公爵令嬢は、ファイナル・フュージョンしたい。   作:和鷹聖

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どうも、前回の更新からかなり間が開いてしまいました。
プライベートが非常に忙しく、執筆の時間が取れずじまいで、遅くなりました。

……子供が体調悪くなると、続きますよね。(仕方ない)
……確定申告で事前に書類不備があると直前に言われると腹が立ちますよね、しかもそれ以前に「大丈夫ですよ」と言ってたくせに、掌返しされると〇したくなるよね。そしてそれが今回も間に合わなく、余計な証明書のせいで多額の出費を強いられるとか……(〇ね)

とまあ、さておき。
今回と次回で、オルフェンズメインの話は一区切りとします。
時間が掛かった分、日にちは空けますが連続投稿となります。

どうぞ、お楽しみに。




Number.21 ~バエルと禍祓いの焔(2)~

 

そこは医務室よりも更に広く、中には大人が一人入れる程の大きさの『医療用カプセル』が数器。そしてそれぞれ中には大小様々な人影が1つずつ。

その雰囲気だけでもSFであるが、今のカルディナ達の魔法技術を集めればこれくらいは実現可能というのが怖いところ。

そしてその中の一つに群がり、作業をしているのは、今やウサリンMarkⅡの姿が定着したアベル、同じくミニ・ガイガーの姿が定着しつつあるカイン。

それにもう一人───フードを目深に被り、その容貌はハッキリしないがアベル、カインと共にキーボードを叩く様子から、関係者だろうか。

だが普通は作業に参加せず、壁際でその様子を見守る人物がいた。

 

「この間は助かったぜ。」

「いいさ。私もいい経験させて貰ったし。」

「俺もだ。とは言ってもよ……アンタからのアドバイスと基礎回路の指導がなきゃ、俺はブレイブキャリバーを形にする事も出来なかったぜ。流石、銀細工師。」

「そりゃどうも。あの手の魔術回路は昔、散々設計、製造したからね。」

「その昔ってのは……目の前にある()()に関係あるのか?」

「まぁね。」

 

ドワーフのダーヴィズと、ダークエルフのイザリアである。

普段は率先して働く彼らであるが、今日は傍観者であり、とある事情でここにいる。

そしてダーヴィズの視線の先には、エルフのフェルネスがアベルやカインの指示を受けて右往左往していた。

 

そしてイザリアの傍らにもう一人……容姿が瓜二つでありながら、服装の趣味が正反対の人物が。

機能美を優先した職人の服とは違い、ドレスに近い自己アピールの強い華美な服を纏うダークエルフ。

その人物の名はエリザベート・フランベル。鉄鋼桜華試験団の顧問教官の1人であり、カルディナの魔法の師匠であり、イザリアの姉である。

そのエリザベートがアベル達に向かってゆっくりと口を開く。

 

「……“ダーリン”の様子はどうかしら?」

 

姉御肌のイザリアとは違い、ねっとり甘い口調のエリザベート。

だがその口調とは裏腹に表情は真摯だ。

 

「問題ないですね。『霊櫃』の同調、覚醒状態まで緩やかに上昇しています。」

「電位情報体のノイズも支障ない範囲に集束している……いつでも起きれるだろうね。」

「うん、波形が緩やかなので拒否反応も少なく、とても心地よさそうです。」

「そうですか……ありがとうございます。」

「礼には及ばないさ、イザリアさん。私達も()()()()()の管理をここでして貰っている。その“実験”とでも言えばいいかな?」

「本来であればもう少し早く終わる予定なのですが、ゾンダーの襲来と有象無象の存在で予定が遅れてしまいましたので……まあ、いい暇潰しになりましたよ。サクヤのデチューンモデルを参考にしたので手間も省けましたし。」

「うふふ、感謝するわ……いよいよね。」

「いよいよ……ねぇ。私は正直気が進まないけど。」

《──イザリア、そんな事、言っちゃ駄目。》

 

いきなり響いた声に驚くイザリア。

その傍らにはいつの間にか長い白髪の、オレンジ色の瞳を持つ小柄な女の子が、鉄面皮とも言える、無表情な女の子がいた。

 

「あんたね……いきなりびっくりさせないでよ。」

《謝罪。でも目覚め、もうすぐ。》

「……そうね、もうすぐ。」

 

『カプセル』に満たされた人工血液(エリキシル)が紅く光る、その中に宿る緑の光。

その鳴動はこれから出ずる生命の誕生にも似ていた。

 

「しかし外が煩いわね、ここまで声が聞こえるだなんて。」

 

気になって扉を少し開けるイザリアは、ひたすら右に左に行き交う職人達の光景を見た。これは異常と感じ、とりあえず近くにいた職人に声を掛ける。

 

「ああ、今ギャラルホルンの奴らが来てよ、大捕り物なんだ。」

「……は??」

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

「──つまり、貴殿は私達と手を組んでギャラルホルンを、そしてカイエル教自体を潰そうと画策していた、と?」

「……ああ、そうだ。」

 

大捕り物が終わり、アースガルズ邸宅内の来賓室にて、クリストファーとカルディナ、その後ろにはオルガを始めとした鉄鋼桜華試験団の主要メンバーが集まっていた。

そしてテーブルを挟んで座するクリストファーとカルディナが対峙するのは、意気消沈し切ったマクギリスであった。

 

先の襲来にて尽くアースガルズ家の家臣、鉄鋼桜華試験団の追撃を避け、邸宅を逸れてガンダムバエルの元まで辿り着いたマクギリスであったが───

 

《バエル、マクギリス、キライ。》

「────!?」

 

邸宅前で仁王立ちしていたバエルから邂逅一番、そして開口一番に告げられた言葉に、ギャグマンガの如く転げ回り、そして壁に激突、沈黙した。

一同唖然とする中、唯一動いたカルディナは呆然とするマクギリスに対し、呆れ果てながらも頭を抑えつつ降伏勧告勧め、マクギリスは茫然と承諾。呆気なく捕らえられ、抵抗なしと認められたマクギリスは来賓室に連行される。

連行の道中、これ以下もない程に落胆したマクギリスに、他の騎士達も抵抗の意思は見せなかった。

 

途中、マクギリスの身を案じた石動とガエリオが同席を求めたため許可をした。

ただし会話・交渉をするのはマクギリスのみとし、補足のみ許可する。2人が異論、抗議する素振りを見せるなら、即刻“この世”から退場してもらう、という制約の下、立ち会いを許可した。

そして護衛と監視をぐるりと付け、始まった対面での尋問だったが、一を尋ねれば、十を答えるマクギリスの協力もあり、情報はどんどん出てくる。クリストファーもカルディナも「これは尋問なのだろうか?」と頭を捻るが、どうでもいい。

念のため、V・C(コスモスVer.)を頭に設置し、メモリーリーディングをしながらの尋問だったが、嘘を付いている様子は微塵も見られなく、そのお陰でギャラルホルンに関する情報は山のように出て来た。

頭に花が突き刺さっている様が、何とも言えない雰囲気を醸し出しているが、気にしない。

ただし、マクギリス自身も把握していない事に関しては保留する事に。

マクギリス自身の情報は、持っているだけでバエリストに感染しそうなので、V・Cに委託する。V・Cも嫌がったので別にファイル。

また、他の騎士達も同時進行で尋問しているが、マクギリスの様子をリアルタイムで見せているため、すんなりと情報は出るが、マクギリス以上の情報は出なかった。

 

途中、機密をすらすら喋るマクギリスに、ガエリオが「え、マクギリス……??」的な驚愕した顔をしていたが、こちらも気にしない。

 

ただ、マクギリスが語った事は、()()()()()()()()()。特に転生における経緯と流れは、カルディナを含めた幾らかが知る事実内容と概ね合致している。

独力で知る人間はマクギリスが初めてだ。

主観による相違点も確かに際立っているが、ここまでの推測が出来る以上、ただのバエリストではない。この男を野放しにする危険性と、今捕縛出来た幸運は大きいと言える。

 

また、マクギリス自身の情報で特筆すべきなのは、転生にて得られた2つの能力がある。

 

1つは『量子・素粒子を感知する能力』。

これは転生時に魂が移動している際に、バエルと接触しながら同行しているところから来ており、マクギリスの魂に直接影響があったため、と思われる。

その為、距離の影響はあるが、量子を放つ存在──天使、悪魔の居場所を本能的に感知できるもの。しかも本人の熟練度次第では精密なセンサーにもなる可能性を秘めている能力だ。

マクギリスは転生してから量子の感覚を常に受けており、天使、悪魔を感じ取っていたようだが、それが阿頼耶識システムと接続した感覚と似ているとの事で、殊更バエルの放つ粒子を感知していようだ。

ある意味恐ろしい、故にバエリストになったとも云える。

 

2つめが『量子・素粒子の送受信』。

こちらは飛散した粒子パターンで意志疎通を行うというもの。

実際、高エネルギー体の天使や悪魔は微細な素粒子の飛散、崩壊パターンにより意志疎通を行っているのだが、マクギリスはそれを無意識下の生身で行っている。

エイハブウェーブは相転移エネルギーに発生した素粒子である。

それが生前より阿頼耶識のバイオパターンを持つ魂と、転生時のバエルとの長期接触、更には転生後に備わった『魔術演算領域(マギウス・サーキット)』、そして魔力(マナ)という要素が集まり、天使、悪魔と近しい事が出来ている。

とはいえ人間の範疇、放てるエイハブウェーブもエイハブリアクターの数百分の一程度だ。

とは言え、近い距離であれば意志を送れるぐらいは出来る。

 

そしてこれをマクギリス自身が正しく認識していなかったので、指摘すると非常に困惑していた。

本人は神懸かり的な、神聖なものと捉えていたようで、魔法的でありながら科学的であった事に愕然としていた。

 

……ちなみに、最後辺りに友人(マクギリス)が自国を強い恨みをもって滅ぼそうと画策していた事を暴露した事に、ガエリオは強いショックを受け、動揺し、落胆していた。

まるでアニメのファーストシーズンのラスト話で裏切られたシーンに似ているとカルディナは思ったが、どうでもいい。

また石動を見ると「バレましたか……さて、この御仁をどう処理しましょう」みたいな視線を送っていた事にガエリオは更に戦慄していた。

カルディナは必殺仕事人みたいで「あらやだ、ステキ」と思った。

 

場が殺伐としている。まあどうでもいい。

 

そして情報の精査は後でするとして、纏まった報告を陛下に連絡するためにクリストファーはカルディナに後を託し、その場から去った。

本来はもう少しいてもいいと思うが、この後得られる情報はカルディナが咀嚼し、整理した情報でいいと判断した。

そしてクリストファーが部屋を出た後、俯き、沈黙するマクギリスの独話より話が始まる。

 

「……どうして私はバエルに嫌われたのだ?」

「ああ、その事ね……“女”を口説く文句に、アレはないっていうところよ。アレじゃあ引くわよ、誰だって。」

「……何故、女性を口説く事がそこに入る?私はバエルの事を話しているのだが。」

「だって今のバエルは『女の子』ですもの。思考パターンがそうなるのは不可避ってヤツよ。」

「…………女の、子、だと??」

「別に珍しい事じゃないわ。彼らは悪魔、ないし天使と『契約』した人物の潜在思考によって、彼らの容姿は変化するのだし。」

 

その言葉に、カルディナが冗談を言っているのではないと判った後、周りの鉄華団のメンバーを見渡すと、全員苦虫を噛み潰したような表情(事情はしっかり知ってて頭痛い)であった。

 

実体を持たない天使、悪魔達の容姿は非常に不確定だ。

故に、見る者のイメージによってはその容姿は大きく異なる。

神聖なイメージは神聖な姿形に。醜悪なイメージはより醜悪な容姿に。

観測者が複数いても主観的な思念が視覚に干渉し、映される視界も変化する。

だが、契約を果たすとその容姿は契約者のイメージによって固定化される。

一番良い例はカルディナだ。

『七つの大罪』、『七賢の天使』の容姿は全て契約を結ぶカルディナの思考を元に変化している。

ただその配下である他の天使、悪魔は“擬態”こそすれど、あくまで上位存在の指示に従っているだけなのだ。容姿もその指示に従い、変化させている。

カルディナとて全員と契約を結んでいる訳ではない。

 

……仮にしていたら、どうなるのだろうか?

 

ちなみに三日月等、明確にイメージを持たない者に対しては、黒いもやが人形(ひとがた)になっている状態、もしくはミニ・ガイガーと同じく、2メートル以内まで縮尺したガンダムフレーム(試作品)に憑依している状態で接している。

 

「……では、バエルと契約した者が既にいると?」

「ええ。でも私じゃない。私より先に会った、その人の影響ね。だからあの時アンタが私らに向けられた粒子パターン(執念深い感情の波)が気持ち悪くって逃げたのよ。」

「……私達をここへを導いた訳ではないのか?」

「冗談。私も制御OS(バエル)管制ユニット(V・C)も拒否反応起こして全力で逃げただけよ。」

「……そうか。」

「中途半端に生身で粒子パターン……この場合はエイハブウェーブかしら?その感知、そして送受信が出来るようになった弊害ね。なまじ高位次元体の影響を受けていたために、全能感を感じていた……でも今の貴方は天使、悪魔から嫌われているわ。」

「……何と。」

 

気持ち悪い意志を送るな!(by:天使、悪魔一同)だ、そうだ。

 

「ましてや、バエルは誰かを導くとか、そんな事はしないわ。」

「だがあの時は……あの時は我等を導いていたはずだ……!」

「あの時……ああ、転生の時の。バエル曰く『いたのはバエルだけじゃない、先頭にいただけ。』ですって。導いていたのは本当でしょうけど、避難誘導みたいなもので、元々到着地点は決まっていて、流れに乗っただけ……それを貴方が崇高な運命的に感じていただけよ。まあ、それをどう感じ解釈するかは貴方次第。でも()()は止めなさい。今度やったらバエルどころか、天使、悪魔達がガンダムフレームで貴方を潰しに行くわよ。」

「あ、ああ。気を付けたいのだが、どうすれば……」

「そうね、とりあえず───」

 

カルディナが言いかけた時、扉をノックし、入ってきた人物が。

 

「失礼します。ご要望の物が出来上がりましたので、お持ちしました。」

「ああ、フミタンありがとう。それじゃ、これ被って。」

「む、これは仮面か?しかしこれは……」

 

フミタンが持ってきたもの……それは仮面であった。

しかしそのデザインは……

 

「即興で作ったから、エイハブウェーブの干渉を防ぐ効果は弱いけど貴方には丁度良いわ。感知する能力も前よりは抑えられる。いくら祈っても外部に影響はないはずだから。」

「その割には実に精密に出来ているのだが……それに何か、デザインの意図に悪意を感じるのだが……」

「気のせいよ。それにお気に召さないなら、いいわ。一生バエルに嫌われるだけだけど……」

「──有り難く頂戴する。このご恩は決して忘れない。」

 

そして仮面を付けたマクギリス。

付けた瞬間から思考がクリアになり、包まれていたような感覚(マッキー主観)が消え去った。

 

「……確かに、本来の感覚だな。そうか、あれがエイハブウェーブの感覚だったとは。」

「本来強烈に祈らなければ伝わらないけど、量子干渉を受けられる貴方は特殊過ぎるのよ。」

「……反論出来ないな。」

 

ひとまず、迷惑極まる事態はこれで終わり、そしてようやく本題に入る。

 

「さて、さっきの話だけど……私達と同盟を組みたいって本当かしら?」

「その通りだ、嘘偽りはない。我等の目的はギャラルホルンという国の壊滅、そしてカイエル教の撲滅だ。」

「それは良いわ。ただ……同盟という形はナシよ。今の状況じゃ、私達の配下という形でしか受けられないわよ。」

「それでも構わない。何せこちら側にはバエルが……ガンダム・フレームやロディ・フレームが複数機ある。そして私達は組織の形式には拘っていない。喜んでそちらの指揮下に入ろう。」

 

一人は断固反対の意を示すが、無視する。

 

「判ります?」

「ああ。今なら明確に感じ取れる。鉄華団所属のバルバトスを始めとしたガンダムフレームのエイハブウェーブを感じる。グシオン、フラウロス……そしてバエル──ん?これはモビルアーマー……ハシュマル、だと?いるのか?」

「ええ。実に協力的に。今、複数製造中よ。」

「……ギャラルホルンどころか、この世界であれば世を征する事も可能な勢力だな、カルディナ嬢。」

「冗談。前世の物差しで計ると痛い目に遭うわ。私の知ってる世界最強に挑んだら一発で返り討ちよ。」

「……更に上がいる、と?」

「私も軽く捻られる程度にはね。」

 

アルフヘイムの方角を見て、カルディナはため息をつく。

未だに勝てないのは、おばあちゃん。

 

「それに……今のアルドレイア王国の方針として、ギャラルホルンは断固無視の方針よ。襲って来るなら潰すけど。」

「これだけの戦力を保有しながらも、積極的攻勢に出ないのは、何か理由でも?」

「ギャラルホルンを無視しても滅ぼさなきゃならない存在……しかも人智を超えた、人間同士で争うのが馬鹿馬鹿しく感じる程の存在───ゾンダーよ。」

「ゾンダー??」

 

そしてカルディナは語る。

次元を超えて、前宇宙が滅びる前にあった超高度文明──三重連太陽系の滅びの経緯とゾンダーの誕生を。

別の次元にて起きたゾンダーとの戦いに挑み、勝利した勇者達の神話(マイソロジー)を。

そして今、この世界にもゾンダーの魔の手が既に在る事を───

 

更に鉄華団やギャラルホルンがいた世界の終末が、ゾンダーによってもたらされた事も、そしてその弊害も───

その事に最初に異議を唱えたのはガエリオだった。

 

「そ、そんなバカな話、信じられる訳がないだろう?それに我等の力を結集させれば、そんな怪物みたいヤツは倒せる筈だ。」

「信じなくて結構。元よりギャラルホルンには期待もしてませんわ。それにゴーレムや、ただのモビルスーツ程度で抗える存在ではないので。」

「止めるんだ、ガエリオ。カルディナ嬢の言う事は事実だ……お前に自覚がなくともな。」

「な、何を……??」

「……私の信者(部下)の一人が、前に恐怖しながら言っていた事と合致する。かつての前世の世界の終わり……それは機械と融合する未知の化け物だったと。そして人を取り込み、同じ存在にしてしまうと。それらに、ギャラルホルンも人類も無力であったと……」

「……その人、よく覚えていましたわね。」

「取り込まれる前に自害したそうだ。本人は記憶を取り戻した後も、未だに苦しんでいるが……」

 

確かにそれなら記憶障害(ゾンダーの呪い)もないだろうが、よく耐えていたものだ。

その人物にはパレッス粒子を処方したいところだ。

 

「……であるなら、カルディナ嬢。一つ頼みたい事がある。」

「何かしら?」

「私に、バエルを預からせて欲しい。」

 

その発言に一同驚愕し、オルガ達は臨戦態勢間近となるが、すぐにカルディナが片手を挙げて静止する。

が、マクギリスも冗談ではなく、真摯な姿勢でカルディナに挑んでいた。

そして一間空け、カルディナは応える───

 

「───無理、ですわ。」

「……その理由を伺っても?」

「貴方はこう言いたい、『この世界にもあった300年前の厄祭戦、そこでガンダムバエルは戦線に投入された。そしてその相手こそゾンダーである。そして666体を葬った』、と。」

「……よくご存知で。ギャラルホルンでもごく一部の人間でしかその事実を知らない。しかも密かに保管されていた記述にも鳴き声が「ゾンダー」とあっただけで、便宜的にゾンダーとされている。」

「まあ、()()()()()()()()()()()()()()()ですわ。当人も「ゾンダー野郎が!」って叫んだみたいですし。」

「当……事、者??」

「おかしいと思いません?ガンダムバエルの中枢たる『バエル』に契約者が既にいる事を。ガンダムバエルの席は既にその契約者で埋まっています。故に───無理です、と。あと、その666体は水増しですわ。正確には579体、だそうで……」

「では……その契約者と話をさせて欲しい。いったい……誰なのだ??」

「それは───」

 

 

「「「─────!?」」」

 

 

その時、その場にいた元・阿頼耶識使いが全員感じた。

とある人物の、その粒子、その波動を。

特に、マクギリスはその波動を感じた後、自然と涙が溢れ出た。

 

「この感じは……」

「あ、もしかして……」

「ええ、『目覚めた』みたい。でもここまでの粒子拡散をさせるなんて。さて、マクギリス。バエルに繋がった事のある貴方には判るかしら?」

「それでは、まさか……!」

 

その反応は歩むスピードで真っすぐこちらに向かってきた。

聞こえる複数の足音。その中でも軽快に響く足音にマクギリスは胸が高鳴る思いがした。

そして部屋の前で足音は止まる。

 

「──どうやらここのようだ。入ってもいいかな?」

「どうぞ。」

 

響く声に応じたカルディナ。

そしてドアが開かれた先には、とある人物がいた。

 

 

「身に覚えもあり、初めてではないだろうが、この姿を見せるのは初なので、改めて名乗らせてもらおう─────初めまして、アグニカ・カイエルだ。

 

蒼く長い髪に、長い切れ目の長身。

身に纏うは白い長衣に、厚手の革のグローブとブーツを着けた男。

背中には身の丈もあり、殴っただけでも重傷を負いそうな反りのある長鞘の薄紫の剣が二刀。

意気揚々とした笑顔でその男は笑った。

しかも非常に聞き覚えのある声で。

思わず、全員が驚愕するマクギリスを見てしまう。

 

「ああ、オルガ。久しぶりだな。」

「ん~と、お久しぶりです、()()。その姿じゃ初めてですが……一年ぶりですか?非常に声に違和感を感じるんですが……」

「ああ。一年経っただけでずいぶん大きくなったね。実に男前だ……つーか、声?気のせいだろう。」

「久しぶり、教官。次はぶっ倒すから。あとその声はワザと?」

「三日月、出会い頭から容赦ないね。うん、いい事だ。つーか、声??」

 

鉄華団の面々と面識……というより、教官であったようで、護衛の団員達からも次々と挨拶が交わされてゆく。

一通り挨拶が終わった後、今度はカルディナに。

その頃にはぞろぞろと『カプセル』があった部屋のメンバーが部屋に来た。

ちなみにローブの人物は来ていない。

 

「カルディナ、今回はありがとう。」

「いいえ、アグニカさん。お礼でしたら発案者に仰って下さい。こんな機会がなければ、アンドロイド仕様なんて作ろうと思いませんから。」

「そうか、それならお礼を言わないとな、イザリア。」

「ちょ!馬鹿止めなさいって、こんな大勢いるところで───」

「───イザリアだって!?」

 

いきなり大声を上げ、立ち上がったガエリオ。そして険しい表情で抜刀し、イザリアを指す。

 

「そうか……お前は300年前、アグニカ・カイエルを誘惑し、ギャラルホルンより連れ出した悪女、イザリア!ダークエルフ故に長寿である事は我が父から聞き望んでいたが……まさかここに居ようとは!成敗してくれる!そしてアグニカ・カイエルを名乗る偽物が!このガエリオが───ぐべッ!?」

 

 

名乗りを挙げていた途中、ガエリオは凪払われて真横に吹っ飛んだ。

そして壁に突き刺さっていたと思いきや、あっという間に長鞘が首元に捩じ込まれ、身体を浮かさられ、今にも首がメキメキと鳴り、突き砕かれる寸前。

誰の目にも、死んでしまう5秒前、と映る。

 

そしてその神速の所業は誰でもない────アグニカであった。

 

「……手前ェ、誰の(オンナ)を『悪女』だって?しかも……ギャラルホルンだぁあ?んで、誰が偽物だ……よし、死──」

「──待ちなよ。」

 

無表情で無慈悲な目をガエリオに向け、長鞘に更に力を込めようとするが、それに待ったをかけたのは、イザリアであった。

 

「こいつ、セブンスターのボードウィン家の(せがれ)じゃない?」

「ボードウィンの……ああ、だから中途半端で生っちょろい正義感を振りかざす青二才ぶりに見覚えがあると思った。あいつ、追い詰められると変なスイッチ入って駄々こねるんだよなぁ───うん、尚更殺す理由が出来た。」

「いやいやいや。どうせなら冥土の土産にあんたの事と、ギャラルホルンがあたし等に何をしたか、教えてから殺したらどう?」

「……イザリア、俺に語れと??ボードウィンの系譜ならそれぐらい嬉しそうに話すだろうに。」

「事情を知らない奴らが他にもいるでしょう?無駄に誤解されると面倒なの。それに、このお坊ちゃまがそれを知っていると思う?せめて何故自分が死ぬかを教えるのが情けよ。いつも貴方は言ってるでしょ、『大切なのは大義名分と後腐れなく殺る事』だって。」

「わかった、お前がそう言うなら……良かったな~、ボードウィンのガキ。寿命が僅かに増えたぞ。あと、他の見慣れない奴らもギャラルホルン、そうだろう?さっさと自己紹介と目的を吐け、聞いてやる。」

 

そう言って長鞘を納めた後、意識が跳んだガエリオを床に落とした後、ドカリとカルディナの横の席に座るアグニカに、深いため息をイザリアは吐く。

とりあえず、首一枚は繋がった安堵する石動であったが、これからどうしようと思案する。

が、その前に感動のあまり固まるマクギリスを、とりあえず着席させる事にした。

 

 

《NEXT》

 

 




この話を書く上で、アグニカさんのキャラ形成にとある人物を参考にしてます。
原点が結構昔で、ドラマCDよりの出演、当人は後に愛妻家なんですが……
誰かわかるかな~??(〇クセス!)

あとCV:櫻〇さんで、執筆中に不祥事がありましたが、私は「またこのテか……」ぐらいにしか思っていませんが、業は深いのは確かです。
深く批判も言及もしませんが、ただこの作品のアグニカの人間関係で思うところはありますが、そこは人徳が成したため、と思ってください。念のため。
多数の作品に参加して、実力がある以上、影響は……あるなぁ。
つい「〇滅」に関わってなのか、とか思ってしまう。
あんまり飛び火しない事を祈ります。
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