ゲームのチート国家連合が異世界にログインしました   作:御代川辰

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第零話中 転移→初接触

 [[西暦2057年 5月17日 00時00分]]

 突如として各超大国の領土全域を震度5の地震が襲った。小規模ではあるものの、一地点に限定してというならばまだしも陸地全てという広範囲で地震が発生するとなれば、さすがに耐震性建築物の少ない地域の被害は避けられなかった。

 

 当然ながら常日頃(つねひごろ)より地震が発生するような場所ではない地域に住む人々の混乱ぶりは相当だった。普段からニュースや教科書、避難訓練程度でしか地震に触れていない地域で地震が発生すれば、そもそもより地震に対してなんの備えもしていない現地の住民が大慌てで避難しようとし、その結果として事故が多発する。

 

 事故が発生すれば混乱が広がり、ただでさえパニック状態になっている人々がさらに恐慌状態になることで秩序が失われて身動きができない状況になる。

 動きを阻害されればさらに混沌とした状態となり、大規模な事故・事件へと発展してしまう。

 

 この影響はもちろんどこにでも飛び火するものだ。病院は膨大な数の救急要請にてんてこ舞いで、警察と消防は突然出動命令を承けて緊急出動しようにも装備が足りずに立ち往生、周囲に火山が存在する地域では地震の影響で休火山となっているはずの火山の活動が何の前触れもなく再開し、住民の避難誘導のために軍が出動する事態に。

 

 沿岸部に至っては高さ平均2m以上の高波が各国で観測され、漁村の住民に緊急避難命令を出した上で海軍、沿岸警備隊、水上警察、洋上武装学校までが警戒のため総動員される始末である。

 

 すでにサービスが終了し、完全に消滅しているはずのゲームになぜこのような異常事態が起こったのか。誰かが外部から干渉したのか、それともただのバグなのか、現状ではまだわかっていない。

 

 

 

 

 [[同年同日 00時12分]]

 《大御和皇国 八之神大京 中央第壹地区縁祥 大皇宮殿》

 

 大皇宮殿の会議室では、十の超大国の首脳及び関係者が緊急会合を開いていた。

「さて……この世界の最後を見届けようとしたら、大変なことになってしまったな……」

 最初に発言するのは、《軍事国家オリュンポス》陸軍元帥であり、【マイ・ナツメ】の父である【夏目煌輝(こうき)】。よく磨かれた鏡のような銀髪(シルバーブロンド)雪のごとき純白の肌(アルビノ)、そして鮮血を(たた)えたガラスの器さながらの真紅の瞳(ブラッディ・アイリス)をもつ、元陸上自衛官。

 

「各自本土とは連絡は取れてるのか?俺のところは全くだめだった。さっぱり連絡がない」

 続いて隣から回された資料を乱暴にテーブルに投げ、コンラートは全く打つ手なしとばかりに()()()()のポーズで発言した。表情からもかなり(いら)立っているのがわかる。

 

「うちは無線電波で連絡はとれています。ただ、衛星のシグナルがめちゃめちゃでGPSが使えず、遭難者の把握は困難。宇宙ステーションとも未だに連絡はとれていません。八方塞がりの状態です」

 発言者は銀縁の眼鏡をかけ、紺色を基調とした朝廷の文官さながらの民族衣装を着こなす【(Zhào)慈崔(Cícuī)】。《海盤》の外交部長官で、(ユウ)の従兄弟である。

 

「私のところはもう海洋学校が外洋調査に動いてるわ。ただ、かなり遅い時間帯だから嫌な予感がするのは否めないけど…………」

 カチューシャが不安げな表情で報告する。カチューシャの言葉に一同は一瞬戦慄するが、すぐに表情を改めて会議を再開した。

 

 

 

 

 [[同年同日 00時20分]]

 《ドレヴォボグ連邦(Древобо́г Содружества)バーバヤーガ(Ба́ба-Яга́)港沖28km ブシュユシュシイェ(Бушующее)海》

 バーバヤーガ海軍士官女学校所属訓練艦、〈БЯ-УС-019 ズァッカ(Жатка)〉第二甲板(デッキ)

 

「はあ……アタシ達ホントにツいてないわぁ……」

 バーバヤーガ校の整備科に通う第三学年の生徒の一人、ポリーナ(Полина)バベンコ(Бабенко)が魚雷発射筒の射出口の点検をしながら、同じく整備科第三学年で同級生のユリーヤ(Юлия)ポターニナ(Потанина)に愚痴を(こぼ)す。

 

 現在の気温は実に零下(マイナス)13℃で、水温は零下(マイナス)23℃。万一でも海に落ちれば即座に凍死だ*1

 

「この冬真っ只中のすごく寒い時期……それも真夜中に学生が海上警備だなんて、戦時中じゃあるまいし……」

 ユリーヤは何度目かもわからない、冷たい空気を吸い込みすぎておそらく外気より冷たくなったであろうため息を()く。

 

 実際彼女の言うとおり、いくら軍属の人間と言えどまだ18歳前後の学生、それも女子が軍事訓練や戦時中の人員不足以外の理由で沿岸警備に駆り出されることなどまずありえない。

 

 しかし軍の関係者から説明されたとおり(荒唐無稽だが)、建国以来類を見ない国難であることに変わりはないので、生徒側の多くは入隊してからが大変なのだから今同じことがあっても仕方がないと割り切って職務に就いている。

 

「いくら何でもこんな危険なこと(洋上警備)を学生にさせますか!?」

 突如として吹っ切れたユリーヤが、怒りを吐き出すように海に向かって叫んだ。

「ユリーヤ落ち着きなよ。そういうことは砲術科とか、水雷科とか、まあ戦闘組の言うことだしさ、アタシたち整備兵が出る幕じゃないから」

 ポリーナは荒ぶるユリーヤを(いさ)めるが、ユリーヤは工具箱から乱暴にドライバーとペンチを取り出すと一つ隣の魚雷発射筒の整備を始めた。

 

(……こうなるともう何も聞こえてないんだよねぇ……帰港したらいっぱい甘えさせてあげよう……)

 

 

[[同年同日 00時35分]]

 《ドレヴォボグ連邦 タンツィ・フ・トゥマニ(Танцы В Тумане)半島沖40km チェムノイェ(Темное)海》

 海軍第14艦隊旗艦 航空戦艦〈クルースニク(Кресник)〉艦橋

 

通信員

「《Адмирал(提督閣下!)!Сообщение(本艦より先行) от(する) предыдущего(駆逐艦より) эсминца(報告あり!)!》」

 

クルースニク艦長(第14艦隊提督)

「《Читать вслух(報告の内容は?)!》」

 

通信員

「《[Проверка на Вооруженные(本艦前方より、国籍ならびに所属)корабли неизвестного(不明の武装船を) гражданства(多数確認せり)]》」

 

砲術長

「《Капитан,пожалуйста(艦長、何か) дайте мне инсрукции(御指示は?)?》」

 

艦長

「午前00時38分、現時刻をもってアンノウン(所属不明艦隊)との接触を図る。不用意の刺激による相手側からの迎撃を避けるため、軍艦旗ならびに国旗は艦尾に移動し、主砲副砲は全て最大射角に。全艦に通達しろ」

 

通信長

「全艦、軍艦旗及び国旗を艦尾に移動!」

 

クルースニク通信長

『主砲と副砲も全て最高射角に上げ、提督の指示を待て!』

 

駆逐艦〈デュエニャ(Дуэнья)〉通信員

「旗艦より指示あり!アンノウンと接触するため、国旗及び軍艦旗を艦尾に移動し、全ての砲の射角を最大に上げよとのこと!」

 

デュエニャ艦長

「わかった。総員に告ぐ!至急全ての砲を最高射角にし、識別旗以外の全ての旗を艦尾に移動せよ!復唱!」

 

デュエニャレーダー員

「艦長待ってください!反応位置に(ふね)ではなく人がっ…………いやっ、少女の姿をした何かが海の上を歩いてます!」

 

デュエニャ艦長

「なんだと…………!?」

 

 

[[西暦2019年8月1日 00時33分]]

《タンツィ・フ・トゥマニ半島沖43km チェムノイェ海》

 未確認領域*2調査艦隊〈サーフェス〉

 

「しかし(さっぶ)っ!ねえ【(ひびき)】!今の気温何度なの!?」

 調査艦隊の旗艦を務める巡洋艦、【大井(おおい)】が駆逐艦の響に話しかける。

 

「ふぅ、ふぅ……少し待って……出た。気温マイナス16℃、水温マイナス31℃」

 響はしばし計器を眺め、算出された数字を淡々と報告する。もちろんこの言葉にはその場にいる全員が驚愕した。

 

「氷点下16℃ぉっ!?勘弁して欲しいっぽい!これ帰還するまでに絶対病気になるやつだっぽい!」

「艦娘だって風邪ひくことぐらい分かんだろうがクソ提督共!なんてことさせんだよ!」

 響の報告に駆逐艦【夕立(ゆうだち)】がちょうど《叫び(アッチョンブリケ)》のポーズで絶叫し、天龍は顔を真っ赤にして怒鳴る。

 

「……ワタシ達ヲ凍死サセル気カ……?」

 同じく響の報告を聞いた【港湾棲姫(こうわんせいき)】(個体名(はとば))もため息を()く。

 

「……そうでなくても悪意が丸見えよ……ん?」

 海の果てを眺めながら【(いかづち)】が呟いた。が、その直後。

 

「ちょっとみんな!船がこっちに来てる!」

 雷は接近してくる船に興奮し、他の艦娘の方に向かって叫ぶ。

 

 この言葉に一同が反応した。

 

「「「はあぁ~~~っ!?」」」

 

 ここに、並行世界とバーチャルの存在が初の接触を果たした。

*1
気温がマイナス三度以下であるにも関わらず流氷がないのはプログラムミスによるもの。故にドレヴォボグの港は基本的に不凍港。

*2
Unknown Field。西暦2019年5月末に津軽湾、広島湾、内海湾、東京湾、伊勢湾、錦江湾、有明海の七ヶ所に突如として出現した謎のゲートの内側に広がる同一の惑星に存在する広大な海の地球側での呼称。




マイ・リーゼル・ヘッダ・ナツメ(Mai Riesel Hedda Natsme\夏目舞)
本名同じ。
身長160cm、体重55kg、年齢18の学生。
ドイツ系ハーフ(母がドイツ人)。
先天性のメラニズムで黒人手前ぐらいまで肌が黒く、小学五年頃までいじめを受けていたが、本人は全く気にしていない。
真言は剣術の師匠。

玉雷統(ㄩˋ ㄌㄟˊㄊㄨㄥˇ)
本名【許永】(ㄒㄩˇ ㄩㄥˇ)。
身長150cm、51kg、年齢14。
台湾の中学生。
気が弱い性格であまり目立ちたがらない。
ゲーム中公の場では必ず冕服を着用するがあまり好きというわけではなく(かなり動きにくいらしい)、ほとんど洋服を着て過ごしている。


深海棲艦と艦娘について
出典:艦隊これくしょん
2014年1月に最初の個体【時雨】が確認され、2019年3月時点で500人以上の個体が存在している。
艦娘と深海棲艦はほぼ同一の存在で、DNAに含まれる塩基の構造とそれに伴って外見に相違が生じる(白色人種・黒色人種・黄色人種程度の違い)。
基礎能力は現行人類と比較して非常に高く、特に深海棲艦は知能が高くなるに連れて姿形が人間に近付いてゆくという特徴がみられるが、理由はよくわかっていない。
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