ARMORED CORE -Resume “N”- 作:アカ狐
ジョンはいきなりの連絡に驚きを隠せなかった。
普段オペレーターのブリードが依頼関係を一任して選別していたのをこなしていたというのもあり、自分の方に依頼を持ち掛けられたのは初めてのことだった。
依頼主のネスラという女性の名前にも聞き覚えの無かったジョンは訝しんだ。
「俺に依頼ってどういうことだ?そういうのはブリードに一任していたはずだが」
ジョンは端末越しにネスラに疑念をぶつけた。
依頼はオペレーターであるブリードが見繕ってきて、ジョンはそれをこなしていたのだ。
彼が自分に選ばせてほしいと頼んでも、
「お前の実力に見合った依頼しか選んでないんだ。もう少し経験を積んだら少しは選ばせてやるよ」
と一蹴されてしまったときのことを思い出しながら。
しかしネスラの声は淡々としていた。
「私の依頼は君のオペレーターを介してはいない。これは君に直接頼んでいるからな。別に断ってくれてもいいが、どんな依頼かだけでも聞いてはくれないか?」
「……まあ、聞くだけなら」
「いい返事だ」
ネスラはそう言って話を続けた。
「君に依頼するのは、現ミラージュ領にある旧アンバークラウン跡地にある閉鎖施設 “ アビス ” そこの調査を依頼したい。」
「調査…?目的は??」
「そこはクライアントの事情で答えることは出来ない。私自身もクライアントの代理人に過ぎないので全てを把握はしていない。」
「……信用出来ないな。」
「構わないだろう?報酬の金額さえ支払えばどんな依頼でも受ける無二の存在が、君たちレイヴンなのだから。」
「…幾ら出すってんだ?」
「250000cだ。アビスに侵入し、内部の調査が完了次第支払う。」
破格の値段にジョンは息を飲んだ。
今まで彼が受けた依頼でも最高額は50000cだった。
それをただの調査依頼にも関わらず、5倍の報酬を吹っ掛けてくるなんてどうかしてる。
それほど調べたいものがそのアビスってところにあるのか?放棄された閉鎖施設なんだろ?
考えれば考えるほど頭がまとまらない。
「一旦持ち帰りにしてもいいか?ブリードの相談なしにそういう依頼は……」
「そのことなら心配ない。君と話をしている間にも既に話は通してある。“好きに使ってくれて構わない”と言われている。」
「それを早く言ってくれ、…まあ分かった。そういうことなら引き受けるよ」
「商談は成立だな。準備が出来次第始めてくれ」
ネスラのその言葉で通信は終了した。
ジョンは部屋を出てその足でガレージへ向かう。
ガレージでは機体の修理が進められていく様子をブリードが見ていた。
ジョンはブリードにさっきのネスラの依頼の話をしようと声をかけた。
「ブリード!依頼の件なんだけど……」
「あの所属不明機の事ならミラージュが回収していった。初の撃墜報告らしいからな」
「いやそっちじゃなくて」
「??、お前何の話をしてるんだ??」
「え?だから依頼の……」
「なんの依頼だ?」
「え?何も聞いてないのか?」
「俺を通さずに依頼が来るわけないだろう?」
ブリードの言葉を聞いたジョンは唖然とした。
ともすればネスラの発言は嘘だったということになる。
ジョンは慌てて先程の通信のやり取りと依頼内容をブリードに伝えた。
その話を聞いてブリードは驚く。
「お前それ、どういうことだ?依頼内容は文書だったか?」
「いや、口頭だったけど…」
「まずいな、それじゃあ報酬が払われるかどうか怪しいぞ…」
「受けちまったし、行ったほうが良いに越したことは無いんじゃないか??」
頭をぼりぼりと掻くブリ―ドにジョンは言った。
考えていても始まらない。
それに任務自体は簡単な施設内の調査なのだ。
行って見て回って、戻ってくる。
敵の存在も示唆されていないのならこれほど容易い依頼は無い。
新型ミサイルのテストなどと言われて機体操作も覚束ないというのにミサイルを一定時間避け続けるという、レイヴンになりたての頃に受けた依頼より遥かにマシだと思った。
ブリードはしばらく考えてから、
「わかった。だが次からは俺もそのネスラって奴との話には入れろよ?」
と言い、ジョンはそれにわかったと二つ返事で答えるのだった。
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「前回のミッションの修理が追い付いていないから、被弾にだけは気を付けてくださいね!」
「ああ、分かってるよ!ありがとう!」
ジョンは整備士に一言返すと機体を起動させ、ガレージから弾痕の残るディンゴキラーを動かしていく。
そうして機体はガレージの上空で駐機していた輸送ヘリのアームに掴まれて、目的の閉鎖施設アビスのある場所へ向かった。
本来はパーツを換装して対応すべきところではあったが、前回のミッションから時間がそこまで経っていない為にパーツを購入してもすぐには手元に届かないことをブリードが渋ったためであった。
しかしこの部分に関してはジョンも同意見だった。
ジョンは機体の最終調整をしながらブリードとネスラから貰ったアビスのマップ情報を見ていた。
アンバークラウンはミラージュの統治する領地に存在する既に放棄され廃墟とかした地下のコロニーで、アビスはその下層部に造られた施設のようで、かなり広い空間だということしか情報が無く、何のために造られて、何故放棄されたかも分かっていないようだったが、ブリードの調べで一つだけわかったことがあった。
そのアビスという場所が、二百年以上も前に栄華を極めたとされる「再生の時代」と呼ばれる頃のものだということだ。
ジョンはそれを聞いたとき、調査中に崩落事故が起きて生き埋めにならなければいいが。と考えていた。
「目標地点に到達。機体を投下します」
輸送ヘリのパイロットからの通信と共に、機体が下ろされ、地下都市アンバークラウンのさらに地下深くに通じる巨大な穴にディンゴキラーを降下させていく。
ジョンは高度計とマップの座標を確認しながら機体のブースターを噴射させて、ゆっくりと機体を着地させた。
以前任務でビルからブースター無しで着地した際に、その衝撃でムチ打ちになったことを頭の片隅で思い出しながらレーダーとモニターを交互に確認する。
周辺に敵影はない。マップを確認しようとするが、表示が出ない。
何かしらの障害が発生しているようだ。
レーダーは問題が無いのにマッピングシステムだけに障害が出ていることに違和感を覚えつつ、
距離にして200m先は真っ暗闇なただ広いだけの空間に気味の悪さを感じていた。
閉鎖施設アビス
一体誰が何の為に建てた施設なのか、再生の時代にここで何が起きたのかは想像もできない。
「ジョン、通信は聞こえるか?」
ブリードの通信が聞こえ、ジョンも回線を開く。
「ああ、通信は問題ないが、マップがおかしい。表示がされない。」
「故障か?」
「分からない。とりあえずレーダーは問題ないから、支障はないが……」
「…わかった。とりあえず周辺の調査を始めろ。」
ブリードの指示を受け、ジョンは行動を開始する。
敵の反応も無く、自分の機体が動く音だけが響く空間を調べて回る。
定期的に周囲をスキャンするが、機影を捉えることは無い。
地形もずっと平坦で何も無いと思っていたジョンだったが何かに気が付く。
「……ん?」
「…何かの残骸か?」
ジョンが見つけたのは、巨大な兵器の残骸だ。
クロ―アームとキャノンが見えたのでそう判断したが、機体の損傷が激しい。
完全に破壊され機能を停止しているらしい。
それを確認したジョンはハッとしてもう一度スキャンをかけた。
平坦だと思っていた床には、かなり年月が経ってはいるものの、空薬莢や、弾痕、爆発の痕が残されていた。
この巨大な謎の機体は、戦闘によって破壊されたものだとジョンは悟った。
「ブリード、旧時代のデカい兵器の残骸を発見した」
「機体にアクセスして情報は抜き出せないか?」
「損傷が激しすぎて無理だ。反応しない」
「…了解だ。仕事は終わり……」
ブリードがそう言い終える直前、ジョンは突如鳴り響いた警告音に反射的に機体を横に跳ねさせた。
次の瞬間その場所が爆発し、ジョンはレーダーが映した敵の位置を元に視線をやる。
そこには、あの赤いACが居た。
あのとき撃破したはずの機体と全く同じ構成の機体が、そこにはいた。
Act.4 END