ARMORED CORE -Resume “N”-   作:アカ狐

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レイヴン

企業が支配するこの世界において、その支配に縛られることのなく、
アーマードコアを駆る例外的な存在。

しかし、なかにはその腕を企業に買われるか、あるいは自らの意思で
企業直属のACパイロットとなった者達も少なくはない。

彼らは枷を嵌められ飼いならされた者という意味を込めて

“ ダグ ” と呼ばれた。








Side Story ~Mikotonori~

 

 

 

 

 

 

廃墟の中を一機のACがブースト移動で走り抜けていた。

しかしその機体はACと呼ぶには、異形すぎた。

 

四脚の足先はまるで杭の様になっており、

その脚が支えるコアは通常のものよりも前後に長く造られ、それに伴い腕が一対増設されている。

そして外観を体現するかのように、肩には “女郎蜘蛛” が描かれている。

 

その “蜘蛛” は時折壁に杭の様な足を突き立てて壁伝いに飛び、自らを追い立ててくる者から逃げ回る。

そうして地面に足を突き立て着地した直後だった。

 

着地した場所のまさに真上で爆発が起き、その爆風で機体の装甲やカメラなどのセンサーが灼かれた。

“蜘蛛”を駆るパイロットの男には何が起きたか直ぐに察しが付いた。

 

「外したわ、ほんまに逃げ足が素早いことで」

 

突如として聞こえてきたオープン通信、

そして頭上を見上げると廃ビルの上から追跡者が姿を見せた。

 

まるで要塞の様に厚い装甲で覆われたタンク型AC。4連装のガトリングガンを両手に持ち、肩に装備された未だ砲口から硝煙がのぼる巨大な砲身を “蜘蛛” に向けている。

先程の爆発はその大砲から放たれた近接信管弾によるものだった。

 

その機体を象徴するかのように肩には大きく “ 尊 ” と書かれている。

“ 蜘蛛 ” の男はこの機体を知っていた。

三大勢力の企業の一つ、キサラギ。

 

そのキサラギ社が抱える戦術部隊の指揮官であり、企業が抱える兵士 “ダグ” の一人、朱凰柘榴(すおうざくろ)の機体 “ 尊 ” (みこと)だった。

 

その機体は通常のAC以上の強化、改造が施されており、そのパーツ一つ一つにはとてつもない金が掛かっている。

つまり上手く奪い取れれば金になると男は画策し襲撃を企てたのだった。

それが浅はかな考えであったことは、この状況が物語っている

 

「賞金首第一位のベルクト土蜘蛛。アンタの首が取れればウチのシノギも上がる。ここらでウチに討ち取られてや」

 

朱凰柘榴は「お前など敵ですらない」とでも宣言したような明るい口調で言い切り、その砲口の照準を今一度

“ 蜘蛛 ” に向けた。

 

「カカカッ、残念ココでサヨナラだ」

 

“蜘蛛”の男はそう言ってオーバードブーストを展開し、その急加速によって一気に尊が砲撃をするよりも速い速度で接近すると、その足先に供えられた四本の杭を尊の胴体に突き立てたその瞬間、成形炸薬弾が杭の先端から射出され、尊は爆炎に包まれた。

 

機体表面が燃え盛る尊だったが、まだ機体は停止する様子を見せない。

両手のガトリングを向け、轟音と弾丸をまき散らす。

“蜘蛛”の男はこの場から離れることを決め、機体を飛び上がらせる。

 

「アバよ!若作り婆さん!カカカカカカッ!!」

 

“蜘蛛”はそう吐き捨てると高笑いを響かせながら飛び去って行った。

尊からは立ち昇る火は機体に備えられた消火装置によって消し止められたが、コックピットではまだオーバーヒートの警告がけたたましく響いていた。

 

「潮時やな…迎えを寄こしてや」

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

 

キサラギ

 

ミラージュ、クレストと並ぶ三大企業の一つ。

規模こそ競合企業である二社よりも小さいが、技術力には目を見張るものがあり、

主にFCS、ジェネレーター、ラジエーターなどの内装パーツやエクステンションユニットなど、他社とは全く別の設計思想に基づく装備品を開発しており、市場でも一定の購買力を維持しており、近年では自社製ACフレームの開発に乗り出している。

 

しかし、純粋な軍事力や経済力では二大企業に劣っており、第6支社の抱える戦術部隊がキサラギ社に於ける無二の最高戦力である。

指揮官である朱凰柘榴の駆る “ 尊 ” は、例外的に他社のパーツの使用を許可されているほか、大規模な改造が施されており、陸の戦艦の異名を持つ。

 

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

キサラギ領内、キサラギ第6支社、ダグAC用ガレージ

 

先ほどの一戦を終えた尊は、専用の牽引車でガレージに運ばれた。

ガレージに収まったのを確認した柘榴はようやく機体のコックピットのハッチを開いた。

パイロットスーツも身に着けず、軍服姿のまま機体に乗っていた彼女は、身を乗り出して供えられたタラップで通路に出る。

 

「手酷くやられましたね、少佐」

 

出迎えた壮年の整備士が声をかける。

機体にはパイルバンカーを撃ち込まれた痕跡が生々しく残っており、機体の装甲を覆うように備え付けられた爆発反応装甲の殆どが剥がれ落ちてしまっている。

 

 

「尊のメイン装甲の65パーセントがやられはったわ。案外いけるとタカ括ったけど、土蜘蛛はウチ一人でも厄介な相手みたいです」

 

「装甲を増やしますか?」

 

「いいえぇ、今のままでええ。後のこと任せまっせ」

 

柘榴は左手に持っていた軍刀をベルトに付けて、さっさとガレージを後にする。

そんな彼女を一人の青年が出迎えた。

 

「柘榴さん!お、おかえりなさい、ませ!」

 

彼は朱月優也(あかつき ゆうや)と言い、このキサラギ社に入社して間もない新入社員だ。

一目見て彼を気に入った柘榴に引き抜かれて、現在彼女の秘書をしている。

深々とお辞儀をする彼の頭を柘榴は撫でて

 

「うん、ただいま」

 

と、言って微笑むのだった。

 

 

~~~~~

 

 

 

柘榴は今回の任務結果の報告を済ませると、執務室で一人書類の整理を始めた。

彼女が帰ってくるまでの間に朱月が整理してくれたものだ。

しかし柘榴の表情はかなり退屈そうで、時折タブレット端末に目を向けては、二、三度画面をタップして、紙の書類に目を通していく。

暫くその作業が続いて、ノックする音が響き、柘榴はドアに目を向ける。

 

「開いてます」

 

ドアに向かってそういうと、黒い軍服に身を包んだ男が入ってくる。

目深に被った軍帽を取り、ナイフの様に鋭い目と大きな傷のある顔を見せた。

彼は我師谷 独朗(がしや どくろう)、指揮官である柘榴の補佐を勤めている男だ。

 

「少佐、第2支社社長より通信が」

 

「繋いで」

 

つまらなさそうな顔で書類整理に勤しんでいた柘榴はタブレット端末を机の上に立てて置いた。

その画面にキサラギ第2支社の代表の姿がライブ通信で映された。

男は柘榴よりもずっと歳を重ねている壮年の男性だ。

 

「朱凰少佐、土蜘蛛を逃したらしいな。」

 

「あら情報のお早いことで。随分手酷くやられましたわ。」

 

「奴は三企業全てから危険視されている最重要指名手配者だ。君も知っての通り、既に多くの人員が奴の手によって失われている……。」

 

代表はそう言って椅子に背を預けた。

柘榴は「そうねぇ」と答えて更に続ける。

 

「わが社の射突型ブレードが盗まれた事実をウチに教えてくださったら、首を持って帰れたはずやのになぁ?」

 

「……?それはどういうことだ?」

 

代表は聞き返す。

柘榴は椅子に深く身を沈めて続けた。

 

「あの土蜘蛛は非合法の改造を施したACなのはご存じの通り。やけども、あの脚部パーツにはわが社の独自製品でもある射突型ブレードが四基、足先に取り付けられてはったんよ?その事実は御存知??」

 

「……。」

 

「しかもご丁寧に四基とも成形炸薬弾を使ってはったんよ。ウチの知る限り、あれはアンタらの第2支社の工場で作ってた開発中の新型のはずやけど……?」

 

「……そうか……君に伝えていなかったことに関しては謝罪しよう。…実は先週、第2支社の試作兵器を開発している工場がテロリストに襲撃を受けたことは聞いているな?

 

「ええ。」

 

「その際、試作していた新型兵器を強奪されていたことは、我々の間で秘匿にしていたのだ。このことは本社にもまだ伝えていない。」

 

柘榴は傍らに置いていた煙管の傍に手を置く。

独朗がそれを見て火皿に葉を詰めてマッチで火をつけた。

柘榴はようやく煙管を手に取り紫煙をくゆらせる。

 

「…そらそうやろな。上に知られたらおおごとや。」

 

「……この件は内密に済ませたい。ヤツを野放しにもしてはおけん。」

 

「やからウチに奴を始末して、武器も持ち帰れと?」

 

「いや、試作品に関しては完全に破壊してくれ。我々が提供したと思われるような証拠を残したくない、私からは以上だ。幸運を祈る。」

 

通信が切られ、タブレットの画面が戻る。

 

「……ふうん?」

 

柘榴は灰皿に灰を落とすと、独朗に声をかけた。

 

「独朗、第二支社のテロリスト襲撃の調査をお願いします。」

 

「了解。」

 

独朗が軍帽を被り直して部屋を出ようとドアを開けて立ち止まった。

 

「わっ!?」

 

直後に響いてきた驚いた声と、何やら倒れこむ音と、紙の散らばる音。

「すみません!」と、恐らくは独朗に謝っているであろう朱月の声が聞こえ、

独朗がその場でしゃがみ込んだ。

いったい何事かと思った柘榴は椅子から立ち上がり、彼の後ろから廊下を覗き込む。

 

そこでは朱月が床に散らばった書類を懸命に拾っていた。

独朗もそれに手を貸している。

恐らくは扉をノックしようとしたら独朗がドアを開けて鉢合わせになってしまい、思わず驚いて声を上げ、書類を落として床に散らばせてしまったのだと。

 

「…ぷっ」

 

合点がいった柘榴は朱月の “ そういうところ ” がどこかおかしくてつい笑ってしまった。

夢中になって拾っていた彼もその声に気付いて顔を上げる。

口元を押さえてくすくすと笑う彼女を見て、朱月は赤面した。

 

 

 

 

 

 

 

 








AC用ガレージ




ガレージでは尊の修復作業が本格化し、機体の各パーツが分解されていた。
そして機体の胴体部、コアと呼ばれるパーツにパイルバンカーが打ち込まれた箇所を確認していた整備士が整備長を呼んだ。

「どうした?」

「いえ…この打ち込まれた箇所のココ見てください。パイルバンカーにしちゃ…なんか生々しくないですか?爪で引っ搔いたというか、歯型っていうか…。」

「んな馬鹿な、鹵獲品か何かを使ってたから変に手でも加えてたんだろ。まだコアは使うんだから、早くその辺を溶断しちまえ。配線ショートさせんなよ?」







(了)







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