なんかネットでドアパンニキと呼ばれるようになりました 作:先詠む人
あの黒歴史を投稿してから何年経った?
けど、あのアニメ調のPVものすごくええんじゃ……
あの化け物同士の争いとしか言いようがない対決が流れた配信から数日たった。
「…………」
それは漂白されたかのようなほど白い部屋にあるベッドの上で微動だにせず、呼吸器をつけられた状態で1年前にもそうなったように眠っている。
そのせいか知らないが、その顔色は不健康なほど青白くなりつつあった。
「いい加減目を覚ましてよお兄ちゃん」
あの日、戦闘終了後に大きな音を立てて椅子とかを巻き込むように倒れて以降一切目を覚まさない様子に至るまで頑張ってしまったお兄ちゃんにイライラすると同時にそうさせる原因を作ってしまった自分自身が嫌になる。
通話越しに大音量で聞こえたその音で事態を粗方悟り、慌てて配信もそのままで部屋から飛び出した私が見たのは鼻から出た血で血まみれになりながらおもちゃをのせていたはずの倒れた棚の下敷きになって倒れ伏したお兄ちゃんの姿。それを見てお兄ちゃんの部屋で混乱して泣き叫ぶ私をなだめながらお父さんが呼んだ救急車によって家からはそれなりに距離があるが、比較的近くにある総合病院にお母さんと一緒に緊急搬送されていくのを見送り、そのまま私はお父さんと一緒に車で救急車を追いかけた。
そしてお兄ちゃんを診た医師から告げられたのは脳から出血しそれが鼻から出ていたということや眼圧がまた異常な数値を叩きだしているということと、この昏睡状態がいつ治るかと分からないという決まってしまった残酷な事実だった。
今日は学校でその帰りに病院に寄る。
あれから配信なんかする気分に到底なれなくて、ずっとお休みをもらっている。
「はぁ……お母さんもお母さんだよ。これ持ってけなんて普通言う?」
今日は帰りに病院によると告げたときに「なら持って行って病室の横にある金庫に入れて置いて来い」と渡されたそれを見つつ悪態をつきたくなる。
ベッドの横でそれをもてあそびながら眠っている顔を見ると以前頭部が割れて、それを治すために縫われた痕が未だにこんもりとしていた。良い腕の医者ならその痕が目立って残らないように縫ったりできるらしいのだが、お兄ちゃんはその腕のいい医者が来るのを待つこともいい医者を選ぶような余裕も一切ない状態だったせいで痕が大きく残ってしまったのだった。
その痛々しい痕を見て心が締め付けられるような感覚を覚えていると
<~~♪>
「あ、やば」
自分自身のものじゃないせいであんまりいじらなかったからマナーモードにするのを忘れていたお兄ちゃんのスマホが突然音を立てて着信を告げる。
電話をかけてきた相手は見覚えのない名前。しかしそれを深く気にする暇などなく。慌てるあまり指が滑って操作が間に合わず、ほとんど爆音でエネルギッシュなオーマイゴシゴシお兄さんの声が病室に流れたのと同時にそれは起きた。
「うっ……」
それまでピクリとも動かなかったお兄ちゃんの指がかすかに動くのと同時にその口から苦悶の声が漏れる。
「お兄ちゃん!?」
どうにか着信を切った瞬間それに気づいて慌てて駆け寄ると
「は……る……?」
薄く瞼を開けてお兄ちゃんは私に問いかけてきた。
「お兄ちゃん……」
目を覚ましたお兄ちゃんに私は泣きつくことしかできなかった。
「なんでまだ後遺症残ってる可能性高いから絶対に激しいことしないで安静にしてくださいって前の検診の時に言ったのに脳に負担かかるようなことしてるんですかねぇ?」
「はぁ……」
目を覚ましてみるとハルに泣きつかれ、慌てて駆け付けた看護師に驚かれ、昔昏睡してた時にも俺を担当してた医師に滅茶苦茶怒られた。
今はそのまま車いすに乗せられて診療室に連れてかれて診察を受けている。
「とにかく!! 今回はちゃんと指示に従って絶対に安静にしてもらいますからね!! 数日おきの検診しばらくはしますから必ず来てください!!」
「はい……って……え? 数日おきって前よか頻度多くないですか?」
俺が前よりもかなり高頻度になってしまった検診について突っ込むと医師は呆れたような顔をしながら俺の顔の一点を指さし告げた。
「だって黒須さん、あなたの瞳はちゃんと見えてますか?」
「?」
問いかけられた言葉の意味がよくわからず首をかしげる。その時、鏡を見せられて俺はその問いの意味を知った。
「は? なにこれ」
俺の目は元々親の遺伝もあってか虹彩がちょっと濃い茶色だった。だが、その鏡に映る俺の左の瞳はどこか赤っぽい茶色になっていた。まるで血が混ざったようなその色に俺は困惑を隠せなかったのだ。
「この後視力検査しますけど、失明してなければいいと思った方がいいかもしれないですね。そのような事例は見たことないんで何とも言えないのですが。検診の頻度が多いと思うのならばその眼のせいだと思ってください」
そう言って医師はそのまま俺を診察室から追い出すかのように看護師に指示を出した。看護師はそれに従って俺を視力検査するといって検査機がある方へと誘導する。
俺はどこか納得できないまま指示に従って視力検査をし、むしろ前よりも両眼共に視力が跳ね上がってるという看護師も首をかしげるという結果だった。
目を覚ましてから数日ほどたち、俺は退院して帰宅することになった。医師から滅茶苦茶釘を刺され、それを苦笑いで見る看護師さんを横目に荷物をもって入口の方へと歩く。
「学校帰りのハルをこっちに迎えに寄越すんなら普通に母さんが車寄越してくれればいいのに変なところで謎だよな母さんの判断」
「そうだよねぇ~」
それもわざわざ病院とは家をはさんで真逆の位置にある学校帰りにそのままの足で病院に来たハルを連れてだ。
悪態をつきながら入り口横の方にあるバス停で家の近所の停留所までのバスが来る時間を確認する。なんというか、結構この時間だと来るバスはそんなに多くないらしく家に帰るのは結構遅めの時間になりそうだった。
「これ、絶対母さんミスってる。家帰るの八時ぐらいになりそうだぞ……」
「え? ホント? ……うわぁ……次のバス来るの20分後ってバス乗るよりタクシー使った方が早いじゃん」
俺が零した愚痴にハルも乗り、タクシーでも乗ろうかと考えるだけ考えるが生憎と我が母は「タクシーに乗って帰ってくるなよ。早く帰ってきたら怒るからな」とハルに意味の分からない釘を刺しまくっていたらしくため息を吐くしかできなかった。
「あ、そうだ。お兄ちゃんこれ知ってた?」
日が沈み始めて若干寒くなってきたバス停の中でバスを待っていると突然ハルがそう言いながら操作していたスマホの画面を見せてきた。
「これってなんだよ…………どれどれ。『クジゴジの神田ついに解雇。チート使用や契約時の条件違反などが原因か』ってなんだこれ」
見せてきた画面はアフィで稼ぐまとめサイトの中でもVを中心に扱っているサイトで、クジゴジのアカウントが通告したある所属タレントの解雇処分の通知から始まるページだった。
「あ、知らなかったんだ。神田さんこないだの配信で運営の人に使っていたコードがチートというか、クラックに当たることがバレてそれで騒ぎになったんだよね」
「あぁ、あの問題やっと対応したんか。つか、チートじゃなくてクラックって…………まぁそうなるか。データの不正改ざんだからハックじゃなくてクラックか。*1」
「その上で契約時に何か求められていたことに対して嘘をついていたらしくてそれもあって契約違反による解雇処分ってなったみたい」
「ふーん……ま、あんだけやらかしてたら妥当だろ」
俺はそう言ってスマホを返す。その時、ちょうどバスがこちらへと入ってくるのが見えた。
「とりあえず、バス乗ろう。つか、はよ帰りたい」
欠伸しながら俺が言うとハルは
「そうだね」
そう続けて二人並んでバスへ乗るために椅子から立ち上がった。
カーテンを閉め切って暗い部屋の中、男は頭を掻きむしっていた。
「なぜだなぜだなぜだ」
思い返すのは数時間前、あの配信の後で自分を担当していたマネージャー経由で呼び出されたクジゴジの本社にてマネージャーの上司と名乗る男から伝えられた通知。
『四宮修哉さん。貴方を本日付で解雇します』
『なぜだ! 俺はあんたらに散々貢献し続けてきただろうが!! そりゃ確かに今大炎上してるがそれはどっかで収まることだろうが! なんで俺が解雇されなきゃいけない! 筋が通らねぇ!!』
突然の通知に怒鳴りつける。
それまでずっと会社に貢献し続けてきて、しかも会社の意向でたまにやりたくもないゲームもしてきた。
それなのに、たった一回クソゲームの運営にクラッカー認定されたせいでゲームのアカウントもマッチ後即BANされて大炎上したぐらいで解雇通知。納得できるわけがなかった。
『わからないというなら言いましょうか。私たちは貴方に、いやここではごまかす意味はないですね。もうはっきりとこういいましょうか。私たちクジゴジはイリアスのアカウントへ所属していた
『ッ……』
そう言われて息をのんだ。確かに送られてきていたメールの文面にはそう書いてあったし、俺はその未読メールを他の奴らが見ることないように自分の手元で握りつぶして隠した。
そして『俺がクロノスだ』と名乗ってメールに返信し、そして面接でボロを出さずこの今の立場を手に入れたのだ。この
『あなたは気づいていなかったのかもしれませんが、私たちは貴方のことを採用したときはともかく貴方が初配信したぐらいの頃から疑ってかかってました』
『な!?』
『私たちが貴方を採用した時点で用済みと判断してイリアスのことを追わなくなっているとでも思っていたんですか? あのグループが最後にアップロードした動画で彼らは語っていました。『クロノスは事故に遭って
俺を追い詰めるかのように目の前の男は淡々と事実を並べていく。
『故に私たちとしては貴方が本当にクロノスなのかということに行きついたわけです。ただし、採用したのは変わりないので本当にそうじゃないのかという確実な証拠が出てくるまでは様子を見ることにしました』
『しかし、貴方はゲームプレイスキルではクロノスに匹敵するものを持っていたせいでボロを出すことはなかった。しかし、昨日の配信。あれで確証が出ました』
そう言って目の前の男は2台のパソコンの画面を俺に向けた。片方はこの間の俺のあの案件配信の画面。そしてもう片方は……
『それは……』
『ええ。『一度でもネットの海に載ってしまったものは決して消えることはない。それに気をつけれないなら個人情報につながる情報を含めて何もかもをこの海に流すべきじゃない』これはクロノス氏が一度ゼウスのせいで大炎上しかけたり個人情報が洩れかけた際にぼやくように言っていた言葉でしたね。結局氏の言う言葉のとおり気を付けていたのにただ一人のせいで全員が特定されかけましたが。そしてこれはそうなりかけたほど燃えた原因の動画です』
覚えがあるなんてもんじゃない。そこに映っていたのはクロノスが、黒須が操作している画面だが死ぬほど悪態をついている俺の声が入っている配信だった。
『えぇ。えぇ。では、これと比べて再生しましょうか。まぁ、しなくても結果は見えているのですがね』
そう言って目の前の男は両方の動画を同時に再生した。スピーカーから聞こえてくるのは過去の俺の声。
「『ぁあん! チーター早く死ねよ!! クソが!』おいバカゼウス!! お前前に出すぎだ!!」
それは全く何もかもが重なって聞こえた。
嘘を積み重ねた結果が目の前に迫ってきていた。それは適当な器に大量に込められた爆発寸前の爆弾だった。
そしてそれが起爆していた。
『私たちクジゴジという看板を背負って行った企業案件にもかかわらずクラック行為。案件先の企業様からも苦情が来ましたし、2ndGeneration様からもあの後問い合わせが来ました』
『それらを積み重ねて行った判断が先に告げた結論です。我々としては賠償も請求させていただくつもりでいます。…………四宮さん?』
『……もういい。どうでもいい』
俺はそれ以上何も聞きたくなかった。机を蹴り飛ばし、俺を止める静止の声も無視して部屋を出た。
部屋から出てきて部屋に戻るよう俺を静止してくるマネージャー
そしてスマートフォンの電源を落としタクシーでそのまま家へと帰った。
家に帰り、頭を掻きむしりながら何を間違えたのか考える。自分自身の前に闇しか見えなかった。
マネージャーを殴り飛ばしたことか?
違う。俺に従わないあいつが悪い。そもそも解雇された時点で赤の他人だ。
あのゲームでクラックしたことか?
違う。第一あれはデバッグテストやった友人が見つけて広めてるやつを友人だからってことで広告をする代わりにタダで聞きだしたコマンドだから俺が責められる筋はない。そもそもクラックじゃない。
なら何が違う。俺は一体何を間違えた。
考える。考える。考えて考え抜いてそして行き着いた。
「なんだ簡単なことじゃないか」
そう言いながら棚から引っ張り出すのは
鞘に納められたそれを鞘から引き出し、その腹に自らを写す。
「
鋼で鍛えられて反射するその腹には血走った眼で、そして歪んだ顔で笑う俺が映し出されている。
言葉を音にせず口だけ動かして零す。そして逆恨みの極致とでもいうべき狂気が溢れ出た。
ちょっと聞きたいんですが、戦闘描写は
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濃い方がいい
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薄い方がいい
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匙加減は任せた