神憑くは無限の空   作:マギウスの親戚

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01. 終わりの続き

流木野(るきの) サキ

 

 

「──私もここまで、か」

 

 ヴァルヴレイヴⅣ(カーミラ)のコックピット内で、私は独り()ちる。

 おそらく戦争だったのだろう、目に見える敵は全て倒した。

 戦争の理由も(・・・・・・)敵が誰かも(・・・・・)覚えてないが(・・・・・・)

 

「もうすぐRUNE(ルーン)が尽きるわね」

 

 意識が明滅する。もうほとんど自我が保てない。

 視界の端で点滅しているボタンは、たぶん救難信号。

 これなら、誰がいたかは覚えてないけど、仲間が機体を回収してくれる。

 

「ああ、最後に残ったRUNE(記憶)があなたで良かった、──ハル、ト」

 

 徐々に白くなっていく視界。

 最期に、遙か昔に失った最愛の人が見えた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もう目覚めないと思っていた。

 ただ無くなるだけだと信じていた。

 

「……あ、れ?」

 

 だから、いつの間にか幼少の流木野サキ(わたし)になっていて、見た目は同じだけど優しげな両親を見て、茫然自失となってしまっても仕方ないだろう。

 

 

 

 

 

■■■■■■

 

 

 

 

 

 

時縞(ときしま) ハルト

 

 

 僕が引き伸ばされて、流れていく。

 どこに流れていくのか、なぜ流れているのか、ここは何なのか。

 

 もうなにもわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……と」

 

 誰かの声が聞こえる。

 

「…ると」

 

 知ってる声だ。でも誰だったか思い出せない。

 

「ハルト!」

 

 意識と五感が、一気に覚醒した。

 周囲の情報が、感覚器官から濁流のように脳に流れてきて上手く処理できない。

 クラクラする頭を押さえると、

 

「は、ハルトォ!? だだだ大丈夫かっ!?」

 

 目の前には、かつて決別したはずの父・時縞ソウイチが慌てた様子で僕を心配していた。

 

「とう、さん……?」

 

「ああ、父さんだぞ! さあ、そこのソファーにゆっくり座ろう」

 

 以前会った時に感じた執着や狂気が一切感じられない父さんに若干の違和感を覚えつつ、とりあえず言われた通りにソファーに座る。

 なんか大きなソファーだな、と思っていると隣に父さんが座る。

 

(あれ? 父さんもなんか大きい?)

 

 周りを見渡すと、一時期父さんと暮らしていた覚えのある家のリビングだった。しかし、やはりなんとなく大きい。

 

(視点が低い?)

 

 次に自分の体を見下ろすと、小さな子供のそれであった。

 

(過去に、戻ったのか……?)

 

 突拍子もない発想だが、現状を鑑みるにそう思える情報が多い。

 ヴァルヴレイヴやRUNE(ルーン)、マギウスといったファンタジー小説に出てくるような存在を知っている身としては『あり得ない』と断言することはできない。

 

「ハルト、大丈夫か? どこか痛いところはないか?」

 

 心底心配だ、というような顔で僕の身体を色々な角度から観察する父さん。

 

「だ、大丈夫だよ。ちょっとボーッとしてただけだよ」

 

「そうか? 最近テレビで物騒なニュースばかり報道されているからな。それで不安になったのかもしれない。今度から一緒に見る時は、ニュース番組じゃないのを見ようか」

 

「物騒なニュースって、どんな?」

 

「そうだな。一番すごいのだと、この国にミサイルが2341発以上発射されたことかな。いやぁ、あれはびっくりだったな」

 

(ジオールにミサイルが!? そんな大事件、もし過去にあったなら知らないはずないのに……)

 

「父さん、そのミサイルはどこの国から発射されたの? ドルシア? それともまさかアルス?」

 

 もしどちらかの大国から発射されていたなら、世界情勢はとんでもないことになっているはずだ。最悪、父さんに僕の今の状態を教えてヴァルヴレイヴに乗せてもらわなければ。

 そんな覚悟を密かに決めた僕に対して、父さんはキョトンとした顔で、

 

「どるしあ? あるす? ハルト、そんな名前の国は存在しないぞ。プレイしているゲームの中の国名なんじゃないか?」

 

 そう否定した。

 愕然とした。

 だって、それじゃあ──

 

 

 

「父さん、教えて。僕たちの住んでる国の名前は……?」

 

 

 

 この世界は──

 

 

 

「はっはっはっ! どうしたんだハルト。そんなの日本(・・)に決まってるじゃないか」

 

 

 

 ──別の世界、なのか……?

 

 

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