仮面ライダーアズール スピンオフ・アプリ   作:正気山脈

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EP.03[深層に至る]

「私がサイバー・ラインを発見した経緯?」

 

 翔や鷹弘たちが仮面ライダープルート、久峰 業を退けた後。

 一度Z.E.U.Sビルの地下にある研究所に戻った彼らは、鷲我から聞き込みを行っていた。

 その場に集まった面々は、先程戦っていた翔・響・アシュリィ・ツキミ・フィオレや鷹弘と翠月に加えて、浅黄と肇、さらに陽子に鋼作や琴奈という顔ぶれだ。

 ちなみに宗仁は現在、帝久乃市の警備と人々の避難活動に当たっている。

 

「久峰 業がそれについて何か確信しているみたいだったんです。その、会長がサイバー・ラインやデジブレインを作ったとか」

「まぁ、勿論俺らはそんなモン信じてねェけどな」

 

 鷲我は翔からの質問を噛みしめるように「ふむ」と俯いて思索し、すぐに顔を上げる。

 

「申し訳ないのだが、以前に話した以上の事は私も分からない。サイバー・ラインを発見したのは本当に偶然だし、アクイラやデジブレインも私が生み出したものではないからな」

「うーん、やっぱりそうですよね……」

「だが翔くんが気になると言った理由も分かる。彼の様相には必死さが感じられたし、アクイラとデジブレインの関係性も知っているからな」

 

 話を聞いていた響は、翔に続いてひとつ質問を投げかける。

 

「ではやはり、あの久峰 業は何者かに偽りの情報を吹き込まれていると見るべきでしょうか」

「そうだろうなァ。親父に関する部分だけ歪めて伝えてんだろ、ただ問題は……」

「その人物の正体ですね」

 

 鷹弘がそれを聞いて頷いた。

 鷲我にも鷹弘にも肇にも、無論他の面々にも、その黒幕と思しき謎の人物についての心当たりがないのだ。

 しかも、相手はガンブライザーだけでなく新型のマテリアプレートやアプリドライバーすら作っている。

 仮にこんな事が可能な人物がいるとすればハーロットくらいのものだが、当の本人は海底で幽閉されているため、必然的に候補から外れる。

 

「残る心当たりがあるとすれば『彼』しかいないのだが、この通りだからな……」

 

 そう言いながら鷲我が目をやったのは、培養槽の中に入った淡く光る小さな球体。

 かつてアズールが戦った相手、世界を楽土に変えようとした電脳神、アクイラの核だ。

 

「せめて口を利く事ができたなら敵の素性が分かったかも知れないのだが」

「ないものねだりしてもしょうがない、と思うよ」

 

 アシュリィが言い、鷲我はフッと苦笑して頷く。

 

「では、正体を突き止めるのは後だ。彼らがサイバー・ラインのどこにいるのか、調査しよう」

「ただ今フォトビートルを飛ばしてます、でも」

 

 陽子が端末を操作し、現地の映像をその場に投影する。

 映っているのはサイバー・ラインの様子だが、以前の戦いが終わった後から何も変わっていない。誰もいない荒廃した大地が広がっているだけだ。

 鋼作と琴奈は無数の量産型フォトビートルを遠隔操縦しながら、頭を悩ませる。

 

「あいつら、一体どこに隠れてんだ!? 人っ子一人見当たらないぞ!!」

「こっちも何か手がかりがないと厳しいかもでーす!!」

 

 悲鳴のように発せられた琴奈の言葉に、翔はまた腕を組んで唸った。

 

「手がかりと言われても……」

「自分たちがどこにいるかなど、一言も口を滑らせていなかったからな」

 

 翠月もそう言って考え込む。鷹弘や響からもアシュリィからも、何の案も出て来なかった。

 その時、浅黄がおどけた様子で言い放つ。

 

「奈落秘神教だっけ? そんな名前なくらいだから、どっかに奈落に続く穴でも開いてたりしてね~」

「お前、今はそんなふざけた事を言ってる場合じゃ……」

 

 窘めようとした寸前に、肇はハッと顔を上げる。

 

「そうか、そこだ。ひとつだけ俺たちがサイバー・ラインで調査していない場所がある」

「えっ!? 父さん、それってどこなの!?」

 

 翔だけでなく、全員の視線が肇へと注がれる。

 それを受けながら、肇は人差し指を立ててその先を地面に向けた。

 

「――地下だ。そもそもそんな場所があるとは考えていなかったが、思い返せばアクイラも空の上にいた。そして地上のどこにも姿がなく、空でもないとすれば」

「確かに。サイバー・ラインに地下世界があったとしても、そこに新たに領域が作られていてもおかしくはない……!」

 

 翠月の言葉に、肇も首肯する。

 だがしかし、ここでまた新たな壁に直面した。

 

「問題はどこにその入口があるのか、どうやって地下に侵入するのかだな」

 

 響が提示した次なる課題に、やはりまたも一同は唸る。

 闇雲に地面を掘って探すのは非効率だし、見つかる保証もない。

 そもそも地下深くを掘り起こすような装置を、今のホメオスタシスは所有していないのだ。

 

「ふぅむ、どうしたものか」

「ここが解決しない事にはどうしようもねェからな……向こうが動くのを待つワケにも行かねェし」

 

 鷲我と鷹弘が話し、全員で案を出し合うが、有効な手立てを思いつけない。

 すると、翔が「あっ」と何かに気づいたように顔を上げ、ゆっくりと手を挙げた。

 

「もしかしたら……僕、できるかも知れません」

「なんだと!? 一体どうやって!?」

 

 驚く響。全員が関心を向ける中、翔はその策を提示した。

 

「まずはサイバー・ラインに行きましょう。それから――」

 

※ ※ ※ ※ ※

 

「業様。アズールが地上に現れました」

「なんだと?」

 

 サイバー・ラインの地下に広がる空洞。

 無数の樹木に見える建造物が幾何学的に配置され、黒い泥がそこら中に滴り落ち、左右はおろか天地すら曖昧に見える薄暗い場所。

 そこに、久峰 業とバイパリウム・デジブレインたちがいた。業は玉座のようなものに座り、退屈そうに溜め息を吐く。

 

「フン……地上に出たところで、我らの位置など分からんだろうに。マヌケめが、一体何をしに来たんだ?」

「その場で留まっています……いや、今ゲートを開きました。どうやら帰還するようです」

「だろうな。そら見た事か」

 

 ふんぞり返って嘲笑う業。

 しかしその直後、彼の表情は驚愕に染まる。

 

「侵入者発見、侵入者発見」

「何!? バカな、侵入!? どうやって!?」

 

 質問に対する答えはない。バイパリウムたちにとっても予想外の出来事が起きたようで、事態を把握できていないようだ。

 

「直ちに対処に向かいます」

「待て。俺も行く……この失態は自らの手で濯がねば、エフェサレフ様に申し訳が立たん!」

 

 マテリアフォンを強く手で握り、業は颯爽と翔たちの元へ駆け出した。

 

 

 

「上手くいったね」

 

 幾何学の物体と紋様が羅列した空間の中で、翔が言う。

 彼の傍らには、仮面ライダーに変身できる面々とツキミ・フィオレを含んだ八人全員が揃っていた。

 肇は翔の肩にポンと手を置き、頷き合う。

 

「よくやったぞ翔。まさか、ここまですんなり行くとはな」

 

 翔が使ったのは、かつて曽根光 都竹という男が好んで用いていた『エモーション・アナライズ』という能力。

 これは本来であれば、視界内で発生したカタルシスエナジーの動きを見極める事で、敵対者の挙動を先読みするというものだ。

 しかし当然ながら、地下深くまで見通す事はできない。そこで翔は、フォトビートルとレドームートンも作戦に組み込んだのである。

 まずスターリットフォトンを利用し、先程の二機の性能を極限まで引き上げる。さらにそれらと翔の視覚をリンクさせ、エモーション・アナライズを発動。

 すると二機にもエモーション・アナライズと同じ機能が追加され、地下にカタルシスエナジーがあるかどうか、それが動いているかを確認できるようになるのだ。

 そして強化されたレドームートンによって、先程は地下空間を発見。戻った後に座標を設定し、ゲートを通じて到着したというのがここまでの顛末であった。

 

「しかし、ここは一体……いつからサイバー・ラインにこんな場所が?」

「なんかその辺の模様見てるだけで目がチカチカするぅー。ヤバいってこれ、ずっと眺めてたら平衡感覚おかしくなっちゃうよ」

 

 うげぇ、と舌を出して眉を顰める浅黄。鷹弘も同じく、不快げに目を細めている。

 

「こんなところに住んでやがんのかあの野郎ども。マジに気が狂ってんじゃねぇのか」

「とにかく先へ進みましょう、敵に見つかるよりも前に」

 

 そう言いながら、翔は響やアシュリィと共に足を進め始める。それに続き、残りのメンバーも歩き出した。

 だがしばらく進んでいると、一行の目の前で地面や天井の黒泥が泡立つ。

 配下のバイパリウム・デジブレインが来る。それを察し、鷹弘は舌打ちした。

 

「もう見つかってやがるな!」

「じゃあみんな、作戦通りにやるよ」

 

 アシュリィが声をかけ、一同はそれを合図に動き出した。

 まず先陣を切るのは翠月、既にマテリアル・ネクステンダーをセットしたタブレットドライバーを装着し、マテリアプレートを起動している。

 

凍龍伝綺(ブリザード・ドラゴンズ・ロード)!》

「変身!」

《ブリザード・アプリ! 絶対零度の雪顎争覇! 龍氷鳳武、エクストラアクセス!》

 

 バイパリウムがその場に産み落とされ、同時にサスペンドブラッドを放出する雅龍転醒。

 インク弾を受けたデジブレインたちはそのまま全身が凍結し、再生できないまま粉々に砕け散る。

 だが、ここは壁も床も天井すら黒い泥で満たされた空間。すぐに増援が生み出されていく。

 

「ホォォォーッ! アタァーッ!」

 

 それでも雅龍は対応し、素速く拳とインク弾を打ち込み続ける事で、敵や泥を凍りつかせて砕く事で対処した。

 さらに、ザギークもその戦いに加わる。

 

「おりゃっ!」

 

 泥の中にインクという不純物を大量に混ぜ込んで固形化する事で、再生能力を減衰させているのだ。

 これもある程度有効らしく、後ろから雅龍に襲いかかろうとした者たちを次々に泥に還し、それを雅龍が凍結させる。

 

「良し、これならウチでもやれる! 後から追っかけるから、皆は速く行っちゃって!」

「了解!」

 

 頷いた翔たちは、すぐさま行動を開始する。

 業の元に辿り着くまでの道程においても、バイパリウム・デジブレインは出現し続けていく。

 

『変身!』

 

 その全てを、たとえ相手が再生しても、仮面ライダーたちははね退けた。

 雅龍と違ってやはり倒し切る力は持たないのだが、抗う術がある。

 アズールのスターリットフォトンによって形成される、雅龍・ザギークと同じ武器、スタイランサーだ。

 

「ハッ!」

「オラッ!」

 

 アズールの放つフォトンによって、各自の武器が強化され、敵が負傷したところで泥にインクを塗り固める。

 シャイニングサンの熱光線で蒸発させても、この場においてはキリがない。再生能力を衰えさせ、突破のみに注力しているのだ。

 

「へっ、そうなんでもかんでもテメェらの思い通りになるかよ!」

「――そうかな?」

 

 リボルブを先頭に走り続け、開けた場所に到着すると、一行の頭上でそんな声が聞こえる。

 そして同時に、真っ黒な五つの影によって取り囲まれた。

 影の正体の内のひとつは、久峰 業。残りの四つは人型の怪物だ。

 

「なんだ、こいつら」

「デジブレイン? でも、何か違う……?」

 

 アシュリィが怪訝そうに呟く。

 それぞれ狼とチーター、蠍に隼といった動物の要素を併せ持っているのは、デジブレインと同じ。

 しかし飽くまで情報生命体であるそれと明らかに異なり、生物とも機械とも判別できない、身体全体が真っ黒な異形の姿。眼窩や腕などから触手が伸び出ているのが見て取れる。

 

「彼らはエフェサレフ様の作りし子。奈落の御子、アビスタイドだ」

《ダークネス・キングダムXR!》

「ここで貴様らを滅ぼすために、あのお方が俺に委ねて下さった」

《ゴー・トゥ・ヘル! ゴー・トゥ・ヘル!》

「故に!! 貴様らはここで滅ぶのだ!!」

Alright(オーライ)! イリーガライド!》

 

 マテリアフォンがドライバーにかざされ、再び業の姿が黒い泥に飲まれて行く。

 

《ダークネス・アプリX(エクストリーム)! 極限の邪悪! 極限の暴虐! 魔皇の闇黒覇道、インストォォォール!》

「変身、ぬぅん!!」

 

 そして黒いボディに真っ赤な眼を滾らせ、マントを翻して蛇腹剣を携え、仮面ライダープルートが地に降り立った。

 

「どうやったのか知らんが、性懲りもなくゾロゾロと。そんなに殺されたいのか?」

「僕はもう負けない。お前を倒す手段は、既に用意している」

「フン、散々痛めつけられたのをもう忘れたか!? 偽善者と売女の息子が!!」

 

 蛇腹剣の刀身が光線と共に分離し、遠距離からアズールに向かって襲いかかっていく。

 さらに四体の異形も、各自戦う相手を定めて接近した。

 ウルフ・アビスタイドはキアノスに、チーター・アビスタイドはピクシーズに。スコーピオン・アビスタイドはネイヴィ、そしてファルコン・アビスタイドはリボルブを相手とする。

 

「オラッ、行くぜ!!」

 

 まず最初に動いたのは、リボルブだった。ヴォルテクス・リローダーを片手にトリガーを弾き、ファルコンへと火炎を伴う銃撃を行う。

 しかし、火炎弾に身を貫かれても、即座に黒い泥が溢れ出て負傷部位を回復していく。

 

「こいつらも再生できるのかよ!」

 

 さらにファルコンは両翼を拡げ、リボルブの頭上を高く飛ぶと、炎の羽根を無数の矢のように放った。

 

「ぐあっ!?」

 

 炎に対し耐性を持つリボルブリローデッド。しかしながら、その炎は装甲を焼いて溶かし、決して浅くないダメージを与える。

 一方、ピクシーたち三姉妹も、チーターのスピードに翻弄されていた。音による攻撃はことごとく身をかわされ、レイピアは掠りもしない。

 さらにネイヴィのカッターアームはスコーピオンの弓で即座に破壊され、キアノスもウルフの激しい銃撃に対処し切れていなかった。

 

「こいつら、手強い!」

「インク弾があると言っても、これでは……」

 

 攻撃から逃れつつ、どうにか反撃の隙を見出そうと必死に戦う一行。

 アズールは彼らを横目に、プルートの蛇腹剣による四方八方からの変幻自在の剣技に対処していた。

 

「くっ!?」

「貴様には何もさせんぞアズール! 弱い仲間共々、死んでいけ!」

「そうは……いかない!」

 

 飛び交う刃を盾で受け止め、剣によって反撃を試みるアズール。

 斬りつける事はできているものの、やはり再生能力によって負傷が一瞬で回復していく。

 しかし現在の彼の形態はシャイニングサン。光によってプルートやアビスタイドの泥水を蒸発させる事ができれば、必ず勝機はあるのだ。

 

「喰らえ!」

「させるか!」

 

 掌に光の球体を生み出し、解き放とうとする。

 しかしそれは、プルートの生み出した黒い穴に吸い込まれて消失した。

 プルートスペースの能力により、あらゆる攻撃が無力化されてしまう。それは前回の戦いを経て、アズールも知っていた事だ。

 つまり、真の狙いはここから先にある。光に意識を向けさせ、スターリットフォトンを操り武器を生み出していた。

 

《シノビソード!》

「今だ……ここで!」

《フリック・ニンポー! ブンシン・エフェクト!》

 

 生み出した武器を操作すると、アズールの姿が六人ほどに増える。

 シノビリンカー用の武装、シノビソードの能力。これらの分身は当然ながら、アズール同様にシャイニングサンの技を使える。

 しかし、プルートは仮面の奥の表情を全く変えない。

 

「まさか数を増やせばどうにかなるとでも思っていたのか? だとすれば、考えが甘すぎる。浅知恵だ」

 

 そう言い放つと、プルートスペースがさらに大きく広がっていき、六人に増えたアズールの閃光を飲み込む。

 すると今度は、アビスタイドたちに向かっていたリボルブやキアノス、ネイヴィが動き出した。

 

「よし、今だぜ! 狙え!」

 

 合図と同時に、キアノスとネイヴィがスタイランサーのインク弾を発射し、リボルブは火炎弾で攻撃する。狙うは、プルートの背中。

 最大の弱点となるアズールの光熱を防いでいる間、プルートは全くの無防備になると判断したのだ。

 だが。

 

「甘い!!」

 

 プルートが自らの腕を左右に動かすと、穴の形も捻じ曲がり、横へと広がる。そして、彼らの攻撃も全てブラックホールが飲み込んでしまった。

 

「なに!?」

「忘れたか? プルートスペースは無敵だ!」

 

 得意げに言い放ち、プルートはさらに穴を拡げて仮面ライダーたちをも吸い込まんとしつつ、攻撃を無力化し続ける。

 その時、ピクシーたちがポツリと呟いた。

 

「そう。あなたのその力はショウの技も通さない、本当に無敵の力」

「ですがだからこそ」

「利用できるんだよね!」

《フィニッシュコード・トリオ!》

 

 ピクシーセイン・LとRが頷き、ピクシーはレイピアを操作。必殺技の準備を終える。

 同時にアズールも、二人分の分身たちがそれぞれユニットを動かし、形態を変化させた。

 

《スワイプ!! グラビティガイア、ハイパーリンク!!》

《スワイプ!! ルクシオンムーン、ハイパーリンク!!》

「アシュリィちゃん、今だ!」

「うん!」

《フィニッシュコード・トリオ! Action(アクション)! オトギガールズ・マテリアルシンフォニー!》

 

 合図を受けて、ピクシーズの必殺技が発動。三人の剣から五線譜が生み出され、それがチーターの周囲に逃げ場なく張り巡らされて体に絡みつき、音符が生成され始める。

 直後、アズールの分身が右腕を掲げた。

 

「斥力!」

 

 グラビティガイアの能力、重力操作。身動きの取れなくなったチーターはその効力を受け、無重力状態となって宙に浮かんだ。

 そして、音符の破裂。音声データが衝撃に再変換され、標的となった豹はプルートスペースへと吹き飛ばされていく。

 

「なっ!?」

 

 それを見て、プルートはようやくアズールたちの狙いに思い至る。

 ブラックホールを過剰に拡げさせる事で、バイパリウムやアビスタイドをプルート自身に倒させる事。それが目的なのだと考えたのだ。

 

「さ、せ……るか!!」

 

 このままではチーターを飲み込んでしまう、そう思いプルートは一度スペースを解除。

 そして素速く再解放しようとするも、突然に全身の動きが緩慢に変わる。

 見れば、分身の内の一体、ルクシオンムーンのアズールが既に行動していた。その時流操作能力により、プルートの時間の流れのみを引き伸ばす事で、速度を大幅に低下させているのだ。

 

「貰った」

「し……まっ……」

《スターリーフィニッシュコード!!》

 

 残る四人のアズールが、必殺技の態勢に移る。

 ファルコンやスコーピオン、ウルフもそれぞれ仮面ライダーたちが対峙しており、その動きを阻害する事は誰にもできない。

 現実世界では人的被害や街に及ぶ危険を避けるために使わなかった手段を、その全身全霊を、この場において遠慮なく発揮した。

 

Alright(オーライ)!! シャイニングサン・アプリケーションストライク!!》

「輝けえええええぇぇぇぇぇー!!」

 

 アズールの全身から、その場にある泥水全てを蒸発させんばかりに閃光が迸った。それと同時に、他のライダーたちはその場で伏せる。

 視界が完全に白銀の光で埋め尽くされ、一息する間に旱魃が起きたかのように周囲の黒い泥土が水気を失っていく。

 

「ぐあああああああああっ!?」

 

 最も至近距離にいたプルートも、その光によって激しい断末魔を発する。乾き切った大地のように全身が罅割れ、装甲が黒い砂のようになってパラパラと破片が溢れ落ちる。

 さらに、被害はアビスタイドにも及んだ。近くまで投げ出されたチーターは言うに及ばず、地上にいたウルフたちも同じく肉体に亀裂が走っていた。

 

「っしゃあ!」

「よくやったぞ翔、今なら倒せる!」

 

 リボルブとキアノスはそう言って、圧倒的に動きと再生力の鈍くなったファルコン及びウルフを殴り倒し、粉々に消滅させる。

 そしてネイヴィも、左腕の武装をガトリングアームに変更。無数の弾幕によってスコーピオンの全身が削り落とされ、あっという間に散り散りになった。

 

「フッ、まんまとかかったな」

「あなたに一瞬でもスペースを閉じさせれば、ショウがどうにかしてくれる。そう信じてるから、私たちも戦えるんだよ」

 

 ピクシーたちのレイピアが乾燥したチーターを斬り刻み、砂に還す。

 これで、残るはプルートのみ。地面に墜落して息を切らした彼は、分身を消滅させたアズールの前で膝をついていた。

 

「さぁ。終わりにしよう、久峰 業」

「く……! 俺を、この俺を見下すなァァァ!」

 

 脆くボロボロになった装甲、それでもプルートはドライバーのダークネス・キングダムXRを一度閉じ、押し込んで必殺の構えを取る。

 

《ヘイティングフィニッシュコード! Alright(オーライ)!》

「死ッィィィねェェェェェェッ!!」

《アストラルフィニッシュコード!! All together(オール・トゥギャザー)!!》

「その歪んだ欲望……僕が断ち斬る!!」

 

 アズールもそう言って、マテリアプレートを押し込んでマテリアフォンをかざす。

 そして、アズールが右足に青い光を纏い、プルートは黒い闇を宿して、同時に跳躍した。

 

《ヘルダークネス・マテリアルサクリファイス!》

《エタニティ・アプリケーションコンプリート!!》

 

 交差する二つの影。

 瞬間、プルートの方のアーマーが四散して完全に崩れ去り、アプリドライバーとマテリアプレートが火花を散らせて飛んでいく。

 そして敗北した業は、派手に音を立てその場に倒れた。

 

「バカなぁ……俺が、負けるなど!?」

 

 ぐぐ、と腕に力を入れて立ち上がろうとする業。

 しかしあろうことか、その腕は細い針金のようにグニャリと曲がってしまった。

 

「ぐがっ!? 折れて……!?」

 

 そう口に出すが、なぜか痛みは感じていない様子だ。

 直後、顔を上げた業の表情を見て、アズールは驚愕の声を発する。

 

「うわ!? お前、なんだその顔は!?」

 

 言われて訝しむように目を細めた業は、ふと自身の頬に何かが伝う感覚を察知し、手で触れる。

 涙ではない。真っ黒な液体が、両眼から滴り落ちている。その上、先程のアビスタイドたちのように、全身が罅割れていた。

 

「な!? なん、だこれは。お、俺から出てるのか!? 一体、これは……!?」

 

 激しく狼狽する業。そこへ、突如として頭上から声が響き渡った。

 

「私の恩寵を受け、君は人ではいられなくなったのさ」

 

 気づけば、その男はそこに浮遊していた。

 真っ白な長髪に、昆虫の複眼のような形状の赤い瞳と、尖った両耳。

 人間ではあり得ない真っ黒な肌、そして不気味に薄く微笑む唇。

 その男が現れた途端、蒸発していたはずの周囲の黒い泥は、息を吹き返したかのように水気に満たされ始めた。

 

「いやぁ見事な手並みだった。ようこそ、ホメオスタシスの諸君」

 

 くつくつと笑う異形の黒い男。その姿を目にして、アズールたちだけでなく業も仰天している。

 

「お前は……何だ!? 一体どこから!?」

 

 明らかに人間とは違うその恐ろしい人物を前に、息を呑みつつもアズールが尋ねる。

 すると男は地上に降り、恭しく一礼してまたもニッと微笑む。

 

「私は君たちの文明を刈り取るため、外なる時空より舞い降りし者……奈落の刈人(アビス・ハーベスター)、エフェサレフ。どうぞよろしく」

 

 そう名乗ったエフェサレフの昆虫めいた両眼は、妖しい輝きを帯びていた。

 アズールたちは警戒を一切解かず、武器を構えて対峙する。

 しかしエフェサレフはそんな威圧感や敵意などまるで気にも留めず、余裕を見せつけるように笑っていた。

 

「ふふふ。そう攻撃的にならないでくれ、少し話がしたいだけさ」

「話だって?」

「ああ。君たちの知りたい事を、私は知っているんだ」

「何を言って――」

「サイバー・ラインを生み出したのはただ一人、この私なのだよ」

 

 追及の言葉が止み、アズールを始めとしたホメオスタシスの面々もあまりの出来事に沈黙してしまう。

 さらに泥に倒れていた業も、信じられないものを目撃したかのように唖然としていた。

 

「さぁ、今こそ真相を明かすとしようじゃないか……」

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