ゲームのチート国家連合が異世界にログインしました   作:御代川辰

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第壹話第弐節 開始

[[2019年 8月15日 午後2時58分]]

 

アメリカ合衆国(United States of America) ニューメキシコ州(New Mexico) ホワイトサンズ国定公園(White Sands National Park)

 

「始まった」

 

 砂漠と見紛うほどに広大に広がる砂の上を歩きながら、青白い顔の男が呟いた。

 地平線に隠れるほどに広がる高い空を見上げ、不気味な笑みを浮かべながらもう一言。

 

「世界を変えろ。ゴミクズども」

 

 

 

 

 

[[同年同日 午後1時28分]]

軍事国家オリュンポス(Military Nation Olympus) 首都エリュシオン(Elysium)

 

篠ノ乃(しののの)製コア持ちのISが地球に?確かな情報なの?」

 

 アポ無しで突然押し掛けて来たコンラート達からもたらされた情報に、舞は困惑した様子で問いかける。

 隼人とコンラートはうんとうなずき、ケネスも続けて発言した。

 

「間違いない。一連の事件で目撃されたISはデュノア社製のラファール・リヴァイヴ。正真正銘の〔原作の機体(オリジナル)〕だ」

 

 信じられないとその表情は驚愕一色に染まる。自分たち以外にもあの地球に行き来できる者が少なからずいること、これは真言たちも予想を立ててはいた。

 しかし実際に現れたのは未知の敵ではなく既知の敵、それもフィクションの世界の住人たちだった。

 

「65件の殺人事件で殺された102人は全て男、加害者と思われるISパイロットは三人とも女……つまり向こうに現れたのは女尊男卑論者ってことだ」

(よりにもよってそいつらか……)

 

 インフィニット・ストラトス作中の女尊男卑は、中世から近世のヨーロッパにおける男尊女卑やヒプノシスマイク作中における女尊男卑よりも遥かに酷いと言える。

 作中で描かれている人権団体の腐敗がいい例だ。

 そんな世界から来た凶悪犯を野放しにするわけにはいかない。

 

「バカ女どもの対処はカチューシャに任せるとして、俺たちはまずゲートを開かないと始まらないな」

 

 と、コンラートは宣言した。

 

 

 

 

 

[[20XX年 7月27日 午前6時50分]]

 

 学園敷地内にある学生寮の一室。一人の少年がベッドに座り、ぼんやりと壁を見つめていた。

 

「入学してからもう3ヶ月ちょっとかあ…………」

 

 【織斑(おりむら)一夏(いちか)】は狐につままれたような気分で、部屋の壁を見つめている。

 世界で唯一の男性ISパイロットとして、半ば強引に姉が勤務するこの学園に連れて来られてから3ヶ月がたち、事件も少なからずあったがだいぶこの学校での生活に慣れてきた。

 しかし、そもそもが女子校であるこの施設には男子生徒など居もしないし、男性の職員も一人だけであることも重なって今もなお堅苦しい空気があることは否めない。

 

「そう言えば(たばね)さん、今どこで何してんだろ…………」

 

 思い出したように携帯電話を取り出し、連絡先を纏めているアプリケーションを開いていくつかある電話番号の一つを選び、通話のマークをタップする。

 しかし、【篠ノ乃(しののの)(たばね)】と書かれた通話画面には、着信拒否の文字が浮かんでいた。

 

(ほうき)も千冬姉も心配してるのに……あの人本当にどこに居るんだ?)

 

 ため息を()いて仰向けにベッドに倒れこみ、寝転がったままあくびをする。

 もう一度起き上がると、隣の部屋の扉が開き、長い髪を束ねた女生徒が入って来て一夏に声をかけた。

 

「一夏。せっかく早起きしたのに、いつまでぼんやりしているんだ?朝食を摂る時間がなくなるぞ」

 

 制服に着替え終わった【篠ノ乃(しののの)(ほうき)】が、赤ん坊を見る母親のような穏やかな表情で一夏を見下ろしている。

 一夏は携帯電話を上着のポケットに突っ込んでベッドから立ち上がり、教科書と財布が入った鞄を手に部屋を出た。

 

 

 

 

 

[[2019年 8月16日 午前11時35分]]

 

『舞、そろそろ準備終わるぞ』

「うん、ちょっと待って」

 

 舞の父、煌輝の声がスピーカーを通して部屋に響く。舞は銀色の金属帯(ベルト)を腰に装着し、愛用の大型回転式拳銃(ヘビーリボルバー)と高周波刀を鞄に入れて部屋を出る。

 舞が基地の訓練場に着いた頃にははすでに小規模な転移装置が完成しており、見送りの人間も集まっていた。

 

「ほら、あなたの専用機。忘れてるわよ」

 

 舞の母、【ウルスラ(Ursula)デボラ(Debora)・ナツメ】が歯車のような紋章が刻まれた宝石が嵌め込まれた黒いリングを舞に渡す。

 舞はリングを受けとると、手首にしっかりと通した。

 

「それじゃ、行って来るね」

 

 一同に振り返って一言だけ発した後、颯爽と転移装置に乗り込む舞にケネスと煌輝があきれたように言う。

 

「おいおいそれだけか?言いたいことぐらい他にもたくさんあるはずだろ?」

「真言には何も伝えなかったのか?」

 

 舞はケネスと父の方に向き直り、満面の笑顔で返した。

 

「死ぬ前提で行ってきますなんてカッコつけて言うの、今時師匠(おじさん)ぐらいしかいないもーん!」

 

 舞の言葉に一同は笑いをこらえることができなかった。

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