何とかしたいですよね(止まらない憧れ)。ぶっちゃけモスティマを増やしてくれるなら私の作品を読まなくていいし、評価しなくていいし、感想も要らないし、お気に入りも要らないです。
最近はCoCのセッションを二つ並行してるので忙しいです、シナリオ作成も有って随分遅れてしまいましたね。
「その歳にしては恋愛のふったふられたに対してドライだね、変わってるなあ」
「あんたがそれを言うのか?」
確かに、とからから笑う彼女の横顔は…………残念ながら、未練がましくも、不幸にも魅力的だった。モスティマは些か自分の魅力を見せることに躊躇いがなさ過ぎる、偶に暴力になっていると言うか。
それは例え俺が長い歩きに疲弊しきって、ちょっとばかしゆらゆら歩いてても変わり無い。
報告するまでもないことだがフラれた。口上はこうだ。
『ごめんね。気持ちは嬉しいと言うか、尊重したいと言うか、まあそんな感じなんだけど…………今の私にそれを受け止めて、お返しが出来るとは期待しないで欲しい』
随分曖昧な返答だし、実際モスティマも一日のうちで一番言葉を慎重に選んでいた気がする。ただ、端的に言ってフラれた以外の何だ? いや、フラれただろこれは。
本人も認識は有るみたいだし、俺達は何とフラれた青年とフッた女性という関係を理解し、維持し、取り持ちながら本日も歩いているわけだ。奇縁とはこういうことだろうか。
ちなみに歩く方向は南東。爽やかな草原も悪くはないが、まあそろそろ現実感を帯びてきたと言うか、まあ所謂慣れが出てきた。違う景色も見たい所だな。
「私は、まあこういう言い方は好きじゃないけど君より人生を重ねてる。でも若ければ若いほど、やっぱりその時その場の出会いとか、視界に映る世界でいっぱいいっぱいだと思うんだ。恋愛に関しても例外じゃないというイメージだけど」
「いや、うーん。それはその通りだし、もっと言えば俺の世界には今、殆どモスティマ以外の人物像はないけど…………ホッとした」
「ホッとした?」
聞き返されたなら答えるしかあるまい。
「正直、あんたがあの告白を聞き入れる人物だとは微塵も思ってない。だからアレが理想回答というか、俺は変に生ぬるい事を言われるより良いと思ってる」
「へぇ。分かってて言ったんだ?」
「そう、ついでに気にしないのも分かりきってるから懲りる気もない。俺は勝手にあんたが好きで、あんたは俺の態度に嫌とも良いとも思わないだろうから」
端的に言って、俺は時間の許す限りはアタックを仕掛ける心づもりだ。可能性が薄いことも承知している。
普通は最悪の男のやり口というか、半ばストーカーチックだがこの人に関しては”本人が気にしない”という特殊な条件がある以上、最悪でもなんでも無いと思う。
嫌がることはするなって話で、執着が悪いとは誰も言ってこなかったんだから。
それにあの時。朝日に照らされた彼女の横顔がもしかすれば、苦しそうだったんじゃないかと俺は思ったりもしている。理由は分からない、分からないから知りたい。でもきっと、知るには真っ当なアプローチを重ねる時間がない。あの悲哀混じりの笑顔の意味はきっと旧来の友人でもちょっと測りかねるだろうし。
だから俺はこういう無茶をする。そして、苦しそうなら”役に立たないなりに誰かが近くにいる”ということぐらいは表明したい。
何か、そんな感じなのである。
考え込みながら重ったるい足を前に進めていくと、モスティマがふとこちらを向いて前を塞ぐ。
「どうかしたか? 遅いのが不満なら悪い、俺は一般人なもんでな」
「それは気にしてないよ。ただ”君の心配は無用なものだと思う”、とだけ。友人、家族、恋人、仕事仲間…………嫌いではないけど、私は必要だと思ってないからね」
「だから孤独も平気ってか? そりゃ傲慢な考え方だね」
傲慢、という言葉にモスティマが目を丸くする。
敢えてそういう言い方を選んだ。今はこういうやり方でしか、この人の心に肝心な言葉が届けにくいと分かってるから。
「俺の知り合いにも一人で楽しいとか、一人の方が良いとか、友達は要らないとか、家族が邪魔とか、結婚なんて人生の墓場とか散々言うやつが居た。ああ、一部事実だろう。それは主観的な話だからな」
「一部、ね。じゃあ君は違うと思うんだ?」
まるで面白い新聞記事でも見つけたみたいな、そういう色の光が彼女の瞳から溢れる。その薄ら笑いは不審でも有るが、もう慣れた俺からすれば居心地のいいデフォルト画像だ。
「自分を正当化したいのか、そうやって生きようとした過程で大事な感性が眠ったのか。仔細は知らん、ともかく他人ってのは必要だ。モスティマ、あんたにもそういう大事な人はいるだろうし、粗末にするような物言いは駄目だ」
人は一人で生きていくことが出来ない。俺はこの歳でそれを学べているのは何でだろうな、何か有ったのかもしれない。
ただともかく、モスティマにだってきっと大切な人はいるはずなんだ。自覚がないだけで、忘れてしまいそうなだけで。
それを自分の言葉で台無しにするのは見たくない。
爽やかぶった風が吹く。モスティマの髪はまた蹴り上げられたが、今回の彼女の顔つきは概ね天使とも悪魔とも仕分けがたい奇妙なものだった。曇り空にはその複雑な表情がマッチして、俺の記憶に新しい芸術が刻まれていったのが分かる。
「…………ふーん。じゃあ君は……レンは、自分が私の中でどんな場所にいると思う?」
「知るわけ無いだろ。あんたが見つけなきゃ、俺の答え合わせを信じちゃいけないよ、それ」
「かもね。ごめんごめん」
平然とまた歩き出した彼女の歩幅は、さっきより少し広くなっていた気がする。
曇り空は段々と色を濃くする、考えるまでもなくそれは雨の気配を滲ませていた。
「さて。そろそろだと記憶してるんだけど…………」
「ん? そろそろ?」
「そうだよ」
随分歩いたことは間違いないだろう。雨も降り始めて、仕方なく傘を差した。
一人分しか無いから、辛くも俺はモスティマと完全に密着して歩く羽目になっていた。水で体温を吸われ、接地面で体温が急上昇。このままだとずぶ濡れとか関係なく体調を崩しかねない。
俺はお世辞にも運動慣れした体つきをしている覚えはないが、彼女はもっと細いような気がして健康にも心配してしまう。というか、もう聞いてしまう。
「ちゃんと飯食ってるのかよ。あんた、えらく細いじゃないか……」
「そうかなぁ? ちゃんと食べてるよ、大丈夫…………心配性だね。君は」
輪郭をなぞるように頭をゆっくりと撫でられる。あんまり好きじゃない、ガキなのは認めるが何だか距離を感じるのが嫌だ。元々雲みたいな食えない性格なのに、いよいよ何も見えなくなってしまうんじゃないか。そんなひっそりとした不安。
俺に見えてるこの人は…………考えるのを辞めておいた。詮無きこと、ってのはこういうのだろう。
暫く歩くと、今度は急な段差が見えてくる。それはもう半ば崖と言ったほうが近いか、手で制されても流石に急すぎて落ちるかと思った。
其の下に広がるのはこの草原とは似ても似つかない荒れ果てた、もしくは踏み荒らされた。ともかく草木の気配すらない循環の閉じた大地が広がっている。
「命は巡ってるってどっかで習ったが…………此処は回ってないな、死んでる」
「それは私達の一方的な見方だよ」
モスティマの言葉を反芻する暇もなく、”それ”の音が聞こえてきた。
それは最初は小さな揺れだった筈。足元で雨粒と踊るように跳ねる砂粒が、俺は何となく気になりながら過ごしていた。そしてそれは少しずつ跳ね方を激しくし、同時にどんどんと”きゃりきゃりきゃり”という独特の音が遠くから放たれていることに気づく。
最初、その音に心当たりが無かった。そのシルエットが雨粒のレンズ越しに映った時に、俺は遅まきながら漸く理解が追いついていった。
それはキャタピラだ。戦車なんて可愛い大きさじゃない、その大きさは遠目から分かるほどの巨大さだ。そのキャタピラは地を踏み鳴らし、踏み荒らし、踏み潰して当然の権利でも行使するように平然と大地を蹂躙する。
ふとそのシルエットの上端に思いを馳せると、それは見慣れた街らしきものにも見えた気がする。尖った幾つもの建造物、輝くは淡い営みの蛍光灯。
俺はそこに異世界を見た。キャタピラの蹂躙の上に成り立つ少しばかり古臭い町並みが、西洋のそれとしか言えない何かが、静かに佇む姿。
それが風刺画のように思えてきて仕方ない。俺達もきっと、彼らほどわかり易くなくとも世界を踏み荒らして日常を享受している。
あっけにとられる俺に、説明を挟む彼女。
「それは私達がテラで特別だって勘違いするからさ。この大地ですら、踏み荒らす私達すら、世界の一部でしか無いよ」
俺は彼女の声が、まるで脳に透き通って侵入してくるような不思議な心地だった。その異様な光景に心を吸われて、不自然なくらい落ち着いている。
「という訳で、アレが移動都市。人々は生きるために動き続けなくてはいけない、その動力が例え…………どれほど代償を持つものだったとしてもね」
彼女の言葉がはっきりと理解できたわけではない。
ただこの光景は、俺の価値観を直接ハンマーで叩いてくるような乱暴な世界観だったし。それで俺が圧倒されていたのも事実だろう。
「この変な見た目の割に、入るのには苦労しないんだな」
「都市にもよるよ。でも此処はまだ、移動都市になって日が浅そうな印象は有るね。きっとそういう理由さ」
思いの外あっさりと入れた。普通に下のほうが開いて、特別入国のアレコレみたいな事もさせられてない。漠然とした都市入場である。
都市の表層、つまり街の部分はあっさりとしたものだった。イメージでは観光地として保存されたヨーロッパの町並みのそれ。煉瓦造り、整わない舗装された道、入り組んだ段差に、そしてその中を雨でも歩く人々。もうそこに耳とか角がある話はしなくていいだろう、俺も慣れてきた。
それは面白いくらい普通の街だった。敢えて言うならその街の高度が明らかに高くて、遠くに望むは荒野であると言うぐらい。
「もしかして都市によって文化レベルも結構違うのか?」
「うん。今でも土着信仰に基づいて森や平原に村を構えることも有れば、こうやって生きるために乗り換えた人達もいる」
確か天災ってやつを避けるための移動だっけか。なんか俺の想定してるものとはニュアンスが違うっぽいけどな、この天災は。
モスティマが荷物を持つと、俺の手を握って引っ張っていく。傘から零れた体が雨に打たれる。
「ど、何処行くんだ?」
「まずは宿を取ろう。そうだね…………この都市のルート上に目的地の一つがある。其処に来るまでは此処でお休みにしよう、レンも疲れたよね?」
微笑まれると、俺は何とも言えなくなって目を瞑る。俯きながらついていくことにした。
当たりだし、その顔で言われて抵抗するなんて本人もどうせ思ってない。何だかんだズルい大人だ。
ランキング入り、ありがとうございます。随分と長かったですね、ちゃんと見ていましたよ。
別に嬉しいかと言えばまあ嫌ではないですが、それがどうというわけではないです。ただ注目を浴びると熱も冷めるのが世の中ですから、流されてモチベーションを落とさないように気をつけたいです。
現実でもあながち否定できませんが、世界は常に残酷さと冷たさを帯びています。それは恐らく、どんな年代の方でも一度は感じている。
テラは世界と戦っています。それはオリパシー、天災、深刻な内容も少なくない。
しかしそこに光は差し込んでいると私個人として見ており、単純な終末世界というだけではない側面も少しずつ見せていきたい、というお気持ち。
そういう話として今回の都市を用意しました。どうでしょう、あの世界ではどれほどの経済力で移動都市になれるか分かりませんが、カジミエーシュ辺りの大都市の一つでしょうか、これは。
次回までにモスティマが考えておいてくれるでしょう。