公爵令嬢は、ファイナル・フュージョンしたい。   作:和鷹聖

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どうも。新しい職場にも慣れつつもまだまだな和鷹です。
夜勤が減り、朝晩が極端に早くなったり、遅くなったり、勤務時間がキワモノです。
これで月収減るんだから生活が……と思いつつ、久々の更新は少々鬱になるようなものだったり。
世界情勢が悪くなる昨今、少しでも鬱憤が晴れればと思います。


Number.25 ~私が、勇者王~(1)

《王城 舞踏会会場》

 

「……カルディナ嬢。貴女には、決定的に足りないものがある。何か解るか?」

「それは………何でしょうか?」

「それはだな───」

 

怪訝な表情をするカルディナに対し、その言葉を言い放った大柄の貴族。

その貴族の傍らでもう一人、エイゼルク・S・ゾイバッハ子爵はニヤリと勝ち誇ったような顔をする。

そしてカルディナに耳打ちするように、大柄の貴族はその言葉を囁いた。

その言葉とは───

 

 

 

 

………それより一週間前。

 

《王城 GGG・オーダールーム》

 

「いよいよ一週間後が、舞踏会だ。」

 

間取り、基本的なデザインこそ共通であるが、それよりも絢爛なデザインにされたGGGオーダールーム。

その場にてそう切り出したのは、アルドレイア王国国王たるレクシーズであった。

そして大いに頷くのは傍らにいるティ・ガー長官と、カルディナ、そして傍らにヴィータ。

アースガルズ公爵であるクリストファー。

だが『鉄鋼桜華騎士団』のメンバー達は一部を除いて、いまいち状況を把握できていない様子である。

それを見かねたオルガは挙手する。

 

「……すみません、今更ながらいまいち状況が解らないところがあるんですが。」

「だろうな。オルガ達『鉄鋼桜華騎士団』の君達には……いや、この国で初めて貴族になる者には、か。」

「申し訳ないです。ですが貴族にとっては大事な社交場、というのは理解できます。しかし、何故俺達の爵位授与の場が今回の舞踏会だって事が……」

「うむ、当然と言えば当然だな。」

 

爵位授与は普通、王城にて行われるイメージであるが、それ以外でアルドレイア王国では舞踏会で行われる事がある。

その理由はこの国の抱える事情、環境が大きい。

 

大前提として、アルドレイア王国は魔獣が常に発生する『ボキューズ大森林』に隣接する国であり、日夜常に魔獣討伐を生業とする。暇な時間など簡単には作れない。

大森林に隣接する領土では特に、だ。

 

故に貴族も()()()()()()()()()

 

戦力を常在在中しなければならない戦力状況なので、騎士達は簡単には行事に参加など出来ない。

だが、長年の魔獣の発生ルーティンで舞踏会を行う時期には減る傾向がある、という記録がある。

なのでそのような大規模行事は安全な内に行ってしまおう、という事だ。

また大勢集まるため、アピールの場としてはこの上ない場所でもあり、衆人環視の密度はこの上ない。

なので、国にとって重要な任命等のイベントは時期が合えば舞踏会で行うのが慣わしとなったのだ。

故にごった返し状態の社交となる。

ちなみに王城でも爵位授与は行われるが、有力者であれば再度舞踏会でも行われる。

先日王城にて爵位授与を行ったオルガ、三日月、明弘、ビスケット、クストとムルが舞踏会で再度舞踏会の場で爵位授与のお披露目を(天 丼)するのは、この国特有の事情とも言える。

 

「なるほど……」

「というか、説明しましたわよね?」

「すまねぇ、お嬢。だがややこしくてよ。」

「でも一日集まるだけで、大袈裟なんだね。」

「……その一日集まるために、行き帰りの移動時間も考慮しなければいけないんでしょうに。」

「数週間単位が潰れるからね。」

「移動ってそんなに大変なの?」

「ミカ……余所様には高速移動艦のサクヤも、空間転移(ESウインドウ)もないんだよ。今の環境が異常って事を思い出せ。」

「そっか、ごめん。」

「それについては団長(オルガ)に同意する……だが、そんな便利なもの早く導入出来ていれば、我が国は困りはなかった……がな。」

 

ギロリと恨めしい視線を送るレクシーズ。そして明後日に向くカルディナ。

空間転移の事を知った日、レクシーズは他の者に伝授できないかカルディナに熱望したが、自身周辺の転移だけで手一杯である事を知った時には諦めた。

そして、物質瞬間創成高速移動艦サクヤの存在を知った時には軍への導入を切に願ったのだが、上空からの発艦と着陸が可能なら導入しても、と条件付き導入を許可した。

だが、秘密裏に近衛騎士団にシミュレーターで上空発艦の訓練をさせているが、シミュレーターでもどうやらまだ本格的な導入は先らしい。

 

だがまだ理由もある。

一つは、舞踏会自体が大事な社交の場である事。

様々な領主が集まる他に、成人前の男女も集まるパーティーである以上、重要な出会いの場にもなる。

将来の事を見据えると、疎かには出来ない。

そしてもう一つ。魔獣が出現しない時期がある、という事は森の中では常に魔獣が増えているという事。

そしてその事から必然的に重大な事が起きる。

 

「舞踏会の後には、必ず『大反乱(スタンピート)』が発生する。」

 

───『大反乱(スタンピート)

大多数の魔獣が人類の生存圏内へなだれ込む事象である。

未だ魔獣一体一体の生態は解明されていないが、この時期には必ずといっていい程にやって来る。

アルドレイア王国の舞踏会とは、『大反乱(スタンピート)』の為の一致団結の場でもあるのだ。

 

「それ故に、志気を高める事が必要なのだ。現在、我がアルドレイア王国を取り巻く状況が、非常に複雑なのは皆も知っていよう。」

「魔獣はともかく、ギャラルホルン教皇国、そしてゾンダー……」

「どいつもこいつも一筋縄じゃいかない奴らばかりですね。」

「そんな不安を抱かせる状況だ、ストレスを抱えている者などゴマンといる……ゾンダーにとっては格好の狩場なろう。」

「そして国内にはGGGの存在を否定、もしくは解散を目論む声もある。」

「そんなバカな……どうして!?」

「それがな、先日のゾンダリアン四天王、そしてパスダーとの戦いの情報が何処からか漏れたのだ。」

「……あの『ゾンダリアン親玉決戦』ですか。」

「ああ。カルディナが配慮し、ひと気の少ないところで戦ってはいたがあの激戦だ、あの戦いの余波は嫌でも各所に伝わる。密偵の一人や二人、派遣されていてもおかしくはない。まして騒ぎが落ち着いた直後に目撃した者がいるのはゼロとも言えない。箝口令を敷いていたが、カルディナが負傷したという噂はかき消せん。」

「しかも、カルディナがゾンダーに負けた、という噂になっていてな。」

「な!?」

「ロクにお披露目もされていない、新設した謎の部隊……そのGGGの隊長が負傷して戻って来たのだ、それだけで否定する者達には十分な材料だろう。噂を流す以上、奴らに真偽などどうでもいいのだ。」

 

そんな不穏の雰囲気が漂っている。噂の出所は複数同時に発生しているため、V.C.でも掴み切れないものだった。

狡猾………そう言ってしまえば、その通りである。

それに対し、カルディナは黙したまま特に何も言わなかった。

 

「お嬢は反論しねぇのか。」

「何も……その通りですから。私が負けたのは事実よ。」

「いや、違うだろ!ゾンダリアン四天王は半ば撃退、パスダーとは痛み分け、最後の……!」

「そこまでだ。」

「……陛下。」

「気持ちは分かる、奴らの聡い工作だという事を。そしてカルディナを引きずり下ろし、あわよくば自分達が後釜になろうと画策しているものな。」

「……出来るんですか?」

「いや、無理だろう。そんな事を考えるのは、今までの常識が一切通用しない事を理解していない愚か者だ。だから敢えて泳がしている。」

「そうなんですか。」

「それに『大反乱(スタンピート)』が控えている以上、今は公には処罰出来ん。とはいえ今回の噂は、ひいては王家の批判にも繋がる………容赦はせんがな。」

 

愚か者は何処の組織にでも、どんな身分の者でもいる───オルガ達も前世の体験から解ってはいるが、それでも歯がゆい気持ちである。

そんな空気を察して、レクシーズは場を締める事にした。

 

「各々、抱く気持ちは察する。だが、今大切なのはこの催しを成功させる事。故に、此処にいる貴殿達に重々事を頼みたいのだ……きっと何かあろう、しかし貴殿らの協力があればこの苦難、乗り越えられると確信している……どうか宜しく頼む。」

 

国王にそう言われてしまえば、断る事は出来ないオルガは、首を縦に振るしかなかった。

 

「……解りました、やらせて頂きます。」

 

そして一週間が経ち、舞踏会当日。

所作礼儀を再度徹底的に叩き込まれた鉄鋼桜華騎士団は、フラフラになりながらも会場にやって来た。

レクシーズの言葉を皮切りに、オルガ達の爵位授与式が厳かに行われる。

平民から成り上がった謎の騎士団に、事情を知らない貴族からは賛否の声があったのは想定内。その後は揉まれるように様々な貴族に顔合わせをしつつ質問責めに。幸いにも予めアースガルズ公爵が付き添っていたため、大事には至らなかった。

だが、国王自ら組織した謎の組織、GGGに鉄鋼桜華騎士団が組み込まれている事から、質問の密度は非常に上がっていたりする。

また、今回外の警備にMS──ランドマン・ロディを起用しており、初めて見る者達からは驚愕と好奇、疑心、様々な目で見られている。搭乗している鉄華団のパイロットも緊張していた。

 

そんな光景を壁の華で傍観していたのはカルディナ。

GGGの機動隊長であり、開発における重要人物であるはずだが、何故か目立たない場所にいた。

当人も自ら動かず、傍らのヴィータと共にゆったりとしていた。

流石に護衛のシルフィーネはその事に違和感しか覚えない。

 

「あの……こんなところにいて宜しいのですか?」

「ああ、いいのです。陛下からの厳命で『お前は動かない方が良い』と言われまして。それに、今はオルガ団長達のお披露目が先ですわ。私の方は後でもいいのですし……」

「ですが……」

「それ以上に今はここにこうしていたいのです。陛下より会場設営の任も承り、ここしばらく忙しかったのです、休みたいですわ。」

 

普段以上に活気がない。

正確に言えば、この会場に来た時から、妙に元気がなくなっている。会場設営の事もそうだろうが、シルフィーネは何が違う事に気を取られているような、そんな様子に見える。

既に準備は終わり、現状無事にプログラムは推移している。

一体何が気になるのか───

 

(やはり、これまでの事が堪えていらっしゃるのだろうか?)

 

そう思うシルフィーネなのだが……

 

「───カルディナ様、こちらにいらっしゃったのですね!」

「ええ、ご無沙汰でしたわね。」

「はい!」

「あ、カルディナ様。」

「カルディナ嬢、こちらにいらして──」

「カルディナ様!」

「カルディナ様!」

「はいはい、皆さん落ち着いて下さいませ。私はここにおりますわ。」

「………」

 

気付けば人だかりが出来ていた。

それは嫌でも会いに来る貴族や令嬢達。そして学友が多々現れる。

気付けば無視出来ない程の人だかりが出来上がる。そしてカルディナを心配する声や歓喜する声、お礼を述べる声等々……

カルディナが今まで築き上げた人脈が、ここに出ていた。

そしてシルフィーネは誤解していた。

 

(あ、ここは大人数が押し寄せても問題ないスペースだったんですね。)

 

敢えて迷惑にならないところにいるのがカルディナらしい。

だが壁の花、といってもカルディナが纏うドレスは特注品で控えめに言っても絢爛美麗。

デザイナーの込めた思いと意向もあり、会場の端でありながらその壁の花は誰もが羨む可憐な花であった。

 

……だが、人だかりを注視すると、シルフィーネは奇妙な事を発見する。

一つ離れると、怪訝な表情で人だかりを見る貴族や令嬢の姿が周囲を取り囲むのが判る。

 

(……カルディナ嬢とは反りが合わぬ者達ですか。)

 

反アースガルズ派、というべきか。少なくともカルディナから割を食った者達の集まりであった。

どんな事であれ、カルディナに仕掛けては正攻法でも裏でも返り討ちに遭い、結果その立場を悪くした集団。

だが、再びやり返す事も復讐を企てる事も、脅す事も出来ない。カルディナが全てその企てを潰すからだ。

そしてカルディナの背後には公爵、そして国王がいて、その寵愛を受けている(と、周囲からは勝手に思われている)故に、(いさか)いも誤解も起こせない。

そんな集団をシルフィーネだからこそ判る。

 

(彼らは暗い感情を燻ぶらせるだけで、カルディナ嬢を真正面から見ようとしない。妬み、憎しみ、恨み、辛み、そして恐ろしさ……それら負の感情がゾンダーの贄となる。私も少し前は彼らと一緒でカルディナ嬢に憎しみをぶつけていたが……無知であり、知ろうとしない結末は本当に恐ろしい。)

 

ゾンダーの情報は一部の貴族には既に周知済みなのだが、王都襲撃を間近で見た者以外には寝耳に水のような事案であり、事実が屈曲して様々な噂となり、人々を不安がらせているのが実情。そして見たこともなく、悪意ある者達からは根も葉もない噂話を面白半分で広げる者もいる。

その大半がカルディナを始めとした、現体制を疎ましく思う者達だ。

典型的な性悪貴族には尚更で、それどころか、更に負債を抱えるだろう。

だが、傲慢と言われようとも高貴(傲慢)に振るまう事こそ貴族の誇り(プライド)、と反アースガルズ派は信じている。その彼らに説明してもきっと無駄なのだ。

その感情は盲目でしかない。

 

それでも彼らを挑発するように次々とカルディナに面会を希望する者が殺到する光景は、神経を逆撫でし、負の感情を育てていくのであった……

 

 

➀某国の第十七王子と、第一王女、その側近(お友達)達。

 

「カルディナ・ヴァン・アースガルズ。」

「お招き頂きありがとうございます。」

「ああ、これはこれは。ブリタニア帝国第十七王子ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア様と、イスルギ王国第一皇女アンジュリーゼ・斑鳩・イスルギ様。お越し頂きありがとうごさいます。それにご学友の皆さんも。」

「留学生の身でありながら、この様な場にお招き頂き感謝します。」

「それに護衛や近隣者と共に。皆も嬉しく思っています。」

「いいえ、留学先での息抜きとして頂ければ、この上ない喜びですわ。どうぞ、楽しんでいって下さい。」

 

と、表面上は好意的な挨拶だったりするが……

 

(……まったく、大変な時期に呼んでくれたわね。)

(ごめんなさい。)

(ま、元気そうで何よりだわ。)

(まあアンジュ、いつもの事だ。それに今日俺達は王族、そして客人として来ているんだ、もてなされてやろう。)

(頼むわよ〜。)

(お手柔らかにお願いしますわ。)

 

アイコンタクトで交わす3人。

そして『放課後試験クラブ』のメンバー達がそこにいた。

ちなみに護衛達は傍らにいるが、その他のメンバーは出されたビュッフェに舌鼓を打ちつつ、カルディナに手を振っていた。

 

 

②王族(婚約者)+α

 

「カルディナ。それにルルーシュ殿、アンジュリーゼ殿。」

「これは……アシュレー殿下。」

「いいよ、どうか普段通りに接してくれ。それよりもカルディナ、身体の具合はどうだい?」

「お陰様で、すこぶる快調ですわ。」

「そうか、それは良かった。ところで……申し訳ないのですが、良い機会ですのでルルーシュ殿とアンジュリーゼ殿、カルディナに我が兄達と父上、母上を紹介させてはくれないだろうか?」

「第1王子と第2王子、それと陛下と王妃様ですか?」

「それは光栄です。」

「私も構いませんが……宜しいのですか?特に第2王子の兄上様は……」

「「……ああ。」」

「問題ないよ。むしろ陛下より『恥を晒して来い』って言われている。」

「あの、失礼ですが……」

「本当に私達がいても宜しいので?」

「はい、もちろんです……あ、兄様。」

「ああ、これはこれは。ブリタニア帝国第十七王子ルルーシュ様、そしてミスルギ王国第一皇女アンジュリーゼ様ですね。アルドレイア王国第一王子、アレスター・F・アルドレイアと申します。遥々我が国へお越し頂き、ありがとうございます。」

「これはアレスター殿下。」

「お声を掛けて頂きありがとうございます。」

「いえ、カルディナを含め、御二人方にはアシュレーがお世話になっています、こちらこそ御礼を申し上げます。」

「わかりました。」

「お受け取り致します。」

「感謝致します。」

「ところでオルテウス殿下は……」

「ああ、今来ます。」

「……ようこそ、御二人方。アルドレイア王国へ。」

「……オルテウス殿下。」

 

第二王子のオルテウス・H・アルドレイアが顔を腫らせたまま出てきたのだった。

 

(顔……思いっきりボコボコじゃない。)

(アシュレーの前でカルディナを娶りたいと漏らして、兄弟喧嘩(一方的)にやられたって話ね。)

(まあ、その話は両成敗という事で終わったがな。ただし、顔は回復魔法も掛けられず、反省のためにそのままというところか。)

 

虎のように凛々しく強面の男だが、こうなると可愛いものだ。

弱々しいのがどこか保護欲を唆る。

 

「みっともない顔で済まない。第二王子のオルテウス・H・アルドレイアだ。」

「いえ、事情は伺っています。こちらは特に気にしませんので。」

「あ、そうなのか……まあ、そうしてくれると助かる。それと、カルディナ。知らなかったとはいえ……すまなかった。」

「私は何も。殿下も罰を受けられたようなので、この件は水に流すという事で。」

「あ…………そうか、助かる。」

 

カルディナはあっさりした返答でオルテウスに返す。

その返答に安堵はするものの、完全に脈はないと瞬時に察したオルテウス。

そして凄い満面の笑みで微笑むアシュレーに、達観した視線を送るルルーシュとアンジュであった。

 

 

③公爵令嬢達

 

「カルディナ・ヴァン・アースガルズ。」

「どうも。」

「お久しぶりですわ。」

「皆さん……」

 

次にやって来たのは、アルドレイア王国公爵……その娘、公爵令嬢たちであった。

 

ゴンドゥール卿の次女、アスティリス・F・ゴンドゥール。

ゲイルドリヴル卿の三女、ベルフェルン・S・ゲイルドリヴル。

そして、ランドグリーズ卿の長女、イリスティア・B・ランドグリーズ。

 

それぞれが公爵令嬢に恥じぬ装いで、カルディナの前に現れた。

ただ、アスティリスと、ベルフェルンは少々戸惑った様子で、そしてイリスティアは何か決意したような、神妙な表情で一歩前に出る。

 

「この度はご婚約、おめでとうございます。心より御祝福致します。」

「……ありがとう、ございます。」

 

意外や意外な言葉にカルディナは呆気にとられる。

それでも彼女の表情は真摯で、彼女の取り巻きの令嬢たちは「……ついに言っちゃった」とがっくり項垂れた。

何せ、それは敗北宣言なのだから。

 

「……ですが、この話はここでは無粋。もしよろしければ、後日時間を作って頂けないでしょうか?」

「ええ、こちらは構いませんが……」

「ありがとうございます。それでは……」

 

そうして去っていく一行。

あまりにもあっさりとしていた事に、呆然どころか啞然としていた。

 

「あの……今のは?」

「おそらくですが、私と陛下の事をランドグリーズ公爵より密かに伺ったのだと……」

「ああ、それで。まだ公には公表されていない事案ですから、あのような言い回しで。」

「言い回しというか……あのコにしては随分ストレートだったわ。もう少し悔しがるか、嫌みを利かせた文句を言われるかと思いましたが。」

(……確か、ランドグリーズ公爵令嬢は殿下へのアプローチをされていましたが、一切靡かなかった事が噂になっていたような。)

 

結論としてはそう。当人にとっては暖簾に腕押し。

そんな結果をもたらされて、何をしてくるかは未知数。

だがその思考は次々と来る面会者に忙殺されて、記憶の隅に追いやられるのだった。

 

④師団長+国王+公爵達

 

「カルディナ嬢、息災ですね。」

「これはこれは、アルムゲル・D・アルドレイア近衛師団長。それにランドグリーズ公爵にゲイルドリヴル公爵、ゴンドゥール公爵。そしてレークシズ陛下……ご機嫌麗しゅうございます。」

「ああ。面を上げよ、カルディナ・ヴァン・アースガルズ。」

「はい、失礼致します。」

 

今度は国王レクシーズを筆頭に、四公爵の内三人と、近衛騎士団の団長でありレクシーズ直属の側近、アルムゲル・D・アルドレイアがカルディナのところに来た。

大柄な身体を白銀の鎧で身を包んだ女性で、抱擁感がありつつもいぶし銀のような頼れる姐御のような女性、そしてアルドレイア王国きっての『最強の盾(イージス)』、それがアルムゲル・D・アルドレイア近衛師団長(※国王第二夫人)である。

女性でありながら、カルディナの憧れる人物一人で、その存在は大きい。

ちなみにその光景を少し離れた所から目撃してしまったアシュレーは、笑顔は絶やさずとも握りこぶしから血が滴っていたという事件を起こしていた。

 

……嫉妬の対象が多過ぎなんよ。

 

「身体の調子は如何か。」

「お陰様で、万全でございます。」

「そうか、無理はしないでくれ。」

「お前に何かあったらこの国はどうなるか……とはいえ、此度も色々な事を負わせているのだが……」

「何を仰います、本日の舞踏会の企画立案に携われる……それこそ誉ですわ。」

「とはいえ、いくら力があってもそれを合わせる事こそが重要なのです。貴女一人に重責を負わせる訳にはいきません。無理はされぬようご自愛なさい。」

「アルムゲル様………」

「それに以前の()()がまだですし……」

「あははは……」

 

一昨年、近衛師団をフルボッコにした件は重々覚えている様子。ただし、昨年圧勝したのは公然の秘密であるが、当の二人は仲が良いのは奇跡とも言える。

 

「それに、招いて頂いた『あの場所』での、私のリクエストがまだ成されてませんからね。」

「そうでしたわ。準備が整い次第、出来ましたら招待いたしますわ。」

「ありがとう。しかし……こちらの額当て、お洒落で良いのですが、着けていないとだめですか?」

「もちろんです。師団長にお似合いの物をご用意させて頂きましたので。」

「……まあ、本来の用途目的も伺っているので、何とも言い難いですが……あ、陛下にはお褒め頂いています。」

 

凛々しいながらも乙女の様に頬を高揚させるアルムゲル。

普段よりお洒落っ気のない彼女には丁度良かった。

そんな表情から摂取出来ない栄養素をカルディナは密かに摂取していた。

 

「アルムゲル殿……カルディナに何を言っている?」

「いえいえ、バランド殿。大したことではないですよ。」

「まったく………ところでカルディナよ。私の、例のアレだが………」

「ああ、ご心配なく。順次開発中です。一か月以内にはロールアウト出来るかと。」

「そうか。」

「………バランド殿?」

「………何でもないぞ?」

「「???」」

「アルムゲル、バランド、貴殿らは……」

「「????」」

 

事情を知らぬ者には何の事か解らない会話。

ゲイルドリヴル公爵、ゴンドゥール公爵には殊更分からずにいた。

アルムゲルとバランドのホクホクとした笑みに、レクシーズは呆れながらも怪しい笑みを浮かべる。

 

(……あの、いったい何の事で??)

(以前、とある場所で陛下達と会食しまして………と言っても、私の隠れ家的な場所で、ですが。)

(………何となく読めました。そこでの食事が滅法美味しかったと。)

(いえ~す。)

(アルムゲル様は陛下が幼い時からの側近であり、第二王妃。そして非常に強力な毒耐性を持つお方で、王族皆様の食事の毒見役です。そしてその筋では有名な美食家。そんな方の舌を唸らせるものお作りになられるなんて……)

(いえ、皆様とんだ悪ガキでしたわよ。皆様、幼馴染でいつまで経っても子供というのは、お母様のお言葉通りでしたしwww)

(ええ~~~~~???)

 

ちなみにその席にはカルディナの父ことクリストファーもいたのだが………いったいどんな会食だったのか?

シルフィーネには恐ろしくて震えた。

そして去り際に……

 

「……してカルディナ。私の例のアレの進捗はどうだ?」

「陛下……ご存じのはずでは?」

 

……とまあ、そんなカルディナを認めるお偉いさん達、親友達が大勢来たりする。

それでも時折見せる疲労感。いつも以上に芳しくない。

まだ本調子ではないと、シルフィーネの目には映っていた。

だがその中に……

 

「やあ、カルディナ。」

「お久しぶりです。

「カイン様ぁ!!それにアルゼ様ぁ!!」

 

カインとアルゼの姿もあって、一気にボルテージMAXになり、メスの顔になった姿を見て、シエスティーナに宇宙猫が頭の上に降り立ったのは想像に難くない。

 

「痛っ!?」

「どうされました、オルテウス様?」

「……いや、何でもない(おい、アシュレー!いったい何を…………イヤ、ナンデモナイ。)」

 

足を踏まれ、思わず睨み付けるオルテウス。

だがその隣にいた(アシュレー)の、一瞬だが嫉妬に駆られたスゴイ顔をした光景を垣間見た。

運良く(?)その光景を目撃してしまった弟の顔が、とっても怖かった。

 

「?、どうしましたか、オルテウス兄様。」

「……あ、イヤ……ナンデモナイ。」

 

……どうにも(アシュレー)が怖くなった(オルテウス)であった。

そして、周りの雰囲気を観察しつつ、カルディナを眺める人物がもう一つ、二つ……

 

(なかなかの負の感情(ストレス)が蔓延しているじゃない……その中核が噂の公爵令嬢、そして『第二のカインの遺産』の使い手……か。)

 

シエスティーナ・Z・ラーズグリーズ伯爵夫人こと、偽装したゾンダリアン・プレザーブが夫のヴェルドハン・L・ラーズグリーズ伯爵と共に会場に来ていた。

人巻きに巻かれるカルディナを見て、何となく腑に落ちたようだ。

そしてカルディナに近づくカインの姿を見た……その事に思わず戦慄すも、すぐに気持ちを落ち着かせる。

 

(……まさか、本当に生きていたとは。)

(誤認かと思ったけど改めて見ると本当だったのね。)

 

ケリー・レッドウィングこと、ピッツォ・ケリーもカルディナとカインを警戒していた。

まさか重要視する人物がいるとは思ってもみなかった。

 

(やるか?)

(駄目よ、ここでカインを殺めたところで意味がないし、分が悪過ぎるわ。手は出しちゃ駄目。)

(わかっている、我らの狙いは……)

 

護衛としているピッツォもカインを認識したとはいえ、大人しくしている。

ゾンダリアンの力をフルに使えば、制圧など容易いかもしれない。だが、それ以上に不安要素が多いのも事実。

そして、負の感情を高め、ゾンダー化させるには、まだお膳立てが必要。

中にはその必要のない者もいるが……

 

(……いえ、あの第三王子は駄目ね。)

(ああ、何か手を出すなと直感が訴えてくる。)

 

プレザーブの最も好む『嫉妬』の感情だが、一番狙ってはいけないと感じた。

とはいえ、この会場にはもっと激的な恐怖や怒り、嫉妬がある。

そのためには……

 

「む、ラーズグリーズ伯爵。それに夫人。」

「これはこれは、アースガルズ公爵。」

「お久しぶりに御座います、公爵様。」

 

思考の途中でアースガルズ公爵ことクリストファーが声を掛けてきた。

表情にこそ顔に出さないものの、要注意人物の身内だ。

シエスティーナは警戒を強める。

 

「久しいな、領地はあの後どうだ?」

「はい、公爵のお陰で更に良くなりました。」

「それは良かった。娘のテコ入れとはいえ、役に立てて良かったよ。」

「娘様、ですか?もしや……!」

「ああ、恥ずかしながら我が娘、カルディナの案だ。」

「やはりそうでしたか、お陰で作物の収穫量が非常に伸びて……それに我が領地に特産品も生まれ、この上ありません。」

「あれはそちらの土が合うとの判断でな。今後もそのようなものが有れば融通すると言っている。」

「本当ですか!?ですが宜しいので……?」

「娘の意向だ。『その土地に合ってこそ真価を発揮するなら、その場所こそがふさわしい』と。その代わり……」

「あの融通して頂いた葡萄……今年の葡萄の値段を融通、ですか?」

「ああ。試験的に様々な種類のワインを造りたいそうだ。出来次第ではワインもお礼の額で卸すと言っている。」

「………本当に宜しいので?そちらの利益は大丈夫ですか?」

「………そればかりは娘に言ってくれ。あれの頭の中は私にも良く解らん。気付けば莫大な利益を生んで来る。その当人が言うからには問題ないのだろう。」

「……その話、私も一つ噛ませて頂いても?」

「シエスティーナ?」

「やはり、夫人も気になるか。」

「はい。カルディナ様程ではありませんが、私も領地の為に商いをする身、儲け話には聡いと自負しております。」

「そうか……いや、そうであったな。」

 

ラーズグリーズ領のシエスティーナと言えば、良妻であり腕利きの商人ともっぱらの噂だ。

嫌な噂一つない、善良な商人とまで言われる。

平民たちには専ら美談とされている噂であり評価であるが、その事にクリストファーは幾分か警戒していた。

娘のカルディナですら、商いにおいて他の貴族から反感を受けている事案はいくらかある。

しかしそれは商いをする以上当然であり、娘のこれまでの事柄(主にガオガイガー関連)が事柄なので、仕方ないといえる。

しかし目の前のラーズグリーズ夫人には、そんな噂が一つもない。

クリストファーの勘が、些か引っかかると気にしていた矢先、異変が起きた。

 

《クリストファー様、報告事案です。》

(む?何だV.C.。)

《お嬢様が他の貴族に絡まれております。》

(誰だ。)

《ガルトバルト・B・フレック侯爵を筆頭に、エイゼルク・S・ゾイバッハ子爵とその妹君がカルディナ様に接触して来ました。》

(何!?よりによって一番会わせたくない奴等が……!!)

「??アースガルズ公爵、いったいどうしたのですか?」

「話の途中ですまない、カルディナのいるところで厄介事が起きたようでな、失礼する。」

「は、はい……」

 

そしてすぐに踵を返したクリストファー。

その後ろ姿をシエスティーナは密かに嗤って送り出した。

 

 

「──ガルバルト・B・フレック侯爵である。」

「カルディナ・ヴァン・アースガルズで御座います、フレック侯爵様。」

「ふん、噂には聞いていたが……このような女人であるとな。」

 

その男は突如、人垣に割り込んでやって来た。

ガルバルト・B・フレック侯爵、アルドレイア王国の『侯爵』の一人である。

国内においては四公爵のアースガルズ家、ランドグリーズ家に次ぐ魔獣討伐を可能とする実力ある家で、ガルバルトもまた実力者である。

だがその性格は傲慢。同じ『武闘派』のバランドも頭をかかえるほどだ。

何故なら『力こそあれば全て道理が通る』、『弱者は強者に従うべき』と理念があり、弱肉強食を体現した純粋な武人である。

それは現国王レクシーズの理念、カルディナの理想『全臣民の融和と協調』とは大きく異なり、他者を害しても何も思う事のない、いわゆる典型的な貴族と言っても過言ではない。

そして『武闘派』の派閥内では一番の過激派である。

『武闘派』は実力主義で現体制に批判的なところはあるものの、それはあくまで、より良い国家作りをするための批判姿勢である。

しかし野心家ではないガルバルト。

暴政を強いた前国王の頃でも、中立的な勢力の家の一つではある。

しかし実力主義である以上、現体制が無様な醜態を晒すなら、自分が王になるのも吝かではない、と思っている、ある意味誰よりも危険な思想を持つ人物。

 

そんな人物が突然周りの身分の低い貴族たちを押しのけ、やって来てはカルディナを値踏みする。

そしてその傍らにはエイゼルク・S・ゾイバッハ子爵と、その妹であるイザベラ・E・ゾイバッハ。両者共に華美で主張するような衣装を纏いカルディナの前にニヤニヤと笑いながら立った。

そして軽い失望を含んだため息と共にガルバルトはエイゼルク・S・ゾイバッハし始めた。

 

「とんだ期待外れだな、カルディナ・ヴァン・アースガルズ。」

「……どういう意味でしょう。」

「そのままの意味だ。貴女(きじょ)は陛下からGGGなる部隊の隊長を承ったと聞いた、しかし結果はどうだ?無様に負けたと言うではないか。」

「……確かに、負けたのは事実です。戦局もこちらに有利、という訳では御座いません。ですがゾンダーは……」

「ふん、負けた者の言い訳など聞くに値せんわ。戦いは『勝つ』事こそが至上。『負け』になど何の意味もない。」

「………」

「魔獣討伐国家のアルドレイアにおいて、負ける事は民の死を意味する。公爵の令嬢たる貴女がそれを知らぬ訳ではなかろう?」

「……その通りです。」

 

古い時代より魔獣の被害に苛まれて来たアルドレイア王国、当然その事を知らぬカルディナではない。

その事は誰よりも身に染みている。

 

「貴女は幼少から優秀で、アースガルズ領での商いの手腕も成功を治めたという。そして成人していないにも関わらず武人としても大成している。だがガオガイガーとかいう玩具を得て驕り、増長しているようだな。その証拠に王都襲撃の際も貴女は負けた……故に思う、貴女にそのゾンダーとやらと戦う資格があるのか、と。」

「!!」

「負けてしまえばそれで終わり……なのに貴女は負けを重ねている。それをおめおめ生き恥を晒しているとは、実に情けない。それでも公爵家の者か?」

「………」

 

だが、事実故にその言葉はカルディナに刺さる。

ゾンダーとの初戦、そしてそれから……決して誇れるものではないとカルディナは密かに思っていた。

 

「そして何より……カルディナ嬢。貴女には、決定的に足りないものがある。何か解るか?」

「それは………何でしょうか?」

「それはだな───貴女が『女』である事だ。」

「……それが、何の関係が?」

 

カルディナに耳打ちするように、ガルバルトはその言葉を囁き、怪訝な表情をするカルディナ。

その傍らでもう一人、エイゼルク・S・ゾイバッハ子爵はニヤリと勝ち誇ったような顔をする。

 

「ある。国を動かす者の大半以上は男だ。そして有能な戦士もまた、男が大半だ。この国の現状を顧みれば分かるだろう。これは男が有能である事を意味している。貴女が女である以上、今以上の力を得ることは出来んだろう。」

「ゾイバッハ子爵!この国において騎士になる事の条件に、力量のみとされ、男女の性別は関係ないと陛下は名言されています!発言の撤回を!」

「シルフィーネ・V・ブリュンヒルドか。貴女は第二王妃様の近衛師団の末席だったな……いや元、か。実力不足でヒステリックを起こして疎まれたとか。そしてゾンダーとやらに寄生され、左遷された……だがあんなお飾りと化した近衛師団等、誰しもが一緒だというのに……」

「ゾイバッハ子爵………!」

 

現王家を侮辱する発言をしたゾイバッハ子爵に発言の撤回を求めるシルフィーネだが、ゾイバッハ子爵はそんな事を意に介さずにしていた。

しかしそんな2人のやり取りを無視してガルバルトの話は続く。

 

「実に惜しい……貴女が男であれば歴史に名を残したであろう。だが貴女が女であるために、陛下より賜ったGGGとやらの長の名が泣いておるぞ。(われ)はゾンダーとやらに接敵した事はないが……この『無敗のガルバルト』、未だ敵対した者に敗れた事などない。吾は戦えば、ゾンダーとやらも見事殲滅出来よう。」

「それがガルバルト様には出来ると?」

「そうだ。少なくとも貴女よりはな。」

「……ゾンダーの特性を知らずに、ですか?」

「そんなものは関係ない。あったとしても吾であればすぐに急所を看破し、敵を殲滅する。」

 

おおよそは理解も出来るし、言い分も受け入れられる。

負けは負け、それはカルディナも重々承知している。

だが、このガルバルトはゾンダー対して決定的な事が欠落しているのも事実。

これが今のアルドレイア王国の典型的な貴族の感性なのだ。

……そもそも報告書にしっかり目を通していないもの伺える。

 

「そうだ、カルディナ・ヴァン・アースガルズ。今からでも遅くはない、隊長の地位を返上したまえ……何ならこの私、エイゼルク・S・ゾイバッハが代わっても良いぞ?」

「そうですわ、そんな事でアシュレー殿下の婚約者は務まりません。今からでも辞退しな───」

「──黙れ。主らに戯言を発する時を与えた覚えはない。」

「フ、フレック侯爵!?」

「吾はこの国を想っている、故の発言だ。侮辱と言われようが、貴女には事実。だがそれ以外の発言はただの愚言……主らの言葉が当にそれよ。吾の意を借り、金魚の糞のように付いて来た者共が勝手にほざくでない。」

「なッ!?」

「ヒィ!」

 

弁解の余地などない。

エイゼルク・S・ゾイバッハ子爵とその妹はガルバルトの威圧に怯える。

2人ともその根が小物でしかなかった。

ちなみに2人が付いて来た理由が、ガルバルトがカルディナに物申す事を知ったため、便乗してカルディナを責めよう、としたのが理由だ。

正に虎の威を借りる狐である。

そしてガルバルトはそんな狐のような振る舞いをする者を嫌う。

 

「……話が逸れたな。だが吾の言、素直に受け入れよ。貴女の事実だろう。」

「それは……」

「───フレック侯爵!我が娘に何をしている!」

「……アースガルズ公爵か。それに主は……!」

「フレック侯爵、カルディナ嬢に何か思う事があるでしょうが……それ以上は私が聞きましょうか。」

「……近衛、師団長。」

 

異変を察知したクリストファーと、そしてアルムゲルが間に入った。

特にアルムゲルの姿を見るな否や、苦虫を噛み潰したようような、あからさまに嫌な顔をするガルバルト。

そんなガルバルトに呆れたように物申すアルムゲル。

 

「まだ女が弱い、男が優れているなんて発言をしているのですか?」

「……吾は女の近衛、ましてや師団長など、認めていない。」

「ですが全ては陛下の采配です。そして私は愛する方を護る事が望み。その望みを汲んで頂いたのです。その結果が近衛騎士団の団長の座です……最も、今は再編成中ですが。ですが貴方の仰る実力主義の結果ですよ?そう言えば……貴方と模擬戦の勝敗、陛下が中座させてしまったのですが、未だ不平不満があるなら今この場で決着を───」

───止めぬか。

「「「 へ、陛下!? 」」」

 

そして調停のために現れるレクシーズ。

その光景一同膝を突き、ある者は礼をして平伏する。

 

「近衛師団長、挑発は止めよ。」

「申し訳ございません。」

「そしてフレック侯爵。」

「はっ……」

「異論は許さんと言ったはずだ。全ては最善を以て選んだ人選だ、近衛師団長の事もアースガルズ公爵令嬢の事もだ。」

「……申し訳、ございません。」

「……貴殿の気持ちもわかる。だが私が何故そうしたか、彼女らの今後の働きで知る事になるだろう。それまでは自重せよ。」

「……御意に。」

「そしてゾイバッハ子爵とその妹だが……」

「ヒィ!!」

「へ、陛下。私は……!」

「……貴殿らの意向は耳にしている。何度問われても答えは変わらぬ。お前達にその機会はない。」

「……!」

 

そしてその場は解散となった。

だが、納得しないガルバルトの抱く感情は、昏い怒りをふつふつと沸き上がらせ、アルムゲルへ憎しみを抱くまでに至っていたのだった。

また、エイゼルクの妹、イザベラはガルバルトに釘を刺されたにも関わらず、アシュレーの恋愛事情を省みる事無く、カルディナへの嫉妬の炎を燃やしていた。

それは自分に都合の良いようにしか考えていない思考である事を知る由もなく、これまで現実をロクに見ず、チヤホヤされて育ったのがイザベラ(22歳)という女なのだ。

それは兄のエイゼルク(24歳)にも言える。

 

(馬鹿な……!我が策は完璧だった筈!どうして失敗したというのだ!?)

 

どうやらこの男、考えが一つも二つも足りないようだ。

 

……そしてその一部始終を見ていたシエスティーナ(プレザーブ)はほくそ笑むのであった。

 

(フフフ、良いわ、良いわよ。この会場からはもちろんだけど、あの妹からは特に負の感情(マイナス思念)を心地いいくらいに感じるわ。)

「ん?シエスティーナ、どうしたんだい?」

「いえ……悪名高いゾイバッハ子爵が陛下に相手にされていないのが……フフ、つい可笑しくて。」

「ああ……あの一族は色々問題が多いからね、陛下も相手をしたくないんだろう。先代はともかく、先々代の祖父の時代以前は……いや、何でもない。」

「そうね、この話はもういいとしまして、ちょっとお花を摘みに……」

「ああ、そうかい?気をつけてね。」

 

そして会場より離れるシエスティーナとケリー。

 

(何処へ行く、プレザーブ。花など摘んでどうするつもりだ?)

(……『花を摘みにいく』はトイレに行く、の隠語よ。そうじゃなく、行動を開始するわよ。下準備も出来たし、ね。)

(フン、ようやくか。)

 

会場の何処かへと姿を消す2人と入れ替わるようにカルディナの元に来たのは、挨拶回りを終えたオルガ達であった。

そしてどこかおかしい雰囲気の原因を尋ね、一連の説明をシエスティーナより伺ったオルガは憤りを感じた。

 

「フレック侯爵とゾイバッハ子爵か……俺らも絡まれたぜ。」

「爵位の高い侯爵はわかるけど、同じ位のゾイバッハ子爵からは───」

 

───平民上がりが。分をわきまえよ!

 

「とか言ってさ。手前ェも同じ子爵だろうに。」

「で、どうしたのですか?」

「軽く流した。他にも露骨に下に見てくる貴族達もいたが、それ以上にゾイバッハ子爵はただのクレーマーだ。クレーマーはクレーマーらしく対応したぜ。」

「……お疲れ様です。」

「全くだぜ。だが、陛下に言われた事って、『期待なんか一切していない』って事だろ?ざまぁねえ。」

「ゾイバッハ子爵……元・侯爵家は元々反骨心が非常に強い家でして。先々代の方は有能だった半面表立った野心家で、露骨にあの様な言い方が良しとする家の方針で有名なのです。陛下が革命を起こした後、当時旧国王派の中核だったゾイバッハ家は降格、更に先代が急死した折、今の先々代の孫にあたるエイゼルクが後を継いだようなのですが……」

「イキリ倒しているのがカッコイイ、って思っているお坊ちゃんだな、ありゃ。品性がねぇ。」

「もしくは今も尚ご存命の先々代のアルバテノン・H・ゾイバッハ様の影響かと……」

「……毒親ならぬ、毒爺かよ。切れねぇのか?」

「ゾイバッハ子爵家の領地が大森林に面しているところですので、無下には出来ないようなのです。」

「……陛下にはご愁傷様とお伝えしてぇな。しかし、お嬢……様は何も言い返さなかったんですか?」

 

未だ壁の花に徹しているカルディナ。

気分がすぐれないのか、ボーっとしているようにも見えるが、気だるそうに答えた。

 

「……だって事実ですもの。私が負けた事は。」

「けどそれは……!」

「事実は訂正しない……どんな事であっても私はそれを受け止めるわ。」

 

「でも一部は……したかったのですが、無駄に集中力を欠きたくなかったので、聞き流していましたわ。」

「集中力……?何か起きてるのか?」

「……ええ。」

 

カルディナの言葉に、集まった一同に緊張が走る。

そして会場内の演奏が終わり、また別の演奏が始まる。

だが問題を抱える者たちには優雅な演奏は耳障りにも聞こえる。

焦り、苛立ち……それらの感情が会場内を密かに支配していく。カルディナや王族に対しての不平不満……負の感情を募らせるにはここはうってつけと言える。

それは先程貴族たちの諍いを仲裁したレクシーズたちもまた同じであった。

 

「まったく、斯様な場にて何を仕出かしてくれるか、フレック侯爵は。」

「フレック侯爵に関しては、まだあの事を引きずっているとは……実力主義が聞いて呆れる。」

「陛下、何かお飲みになりますか?」

「ああ、頼む。飲まねばやってられん。」

「せっかくカルディナが用意してくれたのだ、何か口にせんと申し訳ない。」

「お気持ちは重々ご理解出来ますが、程々にしてくださいませ……先日、飲み過ぎで第一王妃様に怒られたばかりなのすから。」

「わ、わかっている。」

「ええ、それはもう……ではそこの給仕、陛下と公爵に飲み物を。」

「かしこまりました。」

 

声を掛けた給仕が飲み物を用意し、近付いて来た時、異変は起きた。

 

「……う、うおおおおおっ!?」

「ん?」

「ゾンダァアアアァァァーー!!!」

「キャアアアアッ!!!」

「何だ、化け物!?」

「あれは!!」

「ゾンダーだと!?」

 

突如現れたゾンダー人間。

だが、一体だけではない。

 

「ゾンダァァァァァー!!」

「ゾンダァァァーー……!!」

「ゾンダァァーー!!」

「さらに現れた……だと!?」

「全部で四体……!」

「チッ!現れたか!!お前ら、行くぞ!!」

「「「おうっ!!」」」

 

混乱する会場の中、オルガ達は迷わず囲み、誰よりも早く臨戦態勢を取る。

そしてホールの上階にいたレクシーズ達も、現れたゾンダー人間達に驚きつつ、護衛騎士達に包囲するよう指示した直後、後ろから声がした。

 

「お飲み物がご用意出来ました。」

「先程の給仕か?そんな事をしている場合ではない、急いで下がれ!!」

「申し訳ありませんでした。それでは……失礼いたします。」

「!?陛下っ!!」

「な!?」

 

給仕がお辞儀をした直後、誰もが制止出来ない踏み込みの速さでレクシーズへと飛び込む給仕。

その異変をいち早く察知したアルムゲルが、間に割って入り、その身を挺した。

だが、その給仕の手に握られたモノがアルムゲルの額に接してしまい───

 

───バチィッ!!

 

「!?」

「ハァッ!!」

 

まるで拒むかのようにアルムゲルの額とゾンダーメタルが反発し、給仕は驚愕する。

その直後、給仕を射殺す勢いで蹴り飛ばしたのはクリストファー。

壁に激突した衝撃と、深いめり込み具合からその蹴りの強さは計り知れないが、当の給仕はすぐに何事もなかったように立ち上がり、付いた埃を払い落とす。

 

「……失敗。原因不明。」

「何者だ、あやつは……!?」

「大丈夫か、アルムゲル。」

「は……はい。カルディナより受け取ったこの額当て、これがなければ、どうなっていた事か……冷汗が止まりません。」

「となれば、もしやあれは―――」

 

「―――どうなっている、これは。」

「これは……予想外ね。」

 

高圧的な声と共に赤と黄緑の羽根を生やした鳥人間が、いつの間にか給仕の隣に。

更にダンスホールの中央に妖艶な声と共に現れたのは、紅の魔女。

 

「何者だ貴様!陛下の御前である、無礼であ―――!」

 

―――ザンッ!

 

「――黙れ、心弱き者共。」

「あ……ぎゃあああッ!?う、腕が、腕がぁぁあああッ!」

 

鳥人間の侵入者に詰め寄った護衛騎士の腕が、鳥人間の手刀の一振りであっさり斬り落とされ、さらに一蹴され、蹴り飛ばされる。

 

「おのれ!!」

「煩いわね……黙って貰えるかしら?」

 

すぐさま鎮圧を試みる他の護衛騎士も飛び掛かるが、紅の魔女の杖が床を軽く叩いた瞬間、何もない空間から赤いレーザーが向かって来た護衛騎士の右肩と大腿部の真横を射抜き、床に這いつくばらせる。

また他のところではゾンダー人間に斬り掛かった騎士達が、レクシーズに襲い掛かった別の給仕やゾンダー人間達に瞬く間に返り討ちにされ、床に這いつくばらされている。

そして対して興味なさげに一瞥しつつも、紅の魔女は国王レクシーズに呼びかけた。

 

「いいのかしら、国王陛下サマ。私達に手を出さないよう、貴方がちゃんと指示しないと、死人が出ますわよ?私達は、いくら死のうが関係ないけど……いいのかしら?」

「くッ……!皆の者、その場から動くな!!絶対にそ奴らに手を出すな!!」

「よろしい。」

 

レクシーズの一喝により鎮まる会場……

そしてその光景に満足し微笑む紅の魔女は、芝居がかった動きで一歩前に出る。

 

「さて、会場の皆様……初めまして。私達は貴方達の話題の存在……『ゾンダー』。私はその上位種たるゾンダリアン、その四天王が1人、プレザーブ。そして……」

「ふん、名乗るのは趣味ではないが……聞け、心弱き者どもよ。我が名はゾンダリアン・機界四天王が1人、ピッツォ・ケリー。」

「プレザーブに、ピッツォ・ケリー……機界四天王とやらか!」

「それで、そんな貴殿らがここに来て何用……といってもお前達の目的は判っている。」

「あら?王様。私たちの事をご理解なさっていて、このプレザーブ嬉しく思います。」

「心にもない事を……機界昇華であろう。」

「御名答。」

 

やはりかと思う反面、ちらりと周囲を見ると事情を詳しく知らぬ貴族達との温度差がある。

そして何より、今回の突然の奇襲は人数が多い。

ゾンダー人間4体は元より、明らかに臨戦態勢を取る給仕達……4人。

そして機界四天王の2人……総勢10人。

 

「ちくしょう!ゾンダー人間はともかく、あの給仕たちは何なんだ!?」

「団長、気を付けて。おそらくあの給仕達もゾンダー人間だ。」

「何!?」

「戦おうとすると、ゾンダーの気配を感じるんだ。きっとパワーを出そうとすると、素粒子Z0が身体から出るんだと思う。」

「チッ、既に擬態されて潜入されていたって事か。厄介だな……」

 

頬の一部が、ゾンダー人間と同様に鉄で出来た鱗のようになる給仕達。

既に返り討ちに遭った者達を山積みにして、いつでもゾンダー人間化出来るようにゾンダーメタルを持っている時点で相当な猛者であると推測できる。

見た目に反してそのポテンシャルは決して侮ってはならないと同時に、こうも大々的に仕掛けて来た以上、会場全体が人質となった事にオルガや他の団員たちは警戒心を最大にする。

その間にもプレザーブとレクシーズの睨み合いは続く。

 

「……して、この会場にいる全員にゾンダーメタルを使う気か?」

「まさか、そんな気はさらさら御座いませんわ。ゾンダーメタルプラントが出来てさえいれば機界昇華は容易い事です。とはいえ全員にゾンダーメタルは無駄な事。私達の狙いは……フフッ、秘密です。」

「ふざけた事を……!」

「最終的には全員にゾンダー化してもらう事には変わりありませんが……この状況が分からない皆様ではないでしょう?」

「ぐぬぬ……!」

 

この状況───ゾンダー人間による会場制圧は予想外であった。あの紅の魔女───プレザーブの策と思われ、実に巧妙であった。

そして人間はゾンダーにとって、ゾンダー人間生成の為の苗床である筈だが、目の前にいるゾンダリアン───ピッツォ・ケリーは、人間を殺す事に躊躇がまったくないように見えた。

今まで聞いていた情報とは乖離している事にレクシーズは驚きを隠せない。

 

(……せめて、まともな武器さえ手元にあれば。)

 

確かに武器はある。だが式典用の見掛け倒しの武器であり、一般兵士であればいざ知らず、レクシーズ自身が扱うのであれば、一つも二つも足りない。

彼の必殺技『ゴルディオン・ソード』に耐えうる武器は、そうそうなく、普通の武器では太刀打ち出来るかどうか……

 

(だが、カルディナであれば……)

「ああ、一つ言い忘れていましたが、貴方達が頼りとしているカルディナ・ヴァン・アースガルズ公爵令嬢とやらの助力は無駄と考えて下さいませ。」

「!?カルディナに何をした!!」

「……先程私が使った設置型魔法ですが、あれをこの空間いっぱいに展開しています。彼女は今その解除に勤しんでいまして……展開速度に対し、解除速度が拮抗しているところです。」

「何だと!?」

「実に見事……まさか瞬く間に解除しているんですもの。ですが、一定数は下回っていない状態でして……」

 

まさかのカルディナが、プレザーブの策に足止めを食らっていたのだ。

先程からただ黙っているのその証拠であり、沈黙しているカルディナは、実際は言葉を発するのも惜しい程に解除作業に集中しているのだった。

まさかの事態に、事情をよく知る者達から焦りの色が見られる。

 

そんな時である。

 

「……全く、揃いも揃って。雁首揃えて情けない。」

「全くその通り!」

 

声を挙げ、前に出てきたのはフレック侯爵と、ゾイバッハ子爵。

しかも何処から持ち出して来たのか、式典用ではなく実戦に耐えうる実剣を携えて、フレック侯爵はピッツォ・ケリーの前に、ゾイバッハ子爵はプレザーブの前に歩み寄り、対峙する。

 

「貴様ら、いったい何を!?」

「狩る対象が目の前にいるのだ、何を躊躇っている。」

「その通り。それこそ魔獣討伐の基本にして究極!我らがそれを成そうではありませぬか!」

「ガルバルト!!会場の者達が人質のような状況で、何をしようというのか?!」

「無論、ゾンダーとやらを狩るのだ。」

「よせ、ガルバルト!状況をよく見ろ!!」

「奴等の攻撃は各自防ぐがいい、それぐらいは出来よう。そして軟弱者らは黙って見ているがいい!この『無敗のガルバルト』の戦い、照覧せよ!!」

「そしてこのエイゼルク・S・ゾイバッハの戦いも!!」

 

そしてピッツォ・ケリーと対峙するガルバルト、プレザーブとエイゼルクは剣を抜く。

本来は実力ある貴族ならそれぐらいは出来て然るべきだろうが、今そんな事を強要する2人に、ピッツォとプレザーブは呆れる。

 

「……何だこいつら。現状をわかっているのか?」

「さあ?同族を顧みず、自分の武力を示したいってところかしら。だとしたら……フフフっ。」

「何が可笑しい、ゾンダーとやら!!」

「可笑しいわよ、何もわかっていない事が。」

「フッ、その様な余裕を見せるとは……戦いは始まる前より始まっている。隙だらけなお前達とは違ってな───『身体強化(ブーストアップ)』、『魔力増強(マナブースト)』、『武器強化(ウェポンアップ)』!!」

「……強化魔法。」

「ハハハ!!複数の魔法を掛けた我が斬撃に、向かうところ敵無し!!」

 

自身と剣に複数の魔法を重ね掛けしたゾイバッハ子爵。

そしてフレック侯爵も同じく自身と剣に複数の魔法を重ね掛ける。しかもその練度はゾイバッハ子爵よりも高い。

 

「覚悟せよ、ゾンダーとやら。」

「……全く。おい、プレザーブ。この人間、どうしたらいい?」

「そうね……ピッツォ、せっかくだからお相手してあげたら?こっちも遊戯(ダンス)の熱烈なお誘いが来てるし。」

「仕方あるまい……おい、人間。相手をしてや───」

 

「───疾風六連瞬滅斬ッ!!」

 

「───栄光果敢十二連撃ッ!!」

 

話す一瞬の隙を突き、フレック侯爵は六連の斬撃をピッツォ・ケリーに放つ。

同時によそ見をするプレザーブに、ゾイバッハ子爵は十二の斬撃をお見舞いする。

 

「……愚かな。戦いは既に始まっている。」

「愚かな者を斬る時の剣は非常に軽いな。我らを前にして油断する等、お前達は───ぐあっ!?」

「ぬぐっ!?」

 

突然、身体中が焼かれるような熱さに貫かれる2人。

身体中をレーザーが貫き、力の入らない身体が地に伏す。

何が起きたか解らない中、更に衝撃的な

 

「───では、さっさとかかって来い。」

「駄目よ、急かしちゃ。時間をあげるから準備なさいな……ってあら?」

「!?」

「!?!?」

 

そして無事無傷であった。

斬ったはずなのに何事もないゾンダリアン2人に、驚愕するフレック侯爵とゾイバッハ子爵。

そしてそんな2人の様子に首をかしげるゾンダリアンの2人。

 

「……何をしている?早く来ないか。」

「ピッツォ、もしかしてこの2人、私達がよそ見している間に何かしたのかもよ?足元を見て御覧なさいな。」

「……何だこれは?金属の破片か?」

「剣の切れっ端じゃないかしら?もしくは砕けた剣か。」

「……ああ。私の羽根が纏う超高周波振動に触れたか。うかつに触れれば切れるからな。」

「私も自動迎撃が作動しちゃったかしら?不意を突かれた時は自動で鋭角障壁を張るようにしてあるのよ。それに自動迎撃も作動したのかしら、ねぇ……」

 

その言葉が真実であるように、フレック侯爵とゾイバッハ子爵の剣は根元まで折れて……否、切断されていた。

そして体中が射抜かれていた。

雑談とも言える会話の隙を突いた筈だが、完全に防がれ、逆に返り討ちに遭い、武器を破壊(ウエポンブレイク)までされる始末。

そんな2人に戦慄を覚えるフレック侯爵は雄叫びをあげながら立ち上がり、殴り掛かり、その拳を斬り刻まれる。

 

「ガァァアアアアッ!?」

「学習能力がないのか?我が高周波振動は何をも切り裂く。素手でどうにか出来るものではない。そんな無様に地を這うようでは私には追い付く事すら出来んぞ。」

「く、くそ……ゆ、赦さんぞ、ゾンダー!!」

「……フッ、だがその気迫、怒り、憎しみは良し。気に入った……貴様にはコレをくれてやる。」

 

それは触媒結晶を取り入れた、改良型のゾンダーメタル。

禍々しい一つ目の様なゾンダーメタルを近づけられ、フレック侯爵は怯む。

 

「や、やめろ……それは何だ、何をするつもりだ!?」

「心配するな、これは『力』だ。受け入れれば最強の力が手に入る。それに本当に力を向けたいのは私ではなかろう?貴様の本当の目的、失った夢、それを奪った者……今一度思い出してみよ。」

「う……うわああああああ──────っ!?

 

……ゾンダァァァ……!!」

 

額に改良型ゾンダーメタルを付けられて、ゾンダー人間となったフレック侯爵……ガルバルトの身体がみるみる紫色の金属、眼球が人間とも魔獣とも言えない、人外の赤い目に変貌していく様を間近で変わっていく。

紫色の悪魔誕生の瞬間のプロセスをその場にいた全員が見た。

だが身体が再び元のフレック侯爵の姿に戻った、のだが……ゾンダーメタルを額に付け、血走った眼をして狂ったようにフレック侯爵は叫び散らかす。

 

「……フフフ、フハハハハハッ!!!素晴らしい、この高揚感ッ!!この漲る力ッ!!これがゾンダーの力!!実に素晴らしいッ!!この力があれば……アムルゲルゥゥゥーーーー!!!」

「───フレック侯爵ッ!?何を!?」

「お前を……殺すぅ!!お前が死ねば、お前が死ねばァァァーーー!!!」

「フレック侯爵!!」

 

アムルゲルに斬り掛かるフレック侯爵。

その抱く憎しみがアムルゲル近衛師団長に向けられ、先程よりも激しい剣閃が場を支配する。

そしてその攻撃をいなすアムルゲルだが、いつまで保つかは分からない。

 

「フフフ、いい光景じゃない。それじゃ私も……」

「お、おい!お前もこの私にソレを使おうとするのか!?」

「え??貴方に??何で??私は貴方に使わないわよ。」

「……は??」

「だって、貴方に使う価値はないもの。このゾンダーメタルは貴重なの。言ったでしょう、何も判っていないと。貴方がたが戦えば、要らない死者が出る。そのくせ、突飛した才能も実力も、禍々しい負の感情すらない、貴方には使う程の価値が見られないわね。むしろ……」

「え、なに!?」

「貴女の妹さんの方がいいわね。その嫉妬、実にいいわ。」

「なに!?何よそれ!?止めなさい、無礼者!!」

「い~や~よ~。そんな腰の抜けた姿で何を言っているのかしら?それよりも、その心に抱く嫉妬、解放しなさい。」

「!?」

「……カルディナ・ヴァン・アースガルズ公爵令嬢が憎いのでしょう?妬ましいでしょう?大好きな殿下を貴女のモノに出来る力を、私が与えてあげるわ。」

「あ……ああああああ──────ッ!?

 

 

……ゾンダァァァーーーー!!」

 

イザベラが、もう一体のゾンダー人間となった。流動性のある紫の身体が変貌し、下半身が蛇のようになり、文字通りラミアのような身体へとなった。

そして醜い笑みをうかべたイザベラがカルディナを獲物を見定めた蛇の様に凝視する。

 

「ウフフフ……カルディナ・ヴァン・アースガルズ!!ついに私は貴女を殺せる力を、力を得たわ!!私の想いを殿下に届けるため……私が正しき妃となるべく、カルディナ・ヴァン・アースガルズ……死ねぇええええっ!!!」

 

大蛇の様にうねり、周囲に青い炎の玉を幾つも浮かべるイザベラゾンダー。

それらをカルディナに何度も放つ。

 

「やべぇ!!お嬢を守れ!!」

「フフ、させると思って!!」

 

カルディナを守ろうと割って入ろうとしたオルガ達だが、プレザーブがゾンダー人間と、給仕ゾンダー達を間に入らせ、壁にし、道を遮られる。

そして追い討ちにと、迎撃のレーザーをオルガ達に浴びせようとプレザーブは杖を床に突いて──────何も起きない。

 

(───不発、ですって!?)

 

入念に設置したはずの式がまさかの不発だった事にプレザーブは驚愕。

さらにゾンダーで抑え込んでいるオルガ達は、ゾンダーに対し何も起きず。

 

(噓でしょう!?多少の侵食ぐらいは起きるはずなのに……!)

 

まさかの事態に焦るプレザーブだが、イザベラゾンダーの炎弾は着実に棒立ちするカルディナへと直撃し、大爆発を起こす。

 

「あーーはははははっ!!!倒した、倒したわ!!この私が、あのカルディナを!!このイザベラこそがアシュレー様の妃に相応し────!!」

「────うるさいですわよ。」

「ぎゃび!?」

 

突如、強力な衝撃と共に、冗談が度が過ぎるようにその空中の場で冗談が度が過ぎるように勢い良くイザベラゾンダーが回る。

それはいつの間にかイザベラゾンダーの前に現れたカルディナの気の抜けたツッコミのような殴打。しかもカルディナは一切の無傷。

そして今度はカルディナ自身も全身を回転させながら繰り出す鞭のようにしなり、放たれる重い拳打が、イザベラゾンダーを床に平伏させた。

会場の床は衝撃で窪み、イザベラゾンダーが涙目になって「おろろろ……!?」と吐き気を催す程のには効いている。

 

「あ、お嬢の化勁。」

「あれにハマると終わりなんだよな。その場で回されて、床とキッス。」

「ああ、あのコンボは抜けられねぇ。」

 

ゾンダーに対し物理攻撃が有効になっている事態に、プレザーブは直接カルディナを狙い撃とうとして杖を向けた瞬間、弾かれた。

 

「やらせません。」

「ぐッ!?シルフィーネ・V・ブリュンヒルド!?」

 

護衛のシルフィーネが立ちはだかった。

その一瞬の隙に、カルディナは異次元収納(ポケット)より、とあるものを取り出した。

 

「陛下、コレを───受け取って下さい!!」

 

電磁加速で放たれた弾丸の如く投げ放たれたのは、一本の大剣。

それがガルバルトゾンダーの顔面に直撃。あまりにも強烈な威力に、ガルバルトゾンダーは顔面を潰され、大の字に倒れた

そして大剣は跳ね返った勢いでレクシーズの手元に。

 

「よし。」

「ゴホ、ゴホッ……!!あ、あり得ませんわ!貴女はこの私が倒したはず、それなのに───ぐえっ!?ぎゃぁアアアアーーーっ!?」

「だからうるさいですわよ、ゾンダー。それに、あんなチンケな火で──────この(わたくし)を止められると思いまして?」

 

メキメキと音を立てて、足でイザベラゾンダーの身体を床にめり込ませるカルディナ。

そして背中に一対の天使と悪魔の翼が生え、白銀色に光る粒子と共にGとJのパワーを発揮する。

 

「あの力は……!!」

「……フフフ、まさか盤上をひっくり返されるなんてね。やはり貴女が最大の障害という訳ね……カルディナ・ヴァン・アースガルズっ!!」

 

その光景に、ピッツォ・ケリー、プレザーブは生唾を呑んだのだった。

 

《NEXT》

 

 




最近Vチューバーで『魔心サリー』にハマっています。
彼女の斬艦刀愛はマジモンやで!
そしてスパロボはやはり至高。
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