仮面ライダーアズール スピンオフ・アプリ   作:正気山脈

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 科学技術が大きく発展した大都市、帝久乃市。
 日本最大の巨大企業Z.E.U.Sグループが本拠を構えるこの街の、とあるビルの最上階にて。

「デジブレインやCytuberを統べるアクイラとスペルビアが消え、ついには久峰の一族までもが失脚した……」

 グレーのストライプスーツを纏う一人の男が、自身の眼の前にある、ガラスケースに保管された物体を眺めながら語る。
 彼の背後には、三つの人影がある。二人は男、一人は女のシルエットだ。
 スーツの男はニヤリと口角を上げると、三人の方を振り返って自らの両腕を拡げた。

「同志諸君! 今こそ『カリ・ユガ計画』実行の時だ!」

 彼の宣告と同時に三つの影は跪き、男は天に向かって拳を掲げる。

「いざ立ち上がれ! 『正義』の名の下に!」

 力強く叫ぶスーツの男が眺めていたケースの中には、黒いベルトと端末機器が入っていた――。


仮面ライダーキアノス 黙示録の死神
CODE:APEX[破滅の四騎士(前編)]


 時は2023年、以前『奈落の刈人(アビス・ハーベスター)』が襲来してから1年が過ぎた夏の朝。

 帝久乃市にある面堂 彩葉の家に、一人の人物が訪れていた。

 

「彩葉さん、大丈夫かい?」

 

 天坂 響。仮面ライダーキアノスとして、情報生命体デジブレインやCytuber、さらには奈落秘神教や刈人とも戦った戦士の一人。

 現在ではZ.E.U.Sの社員になると共に、秘密組織ホメオスタシスのリーダーとして活動しており、未だ現れるCytuberの残党やそれらに唆されて罪を犯す者たちと戦い続けているのだ。

 秘匿されているとは言えホメオスタシスも今や密かに政府からの援助を受ける立ち場となり、元電特課の『魔祓課』と連携して、事態の収束に尽力している。

 そんな彼の前にいるのは、ベッドで咳をしつつも横たわっている面堂 彩葉だ。

 

「こほっ、こほっ……ごめんね響くん。忙しいのに」

「君のためならいつでも駆けつけるよ」

 

 シュンと眉を下げる彩葉に対して、響は微笑みながらその手を撫でた。

 実際のところは単に熱が出てしまっただけなのだが、二人は熱を帯びた視線を交わし合い、頬を染めてはにかんでいる。

 そうしてしばらく見つめ合った後、そっと響は立ち上がって「さて」とキッチンへ向かった。

 

「お粥か何か作らないと」

「へ!? い、いや大丈夫だよ! 自分で作るから!」

「そうは行かないよ、病人に無理はさせられないし」

「大丈夫だから! そのくらいはできるから! 本当に……ほ、包丁置いて本当に! っていうかただのお粥で使わないでしょ包丁!?」

 

 慌てふためく彩葉と、残念そうに肩を落とす響。

 そんな彼の様子を可愛らしく思いながら、彩葉は一緒にお粥を作り始めた。

 とは言っても、響はほとんど食器などを用意しただけだが。

 そして調理を終え、卵粥を口にしている時。

 

「ところで……実は、静間会長から頼まれた事があるんだけど」

「頼まれた事?」

「彩葉さん、あの『フェイクガンナー』っていつ誰が作ったのか知らないかな?」

 

 ふと、響がそんな質問を投げかけた。

 一体なぜそんな事に興味を持つのだろう、と小首を傾げつつ、彩葉は答える。

 

「おじいちゃんがCytuberの人に頼んだとは聞いてるけど……誰なのかまでは知らない。ごめんね」

「ううん、何も知らないなら良いんだ。答えてくれてありがとう」

「……もしかして、だけど。仕事に関係ある話?」

 

 彼女から尋ねられると、響は真剣な表情になって頷く。

 

「この間、フェイクガンナーを修理して貰っていた時の事なんだけど――」

 

 響は自分でも思い出しながら、ゆっくりと彩葉に語り始める。

 

 

 

「完全な復元ができない?」

 

 数日前、Cytuberの残党を処理した後の事。

 久峰 遼に破壊されて以来、修復完了までに非常に時間を要していたフェイクガンナー。

 そのフェイクガンナーの修理が終わったと鷲我から連絡を受けて向かったところ、響はそのように言われたのだ。

 

「ああ。かつて洗脳された君がこちら側に戻った時にデータを解析してあったから、機能をある程度まで再現する事には成功した」

 

 フェイクガンナーの修繕機である『リペアガンナー』を手に取り、鷲我はそう言いつつも「だが」と続ける。

 

「内部機構の一部に我々にとっても詳細不明の技術……謂わばブラックボックスのような部分があったんだ。ここの完全解明ができないまま破壊されたせいで、大幅に遅れてしまった」

「使用に問題はないんですか?」

「不気味ではあるが、組み込まなくても動作はするからな。特に支障はない」

 

 しかし、何か問題があるとすれば。

 

「一体どんな機能で……誰が、何の目的で組み込んだんでしょう?」

「そこは私も気になっていたところだ」

 

 元々Cytuber側が所持していたものである以上、この武器を製造した人物の素性とその思惑は調べなくてはならないだろう。

 二人ともそう思って、互いに頷き合った。

 

「何事もないとは思うが、我々の方でも調査をしてみる。君は面堂さんから話を聞いてみてくれ」

「了解しました」

 

 

 

「……と、いうワケなんだ」

「なるほど……」

 

 響が取り出したリペアガンナーを見て、一通り話を聞き終えると、彩葉は納得したように数回首肯する。

 

「会長でも分からない機能が組み込まれてるなんて、確かに気になるね」

「だろう? まぁ、とはいえ今日までフェイクガンナーに関する事件は何も起きていないワケだから、このまま謎は謎で終わるんじゃないかと俺は思うけど」

「それが一番良いのかも、面倒がないし」

 

 そう言って笑い合う二人。

 すると、そんな和やかな空気を引き裂くように、響のマテリアフォンに着信音が鳴り響く。

 なんだと思って確認すれば、通話相手は琴奈だった。

 

「塚原さん? どうしたんだい?」

『デジブレインが出たわ! 響くん、至急向かって!』

 

 連絡を聞いて再び彩葉と視線を交わし、琴奈に「すぐ行くよ」と返答して通信を切る。

 

「ごめんね、すぐ戻るから」

「うん、行ってらっしゃい」

 

 名残惜しそうに振り返りつつも、響は急いで現地へと出動した。

 

「まぁ翔たちがいる以上、俺が到着する前に終わっているかも知れないが……」

 

※ ※ ※ ※ ※

 

「どうなってるんだ、これは……!!」

 

 一方、その翔は。

 アプリドライバーを装着したまま、デジブレインの前で立ち尽くしていた。

 マテリアプレートの方はドライバーにセットされている。しかし、彼はデジブレインを前にして変身せずにいる。

 否、しないのではない。()()()()のだ。

 

「なんでドライバーが反応しないの!?」

 

 同じ事態は、タブレットドライバーを使用する浅黄と、ピクシーレイピアを持つアシュリィ・ツキミ・フィオレの三人にも起こっていた。

 何度変身しようとしても、ベルトが反応しない。変身可能な状態にならない。

 さらに、目の前のデジブレインもこれまでに見た事のない新種。

 頭部は鳥類のようだが右足は獣の爪で左足が草食動物の蹄、右腕にはドリルが付いているが左腕はスライムのようにドロドロとしており、さらに背中からは魚のヒレが生えているが胴体は青い肌の人間のようであるという、ワケの分からない有様だった。

 

「こうなったら……変身できなくても、やるしかない!」

 

 そう言って、翔はアズールセイバーを手に正体不明のデジブレインに立ち向かおうとする。

 しかし、その寸前。

 発砲音と共にデジブレインが怯み、翔たちとその怪人の間に四つの影が割り込んだ。

 

「うっ!?」

「だ、誰……?」

 

 眼の前に現れた四人、男が三人と女が一人のその集団の内、代表格であるらしいグレーのストライプスーツを纏う男が振り返る。

 

「下がっていたまえ、民間人の諸君」

 

 そう言って男を含めた四人が手にしたものを見て、翔は目を見張った。

 

「アレは……フェイクガンナー!?」

 

 兄である響もかつて持っていた銃、フェイクガンナー。

 本体上部に小さな装置が追加され、カラーリングがグレーをベースとして白・赤・黒で配色されている点が異なるが、何度も見たので明らかにそうだとホメオスタシスの一行には分かる。

 

Truth up(トゥルースアップ)……》

『真装!!』

 

 そして彼らの見ている前で、四人の介入者たちは一斉にグリップエンドに手を叩きつけ、トリガーを引いた。

 四つの銃口から黒い煙が噴出し、それぞれの肉体を覆い、閃光が黒煙を裂いて姿を変える。

 

《オペレーション・ザ・ホワイトライダー!》

 

 ボサボサの黒髪に眼鏡をかけた白いパーカーの青年は、白いスーツと装甲を装着した赤いゴーグルの王冠を被った戦士に。

 

《オペレーション・ザ・レッドライダー!》

 

 軍服を纏う赤いロングヘアーの女は、緑のゴーグルと赤いスーツで厚い装甲を持つマッシブな戦士に。

 

《オペレーション・ザ・ブラックライダー!》

 

 頭の後ろで髪を結い和服を着た侍めいた風体の浅黒い肌の男は、黄色いゴーグルと黒いスーツの上に軽量な装甲を装備している戦士に。

 

《オペレーション・ザ・ペイルライダー!》

 

 グレーのスーツ姿の男は、青いゴーグルと灰色のアンダースーツが特徴的な、髑髏の意匠があしらわれた禍々しいアーマーを装着した戦士にそれぞれ変化した。

 

Don't resist(ドント・レジスト)!》

 

 最後にその音声が流れると、四人の仮面の戦士は並び立ってデジブレインと対峙する。

 彼らの様子を観察していた翔は、狼狽していた。

 

「ペイルライダーだって!?」

 

 その名前は、かつて兄がCytuberに操られてエイリアスと名乗っていた時の偽装形態のはず。

 しかし疑問を挟み込む余地もなく、謎のデジブレインの周囲に新たにベーシック・デジブレインが出現し、四人の戦士は動き出す。

 

「クックックッ!! 俺様のプレイスキルに痺れな、バケモノ共!!」

「アッハハハハハ!! 死ね死ね死ねェーッ!!」

「ムンッ! デヤァッ!」

 

 白の戦士と赤の戦士と黒の戦士、ホワイトライダーとレッドライダーとブラックライダーがそれぞれフェイクガンナーに似た銃を手に攻撃を開始。

 流れ弾による街への被害などお構いなしに発砲し、デジブレインたちを殲滅していく。

 

「フフ……全く、元気の良い事だ」

 

 彼らの戦い振りに拍手を送った後、灰色の戦士は発砲。逃げ出そうとしていた正体不明のデジブレインの肩を撃ち、怯ませる。

 そして見せつけるように翔たちの方を振り返ると、トランペットを吹く七体の天使が描かれた一枚のマテリアプレートを取り出し、起動した。

 

「見せてあげましょう。トゥルースガンナーの、そしてこのペイルライダーT(トゥルース)の真の力を」

《ジャスティス・レギオン!》

 

 他の三人も同じくそのマテリアプレートを手にし、起動。

 続いて、それを自身の持つトゥルースガンナーへと差し込み、引き金を指先で弾いた。

 

Truth Armed(トゥルース・アームド)……ジャスティス・スキル、ドライブ!》

 

 直後、四人の持つトゥルースガンナーが輝き、異変が起こる。

 そのプレートから飛び出したトランペッター・テクネイバーと融合し、全く異なる武装に変化したのだ。

 ホワイトライダーは白い弓、レッドライダーは赤い大剣、ブラックライダーは天秤を模した鎚となっている。

 倒しても次々に現れるデジブレインを、まるで玩具で遊ぶかのように、彼らは自らの武器を駆使して殲滅していく。

 ホワイトライダーの一直線に放った矢は精密に数十体のデジブレインの頭を射抜き、レッドライダーの一振りは周囲の建造物ごと敵を薙ぎ倒し、ブラックライダーの豪快な一撃はどんな守りも無意味とばかりに全てを叩き潰す。

 

「す、すごい……」

「なんて力だ」

 

 そう呟いたアシュリィと翔が次に眼にしたのは、ペイルライダーTの攻撃だ。

 目を凝らせば彼の周囲には灰色の煙のようなものが立ち込めており、それが巨木のような太く力強い筋肉の腕を作り出すと、正体不明のデジブレインを殴り飛ばして壁面に吹き飛ばしてしまう。

 

「さぁ、終わりです」

 

 ペイルライダーTが言い放つと同時に、彼のトゥルースガンナーが元の形状に戻る。

 そして、そのグリップエンドを一度掌で叩いた。必殺技の発動だ。

 

《オーバードライブ! Raise or Drop(レイズ・オア・ドロップ)! ジャスティス・マテリアルメソッド!》

 

 トリガーが引かれ、銃口から放たれた灰色の瘴気が纏わりついてデジブレインを苦しめ、昏倒させる。

 結果としてホメオスタシスは何もできず、彼らが代わりに街を守ったのだ。翔は戸惑いつつも、その闖入者に尋ねた。

 

「あなたは一体……?」

 

 すると、ペイルライダーTと他の三人はその武装を解除しないまま、答えを提示する。

 

「私はヴェーダ・エレクトロニクスの社長を務めている善来 識(ゼンライ シキ)。あなた方、力を失ったZ.E.U.Sグループに代わり……デジブレインの脅威と立ち向かう、正義の執行者となる者だ」

 

 次の瞬間。

 翔の右肩に、丸い風穴が開いた。

 

「――え?」

「君の時代はもう終わったのだよ、アクイラの少年」

 

 攻撃の飛んだ方向を見れば、そこにいるのは倒れたままの謎のデジブレイン。

 良く見れば消滅しておらず、瘴気がマリオネットの糸のようになってこの怪人を操っているのが分かった。

 アクイラの力を持っている翔ならば気付けたはずが、変身できない事への動揺と謎の人物の言動で油断を誘われてしまい、嘴の中に仕込まれた弾丸によって背後から肩を撃ち抜かれたのだ。

 

「ショウ……ショウ!?」

「お兄様!?」

「翔兄ちゃん!!」

 

 アシュリィたち三姉妹が駆け寄り、どくどくと血の流れる翔を介抱しようとする。

 そこに立ち塞がったのは、レッドライダーだった。

 

「どいてよ!! ショウが……ショウが死んじゃう!!」

「ヘッ、うるさいんだよメスブタが。その邪魔な乳臭い胸、斬り落としてやろうかぁ?」

 

 下品に笑い声を上げるレッドライダー。さらに、ホワイトライダーとブラックライダーも背後から迫る。

 しかし、今にも襲いかからんばかりの勢いだった三人の戦士の戦意が身震いと同時に突然に萎み、ペイルライダーの方に戻っていく。

 何事かと思ってアシュリィが振り返ると、そこにいたのは身の凍るような殺意を漲らせて向かってくる、響の姿だった。

 

「貴様ら……俺の……俺の弟に、何をしたァァァァァーッ!!」

 

 普段の優しい姿からは考えられない程の怒声に、アシュリィたちも思わず背筋を伸ばして震える。

 しかし唯一浅黄だけは、震えながらも彼に声をかけた。

 

「気をつけて響くん! アプリドライバーは……」

「分かってる!!」

 

 どこかで一度試したのか、それとも琴奈たちから事前に状況を聞いていたのか、響はそう答えてリペアガンナーを手に取る。

 

Repair up(リペアアップ)……》

「偽装!!」

《オペレーション・ザ・ペイルライダー! Let's roll(レッツ・ロール)!》

 

 そして青いアンダースーツの上に漆黒の装甲を纏う、ペイルライダーR(リペア)となり、四騎士たちに立ち向かっていく。

 

「来るが良い、偽りの死神よ」

 

 ペイルライダーT、識は仮面の中で唇を歪め、トゥルースガンナーの銃口を獣のように咆哮するペイルライダーRへ定めた。

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