なんかネットでドアパンニキと呼ばれるようになりました   作:先詠む人

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因みに2ndGを大手ミュージックレーベルの傘下って設定にしたのはそうした方が歌ってみた動画の曲の許諾取りやすいんじゃないかなって思ったからです(とはいってもそのモデルがANIPL〇Xとかだから歌うのはどうしてもアニソンになる)。


5話:過去はいつまでも追ってくる

「…先ほどの青年はどうでした?」

 

 私が入室したときと比べて少しだけ朱を取り戻しつつも、とても申し訳なさそうにぺこりと一礼してから退室していった青年のことを思い出しているとあの青年の妹のマネージャーをしている部下にそう声を掛けられた。

 

「きちんと自分がしでかしたことを理解したうえで、ちゃんと礼儀をわきまえていた。それに…」

 

そう言って彼と話していた時の態度を思い出す。

 

『この度は御社に多大なるご迷惑をおかけして誠に申し訳ございませんでした!!』

 

 まるで教科書の例示のように腰を曲げた状態で立ち上がって最初に謝罪。恐らく自分のせいで妹が大炎上して、うちにも大きな迷惑をかけていると思っていたのだろう。実際の所はその逆で火消しをする必要もなく、そこまで炎上していなかったのだが。

 そのことを説明すると彼は少しばかりほっとした様子ではいたが、そう言うわけにもいかないとすぐ横に置いていたトートバッグから少しばかり大きな箱を取り出し

 

『そうだとしてもご迷惑をおかけしたのでそこまで大したものというわけではないのですが、こちらを…』

 

 と、机の上に置き、私は部下に指示して受け取ったそれを持って行かせた。

 

 そうして少々ばかり話して分かったのだが今回の件の原因は純粋に妹さんが配信者として活動していることもその時配信していることを知らなかったせいで何か変なことをしていると思った彼と、親がいないのと彼がアルバイトで家に帰るのが遅いからといつもと違ってヘッドセットに音源を移した状態で配信中の看板を部屋の扉にかけずに大音量で配信を始めてしまった妹さんの両方が悪いことが分かった。

 一応今日彼が来る前にマネージャーの方から事情を聴くように指示していたため、その時に確認した内容とも合致していることから恐らく間違いはないだろう。

 彼本人としては今後こういったことが起こらないように妹の部屋に極力入らないようにするほか、妹さんのアカウントを登録することで配信中かどうかを確認できるようにし、配信中の場合極力自分の部屋に近づかないようにすることで対応できるようにすることを挙げていた。だが、妹さんの意見としては配信中の看板がかかっているときに近寄らないぐらいでいいとのことなのでそれを説明したうえで当事者同士で話し合うよう説明し、家に帰るように促した。

 

 そうして部下の一人を彼の見送りにあてがい、私の仕事の続きをしようとしていたのだが戻ってきた部下の様子が少しおかしい。何かに気付いたのだが、どこかで引っかかっているかのような感じが見受けられた。

 

「どうした。彼に何かあったのか?」

 

 私がそう尋ねると、部下は首をかしげながら

 

「先ほど見送った彼って新しいスカウトされた人ですか?」

 

とたずねてきたので

 

「いや、違う。彼はうちのライバーの身内で謝罪しに来ていただけだが……それがどうかしたのか?」

 

そう尋ね返すと

 

「いや、実は彼の声どこかで聞いた覚えがあるんですよね。どこで聞いたんでしょうか…?」

 

 そう言ってこの部署が始動したときに集めた歌ってみたやゲーム実況者などの配信者のリストを確認し始めた。この部下は部署開設初期のころの所属ライバーのスカウトを担当していた関係で彼があの青年の何に引っかかったのか気になったが、私も私の仕事をしなくてはならないためそのまま立ち去ろうとした。だが

 

「あ、これだ!!」

 

 そんな声が後ろから聞こえてきたため振り返ると、いろんなゲーム実況者グループや、ニコ〇コ動画に登録している実況者たちの情報を纏めた書類をはさんだバインダーを開いており、私にそのページを見せながら

 

「多分このグループに所属していた人ですよ!!」

 

 そう言って見せてきた書類の表題には<イリアス>と書かれ、そのグループに所属していたゼウス、クロノス、ガイア、カオスと言った4人の名前が載っていた。

 

 

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 おっきなビルから家に帰る途中でふと思い立って高校生の時に行きつけていたゲーセンに足を運んだのだが、まさかの閉店していた。

 

「マジかぁ……」

 

 ショックを隠せず、完全に降りたシャッターの前で抜糸から1年ほど経つのに未だに手術跡が残る頭をがりがり掻きながら突っ立っていると

 

「お前…黒須か?」

 

 後ろからそう声を掛けられ、振り返ると

 

「大地じゃん、お久。」

 

 髪の色こそ黒から金に染めているが、高校卒業前、あの大げんかの日に会って以降、全く音沙汰もなかった同級生がいた。

 

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『はい、どうもイリアスのガイアです。』

 

『カオスです。』

 

 真っ黒の長方形を等しく4分割した長方形の右二つが代わる代わる点灯して、男というよりかはかなり若め、少年の声が流れる。

 動画のタイトル欄の所には「大変申し訳ないが、解散します」と簡潔に書かれていた。

 

『いつも自分らの動画を見てくれてありがとうございます。』

 

『残念ながら今回は更新というわけじゃなくて、結構残念なお知らせというか……』

 

『ガイア、こう言うのはうじうじというんじゃなくて、スパッと言った方が良い。俺が言う。』

 

『……すまん、カオス任せた。』

 

『ここからは俺カオスが説明します。動画のタイトルの通り、俺たちイリアスは解散します。事情はちょっと前にTwitterでゼウスが思いっきり大炎上した件を知ってる人なら何となく想像つくと思うけど、その流れでアイツ特定されて俺たちが通っている学校がバレました。』

 

『俺たち個人はまだ特定されてないんだけど、クロノスがこの状態自体がかなりヤバいからゼウスの謝罪動画をあげて、ほとぼりが冷めるまでは活動しない方が良いって言ってて、一旦動画の投稿を含めた全活動をお休みしてました。そこまでが昨日までの話。』

 

『それで肝心要のゼウスの糞やろうなんだが、あいつ俺たちの連絡とか声掛けとか全部無視した挙句、それで昨日久しぶりに俺たちの所に来たかと思ったらどこかのVの事務所にスカウトされてたらしくて、それを俺たちに自慢しに来たうえで俺たち3人のことを散々にこき下ろしたからクロノスがアイツにしては珍しくブチギレて取っ組み合いのケンカになった。』

 

『アイツももう二度とお前らと関わる気はないって言ってたし、それで済んだらあのクソ抜きの3人でこれからも活動すればよかったんだけど、クロノスがその日の帰り道に事故って意識不明になりました。あいつの妹ちゃんから聞いた話によると目を覚ませるかはわからないし、仮に目を覚ましたところで頭を強く打ち付けているので後遺症が残る可能性が高いとのことです。ということは事実上のリタイア。』

 

『まずカオス、ガイアの俺たち2人は俺たちだけで活動する気はないです。というか、俺たちはどちらかというと動画作りとかチャンネルの管理とかそう言った裏側で作業してるのがメインで、プレイするのはゼウスの糞とクロノスに頼っていたんで俺たちだけで活動したところで視聴者の皆さんを満足できる動画を作ることができないです。』

 

『そう言った裏方関係のこととかをきっちりを知ってたからクロノスは俺たちに気を配ってくれたりあのクソにブチギレたりしてたんだけど、あのクソは一切理解してないな多分。アイツ、自分さえ良ければそれでいいから。』

 

『まぁ、PS関係とかそう言った事情もあって俺たち2人はこの動画をもってイリアスを解散し、ゲーム実況者というジャンルから離れることを宣言します。』

 

『パソコンオタで滅茶苦茶陰キャな俺をこんな表舞台に誘ってくれたクロノスにはとても感謝しきれないし、2年半も続いた俺たちの活動をこんな終わり方にしてしまってとても申し訳ないけど。視聴者の人たちにもこのまま何も言わずにフェードアウトするよか何が起きたか、何があったのかを知ってほしかった。』

 

『まぁ、半分俺たちの愚痴みたいなもんだ。そんなに上手くないけどクランとか動画とか作ってみたかったけど誘える人居なくて困ってた俺に気付いて声かけてくれたクロノスには俺も感謝してる。アイツが目を覚ますかはわからんが、目を覚ました時に礼と謝罪は言いたい。』

 

『だから、俺たちは解散はするけどこのチャンネルは残してます。アイツが帰ってきたときに動画のコメント欄ぐらいは見せたいからなんかメッセージ上げたい人はコメ欄に書き込んどいてください。』

 

『『それじゃあ皆さん、さようなら。良きラグナロクを』』

 

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3話ぐらいで自分の色を出してみたらやっぱり人離れた。
4話でも自分の色を出したら人離れた。
やっぱりあんまり自分の色出さん方がええのか……?よくわかんないや…

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