仮面ライダーアズール スピンオフ・アプリ   作:正気山脈

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EP.01[悪意の再来]

 ――かつて、アクイラと呼ばれた情報生命体。

 地球と、そこに住む人々を支配しようとしていた神にも近しい存在。

 彼は未来を捻じ曲げる事により、全ての生命の未来が幸福なものに変わる『楽土』なる世界を築き上げようとしていた。

 しかしその計画も、世界の秩序を守るホメオスタシスの、仮面ライダーの手で打ち砕かれて世界に真の平和が取り戻された。

 それから時は過ぎ、2021年12月……。

 

「時間だ!」

「よし、せーの!」

『あけましておめでとう!』

 

 0時丁度になると、天坂家ではそのような祝いの声が上がって日付が1月1日に変わる。

 この日は肇と翔と響、そしてアシュリィ・ツキミ・フィオレの三姉妹がいるだけでなく、彩葉の姿もあった。

 肇は年末特有のバラエティ番組を見ながら一気にハイボールを呷ると、微笑んで六人の姿を見つめる。

 

「良い気分だ。また皆で年を越す事ができて、本当に嬉しいな」

「去年は散々な年始だったもんねぇ」

 

 あはは、と笑う翔。

 昨年の正月といえば、丁度サイバー・ラインでアクイラが復活した時期であり、楽土が生み出された日でもある。

 しかもその戦いにおいて、ホメオスタシスは苦い敗北を喫してしまった。

 とはいえ、結局はその後に人間の世界を取り戻し、現在に至るのだが。

 

「今となっては良い思い出ですわね~」

「うん、みんなで頑張って良かったよー!」

 

 フィオレとツキミが言い、アシュリィも頷いた。

 ちなみにクリスマスには響や肇はおらず、翔とアシュリィたち三姉妹が家で過ごしていたようだ。

 天坂家のはしゃぐ様子を見ていた彩葉はくすくすと笑い、彼女らや響たちに語りかける。

 

「明日は、私が作ったおせち……用意、してるからね。みんなで楽しもうね」

「彩葉さんのおせち! いいね、楽しみだ!」

 

 そう言った響の目は、子供のように輝いていた。翔はそれに同意し「そうだね」と相槌を打つ。

 以前の彩葉には料理など作れなかったのだが、意外な手先の器用さと覚えの速さもあって、翔の教えでメキメキと上達しているのだ。

 

「義姉さん、きっとすごく良いお嫁さんになるよ。ねぇ兄さん?」

「翔!? 義姉さんと呼ぶのはその、まだ速いというか……!」

「でも二人は絶対結婚するでしょ?」

「それは、そうだが」

 

 悪戯っぽく笑う翔と、むぅと唸る響。

 もちろん響と彩葉の二人は既に将来を誓い、愛し合う仲ではあるのだが、年齢的にもまだ結婚するには速い。

 だが彩葉は、頬を上気させつつ響の手にそっと自らの掌を乗せ、肩に頭を寄せて小さく囁いた。

 

「私はいつでも待ってるよ……?」

「あ、彩葉さん……」

 

 響は彼女の手を握り、互いに熱っぽい視線で見つめ合う。

 その姿に肇は呆れた様子で肩を竦め、翔も苦笑いしていた。

 

「お前ら、熱くなるのは良いが場所を選べよ」

「あははは」

 

 さらにフィオレとツキミも姦しく騒ぎ立て、二人を茶化し始める。

 一方アシュリィは、翔の顔をじっと見上げていた。

 

「ショウ」

「ん、何かな?」

「私も結婚したい」

「ちょぉっ!? 僕らの方こそまだまだ早いからね!?」

「ふふ、知ってる」

「もう……」

 

 慌てる翔を見てからかうように笑い、彼の頬を指でつつくアシュリィ。

 天坂一家は和やかな雰囲気で、年越しを過ごすのであった。

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 同じ頃。

 既に全ての領域が崩壊し、荒廃してしまったサイバー・ラインのとある場所では、黒いローブを纏った人影が集って跪いていた。

 老若男女を問わず数多くの人の姿があり、共通してローブの背中と頭部に『黒い涙を落とす血走った眼球』の意匠が施されている。

 彼らの前に立つのは、金色の刺繍がところどころにあしらわれたローブを纏う少年。一ツ眼の銀仮面で覆われており、その素顔は窺い知れない。

 

「機は熟した……我らの神の名の下に、遥か高き奈落からの天啓のままに、ホメオスタシスに鉄槌を振り下ろすのだ」

 

 言いながら、銀仮面の少年はある物を取り出す。

 それはマテリアプレート。さらにもう片方の手に握られているのは、マテリアフォンだ。

 

「今宵、今この時が復讐の始まりだ! 皆、この俺に続けぇ!」

『応!!』

 

 ローブを纏った者たちが声を上げ、同じく手に握ったマテリアプレートを次々に起動する。

 全てが同じ名称で、同じ音声がその場に響き渡る。

 

Cytube Dream(サイチューブ・ドリーム)……バイパリウム!》

 

 そして全員が腰部にガンブライザーを装着し、プレートを装填してデジブレインへと変異し始めた。

 ぬめり気と光沢を帯びた黒ずんだ茶色の肉体と、半月状に広がる扁形の頭部が長く伸びる怪物だ。

 銀仮面の少年がその興奮した彼らの様子を見つめていると、不意に背後から声がかかる。

 

『やぁ! 随分盛り上がってるようだねぇ』

 

 声の主の姿は見えず、彼の後ろには底の見えない穴のように黒く広がった泥水があるのみ。

 しかし、銀仮面の少年はその泥に向かって頭を下げた。

 

「ご助力、感謝致します。あなた様がいなければ我々の蜂起は大きく遅れていたでしょう」

『なぁに……気にする事などないよ、私もあの仮面ライダー共を潰したかったのさ』

 

 泥の中から触手が無数に伸びてうねり、そこから若い男の声が響く。

 その返事に嬉しそうに「ありがとうございます」と頭を下げ、少年はデジブレインたちと共にゲートを開いてその場を去った。

 

『さて……彼らはどう出るのかな?』

 

 奈落のように深く黒い泥水がブクブクと泡立ったかと思うと、まるで最初から何も存在しなかったかのように消失する。

 サイバー・ラインには、再び静寂が訪れるのであった。

 

 

 

 そして。

 1月1日の午前、事件は起こった。

 ヒルのような姿をした人型のデジブレインたちが突然に現れ、一斉に帝久乃市を襲い始めたのだ。当然、街中パニックになっている。

 この異変には当然ホメオスタシスも反応し、即座に対処のため地下研究施設へと人員が集められた。

 

「ったく、去年と言いなんだってんだろうな。正月くらいちゃんと休めってんだ、どんだけ暇なんだ連中は」

 

 鷹弘は酷く不機嫌そうに眉をしかめ、深く溜め息を吐いた。既にリーダーを退いた彼だが、緊急事態ということでこの場に姿を見せて指揮を執っている。

 一方、浅黄の方は腕を組んで首を捻っていた。

 

「それにしてもこの騒ぎの犯人って何者なんだろうね、Cytuberの残党? それとも久峰 遼の配下? あの楽土消滅の一件以来、ここまで大規模な暴動なんか起きなかったよね」

「どちらにせよ、だ。首謀者は必ず我々の手で捕まえねばならん。今は誰が対処に動いている?」

 

 翠月の質問に対し、答えたのは琴奈と鋼作だ。

 

「翔くんと響くんが街で戦ってます!」

「アシュリィ・ツキミ・フィオレもいるみたいだ、あの五人なら簡単に鎮圧できるだろ」

 

 その言葉に安堵した様子を見せるのは、進駒と彩葉。

 事実、特に翔の変身する仮面ライダーアズールはホメオスタシスの中でも最強の戦力だ。ただのデジブレイン相手であれば、まず負けない。

 しかし、鷹弘は首を横に振った。

 

「気を緩めるな。まだ向こうが何を仕掛けて来るか分からねェんだぞ」

「確かに。向こうもこちらの戦力については承知しているはず、なのに行動を起こすという事は、何か切り札を用意しているだろう」

 

 同意したのは肇だ。翠月や浅黄も、今回のテロ行為を不気味に思っているらしく、表情を引き締めている。

 

「琴奈と鋼作は街の監視を継続。状況が動けばすぐに出ていけるように、俺たちも準備しておくぞ」

『了解!』

 

 大きな返答の後、ふと「そういえば」と琴奈が口を出した。

 

「陽子さんがいないみたいですけど、ケンカでもしました?」

「ンなワケあるか、先に住民の避難のために動いて貰ってるだけだ」

「なんだぁ。じゃあじゃあ、新婚生活は順調?」

「当たり前だろ……ってオイ、これ今する話じゃねぇだろ! お前もさっさと働け!」

 

 払いのけるように手を動かし、琴奈を現場へ向かわせる鷹弘。

 琴奈はやや大げさに「うわぁ怒ったー!」と悲鳴を上げながら逃げ、しかしすぐにふざけるのをやめて行動に移った。

 

「ったく」

 

 腕を組みつつ、鷹弘も街の状況の監視を行う。翔たちの方は既にデジブレインたちの鎮圧を終えているようだ。

 だが、直後に再びデジブレイン出現の報せが届いた。

 

「まだやる気かよ」

「早速また五人が対処してます!」

 

 その声を聞きながら鷹弘も状況をモニタリングするが、しばらくすると彼は眉をしかめて目を細めた。

 というのも、デジブレインが次々と現れる割に、まるで歯応えがないのだ。

 ブルースカイリンカーのアズールや、アーセナルリンカーのキアノスに一方的にやられるばかり。だというのに、数は全く減らない。

 

「……妙だな。こいつら、一体何がしたいんだ?」

 

 腕を組み、考え込む鷹弘。

 そして、同じく戦況を見ている琴奈や鋼作に問いかけた。

 

「このデジブレインのデータは集まったか?」

「それがまだなんとも……ヒルっぽいとは思うんですけど」

「じゃあ、ガンブライザーの有無は確認できてるか?」

「あ、それは分かってます。翔くんから全員が装着してるって」

 

 琴奈のその言葉を聞くと、鷹弘はハッと顔を上げて鋼作と目を見合わせた。

 

「オイ、今の撃墜数は!?」

「既に50人近いはず……バカな、どういう事だ!? いつの間にこんな数のプレートとガンブライザーを用意した!? いや、それ以前に……!」

 

 琴奈にも指示を飛ばし、鋼作はフォトビートルを通して通信を行う。相手は響の変身するキアノスだ。

 そして、彼からの連絡を受け、目を見開いた。

 

「やっぱりだ、たった今響から報告があった! こいつら、ガンブライザーを使ってるのに元の人間が出て来ない! すぐに消滅してるんだ!」

「なんだと!?」

 

 人間がガンブライザーによって変異している以上、元となった人間が消失する事など起こり得ない。

 にも関わらず、数を減らすどころかむしろ増えるばかり。一同は困惑していた。

 

「一体何が起きてるってんだ……!?」

 

 

 

「くそっ、これはどういう事なんだ!」

 

 同じ頃、現場のアズールとキアノス、そしてピクシーズはヒルのようなデジブレインと交戦していた。

 戦闘能力そのものは、かつてのサイバーノーツや7種の幻獣系デジブレインに比べれば大した事はないが、それでも通常の個体に比べれば遥かに強い。ガンブライザー使用の個体に限ればトップクラスでもある。

 だが何よりも、一番の問題はその数だ。アズールらが倒している敵の総数は既に70を超えており、なおも増え続けているのだ。

 

「一体どこからこんな人数が……そもそも何者なんだこのデジブレインは!?」

 

 戸惑いつつも、レイピアでヒルのデジブレインを三体斬り裂くキアノス。

 爆炎と共にヒルが消滅するが、舞い上がった砂煙が晴れると同時に、デジブレインは数を六体に増やしている。

 このままではキリがない。仮面の奥で歯噛みしつつ、一度じっくり観察するべきだと考えてキアノスは後ろに下がった。

 もしかしたらこれらは分身で、この中のどこかに本物がいるのかも知れないと考えたのだ。

 

「お姉ちゃん、一気に殲滅しよう」

 

 しかしアシュリィたちピクシーは逆に、増え続ける怪人集団へと立ち向かう。

 

「ええ、参りましょう」

「オッケー! やっちゃうよ!」

《フィニッシュコード・トリオ!》

 

 プレートを押し込み、ピクシーはナックルガードを二度平手で叩いてトリガーを引き込んだ。

 すると剣先から五線譜が出現し、全てのヒルを絡め取って拘束。そして三人同時の飛び蹴りにより、五線譜へと無数の音符を刻みつける。

 

「これで終わり!」

Action(アクション)! オトギガールズ・マテリアルシンフォニー!》

 

 全ての音符が弾け飛び、衝撃が解放され、ヒルのデジブレインたちは全て爆散。

 黒ずんだ泥のような体液が地面や建造物に飛び散り、怪人を全滅せしめた。

 

「これでやっと片付いたね」

 

 ピクシーがそう言って安堵した、その瞬間。

 地面などに四散した泥水から、黒光りするぬるぬるとした腕が伸び出て来た。

 

「えっ!?」

 

 そのままヒルの怪人は、泥水の中から這い出て再生を完了。しかも、人数が倍以上に増えている。

 これこそが真相だったのだ。倒しても再生するばかりか、その度に増殖してしまう能力。

 

「まさかこれは……コウガイビルのデータを取り込んだデジブレインなのか!?」

「兄さん、コウガイビルって?」

「要はプラナリアと同じだ! 身体を切断しても、再生する上に二匹に増える!」

 

 キアノスの言葉を聞いてアズールも驚愕し納得するものの、しかし疑問が残った。

 攻撃を受けて泥水の中から増殖したとしても、仮面ライダーの力には敵わない。この能力で無限に再生されるのは確かに厄介だが、それ以上でも以下でもない。脅威としては弱いのだ。

 それに、このガンブライザーの使い手が何者なのかも未だに不明だ。単独なのか? それとも複数人がデジブレインとなって、増え続けているのか? それさえも翔たちは分からないでいる。

 少しでも情報を集めたいと考え、キアノスはそのデジブレインに向かって叫ぶ。

 

「お前、一体何者だ!?」

 

 尋ねると、僅かに遅れて返事が聞こえて来る。

 ただしそれは、目の前の怪人たちから出たものではなかった。

 

『我々は奈落秘神教』

『我々は貴様らホメオスタシスを滅ぼすために』

『我々は我々同士で結託しひとつになった』

「なっ……!?」

 

 声は、地面の泥水から発せられた。男女を問わず、幾人もの肉声が重なって木霊したのである。

 この異常な事態には、五人全員が目を剥いた。泥の泡立つような音と共に、彼あるいは彼女らは再び口々に声を出す。

 

『仮面ライダーアズールの持つ強大な力は、この世の誰であれ超える事はできない』

『しかしそれは』

『単一の肉体と思考のみを持つ、ただの人間に限った場合の話だ』

 

 ずるずると水音を立て、ヒルの怪人が周囲に増える。いつの間にか、五人を取り囲むようにして路面にも泥水が撒かれていたようだ。

 

『我々は古い体を捨て去り、遥か高き天の奈落より賜った泥へと融合を果たすと共に、文字通りに全てをひとつに統合した』

『我々は個ではなく単一にして無数の生命となったのだ』

『我々はさらにこのバイパリウム・デジブレインの力によって、永久かつ無制限に増え続ける』

『我々は』

『我々は』

『我々は』

 

 激しく泥が波打ち、表面に唇と耳、さらに眼球や血管のようなものが浮かび上がった。

 

『我々は貴様ら仮面ライダーを滅ぼすのだぁぁぁっ!!』

「うわあああぁぁぁ!?」

 

 泥中の激高の雄叫びと共に、バイパリウム・デジブレインの数がさらに増加し、アズールやピクシーに向かって襲いかかる。

 今度は攻撃を受けても消滅せず、泥水を撒き散らした後にすぐ肉体が再生した。

 さらに泥の仲から骨や牙で構成された剣あるいは槍などを作り出しており、先程とは全く異なる動きを見せているのだ。

 

「ここからが本当の戦いという事か……!」

 

 キアノスはそう言いながら、サーベルを振ってバイパリウムの腕を斬り裂く。

 泥を出血したヒル怪人がそれにも構わず、槍を突き出して反撃。胸に一撃を受け、キアノスは仰け反ってしまう。

 

「くっ!」

「兄さん!?」

 

 そこへアズールが駆けつけ、突風を起こして泥水ごとバイパリウムたちを押し返す。

 だが、それも一時凌ぎにしかならない。泥はずるずると音を立てて元の場所に戻って行き、再びバイパリウムを呼び寄せた。

 ピクシーズの方も怪人の動きを止めるべく攻撃を続けているのだが、衝撃を変換して送り込んでも、三人で一斉に打撃を繰り出しても全く効果がない。

 ならばと泥へと直接に刃や拳で攻撃しても、まるで手応えがない。

 

「本当に倒せないってこと……!?」

 

 度重なる攻撃による疲労感と何度も復活する事への絶望感から、ピクシーに変身しているアシュリィが呟く。

 しかし、アズールは首を横に振った。

 

「まだ手はある。斬っても殴っても吹き飛ばしてもダメなら!」

 

 そう言って彼が呼び出したのは、アーカイブレイカーだ。

 機首からプレートとメビウスユニットを分離し、アプリドライバーへと手早く装着していく。

 そしてさらに、マテリアフォンをアプリドライバー(メビウス)にかざした。

 

《エタニティアプリ!! 夜空に瞬く幾千の綺羅星!! 銀河を彩る神々しき惑星!! 無限に拡がる大宇宙、エヴォリューショォォォン!!》

「お前たちが本当にその泥水そのものなら、これが効くはずだ! ハイパーリンクチェンジ!」

《スワイプ!! シャイニングサン、ハイパーリンク!!》

 

 アズールメビウス シャイニングサン。攻撃特化のバトルスタイル。

 破壊的な極熱の閃光によって対峙するモノ全てを焼き滅ぼす力を持つこの形態であれば、浅い泥水程度などほんの一瞬で蒸発させる事が可能である。

 アズールはそれを実行すべく、自らの掌から光球を生み出す。

 だが。

 

「うっ!?」

 

 球体から熱光線を放とうとした瞬間、一行の頭上に黒い大穴が開き、光は吸収されて急速に萎んで消滅してしまう。

 

「なん……だ!? 今、何が!?」

 

 穴が消え、アズールは原因を探るべく周囲を見回す。

 そして、バイパリウムたちが道を開けるかのように左右に散開して跪いている事に気がついた。

 向こう側から歩いて来るのは、一ツ目の銀仮面を被った人物。背格好からして、翔や響と同じ年頃のようだ。

 

「アレは……誰だ?」

 

 キアノスが訝しんでいると、仮面の少年は五人に向かって語りかける。

 

「アシュリィ、ツキミ、フィオレ。そして天坂 響に天坂 翔……とうとう会えたな」

 

 仮面越しだが名前を挙げた順番に視線を送って、少年は怒りの声を発する。

 

「久峰の血族でありながらホメオスタシスに与する、恥知らずの裏切り者め!!」

「……お前は何者だ!?」

 

 久峰の名を聞いたキアノスが戸惑いと共に問いかけると、少年はその銀仮面を外した。

 そこにある顔を見て、アズールたちは驚く。

 仮面の中にあった少年の素顔は、年齢の差による違いはあれど、あの久峰 遼に瓜二つだったからだ。

 

「俺の名は久峰 業(ヒサミネ ゴウ)!! 貴様らが海底に幽閉した久峰 遼の息子だ!!」

 

 乾いた音を立て、少年の投げ捨てた金属の仮面が泥の上に落ちる。

 仮面ライダーたちの新たな戦いは、知らずしらずの内に幕を開けていたのだ。

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