ガンダムビルドダイバーズ 青い髪のアリス   作:秋草

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1-2 舞う人形、踊らぬ心

 

 良い出来のガンプラだと、エイトは内心、視線の先のガンプラを素直に称賛していた。その感想は先刻、アリスのデータを盗み見た時から変わっていない。

 通称『S≪スペリオル≫ガンダム』。

 模型誌のフォトストーリーが出典のそのガンダムは、そのスタイリッシュなデザインとスタイルの良さから人気があるものの、これまで映像化に恵まれなかった事もあり、知名度はアニメ主役機達には1段劣る。

 その原型機の売りであるメカニカルな造形や細部の作り込みにもしっかり手が入っていて、完成度の高いガンプラだった。

 だからこそ、その不自然さが目立つ。アリスの所作は、このGBNの世界、いやそもそもゲームやガンプラに疎遠である事をたやすく感じさせていた。

 となれば、あのガンプラはおそらく誰かから贈られたものだろうとエイトは考えた。

 実際に、操作をレクチャーするフリをして確認したアリスのダイバーランクは最低のF。一方で登録ガンプラは事前に大量のポイントで成長させてある。

 

 カモだ。エイトは口の端を吊り上げる。

 

 ちょっと脅かして、ガンプラデータを譲ってくれるなら最良。そうでなくても、フリーバトルに放り込んで撃破すれば、ダイバーとガンプラの総計から計算される獲得ポイントはかなりの物になる。

 そして、ここはエイトが見つけた狩場だ。

 

 サバイバルバトルモード。ルールC。

 一定時間、レベル無制限の混戦バトルを行うこのモードは、本来参加者全員が敵同士となり、乱戦を行うソロ参加専用のモードだ。

 だが実は抜け道がある。同じフォースに所属せず、マッチング条件さえ合えば、狙って同じフィールドに参加するやり方がある。

 つまり、何も知らないソロ参加者を、裏で繋がった集団で襲える。

 そして撃破情報が飛び交う乱戦モードのため、誰が撃破したかというログが表示されない。運営に訴えようにも、初心者が告発するには情報が足りない。偽名や捨てガンプラを使っていれば尚更だ。

 エイトと仲間達は、このフィールドに初心者という獲物を誘い込んで、『狩り』をしているのだ。

 

「おねーさんのそのガンプラ、初心者には勿体ないよ。ボクにくれるなら怖いことはしない。…まぁくれなくても、撃破すれば誰かさんがそのガンプラに注ぎ込んだポイント分大儲けになるから、ボクらはそれでいいんだけどね」

「げき…は…?エイトくんは、このガンプラを壊すの?」

 囲まれているアリスがこぼした言葉に、エイトは呆れた。ホントに何も知らない人だ。GBNでガンプラが壊される事なんてない。一世代前のGPデュエルじゃあるまいし。

 まぁでもせっかく怯えている様子なら、ここは乗っかっておこうかな、とエイトは嗤う。

「うん、今からみんなでバラバラにしてあげるよ。それが嫌だったらさ…」

 

「ダセェな、餓鬼」

 

 通信への突如の割込み。そして間を開けず飛来した一筋の光が、エイトの仲間の一人を爆散させる!

「乱入?!どうやって?!」

 エイトは状況をすぐに理解する。サバイバルの乱入参加プレイヤーが2名。誰かが、エイト達の狩り場に入り込んだのだ。

 どこのバカだ、とエイトは敵を探す。たった二人。対するエイトの仲間は11人。戦力比で見たら到底勝ち目などないというのに。

「どこのバカだか知らないけど、邪魔をするなら一緒に狩るよ!」

「できるかよ、不穏分子風情が」

 レーダーにヒット。エイト達の包囲の外側を、異常なスピードでかき乱す2機のガンプラ。そのうちの、通信を入れてきているダイバーの機体を、エイトは捉えた。

 

 それはMA≪モビルアーマー≫形態で宇宙を裂く。原型機よりも直線的に加工され、虫型と本来評される姿は猛禽類を思わせるデザインにアレンジされている。

 エイトは、その原型機を知っている。

 型式番号RX -110『ガブスレイ』。

 その所属は、治安維持組織ーー

 

「ティターンズ!!さっきの黒服か!」

「『リ・ガ・スレイ』、これより治安維持活動を開始する!」

 

ーーー

 

 「鳥だ…」

 エイトに脅され、状況に流されるままだった。そんな自分を、誰かが助けに来てくれたというのは、アリスにもかろうじて理解できていた。

 彼女を囲んでいたガンプラ達を、その速度で撹乱しているそのガンプラは、鳥の姿をしているように見えた。飛び回りながらビームを放ち、そして急速に敵機に近づくと、

「変形を、した?!」

「あ、それ良い。良いリアクションだよ嬢ちゃん」

 人型に変形をした鳥のMA、『リガスレイ』は、両手で光の剣、ビームサーベルを振り抜いて一機を撃墜。アリスのほうをちらとだけ見るとまた変形して、数で勝る相手に囲まれないように飛び退る。

 遠くでは、3機のガンプラを相手に大立ち回りを繰り広げている、騎士のように見えるガンプラもいる。

 

「2機が撃墜で、他の連中も釘付け…なんだよこれ…」

 

 暗い感情の篭った声に、アリスはエイトの機体を見る。乱戦の中、エイトの機体だけが巻き込まれないように立ち回り、そして…アリスを見ていた。

 右手に持ったビームライフルを無造作にアリスに向けて、発砲。

 アリスがビームの光にすくんだ直後、操縦席が激しく揺れ、あちこちの表示が赤く染まり、計器が悲鳴を上げる。

 撃たれた…撃たれた!

「エイト君?!」

「この狩場はもうダメだ。だからアリス、アンタのガンプラだけさっさと撃破してポイントにするよ。貰えるもの貰って早く逃げなきゃ」

 エイトのガンプラはライフルを撃ちながらアリスに向かってくる。まともな操作の知識なんてないアリスは手元の操縦桿を訳もわからず操作するが、そんなもので避けられるはずもなく、次々に衝撃がおそってくる。

 

   ≪戦闘レベル ターゲット確認≫

 

「壊される?!」

 ーーダメだ。ダメだダメだ!壊されちゃ、ダメだ!このガンプラは大事なものなんだ!このガンプラと、GBNだけが、あの人とのーー

 

   ≪優先命令 自己保存モード≫

 

 ーー思いとは裏腹に、思うように動かない。例え≪スペリオル≫なんて名前を持っていても、パイロットが操縦方法を知らなければ、何もできるはずもなくーー

 

   ≪予測運用スキル 0.8%≫

 

 無駄だとわかっていても、アリスは操縦桿をがむしゃらに動かした。

泣き出してしまいたい。蹲ってしまいたい。

泣いてたまるか、蹲ってたまるか

 

   ≪発展型論理・非論理認識起動≫

 

 エイトのガンプラは、左手に構えた剣で早々にとどめを刺すつもりなのだろう。まともに身動きできないアリスのガンダムに迫りーー

 

   ≪アナタハ ワタシ≫

 

 アリスは、誰かに呼ばれたような気がした。

 

 

 

ALICE ALICE ALICE ALICE ALICE ALICE ALICE

 

ーー瞬間、アリスのガンダムは既に半壊しているとは思えない動きで、振り下ろされた刀身が届くよりも早く抜刀ーー膝の装甲から右手で抜き放ったビームサーベルが、襲いかかるエイトのガンプラの両腕を切断ーー続けざまに左手で逆手に抜いた剣は両足を切断し、間髪入れずに両の剣で胴体を十字に切り裂いたーー

 

ALICE ALICE ALICE ALICE ALICE ALICE ALICE

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