野球少女たちのシンデレラストーリー〜白球のメッセージ〜   作:nothing

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高校生組のプロローグです。TPの3人を主人公にしています。


プロローグ

気温が零度を下回り、吐く息が凍りつく寒空の下で3人の少女たちが不安そうな面持ちで顔を見合わせている。今日は、彼女たちが受験した私立三色(みしき)高校の合格発表日で、あと十数分後には合否が確定する。

 

「どどどどうしよ……!もし受かってなかったら……!」

「奈緒やめて。こっちまで不安になるから」

「凛の言うとおりだよ奈緒。もうなるようにしかならないわけだし」

 

太眉の少女はかなり緊張しているようで、声は震え目も虚ろだ。そんな姿を見て少しばかり落ち着いたのか、強ばっていた表情を緩めて彼女を鎮めようとする2人の少女。

太眉の少女が神谷 奈緒、クールな雰囲気の渋谷 凛、明るくも儚げな北条 加蓮。3人は同じ中学校に通う友人同士で、高校でも同じ学校に通いたいと受験勉強を頑張ってきた。

 

「うぅ……。人、人、人……ゴックン」

「だからもう緊張しても遅いって」

「あ、そろそろ時間だよ」

 

校内に設置されている合格者の書かれたパネルには布が掛けられているが、それが職員によって外されていく。ざわめいていた他の受験生たちも固唾を飲んでその様を見つめている。

 

「916……916……」

「……あった。はぁ、良かった」

「私も見つけた!奈緒は!?」

 

凛と加蓮は自分の番号を見つけたようで安堵の笑みを浮かべている。しかし、いまだ奈緒は番号を見つけられないらしく視線をあちらこちらに彷徨わせている。

 

「916……っ!あった!あったよ凛!加蓮!」

 

不安げな表情から一転して喜色満面の笑みで振り返る奈緒。振り返った先の2人も同じ表情をしており、抱き合うようにして喜びを分かち合う。

 

「「「やっっっったーーーー!」」」

 

彼女たちの声は冬の澄んだ空気に乗って響いていた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

「「「カンパーイ!」」」

 

所変わってここは大手ファミリーレストラン。彼女たちは合格を祝う祝杯を上げていた。卓上には加蓮の注文した山盛りポテトとドリンクバー用のグラスがあり、3人は合格の喜びとこれからの展望を語り合う。

 

「いやーみんなで合格できてよかった〜!」

「そうだね、また3人一緒にいられる」

「うん、本当に良かった!」

 

ポテトをつまみながら話し続ける3人。話題は入学してからの活動に移っていく。

 

「野球部だよな?」

「うん」

「もちろん」

 

暗黙の了解をあえて指摘するような、端的な確認を奈緒が発した。その期待に反することなく凛と加蓮も頷く。凛にいたっては「何をいまさら」と言わんばかりの呆れ顔を浮かべて。

彼女たちは小学生時代から一緒のチームでプレイしてきた仲で、そのコンビネーションは他の追随を許さない精度を誇っている。この夏まで3人が所属していた最上第三(もがみだいさん)中学校野球部は昨年と今年の2年連続で全国大会に出場しており、実績も十分備わっている。

 

「でも、遂に私達も三色の野球部に入るんだね」

「春夏常連、今年の神宮*1にも危なげなく出場してる強豪の一員か〜。実感わかないよ」

 

加蓮と奈緒がそう零す。いかに全国大会経験者といえど中学と高校の差は大きい。強豪校である三色高校野球部に入部するということに、まだ現実味が無いようだ。

 

「でも、やるからにはスタメンを狙うよ」

「凛……!」

「そうだね。やるからにはスタメン、だよね!」

 

闘志のこもった言葉が凛の口から発せられ、それに触発されたのか、加蓮と奈緒の目付きも変わる。

 

「よし!あたし、バッティングセンター行ってから帰る!」

「私も行くよ」

「受験で鈍っちゃってるし。走り込みとかもやらなきゃね」

 

合格祝いの空気はすでに消え、次のステージへ目を向け始めた3人は、3ヶ月先の入学に向けて再スタートを切った。

 

 

 

そして季節は春を迎え、彼女たちは晴れて私立三色高校に入学した──。

*1
明治神宮野球大会。秋に行われる秋季大会を勝ち抜き、その先の地区大会(北海道〜九州の10ブロック)で優勝した10校で優勝を争う

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