なんかネットでドアパンニキと呼ばれるようになりました 作:先詠む人
[壁]д・)Ξスッ[最新話]
[壁])≡サッ
[壁]д・)<オコラナイデネ>
「疲れた……」
どうにかこうにか、OBSとかそういった配信を開始するにあたって必要な準備を設定のレクチャー込みで済ませた俺はそのまま部屋の端の方へと移動し、頭を抱えそう零した。
精神的な疲れにより淀んだ目で見る先にはプライベート設定でテスト配信を開始した茅野の後ろ姿が見えている。
「あいつホントよくV始めようと思ったな…」
茅野の機械オンチっぷりはかなりひどいものだった。設定を開こうとしてゲーミングPCの電源を落としたり、ゲームランチャーを起動しようとして関係ないアプリを起動したりなど大惨事だ。
最終的に俺が殆どの設定を目の前で実演しながら教え、それを理解したのか確認しつつ何段階かのステップを踏んでようやく基本的な配信に纏わる関連のレクチャーを終えた。
「というよりも、その友達に教えてもらえばいいじゃねぇかよ。」
テスト配信をしているとはいえ、俺の声が入ってはいけないと小さい声で呟く。
何らかの原因で配信の設定を途中で変えているとか、保存されたアーカイブの設定を間違えて非公開から公開に変えてしまった場合に備えてのことだった。
「ん……多分大丈夫かな。」
そういって茅野は操作してブラウザを切った。
「終わったか?配信きり忘れてるとか、その辺も併せて大丈夫か?」
それを見て声をかける。
一概に全員がそうしたことあるとか言うつもりはないが、配信を切り忘れたせいで炎上した人とかそういった人はかなりの数いる。
特に女性の配信者は配信を切り忘れた結果、当時付き合ってたパートナーの声が入ってしまい大炎上。特定厨がそれに便乗して大騒ぎしてIPハックなどをした結果、住所を含めてそれらすべてが掲示板に掲示されてしまった結果警察沙汰になるという大惨事がニュースになったことなどあるぐらいだ。
俺が個人情報の保護を口酸っぱく言っていたのはこれが原因だ。当時、中学生だった俺はそのニュースを連日見てその危険性を何となくレベルとはいえ理解していた。
今でこそ成人年齢の引き下げにより成人という扱いの俺たちは、当時は完璧に未成年。
俺たちがやらかしたことの責任は全て親に被さって多大なる迷惑をかけることになる。
ネットの海には悪意を持つ人間なんてざらにいる。そういった人間は自分の万能感に酔うためなのか、それともゆがんだ正義感によっているのか知らないが、その行為が如何に人に迷惑をかけるを考えずに人がかぶっているベールを暴いて晒しだす。
そのベールが逆に暴かれそうになったら大騒ぎして面倒くさいことを起こす癖にだ。
イリアスの活動を始めてからも俺はそう言った人間の汚い一面を何度も見てきた。ネットという海に触る以上ある種仕方ないことではあるが。
正しさなんて人それぞれ……そう言ってしまえばそれで終わってしまうことだけど。だからって守るべき一線は守るべきだって俺は思い続けていた。
人の悪意が作り出す渦に巻き込まれないためにも。
「大丈夫。ちゃんとマイクもオフにしたし、配信も切った。」
「それならいいけど……なら、俺は帰るぞ。ここでできる頼まれごとは8割がた終わった。」
そういって立ち上がる。そんな俺を見て茅野は
「え……何かお礼させてほしい。」
そういって立ち上がった俺の手首を握った。
「えぇ……」
嫌そうな顔になるのをどうにか我慢しながら茅野を見る。
いつもは少しぽやっとした感じの茅野はどこか決意を固めたような顔をして俺を見ていた。
「……」
少しばかり考える。お礼をしてもらえるようなことなんざ正直なところなにもできてないと思う。
言うなれば俺がしたのは配信者としてスタートアップするときの手伝いぐらいで金もらうようなことでもないし、かといってその代わりに何かをもらうにしてもほぼ他人の女性から何をもらえというのか。
世の中の物事は全てgive&takeだとしてもこっちがもらうものが多くなりすぎる気しかしない。それに、何かを受け取ったことが原因で今後それを餌に関わろうとして来られても困る。
「……ダメ?」
そんな風に思考の海に浸る俺を見て茅野は小首をかしげながら再度尋ねてきた。
「…………だぁ……」
頭をガシガシと掻きながら言葉をこぼす。
結局俺は少しばかり時代錯誤だった親族からの教育の影響もあるのだろうが、困っている女性には弱いのだ。
「歌」
そう一言だけ零す。
「え?」
「俺がネットから馬鹿にされている原因の俺の歌唱力。お前から見て何がおかしいのか教えてくれよ。」
困惑した表情を見せた茅野にそう続けて答えると茅野はどこか安心した様子で顔をほころばせた。
「いいよ。あの問題になった曲を聴いて答えるのでもいいけどどうするの?」
そういって茅野はもう一回ブラウザを立ち上げようとするが、それを俺はハンドサインで止めた。
「いや、あれはあの一回しか録れてない。言うなれば仮歌みたいなもんだったからリズムも何も取れてないやつなんだよ。」
思い返すのはあの日の会話。
『本家録ったはいいけど、何か面白い
その一言が全ての始まりだった。
そっから急いで俺たちの活動記録を思い返しながら歌詞を割り当て、大量に思いついたそれ等の歌詞をブラッシュアップし終わったのは夜も遅い時間。
そろそろ未成年なら帰らないと補導されかねない時間帯だった。
『とりあえず帰る前に一回仮で一発歌ったの録音しね?』
『なら、用意するわ。』
そういって俺は昔使っていたPC内にデフォで入っていた録音ソフトを起動した。
そして録音したのがあの保存されていたパスレコだった。
そのあと、自分でも聞いて「これはリズム取れてないから歌詞当てなおしだわ」となったので相談したのがあの日。
俺があの糞ボケにブチギれて胸倉掴んで喧嘩となり、その帰りに殺されかけたあの日だった。
「といっても思い出は十二分に詰まってたけど。」
そう漏らすように零し、
「だから、オケさえあるのならば新規で歌うよ。」
俺はそう告げた。
「なら……あ」
俺の言葉を聞いて茅野はフォルダに保存されているファイルをざっと洗い出していたが、あることに気づき言葉を漏らした。
「サマータイムレコードのオケ……まだ入れてない。ロスタイムメモリーならあるけど……どう?」
「ならそれでもいいよ。カゲプロの曲なら俺ある程度の曲は歌えるし。」
幸いというべきか、サマータイムレコードのようにロスタイムレコードも男性ヴォーカルの公式カバーとでもいうべきものが出ている。
あのアニメが好きだった俺はバイト代で買ったディスクについていたそれを何度も聞いていたのでそれをなぞればどうにかできると思っていた。
……思っていたんだ。
「えっと……厳しいこと言ってもいい?」
オケが終わり、歌い終わった俺に茅野は言った。
「黒須君って騒がれてたあれみたいに凄い音痴……ってわけじゃないけど、上手いってわけじゃないよね」
と。
「……知ってるよ」
そう言葉をこぼす。
昔誰だったか忘れたけど、そういわれたことがあった。だからこそ俺は自分自身が歌がうまいと自称したことはない。歌うのはすきだということはあっても。
「それに、その歌い方。……あんまり悪いことは言わないけど、誰かの歌い方を真似てるでしょ?」
そして茅野は最後に
「あなたのその誰かをまねる歌い方はあなた自身にとって成長もできないし、ダメだと思う。」
そっからどうしていたのか何をしたのか一切覚えてない。
気づいたら、家方面へと向かうバスの中だった。
「……はぁ……」
わかってはいた。自分自身の歌い方が誰かをまねるということは”己自身の歌い方がない”ということだと。
歌い手を含めて歌で飯を食っている人たちからしたら自分自身の歌なんか聞く価値もない糞みたいな歌だって。
そんなことを考えながら俯いていると知らず知らずのうちに握りしめていたスマホがブルっと何回か震える。
「わかっていたけど……やっぱ…………つれぇな……」
自嘲するかのようにそう零し、スマホの画面を見た。
「うそ……だろ……」
そして映し出されていたそれを見て固まった。
「なん…で……」
俺個人用のSNSのアカウントにDMが来たというその通知は
『だからまた、貴方の歌を聞かせてください』
楪……じゃない
ご無沙汰しております。
この一年半、何をしてたかといいますとこの小説を書くモチベが死んでおりました。
なので新作書いてたり渋谷で幽霊シバいてたり、いろんな時代でサル捕まえたり、巨人(not ARMORED CORE)操作したり、種子島から世界を救ったりしたりしてました。
そして相変わらず真っ黒に近いグレー企業で死にかけてます。
読者の皆さま方は一応エタる気はないのでまた気長に更新をお待ちくださいませ。
某サイトみたいに流れるコメントのままで
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