ゲームのチート国家連合が異世界にログインしました   作:御代川辰

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Prologue
第零話前 転移前夜


 時は西暦2057年。仮想現実(Virtual Reality)の世界に感覚・精神・意識を完全没入させる技術、通称フルダイブシステムが完成してから20年以上が経過した頃。

 

 24年8ヶ月、およそ四半世紀という長い年月の中で、全世界で発売・配信されたVRゲーム作品は累計6100タイトル以上。

 

 その中でもMMORPG、FPS、オープンワールド、ウォーシミュレーション、アダルトゲームの五つの分野が絶大な人気を誇っており、実際に全てのゲームタイトルのおよそ50%。実に3000以上のタイトルが上記五つのいずれかであった。

 

 四半世紀もの間世界を熱狂させたVRゲームの人気はもはや衰えることを知らず、むしろ年月を重ねるごとに過熱する一方で、需要に対して供給が追い付かないことすら当たり前だった。

 しかしその長い発展の歴史の中でも、人気の低下などを理由に姿を消した作品や、名前を知る者が少ないマイナー作品に分類されるものも存在する。当然これらのゲームが脚光を浴びる機会は非常に少ない。

 だが、知名度が限りなくゼロに等しい作品を愛好し、周囲に紹介する者もいる。その結果として知名度が上昇してリメイクされたり、マイナー作品から脱却してメジャー作品の仲間入りすることもある。

 しかし悲しいかな、この逆の現象も必ず起こる。人気タイトルであっても運営会社の倒産や、方針の転換などによってサービスが終了することがある。

 

 

 

 そして同年5月16日。以上の例に漏れず数ある複合型オープンワールドゲームの中でも登録ユーザー5000万人以上、動画共有サービスにおける実況動画投稿数3億本以上を誇る大人気ウォーシミュレーションゲームである〈Another World Wars〉が、運営会社の意向によるサービス終了に伴い18年の歴史に幕を降ろすことになった。

 

 もちろん長い間自らが生きている世界、〈AWW〉が終わる当日の夜には多くのユーザーがサーバーに集まり、こちらでしか会えない友人や長年競い合ったライバルたちと共に、あるいは一人で静かにと皆思い思いに最後の夜を過ごしている。

 

 そんな中、ゲーム内でも超大国の称号を持つ十ヶ国の代表たちが、一つの国に集まっていた。

 

 

 

 

 [[西暦2057年5月16日 20時05分]]

 《大御和皇国(おおみわのすめらみくに) 八之神大京(やのかみのおおみやこ) 中央第壹地区縁祥(えんしょう) 大皇宮殿(おおかみのみやどの)

 

 君主の宮の入り口に五十数人の男女が集まっている。彼らこそ超大国の代表たるプレイヤーとその友人・家族である。

ここ(AWW)で集まるのは久しぶりだね。待っていたよみんな。それから、こどもたちも」

 薄い黄色を基調とした束帯(そくたい)に身を包み、穏やかな笑顔で一行を迎える青年。名を【神ノ世(かんのよ)真言(まこと)】。日本サーバー・世界ランキング共に第一位の超大国、大御和皇国の大皇(おおすめらぎ)である。

 

「今夜はみんな(家族)で厄介になるぜ、先輩(オヤジ)

 真っ黒なスーツと白のネクタイ、そして白のワイシャツに身を包む骨太の男。名は【コンラート(Koenraat)ペイル(Pijl)】。

 北欧サーバー第二位、世界ランク第九位の超大国、《エンクライド共和国》大統領(President)

 

「お久しゅうござんす、真言(まこと)殿。またお世話になります」

 紫色の地に花や川の刺繍(ししゅう)が施された和服に身を包み、京言葉で話す女性、【塩川(しおかわ)(あや)】。

 日本サーバー第三位、世界ランク第八位の超大国、《扶桑皇国》女皇(にょこう)

 

「《…………謝謝(ありがと)…………言先生(真言さん)…………》」

 龍の模様が描かれた黄色の冕服(べんふく)を身に(まと)い、濃い黒色の冕冠(べんかん)を被った寡黙な少年、【(ㄩˋ)雷統(ㄌㄟˊㄊㄨㄥˇ)】。

 中国サーバー第一位、世界ランク第五位の超大国、《海盤》皇帝(ㄏㄨㄤˊㄉㄧˋ)

 

「おなかすいたー!早くみんなで御飯食べたーい!」

 紫・濃紺・青の蛍光ラインが描かれた漆黒のボディスーツを肌着代わりに、真っ黒なフードつきロングコートと黒い服、そして黒のハーフパンツと黒尽くしの服を身につけた、いかにも天真爛漫(てんしんらんまん)という言葉をそのまま絵に描いたような態度の幼い少年は、【エヴゲニー・クルニコヴ(Евгений Курников)】。

 西ロシアサーバー第二位、世界ランク第七位の超大国、《クドラク帝国》帝王(Царь)

 

「エヴゲニー待ってよー!」

 そしてエヴゲニーの後ろを追いかける少女は、エヴゲニーのガールフレンドであり、西ロシアサーバー第一位、世界ランク第六位の超大国《ドレヴォボグ連邦》大統領(Председатель)【カチューシャ】こと【エカチェリーナ・クルニコヴァ(Екатерина Курникова)】。

 

「久しぶりだな真言。達者な(よう)で何よりだ」

 コンラートとは対象的に純白のスーツとネクタイで着飾った、銀髪とグレーの瞳を持つ長身で細身の男、【高千穂(たかちほ)隼人(はやと)】。

 日本サーバー第四位、世界ランク第十位の超大国、《熊襲連合国》首相。

 

「遅くなりましたが、お久しぶりです、真言さん」

 ナチス親衛隊の制服を真っ白にしたかのような、中二病罹患者の心を(くすぐ)る衣装を身に纏う金髪碧眼の青年、【ヒルデベルト(Hildebert)ヴァッテンバッハ(Wattenbach)】。

 北欧サーバー第一位、世界ランク第二位の超大国、《神聖グロウデニア帝国》大帝(Kaiser)

 

「夜分遅く失礼します、師匠(おじさん)

 着崩した迷彩服から除く真っ黒な肌が特徴的なメラニズムの少女、【マイ()リーゼル(Riesel)ヘッダ(Hedda)ナツメ(夏目)】。

 日本サーバー第二位、世界ランク第四位の超大国、《軍事国家オリュンポス》総統(Führer)

 

「やあ!さっきぶりだな相棒(親友)!」

 黒縁と赤のベレー帽と金ボタンが煌めく深緑色の軍服。その上からブラウンのロングコートを着こむ大柄な黒人の男、【ケネス(Kenneth)ハンフリー(Humfrey)】。

 アメリカサーバー第一位、世界ランク第三位の超大国、《ウェドニース連邦》大統領(President)

 

 ここに、自国を超大国へと導いた十人の覇者が、最後の瞬間を共にするため集結した。

 

 

 

 [[同年同日 23時55分]]

 《中央第壹地区星辰門(せいしんもん) 扇町通(おうぎまちどおり)

「後五分でこの世界(ゲーム)が消えるんだよな……」

 ネオンと街灯に照らされ、多くのNPCが行き交う深夜の街を歩き、仮想の夜空に浮かぶ巨大な満月を眺めながら、深紅の衣装を纏う青年【アルテュール(Arthur)ルセル(Roussel)】が呟く。

「ああ。短い間だが、最後にいい思い出ができたよ」

 アルテュールの言葉に答えるのは、焦げ茶色を基調とした軍服姿の男【ギュンター(Günter)ベンゲン(Bengen)】。

 

 二人はAWW中でも珍しい、国家を作ることをせず自らの足で世界を旅し、各地で傭兵や行商人として活動する流浪者と呼ばれるプレイヤーである。

 当然ながら旅をするという目的のもと、戦争当事国や紛争地帯などに危険を承知で足を運ぶことも多々あり、多くのプレイヤーから敬遠される存在だが、彼ら流浪者の活動が時に思いもよらぬ経済効果を生み出すこともあるため、初心者プレイヤーからはとても頼りにされているのが実情である。

 

 そして、アルテュールとギュンターの二人は、AWWにおいて数少ない流浪者の実況者であり、チャンネル登録者数600万人以上の人気実況配信者である。

 しかし、なぜ二人がこのような場所にいるのか。

 実は二人は昨日動画投稿者としての活動を完全に終了し、本業である会社員として生活しようとしていた。その祝いを兼ねて御和に訪れているのだ。

 

「ギュンター、記念に歌を詠んでおこうぜ。(ほう)けてたら最後の時間がもったいない」

「そうだな。(しも)の句は頼む」

 深呼吸。まず心を落ち着けて言葉を整理する。そして、頭に浮かんだ言葉を声に出す。

 

 

──願わくは 天に満ちたる 望月(もちづき)の──

 

 

──瞬きの間の()みを忘れじ──

 

 

 

 [[同年同日 23時58分]]

 《中央第壹地区縁祥 大皇宮殿》

 会食が終わった後、各国の代表らは各々(おのおの)が自由な時間を過ごしていた。

 例えば彩は庭園に咲き誇る花々を眺めながら羽虫たちと(たわむ)れ、エヴゲニーやカチューシャ、そして首脳各自が連れて来た子供たちは皇居をまるごと使って鬼ごっこやらかくれんぼやらをして遊び、隼人とコンラートはチェスをしている。

 そして、(ユウ)とマイはというと。

「《(ねぇ)舞先生(マイさん)…………》」

 (ユウ)がマイに話しかける。

「《自從我直接與(あなたと直接)您交談以來已經有一段時間了(お話をするのは久しぶりね)怎麼了?(どうかしたの?)》」

 (ユウ)の言葉に対し、マイは流麗な中国語で返す。

「……(ウー)さンは(イェン)さんノこト……どウ思っテる?……」

 (ユウ)は片言な日本語でマイに質問する。対して、マイはゆっくりと目を閉じ、少し間をおいてから答えた。

「そうねえ……強いて言うなら、師匠(おじさん)は私にとって神様みたいな人かしらね」

 マイの言葉の意味は(ユウ)には理解できなかったが、(ユウ)はとりあえず言葉を返しておく。

「よクわカラないけド…………(ウー)さんガ(イェン)さんのコとを神様だっテ思うのならきっとソウなんだね」

 

 

 一方の真言は、執務室でぼんやりと月を眺めながら、18年間の記憶を思い出している。ゲームの世界でもいいことばかりではなく、挫折しそうになった経験は数知れず。初めの頃は幾度となく亡国の危機を迎え、それでも尚として諦めずに国を(道引)き続け、大皇としての役目を果たして来た。

 そして、今夜自分の役割が終わる。一国の君主という大役を任され、その役割の元国を発展させるという大事業を多くの人々の協力によって成し遂げた。

 これでもうこの世界に未練はない。もう少しで、後十数秒で全てが終わる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────はずだった。




人物

神ノ世真言(かんのよ まこと)
本作の主人公で本名【神戸(こうべ)(あきら)】。
身長170cm、体重72kg、年齢52歳のサラリーマン(容姿は男前系)。
アバターの容姿は19歳の時に撮った自身の写真を元に作ってあるため、その姿は穏やかな優男(やさおとこ)風。
服装の趣向としては束帯や狩衣(かりぎぬ)道着(どうぎ)などの和装を好む。

ヒルデベルト・ヴァッテンバッハ(Hildebert Wattenbach)
本名【クルト(Curt)ガウス(Gauss)】。
身長183cm、体重95kg、年齢50歳の元軍人。
リアルの容姿をそのまま若くしたようなアバターを使用しており、金髪碧眼を持つドイツ人のステレオタイプそのもの。
服装はナチス親衛隊の制服を真っ白に染めた特注の軍服。

設定
仮想現実への完全なフルダイブ(精神没入)技術
出典:ソードアート・オンラインほか
茅場晶彦(株式会社アーガス代表取締役社長。ソードアート・オンライン)、クガ(本名不明、新興宗教法人教祖。ゼノスフィード・オンライン)、檀正宗、黎斗親子(幻夢コーポレーション代表取締役社長、及び副社長。仮面ライダーエグゼイド)、ジェームズ・ハリデー、オグデン・モロー(グレガリアス・シミュレーション・システムズ会長及び社長。レディ・プレイヤー1)の六人が共同で開発を始め、2024年に完成したシステム。
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