CODE:Hyper Battle[新ライダー誕生!? 謎のデジブレインを追え!!]
翔たちが仮面ライダージェラスを倒してから10日後。
琴奈は、ホメオスタシスの地下研究施設で、パソコンと向き合っていた。
キーボードを打ち込む彼女の傍らには、ケーブルに接続されたマテリアプレートが置いてある。
「後はここをこうして……よし、完成!」
上機嫌で両腕を上げ、椅子にもたれかかる琴奈。完成したマテリアプレートを手に取って、楽しそうに笑う。
そのプレートには《怪獣図鑑》と名前が表記されている。これは重度の怪獣オタクである彼女が、アニメやゲームに登場した怪獣を纏めて資料としたアプリで、つまりは個人的な趣味の産物。
琴奈は、それをマテリアプレートとして完成させたという事だ。
「これならちょっとは戦いで役に立つはず」
そう言って琴奈は早速研究所を飛び出し、途中でコンビニに立ち寄ってから、翔たちに会いに向かうのであった。
※ ※ ※ ※ ※
「はぁ……暇だわ、ツキミ」
「そうですわねぇ」
一方。
ハーロットを『ママ』と呼ぶ二人の少女、フィオレとツキミは、コンビニの入口近くでしゃがみ込んで棒アイスを舐めていた。
今の彼女らは白いセーラー服に身を包んでおり、惜しげもなく広げられた足とスカートの丈の短さもあって、非常に男性からの視線を惹きつける存在となっている。
「何か面白い遊びでもないかな?」
「それでしたら、Cytuberの殿方でも呼んでみますか? とっても良い『遊び相手』になって下さると思いますわよ」
「うーん、そういう気分じゃないのよね~」
舌先でアイスを弄び、フィオレは鞄の中からあるものを取り出した。
人をマテリアプレート内のデジブレインと融合させるデバイス、ガンブライザーだ。
「これで遊んでみよっかなぁ」
「でも、マテリアプレートを持って来てませんわよ?」
「そーなんだよねぇ……」
アイスを食べ切り、退屈そうにフィオレが溜め息を吐く。
ツキミもアイスを咥えて、何か面白そうな事でもないかと思いを巡らせているが、やはり何も浮かばない。
そんな時だった。
「あら?」
ツキミが棒を捨てようとゴミ箱の前に立つと、ガラスの向こう側でコンビニの床にあるものが落ちている事に気付く。
中に入って拾ってみれば、それは怪獣図鑑というマテリアプレートだった。
同じように店に入っていたフィオレは、突然の出来事に目を剥いている。
「えっ、ウソ!? なんでこんなところに!?」
「きっと神様が私たちのために置いていってくれたんですよ」
「なるほど! じゃあ今日はこれで目一杯遊ぼう!」
そう言ってフィオレは店の中で商品棚の整理をしていた男に近付き、その腹にガンブライザーを押し付け、アプリを起動する。
《怪獣図鑑!》
「一緒に遊ぼうねぇ~?」
《
男は電流でも走ったかのように全身を痙攣させ、悲鳴を上げながらその姿をテクネイバーと融合させていく。
フィオレとツキミは鞭を片手に、彼の様子を楽しそうに見守るのであった。
※ ※ ※ ※ ※
それから十数分後。
翔と響、そしてアシュリィと鋼作と琴奈は、あるものを探して帝久乃市内を奔走していた。
琴奈が落としてしまったという、怪獣図鑑のマテリアプレートだ。
「ったく、なんでそんな大事なモン落としちまうんだ!」
呆れた様子で鋼作が言うと、隣で歩いている琴奈が申し訳無さそうに頭を垂れる。
「ほんっとにごめん! ちょっと慌ててたから……」
「どこで落としたか見当は付いてんだろうな」
「うーん……多分、コンビニかなぁ? 買い物終わって外に出ようと思ったら10人くらいの力士の集団に出くわしちゃって、避けきれずにぶつかったのよね」
「どういう状況だよ。っつーか、じゃあ間違いなくそこだろ」
鋼作が再び呆れ返る。
そして、目的地であるコンビニの近くまで辿り着いた、その時だった。
「……待って!」
突然にアシュリィが声を上げ、商店街の方を指差す。
商店街は騒然としており、さらにアシュリィの指差した場所には、信じられないものが立っていた。
腰にガンブライザーを装着している、二足で立つ怪人。踵や肘にキャタピラのようなものがついており、両肩から戦車の砲身が伸びている、口に葉巻のように人参を咥えている赤い兎のような姿。
間違いなくデジブレインだが、その姿は明らかに今までのもの違っている。
「なっ、なんだありゃ? ウサギ? 戦車?」
「ン゛ミ゛ャ~オ゛」
「……猫……?」
鳴き声を聞いて酷く困惑した様子で鋼作が呟いていると、琴奈は「あれは!」と驚いてみせた。
「Z.E.U.Sグループの傘下でも主に健康食品や野菜ジュースのヒットメーカーとして有名な『かつらぎ食品』が販売している『ラビットたんジュース』のデザイン担当
「え? オイ、どうした琴奈。なんで急にそんなアニメかなんかの販促回みたいな説明口調に……」
先程よりも動揺している鋼作だが、そこで畳み掛けるように響が両腕を大きく真上に上げて驚いた。
「なんだって!? それは本当かい!?」
「お前もいきなりどうしたんだよ!?」
「くっ、そんなに素晴らしい経緯で誕生したこの愛らしい怪獣を倒すわけには……!」
「何言ってんだこいつら、ツッコミが俺しかいねぇんだけど!?」
喚く鋼作、そんな彼を哀れんでか翔が後ろから声をかける。
「あの、僕が行ってきましょうか……?」
「あぁ……頼むわ」
鋼作が頷くのとアシュリィが「がんばれ」と声をかけるのを確認してから、翔はマテリアフォンを取り出してアプリドライバーを装着。
しかし、ウィジェットからチャンピオンズ・サーガを取り出そうとして、その手を止める。
「しまった、今日は戦闘データの解析するって言われたから置いて来たんだった……まぁこっちでいいか」
《ブルースカイ・アドベンチャー!》
マテリアプレートを起動した後、翔はそれをドライバーにセット。そして、マテリアフォンをドライバーにかざす。
《ユー・ガット・メイル!》
「変身!」
《
変身完了して剣を取り、アズールは怪人ラビットたん・デジブレインに立ち向かう。
「行くぞっ!」
「ミ゛ャ~」
上段からアズールセイバーを振り下ろし、頭を叩き割ろうとするアズール。
しかしそれは戦車の装甲のように強固なラビットたんの腕で防がれ、逆に胸へと蹴りを受け、吹き飛ばされた。
なかなか強い、とアズールは思う。しかし諦めず、今度は装甲のない脇腹へと横薙ぎに剣を振った。
だがそれも見切られており、バックステップで回避されたかと思うと、両肩の砲身と腕甲の銃口が火を吹き、人参型の弾丸がアズールの身体を襲いかかった。
「うわっ!?」
V1とはいえ、アズールが苦戦している。その光景を見て、アシュリィは思わず唸ってしまった。
「あいつ、ふざけた格好なのに思ったより強いね」
「ラビットたんだからね」
「……えっ、どういう事?」
「ラビットたんかわいいでしょ」
「コトナ大丈夫?」
「ラビットたんだからね」
「思考停止してない? ほんとにどうしたの?」
「ラビットたんかわいいでしょ」
「……ショウ、できるだけ速く倒して。なんかもうヤバそうだから」
「ラビットたんだからね」
「ショウ! 急いで! マジで! 一刻も早く!」
琴奈が放つ謎の空気感に耐えきれなくなったアシュリィが叫ぶ。
そうは言っても、パワーにそれなりの差がある以上、どうしようもない。V2でもこの相手は厳しいだろう。
どうすればいいのか。思考を張り巡らせた翔が辿り着いた結論は――。
「そうだ! 兄さん、フェイクガンナーを!」
「え? あ、あぁ……分かった、受け取れ!」
ラビットたん・デジブレインに目を奪われていた響が、我に返って言われた通りにアズールへとフェイクガンナーを投げ渡す。
それを受け取り、グリップエンドのスイッチを手の甲で起動した。
《
「偽装!」
音声と共にトリガーを引くと、アズールは黒い煙を纏ってその姿を変える。
今までと違う黒の装甲に身を包み、紫色のバイザーを装着した戦士。響がかつて使用していたペイルライダーに、今度はアズールが変身したのだ。
《オペレーション・ザ・ペイルライダー!
「ペイルライダー
ペイルライダーAEがフェイクガンナーのナックルガードを突き出し、ラビットたんへと攻撃する。
再び腕の装甲で防ごうとするものの、重い打撃によって逆に装甲が破壊された。
さらに続けて発砲すれば、ラビットたんの身体に装備されたキャノン砲や銃は一瞬で破壊され、使い物にならなくなる。
「あぁっ、ラビットたんのかわいさが……あれ、私は今まで何を……?」
「えっ、今ので正気に戻んの!?」
困惑する鋼作。
実は、このラビットたん・デジブレインには琴奈と波長の合う人間、つまりは『怪獣ラビットたんをカワイイと思う人間』を魅了し、洗脳して動きを封じ込める力があるのだ。
響はすぐに洗脳解除されたものの、琴奈は本人であるため脳の奥深い部分まで洗脳を受けてしまい、ラビットたんがダメージを受けて外見的な魅力を落とすまで解く事ができなかった、という寸法である。
「よし、これで終わりだ!」
《オーバードライブ!》
ペイルライダーが手に取ったマテリアプレートを装填し、必殺技を発動する。
ラビットたんはダメージを受け過ぎた影響か、反撃すらままならない状態であった。
《
「そぉりゃあああああっ!」
フェイクガンナーから伸びる青い刃と、アズールセイバーの斬撃。
その二つを受けて木っ端微塵となり、ガンブライザーの爆破によって破損した怪獣図鑑のアプリを吐き出して、ラビットたん・デジブレインは爆散した。
「あーあ、壊れちゃったか……」
帰り道。
壊れた怪獣図鑑のマテリアプレートを眺め、唇を尖らせて歩きながら、琴奈は呟く。
そんな彼女へ、翔と響は苦笑しつつも励ますような言葉をかけた。
「まぁまぁ、また作り直せば良いじゃないですか」
「翔の言う通りだ。ちなみにそれ、変身に使ってたらどうなっていたんだ?」
問われると、琴奈は『よくぞ聞いてくれました』とでも言いたそうな笑顔になって、こう答えるのであった。
「あのデジブレインと同じ感じだよ、ラビットたんになってた!」
それを聞いて翔も響も、ほっと胸を撫で下ろす。
使わずに済んで良かった、と。