特にこっちはまだ24話。
前編、後編と構成が多いせいでででででででで……
……と思っていたのがつい最近。
よく発症する鼻炎が年末に悪化して、体調を崩していました。
投薬中に病状悪化しても年末じゃあ外来やってねぇ!急外じゃ意味ないし!抗生剤プリーズ!状態。
お陰で年始年末は病気で「あけましておめでとうございます」の気分じゃなかった和鷹です。
……人間、鼻炎で死にかける事ってあるんですね。気道が鼻水で詰まりかけた、咳が止まらん!
とりあえず今は改善していますが、まだ完治していません。
養生したいけど、仕事が……
執筆は最近復活したところです。
病気はあって筆は遅くとも、妄想は止まらないのが私です。
以上、生存報告でした。
さてそんな事はさておき、いよいよ第二部的な話です。
「そうだったのか?」と錯覚するところですが、そうなんです、と自分に言い聞かせながら開始します。
───某所
「ウィルルルルル。しかしポレントス、どうするつもりだ?私は邪魔者を排除する事が優先と考えるが。」
地下水路らしき場所を進むポレントスとペスカポートだが、今回の作戦に疑問に思ったペスカポートが足を止め、ポレントスに尋ねると、ポレントスもまた足を止めた。
「……我々の目的はあくまでも機界昇華。しかしこの星の環境では至難ではあり、戦う事はむしろ邪道と言うしかありません。ですが、障害の排除もまた優先すべき事と認識はしています。故にペスカポート、貴方には障害の排除……最悪の場合、そちらのゾンダーを囮にしてもらいたいのですが。」
「……なるほど。それでお前はここを……了解した、直ちに行動に移そう。」
「宜しくお願い致します。」
まさかの非道とも言える提案を、ペスカポートは簡単に了承する。
そこまであっさり了承する裏に、何かあるのだろうかと邪推してしまう程である。
だがこいつらにはそんなものはない。
「……しかし、プレザーブとピッツオ・ケリーは何をしているのだろうか?音沙汰名がないぞ?」
「さあ……彼女らには彼女らのやり方がありますからな……女が2人寄れば、とも言いますが何を考えているか解らない節があります。最悪、我々の策が破られても彼女らが中枢に食い込んでやってくれるでしょう……多分。」
「……ウィルルルルル。」
いざ振り返ってみれば、何かと不安要素がある今回のメンバー割り当て。
ソンダーなのに心配なのはどうしてだろうか?
実際、不安要素の進行真っ最中である事に、2人は予想する事も出来なかったりする。
───お嬢様の
マギウス・ガオガイガーと
だが、三重連太陽系の技術者を以てしても、マギウス・ガオガイガーはある意味ブラックボックスの塊でもあり、修復は困難を極めていた。
だが、それよりも早急に対策すべきはゾンダーへの対抗策。
そのため、GGGはマギウス・ガオガイガーのオーバーホールを並行しつつ、『新たなるガオガイガー』の開発、最終調整を急いでいた。
その開発現場にアルドレイア王国国王レクシーズ、GGG長官ティ・ガーは訪れていた。
「……これが新たなるギャレオン、そしてガオーマシンか。」
見上げるレクシーズの前には既に形となった新たなるガオーマシン、そしてギャレオンが鎮座していた。
それらの説明をイザリアが対応する。
「はい。以前建造致しました『試作型』より反省を生かし、カイン様やアベル様の意見や技術、更にはマギウス・ギャレオンから取り入れられる技術を取り入れ、私達の技術で改めて造り上げた新生ギャレオンです。」
同型で、カラーリングは白がべースでほぼ同じであるが、中身は『試作型』よりも別物となっている。
そして魔法と錬金術、三重連太陽系の技術、何より前例となったマギウス・ギャレオンの技術。
現在揃えられるものとしては最高峰を誇る新型ギャレオンである。
特に動力炉はGストーンとJジュエルを使用した、共鳴現象によるエネルギーを活用出来る『
そしてその横には新型ガオーマシンが三機。
一機目は『ステルスガオーⅡ(大気圏内仕様)』
デザインこそ『ステルスガオー』とほぼ同様だが、その能力、機動性は『ステルスガオー』を超える出力、機動性を持つ。
ただ、残念ながらウルテクエンジンポット、ファントムリング、ウォールリングの開発が遅れているため、ウイングの両端は『ステルスガオー』のものとなっている。近い将来装着する予定だ。
その代替としてごく短時間、限定的にとある機能を付与している。
二機目は『ドリルガオーⅡ』
こちらは元祖『ドリルガオー』とあまり変わらないデザインであるが、ドリルの形状や動きは完全に『ドリルガオーⅡ』である。
ただ、残念ながらこれといった特色はなく、出力以外は原作に忠実な機体である。
特にマギウス・ガオガイガーで行われたドリル分離、右腕
三機目は『ライナーガオーⅡ』
……そう、ライナーガオー『Ⅱ』なのである。
「……新幹線、とかいう乗り物の形ではないのだね。」
「はい。今回建造するにあたり『まず、レールに乗せて走らせる事なんて出来るか!』とほぼ全員意見が一致し、採用を止めました。」
『ライナーガオー』を始めに用いた際、カルディナの契約した悪魔の1人、サタンの固有能力の一つ、『
どうやらあれは本当に特殊だったようだ。
やるなら王様に、王国全土に新幹線用レールを敷いて貰う(費用は王国持ち)か、超進化レールの上を走らせる事が出来るようになったら可能かもしれない……出来るか、コンチキショー。
その代わりに採用されたのがロケット型の『ライナーガオーⅡ』。こちらであれば空を飛ぶ事が出来るし、安定した運用が可能なので、採用された。
ただ、カラーリングは青系の色ではなく『ライナーガオー』をイメージしてなのか、白がベースであった。
また、「キャタピラを付けて走ればいいんじゃ……」とぼやいた技師は、ロマンの欠片もない発言と見なされ、新幹線用レールの鍛造を独りで、という罰ゲームをさせられた。
「……以上が新型ギャレオン、そして新型ガオーマシンです。」
「うむ、見事だ。」
「ちなみ、にナンバリングが全て『Ⅱ』なのは偶然かね?」
「半々ですが、意識はしているかと。
「なるほど……それと、TGSライドは再現出来なかったのだね、イザリア女史。」
「……無理でした。Gストーン、Jジュエルがカルディナお嬢様の手により精製できるとはいえ、最後の一つ『V・クォーツ』の複製が誰にも出来ません。何よりマギウス・ガオガイガーと同じように扱うにはお嬢様のように『レヴォリュダー』の能力が不可欠です。」
V.C.の膨大な処理能力に用いられるのはエネルギー以外にも多岐に渡る。
特に外気に漂う『エーテル』を
迂闊に多くすると最悪メルトダウンを引き起こし、王国国土の4分の1を文字通り消滅させる爆発を引き起こす試算が出ているが、安定させたフルドライブはそれ以上の出力を叩き出している。
これを行うには相当繊細なカルディナとV.C.の共同作業が必要であり、互いのバランスが不可欠となる。
同時に『TGSライド』の吸気圧縮パーツは一番マギウスで損傷しやすい箇所であり、その構造の複雑さ故に、今回最も修復に時間の掛かる
V.C.と無理なく同調出来る電位結合が可能な人物がカルディナだ、そんな人材など他にいない。
V.C.の能力をフルに受け止めようものならその全身の神経、脳に多大な電気信号パルスが走り、一瞬で廃人になる。膨大なデータを受け止めるには『特別な人間』であっても『器』は足りず、不可能でしかない。
そんなものを呼吸するように受け止めているお嬢様は、存在自体が『異常』でしかない。
故に『TGSライド』の増産、及び運用は他の者では不可能、と結論付けられた。
『TGSライド』とは現行、最上位の出力を誇り、そして使い手を選び、最悪の欠陥を持つ無限過剰出力の動力炉なのだ、と。
……ちなみにカルディナの他に唯一可能がありそうなのが、何処かのメカオタクなのだが、違う意味で適性がないため、シュミレーターはともかく、実地では動かせそうもない。
……くしゃみをして身震いして抗議しそうだが、そこは気にしないでおこう。
「……仕方ない。出来ぬものは出来ぬと結論付けた方が良いだろう。それに、カルディナばかりに頼り切った結果が今の現状なのだ。」
「それ故のGストーンとJジュエルで稼働する『DSライド』が我々の新たなる力となる。これの性能は?」
「『サクヤシリーズ』の物質創造装置による即時物質精製を見て頂ければお分かりかと思いますが、こちらも莫大なエネルギーを生む事が出来ます。何せ、GストーンとJジュエルの共鳴現象を使ってますから、その力の破格さは保証出来ます。ですが……」
「何か問題でも?」
「『DSライド』は
「本当の力?」
「GストーンとJジュエルの共鳴現象を発揮させるにはそれぞれ勇気を発現させる『使い手』が必要なのです。」
「使い手……つまりGストーン、Jジュエルそれぞれに勇気の意志を伝える人物が必要、という事かね?」
「はい。」
『DSライド』開発時に判明した事だが、GストーンとJジュエルの共鳴現象を起こすには、パイロット一人では不可能、という結論が出ている。
これはパイロット独りではGストーンとJジュエルに伝わる勇気の意志が中途半端な事が原因である事と、それ以上に、二人の意志が重ならないと、共鳴現象は起こらない。
キングジェイダーとゴルディマーグによる『シルバリオンハンマー』に端を発し、Jとルネによる『ジェイフェニックス』発動の鍵となる『GとJの共鳴現象』は、どちらとも両者に意志あってこそ発動している。
例えそれが
これにはカルディナも同意見であった。
だがカルディナの場合、元となった触媒結晶は一つでありそれが偶然Gストーンとして精製、更には割れたものをJジュエルとして精製した経緯がある。
元が一つだった故に、そして人並み外れた多大な精神力で無理なく共鳴させている背景がある。
なので、
「共鳴現象は『力』もそうですが『意志』もあって、だと思います。意志無き力に共鳴等有り得ないのでは?」
と苦言をしていた。
また、サクヤシリーズが『DSライド』を扱える理由として、V.C.ネットワークによる『意志の相互共有』がある。それはV.C.をオリジナルとしたサクヤシリーズもまた勇者ロボ達と同じく、人間と同レベルにGストーンやJジュエルに影響を与える程の電界情……『意志』を持っているから、となる。
ただ、イザリアが言う『本当の力』……つまり『ガオガイガーで戦う程の力』を発揮するには、それだけでは足りず、並大抵のパイロットでは成り立たない。
本当に欲しているのは
……想定レベルが高過ぎるのは仕方ないが。
「……という事はパイロットは2人、ということになる……む、もしやその2人とは?」
「はい。あの2人です。」
「そうか。」
「ただ、今現在問題がありまして……」
「ん?」
時間は少し遡る……
───アースガルズ領 郊外
「──さーって、水飴の出来はどうかな~?」
アースガルズ商会の要の商品の一つである甘味『水飴』を製造する場所で、一壷ごとに嬉々として吟味する人物がいた。
『甘味扱総主任』を任されたクストであった。
そしてもう片や。
「……ふむ、いい出来だ。」
出来上がった数々のお茶をテイスティングする人物。
『御茶扱総主任』のルムである。
天海護の生き写しとも言えるクスト。
戒道幾巳が成長したような容姿のルム。
この2人こそが、新生ギャレオンとフュージョンする者である───
───シミュレーター・ルーム
「───オラァ!!」
「「ぎゃあああーーー!!!」」
「はいそこまで。この勝負、明弘の勝ち。」
シミュレーターマシンにて、ガイガーとガンダムグシオンリベイクが交戦していたが、結果はガイガーの惨敗。
性能差は当然あるだろうが、容赦ないハルバードの一撃がガイガーの頭頂部を真っ二つにカチ割ったのだった。
これがお嬢様であれば「白羽取りですわー!」と高笑いしながらハルバードを挟み割り、足払いしてバランスを崩した挙句カウンターでコックピットに手刀を一発入れている(犠牲者多数有)。
だが、今回は圧倒的にグシオンリベイク──明弘が終始優勢であった。
「ちなみに明弘、どう思う?」
「……酷過ぎて何も言えねぇな。これがお嬢相手なら、確実にコックピットボコりコース*1だ。」
「2人共、もっと連携して戦えって。組手にもなりゃしねぇぞ。」
「そんなこと言ったって、ルムが足を引っ張って───!!」
「そういう君だって、アシストが遅いんだ!もっと早く───!!」
「……駄目だこりゃ。」
「……だね」
反省どころか口論をするばかりのクストとムル。
それ以前の問題であった。
───工房内、某所
「……やれやれ。僕らを使ってくれる『マスターら』は、今日も仲が悪いようだ。」
「フハハハ!嫉妬に競争心!互いに負けずと切磋琢磨!そして何でも吸収する!暴食のように!良いではないか!」
「特に嫉妬……あれは素晴らしいわ。互いに見せず、意識せず、でも互いを比べるその心は止まらない~!!」
「そりゃあもうすごい勤勉だもの……怖いくらいに。」
「──それも全て忠義のためッ!!あのお二方は忠義の塊ィッ!!」
「……」
「……あの、何か?」
「いや、いきなり大声を出さないでくれるかい、ミカエル。びっくりするよ。」
「……失礼した。」
「だが、勇気はまだ足りないと言える。互いにね。」
「希望も、見失っています。」
「愛もッ!」
「色欲も!」
「「「「いや、それはいらない。」」」」
「酷くない?!」
天使達や悪魔達の会談が、どこかであった。
「駄目……ですわね。」
そしてシミュレーターの模擬戦の結果はカルディナにも、すぐに届き、2人をオルガのいる公務室に呼び寄せた。
そして入室直後に、オルガの横で「無」の表情であるお嬢様を目の当たりにしたクストとムルは、血の気を失う程に青ざめ、すぐに直立不動となる。
そしてカルディナの事を気にしつつ、オルガが開口一番に切り出した。
「……お前ら、どうして呼ばれたか解るな?」
「それは……シミュレーターの結果が悪かったから──」
「──ちげーよ。お前らにミカや明弘みたいな腕は期待しちゃいねぇ……それよかお前らの、その仲の悪さだ。」
はっきり言うとクスト、ムルの戦いの腕は三日月や明弘、シノと言った鉄華団の主要メンバーには同型機では力は及ばない。
だがマシンポテンシャルが高ければ、彼らにギリギリ対抗出来るぐらいには強いのがクストとムルである。
MSの操縦は個々では中々に強いが、『ダブル・フュージョン』の形態を採用した新型ギャレオンに搭乗すると、途端に仲が悪くなり、シミュレーターで年少組にすら余裕で負ける。
「いったいどうした?普段は仲が良いと思ってたんだがよぉ……」
「そ、それは……ルムが僕の戦い方をうるさく言うから──」
「それはそうだろう。クストの戦い方は突撃ありきで危なっかしい。もっとフェイントを使って慎重になるべきだ。」
「それならムルだって、慎重になり過ぎて間合いを取り過ぎなんだけど……」
「それは僕に高速戦闘の適性があったからだ。密接過ぎると動きづらい。」
「それなら僕だって近接戦闘の適性がある。密接状態なら負けないよ。」
赤の星の戦士の戦闘スタイルの影響なのか、はたまたお家芸なのか、ルムは高速戦闘の適正があり、遠方から一気に間合いを詰めて攻撃するヒット&アウェイのスタイルを得意とする。
対してクストは近接攻撃を得意とし、掴み技、投げ等インファイトはかなりいい線をいく。
ただし技量自体はまだ未熟なため、三日月や明弘、そしてカルディナの下位的な戦力に落ちてしまうのは仕方ないところ。
だが、ガオガイガーに乗る事でその問題はある程度解消されるのだが……
「まあ、互いに互いの戦闘スタイルが違うから……」
「ガオガイガーの特性なら近接攻撃が主体だよ!だったら僕が───!」
「何を言ってる!従来のガオガイガーの戦闘スタイルから一つ飛び出たのが、あの新型だ!だったら新しいスタイルで戦う事こそが───!」
「……どうして、も、その点が鼻に付くってところ……って、聞けやコラ!!」
「「はいッ!」」
「……ったくよぉ、どうすんだこれ?」
そんな時、今まで黙っていたカルディナが口を出した。
「貴方達、そんな事でゾンダーに勝てると思っているのかしら?」
「そ、それは……」
「シュミレーションでは確かに勝ててたわ、でも実際にはあれやこれやの虚実を交えて奴らは来る。そこにたった一つの油断や怠りがあっては勝てるものも勝てやしないわ。」
「は、はい……」
今まではこちらをターゲットに動いていた気配はあった。
だが、ゾンダリアン本来の目的は『機界昇華』。そもそもこちらをターゲットにする理由はない。
エネルギー供給源を確保し、機会を待って、機界昇華の要となる『ゾンダー胞子』『素粒子Z0』を散布する事でゾンダーの目的は達成される。
カルディナとの戦いでこちらの戦力を削ぐ事を止めたと仮定した時、次は何処で動きを見せるか不明なのだ。
気付いた時には素粒子Z0が広域散布されていて『機界昇華』が始まった……となったら、今の体制では果たしてどうなるか……
「私があの新型ギャレオン、そして新たなガオガイガーを創るに至ったのは、貴方達2人の力が私に匹敵、もしくはそれ以上になる可能性を秘めているからよ。そして私の他に
「……ッ!?」
「………!」
「……とはいえ、このまま出撃されたところで無駄に破壊されるだけ。しばらく訓練も無しよ、ガオガイガーから離れなさい。」
「……は、はい。」
「……わかりました。」
表情のないカルディナの言葉にショックを受けたのか、逆に素直に謝る2人。
「……とはいえ、手持無沙汰なのはいけないから、一つ頼まれ事をしてくれないかしら?」
「頼まれ事?」
「とある方々から依頼が来ているの。前にお土産に持っていたものが大層気に入ったみたいで。今回はそれに更なるアレンジを試みたいのよ。ちなみに作りたいのは、クッキー。」
「クッキーなら、僕が!」
「でもそのクッキー、紅茶の葉入りなのよ。」
「え!?」
「紅茶入り……?!」
「使う紅茶はこれ。」
「こ……これ、相当癖の強いものですよね??」
「ええそうよ。でも絶対これで。オーダーはこの紅茶の葉を使って『紅茶の香りが優しく香る甘いクッキー』ね。」
その瞬間、クストとムルが驚愕の表情になる。
激ムズオーダー、通称『お嬢様の我儘』がここに発動したのだった。
「……大丈夫か、あんなオーダー出して。」
「成功すると思う?」
「確実に失敗するな。そもそも……あいつら致命的な初歩的ミスをしてやがる。滅茶苦茶見え透いたオーダーだってのによ……」
「そうね、試験団なら絶対にやっちゃいけないミスを、ね。」
とぼとぼ歩く後ろ姿を見送って、カルディナとオルガはため息を吐いた。
試験団には、とある重要な決まりがある。
普段はしっかり出来ている2人だが、今回はそれを忘れている。
「そんだけあいつら……何を焦ってやがる?」
「さあ……悪いけどそこは団長のお仕事って事で、部下の問題解決に勤しんで頂ける?」
「いや、それは構わんけどよ。てっきりお嬢が率先して首を突っ込むかと思ったんだが……」
「何か私がいると今の2人、口をつぐんでしまって話にならないよ。何でかしら……?」
「……その無表情が原因だろ?」
「あ?」
「それだよソレ!ったく……本当にそうなると怖ぇんだよ。」
「わかってるならそうしなさいよ。」
「わーってるよ……お嬢もそんな状態だし、何気に俺も忙しいんだぜ?出荷の人員の再調整とか、団員の雇用の調整とか……ああ、この間連れてきた捕虜の尋問もしなきゃなぁ。めんどくせ───」
「ああん?」
「いえ、何でもありません!まあ、あいつらはうちの稼ぎ頭でもあるけどよ、何かたまにガキ共を見ているような気分にもなるしな、面倒を見てくるさ。」
「ありがとう。でもそれって、貴方が転生した分も合わせて歳を重ねたからじゃない?」
「……ほっとけ。」
悪態をつきながらも、何だかんだ世話を焼くオルガであった。
ただ、クストとムルは今までカルディナに従順だったのが、ここ最近はそのカルディナには空回り気味なのがオルガの気にかかるところ。
何より当のカルディナはいつもと様子が違う。
不機嫌……というより、表情が『無』なのだ。
そして当の2人の様子はというと……
「それじゃ茶葉が多過ぎだよ!もっと少なくしないと!」
「何を言ってる!100gに対して1gにも満たないだろう!これぐらい入れないと風味が飛ぶぞ!」
「……ああ〜、何か更に険悪になってるッスよ〜。」
「おいおい……あんなんで大丈夫か?」
「……多分無理。」
調理場に行っても口論は止まなかった。それどころかヒートアップしていそうな勢いである。
……その時を同じくして、
「ウィルルルル、いい素体が手に入った。」
「こちらもです。製造基地を確保出来たのは僥倖というもの。では私はこのまま地に潜みますので……」
「ああ、任せてもらおう。そして覚悟しろ、カインの遺産共。ウィルルルル!」
2人の不仲とは関係なくゾンダリアン達の作戦は着々と進んでいた。
ポレントスのゾンダーは地に潜み、ペスカポートのゾンダーは湖に潜み、そしてそれぞれそこで力を蓄え始めたのだった……
「──進行状況はどうだ~……って、ありゃ?ミカ、2人はどこ行った?」
「ボイコット。」
遂には職務放棄……という名の休憩。相当重症である。
だが、オルガは表情を変える事もなくうなずくだけ。
「そうか。行き先は?」
「クストは喫茶店。ルムは家族のいるところ。」
「……ま~、行き先報告してるだけ上出来か、感心感心。」
「怒んないの?」
「今回はそうしても意味がねぇ。むしろ、あの2人は頭を冷やす方が先だろう。」
「そうだね。」
「そんじゃ……今いる面子───ミカにユージン、ライド、明弘、ビスケットでちょっとやって貰いたい事がある。」
「おいオルガ、それって……」
「頼むわ。」
「……しゃ~ね~な。」
ユージンのやる気のない返事とは裏腹に、さっと分かれて行動する鉄華団一同。
クストとムルの仲違いに、鉄華団史上類を見ないオペレーションが唐突に始まる。
……だがその前に、彼等の前にクストとムル、それぞれに先客がいた事により、試みは霧散するのであった。
「……あ。」
「おや、クスト。こんなところで奇遇だね。」
「カインさん。ど、どうも……」
「??」
喧嘩別れしたクストが向かったのは、行きつけの喫茶店『アンジェラ*2』である。
そこで働く恋人、フルーレに会いに行きがてら、お菓子を自棄食いしようと来店すると、そこにはカインがいた。
その光景に、フルーレは頭をかしげる。
「あの……クスト君?カインさんと知り合いなの?」
「う、うん。」
「カインさん、ここの常連なの。」
「といっても、最近は忙しくてあまりじっくり会えなかったけどね。」
「そうなんですか。でしたら今日はゆっくりしていって下さい!今、メニューをお持ちしますね。」
「「いや、大丈夫。今日は『フルーツとクリームのVX式盛り合わせタルト*3』───」」
「──を頼むよ」
「……を、お願い。」
「うふふ!2人とも息ぴったり!は~い、『フルーツとクリームのVX式盛り合わせタルト』2つ入りまーす!」
「………」
「……だそうだ。」
ニコニコするカインに対し、何か気恥ずかしくなったクスト。
そしてムルはというと───
「……何ですか?」
「……あ、どうも。」
両親のいる家……現在は茶葉の取り扱い店であるが、そこでアベルと鉢合わせていた。
ちなみに、何故アベルがそこにいるかというと……
「いつもの茶葉が無くなったので、取りに来たのですよ、ルム。」
「それより『アルゼ』、早く淹れなさい。」
「あ、はい。ただ今~。」
プロトタイプ・アルマ───アルマ・
……というか。
「あの……アルゼ?とは……」
「アルゼという名は私達の母、『アルマ・
「そうなんです、これからは『アルゼ』と呼んで下さい。」
ルムの父親が感慨深く、そして当のアルゼ自身が嬉しそうに言う以上そうなのだろう。
この星でのアルマの始祖というべき存在──が、ゆるふわヘアにクラシカル・ロングのメイド服に身を包んでニコニコ楽しそうに茶を淹れる光景には威厳はない。
ただそこには、誰かのために尽くしたい、という気持ちが全面に出ている。
そしてアルゼの子孫達にもその気質は受け継がれており、大概お世話好きだったりする。
ちなみにアルゼ改名にはカルディナが関わっており、アベル主体で名付けられた名前が『アル』マ・『ゼ』ロから取った略称なので本質は何も変わっていない。
そんな光景をルムが唖然としながら眺めていると、淹れたお茶の香りに覚えがあった。
その視線を気にしたアベルが───
「何ですか、貴方も飲みたいのですか?」
「あ、いえ……そのお茶が気になりまして。」
「……気になるなら貴方も飲んでみなさい、アルゼ。」
「はい、只今。」
「あ……」
突然の事で断るタイミングを逃してしまい、席に招かれたルム。
そしてアルゼが淹れたお茶をアベルと対面しながら飲む事に。
だが、平然とするアベルに対し、ルムは口に含むなり苦い顔になる。
「……やっぱり。ラプサン・スーチョン*5だ。」
「あ、知っているのですね、ルム。」
「その名前、カルディナが言ってた銘柄ですね。三重連太陽系にも似たような物があって、『
「……ええ、それは伺った事があります。香り……というよりは松の匂いが強烈に鼻にくるんですよね。」
「それはそうです、私も気付けと眠気覚ましに飲むぐらいですから。」
「香りの強いものは大概はウバ*6を飲んでいますが、それ以上は嗅覚がしばらく駄目になるので控えるようにしています。アベル様はよく平気ですね……」
「慣れですよ慣れ。それだけ大人ですから。」
その言葉を聞いた瞬間、ルム以外の大人達は視線だけを明後日に向けた。
「うう……こうも強いものを飲むと、口当たりの優しい、甘さのものが欲しく───あ。」
「どうしました?」
「いえ……友達の事を思い出してしまって……」
そして同時刻、喫茶店でタルトの口直しにと、クストとカインも同じラプサン・スーチョンの紅茶を飲んで───クストは悶絶していた。
「大丈夫かい……?」
「うう……タルトの盛大な甘さが、香りが……松の匂いで全部消し飛んだぁ……」
「すまないね、最近開発だ研究だと立て込んでてね。気休めにと頼んでいたんだが……そんなに駄目だったかい?」
「あ、いえ。そんな事ありません。ただ、普段のチョイスならウバ辺りを選んでくれるのでギャップが───あ。」
「どうしたんだい?」
「……いえ。ただ、友達の事を思い出して。」
「喧嘩でもしてるのかい?」
「喧嘩……なんですかね。最初はそうだったかもしれなんですけど……今は対立している、みたいな……」
「ふぅむ……良かったら話してくれないかい?」
「いえ、話す程の事じゃ──」
「口にするだけでも今の自分がどうしたいか、わかるんじゃないかい?今のクストを見ていると、どうしたら良いか解らなくなっているように見えるんだがね。」
「……」
カインの言葉に冷静さを取り戻したクストは、うつむきながら話し出す。
「……お嬢様が
そして全く同じ時間、ルムがアベルとアルゼに己の内に溜まっていた思いを吐露していた。
「でも与えられた機体が2人操縦仕様のガイガー……試験団や商会の仕事で成果を挙げてるのに、せっかく報いられる機会が訪れたというのに、お嬢様は僕達の事を『半人前』と思っているようで……」
「……半人前?どうしてそう思うのです、最新鋭機を与えられるなら認められたと思うのでは?」
「だってそうじゃないですか!?
「………」
「もちろんお嬢様に2日前抗議をしました。でも終始
「………」
2人の言い分を聞くカインとアベル。
カインは目を点に、アベルは話を無視して黙々とお茶を口にし、次々とアルゼにおかわりを要求する。
そんな2人などお構いなしに、クストとムル双方の話は続く。
「だから思うんです、もしかしたらこれは選抜かなって……」
「せ、選抜……?」
「すみません、ルム。どういう意味ですか?」
「……お嬢様は、最初から優秀な方をパイロットにするつもりなんじゃないかと思うようになって来たんです。だとしたら、お嬢様は……」
「お嬢様は、ルムを推しそうだ。」
「お嬢様は、クストを推しそうだ。」
「………うん?」
「………どういう訳で?」
「ルムは感性が非常に鋭いんです。お茶の繊細な風味を事細かに感じ取れる凄い奴で、同時に細かい配慮、気配りが出来るんです。だから直感も優れていて、戦いでも素早い動きで翻弄してくる上にすぐに死角を突いてきて、その速さといったら……!」
「………」
「クストは観察力が凄いんです。事細かに状況を把握出来き、更に手先が非常に細やかで、肌で感じたものの状態をすぐに見極める事が出来ます。戦いでも間近で起きた事にすぐに対応が出来て、その防御の堅さといったら……!」
「………」
同じ時間、違う場所で、同じように、同時に始まった互いのべた褒め合戦(無自覚)は、カインもアベルも、のほほんなアルゼも唖然とさせられる。
実際のところ、ルムの抜き出た機動性と攻撃力、クストの並外れた技巧性と防御力は、この国の中でも強者ひしめく上位に入る実力と言っても良い評価を得ている。
何より任された仕事も誇りに思い、アースガルズ領の特産なる迄に成果を出している『人財』となった。
それでも自分を劣っていると思っているのは……
(……やれやれ。姿形が違えども───)
(
───コポポポ……
「───!?」
「え……あ、あの……?」
2人の話が白熱する中、カインは、アルゼに指示したアベルは、クストとムルのティーカップに白い液体───牛乳
を話を割るように、適量注ぐ。
その行為に驚くが、無言で勧められる。
何だか「少しは頭を冷やせ」と圧が掛かっているような気があり、勧められるがままに飲むと───
「──え!?」
「どうだい?」
「(コクコク)」
「………」
「どうです、少しは飲み易くなりましたか?」
「はい、風味も味も柔らかくなって……」
ラプサン・スーチョンはその風味の強さ故に敬遠されがちだが、牛乳で割る事によって、その強い風味を和らげる事が出来る。
他の紅茶でも同様だが、事強いラプサン・スーチョンであればその効果は一際際立つのである。
「それは良かった。私もね、最初は苦手だった時にこの飲み方を教わったのさ。」
「まあ、珍しくも何ともない『ミルク割り』ですが、それでも慣れない貴方には丁度良い筈です。ついでに、頭が冷えたところで、貴方の
「誤解……?」
「思い込み、ですか……?」
「ああ。まず君達のギャレオンだが『二人乗り』なのは、君らが実力不足だからじゃない、仕様なんだ───だが『カルディナと比べたら』という
「前回の戦いで、
「GストーンとJジュエルの共鳴による絶大な出力と、対ゾンダー効果はこれ以上ないと言える。これは青の星におけるキングジェイダーの現象と、マギウス・ガオガイガーからもたらされたデータを流用している。だがね……」
「オリジナルである『TGSライド』は単純な出力だけで、星一個を消し飛ばす事すら可能な代物……そんな代物をカルディナはV.C.とレヴォリュダー能力で制御してみせていますが、『DSライド』搭載機の『セカンド』でそのような事は出来ない事は貴方も承知でしょう?」
「だが、あの
「素質と、絆……」
「そして勇気……」
「
そういうと、アベルはサイコキネシスでお茶請けのクッキーを浮かび上がらせ、口にした。
同時に、カインもタルトにフォークを突き刺す。
「……この国は消えて無くなります。そんな事が判っている以上、あの大甘娘はどうでもいい風には扱いません。」
「むしろ心底心を痛めていた、君ら2人の身の安全をね。だがやって貰わねば星が滅ぶ……私達、三重連太陽系のようにね。」
「……!」
この先の戦いで、躊躇やわだかまり、そして負のスパイラルの先に待っているのは、それは確かな『滅び』である。
カインもアベルもその事は身を以て知っている。
「それに、『セカンド』は一人乗りも出来るんだよ、忘れたかい?」
「……え?あ!」
「その様子だと仕様書の中身を忘れてましたね。三重連太陽系のメカノイドは基本一人乗り用ですよ。作戦によっては1人運用する事もあるでしょうし、それを無理矢理二人乗りにしたのが『セカンド』です。」
「あ、ああ……!」
「『DSドライブ』のフルドライブは1人では出来ないけど、運用は元々単独で出来るからね、問題なく力を発揮する事は出来るよ。ただ真価を発揮するなら2人ってだけだ。」
「お、思い出した……」
「むしろ、真価を発揮する方が主眼だろう?忘れちゃいけないね。」
「……はい。」
「ついでに、私が頼んだクッキーも忘れていないでしょうね?」
「……クッキー?」
「今朝カルディナ嬢が伝え、引き受けたと聞いたんだが。」
「も、もしかして、あの依頼って……!?」
「何ですか、やはり上の空ですか。カルディナ曰く『依頼人も把握し、何を必要としているかを知るべし』は試験団の鉄則の一つと聞きましたが?」
「……返す言葉も御座いません。」
「……はあ。今一度自覚しなさい、貴方達が何のために戦うのか。貴方達の力は決して小さいものではないのです。」
「そして今一度自覚し直した方がいい。君達は思っている以上にいろんな人々に気に掛けられているんだと───そうだろう、鉄華団の諸君。」
「うえ!?」
「……ばれてら。さすが。」
カイン、そしてアベルに言い当てられ、素直に観念して出てきた鉄華団の面々。
「え?みんな!?」
「どうしてここに?!」
「どうしてって言われてもなぁ……お前らの様子を見に来たに決まってるじゃないか。」
「あんだけ険悪にされちゃなぁ……」
「しかし、お前らの会話、すげぇ面白かったぜ。」
「???」
「今ルムんとこ張っている団員達の通信機を介してるんだけど……」
「意図的か!ってくらいに話の流れがリンクしてたぜ。」
「嘘ォ?!」
「お前ら、喧嘩してても考えている事は結局、互いに大して変わらねぇんだよ。その細かいところが大事って気にするトコもな。」
「……」
「本当ですよ、リアルタイムでモニタリングしながら話してましたが、気持ち悪いくらいに息ぴったりで───」
「──失礼だが終始笑いを堪えるのに大変だったよ。」
((((──いいや、それは絶対に嘘だな。))))
片や微笑み顔、片や仏頂面で終始笑いを堪えていたとは、カイン、アベル以外は誰も信じていない。
だが、最後の懸念が2人には残っていた。
「……ですが、今のお嬢様は何だか僕やクストには大して興味がないように見えるのは何故だったのでしょう……?」
「……あれ?ルム。もしかしてご存知ないの?」
「??」
「アルゼ、何の事ですか?」
「ヴィータさんから伺った事なのですが……今現在のカルディナさんは『女の子の日』のようで。」
「女の子の日……ああ、そういう事ですか。」
「ああ、そういう事だ。知らなかったのか?」
「あの……女の子の日、とは──いだだだ!?」
「ル~ム~??」
「ああ、そういえばカルディナ嬢、ここ最近『女の子の日』だとかで……」
「え?お嬢にそんな日あるの──」
「え、クスト君。女の子の日のお嬢様に無理させてるの??」
「え、フルーレさん?」
「駄目だよ?お嬢様を女の子の日にはたらかせちゃあ……」
「え、あちょっとフルーレさん?僕のタルトをしれっと下げないでー!?」
「ふんだ。」
「クスト、お前が悪い。」
「試験団たるもの、お嬢の『女の子の日』が出た時の対策は必須だろ───え、知らんかった?」
「うわ……ルム、最悪だ。一度お嬢の『ボコられコース』を受けて反省してこい。」
「な……!そこまでッ?!」
「「「そこまで、だ。」」」
事情を知る女性陣が悉く眉間に皺を寄せ、団員すら呆れ返させる『女の子の日』───
……どうやら知らないのはクスト、ムルの2人だけだった。
どうやら誤解は晴れ、最悪の事態は回避出来たようだ。
──だが『脅威』はそんな事関係なく襲い掛かるのである。
団員達の腕時計から一斉に緊急アラームが平穏を乱すように鳴り響いた。
そして全員がインカムの受信ボタンを押した。
《───緊急警報、緊急警報!クォート湖畔にて素粒子Z0を感知、ゾンダーの出現を確認!機動部隊は直ちにスクランブルを──!》
「ちィ!こんな時にかよ!」
《──こちらオルガだ!お前ら聞いたな。直ちに出撃だ!》
「おう!」
《こんな状況悪ィが、今回はミカを中心に───》
「───団長。」
「待ってください。」
《(クストに、ルム……)おう、何だ?》
「機動部隊は現場到着後、時間を稼いで下さい。」
「その間に僕は……いえ、
「……本気で言ってんのか?今のお前らの状態でどう信用しろって───」
「「───お願いします!!」」
「──!」
インカム越しに頭を下げる2人。
そしてオルガは見た、頭を下げる瞬間の2人の真摯な瞳を。
朝見せていた陰鬱な表情とは打って変わっている。
(……ったく、まだ面と向かってないってのによ。コイツらは───)
片手で頭を抱えつつも、その顔は安堵に満ち溢れる。
《よし……クスト、ムル両名は大至急『
「「「「「 了解ッ!! 」」」」」
気合の入った復唱が場を震わす。この場に臆する者は誰もいないのだ。
そして、団員達は迷わず集合場所となる地点へ走り出した。
クストとルムは『
それを見送ったカイン、アベルはオルガに尋ねる。
「団長、私も同行していいかい?」
「仕方ありません、私も行きましょう。」
《カインさんに、アベルさんまで……いいんですか?》
「ああ。今の私には『デミウス』がある、核摘出とまではいかないが、MSと同じようには動ける筈だ。」
「浄解ならカルディナもいるでしょうが、こちらには私を含めアルゼもいます。付いていっても損はないと思いますが……」
《そうでしたね、おそらく俺達は戦闘で手一杯になります。よろしくお願いします。》
「それとだね……」
《??》
カインがとある人物に視線を向ける。
咄嗟の事とは言え、自分の想い人が童話の妖精のように羽根を広げ、空へと矢の如く飛びたっていった光景に、酷い混乱と動揺をしているクストの恋人、フルーレ。
見た目成長した『華ちゃん』だが、動揺の仕方も『華ちゃん』だ。
「あれ……クスト君、羽根を広げて飛んで行っちゃった……クスト君って、人間じゃなくて妖精さ──」
「──ちょっと戻って来てくれるかい、フルーレさん。」
「ひゃい!!」
だが、それを知ってか知らずか、フルーレにカインは語り掛ける。
「突然の事で混乱しているところ申し訳ないのだが、君はクストの事を好いているかい?」
「は、はい……」
「ふむ、やはりか。君の人となりはここでお菓子を食べに来ている傍らよく見させてもらっている。実に良い子だと思う。だが、それを判っていて問う、その気持ちは本気で、かい?」
「も、もちろんです!でも……」
「ふふ、もちろん君の気持ちは分かる。突然の事だったからね。だがクストも悪気があって秘密にしていた訳じゃない。その上で君に今、選択肢を示そう。」
「選択肢、ですか……?」
「ああ。」
その選択肢は、後にいろいろな事柄を秘め事であった。
──お嬢様の
そして時同じくして、GとJの力を持つ者達は、再び集った。
ゾンダー襲来に駆け回る技師達、そして不安になる国王や長官は喧騒の中でそれを見た。
「ごめんッ!」
「すまない!」
新たなる獅子の前で、互いに頭を下げ、手を取り合い、そして拳を突き合わせる、新たなる勇者王達の姿を──
「……フ、どうやら杞憂だったようだ。」
「その様ですね、これで一安心です。」
「では、陛下。私は自分の持ち場に着きます。」
「頼むぞ、長官。」
彼らは己が使命を果たすべく、それぞれに走る。
《物質瞬間創成高速移動艦サクヤ07番艦、発進準備完了。》
《『S型』ガオーマシン、全機搭載完了。パイロットの天使、悪魔は搭乗を開始して下さい。》
「フハハハハハ!そうだ、我が『主達』よ、それでいい!」
「お互い自分に無いものを探し、焦がれ、そして嫉妬する……それは自分にないものを見つけた証よ。」
「2人の菓子や茶に対する欲求は『知識』の『暴食』!欲しい欲しいと求めるが『強欲』!だがそれは『成長』でもある!」
「君達のお嬢様に対する『忠義』は素晴らしい。だがそれ以上に必要なのは互いに補完し、そして高め合う存在……」
「その関係は『ライバル』。」
「ライバルであり、友……その関係こそ今のクストとムルに必要な事さ。『本当の自分を認め、ライバルと向き合い、高め合う事』……時には真の友に本音でぶつかり合う事も必要なのさ。」
「「「「 それが今、成った。 」」」」
《『S型』ガオーマシン全機、起動完了。GSライド、正常に作動。》
ガオーマシンに搭乗する天使、悪魔達もその準備を万全に整えた。
今回の喧嘩により、求められるものが満たされたのだ。
そして──
「……いくよ、ムル。」
「ああ!」
クストとムルは、専用コマンドを叫ぶ事により、専用IDメイルを装着する事が出来るのである。
クストはライトゴールドと緑を基調とした、ムルはシルバーと赤を基調としたIDメイルを装着する。
そして
「ギャレオン!!」
「僕達に力を!!」
「ガォォォーーーンッ!!」
2人の想いにギャレオンが咆哮によって応える。
新生ギャレオンはその天を仰ぎながら顎を極限まで開き、初めにムルを、そしてクストを招き、その顎を閉じる。
下半身が反転しながら両脚が伸び、両腕は
更にギャレオンの顔がスライドし、胸に移動。その跡から白き巨人の顔がせり上がり、六角形を二等分した形の、GストーンとJジュエルを合わせた額の宝石が、緑と赤のオッドアイと共に光を放つ。
クストとムルがダブル・フュージョンを果たした時、新生ギャレオン改め『シューティング・ギャレオン』は新たなるメカノイド『シューティング・ガイガー』へと変形するのだ。
《全機、収納完了。スターティングギアへ移動開始。》
《GSバリア起動。同時にミラーコーティング蒸着開始。スターティング・ギア仰角23.6度。》
《了解、ミラーコーティング蒸着完了、仰角確認。発進準備完了。》
「よぉし!物質瞬間創成高速移動艦サクヤ、発進!!」
《了解、物質瞬間創成高速移動艦サクヤ───発進!》
新型ガオーマシン、シューティング・ガイガーを載せた物質瞬間創成高速移動艦サクヤが、発進する。
空を切り裂き、飛ぶ先はクォート湖畔。
そこに、どんなゾンダーが待ち構えているのか。
《NEXT》
遂に和解したクストとムルが目指すは活火山のある湖、クォート湖畔。
そこで待ち構えるのはペスカポートが用意したゾンダー。
水上という慣れない地形に苦戦する鉄華団の前に、新たなるガオガイガーが現れる。
安心したのも束の間、ポレントスが用意したゾンダーが機界昇華の牙を剥く。
だが新たなるガオガイガーも負けない。
今ここに、心を一つにした2人の力が、新たなる神話となる。
次回、~公爵令嬢は、ファイナル・フュージョンしたい~
Number.24 その名は、
次回もこの物語に、ファイナル・フュージョン承認!!
これが、勝利の鍵だ!
『シューティング・ガオガイガー』
《現在公開出来る情報》
〇シューティング・ギャレオン
正式名称:第二世代型ギャレオン。
同型で、カラーリングは白がべースでほぼ同じであるが、中身は『試作型』よりも別物となっている。
魔法と錬金術、三重連太陽系の技術、何より前例となったマギウス・ギャレオンの技術を用いており、現在揃えられるものとしては最高峰を誇る新型ギャレオン。
動力炉はGストーンとJジュエルを使用した、共鳴現象によるエネルギーを活用出来る『
〇シューティング・ガイガー
クストとムルが『ダブル・フュージョン』を行う事でシューティング・ギャレオンが変形し、成るメカノイド。
変形プロセスはガイガーと変わりないが、違いとして額のGストーンは2分割され、GストーンとJジュエルが合わさった形となり、ツインアイも緑と赤のオッドアイとなっている。
また、制御プログラムはV.C.のシステムをベースに、カイン、アベルの意志コピーした物をデータ化、ミキシングしたもの。
ただし、出力は操縦技術が未熟なクスト、ルムが扱えるよう出力を調整しており、カルディナほど高出力ではない。
〇『S型』ガオーマシン
仮コード『S』シリーズのガオーマシン。原型たるガオーマシンは全て『Ⅱ』を参考に、三重連太陽系の技術、マギウス・ガオガイガーの技術をブラッシュアップしている。
・『ステルスガオーⅡ(大気圏内仕様)』
デザインこそ『ステルスガオー』とほぼ同様だが、その能力、機動性は試作型『ステルスガオー』を超える出力、機動性を持つ。
ただ、残念ながらウルテクエンジンポット、ファントムリング、ウォールリングの開発が遅れているため、ウイングの両端は『ステルスガオー』のものとなっている。近い将来装着する予定だ。
その代替として、限定的にとある機能を付与している。
パイロットはミカエル(正義) 、レヴィアタン(嫉妬)
・『ドリルガオーⅡ』
元祖『ドリルガオー』とあまり変わらないデザインであるが、ドリルの形状や動きは完全に『ドリルガオーⅡ』である。
ただ、残念ながらこれといった特色はなく、出力以外は原作に忠実な機体である。
また、マギウス・ガオガイガーで行われたドリル分離、右腕
実際、『ドリルガオーⅡ』のドリルの構造では強度不足が証明されている。
パイロットはウリエル(希望)と、ベルゼブブ(暴食)
・『ライナーガオーⅡ』
ロケット型の『ライナーガオーⅡ』。こちらであれば空を飛ぶ事が出来るし、安定した運用が可能なので、採用された。
ただ、カラーリングは配色の関係上、青系の色ではなく『ライナーガオー』をイメージして、白がベース。
パイロットはサンダルフォン(知恵)と、ルシファー(強欲)。
ちなみに、ライナーガオー不採用の理由として
➀『ライナーガオー』を始めに用いた際、カルディナの契約した悪魔の1人、サタンの固有能力の一つ、『
②やるなら王様に、王国全土に新幹線用レールを敷いて貰う(費用は王国持ち)か、超進化レールの上を走らせる事が出来るようになったら可能かもしれない……片方は年単位待ちで、もう片方は意味不明である。
また、「キャタピラを付けて走ればいいんじゃ……」とぼやいた技師がいたが、「それはロマンの欠片もねぇ!」と技師達に拒否されている。(協議された部屋には鉄道模型がいっぱい。)
なお、新幹線用レールはアースガルズ領地に限定的に設置中。(現在3分の2設置済み)
やっぱり初登場の機体があると、説明が長くなるのは割愛してください。
もはや悪癖ですね。
さて次回は初、マギウス・ガオガイガー抜きのゾンダー戦。果たしてどんな戦いになるのか……
ご感想、お待ちしております。