージェンシーを入れ、領内総出の大捕り物が開始された。

 

《こちらD班、3名を拘束!しかし先頭が速い!増援を!》

《こちらF班、2名拘束!でも先頭の金髪野郎、無駄に速いぞ!止まらない!》

《B班、ゴーレム使いを拘束!でも金髪は逃がした!お嬢様にも増援を頼んでくれ!》

《こちらA班、変態野郎を捕まえた……って逃げんな!お前は軟体動物か!キモイぞこの……すまん、逃がした!》

 

しかしマクギリスのバエルに対する執念が人間を超えた力を与えたようで、石動やガエリオ、部下達の犠牲もあって最後の最後まで捕まらなかったという。

 

《……こちらカルディナ。対象、マクギリス・B・ファリドと接触。交渉を望んでいるとの事。武装解除を確認、軽拘束を行った後、談話室に連行します。お父様、許可を。》

「………わかった。」

 

そして、最後はカルディナが拘束したとのことだが、連行されるマクギリスは、燃え尽きたかように白かったという。

 

 

《NEXT》

 

 

 

 


 

《―公開可能な情報―》

 

〇ASW-G-01 Ver.C-1 ガンダムバエル カスタム

 

ASW-G-01ガンダムバエルをフレームを含め、忠実に再現し、その後戦力増強のため改修したカスタム機。

再現後、対・ゾンダー用としてGS転換炉(リアクター)を主動力炉とし、ツイン・エイハブリアクターを推進器の主動力・武装出力元として移植しているため、出力は完全にオリジナルを上回る。そのため、スラスターウイングはオリジナルより大型化しており、ウイングに内蔵された電磁砲はエイハブ粒子砲に変更されている。

主武装の『バエルソード』は厄祭戦に造られたレシピではなく、こちらの世界で鍛造されたレシピを元に作成されているため、魔法対応型となっているが、強度はこちらが下。

両踵に格闘・牽制用の小型炸裂式パイルバンカーが装備されおり、新しい要望として搭載されている。

制御AIは悪魔バエルが担当。ただし、バエル自身が搭乗者を選ぶ仕様となっており、文字通り選ばれた人物でしか動かせない。

カルディナがテストを行った際には『ブレイブキャリバー』を使用、その相性の良さを証明しているが、こちらは標準装備ではない。

 

 




次回はマクギリスとの対談です。
最後の最後で何があったかはその時に。

………っていうか、私のマクギリス像っていったい。
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