ゲームのチート国家連合が異世界にログインしました   作:御代川辰

9 / 9
第壹話第参節 時空

 問おう。時間と空間ほど、定義が曖昧で不完全なものが存在するだろうか。

 

 

 過去から現在へ、現在から未来へ、河が上流から下流へ下って行くように時間が流れると言うが、それは果たして本当に正しい解釈なのだろうか。

 

 

 空間は広がり続け、いずれ限界が訪れて今度は縮み始めると言うが、それは果たして本当に納得のいく答えなのだろうか。

 

 

 時空は無数に存在し、過去現在未来は同時に存在していると言うが、それは果たして誰もが理解してくれる意見なのだろうか。

 

 

 宇宙は虚無から始まったとする説と混沌から始まったとする説の二つがあるが、それは果たして宇宙を理解しようとしていると言えるのだろうか。

 

 

 時間はゼロから始まり際限なく重なり続けるのではなく、時限爆弾のように途方もない数値から始まってゼロへと向かいカウントダウンしていると言うが、それは果たして多くの人を納得させることができる主張なのだろうか。

 

 

 そもそも時間も空間も存在せず、あるのは物質のみであると言うが、それは果たしてなぜそのような答えに至ったのか充分に説明できる考え方だろうか。

 

 

 宇宙とは一つの生命体であり、星や人、もろもろの生き物は細胞やウイルスに過ぎないとする人がいるが、それは果たして生命の根源がどこにあるのか理解していると言えるだろうか。

 

 

 問おう。時空とはそもそも、どのような物なのか。

 

 

 

 

 

[[0年0月0日00時00分]]

 

 無数に存在する円形の門以外はなにもない。時間という概念が存在しない異空間、ウルトラホール。

 無限に広がる空間に、一人の少女が始めからそこにいたかのように浮かんでいた。

 

「《Hoken Vürdem Ufan,(しつこいってさっきから)Sech báon Gilèóp?(言ってるのがわからないの?) Lotzā dolthû puēzr gukla?(そもそもあんたたち本当に人間?)》」

 

 苛立つ彼女の言葉通り、百数十人もの異形、“爬虫類型異星人(チタウリ)”が、舞を取り囲んでいる。

 その手には武器を持ち、仮面に隠された目からは殺気が放たれている。

 

「《Lhujué!(死ね!)》」

 

 チタウリ兵の一人が叫び、ジェットパックから炎を噴き上げて舞に飛びかかった。

 

「《Gêtz deong sün(悪いけどね、),Póil belo fàbta jurm!(私には時間がないのよ!)》」

 

 舞が叫ぶと同時にワームホールが出現し、ワームホールから黒いヘラクレスオオカブトのような機械が飛び出して掴みかかろうとしていたチタウリ兵の心臓を貫いた。

 一方の舞は高速で飛行するその機械を、迷いなく手に掴む。

 

「変身っ!」

 

 チタウリ兵たちが動揺しているのを他所に、掛け声とともにカブトムシをベルトのバックル部分に装着した。

 

   『──────────HEN-SHIN──────────』

 

 機械音と変身音が鳴り、ベルトから鎧のようなスーツが生成され始め、舞の体と身に付けているもの全てを包み始めた。

 鎧は胸から肩へ、肩から手先へ、腹から腰へ、腰から脚へと少しずつ覆い隠す。

 やがて兜のような仮面が顔を覆い隠した。

 鎧の胸の中央にはカブトムシのロゴとZECTの文字が刻まれている。

 その名は、“仮面ライダーダイナ(Dyna)ヘラクス(Heracus)„。

 

Tuksū jïm(あの畜生を) Lhugèmp!(殺っちまえ!)

 

 チタウリ兵がダイナヘラクスに向けて一斉に光線銃を撃つ。しかし、光弾も熱光線も鎧を貫けぬまま消え去る。

 ダイナヘラクスは敵の様子を確かめながらカブトムシの大角を指でつまみ、開くような動作を取った。

 ウルトラホール内に再び機械音が鳴り響き、スーツに隙間ができはじめる。

 

「キャストオフ」

 

 掛け声とともに開いた角を一気に動かした。

 

『CAST-OFF』

 

 音声とともに全身を鎧のように覆っていたスーツの一部が、爆弾の破片が弾けるように四方八方へと飛び散る。

 チタウリ兵の多くは対応が遅れ、その鎧のかけらを避けきれずに頭が吹っ飛んだり腕が千切れたりした。

 千切れた黒い肉片、無残に折れたままの骨、大量の青い血液が宙を舞う。

 そして、カブトムシ特有の縦に並んだ二本の角がダイナヘラクスの頭上を指し示すように現れ、三度(みたび)音声が鳴り響く。

 

  『──────────CHANGE-BEETLE──────────』

 

 世界最大級のカブトムシ、ヘラクレスオオカブトを(かたど)った仮面。

 その大部分を構成する禍々(まがまが)しい赤色の複眼は見る者を威圧する蛇のようである。

 チタウリ兵たちはその異様な姿を見て一瞬(ひる)むが、すぐに武器を構え直して臨戦態勢をとった。

 

「クロックアップ」

 

 対してダイナヘラクスは右手をベルトに触れさせ、掛け声を放つ。

 

『CLOCK-UP』

 

 刹那。異空間の内側を流れる光の奔流が、自らを取り囲む敵の動きが鈍り始める。

 時間が存在しない空間の中で、スーツ内を凄まじい速度で循環するタキオン粒子の作用によって、ダイナヘラクスの時間が加速する。

 逆に周囲のチタウリや空間の中を流れる時間は、川の流れる水に削られる岩の如く取り残されたまま変化しない。

 

「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

 舞は叫び声をあげながら凄まじいスピードで敵の一人に殴りかかる。一方のチタウリ兵は自分に接近する敵の姿を認識できていないのか、かなり混乱している様子であることがわかる。

 力の籠った拳が仮面に守られているはずのチタウリ兵の顔面にぶつけられ、頭蓋とともに肉や脳とともに神経を粉砕した。

 完全に生命を絶たれた生物だったモノの頭部から内容物が飛び散る。

 

「《Xósi!?(なんだ!?)》」

 

 突然味方の頭が潰れたことに動揺したチタウリが叫ぶが、その一言の(あいだ)に数人のチタウリ兵が死んだ。

 パニックに(おちい)った十数人の兵士が、歯車の狂った時計のように光線銃をめちゃくちゃに撃ち、同士討ちが起こる。

 混乱の最中(さなか)にあっても、ダイナヘラクスはもはや指揮を失った敵を狩る。

 ある者は腰から切り離される。またある者は首を折られる。心臓を貫かれる。手足を潰される。悲鳴をあげることなく屠殺(とさつ)されてゆく。

 そして。

 

『CLOCK-OVER』

 

 機械音とともにダイナヘラクスの、存在しないはずの時間の流れが正常な状態に戻った。

 大量の銃器と血まみれの死体が、重力も時間も存在しない空間で、無力に漂っている異様な光景が場を支配していた。

 

「だいぶ時間食っちゃったなぁ……いつもの三倍急げば間に合うかなあ……」

 

 自らが殺した無数の生物の死体を目の当たりにしてもなお冷静を保ち、ありもしない時間を気にしながら変身を解除した舞が呟く。

 彼女が振り返ると、半裸の女性が金属の翼を身につけ空を飛ぶ映像が浮かぶ、神秘的な光のリングが舞を見下ろしていた。




ウルトラホール
出典:ポケットモンスターシリーズ

無数に存在する並行世界・異空間・異世界を繋ぐゲート。
原作ではバーネット博士が研究している。


チタウリ
出典:アベンジャーズ等

爬虫類型異星人の一種。レプティリアンの下僕的存在。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。