なんかネットでドアパンニキと呼ばれるようになりました   作:先詠む人

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一回上げたやつを本気で書き直した。最新話を望んでた人はすみません。



1話:二度と関わらないと決めていたのに

 

 ゲームを実況するのを動画にする配信者のことをゲーム実況者と基本的に呼ぶ。

 

 Virtual(かりそめ)の体を仮想の空間に乗せ、それを動かしながらゲームや雑談を配信する者たちのことを世間一般ではVtuverと呼ぶ。

 

 では仮初の体を持たず、ゲーム実況者としての身分も捨てたにもかかわらず、ネット上に未だに存在し続けるゴーストのような俺のような存在のことはいったい何と呼べばいいのだろうか。

 

 

 その答えを教えてくれるものは誰もいない。今の俺をネット上で示す記号(タグ)はただ一つ。それは……

 

 

 


 

 

「同じ0と1(データ)上に存在する上にキット実際に販売されているからってまさかの電子獣がそこに召喚されているうえに初手究極体なのは流石に草生えるはこんなん」

 

 欠伸しながら俺はノートパソコンで誰かが喋っている様子と何らかのゲームの音をBGMに垂れ流しながら、笛吹き男の伝説がいまだに残る地名を冠した二次創作小説サイトで作品を漁っていた。様々な作品がある中でたまたま見つけた少し前に放映された長年続いているロボット戦士をデータで再現した世界が舞台となった作品群を原作とした二次小説作品を読んでいると唐突に覚えがありすぎる。だが普通はそこにいる訳がない別作品のキャラクターが出てきて突っ込みを入れてしまう。

 

「まぁ、理屈は通ってるし実際問題はないのかもしれないけどさぁ……」

 

 実際その|橙色の勇気の紋章を背中に冠したキャラクター《きたい……?》のキットはロボット戦士のプラモデルキットを販売している大手玩具企業の関連企業が販売しているプラモデルキットの1シリーズに存在している。また、彼らは0と1のデータ上に存在しているモンスターたちである以上、その0と1のデータで構成されているロボット戦士同士のプラモデルキットを読み込んで戦わせるデータ上に構成された舞台にいても違和感としてはあるが問題はないとしか思えない。さすがに実際に空を飛ぶそれを見たら当事者たちからしたらツッコミどころしかないと思うが。

 実際こんなんってロボット同士の戦いの作品に張りぼてを着た兄ちゃんがロボットですと言って参戦してきて戦っているようなものに近いと思う。

 

「……眠てぇし首擦れて(いて)ぇ……」

 

 高校生の時から長らく使っていることで頭部を保護するためのクッション地が削れてきてプラスチック製のフレーム部分が若干露出してきたヘッドセットで首が擦れて痛くなってきたのを漏らしつつ再び欠伸を漏らす。

 

「……寝てぇんだけど本当にダメなん……?」

 

 本音をそう漏らしながらスマホの画面を見ると時刻は既に日をまたいでいた。今日もバイトが死ぬほど忙しく、朝早くからバイトがあったので家を出ていたし少しでも気を抜いてしまうとそのまま寝てしまいそうではある。だがバイトから疲れて帰ってきたらいきなり言われたとはいえ妹からの頼まれごとだ、そう無碍にするわけにはいかな……いや、別によくね? 事前に公表されていることじゃねーみたいだし。バイトじゃないから金ももらえる訳じゃないし。

 


 

やっぱ寝てもいい? 

 

ガチで眠い

 

 


 

 そうSNSに打ち込んでから机にスマホを放り投げ、横目に見たノートパソコンの画面上に表示されているのは、黒髪の高校生ぐらいの少女の絵がニコニコしながらマシュマロとかいう匿名コミュニケーションツール*1に寄せられたものを捌いている様子。一問一答形式できたそれを高速で回答している様子だった。

 

 若干お高かったバゲットシートみたいな椅子の背もたれに背中を預け、鼻を全力でつまむ。しかし、喉の奥からあふれ出る欠伸は耐えることができず「あふぁぁ……」の言葉とともに小さな子供の握りこぶし程度ならパコっと入れれそうな程大きな口を開けて俺の体は眠気を示した。

 

 ブ‐ブブッ

 

 端末から発生した振動で机が音を立てる。視線をそちらのほうへと動かすとあの事故で画面に斜めにヒビが大きく入った端末が点灯し、先に打ち込んでいたメッセージへの返事とそれに続く要求が表示されていた。

 


 

ダメ

 

準備して

 

 


 

「…………」

 

 無言で、そして死んだ魚のような目でその返事を見る。どうやら女王様(いもうと)は俺が寝るのを許してくれず、そしてなおかつ今からその疲れ切った体に鞭を打って働けというらしい。

 


 

あいよ

 


 

「っと……」

 

 打つ内容を口に出しながら返事を打ち込み、半ば諦めながら首からかけたヘッドセットの有線端子をノートパソコンの脇の部分に差し込んだ。

 パソコンに端子を繋いだことで音声の出力がパソコンのスピーカーからヘッドセットに切り替わり、音が小さく首元から聞こえ出す。

 

「……そんじゃ、死ぬほど眠いし気乗りも一切しねーけどやりますか……」

 

 そうしてキーボードを操作して画面を俺は切り替えた。マシュマロをすべて捌ききったのか少女がただ喋っている様子に移っている配信画面からいろんなゲーム実況者などが使っている通話アプリの画面へと画面が切り替わる。

 画面が切り替わったのを確認してから俺は首にかけていたヘッドセットに手をかけてそれを頭にかぶりなおした。

 

「さぁ、ゲームを始めようか」

 

 そうどこかの引きこもりニート天才ゲーマー兄貴の名言を呟いて気合を入れながら俺は通話アプリの赤く光っているミュートボタンへとマウスカーソルを合わせてその時を待った。

 


 

 

「今日はね~、人気ゲームのP〇BGをやろうと思ってるんだけどこれ私一人じゃ絶対まともに戦えないんだよね」

 

 画面の中に映るネコミミをつけた少女はそう言ってケラケラと笑う。

 

 〇:お? 視聴者参加型か? 

 〇:お? 

 〇:参加型ならやりたいな!! 

 白雪氷雨:それなら今から突発コラボする? 

 

 そんな視聴者たちの声を見て少し満足したかのように少女はどや顔を見せてから

 

「フフフ視聴者参加型の企画だと思った? 残ね~ん!! もう助っ人は呼んであるのです。あとユキちゃんごめんね。それはまた今度で」

 

 少女から視聴者たちに告げられたその言葉を聞き、コメント欄は激しくある一人の男の通り名を挙げ始めた。

 

 〇:イヅナちゃんが呼ぶ助っ人ってことはまさかドアパンニキ? 

 〇:ドアパンニキクルー? 

 〇:ユキちゃん以外ならイヅナちゃんが誘えるのってドアパンニキ視界なくね? 

 〇:ドアパンニキ今日朝からバイトちゃうん? 

 〇:ドアパンニキって誰よ? 

 

「お? みんな察しがいいね~そんじゃ仕事だよお兄ちゃん!! 召喚(サモン)!!」

 

 少女がそう呼びかけると同時に通話アプリのミュートが解除される音とともに質のいいマイクを使っていないからか少しくぐもってはいるが、若いと思われる男の声が面倒くさそうな思いを声に乗せるかのように

 

「うぃどーも。みんな大嫌いドアパンニキですよーい…………死ぬほど眠いから寝ていい?」

 

「ダメに決まってるでしょ!?」

 

 そんな吐き捨てるかのようなセリフとともに美少女しか映っていなかった画面の右下部、少女の横にNO IMAGE(手書き)と乱雑に書かれた人型シルエットの立ち絵が追加された。

 

 〇:ドアパンニキキター!! 

 〇:ドアパンニキ来たんならイヅナちゃん超介護企画ってことか

 〇:だからドアパンニキって誰だよ!! 

 〇:お前にわかか? ドアパンニキイヅナちゃんのウィキのるぐらい有名だぞ? 

 アイゼン イェーガー/:ドアパンニキ降臨と聞いて

 〇:ドアパンニキ今日も変な縛りプレイすんの? 

 〇:ドアパンニキ来たらイヅナちゃん可愛くなるから期待

 〇:ドアパンニキめっちゃ眠そうやんwwww

 〇:お労しや兄上……

 

 


 

 俺が軽く名乗っただけだというのに配信画面のコメント欄は加速し、すさまじい勢いで流れ出す。

 それは一種の炎上のようなありさまであり、昔から俺が持っていた女性のVtuverの男の俺が声を載せていいのかという疑問を再燃させるのに時間はかからなかった。だが、それを音に変えると途端に怒り出す者たちが一定以上いるのもまた事実であるため、俺はそれを飲み込み、黙ったままヘッドセットのマイクの位置を無意識のうちに調節する。

 

 画面の向こう、いやこの俺が置いている机の正面の壁の向こうにいる妹は今も必死にその加速しているコメント欄を減速させようとしている。それを横目に俺はヘッドセットの途中にあるミュートスイッチがONになっているかを確認してから誰に聞かせるわけでもなく

 

「この配信の世界(せかい)に二度と関わんねーって決めてたのになんでこんなことやってんだろうな俺……」

 

 そう呟いた。呟きながら脳裏に過るのはスーツを着てかつての仲間であり親友2人と3人で撮影した動画の内容。あの時、俺は確かに二度と配信にかかわらないという意思を持って撮影に臨んでいた。実際かかわる気もなかったし、そのスタンスを変えたつもりも正直言ってない。しかしこれまでやってきたことから考えるにその理論には一切の説得力がないのもまた事実だった。

 

 画面を見れば簡易的な3Dの体を用いた配信を行っていた画面内のキャラが必死にコメント欄を抑えるためにこちらへと助けを求めていた。

 

「嫌だよほんと……」

 

 身振り手振りでこっちへと画面の中から助けを求めているということはおそらくこの目の前の壁の向こうで妹も実際に身振り手振りしながらこちらへと助けを求めているのだろう。

 

「はぁ……」

 

 ため息を一つ。こらえきれないようにこぼしながら目を閉じながら視線を下におろす。

 

「…………っ」

 

 下ろした視線を戻した際にノートパソコンの画面の向こうに過ぎ去った思い出を忘れないようにと壁に貼り付けたボードに留まっている写真の何枚かあるうちの一枚が目につき唇をかみしめた。

 

 ギュッと無意識のうちにミュートスイッチを握り続けていた右手に力が入る。

 目に入ったのはL版のサイズの大きさのよくあるような写真の一部。ただし、目に入るのはそれを3/4でも無理やりしたかのようにひび割れた跡が右端にかかっている。

 写真に写っているのはどこかの高校の学生服だろうか、ブレザーを着た男子が3人、肩を組んで笑顔で写っていた。その背後には第〇回●●高校学生祭と書かれたボードが上に掲げられている。

 

 いや、写っているのは実は4人なのかもしれない。なぜなら一番右端にいる男子の肩にもう一人分の手が写っていた。また、写真自体も無理やり右端部分を下に折り込んでいるのか右側が若干浮いていた。また、上の部分には写真を千切ろうとしたかのようなヨレも付いている。まるで写真に写っている過去を捨てるために一度ちぎろうとして、しかし千切ることがどうしてもできなくてそれを無理やり折りたたんで見えないようにした写真。そうとでも言いたそうな写真だった。

 

 そして額に大きな傷跡があるなしの違いがあるとはいえ、操作しなかったことで電源が一度落ちたノートパソコンの画面に反射しているその写真を苦々しげに見ているその顔は、写真の左から2番目に写っている少年の顔を深く絶望させたかのような顔だった。

*1
SNS上にて匿名で質問者に質問が送れるツール。ただ、クソマロとも呼ばれる糞みたいな内容も送れるので匿名性の一長一短性がよく出ているツールである




最近、このサイトで知り合った友人から頭ゴルシと言われたんですよねぇ……(死ぬほど不本意)

1話を前から言ってた通り本気で書き直してました。スランプと職場異動による激しい疲労で最新話は今のところ書けてませんし書く気力も残ってません。この1話も数か月かけてちょこちょこ書き直してましたし。久々の連休なので徹夜気味に仕上げてますけど。

あれやね。精神的に健康じゃないと創作活動ってやっぱりしんどいね……

因みに最初にさらっと主人公が触れていたのはGBNにウォーグレイモンが出てきたということです。
なお、このネタ()()ちゃんと()()()()()()()でぶち込んだやつなので盗作とかじゃねーからな。(最近上記知り合いとのグループに参加してるやつが盗作被害にあった上に盗作作者は運営に対応される前に知り合いのことを粘着者として報復通報して逃げたので保険をかけておく)
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