なんかネットでドアパンニキと呼ばれるようになりました   作:先詠む人

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とドアパンニキがブチギレた過去の話




EX1:お前ふざけるのも大概にしろよ…

「なぁ…」

 

 俺たちがたまり場にしているパソコンルーム。さすがに投稿する動画の編集とかそう言ったのは学校のパソコン使ってやるわけにはいかないからやってはいないけど、たまに無料のフリーゲームを使ってはしゃいだり、何かの企画を考えたりするのにここの設備は優秀だからここが事実上のイリアスのホームだった。

 そんな一時期は4人の笑い声や楽しそうな声が響き渡っていた高校のパソコンルームも今ではそんなことが一切なかったかのような雰囲気でしかも部屋に居るのは一人減った3人となっていた。

 時刻は夕暮れ。そろそろ春の桜が舞い始める時期の夕日が差し込んでくる中、活動しようにも活動できない俺たちはぐだっと背もたれに顎を載せたり、脱力して身を預けたりしながら何もしないまま時を過ごしていた。そんな中、大地(ガイア)が不意に俺たち二人に声をかけてきた。

 

「ん~?大地どしたよ。」

 

「あのクソと連絡着いたの?」

 

 (クロノス)がパソコンのキーボードを寝かせておいてあるデスクトップのパソコンの本体の上に動かして突っ伏したまま先に問いを返し、それに続く様に浩司(カオス)が俺たちの中であのクソで通じるようになった修哉(ゼウス)のことを聞いた。

 

「あのクソはどうでもいいし未だに俺たちのこと避けてる。そんなことはどうでもいいんだよ。お前ら受験どうだったよ?」

 

 俺たちの問いに対して大地が切り返してきたのは今の俺たちにとってある意味一番の大勝負、受験の話題だった。  

 

「俺は一応第一志望受かった。お前らは?」

 

 突っ伏した状態から起き上がって俺が眠い目をこすりながら二人に聞くと、

 

「俺は落ちた。さすがにゲームとかそう言うのをガチで作りたい人達相手じゃちと分が悪かったのかもしれねぇ。」

 

 大地はそう言って肩をすくめ、

 

「受かったのは受かったけど、滑り止めの私立の方だ。国立の方は全落ち選手権だったよ。」

 

 浩司はそう言って顎をのせたまま椅子をぐるっとその場で回転させた。

 

「まぁ、今年はセンター試験開催側も含めて大冒険した結果大惨事だったからなァ……」

 

 そんな二人の様子を見て俺は今年のセンター試験の様子を思い出しながら呟いた。

 自己採点の際答えを見ながら解いてたら基礎の問題をバカみたいに捻りすぎた結果難しすぎる問題しかない状態になっていることが判明した数1・A。数学のテストなのになぜか波動の計算式とかそう言った高度な物理の計算式を問題の初期の初期にぶち込んだせいで物理を基礎すら取っていない文系の学生が全員すっ転ぶ羽目になった数2・B。癖が強すぎて試験問題にするに適さない(口語訳以前の問題で当時の文化的な流行とか儀礼の色々とかそう言った専門的な言語が多すぎるため)平安時代の貴族が書いた日記の一節を用いて完全に問題制作者の趣味が漏れ出した選択肢しかない古文とどっから持ってきたんだよと突っ込みたくなる漢の時代の政府への報告書をそのまま使った漢文で構成された古典。極めつけは英語のリスニングの問題用紙に謎生物が出現し、全員疲れた頭をそこに持って行かれてペースを崩しそうになったところに某胡麻街道みたいなハイテンションで高すぎるトーンで鼓膜を破壊したいのかとでも言いたくなるような大音量の会話をぶつけられるというもはやふざけるなと言いたくなるような事態が起きていた。

 そんな最早事故と言いたくなるようなテストを受け、自己採点の結果はうちの学校では圧倒的に低い点数が軒を連ね、今年の3年生全員が浪人を危惧される事態になっていたが幸いなことに全国的にやはり大事故になっていたらしく俺を含めうちの学校からは国公立に合格することができたものがいた。

 

「そんで、急にどうしたんだよいきなり。正直今年の合格率低いらしいから受検監督担当含めたセンコーみんなブートジョロキア口いっぱいに食ったみたいに今にも吐きそうな顔でピリピリしてんぞ。」

 

 俺がそう言ってパソコンルームに来る前に寄った職員室での様子を思い出しながら指を一本立てて言うと大地はうへぇという顔をしながら

 

「それがよ、あのクソも流石にセンターうちの学校全員強制参加だったから行ってるのかと思ってたんだけどアイツの友達に聞いてみたらあいつセンターさぼって遊んでたらしい。」

 

そんなことを言い出すもんなので俺と浩司は顔を見合わせてから

 

「「はぁ?」」

 

と息を合わせて大地に突っ込んだ。

 

「さすがにそれはないだろ。センター受けんのに金発生すんだから親が許すとは思えんぞ。」

 

「それに、学年主任の大ハゲのことだからいくらあのクソが傍若無人なことをしたとしてもそれは許されないだろ。」

 

 俺と浩司が信じられねぇという顔をしながら二人で話していると大地は

 

「それがマジらしい。アイツ、あの日都心の方に出て誰かと会ってたんだと。なんか、そのままデカいビルに入って行ったの後輩が見ててその話聞いた後で写真撮ってるか聞いてみたら写真送って教えてくれた。」

 

 そう言いながらスマホに入っている写真を見せてくると、そこには確かにあのクソがスーツ着た男と一緒になんかの雑居ビルに入っていくのが写されていた。

 

「あいつ何企んでんだ?」

 

 写真を見ながら俺が眉を顰め、浩司も梅干し食ったみたいなしかめっ面で写真を見ていると

 

「よぉゴミカスども!!」

 

何かいいことでもあったのかウキウキ気分と端から見てもわかるほどうきうきした様子でスライド式の扉を力強く開けて入ってくる男がいた。

 

「修哉てめェ…」

 

 入ってきた男を見るなり一気に俺たち3人全員がチーム組んでやるゲームでマッチしたかのようにだらけていた気分を一気に引き締め戦闘態勢に入る。

 最初に口火を切ったのは大地だ。

 

「お前、俺ら全員巻き込んで滅茶苦茶なことして大迷惑をかけておきながらその態度は何だ?」

 

 入ってきた男、修哉(ゼウス)はそう突っかかった大地に対して

 

「あれは俺は悪くねェ!!チート使ってるチョンが悪いんだよチョンが!!チョンとかこの国から出てくかさっさと死に晒せばいいだろうが!」

 

 そうあっけらかんと言い放った。この時点でコイツあのことについて一切反省してないと悟った俺たちはさっとアイコンタクトをして次は浩司が口を開いた。

 

「そもそもあのマッチの動画に関しては相手が朝鮮人であるという根拠もないし、チーターだという根拠もない。現にあの相手クランは未だに普通に活動してるからな。そもそもこっちのカバーとかそう言うの無視して勝手に突出してお前が自滅した試合に対してお前がチョンだーチーターだー俺の言うこと聞かないからお前ら全員キチガイだ―!!とかそんなクッソくだんねぇことをよりによって俺たちイリアスのグループ名義のTwitterで俺らの総意であるかのように振る舞って大騒ぎするから大炎上したんだろうが。しかもお前個人情報載せんなって散々俺たちが口酸っぱく言ってたのに晒しまくるからそのせいで俺らの個人情報まで特定されかけて俺ら全員活動できなくなったのまだわかんねぇのか!!」

 

「あ゛?誰のおかげでこんなくだんねぇプレイスキルしかないクズどもの集まりが人気になったと思ってんの?この天才の俺様のお陰だろ!?そもそもお前らの個人情報とか割れたところで俺には何の被害もないし、俺の個人情報とか割ったところで誰も何もできないだろ。」

 

 浩司が怒りを抑えるように、けれど完全には抑えきれずに言った言葉に対して一切罪悪感もないかのようにあっけらかんと言い切る様子に俺はゆっくりと立ち上がって言った。

 

「お前前から思ってたけどなんでそんな反省しねぇの?あの試合でお前が勝手に自滅したのも俺ら前からずっと言ってたよな。あのゲーム開始直後の地理的アドバンテージ(高いところ)も武器も最初散らされるんだから人数アドバンテージも何もとれてない状況で意味もなくお前の魅せプのために突出されたらカバーもフォローもできないって。しかも俺あの炎上する少し前にお前に言ったよな。お前個人情報載せるの止めないからお前もうこれから俺らに相談なしでTwitterに何も書くなよって。」

 

 そうなのだ。そもそも、こいつが炎上した案件の原因はコイツ自身が魅せプしたいからとこっちの制止も無視して相手が完全に待ち構えている陣地に突っ込んでいって防具も何も用意してないんだからあっさりと頭ぶち抜かれて死んだことだ。それをコイツは相手がチーターだー!チョンだー!と死んだ直後から意味もわからない理論を捲くし立て、しまいには俺ら3人がその試合でどうにか勝とうと頑張っている最中にTwitterでさも俺ら全員がそう思っているかのように差別的な発言をして大炎上を起こしたのだ。それにこいつは以前高校の文化祭の写真を勝手にイリアスのアカウントで上げて通っている学校が特定されかけたり(幸いなことに文化祭だったのでコスプレしている人が多かったのと、俺がたまたま気づいて慌てて写真を消したのが投稿されてからそんなに経っていなかったのも相まってその時は特定までには至らなかった)、俺たちが作った動画の告知をするために作ったアカウントなのにこいつ個人の意見をさも俺たちの意見であるかのように呟いたりするので俺たち3人の確認なしでつぶやくなと厳重にくぎを刺していたにもかかわらずこの体たらくだ。

 

「お前、なんでそんな謝るとかそう言った気持ちすらないわけ?そもそも大学受験もしてないって話も出てるしお前が自滅するのはお前の勝手だから別にいいんだけどお前の自滅に俺達まで巻き込むなよ。お前が沈む泥船に無理やり乗せるんじゃねぇよ!」

 

 今でも思い出す。どうにか勝ちを拾えたマッチが終わってマッチ中ずっと震えていたスマホを恐る恐る見たら大量に来ていた通知の数。なんだよと思って確認したら大量の引用ツイートによって大拡散されている俺たち3人がマッチ中に呟かれたとんでもないツイート。おいふざけんなよと慌てて消すも、既に魚拓がばっちりと撮られていて大拡散&大炎上。終いにはやるなと散々言っていたのにもかかわらずあのバカが晒し続けていた個人情報のせいで消し切れていなかった写真やツイートから俺たちが通っている高校が特定されてしまった。

 幸いなことにそこで特定班が仕事を終了。理由としては俺がずっとやってた個人情報の管理がそこで上手く働いたということと、ツイートの感じからゼウスがやったということが何となく察せられたことで特定班の興味がゼウス本人へと移ったことだった。

 

「お前が自滅しようとそれはお前の勝手だよ。それは俺たち3人には関係ない話だからな。けど、俺たちを道連れにしようとすんな。俺らはお前の添え物じゃねぇ。俺たちは俺たちでできることをしっかりとやってるうえで今のイリアスがあるんだよ!!」

 

 大地が動画編集、浩司が他の人らとのコラボとかのスケジュール管理、俺が突出したりしてアホなことしかしない修哉のカバーとTwitterとかでの個人情報の管理。そう言った感じで役割分担しながら俺たちは歩を進めてきた。高校生という限界があるが、それでも俺たちはできる限りのことをやってきたつもりだ。それを目の前の修哉(クソ)はたった一日で全てぶち壊した。怒りのあまり無意識のうちに握りしめた拳から爪が食い込んで血を流しつつ俺が怒鳴ると

 

「おー怖い怖い。」

 

 その俺の怒りなんか気にもしないかのようにさらっと受け流し、

 

「今日は俺はお前らと存在する次元が違うってことを証明しに来てやったのさ。」

 

そう言って何らかの書類をちらつかせるかのように見せてきた。

 

「……なんだよそれ。」

 

 俺が警戒心を露わにしながらひらひらと見づらいその書類を見ようと目を凝らすと辛うじて読めたのは何かの契約書ということだった。

 

「契約書?お前未成年のくせにサラ金で借金でもしたのか?」

 

 ざまぁと思いながら俺が聞くと呆れたかのようにため息をつき、

 

「ちげぇよ、俺はお前らと違ってVtuberとしてプロになる!!俺はある事務所と契約した。お前らみたいな鈍間でカスの詰め合わせで存在しているのも恥でしかない、生きている価値すらない愚図と違って俺の才能は世界に認められたのさ!!」

 

 偉そうにふんぞり返りながらまるでジョジョ立ちでもするかのように香ばしいポーズをとり、こちらを見下すかのような目線を向けてきた。正直、最初の事務所と契約した。そこまでは我慢できた。けど、そのあとの言葉の羅列。それの一つにカチンと来た。

 

「お前ふざけるのも大概にしろよ…?」

 

 未だにふんぞり返る目の前のカスの胸倉をつかんで勢いよく肩を入れるようにタックルして壁にたたきつける。叩き付けた状態でそのまま胸倉をつかんで若干呆然としている顔に勢いよく頭突きしてから今にももう一発ぶちかませそうな距離で俺は告げた。

 

「言うことに事欠いて生きている価値すらないだぁ?そもそも俺らの価値はお前に決められるようなもんじゃねぇ!第一お前のせいで俺ら全員に大迷惑かけてんのにそれの反省すら見せず、何様なんだよお前はよぉ!!」

 

 我慢の限界だった。最初に浩司と俺がネットで知り合って、俺と大地、浩司と修哉が知り合ってから後々全員が同じ学校の同学年と知ってつるむようになった結果生まれたのがこのイリアスだったが、ここまで破滅してしまったのならコイツと一緒にゲームなんかしたくもなかった。

 

「もう二度と面見せンじゃねぇ!このクソが!!」

 

 勢いに任せて言いたいことを全部言い切り、掴んでいた胸倉を勢いよく横に払ってから尻餅をついた目の前のクソを見下す。最初は何をされたのか、はっきりと気づけていなかったのか少しばかり呆然としていたクソだったが、自分が何をされたのかようやく認識できたらしくこちらを射殺さんばかりの目で見てから

 

「こっちこそお前らみたいなごみどもと付き合ってられるか!!二度と関わるかよクソが!!」

 

そう言ってきたときと同様に勢いよく扉を開けて走り去っていった。

 

「………フゥ……フゥ……」

 

「裕也……お前……」

 

 中学卒業以来久しぶりに出した全力の声のせいで息を切らしながら出て行った扉の方を睨みつけていると後ろから声をかけてきた大地を見る。

 

「裕也、お前にヤな役回りさせちまったな。」

 

 そう言って浩司が俺の肩をゆっくりとポンと叩いた。

 

「………誰かが何時かはやんなきゃいけねぇことだった。それが今日でやるのが俺だったってだけだ。」

 

 その言葉に俺は顔をそらしながらそう答える。

 

「これが正しいっていえる勇気があればいいってか?」

 

「ただ、それだけ出来れば英雄さ……なんてな。」 

 

そんな俺の様子を見て二人はそう言ってからかってきた。

 

「どっちかというとちっぽけな青い果実だよ俺は」

 

 そんな二人の様子にそっぽを向いてそう答えた俺に二人はケラケラと笑っていた。

 

「んじゃ、俺今日この後用事あっから帰るわ。」

 

 数分ほどケラケラと笑った後、大地はそう言って立ち上がる。

 

「大地、お前が基本管理してんのにお前が帰るってことはここの鍵どーするよ?」

 

「なら俺らも帰るしかなくね?」

 

 そう言って俺たちも立ち上がった。

 

「別にお前らのどっちかが鍵職員室に返しゃいいじゃん。俺に合わせなくてもいいだろうに。」

 

 急に立ち上がった俺たちを見てそう言う大地に

 

「別に俺が返しに行くのが面倒ってわけじゃねーぞ?あのクソみたいな雰囲気の職員室に二回も行きたくねーってだけだ。」

 

俺はそう答え

 

「俺は単に鍵なんて重たいもん管理したくねーだけだよ。管理するのは最近無縁のスケジュールだけで十分だ。」

 

浩司はそう言って再度ケラケラと笑った。

 

「……そう言うことにしといてやるよ。」

 

 大地はそんな俺たちの様子を見てそう言って部屋の隅っこの方に全員分纏めて放り投げていた鞄の山から俺たちの分のカバンを取り、

 

「ほい」

 

と、二個同時に放り投げてきた。

 

「よっと。」

 

浩司はそれを難なく受け止めたが、俺の鞄は変な方向へと飛んで行き

 

「おいアホ!?」

 

パソコンの方へと飛んで行くのを防ぐために飛び込んだ俺の額に直撃した。




使用楽曲情報の奴+ボタン押してるんだけど何故か反応しないからこっちにも書きます。詳しいやり方を知っておられる人がいたら教えてください。
(追記:ふと思い立ってクロームでやってみたらなんかいけました。もしかしてIEだとだめなのか?)

使用曲

英雄 JASRAC 119-3342-9
青い果実 JASRAC 123-3606-8

前に俺が警察のこと書いたとき警察が無能すぎる、あり得ないとかいろいろと言われたんですけど、ああいった描写になったのは理由があります。後で思い返していたらなぜそうなったのか原因を思い出しました。そしてその原因のせいでちょっと鬱になってました。
まず大前提として俺は警察が無能だとか怠慢だとかそう言ったことは思ってません。大学の授業で警察関係の授業もとっていたので警察官の皆さんがいつも市民の平和のために頑張ってくださっているのは知っています。
自分は警察はどちらかというと証拠がないと動こうにも動けないのだと思っています。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=153552&uid=116136
そう言った思いがあったから多分無意識レベルで反映されてああいった内容になったんだと思います。(既にそこは改稿しているので覚えている人が覚えているレベルでしかないですが)

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