仮面ライダーアズール スピンオフ・アプリ   作:正気山脈

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EP.02[冥王(Pluto)]

「久峰 業……あの久峰 遼の息子だって!?」

 

 バイパリウム・デジブレインを率い、仮面ライダーたちを見下ろすリーダー格らしいその少年。

 彼の名を聞いて、アズールたちは愕然としていた。

 

「バカな、一体なぜ今更現れる!?」

 

 キアノスが大きな声を上げた。

 遼の妻や愛人すら罪が明るみになって逮捕されている中、未だ捕まっていない直接の息子の話など聞いた事もなかったからだ。

 問われた少年、業は五人を見下ろし、指を差して忌々しそうに言い放つ。

 

「復讐だ。俺は貴様ら仮面ライダーに復讐するため、ここに来た」

 

 その言葉に反発したのは、久峰 遼とハーロットの娘たち、アシュリィ・フィオレ・ツキミの仮面ライダーピクシーだ。

 

「……復讐、って」

「私たちがアイツを海底に閉じ込めたから? それとも、一族の他の人たちも捕まってるから?」

「けど、そんなものは全部自業自得でしょう!?」

 

 かつての事を思い出して、憤るピクシーたち。

 しかし、業は腹違いの妹たちに向かってフンと鼻を鳴らした。

 

「勘違いするな。俺は、あんなカス共の事などどうでも良い」

「なに?」

「父、久峰 遼が逮捕に至ったのはヤツ自身の責任だ。他の親族どもが逃げ切れなかったのはヤツらの力不足だ。俺が許せんのはそこではないんだよ」

 

 演説するように自らの腕を振りながら、業は五人へと叫んで主張し始める。

 

「デジブレインを生み出したの原因を作ったのは、ホメオスタシス! その創始者の静間 鷲我だろう!」

「え!?」

「貴様ら仮面ライダーはその後始末をしているのみ、単なるマッチポンプだ! そのくせ、久峰の一族を貶め自分たちは栄誉を得ている! 俺も今や追われる身、対して同じ久峰の血を継ぎながらそんな連中に縋って生き永らえている! 許せるものか!」

 

 激昂し、仮面ライダーたちに指を差す業。

 

「何を誤解してるのか知らないけど! そもそも鷲我会長がデジブレインを作ったワケじゃない、あの人はただサイバー・ラインを見つけただけだ! 本当にデジブレインを作ったのは……」

「アクイラ、と言うつもりなんだろう? だがどうだ、サイバー・ラインに生まれたそのアクイラを養護していたのも静間 鷲我と聞いているが?」

「それは……」

 

 その点については間違ってはいない。実際、鷲我は好奇心からサイバー・ラインを発展させ、そして知恵を与えてアクイラを育てている。

 とはいえ当初はその結果として情報生命体が生まれる事など予想もしていなかったはずであり、ましてそれが他者に利用されるなど思いもしなかっただろう。

 そもそも、それと久峰がデジブレインを使って悪事を働くのは全くの別問題だ。逆恨みも甚だしい、とアズールは思う。

 だが、その考えを見透かしているかのように、業は再び口を開く。

 

「本当に静間 鷲我が、真実を全て話していると思っているのか? ヤツの話に疑問の余地がないとでも?」

「どういう意味だ」

「ヤツが貴様らを騙して利用していると考えた事はないのか、と聞いているのだ」

 

 グッとアズールが口を噤む。

 確かに、鷲我は翔たちと共にデジブレインを討滅すべく活動していたが、秘密を隠している事が多かった。

 特に翔にアクイラの力が眠っていた事を黙っていたのは、象徴的と言えるだろう。

 しかしそれを踏まえたとしても、翔は業の言い分に納得しなかった。

 

「お前の言う通り、何もかも事実を話しているとは限らないかも知れない。会長は隠し事の多い人だから。だけど、それはお前の言葉を信じる理由にはならない!」

「なに?」

「少なくとも会長には進んで他人を傷つける意思はなかった、むしろデジブレインが生まれた事を悔やんで責任を果たそうとしていたんだ! デジブレインを使って危害を加えるお前とは何もかも違う!」

 

 そう言うと、キアノスはアズールの肩に手を置いて深く頷いた。

 

「よく言った翔! 俺も同じ気持ちだ!」

「私たちも、だよ。ゴウ、あなたの言葉は信用できない」

「鷲我様には大きな恩がありますわ」

「そうだそうだー!」

 

 ピクシーとセインL・Rも、キアノスに続く形で業の言葉を真っ向から否定する。

 すると業は、溜め息と共に自らの手にあるものを握った。

 アズールたちも見覚えのあるそれは、マテリアフォンだった。

 

「それは!?」

「良いだろう。俺も別に理解して貰おうなどとは思っていない……今、ここで! 貴様らを消し滅ぼしてくれるわ!」

《ドライバーコール!》

 

 さらに業はマテリアプレートを取り出すと、それを起動する。

 大きさとしては二枚分の厚さで、アズールの持つチャンピオンズ・サーガと同じ形状だ。

 

《ダークネス・キングダムXR(エクストリーム・ロード)!》

 

 禍々しい音声と同時に、それはアプリドライバーへと装填される。

 するとプレートの蓋が展開し、死神のようなものが描かれたレリーフがあらわとなった。

 

《ゴー・トゥ・ヘル! ゴー・トゥ・ヘル!》

「変身」

Alright(オーライ)! イリーガライド!》

 

 マテリアフォンをドライバーにかざすと、業の姿が黒い泥に包み込まれ、変化していく。

 黒いアンダースーツに黒いアーマー、そして赤い瞳。

 暗闇そのものであるかのようなその威容は、色は違えどアズールによく似ていた。

 

《ダークネス・アプリX(エクストリーム)! 極限の邪悪! 極限の暴虐! 魔皇の闇黒覇道、インストォォォール!》

「ぬぅん!!」

 

 その声と共に腕を振ると、背中からマントが伸び出て、真っ黒な剣が右手に握られる。

 剣を地面に突き刺して柄頭に手を添え、業の変身したその仮面ライダーは、名乗りを上げた。

 

「我が名は仮面ライダープルート……ダークネスリンカーX(エクストリーム)! 貴様らを死に導く冥王である!」

 

 プルートはそう叫び、剣を抜いて一行へと飛びかかった。

 当然それにすぐさま反応したアズールは、シャイニングサンの能力で光線を放つ。

 だが。

 

「無駄だ!」

 

 そんな声と共に、プルートの目の前に黒い穴のようなものが形成され、熱線がそこへ吸い込まれる。

 先刻起きた出来事と同じだ。攻撃を完全に無力化されてしまった。

 一体何をされたのか、アズールには敵の能力の正体が理解できない。

 すると、それを見極めんとすべくピクシー三姉妹が動き出す。

 

「ヤァッ!」

 

 プルートが放った斬撃をピクシーレイピアのナックルガードで受け止めた後、衝撃を音に変換。

 これを衝撃に再変換して跳ね返す事で、敵に大打撃を与えるのがピクシーの得意技である。

 しかしその音すらも黒い穴の中に取り込まれ、消失してしまう。

 

「え、ウソ!?」

「そんな……音の攻撃も効かないだなんて!」

 

 セインLとセインRが驚き、アズールやピクシーと共に距離を取る。

 プルートからの剣閃は回避できたものの、状況は何も変わっていない。

 それでも諦めず、アズールは何度も光線を放つのだが、その度に黒穴へと吸い寄せられて消滅する。

 事態を見ていたキアノスは、そこでハッとして声を上げた。

 

「まさか、アレは擬似的なブラックホールなのか!?」

「ようやく気づいたか、その通りだ」

 

 プルートはフンと鼻で笑い、剣先を五人の方に突きつけた。

 

「音も光も温度も引力すらも存在しない、全てが遮られた完全なる死の空間……『プルートスペース』への入口を生み出すのが俺の能力だ。冥王の名に相応しかろう?」

「だから攻撃が通用しない、って事なのか」

 

 息を呑みつつ、アズールは剣を強く握り込む。

 あらゆる力を飲み干すあの凶悪な力に対抗するには、如何にするか。

 思考の最中にも、プルートは動く。

 

「どうした、手が止まっているぞ!!」

 

 プルートの刀身がいくつかのパーツに分離し、ワイヤーのように光線で繋がれた状態で、鞭のようにしなる動きでアズールたちの装甲を斬る。いわゆる、蛇腹剣だ。

 素速い斬撃を防ぐ事ができず、キアノスとピクシーたちは吹き飛ばされてしまった。そこへさらに、バイパリウムたちが追い打ちをかけようとする。

 

「くぅ!?」

「ううっ!?」

 

 アズールはかろうじて防いだが、プルートが見逃すはずもない。

 分離した刃が元に戻すと、今度は真っ直ぐに斬りかかって来るのだ。

 反撃しようにも、またブラックホールで吸い込まれてしまう事になるだろう。そう考えた結果、アズールはある結論を導き出した。

 

「光も引力も効かないのなら、これだ!」

《スワイプ!! ルクシオンムーン、ハイパーリンク!!》

「ハイパーリンクチェンジ!」

 

 アズールメビウスの胸の紋章が月の惑星記号に変わると、突然に彼以外の全ての人間やデジブレイン、物体の動きすら減速する。

 ルクシオンムーンの能力。それは、時流の操作だ。流石に巻き戻す事はできないものの、加速・減速を自由に行う事ができるのだ。

 

「流石にブラックホールでも、時間の流れを変える事はできないみたいだね」

 

 向かってくるプルートの側面に回り込んだアズールは、そのままスターリットフォトンで形成した武装によってバイパリウムを殲滅しつつ、剣を振り上げる。

 そして、アズールセイヴァーによる斬撃を彼の脳天へと叩き込んだ。

 

「これで僕らの勝ちだ。時の流れよ、元に戻れ……!」

 

 合図と同時に、遅延して引き伸ばされた時間が正常に返り、攻撃を受けたプルートが短い苦悶の声と共によろめいた。

 キアノスたちも襲撃を受けずに済んだためすぐ態勢を立て直し、再び攻撃に向かっている。アズールの不意打ちが通じた今ならば、倒せるかも知れないと判断したのだ。

 ここでプルートから反撃が来る前に、そしてバイパリウムが再生を終える前に、五人は一斉に必殺技を発動した。

 

《フィニッシュコード! Alright(オーライ)!》

《フィニッシュコード・トリオ! Action(アクション)!》

《スターリーフィニッシュコード!! Alright(オーライ)!!》

「これで終わらせる!」

《アーセナル・マテリアルバースト!》

《オトギガールズ・マテリアルシンフォニー!》

《ルクシオンムーン・アプリケーションストライク!!》

 

 再び時の流れが変化する。今回は、五人のみが加速した。

 同時に放った五色の輝きを放つキックが、一瞬の内にプルートを貫く。

 激しい極光と大爆発が起こり、プルートが倒れたかに見えた、その時。

 

「勝ったとでも思ったか!? 甘い……甘いぞ!!」

 

 そんな叫び声と共に、プルートの装甲の隙間から黒い泥水が滴り落ちる。

 

「なっ!?」

「こ、これは……!」

 

 バイパリウム・デジブレインの本体と目されている液体と、同じものだ。それがプルートの身体からも流れている。

 

「驚いたようだな。流石に俺にはバイパリウムのような増殖機能はないが……」

 

 不敵な笑い声を発するプルートの装甲と傷口が、ほとんど一瞬の内に再生していく。

 

「貴様らがどんな攻撃をしようと! この俺には通じんという事だ!」

「くっ!?」

「今度は俺の技を食らうが良い……!」

《ドレッドフィニッシュコード!》

 

 反撃が来る。それを察知して、全員がすぐに防御行動に移った。

 プルートは自身のマテリアプレートを押し込むと、マテリアフォンをかざす。

 

Alright(オーライ)! ヘルダークネス・マテリアルデリート!》

「死ね、仮面ライダァァァーッ!!」

 

 跳躍したプルートの蛇腹剣の刀身が分離し、光を伴って両脚に巻き付く。

 そして突き出された足から放たれたキックは、アーカイブレイカーへの直撃によって刃を飛散させ、キアノスとピクシーズにも襲いかかった。

 

「ぐあああっ!」

「きゃあああ!」

 

 四人の変身が解除させられてしまい、唯一防いでいたアズールも重い一撃に片膝をつく。

 

「こ、この威力……まさかあの黒い液体は、身体能力の強化もできるのか?」

「そういう事だ。故に、俺の持つ力は貴様に並ぶというワケだ」

 

 言った後「そして」と続けて、プルートは剣先をアズールの喉元に突きつける。

 

「最期の時が来たようだな、天坂 翔」

「く……!」

「仲間共々、死んで我らが奈落の土壌となるがいい!!」

 

 冷酷な言葉と共に、剣の一振りが首を捉えんと動いた。

 瞬間、銃声が鳴って弾かれるようにプルートの手から武器が落ちる。

 

「ぐ!?」

 

 炎と弾丸によって指が抉れて千切れ飛ぶが、黒い泥水がすぐに再生させる。

 しかし、その場に冷気が流れ込むと、再生の速度は先程よりも衰え始めてしまう。

 

「これは!?」

 

 愕然とし、プルートは弾の飛んで来た方に目をやる。

 向かい来るのは、二つの影。アプリドライバーとタブレットドライバーを装着した男たち。

 その内の一人、冷気を纏う緑のスーツの仮面ライダーが声を上げる。

 

「仮面ライダーは彼らだけではない。ここにもいるぞ」

「貴様は雅龍、英 翠月! そして今の銃弾は……」

 

 続いて雅龍転醒の隣で歩く、銃を構える人物へ視線を向ける。

 こちらは炎のように赤いライダーで、彼を見たプルートは仮面の奥で歯を軋ませた。

 

「人の父親に散々な事言ってくれやがったなぁ、テメェ。タダで帰すと思うなよ?」

「仮面ライダーリボルブ……静間 鷹弘!!」

 

 増えた敵勢を前に、プルートとバイパリウムはじわじわと後ろに下がる。

 何事かと思ってアズールが様子を見ていると、雅龍はフンと鼻を鳴らして語り始めた。

 

「状況は映像で見て既に理解している。お前と私の相性が最悪ということも、な」

 

 それを聞いて、ようやく納得する。

 この黒い泥水は蒸発すれば使い物にならなくなるという点は、プルートがしつこく攻撃を妨げた事からも事実と判断できる。

 そして雅龍の今の形態にはサスペンドブラッドという凍結剤を放つ強力な力があり、これを流し込めば泥水を凍らせて活動を停止させる事が可能なのだ。だからこそ、プルートはここまで焦っているのだろう。

 勿論、インク弾として放ってもブラックホールに放り込まれるため効果はない。だが、雅龍には卓越した拳法がある。拳で直接打ち込めば、たとえ能力を使おうと回避は不可能。

 故にプルートは焦っているのだ。ほとんどが手負いとはいえこの二人が加わるとなれば、戦い続けても明らかに分が悪い。

 

「さぁ……観念しやがれ!」

 

 リボルブが言いながら銃口を向け、雅龍は拳を構える。

 すると、プルートの背後の空間に大きな穴が開いた。

 これはプルートスペースへの入口ではない。アズールたちも見慣れた、サイバー・ラインに繋がるゲートだ。

 逃げるつもりだと知って、リボルブは得意の速撃ちで阻止しようとするも、プルートは意に介さない。むしろわざと命中させ、着弾時の衝撃を利用して後ろに下がった。

 

「チッ!?」

「あぁ、ここは貴様の言う通り観念して撤退する事にする。また会おう静間 鷲我の息子。貴様の父親の罪を明るみにしてやるからな、楽しみにしていろ!」

 

 高笑いを発しながら業はサイバー・ラインへと消えていき、翔や鷹弘たちも変身を解除した。

 直後、鷹弘は舌打ち混じりに地を蹴る。

 

「クソが! あの野郎、親父を何だと思ってやがる!」

「全くですね」

 

 憤っているのは彼だけではなく、響や翠月たちも同じだ。

 しかし、翔は何か疑問を感じているかのように唸っている。

 

「あの人の言ってる事って、何か引っかかりません?」

「……お前まで親父を疑ってんのかよ?」

 

 眉根を寄せつつも、不快さではなく純粋に不思議がる鷹弘。

 翔は慌てて首を振り「そうじゃなくて」と前置きし、その上で自分の意見を述べた。

 

「そもそもどうしてサイバー・ラインが生まれたのかって、鷲我会長も僕らも知らないですよね?」

「まァ、な。偶発的にそうなったとしか思ってなかった。調べたところで分かるモンでもねェし」

「なのにどうして、彼は今更その事について言及し始めたんでしょうか」

「難癖つけて久峰の一族の権威とやらを取り戻したいだけなんじゃねェか?」

「けどそれにしては何か確信めいたものを感じたというか、鬼気迫る感じがあったというか……」

 

 再び唸って翔は腕を組む。その時、翠月もハッと顔を上げた。

 

「そもそもヤツは……どうやってアプリドライバーやマテリアプレートを手に入れたんだ?」

「確かに、そこは俺も疑問だった。戦闘データを分析していたにしても、明らかに出来が良すぎる」

 

 バイパリウム・デジブレインの存在やあの泥水も含めて、何もかもが分からない事だらけだった。

 久峰 業には、他に何か秘密があるのかも知れない。そう判断して、ホメオスタシスの一行は調査を始める事にした。

 

「次にヤツらが動き出す前に、久峰一族の情報とサイバー・ライン内の状況を調査する! 行くぜ、野郎ども!」

『了解!』

 

 声を揃え、全員が同意の声を発する。

 こうしてホメオスタシスの一行は、崩壊したはずのサイバー・ラインの調査へと再び赴く事になるのであった。

 

※ ※ ※ ※ ※

 

『まさか逃げる事になってしまうとはね』

「申し訳ございません」

 

 その後、サイバー・ラインにて。

 戦場から帰って来た業は、泥水の中から伸びる触手に向かって、他のローブの者たちと共に座して頭を深々と下げていた。

 

『いやいや良いとも、この程度は想定内だ。何しろヤツら仮面ライダーは数が多い、君に与えたアプリドライバーとプレートだけでは対処し切れないだろう』

「如何致しましょうか」

『そうだねぇ』

 

 業がゆっくり頭を上げると、触手は何やら考え込んでいるかのように蠢き、そして泥の中に戻る。

 

『恐らく次にヤツらはここに現れる。その時を狙い、迎え撃とうじゃないか』

 

 すると、ボコボコと泥水が波打ち始め、中から真っ黒な泥人形が数体這い出て来た。

 それらは触手に捏ねられ、大きく形を変えて行く。

 

『新たに私の仔を与える。君の身体も強化しよう、期待しているよ』

「ありがとうございます――エフェサレフ様」

 

 名を呼ばれると、触手は愉快そうに震え、触手同士が絡み合って人の形を取る。

 髪は長く真っ白で、赤い瞳はまるで昆虫の複眼のようになっており、両耳は尖っている。顔立ちそのものは整っているのだが、褐色ではなく人間ではあり得ない異様に黒い肌や特徴のために、不気味さを感じさせた。

 エフェサレフと呼ばれたその男は、何も語らずに唇の端を薄気味悪くニヤリと歪め、両掌から泥水を生み出した。

 

「来るが良い、仮面ライダーよ……我々が破滅させてやろう」

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