ARMORED CORE -Resume “N”-   作:アカ狐

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レイヴン



最強の人型兵器「アーマード・コア」を操り、多額の報酬と引き換えに依頼を遂行する傭兵。
支配という名の権力が横行する世界において、何にも与する事のない例外的な存在である。

過酷な世界で生き、脱落者には容赦の無い死が待っている。

時にそれは正義の味方、英雄として扱われ、
時にそれは悪の権化、絶対悪として扱われる。

人を殺すための剣でもあり、
人を守るための盾でもある。

しかし中には己を偽るための仮面として扱う者もいる。
自分を隠すため、強く見せるため。

つまりは、

「CQ!CQ!こちらクラウン!バンディット(企業、傭兵組織のどちらにも属さない勢力の総称)の襲撃を受けています!誰でもいいから助けて!!場所は…」

とどのつまりは、私のようなー

「クラウンへ、こちらクロウハート。そちらの座標を確認、ただちに救援に向かいます。」

私は自分を隠すため、私を強く見せるためレイヴンになった。
この黒く染め上げられたアーマードコア “ 鵲 ” は、私の心を強くさせるための仮面であり、鎧だ。












Side Story ~Schwarzen Fluegel~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クレスト・ミラージュ、軍事境界線

 

「答えてくれた!?こちらクラウン!た、助けて…!!」

 

私は企業達が勝手に作った境目の砂漠地帯で、レーダーに反応を捉えてから2km程西の地点ところで、救難通信の主を見つけた。

 

3機のMTに追いかけられ、まるで狼の牙から逃げる鹿のように右に左に逃げ惑っている。

煙幕弾を投擲して撹乱をしてはいるが、捕まるのは時間の問題なのは明らかだ。

 

逃げているのはMTのようであるが、左右非対称の見た目が印象的だ。

こちらもバンディットの機体だろうか?

だとすれば勢力争いか或いはただの野盗か…。

……。

……考えていても仕方がない。

 

「クラウンへ、こちらクロウハート。貴方を目視で確認しました」

 

オープン回線で通信を繋ぎ、機体を通常モードから戦闘モードへ切り替える。

向こうもこちらの存在に気づいたらしく、迎撃体勢を取っているのが見えた。

 

「了解!うわっ!?」

 

クラウンは返事をした直後、相手の撃ったバズーカの爆風に機体のバランスを崩して倒れてしまった。

まずい、思ったよりも相手が早く仕掛けてきた。

私は自分の機体 “ 鵲 ” の右肩に装備されたマルチミサイルを発射した。

 

私が装備しているのは発射してすぐに6つに分裂するタイプの物で、

それらは一つ一つが敵の方へ飛んでいき、2つが命中し、それ以外はそのすぐ近くに着弾し、彼らの動きを停止させた。

 

「予想通り、問題はここから……」

 

鵲をそのままクラウンの付近に着地させ、砂煙越しに見える機影に照準を合わせてレーザーライフルを発砲する。

 

「ACの救援なんて聞いてないぞ!?」

 

混線してるのか相手の通信が流れてくる。

誰も来るなんて思ってなかったのだろう。

それはそうだ。私も来る予定なんて無かったし。

 

「撤退だ!退け!退け!!」

 

MT部隊は一部が被弾し損壊したため、不利だと判断したのか、早々に撤退を決めて去っていった。

レーダーから反応が消えたことを確認した私は機体のシステムを通常モードに切り替え、クラウンのパイロットに通信を繋げる。

 

「クラウン、生きていますか?」

 

「う…あ、はい!!」

 

はっきりとした返事、自分よりも歳が若そうな男の子の声。

どうも他人と話すとなると変に強張ってしまう。

 

「……よかった。」

 

「あの、助かりました!ありがとうございます!!」

 

クラウンのパイロットにお礼を言われ、回答に困った私は聞かなかった振りをして、レーダーを見た。

周辺にストレンジャー(所属不明機の総称を指す)は無し…か。

 

「……貴方の目的地は?必要なら、そこまで随伴します。」

 

「あ、実は…ブラック・フェザーまで、物資を配送してたところで……」

 

バンディットの中には廃品パーツをリビルドして売買することで生計を立てている者がいると聞いたことがある。

彼らはコレクターとか、デリバリーなんて呼ばれている。

総じて山賊と称される彼らも悪い人間ばかりではないのだ。

 

「なら尚更。これから帰投するところだったから。」

 

「あ、ありがとうございます!重ね重ねすみません。」

 

「いい、別に。」

 

彼のお礼の言葉に冷たい返答しかできない自分に少し自己嫌悪した。

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

 

ブラック・フェザー

 

世界を支配するクレスト、ミラージュ、キサラギの三大企業に属さない傭兵組織

それぞれの企業の依頼に傭兵を斡旋しており、近年人気を確立しつつあるアリーナの運営も主導で行っている。

 

依頼の内容は様々で、物資の輸送からストライキの鎮圧や、

新型兵器のモニターテストまで多種多様。

 

そこに所属する傭兵を総称して「レイヴン」と呼ぶ。

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

 

ブラック・フェザー第6ガレージ

 

鵲をガレージに収めて、コクピットのハッチを開けた私はヘルメットを付けたまま、機体の外へ出て、通路を渡って更衣室を目指した。

簡単な任務と予期せぬ救援活動とはいえ、やはりACの中は窮屈で息苦しい。

 

パイロットスーツの中は、汗でじっとりとして気分が悪かった。

私はシャワールームのある更衣室に入って、そこでパイロットスーツを脱いだ。

腰まである長い髪が広がり、重力に従って落ちる。

 

そのまま身に着けているものを全て脱いでしまい、シャワーの蛇口を捻って体にまとわりつく汗を流した。

眼鏡を外して顔に温水を浴びながら、さっきのパイロットが着くなり機体から降りて物資の搬送をガレージの作業員に伝えていたことを思い出す。

 

……。

歳は、私とそこまで変わらないくらいだろうか。

無理に危険な仕事をすることもないのに。と私は思った。

 

シャワーを終えて衣服を着替えて更衣室を出ると、そこには一人の青年が立っていた。

背が私より少し高くて、長い髪を一本に束ねた姿は一瞬女の人かと思わせた。

私は思わず驚いてしまい、その場で立ち尽くしてしまう。

 

「あ、あの…クロウハート、さんがどちらにいるかって、わかりますか?」

 

「…さ、さぁ…?どうして?」

 

咄嗟に嘘をついた。自分の事を知られたくなかったからだ。

そして彼の声で、さっきのクラウンのパイロットであることも分かったから。

 

「いえ、黒いACがそこにあって…さっき黒いパイロットスーツの方がこの辺を通ったって聞いたので…もしかしたらと思ったんですけど…」

 

「さ、さぁ…私は見ていません」

 

心臓が潰れそうだ。早く行ってほしい。

 

「あ、あの!でしたら、クロウハートさんを見かけたらムラクモって人がお礼を言ってたって伝えておいてくれませんか!?」

 

「え?はぁ…」

 

私は急な頼まれごとに間の抜けた声を出してしまった。

そんなことはメールで伝えてしまえばいいと思っていたし、彼の名乗った名前にも聞き覚えがあった。

 

ムラクモ。記憶に違いが無ければ数百年前、まだ人類が地上の下で生活をしていた時代に、

かつて最大勢力だったクローム社と対立し戦争をしていたムラクモ・ミレニアム。

もっともそんな時代がとうに過ぎた今となってはミラージュやジオ・マトリクスよりも下。4次団体に成り下がっていて、最早かつての栄光はみる影もない。

 

「じゃあ、よろしくお願いします!」

 

「え?あ、め、メール…」

 

私がそう言う前に彼は頭を下げて、さっさと行ってしまった。

その背中が見えなくなっても、私はその場に呆然と立ち尽くしていた。

「……はぁ」

 

口下手の自分が憎い。

ACから降りてしまえば、私は人一人と話すこともままならない。

いつまでもこうしてもいられない。

私は歩き出して、自分の部屋を目指した。

 

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

 

 

自室

 

扉を開けると、高い天井まで積み上がった本棚と隙間なく埋められた本が私を出迎える。

此処が一番落ち着く。本は絶対に私を裏切らない。

 

私は椅子に座り、端末を起動する。

そのまま送信用メールを立ち上げる。

彼に先ほどの礼に関するメールを送る為だ。

 

ムラクモと検索すれば、彼のことはすぐに出た。

ミラージュ領の第3支社とジオ・マトリクス本社のある場所から、西側の三企業中立地帯の境界線の近くでジャンク屋を営んでいるようだ。

噂によれば元レイヴンとのことだが…戦死者、退役者、戦死判定者を調べてもムラクモの名前は出てこなかった。

 

「検索の仕方が悪いのかな…?」

 

私は検索を程々にして、彼のアドレスにメールを書いた。

 

「えっと……、あ、名前言ってなかった…。」

 

また失敗を思い出した。人と話し慣れていないとこうなのだ。

困った。まずなんと書き出せばいいのだろうか。

 

あれこれと悩み、コーヒーを何杯か飲んで、ようやく書き上げた。

入念に読み返してから送信する。

送信してからも、私は悩む。

 

無事に届いただろうか、

文章の内容に不快感を抱いてはいないだろうか、

もう二度とやりとりをしないと思うだろうか、

そもそも返信が返ってくるだろうか。

こんなことを延々と考えている。

 

悪い癖なのはわかっているが、どうしようもない。

治らないから悪い癖なのだ。

 

“ ピコン ”

 

「わっ」

 

端末の通知音に驚いて、眼鏡がずれてしまった。

掛けなおして画面を見る。

受信ボックスにメールが一件届いていた。彼からだった。

 

私はメールを開いて内容を確認した。

そしてその内容を見て本当に慌てた。

 

「ありがとうございます、今後ともよろしくお願いしますね!黒羽さん」

 

私は慌てて自分が送信したメールを確認した。そうしたらこれだ。

 

“ 烏丸黒羽 ”

 

よりにもよって自分の名前、それも本名を書いてしまっていたのだ。

丁寧に書くことを意識しすぎて思いっきり失敗してしまっていた。

 

「…あっちゃーーーー………」

 

私はこのあと本を読もうと思っていた予定すら完全にどうでもよくなってしまい、画面の前で頭を抱えるばかりになってしまった。

とりあえず、彼とまた会うまでに、もう少しだけ愛想良くふるまえるようにしなければ。と

 

 

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