なんかネットでドアパンニキと呼ばれるようになりました 作:先詠む人
Identity〇とは、中国の企業が出している。Dead by D○ylightと言うゲームをパクったと言われていた*1(と言うか、リリース初期はそう言って滅茶苦茶叩かれていた)スマートフォン向けに配信されている全年齢向けのアプリ内課金の基本無料なゲームだ。
リリースから何年か経過した今でこそサバイバー側、ハンター側両サイドのキャラ毎に特性とか能力の差をつけることでD〇Dと差別化を図ってはいるが、その結果キャラクター毎に強キャラ、弱キャラという差が生じてしまった。
とはいっても、キャラスペックが低くてもプレイヤースキルでその差を簡単に存在していないかのように埋めることができる化け物プレイヤーは確かに存在する。
このゲームのルールは至って簡単、このゲームに参加するプレイヤーたちは1VS4に分かれて戦う。1人サイドのハンターは4人のサバイバーを2回攻撃することでダウンさせ、全員花火が付いている椅子に1回~3回固定し、3人か全員を椅子ごと打ち上げ花火にし、星にすれば勝ち。
4人のサバイバーたちはフィールド上に7つ存在する解読機のうちの5つを解読しすることによってゲートが通電。通電したゲートに解読したコードを打ち込み、開錠。開錠したゲートから3人以上が脱出することでサバイバー側は勝利する。
フィールドは廃工場、廃病院、廃遊園地、人がいなくなった町、かつて人がいたが何らかの事情で村民全てが消失した村、落盤事故が起こったことが原因で閉鎖された金鉱、etc……と様々存在するが、フィールドによってハンターに不利有利が存在する。
例を挙げると廃遊園地など平面が広く広がっているフィールドでは点と点を線にすることで瞬間的に移動、もしくは遠距離から攻撃できる特殊能力を持つハンターがクールタイムがあるものの猛威を振るうのに対し、平面的には狭く、上下に立体的に構成されているフィールドではそう言ったハンターたちはその強みを生かしづらく、キャラ性能に頼っているプレイヤーたちはそこで躓くか、別のハンターを使うことで対処している。
だが、一部のプレイヤーの中にはそう言った地形的ハンデなんか知らねぇといわんばかりに同じハンターで大量のサバイバーを星にする猛者たちがいる。
そして、そのキャラクターによっては絶望的に存在するスペックの差をものともしないプレイヤースキル、地形的ハンデすらもないものとするプレイングスキル。その両方を兼ねた猛者はある意味化け物じみたプレイングで全てをひっくり返し、人数的に有利なはずのサバイバーたちを絶望に叩き落した。
そしてかつてリリース直後から一年間だけ現れ、猛威を振るった結果化け物、悟り妖怪、強化人間とランキング上位のプレイヤーたちにすら恐れられたが一年半前から現在に至るまでアカウントがBANされたわけではないのに一切音沙汰すら見せなくなった鹿使いが居た。
そして当時のことを知っていたものはその配信を見てそのことを思い出した結果、まるで化け物が再降臨したかのような現実に恐怖し、クトゥルフ神話をベースにしているゲームである関係なのかSANチェックを失敗して発狂したものもいた。
そのとあるVTuberからしたらある意味踏まなくていい尾を踏んで自爆をした恥さらしな配信は即座に切り抜かれ、拡散される。そしてその拡散された動画はある男のもとにも届いていた。
「…………あの野郎生きてたのか……」
それなりに良いと思われるゲーミングPCの画面に映し出されているのはとあるゲームのプレイ画面と一人の他プロダクションに所属するVTuber。そのVTuberが半狂乱でチェーンを振り回す鹿から逃げようと必死にキャラクターを操作しているが、悉くその動きは全て読まれているかのようにチェーンを当てられてダメージが積み重ねられ、使用キャラクターの強みであるはずの数秒の猶予時間を一切ないものにされていとも簡単に狩られた。
そして時折本来参加しているはずの少女の声に混ざるかのようにボソッと入ってくる男にとっては聞き覚えのある存在しないはずの声。あの日突き落とした結果、車に轢かれて事実上死んだはずの男の特徴のある年齢にしてはありえない程幼く聞こえる声がボソッと漏れ出す。その声で発せられる舌っ足らずなネイティブから見れば笑われそうな使い時を間違っているとしか思えない英語を使っているにもかかわらず、かつては利用価値があった手下どもが話していたせいで意味が分かってしまう挑発。
『
画面の前の男にとっては聞き覚えしかないその言葉は、その舌っ足らずが遺した偉業を乗っ取って今の立場を手に入れた男の存在価値を揺るがす危険な挑発だった。
画面に映し出されているVTuberが操作するキャラクターが星となる。それを見送ってから男は画面に映し出されている動画のフルスクリーン機能を解除する。そうしたことで隠れていた動画のタイトルが小さくなった画面の下に現れた。自信満々にしていた自信をあっけなく打ち砕かれたことで発狂したように叫び散らすVTuberの下に映し出されている切り抜き動画のタイトルには『Kronosの帰還』とだけ書かれていた。
動画を見ていた男が嘗て名乗っていた名前はZeus。嘗てTwitterで差別的発言をしたことで大炎上を起こしたことで所属グループを活動停止から解散まで追い込んだ。そんなことをしていながらも実名まで仲間のお陰で曝されるほど特定班が特定できていなかったことを良いことに仲間たちが遺した偉業を全て自分のものと偽って使ってVtuberが所属する事務所に入所し、今もなおゲームを武器に飯を食っている男である。
「覚悟はいいか?……だと。上等だ、今度こそお前の存在潰してやるよ。俺よりも下手なくせに偉そうに口出ししやがってよ」
電気のついてないパソコンの画面だけが光源の部屋で男は暗く笑う。その口は酷く歪んでいた。
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「……で、何か言い訳はありますかお兄ちゃん」
配信が終了し、待機状態になった画面を背にこちらを睨むように見る妹の姿に俺はデジャビュを感じながら正座状態で頭を下げた。
「……お前が泣かされたとかいろいろと理由があったとはいえヒートアップしすぎた。一時的とはいえ時間を奪って滅茶苦茶申し訳ねぇと思ってる」
実際、久しぶりにプレイした&UIが違うせいでチェーンを当てることでダメージを与えるのとダブルタップが使えるようにするのに時間をかけてしまっていた。結局1個だけ解読された時点までに飛ばすつもりだったのが解読機2個を解読されるまであの妹を泣かしたクソに似た煽り方と声のVTuberを星にできなかったせいで大幅な時間を奪ってしまった。それ以降を妹の操作を指導しながらとはいえ、枠を若干乗っ取ったような行動をしてしまったのは我ながら一切これまでの経験から学んでねぇと思い申し訳なくなる。
「いや、まぁ……確かに万葉君が星にされたときはスカッとしたけど……ってそうじゃなくて。いきなり私に凸ってきて操作を変われとだけ言って操作権奪って再戦して万葉君だけ乗り気だったけど他のみんな困惑してたからね」
眉をハの字にして困ったような顔をしながらハルはそう言って腕を組んだ。
「ってそうだった。操作兼奪われてゲーム始まってからずっと気になってたんだけどお兄ちゃん一体何者なの?万葉君追われてるときに滅茶苦茶困惑しながら観戦モードで参戦してたゆずちゃんが『この無駄のないまるで未来を見ているかのようなプレイング……まさかクロノスさん!?』って驚いてたし、視聴者さんみんなその名前出してたけど。クロノスって昔お兄ちゃんが変身ベルト遠くのド〇キまでテスト期間なのに往復一時間かけて発売日に自転車乗って買いに行ってお母さんに後ですごい怒られてた変顔する歌のうまいおじさん*2が変身してるやつだよね?なんか関係あるの?」
困惑を隠せないとでもいうかのように俺の方を見て言うハルに俺は痺れてきた正座を崩して
「……昔俺がネットで使ってた名前だよ。それ以上でも…………それ以下でもない。今になっちゃ何の意味も残ってないただの記号だ」
そうだけ言い残して立ちあがった。
「ちょっと!!まだ話し終わってない!!」
急に立ち上がった俺に対して文句を言ってくるハルに俺は
「万葉……だっけ?あのお前煽り散らした後輩VTuber」
そう言ってから膝を少し曲げ伸ばしし
「多分、今日のことで相当トラウマ持ってるだろうから今後あんな上を上とも見ない行動しないだろうし」
手を前に神社にお参りするかのように構えて
「今日のことはそれで勘弁してくれんか?」
そう言って逃げるように部屋を出て自室に引っ込んだ。
「あ!ちょっと!!逃げるな!!!」
俺が逃げるように部屋を出たことで慌てて追いかけてきたハルを無視して俺は部屋の鍵を閉めてそのままベッドに飛び込む。
脳裏をよぎるのは半ば八つ当たりするかのように途中から
ゲームの仕様上4人中3人が飛んでしまうと最後に残ったプレイヤーへの救済策として逃げ出すことができるハッチが解放されてしまうため、他のプレイヤーが飛ばないようにダメージ管理しつつダブルタップができるまで周囲の他の子たちが操作するキャラクターを攻撃。攻撃したことで存在感と呼ばれるゲージが溜まったことでダブルタップができるようになったタイミングでチェーンを用いて万葉と呼ばれたあのVTuberが操作するキャラクターを事実上のワンパン状態に持ち込んだ。
そしてそのままキャンプ(サバイバーを固定した椅子のすぐそばで居座る行為)し、救助に来たサバイバーを全員チェーンで救助の阻止を行い、全員をダウンさせておいて放置(この時点で大分マナー違反と戦略の境目すれすれの行為)。
そして星になるのを見送ったのち急に冷静になりあとはハルに操作権を返してすぐ横に立って簡単なレクチャーだけしてからずっと正座していたのだ。
元から熱されやすく冷めやすい性格なのは自分でも理解しているが、あの事故から目を覚まして以降沸点が異様に下がっている気がする。
そんな自分が嫌になり、俺はドアを叩くハルの声や現実から逃げるかのように机に眼鏡を放り投げてからベッドに飛び込むと同時に布団で身を包み、そのまま現実逃避するかのように夢を見た。
思い出すのも嫌になるあの日のことを。
沢山の感想、評価、お気に入り登録、後なんか一時的とかそんな感じらしいんですけど総合のランク入りありがとうございます。
これからも時間見つけて皆さんに楽しんでいただける作品書いていこうと思うんで、よろしくお願いします。
2023/10/2
本編外全改訂中
リクエスト
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したい
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しなくてもいい